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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20241219BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20241219BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20241219BHJP
【FI】
G02B27/01
G02F1/13 505
B60K35/23
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021113129
(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2023009671
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎一郎
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-174582(JP,A)
【文献】特開2003-107442(JP,A)
【文献】特開2011-248317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0393675(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0042317(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第102016109863(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発する光源と、
前記光源からの光を透過させて画像を投影する液晶パネルと、
前記液晶パネルを透過した光を屈折させる光学部材と、
を備え、
前記光源の光の出射面は、前記光学部材を透過した出射光の光軸と第1鋭角で交差し、
前記液晶パネルの板面は、前記出射光の光軸と第2鋭角で交差し、
前記第2鋭角は、前記第1鋭角よりも小さく、
前記光学部材は、前記液晶パネルとの対向面の反対側に、前記液晶パネルの板面に対して傾斜する傾斜面を有する複数の突出部が設けられ、
前記複数の突出部の各々は、一辺が前記光学部材の前記液晶パネルとの対向面と平行である三角形状の断面形状を有し、
前記断面形状は、前記一辺と、他の一辺と、が形成する2つの角度のうち1つが鈍角である、
ヘッドアップディスプレイ。
【請求項2】
前記液晶パネルと前記光学部材との間に設けられて光を拡散させる拡散板をさらに備える、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ。
【請求項3】
光を発する光源と、
前記光源からの光を透過させて画像を投影する液晶パネルと、
前記液晶パネルを透過した光を屈折させる光学部材と、
を備え、
前記光源の光の出射面及び前記液晶パネルの板面は、前記光学部材を透過した出射光の光軸に対して互いに異なる角度で傾いており、
前記光学部材は、前記液晶パネルとの対向面の反対側に、前記液晶パネルの板面に対して傾斜する傾斜面を有する複数の突出部が設けられ、
前記複数の突出部の各々は、一辺が前記光学部材の前記液晶パネルとの対向面と平行である三角形状の断面形状を有し、
前記断面形状は、前記一辺と、他の一辺と、が形成する2つの角度のうち1つが鈍角である、
表示装置。
【請求項4】
前記液晶パネルと前記光学部材との間に設けられて光を拡散させる拡散板をさらに備える、
請求項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイ及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一つとして、画像をフロントガラス等の透光体に投影してユーザに虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ(HUD:Head Up Display)が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-65011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HUDにおいて投影される光の光軸上に設けられて画像を出力する透過型の液晶パネルを、光軸に垂直な方向に対して傾斜させることで、虚像の立体感をより顕著にできることが知られている。しかしながら、単に液晶パネルを光軸に垂直な方向に対して傾斜させると、虚像の輝度が低下する。そこで、虚像の輝度の低下を抑制しつつ、虚像の立体感をより顕著にする方法が求められていた。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたもので、虚像の立体感と虚像の輝度とを両立できるヘッドアップディスプレイ及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によるヘッドアップディスプレイは、光を発する光源と、前記光源からの光を透過させて画像を投影する液晶パネルと、前記液晶パネルを透過した光を屈折させる光学部材と、を備え、前記光源の光の出射面は、前記光学部材を透過した出射光の光軸と第1鋭角で交差し、前記液晶パネルの板面は、前記出射光の光軸と第2鋭角で交差し、前記第2鋭角は、前記第1鋭角よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態によるHUDの構成例を示す模式図である。
図2図2は、画像出力部の構成例と、バックライトと、の配置を示す模式図である。
図3図3は、光学部材の構成例及び光学部材を通過する光の進行方向を示す模式図である。
図4図4は、光学部材及び突出部により生じる光の進行方向の変化の仕組みを示す模式図である。
図5図5は、光学部材の構成例及び光学部材を通過する光の進行方向を示す模式図である。
図6図6は、光学部材及び突出部により生じる光の進行方向の変化の仕組みを示す模式図である。
図7図7は、光学部材及び突出部により生じる光の進行方向の変化の仕組みを示す模式図である。
図8図8は、比較例1と、比較例2と、実施例と、の各々の構成を示す模式図である。
図9図9は、ユーザに視認される虚像を形成する光の輝度と、虚像のコントラストと、を、比較例1と、比較例2と、実施例と、の各々で計測した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
図1は、実施形態によるHUD1の構成例を示す模式図である。HUD1は、画像出力部10と、バックライト50と、凹面鏡60と、を含む。
【0010】
画像出力部10は、後述する液晶パネル20を含み、画像出力部10を透過する光を利用して画像を出力する。バックライト50は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の発光素子を有し、画像出力部10の背面側から光を照射する光源として機能する。
【0011】
凹面鏡60は、バックライト50が照射して画像出力部10を透過した光を反射して、HUD1が出力した画像が投影される投影対象へ当該光を導く。以下、HUD1から出力された光と記載した場合、当該光をさす。図1では、当該投影対象として、フロントガラス70が例示されている。フロントガラス70は、例えば四輪車両のフロントガラスや航空機のフロントガラスであるが、これに限られるものでない。当該投影対象は、HUDが画像を投影可能な構成であればよく、適宜変更可能である。
【0012】
HUD1から出力された光は、フロントガラス70に投影される。図1では、フロントガラス70に投影されるHUD1から出力された光を破線の矢印で模式的に示している。フロントガラス70に投影された当該光に視線を向けたユーザUは、虚像VGを視認する。
【0013】
なお、図1に示す例では、凹面鏡60のように画像出力部10とフロントガラス70との間の光の進行ルート上で当該光を反射する光学部材が1つであることから、画像出力部10の出力による画像が鏡映反転した状態でフロントガラス70に投影されることになる。このため、図1に忠実な態様が採用された場合、画像出力部10の出力は、当該鏡映反転を考慮して制御される。当該鏡映反転を生じさせない方法として、画像出力部10とフロントガラス70との間の光の進行ルート上で当該光を反射する光学部材をさらに1つ追加する方法が挙げられる。以下の説明では、分かりやすさを優先して、当該鏡映反転が生じないものとして説明を行う。
【0014】
図1に示すように、画像出力部10の板面は、画像出力部10から凹面鏡60に向かう光Lcの進行方向に対して傾斜している。また、バックライト50から画像出力部10に向かう光Laの進行方向と、画像出力部10から凹面鏡60に向かう光Lcの進行方向と、は交差している。また、バックライト50の光Laの出射面は、画像出力部10から凹面鏡60に向かう光Lcの進行方向に対して、画像出力部10の板面の傾斜よりもさらに傾斜している。
【0015】
以下、光Lc,Laの進行方向と画像出力部10、バックライト50の各々の傾斜角度と、の関係に関する説明に先立ち、図1に示すように、光Lcの進行方向に沿う方向を出力軸方向Dzとする。また、出力軸方向Dzに直交する一方向であって、画像出力部10の画像出力面及びバックライト50の光Laの出射面が面する方向を直交方向Dxとする。
【0016】
図2は、画像出力部10の構成例と、バックライト50と、の配置を示す模式図である。画像出力部10は、液晶パネル20と、拡散板30と、光学部材40と、を有する。液晶パネル20、拡散板30、光学部材40は、バックライト50側からその反対側(図1に示す凹面鏡60側)に向かって、液晶パネル20、拡散板30、光学部材40の順番で並ぶ。
【0017】
液晶パネル20は、透過型の液晶ディスプレイパネルである。液晶パネル20は、アクティブマトリクス方式で駆動される複数の画素を有する。当該複数の画素は、液晶パネル20の板面に沿って二次元的に配置されている。当該複数の画素が配置された領域を、画像出力領域とする。画像出力領域では、複数の画素が個別に制御されることで、虚像VGとして投影される画像に対応した光の透過パターンが形成される。
【0018】
拡散板30は、入射した光を拡散させつつ透過させる。従って、バックライト50から出射した光Laが液晶パネル20を透過し、液晶パネル20を透過した光(例えば、図3に示す光Lb1)が拡散板30の一面側に入射すると、液晶パネル20を透過した光は、拡散板30によって拡散されて光学部材40側に透過する。
【0019】
光学部材40は、画像出力部10に入射した入射光Laを出射光Lcとして出射する光学素子である。ここで、出射光Lcは、出力軸Vzに沿う。出力軸Vzは、出力軸方向Dzに沿う。一方、入射光Laは、出力軸Vzに交差する方向に向かう。すなわち、光学部材40は、入射光Laとして入射した光の進行方向を出射光Lcとして出射する光の進行方向に屈折させる光学素子である。
【0020】
なお、画像出力部10及びバックライト50の角度ならびに入射光La及び出射光Lcの角度は、出力軸方向Dzに沿う出力軸Vzに対する角度及び出力軸Vzに直交する面Pxyに対する角度として定義可能である。例えば、バックライト50において入射光Laが出射する出射面は、出力軸Vzと鋭角θ1を形成する角度で配置される。図2では、平面Paと出力軸Vzとが形成する鋭角が鋭角θ1であることを示している。平面Paは、バックライト50において入射光Laが出射する出射面に沿う。また、画像出力部10における入射光Laの入射面、すなわち、液晶パネル20における入射光Laの入射面は、出力軸Vzと鋭角θ2を形成する角度で配置される。図2では、平面Pbと出力軸Vzとが形成する鋭角が鋭角θ2であることを示している。平面Pbは、液晶パネル20における入射光Laの入射面に沿う。
【0021】
なお、バックライト50において入射光Laが出射する出射面は、面Pxyと鋭角θaを形成する角度で配置される、ともいえる。図2では、平面Paと面Pxyとが形成する鋭角が鋭角θaであることを示している。また、画像出力部10における入射光Laの入射面、すなわち、液晶パネル20における入射光Laの入射面は、面Pxyと鋭角θbを形成する角度で配置される。図2では、平面Pbと面Pxyとが形成する鋭角が鋭角θbであることを示している。
【0022】
ここで、鋭角θ1は、鋭角θ2よりも大きい。従って、鋭角θaは、鋭角θbよりも小さい。言い換えれば、面Pxyに対する平面Paの勾配角度に比して、面Pxyに対する平面Pbの勾配角度は、より大きい。
【0023】
また、画像出力部10における出射光Lcの出射面、すなわち、光学部材40における出射光Lcの入射面は、面Pxyと鋭角θcを形成する角度で配置される。図2では、平面Pcと面Pxyとが形成する鋭角が鋭角θcであることを示している。平面Pcは、光学部材40における出射光Lcの出射面に沿う。なお、画像出力部10における入射光Laの入射面と画像出力部10における出射光Lcの出射面とは平行である。従って、鋭角θbと、鋭角θcと、は等しい。また、液晶パネル20及び拡散板30の各々の板面の一面側と他面側とは平行である。
【0024】
以下、光学部材40によって、画像出力部10から出射する出射光Lcが出力軸Vzに沿うようになる仕組みについて、図3及び図4を参照して説明する。
【0025】
図3は、光学部材40の構成例及び光学部材40を通過する光の進行方向を示す模式図である。図3に示すように、光学部材40は、バックライト50側に複数の突出部41を有する。複数の突出部41の各々は、出力軸方向Dzと直交方向Dxとに沿う平面を正面視する視点での断面形状が、三角形状である。以下、断面視点と記載した場合、出力軸方向Dzと直交方向Dxとに沿う平面を正面視する視点をさす。
【0026】
断面視点で三角形状である突出部41の底辺は、平面Pdと重なる。平面Pdは、平面Pcと平行な面であって、複数の突出部41の底辺と重なる面である。従って、平面Pdは、平面Pcと同様、面Pxyと鋭角θcを形成する角度の平面である。また、図示しないが、平面Pdは、平面Pcと同様、出力軸Vzと鋭角θ2を形成する角度の平面である。なお、図示しないが、複数の突出部41の1つの頂点同士を結ぶ直線は、平面Pc及び平面Pdと平行である。当該1つの頂点は、平面Pdと対向する位置にある突出部41の頂点である。
【0027】
複数の突出部41は、隙間なく並ぶ。従って、平面Pdと重なる底辺によって結ばれる突出部41の2つの頂点のうち一方は、当該突出部41と隣り合う突出部41において平面Pdと重なる底辺によって結ばれる2つの頂点のうち他方と重なる。言い換えれば、平面Pdに沿う面は、光学部材40のバックライト50側に露出していない。
【0028】
バックライト50から発せられた入射光Laは、透過光Lb1となって突出部41側から光学部材40に進入する。なお、透過光Lb1は、図2に示す画像出力部10において光学部材40よりもバックライト50側に配置された構成(例えば、図2に示す液晶パネル20及び拡散板30)に進入した入射光Laが生じさせる光である。
【0029】
なお、液晶パネル20の板面は、入射した光Laを屈折させるが、液晶パネル20の板面が両面とも同一素材(例えば、ガラス基板)であり、かつ、液晶パネル20に対する光Laの入射面と液晶パネル20からの光の出射面が平行であることから、入射光と出射光の進行角度は実質的に同一である。拡散板30についても、光の入射面と光Lb1の出射面が平行であることから、入射光と出射光の進行角度は実質的に同一である。また、拡散板30による光の拡散は、光の干渉によるモアレを低減させるための光の拡散であり、透過光Lb1として出射される光Lb1の主たる進行方向を根本的に変更するものでない。従って、ここでは、光Lb1の進行方向が、入射光Laと同一であるものとして扱う。
【0030】
突出部41側から光学部材40に進入した透過光Lb1の大部分は、突出部41が生じさせる光の屈折によって、透過光Lb1とは異なる進行方向の屈折光Lb2になる。そして、屈折光Lb2は、光学部材40の凹面鏡60側の面から出射する際に生じる光の屈折によって、出射光Lcとして出射する。なお、透過光Lb1の当該大部分を除いた一部分は、逸脱光Leとして、出射光Lcとは異なる方向に出射される。
【0031】
図4は、光学部材40及び突出部41により生じる光の進行方向の変化の仕組みを示す模式図である。透過光Lb1の大部分は、三角形状の突出部41の傾斜面4aから突出部41内及び光学部材40内に進入する。ここで、傾斜面4aに対する透過光Lb1の進入角度を示す鋭角θ401と、突出部41内に進入した屈折光Lb2の進行方向の傾斜面4aに対する角度を示す鋭角θ402との差は、光学部材40及び突出部41を構成する光学部材の材料と光学部材40外の空気との相対屈折率に応じる。
【0032】
なお、平面Pdと重なる突出部41の仮想底面4cで、光学部材40と突出部41とは連続しているので、仮想底面4cは界面ではない。また、突出部41は、光学部材40と同じ材質で構成される。従って、仮想底面4cで光の屈折は生じない。
【0033】
上述のように、屈折光Lb2として光学部材40に入射した光は、出射光Lcとして光学部材40から出射する。ここで、平面Pcに沿う光学部材40の面に対する屈折光Lb2の進行角度を示す鋭角θ403と、光学部材40外に出射した出射光Lcの進行方向の平面Pcに対する角度を示す鋭角θ404との差は、光学部材40及び突出部41を構成する光学部材の材料と光学部材40外の空気との相対屈折率に応じる。なお、出射光Lcは、出力軸Vzに沿う。従って、平面Pcに対する出射光Lcの角度である鋭角θ404と、平面Pcと出力軸Vzとが形成する角度θ2と、は同一である。言い換えれば、鋭角θ404と、角度θ2と、が同一になるように、光学部材40及び突出部41を構成する光学部材の材料と、鋭角θ403と、が決定されている。また、屈折光Lb2が平面Pcに対して鋭角θ403で進行するよう、屈折光Lb2と傾斜面4aとの鋭角θ402が決定されている。鋭角θ402の決定では、当然、鋭角θ402と鋭角θ401との関係、すなわち、光学部材40及び突出部41を構成する光学部材の材料と光学部材40外の空気との相対屈折率も考慮されている。言い換えれば、傾斜面4aの出力軸Vzに対する角度及び平面Pcの出力軸Vzに対する角度は、図3に示す鋭角θ401と、鋭角θ402と、鋭角θ403と、鋭角θ404との関係が成立するように決定されている。
【0034】
断面形状が三角形状の突出部41を形成する三面のうち傾斜面4aでも仮想底面4cでもない一面4bを、図4に示すように、透過光Lb1の進行方向に沿わせることで、透過光Lb1は、理論上、一面4bから進入することはなくなる。すなわち、透過光Lb1をより確実に傾斜面4aに進入させることができる。一方、透過光Lb1は、突出部41内に進入することで屈折光Lb2になり、進行方向が変わる。このため、屈折光Lb2の一部は、突出部41内で当該一面4bに到達して反射され、図4に示す反射光Lrのように進行方向を変ずる。反射光Lrは、光学部材40から出射することでさらに進行方向を変じ、図3及び図4に示す逸脱光Leのように、出射光Lcとは異なる進行方向の光として出射する。
【0035】
逸脱光Leは、凹面鏡60に到達しないので、虚像VGをユーザUに視認させることに寄与しない。従って、逸脱光Leのような光はより少ないことが望ましい。仮に、仮想底面4cに対する一面4bの鋭角θ405と、仮想底面4cに対する屈折光Lb2の角度と、が同一である場合、理論上、突出部41内で屈折光Lb2が一面4bに到達することはなくなる。一方、この場合、鋭角θ405は、図4に示す場合よりも小さくなる。これによって、透過光Lb1の一部は、外側から一面4bにぶつかることになり、屈折光Lb2とは異なる方向に反射又は屈折されてしまう。従って、図3及び図4を参照して説明した光学部材40及び突出部41で、透過光Lb1の全てを出射光Lcとして出射することはできない。実際には、逸脱光Leのように出射光Lcとは異なる方向に進行する光が最小限となるよう、鋭角θ405が決定される。
【0036】
なお、各々の角度の一例を挙げると、鋭角θa=22.27度(°)、鋭角θb=鋭角θc=45°、鋭角θ1=67.73°、鋭角θ2=鋭角θ404=45°、鋭角θ400=40°、鋭角θ401=72.73°、鋭角θ402=79.49°、鋭角θ403=60.51°、鋭角θ405=63°であるが、これに限られるものでなく、光学部材40及び突出部41を構成する材料等の諸条件に応じて適宜変更される。
【0037】
なお、光学部材40に対する突出部41のような、三角形上の断面形状を有する構造は、逆側、すなわち、画像出力部10における凹面鏡60側(図1参照)に形成されていてもよい。以下、当該構造が画像出力部10における凹面鏡60側に形成されている場合の構成例について、図5を参照して説明する。
【0038】
図5は、光学部材400の構成例及び光学部材400を通過する光の進行方向を示す模式図である。図5に示す光学部材400は、具体的な形状が光学部材40とは異なるが、バックライト50側から進入した光の進行方向を変更して出射光Lcとするという機能的な面では光学部材40と同様である。従って、図2に示す光学部材40に代えて、図5に示す光学部材400を設けてもよい。
【0039】
光学部材400は、バックライト50の反対側、すなわち、凹面鏡60側(図1参照)に複数の突出部410を有する。複数の突出部410の各々は、断面視点での断面形状が、三角形状である。
【0040】
断面視点で三角形状である突出部410の底辺は、平面Pc2と重なる。平面Pc2は、平面Pd2と平行な面であって、複数の突出部410の底辺と重なる面である。平面Pc2及び平面Pd2は、面Pxyと鋭角θkを形成する角度の平面である。平面Pd2は、図5に示すように、突出部410のバックライト50側の面に沿う。平面Pc2は、出力軸Vzと鋭角θ21を形成する角度の直線である。なお、図示しないが、複数の突出部410の頂点同士を結ぶ直線は、平面Pc2及び平面Pd2と平行である。当該頂点は、平面Pd2と対向する側の突出部410の頂点である。
【0041】
複数の突出部410は、隙間なく並ぶ。従って、平面Pc2と重なる底辺によって結ばれる突出部410の2つの頂点のうち一方は、当該突出部410と隣り合う突出部410において平面Pc2と重なる底辺によって結ばれる2つの頂点のうち他方と重なる。言い換えれば、平面Pc2に沿う面は、光学部材400の凹面鏡60側(図1参照)に露出していない。
【0042】
図5に示す例では、図1から図4を参照して説明した入射光Laとは異なる進行方向の入射光La2が発せられる。入射光La及び入射光La2は、バックライト50における光の出射面の法線方向に沿う。従って、図5に示すバックライト50の出射面に沿う平面Pa2は、面Pxyに対して、図3及び図4に示す鋭角θaとは異なる鋭角θhを形成する。言い換えれば、図5に示すバックライト50は、平面Pa2と面Pxyとが鋭角θhを形成する角度で配置される。
【0043】
バックライト50から発せられた入射光La2は、透過光Lb3となって平面Pd2側から光学部材400に進入する。なお、透過光Lb3は、図2に示す画像出力部10において光学部材40よりもバックライト50側に配置された構成(例えば、図2に示す液晶パネル20及び拡散板30)に進入した入射光Laが生じさせる光である。なお、上述したように、図5に示す光学部材400が採用される場合、図2に示す光学部材40は、光学部材400に置換される。従って、入射光La2は、画像出力部10のうち光学部材400よりもバックライト50側に配置された構成に進入することで透過光Lb3となって光学部材400に進入する。
【0044】
光学部材400に進入した透過光Lb3の大部分は、光学部材400が生じさせる光の屈折によって、透過光Lb3とは異なる進行方向の透過光Lb4になる。そして、透過光Lb4は、光学部材400の凹面鏡60側の突出部410から出射する際に生じる光の屈折によって、出射光Lc2として出射する。出射光Lc2は、出射光Lcと同様、進行方向が出力軸Vzに沿う光である。なお、透過光Lb4の当該大部分を除いた一部分は、逸脱光Le2として、出射光Lc2とは異なる方向に出射される。
【0045】
図6は、光学部材400及び突出部410により生じる光の進行方向の変化の仕組みを示す模式図である。透過光Lb3は、平面Pd2側から光学部材400内に進入する。ここで、光学部材400に対する透過光Lb3の進入角度を示す鋭角θ411と、光学部材400内に進入した屈折光Lb4の進行方向の平面Pd2に対する角度を示す鋭角θ412との差は、光学部材400及び突出部410を構成する光学部材の材料と光学部材400外の空気との相対屈折率に応じる。
【0046】
なお、平面Pc2と重なる突出部410の仮想底面413で、光学部材400と突出部410とは連続しているので、仮想底面413は界面ではない。また、突出部410は、光学部材400と同じ材質で構成される。従って、仮想底面413で光の屈折は生じない。
【0047】
光学部材400及び突出部410内を通過した屈折光Lb4は、三角形状の突出部410の傾斜面411から突出部410外に出射することで、出射光Lc2として出射される。ここで、傾斜面411に対する屈折光Lb4の進行角度を示す鋭角θ413と、突出部410外に出射した出射光Lc2の進行方向の傾斜面411に対する角度を示す鋭角θ414との差は、光学部材400及び突出部410を構成する光学部材の材料と光学部材400外の空気との相対屈折率に応じる。
【0048】
なお、上述したように、出射光Lc2は、出力軸Vzに沿う。従って、傾斜面411と平面Pc2とが形成する角度θ410と、傾斜面411に対する出射光Lc2の角度である鋭角θ414と、を足し合わせた角度は、平面Pc2と出力軸Vzとが形成する鋭角θ21と同一である。言い換えれば、傾斜面411と平面Pc2とが形成する角度θ410と鋭角θ414とを足し合わせた角度と、角度θ21と、が同一になるように、光学部材400及び突出部410を構成する光学部材の材料と、鋭角θ410と、が決定されている。また、屈折光Lb4が傾斜面411に対して鋭角θ413で進行するよう、屈折光Lb4と平面Pd2との鋭角θ412が決定されている。鋭角θ412の決定では、当然、鋭角θ412と鋭角θ411との関係、すなわち、光学部材400及び突出部410を構成する光学部材の材料と光学部材400外の空気との相対屈折率も考慮されている。言い換えれば、傾斜面411の出力軸Vzに対する角度及び平面Pd2の出力軸Vzに対する角度は、図6に示す鋭角θ411と、鋭角θ412と、鋭角θ413と、鋭角θ414との関係が成立するように決定されている。
【0049】
なお、各々の角度の一例を挙げると、鋭角θh=24.87°、鋭角θk=45°、鋭角θ11=65.13°、鋭角θ21=45°、鋭角θ410=26°、鋭角θ411=69.87°、鋭角θ412=76.63°、鋭角θ413=50.63°、鋭角θ414=19°、鋭角θ415=90°であるが、これに限られるものでなく、光学部材400及び突出部410を構成する材料等の諸条件に応じて適宜変更される。
【0050】
なお、三角形状の突出部410を形成する三面のうち傾斜面411でも仮想底面413でもない一面412を、図6に示すように、平面Pc2に対して直角θ415にしたとしても、屈折光Lb4の一部が一面412に到達して一面412の内面で反射されることで逸脱光Le2のように進行方向を変ずる。逸脱光Le2は、凹面鏡60に到達しないので、虚像VGをユーザUに視認させることに寄与しない。従って、逸脱光Le2のような光はより少ないことが望ましい。なお、一面412と平面Pc2とが形成する突出部410の内角を直角未満とすると、屈折光Lb4のうち逸脱光Le2になる光はより増加する。
【0051】
そこで、一面412と平面Pc2とが形成する突出部410の内角を、90°を超える鈍角にすることで、逸脱光Le2の発生を抑制できる。以下、突出部410の内角の1つが90°を超える鈍角である突出部410Aを有する光学部材400Aについて、図7を参照して説明する。
【0052】
図7は、光学部材400A及び突出部410Aにより生じる光の進行方向の変化の仕組みを示す模式図である。図7に示す構成が採用される場合、図5に示す光学部材400及び突出部410は、光学部材400A及び突出部410に置換される。また、図7に示す透過光Lb5は、図5を参照して説明した透過光Lb3と同様、図2に示す画像出力部10において光学部材40よりもバックライト50側に配置された構成(例えば、図2に示す液晶パネル20及び拡散板30)に進入した入射光Laが生じさせる光である。なお、図7に示す光学部材400Aが採用される場合、図2に示す光学部材40は、光学部材400Aに置換される。従って、入射光La2は、画像出力部10のうち光学部材400Aよりもバックライト50側に配置された構成に進入することで透過光Lb5となって光学部材400Aに進入する。
【0053】
なお、図7に示す平面Pd3は、出力軸Vzと形成する角度が鋭角θ22になる点を除いて、平面Pd2と同様である。従って、透過光Lb5が進入する光学部材400Aのバックライト50側の面は、平面Pd3に沿う。また、図7に示す平面Pc3は、出力軸Vzと形成する角度が鋭角θ22になる点を除いて、平面Pc2と同様である。従って、断面視点で三角形状である突出部410Aの底辺は、平面Pc3と重なる。平面Pc3は、平面Pd3と平行な面であって、複数の突出部410Aの底辺と重なる面である。なお、図示しないが、複数の突出部410Aの頂点同士を結ぶ直線は、平面Pc3及び平面Pd3と平行である。当該頂点は、平面Pd3と対向する側の突出部410Aの頂点である。
【0054】
図示しないが、複数の突出部410Aは、突出部41及び突出部410と同様、隙間なく並ぶ。従って、平面Pc3と重なる底辺によって結ばれる突出部410Aの2つの頂点のうち一方は、当該突出部410Aと隣り合う突出部410Aにおいて平面Pc3と重なる底辺によって結ばれる2つの頂点のうち他方と重なる。言い換えれば、平面Pc3に沿う面は、光学部材400Aの凹面鏡60側(図1参照)に露出していない。
【0055】
図7に示す光学部材400Aが採用される場合、バックライト50から発せられた入射光La2は、透過光Lb5となって平面Pd3側から光学部材400A内に進入する。ここで、光学部材400Aに対する透過光Lb5の進入角度を示す鋭角θ421と、光学部材400A内に進入した屈折光Lb6の進行方向の平面Pd3に対する角度を示す鋭角θ422との差は、光学部材400A及び突出部410Aを構成する光学部材の材料と光学部材400A外の空気との相対屈折率に応じる。
【0056】
なお、平面Pc3と重なる突出部410Aの仮想底面413Aで、光学部材400Aと突出部410Aとは連続しているので、仮想底面413Aは界面ではない。また、突出部410Aは、光学部材400Aと同じ材質で構成される。従って、仮想底面413Aで光の屈折は生じない。
【0057】
光学部材400A及び突出部410A内を通過した屈折光Lb6は、三角形状の突出部410Aの傾斜面411Aから突出部410A外に出射することで、出射光Lc3として出射される。ここで、傾斜面411Aに対する屈折光Lb6の進行角度を示す鋭角θ423と、突出部410A外に出射した出射光Lc3の進行方向の傾斜面411Aに対する角度を示す鋭角θ424との差は、光学部材400A及び突出部410Aを構成する光学部材の材料と光学部材400A外の空気との相対屈折率に応じる。
【0058】
出射光Lc3は、出射光Lc2と同様、出力軸Vzに沿う。従って、傾斜面411Aと平面Pc3とが形成する角度θ420と、傾斜面411Aに対する出射光Lc3の角度である鋭角θ424と、を足し合わせた角度は、平面Pc3と出力軸Vzとが形成する鋭角θ22と同一である。言い換えれば、傾斜面411Aと平面Pc3とが形成する角度θ420と鋭角θ424とを足し合わせた角度と、角度θ22と、が同一になるように、光学部材400A及び突出部410Aを構成する光学部材の材料と、鋭角θ420と、が決定されている。また、屈折光Lb6が傾斜面411Aに対して鋭角θ423で進行するよう、屈折光Lb6と平面Pd3との鋭角θ422が決定されている。鋭角θ422の決定では、当然、鋭角θ422と鋭角θ421との関係、すなわち、光学部材400A及び突出部410Aを構成する光学部材の材料と光学部材400A外の空気との相対屈折率も考慮されている。言い換えれば、傾斜面411Aの出力軸Vzに対する角度及び平面Pd3の出力軸Vzに対する角度は、図7に示す鋭角θ421と、鋭角θ422と、鋭角θ423と、鋭角θ424との関係が成立するように決定されている。
【0059】
なお、三角形状の突出部410Aを形成する三面のうち傾斜面411Aでも仮想底面413Aでもない一面412Aは、屈折光Lb6に沿う。これによって、理論上、突出部410A内で屈折光Lb6が一面412Aに到達することはなくなる。図7に示すように屈折光Lb6に沿う一面412Aは、突出部410A内で、平面Pc3と90°を超える鈍角θ425を形成する。言い換えれば、突出部410A外で一面412Aと平面Pc3とが形成する角度が鋭角θ426になる。
【0060】
なお、各々の角度の一例を挙げると、鋭角θh=24.87°、鋭角θk=45°、鋭角θ11=65.13°、鋭角θ22=45°、鋭角θ420=26°、鋭角θ421=69.87°、鋭角θ422=76.63°、鋭角θ423=50.63°、鋭角θ424=19°、鈍角425=103.37°であるが、これに限られるものでなく、光学部材400及び突出部410を構成する材料等の諸条件に応じて適宜変更される。
【0061】
図7に示すような突出部410Aを光学部材400Aと一体的に形成しようとする場合、図6を参照して説明したような突出部410のように、内角が90°以下である場合に比して、突出部410Aを形成するための技術的難易度が上がる。これは、一面412Aが平面Pc3に対して逆テーパーの傾きになるからである。これに対し、図6に示すように、一面412が平面Pc2に対して直角であれば、より容易に突出部410を光学部材400と一体的に形成できる。また、図4に示すように、光学部材40内における一面4bと平面Pdとの鋭角θ405が鋭角であれば、より容易に突出部41を光学部材40と一体的に形成できる。
【0062】
次に、本開示の構成が奏する特有の効果について、図8及び図9を参照して説明する。
【0063】
図8は、比較例1と、比較例2と、実施例と、の各々の構成を示す模式図である。比較例1及び比較例2におけるバックライト50は、光の出射面が面Pxyに沿っている。比較例1の液晶パネル20は、面Pxyと鋭角θsを形成する角度で設けられる。比較例2の液晶パネル20は、面Pxyと鋭角θmを形成する角度で設けられる。鋭角θmは、鋭角θsよりも大きい。
【0064】
比較例1及び比較例2では、光学部材40が設けられない。従って、比較例1において液晶パネル20に入射する光Ls1及び液晶パネル20から出射する光Ls2は、出力軸Vzに沿う。また、比較例2において液晶パネル20に入射する光Lm1及び液晶パネル20から出射する光Lm2は、出力軸Vzに沿う。
【0065】
実施例のバックライト50は、図2を参照して説明したように、入射光Laの出射面に沿う平面Paが面Pxyと鋭角θaを形成するよう配置される。従って、実施例では、入射光Laが、出力軸Vzに対して交差する方向に進行する。入射光Laの進行方向は、平面Paの法線方向に沿う。
【0066】
また、実施例では、上述した図2に示す画像出力部10と同様、液晶パネル20に沿って光学部材40が設けられる。図8に示す実施例では、図2における拡散板30が省略されているが、図2に示す画像出力部10と同様、液晶パネル20と光学部材40との間に拡散板30を設けてもよい。また、実施例では、液晶パネル20に対する入射光Laの入射面に沿う平面Pbが面Pxyと鋭角θbを形成するよう設けられる。また、実施例では、光学部材40からの出射光Lcの出射面に沿う平面Pcが面Pxyと鋭角θcを形成するよう設けられる。液晶パネル20に対して入射した入射光Laは、液晶パネル20の光の出射面側に設けられた光学部材40が生じさせる光の屈折によって、出力軸Vzに沿う出射光Lcとして出射する。なお、実施例における鋭角θbは、比較例2の鋭角θmと同じである。
【0067】
比較例1、比較例2及び実施例のように、液晶パネル20を面Pxy及び出力軸Vzに対して交差する方向に設けることで、虚像VGが奥行方向の立体感を有するかのようにユーザUに視認させることができる。また、比較例1に対する比較例2のように、面Pxyに対する液晶パネル20の角度をより大きくすることで、当該立体感をより顕著にできる。
【0068】
一方、比較例1に対する比較例2のように、面Pxyに対する液晶パネル20の角度をより大きくすると、虚像VGを形成する光の輝度及び虚像VGのコントラストが低下する傾向がある。
【0069】
図9は、ユーザUに視認される虚像VGを形成する光の輝度と、虚像VGのコントラストと、を、比較例1と、比較例2と、実施例と、の各々で計測した結果を示す図である。図9の計測結果を示す輝度分布図内における4つの頂点A,B,C,Dを有する矩形内の範囲が、虚像VGとしてユーザUに視認される。
【0070】
図9における比較例1と比較例2との比較で示すように、虚像VGとしてユーザUに視認される矩形内において輝度2800以上の範囲が、比較例2では比較例1よりも小さな範囲になっている。また、虚像VGとしてユーザUに視認される矩形内においてコントラスト960以上の範囲が、比較例2では比較例1よりも小さな範囲になっている。このように、比較例2は、比較例1に比して面Pxyに対する液晶パネル20の角度をより大きくしたことで、虚像VGを形成する光の輝度及び虚像VGのコントラストが低下している。
【0071】
これに対し、実施例では、比較例1及び比較例2と異なる、バックライト50の入射光Laの出射面を面Pxyに対して傾けることで、液晶パネル20の入射光Laの入射面とバックライト50の入射光Laの出射面との間の角度を、鋭角θbから鋭角θaを差し引いた角度にしている。すなわち、実施例では、比較例2における液晶パネル20の入射光Lm1の入射面とバックライト50の入射光Lm1の出射面との間の角度θmよりも、液晶パネル20の入射光Laの入射面とバックライト50の入射光Laの出射面との間の角度を小さくできている。そして、実施例では、光学部材40を設けることで、液晶パネル20に対して出力軸Vzに交差する方向で入射した入射光Laを、出力軸Vzに沿う出射光Lcとして凹面鏡60に出射できる。これによって、実施例では、比較例2に比して、虚像VGとしてユーザUに視認される矩形内における輝度2800以上の範囲をより広範囲にできる。また、実施例では、比較例2に比して、虚像VGとしてユーザUに視認される矩形内におけるコントラスト960以上の範囲をより広範囲にできる。このように、実施例によれば、比較例2と同じ角度で液晶パネル20を設けることで実施例1よりも上述の立体感をより顕著にできると共に、比較例2よりも高輝度かつ高コントラストな虚像VGの出力を実現できる。
【0072】
なお、図2に示す画像出力部10では、拡散板30が液晶パネル20と光学部材40との間に設けられているが、拡散板30は、光学部材40の出射光Lcの出射側に配置されてもよい。すなわち、液晶パネル20と拡散板30との間に光学部材40(又は、光学部材400もしくは光学部材400A)が配置されてもよい。拡散板30が液晶パネル20と光学部材40との間に設けられることで、虚像VGとして視認される光の輝度をより高めやすくなる。
【0073】
なお、一般的なHUDでは、バックライト50と液晶パネル20との間に拡散板30が設けられる。具体的には、バックライト50の光の出射面に拡散板30が設けられる。ただし、実施形態では、上述したように、液晶パネル20と光学部材40との間に拡散板30が設けられ、バックライト50と液晶パネル20との間に拡散板30は設けられない。
【0074】
以上説明したように、本開示によれば、HUD1は、光を発する光源(バックライト50)と、当該光源からの光を透過させて画像を投影する液晶パネル(液晶パネル20)と、当該液晶パネルを透過した光を屈折させる光学部材(光学部材40、光学部材400又は光学部材400A)と、を備える。当該光源の光の出射面は、当該光学部材を透過した出射光の光軸と第1鋭角(鋭角θ1)で交差し、当該液晶パネルの板面は、当該出射光の光軸と第2鋭角(鋭角θ2)で交差し、当該第2鋭角は、当該第1鋭角よりも小さい。
【0075】
これによって、図9を参照して説明したように、液晶パネルの傾斜によって虚像(虚像VG)の立体感を得つつ、光学部材(光学部材40)が設けられない場合に比して虚像VGの光の輝度をより高められる。従って、本開示によれば、虚像の立体感と虚像の輝度とを両立できる。
【0076】
また、液晶パネル(液晶パネル20)と光学部材(光学部材40)との間に設けられて光を拡散させる拡散板(拡散板30)をさらに備える。これによって、虚像VGにモアレが発生することをより確実に抑制できる。
【0077】
また、光学部材(光学部材40)は、液晶パネル(液晶パネル20)と対向する側に、当該液晶パネルの板面に対して傾斜する傾斜面(傾斜面4a)を有する複数の突出部(突出部41)が設けられる。これによって、当該光学部材による光の屈折角度をより大きくできる。従って、虚像VGの立体感をより顕著にできる。
【0078】
また、光学部材(光学部材40)は、複数の突出部(突出部41)の突出方向の反対側が、液晶パネルの板面と平行な面である。これによって、光学部材40による光の屈折の度合いを複数の突出部(突出部41)の傾斜面(傾斜面4a)の角度によって決定できるので、当該光学部材の設計がより容易になる。
【0079】
なお、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本開示によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0080】
1 HUD
20 液晶パネル
30 拡散板
40,400,400A 光学部材
41,410,410A 突出部
4a,411,411A 傾斜面
50 バックライト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9