(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】統合された安定性システムを備えた移動式手術台コラム
(51)【国際特許分類】
A61G 13/02 20060101AFI20241219BHJP
A61G 13/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61G13/02
A61G13/00 B
(21)【出願番号】P 2021517364
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2019076064
(87)【国際公開番号】W WO2020064942
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】102018124136.4
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513242656
【氏名又は名称】マッケ・ゲゼルシャフトミットベシュレンクターハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】オベルト,マイク
(72)【発明者】
【氏名】シュタウディンガー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】オルショウスキー,ヤン・ドナート
(72)【発明者】
【氏名】コブス,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ハーシェル,マシュー
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102012001555(DE,A1)
【文献】実開昭60-076923(JP,U)
【文献】米国特許第05564662(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/00 - A61G 13/12
A47B 91/00 - A47B 91/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式手術台コラム(28)であって、
- ベース(2)と
- 前記ベース(2)が凹凸のある床に安定して載置されることを保証する安定性システム(4、5、29)と
を含み、
前記ベース(2)は、前記ベース(2)の4つの異なるコーナーにそれぞれ配置された収納可能で拡張可能な4つのキャスター(6)を含み、
前記安定性システム(4、5、29)は、
- 前記ベース(2)の4つの異なるコーナーにそれぞれ配置された4つの収納可能で拡張可能な直立支持要素(4a~d)と、
- 前記直立支持要素(4a~d)のそれぞれを収納及び拡張するためのアクチュエータ(5)と
を含み、
- 前記安定性システム(4、5、29)は、前記ベースの前記4つの異なるコーナーにそれぞれ配置された4つの支持面(29)を有し、
- 各直立支持要素(4a~d)はそれぞれの支持面(29)に関連付けられており、それに対して収納可能で拡張可能であり、
- 前記安定性システム(4、5、29)は次の3つの異なる動作状態、すなわち、
i) 前記ベース(2)は4つの前記支持面(29)の少なくとも3つにより前記床に載置され、4つの前記直立支持要素(4a~d)は収納される、パーキング状態と、
ii) 前記ベース(2)は4つの前記支持面(29)の少なくとも3つの支持面により前記床に載置され、4つの前記直立支持要素(4a~d)は拡張され、そのためそれらが前記床に接触して、それによって前記ベース(2)がその上に安定して載置されることを保証する、固定静止状態と、
iii) 4つの前記支持面(29)が前記床から上昇させられ、4つの前記直立支持要素(4a~d)が収納され前記床から上昇させられる上昇状態と、 をとることができ、
前記安定性システム(4、5、29)が前記パーキング状態および前記固定静止状態をとるとき、4つの前記キャスター(6)は収納され前記床から上昇させられ、
前記安定性システム(4、5、29)が前記上昇状態をとるとき、4つの前記キャスター(6)は拡張されて前記床に載置される、
前記移動式手術台コラム(28)。
【請求項2】
前記アクチュエータ(5)は、前記固定静止状態において前記各直立支持要素(4a~d)を拡張位置にロックするように構成されている、請求項1に記載の移動式手術台コラム。
【請求項3】
前記アクチュエータ(5)は、前記アクチュエータ(5)がすべての直立支持要素(4a~d)の同時収納及び拡張を可能にするように設定されている、請求項1または2に記載の移動式手術台コラム。
【請求項4】
別々の位置決め部材(30a~d)が、その収納及び拡張を可能にしている各直立支持要素(4a~d)と関連付けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の移動式手術台コラム。
【請求項5】
すべての位置決め部材(30a~d)が制御装置(7)によって共同で中央で制御される、請求項4に記載の移動式手術台コラム。
【請求項6】
前記制御装置(7)が、すべての前記位置決め部材(30a~d)を同時に駆動するための中央駆動ユニット(8)を含む、請求項5に記載の移動式手術台コラム。
【請求項7】
前記制御装置(7)が、前記位置決め部材(30a~d)の同時制御のための単一のスイッチングユニット(9)を含む、請求項5または6のいずれか1項に記載の移動式手術台コラム。
【請求項8】
前記アクチュエータ(5)が油圧アクチュエータであり、前記スイッチングユニット(9)が油圧スイッチングバルブである、請求項7に記載の移動式手術台コラム。
【請求項9】
前記油圧スイッチングバルブが、入口及び出口導管(10)ならびに別々のリリースライン(17)を介して、油圧シリンダとして設計された前記位置決め部材(30a~d)に油圧で接続している、請求項8に記載の移動式手術台コラム。
【請求項10】
前記制御装置(7)が、前記入口及び出口導管(10)に関連付けられており、前記入口及び出口導管に行き渡っている圧力を、すべての位置決め部材(30a~d)を同時に拡張できるようにすることによって所定の低圧に低減するために配置された、単一の中央力制限ユニット(12)をさらに含む、請求項
9に記載の移動式手術台コラム。
【請求項11】
前記位置決め部材(30a~d)が油圧シリンダである、請求項4から10のいずれかに1項に記載の移動式手術台コラム。
【請求項12】
各直立支持要素(4a~d)が、ボールジョイント(14a~d)によって、油圧シリンダ(30a~d)のピストンロッド(13a~d)に接続される、請求項11に記載の移動式手術台コラム。
【請求項13】
各油圧シリンダ(30a~d)は、チェックバルブ(15a~d)を有し、前記チェックバルブ(15a~d)は、前記各油圧シリンダ(30a~d)に関連付けられると共に、前記各油圧シリンダ(30a~d)に直接配置され、
各直立支持要素(4a~d)が前記床に安定して載置されているとき、
各直立支持要素(4a~d)をロックする請求項11または12のいずれか1項に記載の移動式手術台コラム。
【請求項14】
各油圧シリンダ(30a~d)が
各直立支持要素(4a~d)を収納するための戻りばね(16a~d)を有する、請求項11から13のいずれか1項に記載の移動式手術台コラム。
【請求項15】
前記アクチュエータ(5)が、空気圧または電動アクチュエータである、請求項1~7のいずれか1項に記載の移動式手術台コラム。
【請求項16】
すべての直立支持要素(4a~d)が実質的に同じ力によって拡張されるよう、前記アクチュエータ(5)が構成されている、請求項1~15のいずれか1項に記載の移動式手術台コラム。
【請求項17】
前記支持面(29)が前記キャスター(6)から離れている、請求項1~16のいずれか1項に記載の移動式手術台コラム。
【請求項18】
前記安定性システム(4、5、29)は、前記移動式手術台コラム(28)が移動位置にあるときに前記上昇状態にあり、前記移動位置では、前記キャスター(6)が拡張されて、前記移動式手術台コラム(28)は前記床上で移動可能であるように前記キャスター(6)上に載置される、請求項1~17のいずれか1項に記載の移動式手術台コラム。
【請求項19】
前記移動式手術台コラム(28)は、前記安定性システム(4、5、29)が前記パーキング状態であるときに前記床上で移動可能でない、請求項1~18のいずれか1項に記載の移動式手術台コラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手術台で使用される、統合された安定性システムを備えた移動式手術台コラムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動式手術台コラムは、従来技術において公知である。それらは通常、コラムシャフト及び手術台コラムを動かすためのキャスター付きのベースを含み、それにより、それをさらなる補助手段なしで患者を輸送するのに適したものにする。
【0003】
外科的処置の間、床面上の手術台コラムの安全な直立位置を保証する必要がある。一部の手術台コラムでは、これはキャスターをロックすることによって行われるが、他の手術台コラムでは、キャスターをベースに収納することができる。したがって、ベースのシャーシは、床に載置されるように下げることができる。輸送の目的で、シャーシと床の間の接触を取り除くことができる。
【0004】
図1及び2は、そのような移動式手術台コラム7’及びそれに接続された患者支持面4’を備えた手術台1’を示す。
【0005】
手術台コラム7’は、手術室の床に台コラム7’を配置するためのベース2’と、ベース2’上に垂直に配置されたコラムシャフト3’とを含む。ベース2’には、パッシブな収納可能で拡張可能なキャスター8’がある(
図2)。コラムシャフト3’は、ベース2’が異なる長さの2つのセクション、すなわち短いベースセクション2’a及び長方形のベースセクション2’bに分割され得るようにベース2’上に配置される(
図1及び2)。
【0006】
この従来技術の手術台コラム7’では、台コラム7’が、キャスター8’の収納後にベース2’の底面に配置された3つの直立支持要素5’a~cのみに載置されるという点で、凹凸のある床上の安定したベースが実現される。したがって、2つの直立支持要素5’a及び5’bは、短いベースセクション2’aの2つの異なるコーナーに配置され、それによって、第3の直立支持要素5’cは、長いベースセクション2’bの2つのコーナーの間の中央に配置される(
図2を参照)。直立支持要素5’a~cのそのような配置は、支持三角形Dをもたらす。
【0007】
手術台1’の重心が取り付けられた支持三角形Dを離れる場合に手術台コラム7’が転倒するのを防ぐために、追加のベースバッファ6’a~bが長方形のベースセクション2’bの2つのコーナーに配置される。支持バッファ6’a~bは、手術台コラム7’をわずかに傾けた後、床に接触する。
【0008】
ここでの欠点は、手術台コラム7’がこのように転倒することはないが、重心のシフトが手術台コラム7’の動きをまだ引き起こす可能性があることである。そのような動きは、患者支持面4’の変位をもたらし、これは、外科的処置中の患者に重大なリスクを引き起こす。
【0009】
米国特許第5,564,662号は、移動式手術台10のベース12の油圧安定性システムを開示している。これは、それぞれ3つの一次ロック要素30、32、34及び2つの二次ロック要素56、58を有し、それぞれが油圧シリンダ38、40、42、60、62を備える、いわゆるフロアロックシステムを記載している。凹凸のある表面上で台ベース12を安定させるために、最初に、大きな油圧が、一次ロック要素30、32、34の3つの油圧シリンダ38、40、42に加えられる。その結果、それらは足12から拡張し、それにより、足12の収納不可能なキャスター26、28を床から持ち上げる。ベース12内の一次油圧シリンダ38、40、42の配置は、上記の直立支持要素5’a~cの支持三角形Dに対応する支持三角形を作成する。二次ロック要素56、58の油圧シリンダ60、62は、手術台10にいかなる持ち上げ力も提供せず、代わりに、それらは、支持三角形をさらに安定させ、したがって手術台10をシフトから保護するための傾斜防止機能を有する。
【0010】
しかしながら、米国特許第5,564,662号の床ロックシステムが油圧要素しか含まず、油圧の誤動作により、手術中にすべての油圧シリンダ38、40、42、60、62が不注意に足12に収納される可能性があることは問題である。そのような誤動作は、手術台10の全部または一部を力で強くたるませたり傾けたりする原因となり、したがって、外科手術中に患者に傷害を与える危険性をもたらす。さらに、この場合、手術台10は、再びロック解除されたキャスター26、28上に載置され、それが転がされることにもなる。二次ロック要素56、58のみが故障した場合でも、重心のシフトは、台10をシフトさせる可能性があり、これは、次に、患者のリスクを引き起こす。
【0011】
手術台コラムのための別の一般的な安定性システムは、STERIS(登録商標)社によって提供されている。この会社は、いわゆるセルフレベリングフロアロックを備えた移動式手術台コラムを販売している。このシステムは、「Steris(登録商標)4085-General Surgical Table-Advancing Care Through Practical Innovation」というタイトルのパンフレットに記載されている。このパンフレットは、2016年にSTERIS(登録商標)によって発行され、STERIS(登録商標)によって販売されている手術台4085について説明している。
パンフレットは、STERIS(登録商標)ホームページ(https://www.steris-healthcare.com/medias/docs/9deef3481749665c78aa9b41446c6478a57a2c44.pdf)からダウンロードでき、本出願に同封されている。
【0012】
STERIS手術台コラムは、ベースとその上に配置されたコラムシャフトを含んでいる。ベースには4つのパッシブキャスターが装備されている。これらは、ベースの底面から一定の距離で突き出ている。これは、キャスターをベースに収納できないことを意味する。さらに、STERISベースは、ベースの4つのコーナーにある4つの油圧シリンダーを介して高さを調整できる。
【0013】
手術台コラムを所望の位置に移動すると、油圧シリンダーが拡張し、キャスターが床から持ち上げられる。これにより、手術台コラムの安定した位置が保証される。油圧シリンダーは、凹凸のある床を補うように拡張する。
【0014】
この安定性システムの欠点は、油圧が突然低下した場合に、油圧シリンダーラムが意図せずに収納する可能性があることである。これにより、手術台コラムのたるみが発生し、これは、特に外科手術中に発生してはならないことである。さらに、手術台コラムはそれから再びキャスターに載置されて転がされ、これは、外科手術中のさらなるリスクである。
【0015】
文献DE 10 2010 051 126 A1は、手術台のモバイルベース10について説明しており、
図1を参照されたい。このベース10は、中央支持体12および2つの足拡張部14および16を含む。パラグラフ3によれば、問題は、手術台のぐらつきのない位置決めを可能にすることにある。
【0016】
提案される必要なソリューションが
図4に示されている。対向するキャスター18、20は、リンケージ32およびスピンドルドライブ30を介して連結方式で互いに接続されている。各キャスター18、20は、ピボットプレート22、24、26、28に取り付けられている。この機械システムは、手術台を配置するために、一対のキャスターのうちの2つのキャスター18、20を折り込み、折り畳むことを可能にする。
【0017】
対応する運動学を
図3Aおよび3Cに示す。
図3Aは、キャスター18、20が拡張されている駆動位置を示している。4つのキャスター18、20は床Bに載置され、手術台の総重量を支える。
【0018】
手術台が所望の場所に移動されたとき、
図3Bに示されるように、キャスター18、20を折りたたむことによって、手術台を立位に転置することができる。立位では、すべてのキャスター18、20が床Bから持ち上げられる。手術台は4つの支持体40、42に載置されている。
【0019】
その後、キャスター18、20は、
図3Cに示されるように、それらが床Bと接触するように、再び下げられる。キャスター18、20を床Bに配置することにより、立位の間の手術台の傾きを防止する。
【0020】
ここでの欠点は、適用されたキャスター18、20によって提供される支持効果が手術台の端では実際には効果的ではないため、重量が手術中に移動した場合、外側支持体40、42が床に到達して、したがって動きを妨げる前に、手術台が特定の状況で依然として傾斜する可能性があることである。
【発明の概要】
【0021】
本開示の目的は、任意の表面、特に凹凸のある表面上で安定した位置を保証するための安定性システムを有し、そして誤動作の場合でも、患者への危険が排除されるように安定した位置を保証し続ける、移動式手術台コラムを提供することである。
【0022】
本開示のさらなる目的は、使用中に考えられるすべての重心のシフトがあっても、安定した静止した直立位置が常に提供される手術台コラムを提供することである。
【0023】
本開示によれば、これらの目的は、以下の特徴、すなわち、
- ベースと、
- 凹凸のある表面上でベースの安定した位置を保証するための安定性システムと
のうちの1つまたは複数を有する移動式手術台コラムで達成され、この安定性システムは、
- ベースの4つの異なるコーナーに配置された4つの収納可能で拡張可能な直立支持要素と、
- 4つの直立支持要素のそれぞれを収納及び拡張するためのアクチュエータと
を含み、以下を特徴とするものであり、
- 安定性システムが、ベースの4つの異なるコーナーに配置された4つの支持面を有し、
- 各直立支持要素は支持面に関連付けられており、それに対して収納及び拡張することができ、
- 安定性システムは、少なくとも次の2つの異なる動作状態、すなわち、
(i)ベースの支持面の少なくとも3つが床に載置され、表面要素が収納されているパーキング状態と、
(ii)ベースが、その支持面の少なくとも3つにより床に着座し、直立支持要素は拡張され、そのためそれらが床に接触して、それによってベースが床に安定して載置されることを保証する、固定静止状態と
を前提とすることができる。
【0024】
固定静止状態が今説明した構成になるように安定性システムを設計することにより、以下が達成される。
- 床に接触する4つの直立支持要素は、ベースの底面全体を実質的に覆う四角形にまたがる。これにより、重心のシフトによって移動式手術台コラムがぐらついたり傾いたりするのを防ぐ。
- 油圧の誤動作により直立支持要素が収納された場合、ベースは少なくとも3つの支持面に載置され続ける。これはさらに、第4の支持面が表面に接触していない場合に起こり得る傾斜を除いて、手術台コラムの信頼できる直立位置を保証する。
【0025】
アクチュエータは、すべての直立支持要素の同時収納及び伸長を可能にするように設計することができる。好ましくは、それは、床に安定して載置されると、各直立支持要素をその拡張位置にロックすることができる。アクチュエータは、油圧、空気圧、または電動アクチュエータであり得る。アクチュエータはまた、すべての直立支持要素が実質的に同じ力を使用して拡張されるように配置され得る。
【0026】
別々の位置決め部材を各直立支持要素に割り当てることができ、その収納及び拡張を提供する。
【0027】
位置決め部材は、制御装置によって共同で中央で制御することができる。制御装置は、すべての位置決め部材を同時に駆動するための中央駆動ユニットを含むことができる。中央駆動ユニットは、油圧ポンプとすることができる。
【0028】
制御装置は、好ましくは位置決め部材の同時制御のための単一の中央スイッチングユニットをさらに含み得る。スイッチングユニットは、油圧スイッチングバルブ、特に5/3ウェイバルブとすることができる。さらに、油圧スイッチングバルブは、入口及び出口導管ならびに別々のリリースラインを介して、油圧シリンダーとして設計された位置決め部材に油圧で接続することができる。
【0029】
制御装置は、入口及び出口導管に関連付けられており、前記入口及び出口導管に行き渡っている圧力を、すべての位置決め部材を同時に拡張できるようにすることによって所定の低圧に低減するように配置された、減圧バルブなどの単一の中央力制限ユニットをさらに含むことができる。位置決め部材は、油圧シリンダとして設計することができる。
【0030】
各直立支持要素は、好ましくはボールジョイントによって、その油圧シリンダのピストンロッドに取り付けることができる。
【0031】
各油圧シリンダーには、床に安定して載置されているときに、それぞれの直立支持要素をロックする目的で、チェックバルブが直接取り付けられている場合がある。
【0032】
各油圧シリンダは、それぞれの直立支持要素を収納するための戻りばねを有し得る。
【0033】
接触要素に加えて、ベースは、床上で手術台コラムを動かすためのキャスターを含み得る。
【0034】
さらに、本開示は、移動式手術台、移動式台、手術台と組み合わせて使用することができる移動式台コラム、機器を含む移動式デバイス、ならびに患者の輸送及び外科的処置におけるそれらの使用に関する。本開示はまた、手術台を操作、移動、及び安定化するための方法に関する。本開示はさらに、人体または非人体(医療訓練マネキンなど)を動かして支持するための台及び方法を含む。
【0035】
本開示の例示的な実施形態は、図面を参照して以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】患者支持面と、ベース及びコラムシャフトを備えた移動式手術台コラムとを含む既知の手術台の側面図である。
【
図2】直立支持要素及び接触バッファを含む、ベースの底面に配置された安定性システムを備えた
図1の手術台の斜視図である。
【
図3】本開示による移動式手術台コラムを備えた手術台とそのベースの斜視図である。
【
図4】
図3の手術台の下からの斜視図であり、本開示に従ってベースの底面に配置されている安定性システムの部品を示している。
【
図5】
図3及び
図4の手術台の上から見た斜視図であり、ベースに配置された安定性システムアクチュエータのいくつかの要素を備えたベース用のカバーなしの状態である。
【
図6】本開示による安定性システムの油圧回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の説明では、本開示の例示的な実施形態は、図面を参照して説明される。図面は必ずしも原寸に比例するものではなく、単に関連する特徴を概略的に説明することを目的としている。
【0038】
以下に説明する特徴及び構成要素のそれぞれは、それらが個々の実施形態に関連して説明されたかどうかに関係なく、互いに組み合わせることができることに留意されたい。それぞれの実施形態における特徴の組み合わせは、特許請求されるデバイスの基本的な構造及び動作の単なる例示である。
【0039】
図3は、外科的処置中に患者を支持するために、及び前記患者を輸送するために使用することができる手術台1を示す。手術台1は、本開示による移動式手術台コラム28と、手術台コラム28の上部に配置された患者支持面Pの中央セクション4とを含む。
【0040】
下から上に、手術台コラム28は、手術台コラム28を表面上に配置するためのベース2と、患者支持面Pが上にしっかりと接続されているコラムシャフト3とを備える。しかしながら、手術台コラム28の他の実施形態では、患者支持領域Pは、コラムシャフト3に取り外し可能に取り付けられ得る。
【0041】
コラムシャフト3は、高さ調節可能であるように設計されており、内部の高さ調節機構を汚染から保護するハウジングGを有する。
【0042】
患者支持領域Pの中央セクション4は、様々な支持領域セクションを取り付けることにより、必要に応じて拡張することができる。したがって、中央セクション4は、さらなる支持領域セクションとの取り外し可能な接続のためのインタフェースSTを含む(
図3)。例えば、患者支持面Pは、示された中央セクション4、ならびに中央セクション4に取り付けられた頭部セクション、後部セクション、及び足部セクションを含み得る。以下では、患者支持セクションPの中央セクション4の頭側KSと、足側FSの間を区別している。頭側KSは、外科手術中に患者の頭が置かれる側である。足側FSは、外科手術中に患者の足が置かれる側である。
【0043】
ベース2は、ケース20と、その上に配置された取り外し可能な2部構成のカバー21a~bとを備える(
図3)。ケース20は、2つの長さA及び2つの幅Bを有する実質的に長方形である。ケース20の長さAは、ベース2の中心Mに向かって周辺領域のそのコーナーの外側に凹状に湾曲している(
図4を参照)。
【0044】
コラムシャフト3は、ベース2の長手方向に沿って、ベース2の中心に対してオフセットして配置されている(
図3、4)。したがって、ベース2は、ベース側幅2a及びベース側長さ2bを有し、ベース側幅2aは、中央セクション4の顔側KSに関連付けられ、ベース側長さ2bは、中央セクション4の足側FSに対応する。
【0045】
図4では、ベース2が斜視底面図で示されている。ケース20のベースプレート18がそこに示され、カラー19を通って垂直上向きに、すなわち患者支持面Pの方向に継続している。底部プレート18は、4つの底部接触要素33によって縁取られている。
【0046】
さらに、
図4に示されるベース2は、表面上で手術台コラム28を移動させるための4つの収納可能で拡張可能なパッシブキャスター6を含む。キャスター6は、ベースプレート18の円形のくぼみ内のベース2の4つの異なるコーナーに配置されている。キャスター6が併せてまたがる表面積は、直立支持要素4a~dが併せてまたがる表面積よりも小さいのが好ましい。
図4のようにベース2を下から見ると、キャスター6は、直立支持要素4a~dよりもさらに内側に配置されており、または逆に考えれば、直立支持要素4a~dは、キャスター6よりもベース2の外側にあることが分かる。手術台コラム28を表面に配置するために、キャスター6は、ベース2のケース20に収納される。拡張可能な駆動ローラー6’も示されている。それはまた、収納したり拡張したりすることができ、手術台コラム28を動かすときに、外科スタッフに電動サポートを提供する。
【0047】
本開示による手術台コラム28は、ベース2が任意の表面、特に凹凸のある表面に安定して配置されることを保証するために、安定性システム4、5、29を含む(
図4を参照)。安定性システム4、5、29は、4つの支持面29、4つの直立支持要素4a~d、及びアクチュエータ5を有する(
図6に関連して
図4を参照のこと)。
【0048】
支持面29は、底部接触要素33(
図4)の底部のベース2の4つのコーナーに位置している。
図4に示される支持面29は、安定性システム4、5、29の追加の安定要素29a、29bとして設計されており、手術台コラム28が下に置かれると、表面と接触する。各支持面29は、2つの離間した補助安定要素29a、29bを含み、これらは、例えば、円形のバッファまたはブロックとして形成することができる。
【0049】
本安定性システム4、5、29は、4つの支持面29のそれぞれが、この支持面29に関して垂直に移動できる2つの追加の安定要素29a、29bの間に配置されたそれぞれの直立支持要素4a~dに関連付けられるように設計されている。
【0050】
4つの直立支持要素4a~dは、主要な安定要素として設計されている。
図4に示されるように、それらは、例えば、支持プレートまたはディスクの形態であり得る。直立支持要素4a~dは、ベース2のケース20の場合にこの目的のために設けられた垂直円筒形穴C内に収納することができ、そこからそれらを再拡張することができる。拡張されると、それらは一緒に床面上のベース2の長方形の支持面Rにまたがる(
図4)。
【0051】
図4に示すように、直立支持要素4a~dは、直立支持要素33内に直接配置することができる。しかしながら、代替の実施形態では、直立支持要素4a~dは、4つの下部接触要素33に隣接して配置することができる。実施形態に応じて、直立支持要素4a~dは、支持面29内に配置され得る。4つの底部接触要素33、支持面29、及び直立支持要素4a~dは、周辺に、例えば、4つのコーナー及び/または底面の外縁領域、例えば、ベースプレート18、または移動式ベース2の他の位置に配置され得る。
図4に示される底部接触要素33は、L字型である。支持面29は円形である。しかしながら、本開示のさらなる実施形態では、底部接触要素33及び支持面29は、それらの機能を損なうことのない異なる形状を有し得る。例えば、角のある形状から逸脱して、下部接触要素33は、正方形、長方形、円、または他の基本的な形状の形態をとることができる。支持面29は、ベース2の独立した構成要素である底部接触要素33の一部として形成することができる。あるいは、支持面29は、表面に面して一様にそれに接触する、ベース2の底面上の単純な表面であり得る。
【0052】
安定性システム4、5、29は、アクチュエータ5をさらに含み、それにより、直立支持要素4a~dは、円筒形の穴Cから拡張され、それらの中に再び収納され得る。アクチュエータは、ケース20によって形成されたベース2の2つの部分からなるレセプタクル22に配置されている(
図5を参照)。
【0053】
アクチュエータ5は、例えば、油圧、空気圧、または電動アクチュエータとして設計することができる。これは、各直立支持要素4a~dをその拡張位置にロックするように構成されている。それは、表面までの距離に関係なく、力制御された直立支持要素4a~dが、手術台コラム28が安定した位置に来るまで拡張し続けることを確実にする。この場合、アクチュエータ5は、すべての直立支持要素4a~dが実質的に同じ力で拡張することができるように配置されている。
【0054】
手術台コラム28は、ユーザコマンドによって、移動位置から静止位置に、またはその逆に移動することができる。移動位置では、キャスター6が拡張され、手術台コラム28がキャスター6上に載置され、それらが床上で移動できるようになっている。静止位置では、キャスター6が収納され、安定性システム4、5、29が作動され、その結果、そのベース2を備えた手術台コラムが床にしっかりと安定して載置される。
【0055】
本発明の手術台コラム28の安定性システム4、5、29は、3つの異なる動作状態、すなわち、上昇状態及び2つのパーキング状態を前提とすることができる。
【0056】
手術台コラム28が移動位置にあるときに発生する上昇状態では、直立支持要素4a~dが収納される。直立支持要素4a~d及びベース2の4つの支持面29の両方が床から持ち上げられ、それらの上昇状態になり、すなわち、それらはもはや床と接触していない。
【0057】
下降位置の動作状態には、完璧な動作中に短時間だけ続く遷移状態、いわゆるパーキング状態、及び固定静止状態と呼ばれるターゲット状態が含まれる。これらの2つの状態は、キャスター6が収納され、ベース2が表面上に下げられ、次にそこに載置されることを特徴とする。
【0058】
パーキング状態では、ベース2は、支持面29の少なくとも3つにより表面に着座し、直立支持要素4a~dは収納される。
【0059】
固定静止状態では、ベース2は、支持面29の少なくとも3つにより床に載置されているが、直立支持要素4a~dは、それらも床に接触するように拡張され、ベース2が安全に床に載置されることを保証する。
【0060】
図6は、アクチュエータ5及び直立支持要素4a~d(支持面29なし)を含む安定性システム4、5、29の油圧回路図を表す。アクチュエータ5の構成要素は、分割線によって直立支持要素4a~dから分離されている。
【0061】
アクチュエータ5は、分割線によって画定される多角形内に配置されたすべての構成要素を含む。アクチュエータ5は、4つの位置決め部材30a~dを含み、これらは、油圧ラインシステム31の2つの油圧ライン、すなわち、入口及び出口導管10ならびにリリースライン17によって制御装置7のスイッチングユニット9に接続されている(
図6)。
【0062】
図6は、
図4のベース2の各直立支持要素4a~dが別々の位置決め部材30a~dに関連付けられていることを示しており、これにより、直立支持要素4a~dを収納及び拡張させることができる。本安定性システム4、5、29の一実施形態では、単動油圧シリンダの形態の4つの位置決め部材30a~dを使用して、4つの直立支持要素4a~dのそれぞれを力制御する(
図6を参照)。
【0063】
この目的のために、各直立支持要素4a~dは、それに関連する油圧シリンダ30a~dのピストンロッド13a~dに取り付けられている(
図6)。いくつかの実施形態では、直立支持要素4a~dは、各直立支持要素4a~dの支持面が床の傾斜に自動的に調整されるように、ピストンロッド13a~dに枢動可能に接続され得る。この接続は、例えば、ボールジョイント14a~dまたはスイベルジョイントによって達成することができる。
図6に示されるボールジョイント14a~dは、直立支持要素4a~dが凹凸のある表面上でさえ平らに置かれ得ることを保証する。しかしながら、安定性システム4、5、29の他の実施形態では、直立支持要素4a~dは、他の方法で油圧シリンダ30a~dに接続され得る。
【0064】
ピストンロッド13a~dは、油圧によって油圧シリンダ30a~dから拡張されている。
【0065】
油圧シリンダ30a~dのそれぞれはまた、その内部に配置された戻りばね16a~dを備える(
図6)。戻りばね16a~dは、ピストンロッドの収納を可能にし、したがって、それぞれの直立支持要素4a~dを収納させるのに役立つ。
【0066】
さらに、各油圧シリンダ30a~dは、その上部セクションに配置された関連するチェックバルブ15a~dを有し、このチェックバルブは、それぞれの直立支持要素4a~dを表面上の拡張された目標位置にロックするために提供される(
図6)。チェックバルブ15a~dはバネ式であり、一方向に流れるオイルを遮断すると同時に、反対方向に自由に油が流れることも可能にするために使用される。この場合、チェックバルブ15a~dはリリースすることができ、これはリリースライン17によって可能であるが、代替手段も可能である。
【0067】
4つの油圧シリンダ30a~dはすべて、ベース2のケース20に配置された制御装置7によって共同で中央で制御される(
図5)。制御装置は、ベース2の底部プレート18上に配置されている。
【0068】
本発明の例示的実施形態の位置決め部材30a~dは、油圧運動及びロックシステムに基づく。しかしながら、本開示による追加の安定性システムは、空気圧または電動の位置決め部材、または電気モーター及び/または他の電気部品によって移動される位置決め部材などの他のタイプの位置決め部材30を使用することができる。
【0069】
チェックバルブ15a~d、電子制御バルブ、または位置決め部材内に油圧または空気圧流体を保持する他の配置を使用して、油圧または空気圧位置決め部材をロック及びロック解除することができる。これは、位置決め部材30が圧力下で拡張位置に維持されることを保証することになる。油圧システムを使用する場合、さまざまな既知の油圧作動油を使用できる。
【0070】
制御装置7は、中央駆動ユニット8、スイッチングユニット9、オイルタンク26、力制限ユニット12、モーター25、ならびに油圧ラインシステム31の一部、すなわちポンプライン32、出口ライン24、二重タンクライン27a、27b、そして入口及び出口導管10ならびにリリースライン17のセクションを備える。
【0071】
図6は、駆動ユニット8が、ポンプライン32を介してオイルタンク26に、ならびに出口ライン24を介してスイッチングユニット9の入力側に油圧で接続されていることを示している。入力側では、スイッチングユニット9は、さらに、二重タンクライン27a、bを介してオイルタンク26に油圧で接続されている。スイッチングユニット9は、出力側で、入口及び出口導管10ならびにリリースライン17を介して、油圧シリンダ30a~dのチェックバルブ15a~dに接続されている。
【0072】
図6に示される駆動ユニット8は、例えば、油圧ポンプとして設計されている。油圧ポンプ8は、モーター25(例えば、電気モーター)に結合されている。これは、手術台コラム28のすべての油圧に必要な油圧を生成する。したがって、それは、すべての油圧シリンダ30a~dを同時に駆動するために単に使用されるのではない。それは、例えば、140バールの出口ライン24に油圧P1(オイルプレッシャとも呼ばれる)を生成し、油圧シリンダ30a~dを拡張するために提供される最大油圧P2よりも何倍も大きい。
【0073】
制御装置7のスイッチングユニット9は、オイルタンク26から入口及び出口導管10、またはリリースライン17のいずれかにオイルの流れを割り当てるために使用される。スイッチングユニット9は、好ましくは、単一の油圧スイッチングバルブ、例えば5/3ウェイバルブの形態である。
【0074】
図6に示す5/3ウェイバルブ9は、5つのポートT1からT5を有する電磁バルブであり、3つのスイッチング位置S1からS3を前提とすることができる。第1、第3及び第5のポートT1、T3及びT5はバルブ9の入力側Iに配置され、第2及び第4のポートT2、T4はバルブ9の出力側Oに配置される。出口ライン24はここで第1のポートT1に接続され、リリースライン17は第2のポートT2に接続され、タンクライン27bは第3のポートT3に接続され、供給及び排出ライン10は第4のポートT4に接続され、タンクライン27aは第5のポートT5に接続されている。
【0075】
図6の左側に示す5/3ウェイバルブ9の初期スイッチング状態S1では、第1のポートT1が第4のポートT4に接続され、第2のポートT2が第3のポートT3に接続されてり、第5のポートT5はブラインド、つまり閉じている。したがって、出口ライン24は、入口及び出口導管10に油圧で接続され、リリースライン17は、タンクライン27bに油圧で接続されている。タンクライン27aは閉じたままである。
【0076】
図6に示す、5/3ウェイバルブ9の第2のスイッチング状態S2(中間状態)では、第4のポートT4が第5のポートT5に接続され、その結果入口及び出口導管10がタンクライン27aに油圧で接続されている。さらに、第2のポートT2は、オイルタンク26につながるタンクライン27bにリリースライン17が接続されるように、第3のポートT3に接続されている。第1のポートT1は、出口ライン24とともに閉じたままである。
【0077】
5/3ウェイバルブ9はさらに、第3のスイッチング状態S3を有し、その中で第4のポートT4は第5のポートT5に接続され、第1のポートT1は第2のポートT2に接続されている一方で、第3のポートT3はブラインド接続されている。この状態では、入口及び出口導管10は、油圧オイルがオイルタンク26に排出できるように、タンクライン27aに油圧で接続されている。出口ライン24は、リリースライン17に油圧で接続されている。タンクライン27bは閉じている。
【0078】
油圧ポンプ8によって生成された油圧P1は、出口ライン24を介して5/3ウェイバルブ9に導かれ、そこでブラインドスイッチされた第1の接続T1によって中間状態S2で遮断されるか、または、油圧シリンダ30a~dを拡張するために入口及び出口導管10に(初期スイッチング状態S1)、もしくは油圧シリンダ30a~dを収納させるためにリリースライン17に(第3のスイッチング状態S3)、渡され得る。
【0079】
制御装置7は、減圧バルブなどの力制限ユニット12をさらに含む。減圧バルブ12は、5/3ウェイバルブ9とチェックバルブ15a~dとの間の入口及び出口導管10に安全バルブとして配置されている(
図6)。減圧バルブ12は、分岐Zを介してタンクライン27aにさらに接続されている。過圧の場合、すなわち、入口及び出口導管10内の油圧が意図された最大低圧P2、例えば、20バールを超える場合、減圧バルブ12は、分岐Zを開く。したがって、圧力が再び20バールを下回るまで、油圧油はタンク26に戻され、その際、分岐Zが再び閉じられる。これにより、油圧シリンダ30a~dに供給される入口及び出口導管10内の油圧が、所定の最大低圧P2を超えないことが保証される。
【0080】
本開示による手術台コラム28の安定性システム4、5、29の機能を以下に説明する。
【0081】
安定性システム4、5、29の目的は、外科手術中に手術台コラム28の適切で信頼できる直立位置を提供することである。これは、ユーザが手術台コラム28を所望の場所に移動するとすぐに自動的に作動され、例えば、手術台コラム28の非アクティブ化は、リモートコントロールを介してトリガーされる。そのようなユーザ入力により、手術台コラム28は、その移動位置からその静止位置に変化する。言い換えれば、最初に、キャスター6は、ベース2が床に載置されるように、ベース2に収納される。次に、安定性システム4、5、29が作動される。
【0082】
ベース2が床に接地するとき、それは最初に支持面29の少なくとも3つに載置される。より具体的には、最初にそれは8つのバッファ29a、29bのうちの少なくとも6つに載置される。それが3つまたは4つの支持面上に載置されるかどうかは、それが配置される面の均一性に依存する。手術室の床が完全に平らではなく、ベースが3つの支持面にのみ載置される可能性がある。これにより、重心が移動したときに手術台コラムが傾く可能性があり、これは外科手術中には望ましくない。これを排除するために、手術台コラム28には、安定性システム4、5、29が装備されている。前述の状態は、安定性システム4、5、29のパーキング状態に対応する。正常に機能している場合、パーキング状態は、直立支持要素4a~dが拡張され、安定性システム4、5、29が固定静止状態に移行するまでの短い一時的な状態でしかない。直立支持要素4a~dは、それらが床に接触するまで拡張する。それらはすべて同時に、20バールの同じ圧力で拡張する。床の局所的な特徴に応じて、直立支持要素4a~dは異なる程度に拡張することができる。このようにして、どのような凹凸も平坦化される。したがって、ベース2は4つのコーナーすべてで床にしっかりと接触している。これにより、傾斜の可能性がなくなる。直立支持要素4a~dは、わずか20バールの低圧を使用して意図的に拡張されている。この圧力は、直立支持要素4a~dが床にしっかりと載置されることを保証するのに十分である。しかしながら、それは手術台コラム28の重い重量を支えるには低すぎる。したがって、直立支持要素4a~dの拡張は、ベース2を床から持ち上げることを可能にしない。
【0083】
したがって、安定性システム4、5、29の固定静止状態では、直立支持要素4a~dは、それらが床に接触するように、拡張された位置にある。台コラム28が水平な床に配置される場合、好ましくは、直立支持要素4a~dのいずれも、床上の隣接する接触領域29a~dを超えて床の方向に垂直に延びるようには拡張されない。台コラム28を凹凸のある表面に配置する場合、少なくとも1つの直立支持要素4a~dを、床までずっと垂直方向に、そして床に接触しない関連する接触領域29a~dを超えて拡張することができる。
【0084】
好ましくは、拡張された直立支持要素4a~dは、床に対して圧力を加え、したがって手術台コラム28がぐらついたり傾いたりするのを防ぐために、好ましくはプレストレスがかけられているか、または十分な圧力下にある。しかしながら、プレストレスまたは圧力は、床から持ち上げたり、手術台1またはコラム28の一部または全部を傾けるには不十分である。直立支持要素4a~dのそれぞれに対する適切な圧力は、例えば、およそ20バール、15~30バール、10~40バール、及び/または5~50バールであり得る。本開示のいくつかの実施形態では、圧力は、システムのために選択された所定の油圧P2に対応する。他の実施形態では、圧力は減圧バルブ12によって制限され、これは高圧を所定の値(例えば、P2)に低減するために較正される。圧力レベルまたはプレストレスは、安定化するデバイス(例えば手術台1)の重量に基づいて選択できる。
【0085】
油圧システムに誤動作が発生して、直立支持要素4a~dが望ましくない形で突然収納された場合、患者の手術中に、安定性システム4、5、29は、単に固定静止状態からパーキング状態に切り替わるだけである。そのとき、手術台コラム28は、以前ほど傾斜抵抗力はなくなる。しかしながら、それはその後、少なくとも3つの支持面29上に載置され続けるので、この誤動作は、手術台コラム28の突然の望ましくないぐらつきまたはたるみとして現れることはない。重心の好ましくないシフトのみが、凹凸のある表面上でのわずかな傾斜を引き起こす。これは、油圧が修理できるまでは許容される。
【0086】
手術台コラム28を再び移動させる場合、ユーザは適切なコマンドを発行し(例えば、リモコンを介して)、それにより安定性システム4、5、29が非作動にされ、すなわち、直立要素4a~dが再び収納される。次に、キャスター6は、手術台コラム28がその上に載置されるまで拡張する。
【0087】
本明細書に開示される安定性システムは、例えば、米国特許第5,564,662号の完全油圧安定性システムとは対照的に、底部接触要素33の底面のベース2のすべてのコーナーに配置された追加の移動不可能な(いわゆる静止)支持面29を含む。したがって、本開示による安定性システムの機能は、油圧または電気だけに依存するわけではない。
【0088】
開示されたシステムは、油圧直立支持要素4a~dの誤動作が手術台コラム28の安定性にわずかな影響しか及ぼさないように設計されている。実際、直立支持要素4a~dは、床のあらゆる凹凸を補償するために拡張されて、足2を床から持ち上げることなく、患者支持面Pがぐらつくのを防ぐ。平らな床では、台コラム28の総重量は、支持面29によって、したがって同時に下部接触要素33によって支持され、その結果、直立支持要素4a~dは、支持面29の床との接触点を超えて拡張はしない。凹凸のある表面では、凹凸によっては、支持面29のうち2つまたは3つだけが床に直接接触してもよい。前記表面と接触していない支持面29に関連する各直立支持要素4a~dは、床と接触していない支持面29と床自体との間の距離までしか拡張しない。この距離は、通常、非常に小さく、たとえば、1センチメートル未満または2センチメートル未満であり、多くの場合、わずか数ミリメートルである。安定性システムの油圧及び/または電気部分が誤動作して、直立支持要素4a~dがベース2に収納された場合、台コラム28の重量は、支持面29によって引き続き支持される。これにより、手術台1の急激なたるみや激しい転倒を防ぎ、非常に凹凸のある表面でのぐらつきを最小限に抑えることができる。したがって、本開示による安定性システムは、手術中の特に高い信頼性及び安全性を特徴とする。
【0089】
次に、作動中及び非作動中の安定性システム4、5、29の油圧プロセスを以下に説明する。
【0090】
安定性システム4、5、29の油圧部分の活性化
本発明の安定性システム4、5、29のアクチュエータ5を活性化させるために、油圧ポンプ8は最初にスイッチが入れられて、例えば、吸引バルブを介して、オイルタンク26から油圧オイルを引き出す。少し遅れて、5/3ウェイバルブ9が作動し、その結果第1位置S1に変化する。吸い出された作動油は、ポンプライン32を通って油圧ポンプ8に送られ、次に、出口ライン24及び5/3ウェイバルブ9を通過する。作動油は、さらに、入口及び出口導管10に向けられて減圧バルブ12を通る。このようにして、油圧P1が所定の油圧P2に減圧され、作動油はさらに、4つのチェックバルブ15a~dを介して4つの油圧シリンダ30a~dに向かって圧送される。流れは、油圧シリンダ30a~dのピストンチャンバを通過する。すべての油圧シリンダ30a~dのピストンロッド13a~dは、それに取り付けられた支持要素4a~dが加えられた圧力P2で床に接触し、それ自体を支持するまで同時に拡張する。油圧P2が入口及び出口導管10内で維持されている限り、直立要素4a~dは同じ力で表面に接触する。
【0091】
続いて5/3ウェイバルブ9を中間位置S2にスイッチすると、入口及び出口導管10に圧力降下が生じ、チェックバルブ15a~dが閉じる。同時に、ポンプ8がスイッチオフになる。閉じたチェックバルブ15a~dは、油圧ポンプ8がオイルの圧送を停止した後でも油圧シリンダ30a~d内の油圧が維持され、直立支持要素4a~dが所定の位置にロックされたままであることを保証する。この動作状態は、安定性システム4、5、29の固定静止状態に対応し、手術台コラム28のぐらつきまたは傾斜は排除される。
【0092】
安定性システム4、5、29の油圧部分の非作動化
本発明の安定性システム4、5、29を非活性化するために、油圧ポンプ8が再びオンにスイッチされ、わずかな遅延で、5/3ウェイバルブ9が活性化されて、その結果位置S3に変化する。このようにして、油圧がリリースライン17に加えられる。この圧力により、油圧シリンダ30a~dに統合されたチェックバルブ15a~dのロックが解除される。ロック解除されたチェックバルブ15a~dは、油圧オイルが油圧シリンダ30a~dから供給及び排出ライン10、バルブ9、及び関連するタンクライン27aを介してオイルタンク26に自由に流れることを可能にする。
【0093】
このために必要な駆動力は、油圧シリンダ30a~dの戻りばね16a~dのばね力の結果である。次に、油圧シリンダ30a~dに加えられた圧力が連続的に減少し、油圧シリンダ30a~dのピストンロッド13a~dが収納される。その結果、ピストンロッド13a~dに取り付けられた支持要素4a~dと基板との間の接触が排除される。このパーキング状態では、ベース2は、支持面29の少なくとも3つにより床に載置されだけである。