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特許7606937チェックリスト消化支援装置及びチェックリスト消化支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】チェックリスト消化支援装置及びチェックリスト消化支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/063 20230101AFI20241219BHJP
【FI】
G06Q10/063
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021111695
(22)【出願日】2021-07-05
(65)【公開番号】P2023008269
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福地 開帆
(72)【発明者】
【氏名】前岡 淳
(72)【発明者】
【氏名】河合 克己
(72)【発明者】
【氏名】大林 浩気
(72)【発明者】
【氏名】三島 典子
【審査官】池田 聡史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-22287(JP,A)
【文献】特開2018-32067(JP,A)
【文献】特開2001-265580(JP,A)
【文献】特開2016-212633(JP,A)
【文献】特開2021-064143(JP,A)
【文献】特許第6469919(JP,B1)
【文献】米国特許第07849438(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計書のチェックリストのデータを保持する記憶装置と、
前記チェックリストが示す、前記設計書におけるチェック対象の候補箇所、当該候補箇所におけるチェック項目、及び当該チェック項目の優先度の各情報に基づき、前記候補箇所それぞれにおける前記チェック項目それぞれを作業者が順次チェックしていく各経路を所定の経路探索ユニットで探索する処理と、前記候補箇所の間及び前記チェック項目の間の各関係性に応じて予め定めたチェック作業の移動負荷に基づき、前記各経路に関して必要となる作業時間を算出し、単位時間あたりのチェック件数が極大になる経路を特定する処理を実行する演算装置と、
を含むことを特徴とするチェックリスト消化支援装置。
【請求項2】
前記演算装置は、
前記移動負荷及び前記チェックの箇所数にそれぞれ所定の変換係数をかけることで前記作業時間を算出するものである、
ことを特徴とする請求項1に記載のチェックリスト消化支援装置。
【請求項3】
前記演算装置は、
前記特定した経路の情報を、出力装置に出力するものである、
ことを特徴とする請求項1に記載のチェックリスト消化支援装置。
【請求項4】
前記演算装置は、
前記特定した経路における、所定の候補箇所におけるチェック項目に関して、前記作業者が行ったチェック結果を取得し、当該チェック結果に応じて、前記チェックリストが示す他の候補箇所の優先度を所定ルールに基づき変動させる処理をさらに実行し、前記変動を経た優先度に基づき、前記各経路の探索および前記経路の特定を都度実行するものである、
ことを特徴とする請求項3に記載のチェックリスト消化支援装置。
【請求項5】
情報処理装置が、
設計書のチェックリストのデータを記憶装置にて保持して、
前記チェックリストが示す、前記設計書におけるチェック対象の候補箇所、当該候補箇所におけるチェック項目、及び当該チェック項目の優先度の各情報に基づき、前記候補箇所それぞれにおける前記チェック項目それぞれを作業者が順次チェックしていく各経路を所定の経路探索ユニットで探索する処理と、
前記候補箇所の間及び前記チェック項目の間の各関係性に応じて予め定めたチェック作業の移動負荷に基づき、前記各経路に関して必要となる作業時間を算出し、単位時間あたりのチェック件数が極大になる経路を特定する処理と、
を実行することを特徴とするチェックリスト消化支援方法。
【請求項6】
前記情報処理装置が、
前記移動負荷及び前記チェックの箇所数にそれぞれ所定の変換係数をかけることで前記作業時間を算出する、
ことを特徴とする請求項5に記載のチェックリスト消化支援方法。
【請求項7】
前記情報処理装置が、
前記特定した経路の情報を、出力装置に出力する、
ことを特徴とする請求項5に記載のチェックリスト消化支援方法。
【請求項8】
前記情報処理装置が、
前記特定した経路における、所定の候補箇所におけるチェック項目に関して、前記作業者が行ったチェック結果を取得し、当該チェック結果に応じて、前記チェックリストが示す他の候補箇所の優先度を所定ルールに基づき変動させる処理をさらに実行し、前記変動を経た優先度に基づき、前記各経路の探索および前記経路の特定を都度実行する、
ことを特徴とする請求項7に記載のチェックリスト消化支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェックリスト消化支援装置及びチェックリスト消化支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
システム開発では、設計書の品質を担保すべく設計書レビューを実施している。これには、重要な確認事項をまとめたチェックリストを用いる。具体的には、レビュー者が、各チェック項目を満たす記載が設計書に存在するかどうかチェックする。そして、すべてのチェック項目が満たされるまで設計書の修正とチェックを繰り返す。
例えば、「Webサーバ冗長化方式の記載があるか」などがチェックリスト項目であり、レビュー者はそれに関係する記載が設計書中にあるかを探し、あれば合格とみなす。なお、チェック項目は最低1箇所見つかれば合格とみなすものや、他のチェック項目との依存関係がある場合がある。
【0003】
ここで、チェックリストの項目ごとに関連ワードを事前定義しておき、システムがそのワードと設計書とを自動で突合検索し、ヒットした箇所を記載候補箇所としてユーザに提示する手法が考えられる。こうした手法を採用することで、チェックリスト消化の効率化が可能である。
【0004】
例えば、「Webサーバ」、「冗長化」などを関連ワードとして登録しておくと、「Webサーバは冗長化する」と記載された箇所を記載候補箇所としてシステムが提示する。そして、当該記載候補箇所について、レビュー者は候補が真であるか(本当に記載がある
か)について、設計書の当該箇所を読むことで確認する。これにより、レビュー者は設計
書全体から記載箇所を探す必要がなくなる。
【0005】
こうした手法に関連する従来技術としては、チェックリストの各利用者にとって利用価値の高い情報を示すことにより、利用者の利便性を向上させるチェックリスト管理装置(特許文献1参照)などが提案されている。
【0006】
この技術は、チェックすべき複数の作業項目からなるチェックリストを管理するためのチェックリスト管理装置であって、前記作業項目ごとに対処済みか否かを示す属性情報を生成する生成手段と、予め用意された前記属性情報と該属性情報に対応する評価値との関係に基づいて、前記生成された属性情報に対応する評価値についての頻度分布を求める算出手段と、前記頻度分布のうち所定のしきい値以上の評価値に対応する頻度に基づいて、前記生成された属性情報に対応する評価度を設定する設定手段を備え、前記生成手段により生成された属性情報は、入力された属性情報のうち未処理の作業項目の1つについて対処済みと設定することにより得られる第1の属性情報から構成され、
前記第1の属性情報に対して得られる評価度を、前記未処理の作業項目のうち優先的に対処すべき度合を示す優先度として設定する装置である。
【0007】
また、プログラム改修作業等に伴う障害再発を防止するチェック項目の検証作業時間や手間を低減し、障害再発を抑制するチェック項目診断システム(特許文献2参照)なども提案されている。
【0008】
このシステムは、プログラム開発作業時に発生した障害の内容を、対象となった機能名およびプログラム名に少なくとも対応付けて格納する障害管理データベースと、前記障害管理データベースにおける障害内容に対応する、該当障害の再発防止用のチェック項目を
格納する再発防止チェック項目管理データベースと、を記憶する記憶装置と、仕様変更対象となるプログラムに関する、少なくとも機能および名称のデータを入力インターフェイスから受け付けて、前記機能および名称のデータをキーに前記障害管理データベースでの検索を実行し、前記機能および名称に対応付けされた障害内容を特定する障害特定手段と、前記特定した各障害内容に対応する再発防止チェック項目の検索を、前記再発防止チェック項目管理データベースにて実行して再発防止チェック項目群を特定し、当該再発防止チェック項目群を構成する各再発防止チェック項目の数をカウントし、当該カウント数の多さに応じて再発防止チェック項目の優先順位を高いものとした再発防止チェック項目順位リストを生成し記憶装置に格納する、リスト生成手段と、前記記憶装置から前記再発防止チェック項目順位リストを読み出して、出力インターフェイスに表示する、リスト表示手段を備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2007-265289号公報
【文献】特開2009-277088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のごとき従来技術により、レビュー者は設計書全体から記載箇所を探す必要がなくなる。ところが、チェックリストの項目数は日々増加するため、結局のところ記載候補箇所は多数登場する。つまり、人手でのチェックリスト消化は依然として多大な時間を要する。
また、設計書の構造(カテゴリ・ファイル・章・段落間の距離等)を考慮せずチェックすると、効率(単位時間当たりのチェック可能回数)が低下する問題も残される。同じ段落を複数回読むことや、飛び地の段落を突然読む必要が生じると、短期記憶を活用できず非効率な作業となりやすい。
【0011】
また、チェック処理中、各記載候補箇所のチェック結果(正解/不正解)に応じて最適な
チェック順序は変化しうるため、チェック前の静的な情報のみで最適な順序を求めるのは困難とも言える。
【0012】
そこで本発明の目的は、記載候補箇所の確認順序や要否を適宜なものとし、チェックリスト消化を効率化可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明のチェックリスト消化支援装置は、設計書のチェックリストのデータを保持する記憶装置と、前記チェックリストが示す、前記設計書におけるチェック対象の候補箇所、当該候補箇所におけるチェック項目、及び当該チェック項目の優先度の各情報に基づき、前記候補箇所それぞれにおける前記チェック項目それぞれを作業者が順次チェックしていく各経路を所定の経路探索ユニットで探索する処理と、前記候補箇所の間及び前記チェック項目の間の各関係性に応じて予め定めたチェック作業の移動負荷に基づき、前記各経路に関して必要となる作業時間を算出し、単位時間あたりのチェック件数が極大になる経路を特定する処理を実行する演算装置と、を含むことを特徴とする。
また、本発明のチェックリスト消化支援方法は、情報処理装置が、設計書のチェックリストのデータを記憶装置にて保持して、前記チェックリストが示す、前記設計書におけるチェック対象の候補箇所、当該候補箇所におけるチェック項目、及び当該チェック項目の優先度の各情報に基づき、前記候補箇所それぞれにおける前記チェック項目それぞれを作業者が順次チェックしていく各経路を所定の経路探索ユニットで探索する処理と、
前記候補箇所の間及び前記チェック項目の間の各関係性に応じて予め定めたチェック作
業の移動負荷に基づき、前記各経路に関して必要となる作業時間を算出し、単位時間あたりのチェック件数が極大になる経路を特定する処理と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、記載候補箇所の確認順序や要否を適宜なものとし、チェックリスト消化を効率化可能とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のチェックリスト消化支援装置の構成例を示す図である。
図2】本実施形態におけるチェックリストの例を示す図である。
図3A】本実施形態における移動負荷定義テーブル(項目間)の構成例を示す図である。
図3B】本実施形態における移動負荷定義テーブル(項目間)の構成例を示す図である。
図3C】本実施形態における設計書における段落とチェック項目の関係等に関して例示する概念図である。
図4A】本実施形態における移動負荷定義テーブル(段落間)の構成例を示す図である。
図4B】本実施形態における設計書における段落とチェック項目の関係等に関して例示する概念図である。
図5】本実施形態における移動負荷変換係数テーブルの構成例を示す図である。
図6】本実施形態の回数変換係数テーブルの構成例を示す図である。
図7】本実施形態のチェックリスト消化支援方法のフロー例を示す図である。
図8】本実施形態のチェックリスト消化支援方法のフロー例を示す図である。
図9】本実施形態における画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<装置構成>
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態のチェックリスト消化支援装置100を含むネットワーク構成図である。図1に示すチェックリスト消化支援装置100は、記載候補箇所の確認順序や要否を適宜なものとし、チェックリスト消化を効率化可能とするコンピュータである。
【0017】
このチェックリスト消化支援装置100は、例えば、システム開発を管理する事業者またはそれを管理する組織が運用する装置を想定する。当該事業者らにおけるチェック業務の担当者は、適宜なユーザ端末か入力装置105を操作して、チェックリスト消化支援装置100にアクセスし、チェックリスト消化支援方法に対応したサービス(具体的には、設計書におけるチェック作業の移動を最小限にした作業手順の情報提供)を享受する。
【0018】
なお、本実施形態のチェックリスト消化支援装置100のハードウェア構成は、図2に以下の如くとなる。すなわちチェックリスト消化支援装置100は、記憶装置101、メモリ103、演算装置104、入力装置105、出力装置106、及び通信装置107を備える。
【0019】
このうち記憶装置101は、SSD(Solid State Drive)やハードディスクドライブなど適宜な不揮発性記憶素子で構成される。
【0020】
また、メモリ103は、RAMなど揮発性記憶素子で構成される。
【0021】
また、演算装置104は、記憶装置101に保持されるプログラム102をメモリ10
3に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なうCPUである。
【0022】
また、入力装置105は、ユーザからのキー入力や音声入力を受け付ける、キーボードやマイクなどの装置である。
【0023】
また、出力装置106は、演算装置104での処理データの表示を行うディスプレイやスピーカー等の装置である。
【0024】
また、通信装置107は、必要に応じて適宜なネットワークを介して、上述の担当者が操作するユーザ端末からのアクセスを受け付けて、適宜な情報を提供するネットワークインターフェイスカードなどを想定する。なお、上述のネットワークは、例えば、インターネットやLAN(Local Area Network)を想定出来る。
【0025】
また、記憶装置101内には、本実施形態のチェックリスト消化支援装置として必要な機能を実装する為のプログラム102に加えて、設計書ファイル115、チェックリスト120、移動負荷定義テーブル(項目間)125、移動負荷定義テーブル(段落間)126、移動負荷変換係数テーブル127、及びチェック回数変換係数テーブル128が少なくとも記憶されている。ただし、これらテーブル等についての詳細は後述する。
【0026】
また、プログラム102は、最適化問題を解くソルバーや機械学習エンジンなどの適宜な経路探索ユニット1021を備えるものとする。この経路探索ユニット1021それ自体は、経路探索問題を解く既知のプログラム(の実行により実装される機能)を想定すればよい。
<データ構造例>
続いて、本実施形態のチェックリスト消化支援装置100が用いる各種情報について説明する。なお、チェックリスト消化支援装置100は、処理に利用する設計書ファイル115を記憶装置101で保持するが、構造および内容とも既知のものと同様であり、詳細な説明は省略する。
【0027】
図2に、本実施形態におけるチェックリスト120の一例を示す。このチェックリスト120は、設計書レビューに従来から使用されているもので、具体的には、レビュー者が参照し、各チェック項目を満たす記載が設計書に存在するかどうかチェックするためのファイルとなる。
【0028】
このチェックリスト120は、例えば、チェック結果、チェック対象の項目、及び当該項目におけるチェック内容、といったデータを紐付けレコードの集合体となっている。ただし、既知のチェックリストと同様のものである。
【0029】
図3Aに、本実施形態における移動負荷定義テーブル(項目間)125の一例として、項目間の依存関係に応じた移動負荷を定義したテーブル125Aを示す。また、図3Cに、本実施形態における設計書における段落とチェック項目の関係等に関して例示する概念図を示す。
【0030】
本実施形態の移動負荷定義テーブル(項目間)125Aは、上述の担当者らがチェックリストにおける各チェック項目を順次チェックする際のチェック項目間の移動負荷について、チェック項目間(図3C参照)の依存関係有無に応じて規定したテーブルである。
【0031】
この移動負荷定義テーブル(項目間)125Aは、例えば、あるチェック項目に関するチェック作業を終えて次のチェック項目にチェック作業を移動する際の、移動先のチェッ
ク項目が、移動元のチェック項目に依存する性質のものか、すなわち被依存の関係にあるかに応じて、移動負荷の値の大きさをそれぞれ対応付けている。
【0032】
図3Aの例では、移動元と被依存の関係にある移動先のチェック項目に関して、その移動負荷を数式で規定している。その数式とは、Max(0, 1-(被依存数*0.1))である。つまり、経路上におけるチェック項目各間における被依存関係にあるものの数(被依存数)に0.1を乗じたもので1を減算した値を移動負荷とする式である。よって、依存関係にあるチェック項目ペアが多いほど、移動負荷は小さく算定される。
【0033】
また、図3Bに、本実施形態における移動負荷定義テーブル(項目間)125の一例として、項目間の関連性に応じた移動負荷を定義したテーブル125Bを示す。
【0034】
本実施形態の移動負荷定義テーブル(項目間)125Bは、上述の担当者らがチェックリストにおける各チェック項目を順次チェックする際のチェック項目間の移動負荷について、チェック項目間の関連性有無に応じて規定したテーブルである。
【0035】
この移動負荷定義テーブル(項目間)125Bは、例えば、あるチェック項目に関するチェック作業を終えて次のチェック項目にチェック作業を移動する際の、移動先のチェック項目が、移動元のチェック項目に関連する性質のものかに応じて、移動負荷の値の大きさをそれぞれ対応付けている。ここでの「関連」の具体的な例としては、例えば、可用性と負荷分散、といった事象同士の関係が該当する。両事象は、一方が他方に依存するとは限らないが、関連性は有している。
【0036】
また、図3Bのテーブル125Bにおける項目「他」とは、依存関係も無く、関連性も無いチェック項目間の作業移動に関する負荷を規定するための項目である。図3Bの例では、この「他」に関する移動負荷は最高の「2」となっている。
【0037】
なお、実際に上述の移動負荷定義テーブル(項目間)125の具体例である、テーブル125Aとテーブル125Bを使用してチェック項目間の移動負荷について考慮する場合、テーブル125Aとテーブル125Bにおける該当値の平均値を算定するか、または単純に合算するなどして移動負荷を算定する。
【0038】
続いて図4Aに、本実施形態における移動負荷定義テーブル(段落間)126の一例を示す。また図4Bに、本実施形態における設計書における段落とチェック項目の関係等に関して例示する概念図を示す。
【0039】
本実施形態の移動負荷定義テーブル(段落間)126は、上述の担当者らがチェックリストにおける各チェック項目を順次チェックする際の、当該チェック項目に対応する情報が記載されている(と予想される)段落間(図4B参照)の移動負荷について、段落間の関係性等に応じて規定したテーブルである。
【0040】
この移動負荷定義テーブル(段落間)126は、例えば、あるチェック項目に関するチェック作業を終えて次のチェック項目にチェック作業を移動する際の、移動先のチェック項目が、移動元のチェック項目に依存する性質のものか、すなわち被依存の関係にあるかに応じて、移動負荷の値の大きさをそれぞれ対応付けている。
【0041】
この移動負荷定義テーブル(段落間)126は、例えば、ある段落のチェック項目に関するチェック作業を終えて次の段落のチェック項目にチェック作業を移動する際の、移動先の段落が、移動元の段落とどのような関係にあるかに応じて、移動負荷の値の大きさをそれぞれ対応付けている。
【0042】
ここでの「関係」の具体的な例としては、例えば、段落が同一カテゴリ内(例:性能)のものか、同一ファイル内のものか、同一章内のものか、同一の親(記載の章立てなどの包含関係)に紐付くものか、外部参照先にあるか、同一モジュールに関する章か、及びその他のものか、といった事象を想定できる。
【0043】
図4Aの例では、例えば、同一の親に紐付くものであれば、その親子距離(段落数)に2を乗じたものを移動負荷と規定している。また、同一モジュールに関する章の場合、「2」を移動負荷と規定している。また、その他すなわち特段の関係を有していないものの移動負荷を「10」と規定している。
【0044】
また図5に、本実施形態における移動負荷変換係数テーブル127の一例を示す。本実施形態の移動負荷変換係数テーブル127は、上述の移動負荷定義テーブル(項目間)125や移動負荷定義テーブル(段落間)126に基づき特定した移動負荷を、工数(作業時間等)に変換する係数を格納したテーブルである。図5の例では、当該変換係数は「1」すなわち、移動負荷はそのまま工数と等しいと規定された例を示している。
【0045】
また図6に、本実施形態における回数変換係数テーブル128の一例を示す。本実施形態の回数変換係数テーブル128は、上述の担当者らによるチェック回数を工数に変換するための規定値を格納したテーブルである。
【0046】
図6の例では、担当者(作業者)の当該チェック作業の熟練度(設計開発経験年数10年以上、同5年以上、その他)に応じて、当該チェック作業の回数を工数に変換する値を、それぞれ、2,2.5,3、などと規定している。
<チェックリスト消化支援方法:メインフロー例>
以下、本実施形態におけるチェックリスト消化支援方法の実際手順について図に基づき説明する。以下で説明するチェックリスト消化支援方法に対応する各種動作は、チェックリスト消化支援装置100がメモリ等に読み出して実行するプログラムによって実現される。そして、このプログラムは、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0047】
図7は、本実施形態におけるチェックリスト消化支援方法のフロー例を示す図である。この場合、チェックリスト消化支援装置100は、チェックリスト120における記述からチェック項目を1つ選択する(s1)。
【0048】
また、チェックリスト消化支援装置100は、s1で選択した当該箇所のスコア(優先度)を、チェック項目ごとの「チェック済みスコア値合計」に加算する(s2)。このチェック済みスコア値合計はメモリ103で保持・管理する。
【0049】
また、チェックリスト消化支援装置100は、回数変換係数テーブル128(図6)を参照して、作業者に応じた変換係数c=1を取得し、この値「1」を経路毎の作業時間に加算する(s3)。この作業時間の値は、例えば、メモリ103で保持・管理する。
【0050】
続いて、チェックリスト消化支援装置100は、全チェック項目の「チェック済みスコア値合計」が、予め定めた所定の閾値を超えたか判定する(s4)。
【0051】
上述の判定の結果、全チェック項目の「チェック済みスコア値合計」が、予め定めた所定の閾値を超えた場合(s4:Yes)、全経路を探索したか判定する(s5)。
【0052】
この判定の結果、全経路を探索したと判明した場合(s5:Yes)、チェックリスト
消化支援装置100は、チェック回数が最少となる経路を経路探索ユニット1021により探索し、その結果を出力装置106に表示させ(s6)、処理を終了する。
【0053】
一方、上述の判定の結果、チェックリスト消化支援装置100は、全経路をまだ探索していないと判明した場合(s5:No)、チェックリスト消化支援装置100は、処理をs1に戻す。
【0054】
次に、チェックリスト消化支援装置100は、s6:Noに引き続き、当該箇所の段落について、他のチェックリスト項目の未選択候補があるか判定する(s7)。
【0055】
この判定の結果、未選択候補がある場合(s7:ある)、チェックリスト消化支援装置100は、段落内から候補を1つ選択し(s8)、処理をs9に遷移させる。
【0056】
チェックリスト消化支援装置100は、直前に選択していた候補との関係性をもとに、移動負荷定義テーブル(項目間)125での該当する値aを取得し、かつ移動負荷変換係数テーブル127から状況に応じた変換係数cを取得し、a×cを「作業時間」に加算し(s9)、処理をs2に戻す。
【0057】
一方、上述の判定の結果、未選択候補が無い場合(s7:ない)、チェックリスト消化支援装置100は、未選択候補があるか判定する(s10)。この判定の結果、未選択候補が存在しない場合(s10:ない)、チェックリスト消化支援装置100は、処理をs5に遷移させる。
【0058】
他方、上述の判定の結果、未選択候補が存在する場合(s10:ある)、チェックリスト消化支援装置100は、候補を1つ選択し(s11)、処理をs12に遷移させる。
【0059】
また、チェックリスト消化支援装置100は、直前に選択していた候補との関係性をもとに、移動負荷定義テーブル(段落間)126での該当する値aおよび移動負荷定義テーブル(項目間)125での該当する値bを取得し、かつ移動負荷変換係数テーブル127から変換係数cを取得し、(a+b)×cを「作業時間」に加算する
<チェックリスト消化支援方法:オンデマンドな経路探索フロー例>
ここでは、チェック作業を行う担当者により、所定の段落におけるチェック項目に関するチェック結果たる正誤情報を受け付けることをトリガーとしたフローについて説明する。
【0060】
この場合、チェックリスト消化支援装置100は、上述の担当者によりチェックされた所定段落のチェック項目における正誤情報を取得する(s20)。
【0061】
また、チェックリスト消化支援装置100は、当該箇所と類似の候補箇所を探索する(s21)。この探索は、例えば、同一のワードで検索・ヒットしている候補箇所や、同一のチェック項目内の箇所、などを探索する状況を想定できる。
【0062】
続いて、チェックリスト消化支援装置100は、類似箇所の正解/誤判定数の合計が、閾値以上であるか判定する(s22)。
【0063】
上述の判定の結果、類似箇所の正解/誤判定数の合計が、閾値以上である場合(s22:Yes)、チェックリスト消化支援装置100は、類似箇所のスコアを一定値だけ加算/減算し(s23)、処理をs24に進める。
【0064】
一方、上述の判定の結果、類似箇所の正解/誤判定数の合計が閾値以下である場合(s
22:No)、チェックリスト消化支援装置100は、チェックせずとも、依存関係により正解/誤判定が分かる箇所があればチェック候補から外す(s24)。
【0065】
なお、チェックリスト消化支援装置100は、類似箇所のスコアを一定値だけ加算/減算し(s23)、処理をs24に進めるものとする。
【0066】
また、チェックリスト消化支援装置100は、ここまでの動作でスコアの加減算やチェック候補からの除外などの受けたチェックリスト120に基づいて、経路の探索を再度実行する(s25)。
【0067】
続いて、チェックリスト消化支援装置100は、s25で探索できた経路すなわちチェック業務の効率が最高となるチェック業務の実行順序について、出力装置106に表示(図9の画面900参照)させ(s26)、処理を終了する。
【0068】
一方、上述のチェック作業の担当者は、チェックリスト消化支援装置100が出力した経路の情報を確認し、あらためてチェック項目のチェックを実施し、本フローの初期ステップに戻すこととなる。

以上、本発明を実施するための最良の形態などについて具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0069】
こうした本実施形態によれば、記載候補箇所の確認順序や要否を適宜なものとし、チェックリスト消化を効率化可能となる。
【0070】
本明細書の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。すなわち、本実施形態のチェックリスト消化支援装置において、前記演算装置は、前記移動負荷及び前記チェックの箇所数にそれぞれ所定の変換係数をかけることで前記作業時間を算出するものである、としてもよい。
【0071】
これによれば、精度良好な作業時間算定を効率化することが可能となる。ひいては、記載候補箇所の確認順序や要否を適宜なものとし、チェックリスト消化をより効率化可能となる。
【0072】
また、本実施形態のチェックリスト消化支援装置において、前記演算装置は、前記特定した経路の情報を、出力装置に出力するものである、としてもよい。
【0073】
これによれば、チェック作業を行う者に適宜な経路の情報、すなわち作業順序について提示可能となる。ひいては、記載候補箇所の確認順序や要否を適宜なものとし、チェックリスト消化をより効率化可能となる。
【0074】
また、本実施形態のチェックリスト消化支援装置において、前記演算装置は、前記特定した経路における、所定の候補箇所におけるチェック項目に関して、前記作業者が行ったチェック結果を取得し、当該チェック結果に応じて、前記チェックリストが示す他の候補箇所の優先度を所定ルールに基づき変動させる処理をさらに実行し、前記変動を経た優先度に基づき、前記各経路の探索および前記経路の特定を都度実行するものである、としてもよい。
【0075】
これによれば、チェック結果に応じて、その後に予定していた無駄なチェック作業を回避することが可能となる。ひいては、記載候補箇所の確認順序や要否を適宜なものとし、チェックリスト消化をより効率化可能となる。
【0076】
また、本実施形態のチェックリスト消化支援方法において、前記情報処理装置が、前記移動負荷及び前記チェックの箇所数にそれぞれ所定の変換係数をかけることで前記作業時間を算出する、としてもよい。
【0077】
また、本実施形態のチェックリスト消化支援方法において、前記情報処理装置が、前記特定した経路の情報を、出力装置に出力する、としてもよい。
【0078】
また、本実施形態のチェックリスト消化支援方法において、前記情報処理装置が、前記特定した経路における、所定の候補箇所におけるチェック項目に関して、前記作業者が行ったチェック結果を取得し、当該チェック結果に応じて、前記チェックリストが示す他の候補箇所の優先度を所定ルールに基づき変動させる処理をさらに実行し、前記変動を経た優先度に基づき、前記各経路の探索および前記経路の特定を都度実行する、としてもよい。
【符号の説明】
【0079】
100 チェックリスト消化支援装置
101 記憶装置
102 プログラム
1021 経路探索ユニット
103 メモリ
104 演算装置
105 入力装置
106 出力装置
107 通信装置
115 設計書ファイル
120 チェックリスト
125 移動負荷定義テーブル(項目間)
126 移動負荷定義テーブル(段落間)
127 移動負荷変換係数テーブル
128 回数変換係数テーブル
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9