(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ミトコンドリア病を標的とするアナログ
(51)【国際特許分類】
C07K 5/10 20060101AFI20241219BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20241219BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07K5/10
A61K38/07
A61P9/10 103
A61P9/10
(21)【出願番号】P 2021533856
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 US2019062284
(87)【国際公開番号】W WO2020131283
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-11
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522012798
【氏名又は名称】ステルス バイオセラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】STEALTH BIOTHERAPEUTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】ヂォン,グオヂュー
(72)【発明者】
【氏名】バンバーガー,マーク ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スムクステ,イネセ
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-531682(JP,A)
【文献】国際公開第2017/117381(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/201433(WO,A1)
【文献】特表2016-511259(JP,A)
【文献】国際公開第2016/144352(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/093897(WO,A1)
【文献】The FASEB Journal,2015年,Vol.29,pp.4589-4599
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化合物またはその薬学的に許容可能な塩。
【化1】
【請求項2】
薬学的に許容可能な塩の形態である、請求項
1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、及び薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項4】
必要とする対象において虚血-再灌流傷害を処置または防止するための組成物であって、請求項1
または2に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む、前記組成物。
【請求項5】
前記虚血-再灌流傷害が心虚血-再灌流傷害である、請求項
4に記載の組成物。
【請求項7】
経口、局所、全身、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内投与される、請求項
4~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2018年12月18日に出願された米国仮特許出願第62/781,156号への優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
エラミプレチド(MTP-131)は、ミトコンドリア機能障害に関連する疾患を処置するための治療可能性を有するミトコンドリア標的化ペプチド化合物である。エラミプレチド(MTP-131)を治療に応用できる可能性があるため、改良された治療プロファイルを有するかかる化合物のアナログを開発する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の態様は、エラミプレチド(MTP-131)のアナログである。
【0004】
より詳細には、本発明は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を提供する:
【化1】
式中:
Aaa
1は、以下からなる群から選択されるアミノ酸残基であり:
【化2】
Aaa
2は、以下からなる群から選択されるアミノ酸残基であり:
【化3】
Aaa
3は、以下からなる群から選択されるアミノ酸残基であり:
【化4】
Aaa
4は、以下からなる群から選択されるアミノ酸残基であり:
【化5】
R
1a、R
1b、R
1e、R
1x、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b、R
3c、R
4a、及びR
4bは、H、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、シクロブチル、及び(C
1-C
6)アルキルからなる群からそれぞれ独立して選択され;またはR
1a及びR
1xが、これらが結合するN原子と一緒になって、4~6員の複素環を形成し;
R
a、R
b、R
1c、及びR
1dは、H、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、シクロブチル、(C
1-C
6)アルキル、C(O)((C
1-C
6)アルキル)、C(O)((C
1-C
6)ハロアルキル)、C(O)O((C
1-C
6)アルキル)、及びC(O)O(アリール(C
1-C
6)アルキル)からなる群からそれぞれ独立して選択され;またはR
a及びR
bが、これらが結合するN原子と一緒になって、4~6員の複素環を形成する;
ただし、式(I)の化合物が
【化6】
ではないこととする。
【0005】
本発明の別の態様は、本発明の化合物;及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物である。
【0006】
本発明はまた、虚血-再灌流傷害を処置または防止する方法であって、これを必要とする対象に、治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む、上記方法も提供する。
【0007】
本発明はまた、心筋梗塞を処置または防止する方法であって、これを必要とする対象に、治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む、上記方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明において有用な種々のアミノ酸残基を示す。
【
図2】本発明において有用な種々のアミノ酸残基を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
エラミプレチド(MTP-131;D-Arg-DMT-Lys-Phe-NH2、ここで、DMTは、2,6-ジメチル-L-Tyrである)は、虚血-再灌流傷害(例えば、心虚血-再灌流傷害)、及び心筋梗塞を処置するための治療可能性を有するミトコンドリア標的化化合物である。この化合物のアナログは、改良された代謝性、選択性、または効能を含めた改良された治療プロファイルを有し得る。
【0010】
したがって、ある特定の実施形態において、本発明は、式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を提供する:
【化7】
式中:
Aaa
1は、以下からなる群から選択されるアミノ酸残基であり:
【化8】
Aaa
2は、以下からなる群から選択されるアミノ酸残基であり:
【化9】
Aaa
3は、以下からなる群から選択されるアミノ酸残基であり:
【化10】
Aaa
4は、以下からなる群から選択されるアミノ酸残基であり:
【化11】
R
1a、R
1b、R
1e、R
1x、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b、R
3c、R
4a、及びR
4bは、H、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、シクロブチル、及び(C
1-C
6)アルキルからなる群からそれぞれ独立して選択され;またはR
1a及びR
1xが、これらが結合するN原子と一緒になって、4~6員の複素環を形成し;
R
a、R
b、R
1c、及びR
1dは、H、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、シクロブチル、(C
1-C
6)アルキル、C(O)((C
1-C
6)アルキル)、C(O)((C
1-C
6)ハロアルキル)、C(O)O((C
1-C
6)アルキル)、及びC(O)O(アリール(C
1-C
6)アルキル)からなる群からそれぞれ独立して選択され;またはR
a及びR
bが、これらが結合するN原子と一緒になって、4~6員の複素環を形成する;
ただし、式(I)の化合物が
【化12】
ではないこととする。
【0011】
ある特定の実施形態において、R1a及びR1xは、それぞれ独立して、H、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、もしくはシクロブチルであり;またはR1a及びR1xは、これらが結合するN原子と一緒になって、4~6員の複素環を形成する。
【0012】
ある特定の実施形態において、Aaa
1は、以下からなる群から選択される:
【化13】
【0013】
さらなる実施形態において、Aaa
1は
【化14】
である。
【0014】
代替的には、ある特定の実施形態において、Aaa
1は、以下からなる群から選択されるアミノ酸残基である:
【化15】
【0015】
いくつかの実施形態において、Aaa
1は
【化16】
である。
【0016】
ある特定の実施形態において、Aaa
2は、以下からなる群から選択される:
【化17】
【0017】
ある特定の実施形態において、Aaa
2は
【化18】
である。
【0018】
ある特定の実施形態において、R3bは、Hまたはメチルである。
【0019】
いくつかの実施形態において、Aaa
3は、以下からなる群から選択される:
【化19】
【0020】
【0021】
代替的には、いくつかの実施形態において、Aaa
3は、以下からなる群から選択される:
【化21】
【0022】
いくつかの実施形態において、Aaa
3は
【化22】
である。
【0023】
ある特定の実施形態において、R4a及びR4bは、それぞれ独立して、Hまたはメチルである。
【0024】
ある特定の実施形態において、Aaa
4は、
【化23】
である。
【0025】
代替的には、いくつかの実施形態において、Aaa
4は、以下からなる群から選択される:
【化24】
【0026】
ある特定の実施形態において、Aaa
4は
【化25】
である。
【0027】
ある特定の実施形態において、Ra及びRbは、それぞれ独立して、Hまたはメチル、好ましくはHである。
【0028】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、以下の表から選択される:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【0029】
ペプチド合成
本発明のペプチド化合物は、ペプチド合成方法、例えば、従来の液相ペプチド合成もしくは固相ペプチド合成を使用して、または自動ペプチドシンセサイザを用いるペプチド合成によって調製されてよい(Kelley et al.,Genetics Engineering Principles and Methods,Setlow,J.K.eds.,Plenum Press NY.(1990)Vol.12,pp.1 to 19;Stewart et al.,Solid-Phase Peptide Synthesis(1989)W.H.;Houghten,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1985)82:p.5132)。こうして生成されたペプチドは、常套の方法、例えば、クロマトグラフィ、例えば、ゲル濾過クロマトグラフィ、イオン交換カラムクロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、逆相カラムクロマトグラフィ、及びHPLC、硫安分画、限外濾過、及び免疫吸着によって収集または精製され得る。
【0030】
固相ペプチド合成において、ペプチドは、アミノ酸鎖のカルボニル基側(C末端)からアミノ基側(N末端)に典型的には合成される。ある特定の実施形態において、アミノ保護アミノ酸は、典型的にはエステルまたはアミド結合を介して、また、任意選択的には連結基を介して、アミノ酸のカルボキシル基を通して固体支持体材料に共有結合的に結合されている。アミノ基は、脱保護されて、カップリング試薬を用いて第2アミノ保護アミノ酸のカルボニル基と反応して(すなわち、「カップリングされて」)、固体支持体に結合したジペプチドを生じ得る。これらのステップ(すなわち、脱保護、カップリング)が繰り返されて、所望のペプチド鎖を形成し得る。所望のペプチド鎖が完成したら、ペプチドが固体支持体から開裂され得る。
【0031】
ある特定の実施形態において、アミノ酸残基のアミノ基において使用される保護基には、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)及びt-ブチルオキシカルボニル(Boc)が含まれる。Fmoc基は塩基によってアミノ末端から除去されるが、一方で、Boc基は酸によって除去される。代替の実施形態において、アミノ保護基は、ホルミル、アクリリル(Acr)、ベンゾイル(Bz)、アセチル(Ac)、トリフルオロアセチル、アラルキルオキシカルボニル型の置換または非置換基、例えば、ベンジルオキシカルボニル(Z)、p-クロロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、2(p-ビフェニリル)イソプロピルオキシカルボニル、2-(3,5-ジメトキシフェニル)イソプロピルオキシカルボニル、p-フェニルアゾベンジルオキシカルボニル、トリフェニルホスホノエチルオキシカルボニルまたは9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、アルキルオキシカルボニル型の置換または非置換基、例えば、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、tert-アミルオキシカルボニル、ジイソプロピルメチルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2メチルスルホニルエチルオキシカルボニルまたは2,2,2-トリクロロエチルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル型の基、例えば、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニルまたはイソボルニルオキシカルボニル基、及びヘテロ原子を含有する基、例えば、ベンゼンスルホニル、p-トルエンスルホニル、メシチレンスルホニル、メトキシトリメチルフェニルスルホニル、2-ニトロベンゼンスルホニル、2-ニトロベンゼンスルフェニル、4-ニトロベンゼンスルホニルまたは4-ニトロベンゼンスルフェニル基であってよい。
【0032】
多くのアミノ酸が側鎖に反応性官能基を持つ。ある特定の実施形態において、かかる官能基は、当該官能基が次のアミノ酸と反応することを防止するために保護される。これらの官能基と共に使用される保護基は、ペプチド合成の条件に対して安定でなければならないが、固体支持体からのペプチドの開裂の前、後またはこれと同時に除去されてよい。
【0033】
ある特定の実施形態において、固相ペプチド合成方法において使用される固体支持体材料は、ゲル型の支持体、例えば、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、またはポリエチレングリコールである。代替的には、材料、例えば、多孔ガラス、セルロースファイバ、またはポリスチレンが、これらの表面において官能化されて、ペプチド合成用の固体支持体を付与し得る。
【0034】
本明細書に記載されている固相ペプチド合成において使用され得るカップリング試薬は、典型的にはカルボジイミド試薬である。カルボジイミド試薬の例として、限定されないが、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、N-シクロヘキシル-N’-イソプロピルカルボジイミド(CIC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N-tert-ブチル-N’-メチルカルボジイミド(BMC)、N-tert-ブチル-N’-エチルカルボジイミド(BEC)、ビス[[4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソリル)]-メチル]カルボジイミド(BDDC)、及びN,N-ジシクロペンチルカルボジイミドが挙げられる。DCCは、好ましいカップリング試薬である。
【0035】
ある特定の実施形態において、本発明の化合物、例えば、以下に示す化合物は、スキーム1に示す固相合成によって線形逐次的に合成される:
【化26】
【0036】
参照用に、以下のスキームにおいて、
は、
【化27】
を示し、ここで、
は、固体支持体及び任意選択的には連結基を表す。また、略号4-Palは、3-(4-ピリジル)-アラニンの残基を示す。3-(4-ピリジル)-アラニンは、以下の構造を有する。
【化28】
略号DMTは、2,6-ジメチルチロシンの残基を示す。2,6-ジメチルチロシンは、以下の構造を有する:
【化29】
【化30】
【0037】
代替的には、本発明の化合物は、スキーム2によって収束的に合成され得る:
【化31】
【0038】
本発明の化合物はまた、従来の液相ペプチド合成経路によって合成されてもよい。例えば、以下に示す化合物は、スキーム3に示されているように収束的液相合成において合成されてよい。
【化32】
【化33】
【0039】
別の例示的な実施形態において、本発明の化合物は、スキーム4に示されている線状逐次的液相合成を介して作製される。
【化34】
【0040】
定義
本明細書に記載されているペプチド化合物を定義するのに使用される命名法は、N末端におけるアミノ基が左側に見られかつC末端におけるカルボキシル基が右側に見られる、当該分野において典型的に使用されているものである。
【0041】
本明細書において使用されているとき、用語「アミノ酸」は、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸の両方を含む。用語「アミノ酸」は、別途示されない限り、単離されたアミノ酸分子(すなわち、アミノ結合水素及びカルボニル炭素結合ヒドロキシルの両方を含む分子)及びアミノ酸残基(すなわち、アミノ結合水素またはカルボニル炭素結合ヒドロキシルのいずれか一方または両方が除去されている分子)の両方を含む。アミノ基は、アルファ-アミノ基、ベータ-アミノ基などであり得る。例えば、用語「アミノ酸アラニン」は、単離されたアラニンH-Ala-OH、または、アラニン残基H-Ala-、-Ala-OH、もしくは-Ala-のいずれか1つのうちのいずれかを称し得る。別途示されない限り、本明細書に記載されている化合物において見られる全てのアミノ酸が、DまたはL配置のいずれであってもよい。D配置におけるアミノ酸は、「D」がアミノ酸略号に先行するように書かれていてよい。例えば、「D-Arg」は、D配置におけるアルギニンを表す。用語「アミノ酸」は、薬学的に許容可能な塩を含めたこれらの塩を含む。いずれのアミノ酸も、保護されていても保護されていなくてもよい。保護基は、アミノ基(例えばアルファ-アミノ基)、骨格カルボキシル基、または側鎖の任意の官能基に結合していてよい。例として、アルファ-アミノ基におけるベンジルオキシカルボニル基(Z)によって保護されているフェニルアラニンは、Z-Phe-OHとして表される。
【0042】
本明細書において利用されているアミノ酸の多くが、市販されており、または、他の場合には、当該分野において公知である。
【0043】
N末端アミノ酸を除いて、本開示におけるアミノ酸の全ての略号(例えば、Phe)が、-NH-C(R)(R’)-CO-の構造を表しており、R及びR’は、それぞれ、独立して、水素、またはアミノ酸の側鎖である(例えば、Pheでは、R=ベンジル及びR’=H)。したがって、フェニルアラニンは、H-Phe-OHである。表記「OH」は、これらのアミノ酸について、または、ペプチドについて(例えば、Lys-Val-Leu-OH)、C末端が遊離酸であることを示す。表記「NH2」は、例えば、Phe-D-Arg-Phe-Lys-NH2において、保護されているペプチド断片のC末端がアミド化されていることを示す。さらに、ある特定のR及びR’は、別個に、または、環構造としての組み合わせにおいて、液相合成の際に保護を必要とする官能基を含み得る。
【0044】
アミノ酸が異性体形態を有する場合、D形態、例えば、D-Argとして別途明確に示されていない限り、アミノ酸のL形態が表されている。とりわけ、多くのアミノ酸残基がD及びL形態の両方において市販されている。例えば、D-Argは、市販のD-アミノ酸である。
【0045】
アミノ酸残基の略号と併せて使用されている、頭文字「D」は、アミノ酸残基のD形態を称する。
【0046】
本明細書において使用されているとき、用語「ペプチド」は、少なくとも1つのアミド結合(すなわち、1のアミノ酸のアミノ基とペプチド断片のアミノ酸から選択される別のアミノ酸のカルボキシル基との間の結合)によって共有結合的に連結されている2以上のアミノ酸を称する。用語「ペプチド」は、薬学的に許容可能な塩を含めたこれらの塩を含む。
【0047】
冠詞「a(1の)」及び「an(1の)」は、当該冠詞の文法上の対象の1または1を超えるものを称する(すなわち、少なくとも1を称する)ために本明細書において使用される。例として、「an element(1の要素)」は、1の要素または1を超える要素を意味する。
【0048】
用語「アルキル」は、本明細書において使用されているとき、専門用語であり、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含めた飽和脂肪族基を称する。ある特定の実施形態において、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格において約30以下の炭素原子(例えば、直鎖ではC1-C30、分岐鎖ではC3-C30)、代替的には、約20以下、10以下(すなわち、C1-C10)、または6以下(すなわち、C1-C6)を有する。アルキルの代表例として、限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、及びn-ヘキシルが挙げられる。
【0049】
用語「ヘテロシクリル」は、本明細書において使用されているとき、完全に飽和していてよい、または、1以上の不飽和単位を含有していてよく-誤解を避けるために、不飽和度は芳香族環系につながらない-少なくとも1つのヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、または硫黄を含む3~12の原子を有する、限定されないが、単環式、二環式、及び三環式環を含めた非芳香族環系のラジカルを称する。例示目的で、この用語の範囲を限定すると解釈されるべきではなく、以下が挙げられる:ヘテロシクリル環:アジリジニル、アジリニル、オキシラニル、チイラニル、チイレニル、ジオキシラニル、ジアジリニル、アゼチル、オキセタニル、オキセチル、チエタニル、チエチル、ジアゼチジニル、ジオキセタニル、ジオキセテニル、ジチエタニル、ジチエチル、フリル、ジオキサラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、トリアジニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、チオフェニル、ピラゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、テトラジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、キナゾリニル、ピリドピラジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、ナフチリジニル、アゼピン、アゼチジニル、モルホリニル、オキソピペリジニル、オキソピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、キヌクリジニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニル、及びテトラヒドロフラニル。
【0050】
本発明はまた、本発明の化合物の塩も提供する。
【0051】
用語「薬学的に許容可能な塩」は、本明細書において使用されているとき、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、グリコール酸、サリチル酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、マロン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ナフタレン-2-スルホン酸、及び他の酸を含めた無機または有機酸から誘導される塩を含む。薬学的に許容可能な塩形態は、塩を含む分子の比が1:1ではない形態を含み得る。例えば、塩は、塩基の分子あたり1を超える無機または有機酸分子、例えば、化合物の分子あたり2の塩酸分子を含んでいてよい。別の例として、塩は、塩基の分子あたり1未満の無機または有機酸分子、例えば、酒石酸の分子あたり2の化合物分子を含んでいてよい。
【0052】
用語「担体」及び「薬学的に許容可能な担体」は、本明細書において使用されているとき、化合物が共に投与されるまたは投与のために製剤化される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを称する。かかる薬学的に許容可能な担体の非限定例として、液体、例えば、水、生理食塩水、及び油;ならびに固体、例えば、アカシアゴム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などが挙げられる。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤、香料、及び着色料が使用されてよい。好適な薬学的担体の他の例は、全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences by E.W. Martinに記載されている。
【0053】
本明細書において使用されているとき、「阻害する」または「阻害すること」は、対照と比較して客観的に測定可能な量または程度での低減を意味する。一実施形態において、阻害するまたは阻害することは、対照と比較して少なくとも統計的に有意な量での低減を意味する。一実施形態において、阻害するまたは阻害することは、対照と比較して少なくとも5パーセントの低減を意味する。様々な個々の実施形態において、阻害するまたは阻害することは、対照と比較して少なくとも10、15、20、25、30、33、40、50、60、67、70、75、80、90、95、または99パーセントの低減を意味する。
【0054】
本明細書において使用されているとき、用語「処置すること」及び「処置する」は、結果として、(a)状態もしくは疾患を、当該状態もしくは疾患を発症するもしくはこれに罹患し易いリスクがあり得るが未だ罹患していると診断されていない対象において生じることを防止する;(b)状態もしくは疾患を阻害する、例えば、その発症もしくは進行を遅延させるもしくは阻止する;または(c)状態もしくは疾患を軽減もしくは改善する、例えば、状態もしくは疾患の退行を引き起こす介入を実施することを称する。一実施形態において、用語「処置すること」及び「処置する」は、結果として、(a)状態もしくは疾患を阻害する、例えば、その発症を遅延させるもしくは阻止する;または(b)状態もしくは疾患を軽減もしくは改善する、例えば、状態もしくは疾患の退行を引き起こす介入を実施することを称する。
【0055】
本明細書において使用されているとき、「対象」は、生きている動物を称する。様々な実施形態において、対象は、哺乳動物である。様々な実施形態において、対象は、限定することなく、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウマ、ウシ、または非ヒト霊長類を含めた非ヒト哺乳動物である。ある特定の実施形態において、対象は、ヒトである。
【0056】
本明細書において使用されているとき、「投与すること」は、その通常の意味を有し、限定することなく、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直接注入、粘膜、吸入、経口、及び局所を含めた任意の好適な投与経路によって投与することを包含する。
【0057】
本明細書において使用されているとき、句「有効量」は、所望の生物学的効果を達成するのに十分な任意の量を称する。「治療有効量」は、所望の治療効果を達成する、例えば、虚血-再灌流傷害を処置するのに十分である量である。
【0058】
本発明の化合物及びこれらの塩は、他の治療剤と組み合わされてよい。本発明の化合物及び他の治療剤は、同時にまたは逐次的に投与されてよい。他の治療剤が同時に投与されるとき、これらは、同じまたは別個の製剤において投与され得るが、実質的に同時に投与される。他の治療剤は、他の治療剤及び本発明の化合物の投与が時間的に分離されているとき、互いに、また、本発明の化合物と逐次的に投与される。これらの化合物の投与間の時間の分離は、数分であってよく、より長くてもよい。
【0059】
医薬組成物、投与経路及び投薬
ある特定の実施形態において、本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を対象とする。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、複数の本発明の化合物及び薬学的に許容可能な担体を含む。
【0060】
ある特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物以外の少なくとも1つのさらなる薬学的に活性な剤をさらに含む。少なくとも1つのさらなる薬学的に活性な剤は、虚血-再灌流傷害の処置において有用な剤であり得る。
【0061】
本発明の医薬組成物は、1以上の本発明の化合物を、薬学的に許容可能な担体、及び、任意選択的に、1以上のさらなる薬学的に活性な剤と組み合わせることによって調製され得る。
【0062】
上記で記述されているように、「有効量」は、所望の生物学的効果を達成するのに十分である任意の量を称する。本明細書に提供されている教示と組み合わせて、様々な活性化合物及び重み付け因子、例えば、効能、相対バイオアベイラビリティ、患者の体重、副作用の重篤度、及び投与形態の中から選択することにより、実質的に望ましくない毒性を引き起こさず、さらに、特定の対象を処置するのに有効である、有効な予防または治療処置レジメンが計画され得る。任意の特定の用途のための有効量は、処置される疾患もしくは状態、投与される本発明の具体的な化合物、対象の大きさ、または疾患もしくは状態の重篤度などの因子に応じて変動し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、本発明の具体的な化合物及び/または他の治療剤の有効量を実験的に決定し得る。何らかの医学判断にしたがって、最大用量、すなわち、最大安全用量が使用されてよい。1日あたり複数回投与は、化合物の適切な全身レベルを達成するように企図され得る。適切な全身レベルは、例えば、患者の、薬物のピークまたは持続される血漿レベルの測定によって決定され得る。「用量」及び「投薬量」は、本明細書において互換可能に使用される。
【0063】
ある特定の実施形態において、化合物の静脈内投与は、典型的には、0.1mg/kg/日~20mg/kg/日であってよい。一実施形態において、化合物の静脈内投与は、典型的には、0.1mg/kg/日~2mg/kg/日であってよい。一実施形態において、化合物の静脈内投与は、典型的には、0.5mg/kg/日~5mg/kg/日であってよい。一実施形態において、化合物の静脈内投与は、典型的には、1mg/kg/日~20mg/kg/日であってよい。一実施形態において、化合物の静脈内投与は、典型的には、1mg/kg/日~10mg/kg/日であってよい。
【0064】
一般に、化合物の1日経口用量は、ヒト対象では、約0.01ミリグラム/kg/日~1000ミリグラム/kg/日である。1日1回以上の投与で、0.5~50ミリグラム/kgの範囲の経口用量が、治療結果を生じさせると期待される。投薬量は、投与形態に応じて、局所または全身で、所望の薬物レベルを達成するように適宜調製されてよい。例えば、静脈内投与は、1日あたりの用量が1桁~数桁低いことが期待される。かかる用量において対象における応答が不十分である事象においては、さらにより高い用量(または、異なる、より局所化された送達経路によって、有効なより高い用量)が、患者の耐容量が許容する程度まで用いられてよい。1日あたり複数回投与は、化合物の適切な全身レベルを達成するように企図され得る。
【0065】
本明細書に記載されている任意の化合物について、治療有効量が、動物モデルから最初に決定され得る。治療的有効用量もまた、ヒトにおいて試験された化合物、及び同様の生理活性を示すことが知られている化合物、例えば、他の関連する活性剤では、ヒトデータから決定され得る。非経口投与では、より高い用量が必要とされ得る。適用される用量は、投与される化合物の相対バイオアベイラビリティ及び効能に基づいて調整され得る。上記の方法及び当該分野において周知である他の方法に基づいて最大の効能を達成するように用量を調整することは、当業者の能力の範囲内である。
【0066】
本発明の製剤は、薬学的に許容可能な濃度の塩、緩衝剤、保存剤、相溶性担体、アジュバント、及び任意選択的に他の治療成分を常套的に含有し得る、薬学的に許容可能な液剤において投与され得る。
【0067】
治療での使用では、有効量の化合物が、化合物を所望の表面に送達する任意の形態によって対象に投与され得る。医薬組成物を投与することは、熟練者に公知の任意の方法で成し遂げられてよい。投与経路として、限定されないが、静脈内、筋肉内、腹腔内、膀胱内(膀胱)、経口、皮下、直接注入(例えば、腫瘍または膿瘍内に)、粘膜(例えば、眼に局所的に)、吸入、及び局所が挙げられる。
【0068】
静脈内及び他の非経口投与経路では、本発明の化合物は、凍結乾燥調製物として、リポソーム-挿入もしくはカプセル化された活性化合物の凍結乾燥調製物として、水性懸濁液中の脂質複合体として、または塩錯体として製剤化され得る。凍結乾燥製剤は、概して、投与の直前に、好適な水溶液、例えば、滅菌水または生理食塩水において再構成される。
【0069】
経口投与では、化合物は、活性化合物(複数可)を、当該分野において周知の薬学的に許容可能な担体と組み合わせることによって容易に製剤化され得る。かかる担体は、本発明の化合物を、処置対象による経口摂取のために錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ジェル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化させ得る。経口用途での薬学的調製物は、任意選択的に、得られた混合物を粉砕し、所望により好適な助剤を添加した後に顆粒の混合物を処理して、錠剤または糖衣錠コアを得ることで、固体賦形剤として得られ得る。好適な賦形剤は、特に、充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含めた糖;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び/またはポリビニルピロリドン(PVP)などである。所望により、崩壊剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムが添加されてよい。任意選択的に、経口製剤はまた、生理食塩水または緩衝液中で製剤化されてもよく、例えば、内部の酸状態を中和するためのEDTAが、いずれの担体も用いることなく投与されてよい。
【0070】
上記成分(複数可)の経口剤形も具体的に企図される。成分(複数可)は、誘導体の経口送達が有効であるように化学的に修飾されてよい。概して、企図される化学的修飾は、成分分子自体への少なくとも1つの部位の結合であり、ここで、当該部位は、(a)酸加水分解の阻害;及び(b)胃または腸からの血流への取り込みを許容する。成分(複数可)の全体の安定性の増加及び体内での循環時間の増加も望ましい。かかる部位の例として:ポリエチレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンならびにポリプロリンが挙げられる。Abuchowski and Davis,「Soluble Polymer-Enzyme Adducts」,In:Enzymes as Drugs,Hocenberg and Roberts,eds.,Wiley-Interscience,New York,N.Y.,pp.367-383(1981);Newmark et al.,J Appl Biochem 4:185-9(1982).使用され得る他のポリマーは、ポリ-1,3-ジオキソラン及びポリ-1,3,6-トリオキソランである。薬学的使用では、上記に示されているように、ポリエチレングリコール部位が好適である。
【0071】
上記成分(または誘導体)について、放出の箇所は、胃、小腸(十二指腸、空腸、もしくは回腸)、または大腸であってよい。当業者は、胃において溶解せず、さらには、十二指腸または他の場所、腸において材料を放出する、利用可能な製剤を有する。好ましくは、当該放出は、本発明の化合物(または誘導体)の保護によって、または、生物学的に活性な材料を、胃環境を越えて、例えば、腸において放出することによってのいずれかで、胃環境の有害効果を回避させる。
【0072】
完全な胃耐性を確保するために、少なくともpH5.0まで不浸透性のコーティングが必須である。腸溶性コーティングとして使用される、より一般的な不活性成分の例は、トリメリット酸酢酸セルロース(CAT)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、HPMCP50、HPMCP55、フタル酸ポリ酢酸ビニル(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、フタル酸酢酸セルロース(CAP)、Eudragit L、Eudragit S、及びshellacである。これらのコーティングは、混合フィルムとして使用されてよい。
【0073】
コーティングまたはコーティングの混合物は、胃に対する保護のために意図されていない錠剤においても使用され得る。これは、糖コーティング、または錠剤の飲み込みを容易にするコーティングを含み得る。カプセルは、乾燥治療薬(例えば、粉末)の送達のためのハードシェル(例えば、ゼラチン)からなっていてよく;液体形態では、軟質ゼラチンシェルが使用されてよい。カシェ剤のシェル材料は、厚いデンプンまたは他の食用紙であり得る。丸薬、ロゼンジ、成形錠剤または錠剤粉薬では、湿式マッシング技術が使用され得る。
【0074】
治療薬は、粒径が約1mmの顆粒またはペレットでの微細な多微粒子として製剤に含まれ得る。カプセル投与用の材料の製剤はまた、粉末として、軽く圧縮されたプラグ、または錠剤としてでさえあり得る。治療薬は、圧縮によって調製され得る。
【0075】
着色料または香料が全て含まれていてよい。例えば、本発明の化合物(または誘導体)は、(例えば、リポソームまたはマイクロスフェアカプセル化によって)製剤化され、次いで、食用製品、例えば、着色料または香料を含有する冷蔵された飲料にさらに含有されてよい。
【0076】
不活性材料によって治療薬の容量を希釈または増加してよい。これらの希釈剤は、炭水化物、特に、マンニトール、α-ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、修飾されたデキストラン及びデンプンを含み得る。ある特定の無機塩はまた、三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム及び塩化ナトリウムを含む充填剤として使用されてもよい。いくつかの市販の希釈剤は、Fast-Flo、Emdex、STA-Rx 1500、Emcompress及びAvicellである。
【0077】
崩壊剤は、固体剤形への治療薬の製剤化において含まれ得る。崩壊剤として使用される材料として、限定されないが、デンプンに基づいた商用崩壊剤、Explotabを含めたデンプンが挙げられる。デンプングリコール酸ナトリウム、Amberlite、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ウルトラマイロペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸性カルボキシメチルセルロース、天然スポンジ及びベントナイトが全て使用され得る。崩壊剤の別の形態は、不溶性のカチオン交換樹脂である。粉末化されたガムは、崩壊剤として、及び、結合剤として使用されてよく、これらは、粉末化されたガム、例えば、寒天、Karayaまたはトラガカントを含み得る。アルギン酸及びそのナトリウム塩も崩壊剤として有用である。
【0078】
結合剤が使用されることにより、共に治療剤を保持し、硬質錠剤を形成し、天然物、例えば、アカシア、トラガカント、デンプン及びゼラチンからの材料を含むことができる。他には、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。ポリビニルピロリドン(PVP)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、いずれも、治療薬を顆粒化するためのアルコール溶液において使用され得る。
【0079】
製剤化プロセスの際の粘着を防止するために、治療薬の製剤化において抗摩擦剤が含まれていてよい。滑沢剤が、治療薬とダイの壁との間の層として使用されてよく、これらとして、限定されないが;そのマグネシウム及びカルシウム塩を含めたステアリン酸、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油ならびにワックスを挙げることができる。可溶性の滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、様々な分子量のポリエチレングリコール、Carbowax4000及び6000もまた使用されてよい。
【0080】
製剤化の際に薬物の流動性を改良し得る、また、圧縮の際に再構成を補助するための、流動促進剤が添加されてよい。流動促進剤として、デンプン、タルク、焼成シリカ及び水和ケイアルミン酸塩を挙げることができる。
【0081】
水性環境への治療薬の溶解を補助するために、界面活性剤が湿潤剤として添加されてよい。界面活性剤は、アニオン性洗剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ナトリウムジオクチル及びスルホン酸ナトリウムジオクチルを含んでいてよい。カチオン性洗剤が使用されてよく、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムを含み得る。界面活性剤として製剤に含まれ得る可能性がある非イオン性洗剤として、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、50及び60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65及び80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースならびにカルボキシメチルセルロースが挙げられる。これらの界面活性剤は、本発明の化合物または誘導体の製剤において単独でまたは異なる比での混合物としてのいずれかで存在し得る。
【0082】
使用され得る薬学的調製物として、ゼラチン製の押し込み型カプセル、ならびに、ゼラチン及び可塑剤、例えば、グリセロールまたはソルビトール製の軟質の密閉カプセルが挙げられる。押し込み型カプセルは、充填剤、例えば、ラクトース、結合剤、例えば、デンプン、及び/または滑沢剤、例えば、タルクもしくはステアリン酸マグネシウム、ならびに、任意選択的に、安定化剤と混合した活性成分を含有し得る。軟質カプセルにおいて、活性化合物は、好適な液体、例えば、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールに溶解または懸濁されていてよい。加えて、安定化剤が添加されていてよい。経口投与用に製剤化されたマイクロスフェアが使用されてもよい。かかるマイクロスフェアは、当該分野において明確に定義されている。経口投与用の全ての製剤が、かかる投与に好適な投薬量であるべきである。
【0083】
口腔投与について、組成物は、従来のように製剤化された錠剤またはロゼンジの形態をとってよい。
【0084】
局所投与について、化合物は、当該分野において周知されている通り、液剤、ジェル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして製剤化されていてよい。全身用の製剤として、注射、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内または腹腔内注射による投与用に設計されたもの、ならびに経皮、経粘膜的経口または肺投与用に設計されたものが挙げられる。
【0085】
吸入による投与について、本発明による使用のために化合物は、好適なプロペラント、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガスを使用して、圧縮パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレーの提示の形態で便利に送達され得る。圧縮エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達するためにバルブを設けることによって決定されてよい。吸入具または吸入器での使用のための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物の粉末混合物とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤とを含有して製剤化されてよい。
【0086】
本明細書において開示されている化合物(またはこれらの塩)の肺送達もまた本明細書において企図される。化合物は、吸入しながら哺乳動物の肺に送達され、肺の上皮内層を横断して血流に入る。吸入分子の他の報告には、Adjei et al.,Pharm Res 7:565-569(1990);Adjei et al.,Int J Pharmaceutics 63:135-144(1990)(酢酸ロイプロリド);Braquet et al.,J Cardiovasc Pharmacol 13(suppl.5):143-146(1989)(エンドセリン-1);Hubbard et al.,Annal Int Med 3:206-212(1989)(α1-抗トリプシン);Smith et al.,1989,J Clin Invest 84:1145-1146(a-1-プロテイナーゼ);Oswein et al.,1990,「Aerosolization of Proteins」,Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II,Keystone,Colorado,March、(組み換えヒト成長ホルモン);Debs et al.,1988,J Immunol 140:3482-3488(インターフェロン-ガンマ及び腫瘍壊死因子アルファ)ならびにPlatz et al.、米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子;参照により組み込まれる)が含まれる。全身的な効果のための薬物の肺送達に関する方法及び組成物は、Wong et alらに、1995年9月19日に発行された米国特許第5,451,569号(参照により組み込まれる)に記載されている。
【0087】
限定されないが、ネブライザー、定量吸入具、及び粉末吸入具(これらの全てが、当業者によく知られている)を含めた治療薬品の肺送達用に設計された広範な機械的デバイスが本発明の実施における使用のために企図される。
【0088】
本発明の実施に好適な市販のデバイスのいくつかの具体例は、Mallinckrodt,Inc.,St.Louis,Mo.製のUltraventネブライザー;Marquest Medical Products,Englewood,Colo.製のAcorn IIネブライザー;Glaxo Inc.,Research Triangle Park,North Carolina製のVentolin定量吸入具;及びFisons Corp.,Bedford,Mass製のSpinhaler粉末吸入具である。
【0089】
全てのかかるデバイスは、本発明の化合物の分散に好適な製剤の使用を必要とする。典型的には、各製剤は、用いられるデバイスのタイプに特異的であり、治療に有用な通常の希釈剤、アジュバント及び/または担体に加えて、適切なプロペラント材料の使用を含み得る。また、リポソーム、マイクロカプセルもしくはマイクロスフェア、包接体、または他のタイプの担体の使用も企図される。化学的に修飾された本発明の化合物はまた、化学的修飾のタイプ及び用いられるデバイスのタイプに応じて異なる製剤で調製されてもよい。
【0090】
ネブライザーでの使用に好適な製剤は、ジェットまたは超音波のいずれでも、溶液のmLあたり約0.1~25mgの生物学的に活性な本発明の化合物の濃度で水に溶解された本発明の化合物(または誘導体)を典型的には含む。製剤はまた、(例えば、阻害剤の安定化及び浸透圧の調節のために)緩衝液及び単糖を含んでいてもよい。ネブライザー製剤はまた、エアロゾルを形成する際の溶液の噴霧化によって引き起こされる、本発明の化合物の表面誘起凝集を低減または防止するために、界面活性剤を含有していてもよい。
【0091】
定量吸入具デバイスでの使用のための製剤は、概して、界面活性剤の助けによりプロペラントに懸濁された本発明の化合物(または誘導体)を含有する微細に分割された粉末を含む。プロペラントは、この目的で用いられる任意の従来の材料、例えば、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン、またはこれらの組み合わせを含めた、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、または炭化水素であってよい。好適な界面活性剤は、トリオレイン酸ソルビタン及び大豆レシチンを含む。オレイン酸はまた、界面活性剤としても有用であり得る。
【0092】
粉末吸入具デバイスからの分散のための製剤は、本発明の化合物(または誘導体)を含有する微細に分割された乾燥粉末を含み、また、例えば、50~90重量%の製剤中、デバイスからの粉末の分散を容易にする量で、増量剤、例えば、ラクトース、ソルビトール、スクロース、またはマンニトールを含んでいてもよい。本発明の化合物(または誘導体)は、遠位の肺への最も有効な送達のために、10マイクロメートル(μm)未満、最も好ましくは0.5~5μmの平均粒径を有する形態で有利に調製されるべきである。
【0093】
本発明の医薬組成物の経鼻送達もまた企図される。経鼻送達は、肺での治療薬の沈着を必要とすることなく、治療薬を鼻に投与した直後の本発明の医薬組成物の血流への通過を可能にする。経鼻送達用の製剤として、デキストランまたはシクロデキストランを用いたものが挙げられる。
【0094】
経鼻投与について、有用なデバイスは、定量噴霧器が取り付けられている小型の硬質ボトルである。一実施形態において、定量が、規定の容量のチャンバー内に本発明の医薬組成物溶液を取り出すことによって送達され、当該チャンバーは、エアロゾル化するために寸法付けされたアパーチャ、及び、チャンバー中の液体が圧縮されたときにスプレーを形成することによるエアロゾル製剤を有する。チャンバーは、本発明の医薬組成物を投与するために圧縮される。具体的な実施形態において、チャンバーは、ピストンアレンジメントである。かかるデバイスは、市販されている。
【0095】
代替的には、スクイーズされたときにスプレーを形成することによってエアロゾル製剤をエアロゾル化するように寸法付けられたアパーチャまたは開口部を有するプラスチックスクイーズボトルが使用される。開口部は、ボトルの頂部に通常見られ、当該頂部は、エアロゾル製剤の効率的な投与のために経鼻通路において部分的に適合するように概してテーパー状にされている。好ましくは、経鼻吸入具は、測定された用量の薬物の投与のために、計量した量のエアロゾル製剤を付与する。
【0096】
化合物は、全身に送達することが望ましいとき、注射によって、例えば、ボーラス注入または持続注入によって非経口投与用に製剤化されてよい。注射用製剤は、添加された保存剤を含む、単位剤形において、例えば、アンプルにおいて、または、複数回投与容器において提示されてよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、液剤または乳剤としてのかかる形態をとっていてよく、また、製剤化剤、例えば、懸濁剤、安定化剤及び/または分散剤を含有していてよい。
【0097】
非経口投与用の医薬製剤には、水溶性形態での活性化合物の水溶液が含まれる。また、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製されてよい。好適な親油性溶媒またはビヒクルとして、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランを含有していてよい。任意選択的に、懸濁液はまた、高度に濃縮された液剤の調製を可能にするために化合物の溶解度を増加させる好適な安定化剤(複数可)を含有していてもよい。
【0098】
代替的には、活性化合物は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、滅菌ピロゲン不含水を有する構成のための粉末形態であってよい。
【0099】
化合物はまた、例えば、従来の座剤の基剤、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドを含有する、直腸用または膣用組成物、例えば、座剤または停留かん腸において製剤化されてもよい。
【0100】
上記の製剤に加えて、化合物はまた、デポー調製物として製剤化されてもよい。かかる長時間作用型製剤は、好適なポリマーまたは疎水性材料(例えば、許容可能な塩中の乳剤として)もしくはイオン交換樹脂と共に、または、難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として製剤化されよい。
【0101】
医薬組成物はまた、好適な固体またはゲル相担体または賦形剤を含んでいてもよい。かかる担体または賦形剤の例として、限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリマー、例えば、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0102】
好適な液体または固体の薬学的調製物形態は、例えば、吸入のための水溶液または生理食塩水溶液、マイクロカプセル化されたもの、渦巻状化されたもの、微視的な金粒子上にコーティングされたもの、リポソーム中に含有されたもの、霧状にされたもの、エアロゾル、皮膚への移植用のペレット、または皮膚中に傷をつけるための鋭利な物体上で乾燥されたものである。医薬組成物にはまた、活性化合物が長期的に放出される、顆粒、粉末、錠剤、コーティングされた錠剤、(ミクロ)カプセル、座剤、シロップ、乳剤、懸濁液、クリーム、ドロップまたは調製物も含まれ、これらの調製物の賦形剤ならびに添加剤及び/または補助剤、例えば、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨張剤、滑沢剤、香料、甘味料もしくは可溶化剤は、上記のように慣例的に使用される。医薬組成物は、種々の薬物送達系における使用に好適である。薬物送達の方法についての簡単なレビューについては、Langer R,Science 249:1527-33(1990)を参照されたい。
【0103】
本発明の化合物及び任意選択的に他の治療薬は、それ自体で(正味)または薬学的に許容可能な塩の形態で投与されてよい。医学の分野で使用されるとき、塩は、薬学的に許容可能であるべきであるが、これらの薬学的に許容可能な塩を調製するために非薬学的に許容可能な塩が便利に使用され得る。かかる塩として、限定されないが、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、及びベンゼンスルホン酸から調製されるものが挙げられる。また、かかる塩は、カルボン酸基のアルカリ金属またはアルカリ土類塩、例えば、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩として調製され得る。
【0104】
好適な緩衝剤として:酢酸及び塩(1~2%w/v);クエン酸及び塩(1~3%w/v);ホウ酸及び塩(0.5~2.5%w/v);ならびにリン酸及び塩(0.8~2%w/v)が挙げられる。好適な保存剤として、塩化ベンザルコニウム(0.003~0.03%w/v);クロロブタノール(0.3~0.9%w/v);パラベン(0.01~0.25%w/v)及びチメロサール0.004~0.02%w/v)が挙げられる。
【0105】
本発明の医薬組成物は、有効量の、本明細書に記載されている化合物、及び、任意選択的に、薬学的に許容可能な担体に含まれる治療剤を含有する。用語「薬学的に許容可能な担体」は、ヒトまたは他の脊椎動物への投与に好適である1以上の相溶性の固体または液体の充填剤、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。用語「担体」は、適用を容易にするために活性成分が組み合わされる、天然または合成の、有機または無機の成分を表す。医薬組成物の成分はまた、所望の薬学的効率を実質的に付与する相互作用をしないような方法で、本発明の化合物と、また、互いに、入り混じることも可能である。
【0106】
特に限定されないが、本発明の化合物を含む治療剤(複数可)は、粒子において提供されてよい。粒子は、本明細書において使用されているとき、本発明の化合物または本明細書に記載されている他の治療剤(複数可)の全体または一部からなり得るナノ粒子またはミクロ粒子(またはいくつかの場合には、より大きい粒子)を意味する。粒子は、限定されないが、腸溶性コーティングを含めたコーティングによって包囲されているコアに、治療剤(複数可)を含有していてよい。治療剤(複数可)はまた、粒子全体にわたって分散されていてもよい。治療剤(複数可)はまた、粒子中に吸着されていてもよい。粒子は、0次放出、1次放出、2次放出、遅延放出、持続放出、即時放出、及びこれらの組み合わせなどを含めた、いずれの次元の放出反応速度論のものであってもよい。粒子は、治療剤(複数可)に加えて、限定されないが、浸食性、非浸食性、生分解性、もしくは非生分解性材料またはこれらの組み合わせを含めた、薬学及び医学の分野において常套的に使用されるかかる材料のいずれかを含んでいてよい。粒子は、本発明の化合物を溶液中または半固体状態に含有するマイクロカプセルであってよい。粒子は、事実上いずれの形状のものであってもよい。
【0107】
非生分解性及び生分解性の両方のポリマー材料が、治療剤(複数可)を送達するための粒子の製造において使用され得る。かかるポリマーは、天然または合成ポリマーであってよい。ポリマーは、放出が望まれる期間に基づいて選択される。特定の対象の生体接着ポリマーには、Sawhney H S et al.(1993)Macromolecules 26:581-7に記載されている生体浸食性ヒドロゲルが含まれ、その教示は、本明細書に組み込まれる。これらとして、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルテン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、及びポリ(アクリル酸オクタデシル)が挙げられる。
【0108】
治療剤(複数可)は、制御放出系に含有されていてよい。用語「制御放出」は、製剤からの薬物放出の方法及びプロファイルが制御される任意の薬物含有製剤を称することが意図される。これは、限定されないが持続放出及び遅延放出製剤を含めた非即時放出製剤と共に、即時ならびに非即時放出製剤を称する。用語「持続放出」(「徐放」とも称される)は、長期間にわたる薬物の漸次放出を付与する、好ましくは、必ずしもではないが、長期間にわたっての実質的に一定の血液レベルの薬物を結果として生じさせる薬物製剤を称するために従来の意味で使用される。用語「遅延放出」は、製剤の投与と、これからの薬物の放出との間に時間遅延がある薬物製剤を称するために従来の意味で使用される。「遅延放出」は、長期間にわたる薬物の漸次放出を含んでいても含んでいなくてもよく、そのため、「持続放出」であってもなくてもよい。
【0109】
慢性状態の処置には、長期持続放出インプラントの使用が特に好適であり得る。「長期」放出は、本明細書において使用されているとき、インプラントが、少なくとも7日間、好ましくは30~60日間、治療レベルの活性成分を送達するように構築及びアレンジされていることを意味する。長期持続放出インプラントは、当業者に周知であり、上記の放出系のいくらかを含む。
【0110】
本明細書に記載されている組成物及び方法に対する他の好適な変更及び改変が、当業者に公知の情報に鑑みて、本明細書に含まれる本発明の詳細な説明から容易に明らかであること、ならびに、本発明またはその任意の実施形態の範囲から逸脱することなくなされ得ることが当業者によって理解されよう。本発明をここで詳細に記載しているが、これは、説明目的のみでここで含まれかつ本発明の限定であることは意図されない以下の例を参照することによって、より明確に理解されよう。
【0111】
使用の方法
本発明は、虚血-再灌流傷害もしくは心筋梗塞、または心筋梗塞に関連する傷害を処置または防止するのに有用であるペプチド化合物を提供する。
【0112】
したがって、ある特定の実施形態において、本発明は、虚血-再灌流傷害を処置または防止する方法であって、これを必要とする対象に、治療有効量の、本明細書に記載されている式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、上記方法を対象とする。ある特定にかかる実施形態において、虚血-再灌流傷害は、心虚血-再灌流傷害である。いくつかの実施形態において、化合物は、経口、局所、全身に、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内投与される。
【0113】
他の実施形態において、本発明は、心筋梗塞を処置または防止する方法であって、これを必要とする対象に、治療有効量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む、上記方法を提供する。かかる方法は、梗塞の開始または進行を防止することにより、再灌流の際の心臓への傷害を防止し得る。いくつかの実施形態において、化合物は、経口、局所、全身に、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内投与される。
【0114】
虚血は、組織または器官への血液の低減または減少であり、多くの異なる原因を有する。虚血は、例えば、血栓もしくは塞栓によって引き起こされて、局所的、または、例えば、低灌流圧に起因して、より全体的であってよい。虚血事象は、低酸素症(酸素低減)及び/または無酸素症(酸素の非存在)に至る可能性がある。
【0115】
哺乳動物の組織または器官における虚血は、酸素欠乏(低酸素症)及び/またはグルコース(例えば、基質)欠乏によって引き起こされる多面的な病態である。組織または器官の細胞における酸素及び/またはグルコース欠乏は、エネルギー発生能力の低減または全損、細胞膜を横断する活性イオン輸送の機能の結果的損失に至る。酸素及び/またはグルコース欠乏はまた、ミトコンドリア膜における透過性遷移を含めた、他の細胞膜における病的変化にも至る。加えて、他の分子、例えば、ミトコンドリア内に区分化されているアポトーシス性タンパク質が細胞質中に漏出し、アポトーシス細胞死を引き起こし得る。重度の虚血は、壊死細胞死に至る可能性がある。
【0116】
特定の組織または器官における虚血または低酸素症は、組織または器官への血液の供給の損失または重篤な低減によって引き起こされ得る。血液の供給の損失または重篤な低減は、例えば、血栓塞栓性脳卒中、冠状動脈硬化症、または末梢血管疾患に起因し得る。虚血または低酸素症によって影響される組織は、典型的には筋肉、例えば、心筋、骨格筋、または平滑筋である。
【0117】
虚血または低酸素症によって影響される器官は、虚血または低酸素症を被るいずれの器官であってもよい。例として、何ら限定されないが、心筋虚血または低酸素症は、アテローム性動脈硬化または血栓症閉塞によって一般的に引き起こされ、心動脈及び毛細管血液の供給による心臓組織への酸素送達の低減または損失に至る。かかる心虚血または低酸素症は、影響される心筋の疼痛及び壊死を引き起こし、最終的に心不全に至る場合がある。
【0118】
再灌流は、血液の流れが減少または遮断される任意の器官または組織への血流の回復である。例えば、血流は、虚血に影響される任意の器官または組織にて回復され得る。血流の回復(再灌流)は、当業者に公知の任意の方法によって行われ得る。例えば、虚血心臓組織の再灌流は、血管形成、冠動脈バイパスグラフト、または血栓溶解薬から生じ得る。
【0119】
虚血-再灌流傷害は、血液の供給が虚血期間後に患部に戻るときに引き起こされる細胞または組織損傷である。虚血の際の酸素及び栄養素の欠失は、循環の回復が結果として組織に損傷を生じさせる状態を作り出す。例として、何ら限定されないが、再灌流誘発不整脈、心筋気絶、遅い冠状動脈血流において現れる微小血管閉塞、及び致死性心筋再灌流傷害(すなわち、指標虚血事象の終わりに生存可能であった心筋細胞の再灌流誘発死)を含めた、心筋再灌流傷害の形態が挙げられる。研究により、致死性心筋再灌流傷害が最終心筋梗塞サイズの約50%を占めることが示唆されている。
【0120】
ある特定の実施形態において、ペプチドは、経口、静脈内、または非経口投与される。
【0121】
ある特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0122】
本発明のペプチド化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、例えば、酢酸塩、酒石酸塩、もしくはトリフルオロ酢酸塩は、虚血傷害の疑いがあるまたはこれに既に罹患している対象に、疾患の発症におけるその合併症及び中間の病理学的表現型を含めた疾患の症状を治癒するまたは少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で投与され得る。虚血傷害に罹患している対象は、当該分野において公知の診断または予防アッセイのいずれかまたは組み合わせによって識別され得る。例として、限定されないが、いくつかの実施形態において、虚血傷害は、心虚血、脳の虚血、腎虚血、脳虚血、腸虚血、肝虚血、または心筋梗塞に関係する。
【0123】
例として、何ら限定されないが、心虚血の典型的な症状として、限定されないが、狭心症(例えば、胸痛及び胸部圧迫感)、息切れ、動悸、脱力、目まい、吐き気、発汗、頻拍、ならびに倦怠感が挙げられる。
【0124】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている少なくとも1つのペプチドを用いた、心虚血と診断された対象の処置は、以下の心虚血症状:狭心症(例えば、胸痛及び胸部圧迫感)、息切れ、動悸、脱力、目まい、吐き気、発汗、頻拍、ならびに倦怠感;のうちの1以上を改善しまたは取り除く。
【0125】
例として、何ら限定されないが、腎虚血の典型的な症状として、限定されないが、尿毒症(すなわち、例えば尿素などのタンパク質副産物の高い血中濃度)、肺水腫によって引き起こされる呼吸困難の急性発症(苦しいまたは困難な呼吸)、高血圧、腎臓付近で感じられる疼痛、脱力、高血圧、吐き気、脚部疼痛歴、脚部への循環障害を反映するストライド、ならびに首(例えば、頸動脈の雑音)、腹部(腎動脈の狭窄を反映している場合がある)、及び鼠径部(大腿動脈の雑音)で検出され得る動脈内の乱れた血流によって引き起こされる雑音(聴診器によって聞かれる音または雑音)が挙げられる。
【0126】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている少なくとも1つのペプチドを用いた、腎虚血と診断された対象の処置は、以下の腎虚血症状:尿毒症(すなわち、例えば尿素などのタンパク質副産物の高い血中濃度)、肺水腫によって引き起こされる呼吸困難の急性発症(苦しいまたは困難な呼吸)、高血圧、腎臓付近で感じられる疼痛、脱力、高血圧、吐き気、脚部疼痛歴、脚部への循環障害を反映するストライド、ならびに首(例えば、頸動脈の雑音)、腹部(腎動脈の狭窄を反映している場合がある)、及び鼠径部(大腿動脈の雑音)で検出され得る動脈内の乱れた血流によって引き起こされる雑音(聴診器によって聞かれる音または雑音);のうちの1以上を改善しまたは取り除く。
【0127】
例として、何ら限定されないが、脳(または脳の)虚血の典型的な症状として、限定されないが、片目の失明、片方の腕または脚の脱力、体の片側全体の脱力、目まい、回転性目まい、複視、体の両側の脱力、発話困難、不明瞭な発語、及び協調運動障害が挙げられる。
【0128】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている少なくとも1つのペプチドを用いた、脳(または脳の)虚血と診断された対象の処置は、以下の脳(または脳の)虚血症状:片目の失明、片方の腕または脚の脱力、体の片側全体の脱力、目まい、回転性目まい、複視、体の両側の脱力、発話困難、不明瞭な発語、及び協調運動障害;のうちの1以上を改善しまたは取り除く。
【0129】
別の態様において、本発明は、虚血再灌流傷害、及び/または、虚血再灌流傷害に対する既存の治療薬に関連する副作用を処置する方法に関する。治療用途において、少なくとも1つの本発明の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、例えば、酢酸塩、酒石酸塩、もしくはトリフルオロ酢酸塩を含む組成物または薬剤は、虚血再灌流傷害の疑いがあるまたはこれに既に罹患している対象に、疾患の発症におけるその合併症及び中間の病理学的表現型を含めた疾患の症状を治癒するまたは少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で投与される。虚血-再灌流傷害に罹患している対象は、当該分野において公知の診断または予防アッセイのいずれかまたは組み合わせによって識別され得る。いくつかの実施形態において、虚血-再灌流傷害は、心虚血、脳の虚血、腎虚血、脳虚血、腸虚血、及び肝虚血に関係する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されているペプチド化合物は、心虚血-再灌流傷害の処置に有用である。
【0130】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されているペプチド化合物は、再灌流の際の心臓への傷害を防止するために対象において心筋梗塞を処置するのに有用である。いくつかの実施形態において、本発明は、冠血行再建術の方法であって、哺乳動物対象に、治療有効量の、本発明のペプチド化合物、またはその薬学的に許容可能な塩を投与すること、及び対象において冠動脈バイパスグラフト(CABG)手技を実施することを含む、上記方法に関する。
【0131】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されているペプチド化合物を用いた心筋梗塞の処置は、梗塞サイズを低減し、LVDPを増加させ、収縮及び弛緩の最大速度(±dP/dt)を増加させる。
【0132】
予防方法
いくつかの実施形態において、本発明は、虚血傷害を有するリスクがある対象における虚血傷害の発現または虚血傷害の症状を防止または遅延する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本技術は、虚血傷害を有するリスクがある対象における虚血傷害の症状を防止または低減する方法を提供する。
【0133】
いくつかの実施形態において、本発明は、虚血-再灌流傷害を有するリスクがある対象における虚血-再灌流傷害の発現または虚血-再灌流傷害の症状を防止または遅延する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、虚血-再灌流傷害を有するリスクがある対象における虚血再灌流傷害の症状を防止または低減する方法を提供する。
【0134】
いくつかの実施形態において、虚血傷害、虚血-再灌流傷害、または虚血性もしくは虚血-再灌流傷害の症状は、心虚血、脳の虚血、腎虚血、脳虚血、腸虚血、及び肝虚血に関係する。いくつかの実施形態において、虚血傷害は、心筋梗塞である。
【0135】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されているペプチド化合物は、心虚血-再灌流傷害の処置または防止において有用である。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されているペプチド化合物は、心虚血-再灌流傷害の防止において有用である。
【0136】
虚血傷害または虚血-再灌流傷害のリスクがある対象は、例えば、当該分野において公知の診断または予防アッセイのいずれかまたは組み合わせによって識別され得る。予防用途において、本発明の化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、例えば、酢酸塩、酒石酸塩、もしくはトリフルオロ酢酸塩の医薬組成物あるいは薬剤は、虚血傷害または虚血再灌流傷害に罹り易いまたは他の場合にはそのリスクがある対象に、疾患の生化学的、組織学的及び/もしくは行動学的症状、疾患の発症の間に現れるその合併症及び中間の病理学的表現型を含めた疾患の発現を取り除く、そのリスクを低減する、もしくはその発現を遅延する、または、疾患の発症の間に現れる症状及び/もしくは合併症及び中間の病理学的表現型を低減するのに十分な量で投与される。予防的ペプチドの投与は、疾患または障害に特徴的な症状が現れる前に行われ得、その結果、疾患または障害が防止され、その進行が遅延され、または、疾患もしくは障害の症状もしくは副作用の重篤度が低減することとなる。
【0137】
例として、いくつかの実施形態において、対象は、冠動脈疾患(アテローム性動脈硬化)、血塊、または冠動脈攣縮を有していると、心虚血のリスクがあり得る。
【0138】
例として、何ら限定されないが、いくつかの実施形態において、対象は、腎臓傷害(例えば、急性腎臓傷害)及び/または腎臓から正常な血流が長期間奪われる手術(例えば、心臓バイパス手術)による傷害もしくは合併症を有すると、腎虚血のリスクがあり得る。
【0139】
例として、何ら限定されないが、いくつかの実施形態において、対象は、鎌状赤血球貧血、圧迫血管、心室頻拍、動脈内のプラークの蓄積、血塊、心臓発作の結果としての極度の低血圧、脳卒中、先天性心欠陥を有するとき、脳虚血のリスクがあり得る。
【0140】
治療及び/または予防用途について、本明細書に記載されている少なくとも1つのペプチド化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、例えば、酢酸塩、酒石酸塩、もしくはトリフルオロ酢酸塩を含む組成物が、これを必要とする対象に投与される。いくつかの実施形態において、ペプチド組成物は、1日あたり1、2、3、4、または5回投与される。いくつかの実施形態において、ペプチド組成物は、1日あたり5回より多く投与される。加えてまたは代替的には、いくつかの実施形態において、ペプチド組成物は、毎日、1日おき、3日ごと、4日ごと、5日ごと、または6日ごとに投与される。いくつかの実施形態において、ペプチド組成物は、毎週、隔週、3週間ごと、または月1回投与される。いくつかの実施形態において、ペプチド組成物は、1、2、3、4、または5週間の期間にわたって投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドは、6週以上投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドは、12週以上投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドは、1年未満の期間投与される。いくつかの実施形態において、ペプチドは、1年を超える期間投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている少なくとも1つのペプチドによる処置は、以下の心虚血症状:狭心症(例えば、胸痛及び胸部圧迫感)、息切れ、動悸、脱力、目まい、吐き気、発汗、頻拍、ならびに倦怠感;のうちの1以上の発現を防止または遅延する。
【0141】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている少なくとも1つのペプチドによる処置は、以下の腎虚血症状:尿毒症(すなわち、例えば尿素などのタンパク質副産物の高い血中濃度)、肺水腫によって引き起こされる呼吸困難の急性発症(苦しいまたは困難な呼吸)、高血圧、腎臓付近で感じられる疼痛、脱力、高血圧、吐き気、脚部疼痛歴、脚部への循環障害を反映するストライド、ならびに首(例えば、頸動脈の雑音)、腹部(腎動脈の狭窄を反映している場合がある)、及び鼠径部(大腿動脈の雑音)で検出され得る動脈内の乱れた血流によって引き起こされる雑音(聴診器によって聞かれる音または雑音);のうちの1以上の発現を防止または遅延する。
【0142】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている少なくとも1つのペプチドによる処置は、以下の脳(または脳の)虚血症状:片目の失明、片方の腕または脚の脱力、体の片側全体の脱力、目まい、回転性目まい、複視、体の両側の脱力、発話困難、不明瞭な発語、及び協調運動障害;のうちの1以上の発現を防止または遅延する。
【0143】
代謝安定性の評価方法
ある特定の実施形態において、以下の方法を使用して、本発明の化合物の代謝安定性を評価することができる。
【0144】
ある特定のin vitro肝臓代謝研究は、以下の参照文献において先に記載されている:Obach,R S,Drug Metab Disp,1999,27:1350;Houston,J B et al.,Drug Metab Rev,1997,29:891;Houston,J B,Biochem Pharmacol,1994,47:1469;Iwatsubo,T et al.,Pharmacol Ther,1997,73:147;and Lave,T,et al.,Pharm Res,1997,14:152。
【0145】
マイクロソームアッセイ:ヒト肝臓マイクロソーム(20mg/mL)は、Xenotech,LLC(Lenexa,Kans.)から得られてよい。β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、還元形態(NADPH)、塩化マグネシウム(MgCl2)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)は、Sigma-Aldrichから購入されてよい。
【0146】
代謝安定性の決定:7.5mMの試験化合物原液をDMSO中で調製する。7.5mMの原液をアセトニトリル(ACN)中12.5~50μMに希釈する。20mg/mLヒト肝臓マイクロソームを、3mM MgCl2を含有する0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)において0.625mg/mLに希釈する。希釈したマイクロソームを96ウェルディープウェルポリプロピレンプレートに3連で添加する。12.5~50μM 試験化合物の10μLのアリコートをマイクロソームに添加し、混合物を10分間予め加温する。反応を、予め加温したNADPH溶液の添加によって開始する。最終反応体積は0.5mLであり、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中の0.5mg/mLヒト肝臓マイクロソーム、0.25~1.0μM試験化合物及び2mM NADPH、ならびに3mM MgCl2を含有する。反応混合物を37℃でインキュベートし、50μLのアリコートを0、5、10、20、及び30分で除去し、内部標準と共に50μLの氷冷ACNを含有する、シャローウェル96ウェルプレートに添加して、反応を停止させる。プレートを4℃で20分間保存し、その後、100μLの水をプレートのウェルに添加し、その後、ペレットに遠心分離をしてタンパク質を沈殿させる。上清を別の96ウェルプレートに移し、Applied Bio-systems API4000質量分析計を使用するLC-MS/MSによって残存する親の量について分析する。試験を3連で行う。
【0147】
データ解析:試験化合物についてin vitro半減期(t1/2s)を、残存する親%の線形回帰の傾き(ln)対インキュベーション時間の関係から算出する:
in vitro t1/2=0.693/k、式中、k=-[残存する親%の線形回帰の傾き(ln)対インキュベーション時間]
【0148】
等価物
本発明を、理解の明確さを目的として実例及び例によっていくらか詳細に説明したが、同じことが、本発明またはそのいずれの具体的な実施形態の範囲にも影響することなく、広範かつ等価な、条件、構築及び他のパラメータの範囲内で、本発明を修飾または変更することによって実施され得ること、ならびに、かかる修飾または変更が、添付の特許請求の範囲内に包含されることが意図されることが当業者に明らかであろう。
【0149】
参照による組み込み
上記の明細書において言及されている全ての米国特許ならびに米国及びPCT特許出願公開公報は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。