(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】現状地盤上への構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/28 20060101AFI20241219BHJP
E02D 27/26 20060101ALI20241219BHJP
E02D 17/18 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
E02D27/28
E02D27/26
E02D17/18 Z
(21)【出願番号】P 2021162609
(22)【出願日】2021-10-01
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124316
【氏名又は名称】塩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】永田 鉄也
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/28
E02D 27/26
E02D 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現状地盤の地表面より高所に構築予定の構造物の基礎の形成位置に対応した位置から、前記現状地盤中に水平方向に間隔を置き、上部区間が前記現状地盤上に露出した状態で複数本の杭を打ち込み、
前記現状地盤上に、前記杭の少なくとも頭部の
軸方向の一部が露出する高さまで盛土を構築した後、
前記杭の頭部上に、または頭部の少なくとも一部を包含して前記構造物の前記基礎を構築し、前記基礎上に前記構造物の上部構造を構築することを特徴とする現状地盤上への構造物の構築方法。
【請求項2】
前記杭の前記頭部の周囲に、前記盛土の最上部の天端面より相対的に低い天端面を形成することを特徴とする請求項1に記載の現状地盤上への構造物の構築方法。
【請求項3】
前記複数本の杭の内、平面上、最も外周側に位置する前記杭を前記盛土の天端面の平面上の縁より内周側に位置させることを特徴とする請求項1
、もしくは請求項2に記載の現状地盤上への構造物の構築方法。
【請求項4】
前記基礎の外周側の、前記盛土の天端面上に、前記基礎を外周側から包囲する上部盛土を構築することを特徴とする請求項
3に記載の現状地盤上への構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現状地盤(原地盤)の地表面より高所に構造物を構築する場合に実施される現状地盤上への構造物の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば平坦な地表面の現状地盤上に浄水場のような、構造物(施設)間の高低差(水位差)を利用する複数の構造物を分散させて配置するような場合、各構造物の基礎底面間に高低差を付け、下流に向かって水が流れるように構造物を構築することになる。
【0003】
只、構造物の構築のために地盤を掘削することは、山留め壁と切梁の設置等の多くの仮設工事を伴うため、盛土を構築する場合より経費と工期が掛かる。この点からは、現状地盤上に複数の構造物の領域毎に天端高さの相違する盛土を構築する方が、構造物の構築分を含め、全体的には経費が抑えられながら、工期が短縮化され得るため、合理的な方法と言える。
【0004】
現状地盤上に盛土を構築する方法には、主に地盤面上に盛土を構築した後に盛土天端から現状地盤に到達する杭を打設する方法(特許文献1参照)と、地盤面上から上部区間が突出した状態で杭を地盤中に打設した後に、繊維補強材を利用しながら杭との一体性を確保するように盛土材を敷設する方法(特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-202427号公報(請求項1、請求項3、段落0009~0013、
図1)
【文献】特開2011-26792号公報(請求項3、段落0007、0010~0022、
図1~
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では盛土の構築後に盛土の天端から、盛土構築前の原地盤に到達する地盤改良杭を構築しているため(請求項3、段落0013)、盛土の天端面上に地盤改良機を設置する必要が生じるが、地盤改良機を原地盤上から盛土上に移動させるための作業と撤去に困難を伴う場合がある。
【0007】
例えば地盤改良機の移動用に、原地盤面から盛土天端面までに緩い傾斜のスロープを形成する作業が必要になる等、本来の工事以外の付帯工事に時間と費用を要する。スロープは構造物としての盛土には無関係であるため、利用価値がない限り、盛土の完成後には撤去されることになる。
【0008】
またスロープの形成には、盛土全体の周囲のいずれかの側にスロープを敷設できるだけの余分な敷地を必要とするため、盛土の構築に必要な敷地が限られ、スロープ分の余分な敷地が確保されない場合には、スロープの形成が不可能であるから、盛土上に地盤改良機を設置することが不可能になり、杭を構築することもできない。また構築された盛土の天端面が狭い場合、地盤改良機や杭打機などの重機を載せて取り廻すことが困難な場合も考えられる。
【0009】
更に特許文献1の杭は地盤改良杭であるから、完成する杭の頭部は地表面以下に位置し、特許文献2のように杭の上部区間を地盤面上に突出(露出)させた状態で杭を完成させることができないため、盛土の構築前には、予定された盛土の天端面に頭部が位置する杭を構築することはできない。このことは、杭が現場造成杭(場所打ち杭)の場合にも言える。
【0010】
特許文献2では盛土構築前の原地盤上から杭を打設し、杭の上部区間を地盤面から突出させているため、盛土上から杭を打設する場合のような、杭打ち機の設置に要するスロープの形成に伴う問題は回避されている。
【0011】
但し、特許文献2の杭は原地盤上に形成される、繊維補強材1と盛土材からなる複数層の盛土層2の一体性を確保する目的で全盛土層2に亘り、全盛土層2を貫通するように補強土盛土A内に配置され(段落0002、0007、0010、
図3、
図4)、補強土盛土Aはそれが面する斜面上の盛土の崩落を防止する堰の役目を果たすように斜面の法尻等に設置される(段落0007、
図4)。この関係で、杭の頭部は最終的に最上部の盛土材中に埋設されるため(段落0021、0022、
図4)、杭頭部上に地上構造物を構築することは想定されない。
【0012】
なお、結果だけに着目すれば、特許文献1では地盤改良杭の天端面上に床版を構築していることから(請求項1、段落0009、0013、
図1)、特許文献2に特許文献1を組み合わせれば、特許文献2の杭の天端面上に構造物の基礎を構築することは容易であるようにも見える。
【0013】
しかしながら、特許文献2の発明は盛土の補強構造であって、杭の頭部が最上部の盛土材中に埋設された状態で完成する以上(段落0010、0021、0022)、未完成状態の杭の頭部上に構造物を構築することは想定されていない。
【0014】
本発明は上記背景より、地表面より高所に構造物を構築することを可能にする現状地盤上への構造物の構築方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の現状地盤上への構造物の構築方法は、現状地盤の地表面より高所に構築予定の構造物の基礎の形成位置に対応した位置から、前記現状地盤中に水平方向に間隔を置き、上部区間が前記現状地盤上に露出した状態で複数本の杭を打ち込み、前記現状地盤上に、前記杭の少なくとも頭部の軸方向の一部が露出する高さまで盛土を構築した後、前記杭の頭部上に、または頭部の少なくとも一部を包含して前記構造物の前記基礎を構築し、前記基礎上に前記構造物の上部構造を構築することを構成要件とする。
請求項2に記載の現状地盤上への構造物の構築方法は、請求項1の方法において、前記杭の前記頭部の周囲に、前記盛土の最上部の天端面より相対的に低い天端面を形成することを構成要件とする。
【0016】
「構築予定の構造物の基礎の形成位置に対応した位置」とは、盛土上に構築予定の構造物の基礎の構築位置、または設置位置を指す。「設置」はプレキャストコンクリート部材等の既製品の設置を意味する。「水平方向に間隔を置き」とは、主に杭が水平二方向に間隔を置いて配列することを言うが、必ずしもその必要はなく、構造物の規模や形態に応じては、水平一方向にのみ、杭が間隔を置いて配列すれば済む場合があることを意味する。
【0017】
「上部区間が現状地盤上に露出した状態で」とは、杭の頭部を含む、杭の上部寄りの一部の区間が現状地盤の地盤面から露出(突出)した状態で杭の打ち込み(打設)が完了することを言う。杭は現場造成杭(場所打ち杭)を除くコンクリート杭、鋼杭等の既製杭である。杭の先端(下端)は現状地盤の地中に到達する。支持杭である場合、先端は支持層に到達する。
【0018】
「杭の少なくとも頭部の
軸方向の一部が露出する高さ」とは、
図1-(b)に示すように現状地盤1上に盛土3を
構築したときに、
頭部2a、あるいは頭部2aに相当する部分の一部から全体が露出する
ことを言う。
盛土3を構築した後、基礎41の構築の時点で杭頭部2aの天端面2bのみが盛土3の天端面(地表面)3aに露出する状態になる場合もある。少なくとも
杭2の頭部2aの軸方向の一部が露出することで、特許文献2の杭とは異なり、
図1-(c)に示すように杭頭部2a上に直接、構造物4の基礎41を構築し、杭2に構造物4を直接、支持させることが可能であり、基礎41の構築のために必ずしも杭頭部2a周辺の土を除去する必要がない。
【0019】
「杭の頭部上に、または頭部の少なくとも一部を包含して構造物の基礎を構築し」とは、基礎41を杭2の頭部2aにピン接合するか、半剛接合、または剛接合するか、に応じて頭部2aの露出の程度が異なることを言う。この他、
図2-(c)に示すように基礎41が杭頭部2aの天端面2bに水平方向に滑り自在に載置されることもある。
【0020】
ピン接合、または滑り自在の場合には、
図2-(c)に示すように頭部2aの天端面2b
上に基礎41の接合、または載置(支持)が可能であるため、頭部2a上に基礎41を構築することになる。半剛接合か剛接合の場合には、
図1-(c)に示すように頭部2aの天端面2b寄りの一部を基礎41に取り込むように接合することになるため、頭部2aの一部を包含して基礎41を構築することになる。構造物4の上部構造45は基礎41上に構築される。
【0021】
整理すれば、基礎41を杭頭部2aにピン接合等する場合には、
図2-(b)に示すように
杭頭部2aの天端面2bに盛土3の天端面3aが
揃うように盛土3を構築すればよく、半剛接合、または剛接合する場合には、
図1-(b)に示すように天端面2bを含む杭頭部2aの少なくとも一部が露出するように盛土3を構築すればよい。盛土3の天端面3aは
図1に示す例のように一定(同一高さ)とは限らない。
【0022】
このように杭2の少なくとも頭部2aの軸方向の一部が露出する高さまで盛土3を構築することで、ピン接合か等の接合条件に拘わらず、構造物4の基礎41を杭2に直接、接合するか、支持させることができるため、杭2と基礎41との接合の自由度が高い。言い換えれば、構造物4の規模に応じて基礎41と杭2との接合条件を選択することができるため、複数本の杭2に構造物4を支持させる上で、構造物4の規模(質量)、構造種別の差異へも対応(追従)し易い。
【0023】
本発明では現状地盤1上への盛土3の構築に先立って上部区間2Aが露出する杭2を打ち込むことで、盛土3の構築が先行する特許文献1で必要とされる杭打ち機を盛土3の天端面3a上に設置する作業も撤去(回収)する作業も不要になる。これに伴い、現状地盤1の地表面から盛土天端面3aまでの間へのスロープの形成が不要になり、スロープ形成のための時間と費用が節約される。地盤改良杭の天端面上に床版を構築している特許文献1では、前記のように盛土の構築前には地盤改良杭を構築できないため、工期と工費が犠牲になる不利益がある。
【0024】
また前記のようにスロープの形成には、盛土の周囲にスロープを敷設できるだけの敷地を必要とする関係で、スロープを敷設するための敷地が確保されなければ、スロープの形成と杭打ち機の設置が不可能であり、特許文献1では杭を打ち込むこともできない。それに対し、本発明ではスロープの形成が不要であることで、盛土(盛土地盤)の周囲に余分な敷地が確保されない条件の場所においても本発明を実施し、盛土3の構築とその上への構造物4の構築をすることが可能である。
【0025】
特に複数本の杭2の内、
図1-(b)に示すように平面上、最も外周側に位置する杭2を盛土3の天端面3aの平面上の縁より内周側に位置させれば(請求項
3)、特許文献1のように盛土の縁に沿って杭が配置される場合のように、盛土の縁寄りの一部が崩落した場合に生じる杭の露出と、それによる杭の支持力低下が回避され易くなる。「平面上、」は平面で見たときの意味である。
【0026】
請求項
3では盛土3の縁寄りの一部が崩落した場合も、直ち
には杭2の露出が回避されることで、杭2に支持されている構造物4の安定性が確保され、特許文献1の層厚管理材のような盛土の表面保護材が不要になる。この他、
図1-(c)に示すように構造物4の基礎41を平面上、包囲し、拘束するように上部盛土6を構築することも可能になる(請求項
4)。
【0027】
このように請求項3において、基礎41の外周側の、盛土3の天端面3a上に、基礎41を外周側から包囲する上部盛土6を構築すれば(請求項4)、構造物4の基礎41が外周側から拘束されるため、特に地震力に対する構造物4の安定性はより向上する。
【発明の効果】
【0028】
現状地盤上への盛土の構築に先立って上部区間が露出する杭を現状地盤中に打ち込むため、盛土の構築が先行する場合に必要とされる、盛土の天端面上への杭打ち機の設置と撤去(回収)作業が不要になる。それに伴い、現状地盤の地表面から盛土天端面までの間へのスロープの形成が不要になり、スロープ形成のための時間と費用を節約することができる。スロープの形成が不要であることで、盛土地盤の周囲に余分な敷地が確保されない場所においても盛土の構築とその上への構造物の構築をすることができる。
【0029】
また杭の少なくとも頭部の軸方向の一部が露出する高さまで盛土を構築するため、ピン接合か等の接合条件に拘わらず、構造物の基礎を杭に直接、接合することができる。この結果、構造物の規模に応じて基礎と杭との接合条件を選択することができるため、構造物の規模や構造種別の差異に対応しながら、複数本の杭に構造物を支持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】(a)~(c)は杭の頭部上に頭部を包含するフーチングを形成する場合の、現状地盤中への杭の打ち込みから、杭と盛土上への構造物の構築までの作業手順を示した縦断面図である。
【
図2】(a)~(c)は杭頭部上に基礎としてのマットスラブを構築する場合の、現状地盤中への杭の打ち込みから、杭と盛土上への構造物の構築までの作業手順を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1-(a)~(c)に基づき、現状地盤1中への複数本の杭2の打ち込みから、杭2上への構造物4の構築までの作業手順を説明する。
【0032】
図1-(c)は複数本の杭2の頭部2a上に構造物4を構築した後の、あるいは構造物4を構築中の様子を示すが、盛土3上に構築予定の構造物4の規模(質量)等に応じた本数の杭2を現状地盤1中に、(a)に示すように水平方向に間隔を置き、(a)に示す杭打ち機5を用いて必要深度まで打ち込む。頭部2aを含む杭2の上部区間2Aは現状地盤1の地表面から突出する。杭2はコンクリート杭等の既製杭であり、摩擦杭と支持杭がある。
【0033】
地表面から突出する上部区間2Aの長さは現状地盤1上に構築される盛土3の厚さ(深さ)に相当
するが、
図1-(b)に示すように盛土3の構築時には杭2の頭部2aは盛土3の天端3a上に突出する。上部区間2Aの長さは図2-(b)に示すように
基礎41の構築の時点で盛土3の厚さに一致する
状態になる場合
もある。盛土3の厚さは現状地盤1の地表面から盛土3の天端面3aまでの距離であるが、天端面3aの高さ(レベル)は
図1-(b)に示すように杭2の周囲か否か等により相違することもある。
【0034】
最終的に上部区間2Aの長さが盛土3の厚さに一致する場合、
図2-(b)に示すように盛土3
完成後の基礎41構築の時点で、杭2の頭部2aの天端面2bのみが盛土3の天端面3aに露出し、盛土3の厚さより小さい場合、
図1-(b)に示すように頭部2aの少なくとも軸方向の一部が周辺の盛土3の天端面3aから突出する。
【0035】
杭2の打ち込み後、
図1-(b)に示すように現状地盤1上に、杭2の少なくとも
頭部2aの軸方向の一部が露出する高さまで盛土3を構築する。盛土3の材料は特に問われないが、構築後に複数本の杭2を拘束し、上部区間2Aの振動を抑制する上では、地盤改良土等、セメント系材料を含む材料や流動化土が有効である。
【0036】
図1に示す例では(c)に示すように盛土3の最上部の天端面3a上に基礎梁43の下端が位置し、その位置(レベル)より低い位置にフーチング42の下端が位置するように基礎41を構築する関係で、最上部の天端面3aより低い、フーチング42の下端の位置に、最上部より相対的に低い天端面3aが形成される。
図1の例ではフーチング42の周囲に、フーチング42底面より上方の平面積が大きい、フーチング42構築のための作業空間が確保されているが、この空間にはフーチング42の構築後、埋戻し土や盛土3の材料等が充填される。
【0037】
盛土3の構築後、(c)に示すように杭2に支持させる状態で構造物4の基礎41を構築する。
図1は基礎41として、各杭2の頭部2aを包囲するようにフーチング42(独立基礎)を構築し、フーチング42、42間に基礎梁43を構築、あるいは敷設した場合の基礎41の形成例を示している。この場合、(b)に示すように杭2の天端面2bを含む頭部2aが露出するように盛土3が構築される。フーチング42を構築する場合に、天端面2bのみが露出するように盛土3が一旦、構築された場合には、フーチング42の形成時、頭部2aの周囲の一部の土が除去される。
【0038】
基礎41の構築に続き、基礎41の上に連続して構造物4の本体である上部構造45が構築される。フーチング42が頭部2aを包囲する場合、フーチング42は杭2の頭部2aには半剛接合、または剛接合され、基礎梁43を含めた基礎41と複数本の杭2との一体性は確保され易い。
【0039】
図1-(c)では特に、基礎41を平面上、周囲から拘束し、構造物4の地震力に対する安定性を高める目的で、基礎41の周囲の盛土3上に上部盛土6を構築した場合の例を示している。この上部盛土6の構築を予定し、(b)では平面上、最も外周側に位置する杭2を盛土3の天端面3aの平面上の縁より内周側に位置させ、盛土3の縁と外周側の杭2との間に上部盛土6構築分の距離を確保している。上部盛土6の材料も問われないが、構造物4の安定性を高める上では、上部盛土6にもセメント系材料を含む材料や流動化土を使用することで、上部盛土6が地盤改良されるため、杭2を拘束して水平力(地震等)に抵抗することが可能となる。
【0040】
図2は杭2の天端面2b上に基礎41としてのマットスラブ44を構築した場合の例を示す。この場合、マットスラブ44は複数本の杭2の天端面2b上に載る形になり、
図1の例より相対的に基礎41と複数本の杭2との一体性は低下する関係で、
図2-(a)に示すように
図1の例より多くの杭2を打ち込んでいる。この場合も、頭部2aを含む杭2の上部区間2Aが現状地盤1の地表面から突出した状態で、杭2が打ち込まれる。
【0041】
杭2の打ち込み後、
図1の例と同様、(b)に示すように現状地盤1上に、杭2の少なくとも
頭部2aの軸方向の一部が露出する高さまで盛土3を構築する。
図1の例と同じく、基礎41の周囲の盛土3上に上部盛土6を構築する場合、盛土3の縁と外周側の杭2との間に上部盛土6構築分の距離が確保される。
【0042】
盛土3の構築後、(c)に示すように杭2に支持させる状態で構造物4の基礎41を構築する。
図2の例では杭2の天端面2b上にマットスラブ44を構築するため、
図1の例のように杭2の頭部2aを取り込むようにフーチング42を形成する必要はない。この関係で、
頭部2aの軸方向の一部が露出する高さまで盛土3を構築した
後、
基礎41の構築の時点では杭2の天端面2bのみが露出すればよ
い。
この例でも基礎41としてのマットスラブ44上に連続して上部構造45が構築される。
【0043】
(c)は基礎41としてのマットスラブ44が杭2の天端面2b上に水平方向に滑り自在に載置される場合の例を示している。この例では基礎41の構築の時点では杭2の天端面2bと盛土3の天端面3aが揃えられているため、マットスラブ44は杭2の天端面2bと盛土3の天端面3a上に載置され、両者に滑り自在に支持される。マットスラブ44は両天端面2b、3aに対して滑り自在であっても、一定以上の水平力が構造物4に作用したときにのみ、滑りが生じるように摩擦力等を設定することはできる。
【0044】
この例でも基礎41を平面上、周囲から拘束し、構造物4の地震力に対する安定性を高める上では、基礎41の周囲の盛土3上に上部盛土6が構築される。
【符号の説明】
【0045】
1……現状地盤、
2……杭、2a……頭部、2b……天端面、2A……上部区間、
3……盛土、3a……天端面、
4……構造物、41……基礎、42……フーチング、43……基礎梁、44……マットスラブ、45……上部構造、
5……杭打ち機、
6……上部盛土。