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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】二次電池および二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/536 20210101AFI20241219BHJP
   H01M 50/538 20210101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M50/536
H01M50/538
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022004382
(22)【出願日】2022-01-14
(65)【公開番号】P2023103708
(43)【公開日】2023-07-27
【審査請求日】2023-02-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】松政 義高
(72)【発明者】
【氏名】山中 友和
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-332584(JP,A)
【文献】特開2019-067570(JP,A)
【文献】特開2012-213789(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/160932(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 10/00-10/0587
H01M 10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極タブを有する電極体と、
前記電極タブを介して前記電極体と電気的に接続された集電体と、
を備える二次電池の製造方法であって、
透明材料と前記集電体との間に前記電極タブを挟み込んだ後、該透明材料を貫通するようにレーザを照射して前記電極タブと前記集電体とを溶接すること、
を含み、
前記電極体は、前記電極タブを複数備えており、
複数の前記電極タブを重ね合わせた状態で、前記集電体と前記透明材料との間に挟み込み、
前記溶接において、前記透明材料を用いて100N以上の圧力で前記電極タブを押圧した状態でレーザを照射する、製造方法。
【請求項2】
前記透明材料の、前記電極タブとの接触面の径は、前記レーザの照射径よりも大きい、請求項1に記載された製造方法。
【請求項3】
前記溶接後、前記透明材料の前記電極タブとの接触面を洗浄することを含む、請求項1または2に記載された製造方法。
【請求項4】
前記透明材料として、800℃以上の融点を有する透明材料が用いられる、請求項1~3のいずれか一項に記載された製造方法。
【請求項5】
前記透明材料として、結晶化ガラス、石英ガラス、フッ化バリウムガラス、フッ化カルシウムガラス、およびサファイヤガラスからなる群から選ばれた少なくとも一種の透明材料が用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載された製造方法。
【請求項6】
前記透明材料は、円柱状または多角柱状である、請求項1~5のいずれか一項に記載された製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池および二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、例えば、電極タブを有する電極体と、該電極タブを介して電極体と電気的に接続された集電体と、を有している。電極タブと集電体とは、例えば、レーザ溶接によって接合されることがある。特開2019-67570号公報、特開2019-61949号公報、および特開2014-136242号公報では、かかるレーザ溶接において、貫通孔が設けられた溶接用治具を用いることが開示されている。これらの公報のレーザ溶接では、電極タブと集電体とを重ね合わせた後、集電体と重ね合わされた電極タブの上に溶接用治具を配置して電極タブを押圧する。そして、溶接用治具の貫通孔の内部にレーザを照射することによって、電極タブと集電体とを接合(溶接)している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-67570号公報
【文献】特開2019-61949号公報
【文献】特開2014-136242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らは、電極タブと集電体とが溶接された部位において、電極タブと集電体との間にボイド(溶接不良箇所)が発生するのを抑制したいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示される二次電池の製造方法は、電極タブを有する電極体と、上記電極タブを介して上記電極体と電気的に接続された集電体と、を備える二次電池の製造方法である。この製造方法は、透明材料と上記集電体との間に上記電極タブを挟み込んだ後、該透明材料を貫通するようにレーザを照射して上記電極タブと上記集電体とを溶接すること、を含む。
【0006】
かかる構成の製造方法では、透明材料と集電体とに電極タブが挟み込まれた後、透明材料を貫通するようにレーザが照射されて集電体と正極タブとが溶接される。透明材料と集電体とに電極タブが挟み込まれることで、集電体に重ねられた電極タブの上に透明材料が配置されて、集電体に電極タブが隙間なく重ねられる。そして、透明材料を貫通するようにレーザが照射されることによって、隙間なく重ねられた集電体に電極タブをレーザ溶接することができる。これにより電極タブと集電体との溶接部にボイドが発生するのを抑制することができる。
【0007】
ここで開示される二次電池の製造方法の好ましい一態様では、上記電極体は、上記電極タブを複数備えている。この態様は、複数の上記電極タブを重ね合わせた状態で、上記集電体と上記透明材料との間に挟み込む。かかる構成によると、電極タブと集電体との溶接部におけるボイド発生抑制効果がよりよく実現されうる。
【0008】
ここで開示される二次電池の製造方法の他の好ましい一態様では、上記溶接において、上記透明材料を用いて100N以上の圧力で上記電極タブを押圧した状態でレーザを照射する。かかる構成によると、電極タブと集電体との溶接部におけるボイド発生抑制効果がよりよく実現されうる。
【0009】
ここで開示される二次電池の製造方法の他の好ましい一態様では、上記透明材料の、上記電極タブとの接触面の径は、上記レーザの照射径よりも大きい。かかる構成によると、電極タブと集電体との溶接部におけるボイド発生抑制効果がよりよく実現されうる。
【0010】
ここで開示される二次電池の製造方法の他の好ましい一態様は、上記溶接後、上記透明材料の上記電極タブとの接触面を洗浄することを含む。かかる構成によると、電極タブと集電体との溶接部におけるボイド発生抑制効果がよりよく実現されうる。
【0011】
ここで開示される二次電池の製造方法の他の好ましい一態様では、上記透明材料として、800℃以上の融点を有する透明材料が用いられる。かかる構成によると、電極タブと集電体とのより安定的なレーザ溶接が実現されうる。
【0012】
ここで開示される二次電池の製造方法の他の好ましい一態様では、上記透明材料として、結晶化ガラス、石英ガラス、フッ化バリウムガラス、フッ化カルシウムガラス、およびサファイヤガラスからなる群から選ばれた少なくとも一種の透明材料が用いられる。かかる透明材料は、ここで開示される技術の効果を実現するために、好適である。
【0013】
また、電極タブを有する電極体と、上記電極タブを介して上記電極体と電気的に接続された集電体と、を備える二次電池が開示される。この二次電池では、上記電極タブは、上記集電体にレーザ溶接されている。上記電極タブと上記集電体との溶接部では、上記電極タブと上記集電体とが、隙間なく重ねられた状態で溶接されている。かかる構成の二次電池では、電極タブと集電体との溶接部におけるボイドの発生が抑制されている。
【0014】
ここで開示される二次電池の好ましい一態様では、上記電極体は、上記電極タブを複数備えている。複数の上記電極タブは、重ね合わされた状態で上記集電体に溶接されている。かかる構成の二次電池では、電極タブと集電体との溶接部におけるボイドの発生がよりよく抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、二次電池100の分解斜視図である。
図2図2は、二次電池100の部分断面図である。
図3図3は、図2のIII-III断面図である。
図4図4は、電極タブと集電体との接合を説明する平面図である。
図5図5は、正極タブ21tと集電体33との溶接を説明する模式図である。
図6図6は、溶接部91の近傍の断面図である。
図7図7は、実施例のSEM観察像である。
図8図8は、比較例のSEM観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、ここでの開示の一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら開示を限定することを意図したものではない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、数値範囲を示す「A~B」などの表記は、特に言及されない限りにおいて「A以上B以下」を意味するとともに、「Aを上回り、かつ、Bを下回る」の意味をも包含する。なお、以下に説明する図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0017】
本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して一対の電極(正極と負極)の間で電荷担体が移動することによって充放電反応が生じる蓄電デバイス一般をいう。かかる二次電池は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタなども包含する。以下では、上述した二次電池のうち、リチウムイオン二次電池を例にして、ここで開示される二次電池および該二次電池の製造方法の実施形態を説明する。ここでの開示は、特に言及されない限りにおいて、リチウムイオン二次電池に限定されず、他の二次電池にも適用されうる。
【0018】
図1は、二次電池100の分解斜視図である。図2は、二次電池100の部分断面図である。図2では、略直方体の電池ケース10の片側の幅広面12bに沿って内部を露出させた状態の部分断面図が模式的に描かれている。図3は、図2のIII-III断面図である。図3では、略直方体の電池ケース10の片側の幅狭面12cに沿って内部を露出させた状態の部分断面図が模式的に描かれている。図1に示された二次電池100は、電極体20が収容された電池ケース10が密閉された、いわゆる密閉型電池である。図1に示されているように、二次電池100は、電池ケース10と、電極体20とを有している。
【0019】
電極体20は、二次電池100の発電要素である。図1~3に示されているように、電極体20は、絶縁フィルム29で覆われた状態で、電池ケース10に収容されている。電極体20は、図2に示されているように、正極要素としての正極シート21と、負極要素としての負極シート22と、シート状のセパレータ23とを備えている。セパレータ23は、正極シート21と負極シート22との間に配置されている。正極シート21と、負極シート22と、セパレータシート23とは、それぞれ長尺の帯状の部材である。
【0020】
正極シート21は、例えば、長尺の帯状の正極集電箔21a(例えば、アルミニウム箔)と、正極集電箔21aの両面に形成された正極活物質層21bと、を有している。正極活物質層21bは、この実施形態では、正極集電箔21aに一定の幅で形成されている。正極活物質層21bは、例えば、正極活物質を含む。正極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池では、リチウム遷移金属複合材料のように、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを吸収しうる材料である。正極活物質は、一般的にリチウム遷移金属複合材料以外にも種々提案されており、特に限定されない。正極シート21は、図2に示されているように、正極タブ21tを有している。正極タブ21tは、例えば、正極集電箔21aの一部であり、表面に正極活物質層21bが形成されない活物質層未形成部である。この実施形態では、正極タブ21tは、シート短手方向の一の端部から突出した、矩形状の部位である。図2に示された実施形態では、シート長手方向において、複数の正極タブ21tが間欠的に設けられている。
【0021】
この実施形態では、正極活物質層21bと正極タブ21tとの境界に、正極保護層21pが形成されている。正極保護層21pは、ここでは、正極タブ21tの突出方向における正極活物質層21bの端部に形成されており、正極タブ21tと隣接している。正極保護層21pは、例えば、アルミナ等の無機フィラーを含む層である。なお、正極保護層21pの形成は必須ではなく、他の実施形態において省略することができる。
【0022】
負極シート22は、例えば、長尺の帯状の負極集電箔22a(例えば、銅箔)と、負極集電箔22aの両面に形成された負極活物質層22bと、を有している。負極活物質層22bは、この実施形態では、負極集電箔22aに一定の幅で形成されている。負極活物質層22bは、例えば、負極活物質を含む。負極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池では、天然黒鉛のように、充電時にリチウムイオンを吸蔵し、充電時に吸蔵したリチウムイオンを放電時に放出しうる材料である。負極活物質は、一般的に天然黒鉛以外にも種々提案されており、特に限定されない。負極シート22は、図2に示されているように、負極タブ22tを有している。負極タブ22tは、例えば、負極集電箔22aの一部であり、表面に負極活物質層22bが形成されない活物質層未形成部である。この実施形態では、負極タブ22tは、シート短手方向の一の端部から突出した、矩形状の部位である。図2に示された実施形態では、シート長手方向において、複数の負極タブ22tが間欠的に設けられている。
【0023】
セパレータ23は、例えば、所要の耐熱性を有する電解質が通過しうる多孔質の樹脂シートである。セパレータシート23についても種々提案されており、特に限定されない。
【0024】
例えば、シート短手方向(図2では幅狭面12cに沿った方向)における負極活物質層22bの幅は、同方向における正極活物質層21bの幅よりも大きい。シート短手方向におけるセパレータ23の幅は、負極活物質層22bの幅よりも大きい。図2に示されているように、正極タブ21tおよび負極タブ22tは、セパレータ23からはみ出すように、所要の長さを備えている。この実施形態では、正極タブ21tおよび負極タブ22tは、シート短手方向においていずれも同じ側に向けられている。正極シート21と、負極シート22と、セパレータ23とは、それぞれ長さ方向に向きを揃えられ、順に重ねられて捲回されている。この実施形態では、電極体20は、いわゆる捲回電極体である。負極活物質層22bは、セパレータ23を介在させた状態で正極活物質層21bを覆っている。負極活物質層22bは、セパレータ23に覆われている。
【0025】
上述した電極体20は、図1に示されているように、電池ケース10のケース本体12に収容されうるように、捲回軸を含む一平面に沿った扁平な状態とされる。そして、電極体20の捲回軸に沿って、片側(ここでは蓋14側)に正極タブ21tおよび負極タブ22tが配置されている。複数の正極タブ21tおよび複数の負極タブ22tは、重ねられた状態で、同極の集電体33,43(後述)に接続される。
【0026】
ケース本体12は、図1~3に示されているように、電極体20を収容しており、電極体20を収容するための開口12hを有している。ケース本体12は、一側面が開口した略直方体の角形形状を有している。ケース本体12は、図1~3に示されているように、略矩形の底面12aと、一対の幅広面12bと、一対の幅狭面12cとを有している。一対の幅広面12bは、それぞれ底面12aのうち長辺から立ち上がっている。一対の幅狭面12cは、それぞれ底面12aのうち短辺から立ち上がっている。開口12hは、一対の幅広面12bの長辺と一対の幅狭面12cの短辺とで囲まれて形成されている。なお、この実施形態では、ケース本体12および後述の蓋14は、軽量化と所要の剛性を確保するとの観点で、それぞれアルミニウムまたはアルミニウムを主体とするアルミニウム合金で形成されている。
【0027】
またケース本体12は、電極体20と一緒に、図示しない電解液を収容していてもよい。電解液としては、非水系溶媒に支持塩を溶解させた非水電解液を使用できる。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。
【0028】
蓋14は、ケース本体12の開口12hに取り付けられている。そして、蓋14の周縁部が、ケース本体12の開口12hの縁に接合される。かかる接合は、例えば、隙間がない連続した溶接によるとよい。かかる溶接は、例えば、レーザ溶接によって実現されうる。ケース本体12および蓋14は、電極体の収容数(1つまたは複数。この実施形態では1つ)、サイズ等に応じた大きさを有している。蓋14には、図示は省略しているが、例えば、注液孔とガス排出弁とが設けられている。注液孔は、ケース本体12に蓋14を接合した後に電解液を注液するためのものである。注液孔は、封止部材により封止される。ガス排出弁は、二次電池100の内圧が所定値以上になったときに破断して、二次電池100内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。
【0029】
この実施形態では、蓋14には、正極端子30と、負極端子40とが取り付けられている。正極端子30は、外部端子31と、接続部材32と、集電体33と、を備えている。負極端子40は、外部端子41と、接続部材42と、集電体43と、を備えている。外部端子31および外部端子41は、それぞれ外部絶縁部材50を介して蓋14の外側に取り付けられている。接続部材32および集電体33と、接続部材42および集電体43とは、各極側に設けられた内部絶縁部材60を介して蓋14の内側に取り付けられている。接続部材32および集電体33と、接続部材42および集電体43とは、蓋14の内表面に沿って配置されている。集電体33は、正極タブ21tを介して電極体20の正極シート21に接続されている。集電体43は、負極タブ22tを介して電極体20の負極シート22に接続されている。正極側の外部端子31と、接続部材32と、集電体33と、は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。負極側の外部端子41と、接続部材42と、集電体43と、は、例えば、銅または銅合金製である。
【0030】
正極タブ21tと、負極タブ22tとは、図2に示されているように、蓋14の長辺方向の両側部にそれぞれ取り付けられた同極の集電体33,43にそれぞれ取り付けられている。電極体20は、このように電極タブを介して蓋14に取り付けられた状態で、ケース本体12に収容されている。図1,2に示されるように、電極体20は、幅広な矩形面20aがケース本体12の幅広面12bに対向するように、ケース本体12に収容されている。なお、集電体と電極タブとの接続に関しては、後でさらに述べる。
【0031】
以下、正極側を例に挙げて、二次電池100における端子構造、および、電極体20と蓋14との接続を詳細に説明する。蓋14は、図2に示されているように、外部端子31を取り付けるための取付孔18を有している。取付孔18は、蓋14の予め定められた位置において蓋14を貫通している。蓋14の取付孔18には、外部絶縁部材50を介在させて、外部端子31が取り付けられている。
【0032】
正極の外部端子31は、頭部31aと、軸部31bとを備えている。頭部31aは、蓋14の外側に配置される部位である。頭部31aは、取付孔18よりも大きな略平板状の部位である。軸部31bは、外部絶縁部材50を介して取付孔18に装着される部位である。軸部31bは、頭部31aの略中央部から下方(図2では、ケース本体12の内方)に突出している。軸部31bの先端は、図2に示されているように、蓋14の内部において、接続部材32にかしめられる部位である。軸部31bの先端は、蓋14の取付孔18および接続部材32の貫通孔32aに挿通された状態で折曲げられて、接続部材32にかしめられている。
【0033】
外部絶縁部材50は、図2に示されているように、蓋14の取付孔18の内側面、および蓋14の外側表面に取り付けられる部材である。外部絶縁部材50は、蓋14と外部端子31との間に配置され、これらの絶縁を確保している。また、外部絶縁部材50は、蓋14の取付孔18の気密性を確保している。かかる観点で、耐薬品性や耐候性に優れた材料が用いられるとよい。この実施形態では、外部絶縁部材50には、PFAが用いられている。PFAは、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(Tetrafluoroethylene-Perfluoroalkylvinylether Copolymer)である。なお、外部絶縁部材50に用いられる材料は、PFAに限定されない。
【0034】
内部絶縁部材60は、図2に示されているように、蓋14の取付孔18の周りにおいて、蓋14の内側に装着される部材である。内部絶縁部材60は、ケース本体12の内部に配置されるため、所要の耐薬品性を備えているとよい。この実施形態では、内部絶縁部材60には、PPSが用いられている。PPSは、ポリフェニレンサルファイド樹脂(Poly Phenylene Sulfide Resin)である。なお、内部絶縁部材60に用いられる材料は、PPSに限定されない。
【0035】
接続部材32は、例えば、略平板状であり、貫通孔32aと、突起32bとを備えている。接続部材32は、内部絶縁部材60に装着される部材であり、外部端子31と集電体33とを接続している。貫通孔32aには、外部端子31の軸部31bが挿通している。貫通孔32aの周囲には、軸部31bがかしめられている。突起32bは、集電体33の第1プレート部33aに設けられた貫通孔33a1に嵌合される部位である。突起32bの形状は、貫通孔33a1に嵌合できる形状である。この実施形態では、蓋14の内表面側からみた突起32bの平面形状は、楕円形である。
【0036】
集電体33は、図2,3に示されているように、内部絶縁部材60を介して、蓋14に取り付けられている。集電体33は、第1プレート部33aと、第2プレート部33bと、段差部33cとを備えている。第1プレート部33aは、接続部材32の表面に沿って配置される部位である。この実施形態では、第1プレート部33aは、略平板状の部位である。第1プレート部33aは、貫通孔33a1を有している。貫通孔33a1には、接続部材32の突起32bが嵌合される。貫通孔33a1は、突起32bが嵌合できる形状に形成されている。第2プレート部33bは、内部絶縁部材60に配置される部位である。この実施形態では、第2プレート部33bは、略平板状の部位である。第2プレート部33bには、正極タブ21tが接合される。段差部33cは、第1プレート部33aの一の端部から第2プレート部33bの一の端部に向かって立ち上がり、両プレート部を連結する部位である。この実施形態では、段差部33cは、接続部材32の側壁に沿って配置されている。
【0037】
図4は、電極タブと集電体との接合を説明する平面図である。図3,4に示されているように、電極体20から延びた複数の正極タブ21tが重ね合わされた状態で、第2プレート部33bの接合面に配置されている。詳しくは後述するが、正極タブ21tの突出先端側の少なくとも一部が、第2プレート部33bに溶接されて、溶接部91が形成されている。溶接部91について、後でさらに述べる。
【0038】
特に限定するものではないが、図2に示されているように、接続部材32と集電体33の第1プレート部33aとの間に、樹脂製のヒューズ部材70を配置してもよい。この場合、集電体33の第1プレート部33aに、ヒューズ部材70に設けられた突起を装着する貫通孔33a2を設けておくとよい(図4参照)。
【0039】
上記のとおり、二次電池100の端子近傍構造に関して、正極側を例に挙げて説明した。二次電池100の端子近傍構造に関して、負極側も基本的に正極と同様であるため、説明を省略する。また、正極側と異なる構成であっても、ここで開示される技術を特徴づけるものでない場合、説明を省略している。なお、図2において、負極側の符号19は「取付孔」である。また、図4において、符号「43a」は第1プレート部であり、符号「43b」は第2プレート部であり、符号「43a1」は貫通孔であり、符号「92」は溶接部である。
【0040】
ところで、電極タブと集電体とをレーザ溶接で接合する場合、例えば、電極タブと集電体とを重ね合わせた後、溶接予定部位に電極タブ側からレーザを照射して、電極タブと集電体とを溶接する。本発明者は、このようなレーザ溶接において、電極タブと集電体とが溶接された部位(溶接部)にボイド(溶接不良箇所)が生じることを見出した。かかるボイドは電池抵抗を上昇させる要因となりうる。
【0041】
図5は、正極タブ21tと集電体33との溶接を説明する模式図である。ここで開示される二次電池100の製造方法では、図5に示されているように、透明材料Gと集電体33との間に、電極タブ21tが挟み込まれた後、透明材料Gを貫通するようにレーザLAが照射されて電極タブ21tと集電体33とが溶接される。図5では、正極タブ21tと集電体33との溶接が示されているが、ここで開示された溶接方法は、負極タブ22tと集電体43との接合にも適用できる(図4参照)。かかる溶接方法によれば、図4に示されているように、電極タブ21t,22tと集電体33,44とが溶接された溶接部91,92にボイドが生じにくくなる。
【0042】
この実施形態では、例えば、二次電池100の製造方法は、用意工程、配置工程、挟み込み工程、加圧工程、溶接工程、折曲工程、収容工程、および、封口工程を含む。
【0043】
用意工程では、例えば、電極体20を用意する。例えば、正極シート21と、負極シート22と、セパレータ23とを用意し、従来公知の手順で電極体20を作製する。このとき、正極シート21に設けられた複数の正極タブ21tを重ね合わせ、負極シート22に設けられた複数の負極タブ22tを重ね合わせる。
【0044】
配置工程では、例えば、正極タブ21tと集電体33とを重ね合わせる。図5に示されているように、上記用意工程で重ね合わせた複数の正極タブ21tを、集電体33の第2プレート部33b上に配置する(図4参照)。
【0045】
挟み込み工程では、例えば、透明材料Gと集電体33との間に正極タブ21tを挟み込む。図5に示されているように、配置工程後、第2プレート部33b上に配置された複数の正極タブ21tの最上面に、透明材料Gを配置する。このとき、例えば、正極タブ21tと第2プレート部33bとの溶接予定部位を覆うように透明材料Gを配置する。例えば、正極タブ21tにしわが発生している場合は、しわを十分に伸ばしてから透明材料Gを配置することが好ましい。
【0046】
透明材料Gは、例えば、正極タブ21tと集電体33とのレーザ溶接で用いられる種類のレーザ光を透過できる材料によって構成されうる。透明材料Gにおける波長900nm~1200nm(例えば、1070nm)の光線透過率は、例えば70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、100%に近いほどよい。透明材料Gの光線透過率は、例えば、市販の分光光度計を用いて測定することができる。
【0047】
透明材料Gは、例えば、正極タブ21tと集電体33とのレーザ溶接の熱によって損傷されない材料によって構成されうる。透明材料Gとして、正極タブ21tおよび集電体33の材質に応じて適当なものが選択されうる。透明材料Gとして、例えば、800℃以上の融点を有する透明材料が用いられる。例えば、正極タブ21tと集電体33とがアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる場合、800℃以上の融点を有する透明材料が用いられることが好ましい。レーザ溶接の熱による損傷を抑制する観点から、透明材料Gの融点は、高いほどよい。
【0048】
透明材料Gは、例えば、無機材料である。なかでも、透明材料Gとして、例えば、結晶化ガラス(約800℃)、石英ガラス(約900℃)、フッ化バリウムガラス(約1200℃)、フッ化カルシウムガラス(約1400℃)、およびサファイヤガラス(約2000℃)が好適例として挙げられる。なお、各材料名に併記された括弧内の温度は、各材料の融点を示している。
【0049】
図5に示されているように、透明材料Gの、正極タブ21tとの接触面G1における径Dは、レーザLAの照射径Dよりも大きく設定されうる。上記径Dは、例えば、透明材料Gの上記接触面における最小径である。レーザLAの照射径Dは、例えば、レーザ溶接装置で設定された値である。透明材料Gの形状としては、例えば、円柱状や多角柱状が挙げられる。なお、透明材料Gの形状および寸法は、少なくとも溶接予定部位をカバーできるものであればよいため、上述のものに限定されない。
【0050】
加圧工程では、例えば、集電体33上に配置された正極タブ21tを集電体33に対して押圧する。例えば、透明材料Gに、図5中の矢印Pの向きに所定の圧力を付与することで、正極タブ21tを第2プレート部33bに対して押圧することができる。このように、透明材料Gを用いて正極タブ21tを集電体33に対して押圧する手段は、特に限定されない。かかる押圧手段として、例えば、バネ加圧の任意の治具等を使用するとよい。なお、加圧工程の実施は必須ではない。他の実施形態において、加圧工程を省略することもできる。
【0051】
加圧工程で透明材料Gに付与される圧力の大きさは、特に限定するものではないが、例えば、10N~200Nに設定されうる。上記圧力は、例えば、100N以上に設定されることが好ましい。
【0052】
溶接工程では、例えば、レーザを照射して正極タブ21tと集電体33とを溶接する。図5に示されているように、矢印Pの方向に所定の圧力を透明材料Gに圧力を付与した状態で、透明材料Gを貫通するように、溶接予定部位に向かってレーザLAを照射して、正極タブ21tおよび第2プレート部33bを溶接する。なお、レーザLAの照射径、出力等の諸条件は、例えば、レーザ溶接に供する正極タブ21tおよび集電体33の材質、正極タブ21tの積層数等によって適宜設定されうる。
【0053】
溶接工程を実施することで、例えば、正極タブ21tと第2プレート部33bとの溶接部91が形成される。溶接部91は、例えば、正極タブ21tと集電体33とが溶融し凝固して相互に接合された部位である。図6は、溶接部91の近傍の断面図である。図6に示されているように、溶接部91では、正極タブ21tが溶融し凝固した部分91aと集電体33が溶融し凝固した部分91bとがつながることで、正極タブ21tと集電体33との接合(溶接)が実現している。
【0054】
レーザLAの種類は、特に限定されず、正極タブ21tと集電体33との構成材料に応じて適宜選択されうる。レーザLAの種類としては、YAGレーザ、COレーザ、半導体レーザ、ディスクレーザ、ファイバーレーザ等が挙げられる。レーザLAの照射径Dは、例えば、0.5mm~1.0mmに設定されうる。
【0055】
この実施形態では、溶接工程において、負極側でも同様の溶接を行い、負極タブ22tと集電体43との溶接部92を形成する。なお、例えば、負極タブ22tと集電体43とが銅または銅合金からなる場合、1200℃以上の融点を有する透明材料が好ましく用いられうる。
【0056】
特に限定するものではないが、溶接工程の後、例えば、透明材料Gを他の正極タブ21tと他の集電体33とのレーザ溶接時に用いることができる。このとき、例えば、リサイクルのために透明材料G(少なくとも正極タブ21tが接触した面G1)を洗浄してもよい。
【0057】
取付工程では、例えば、電極タブと同極の集電体33,34とを溶接した後、集電体33,34を蓋14に取り付ける。例えば、予め集電体33および集電体43を除く部材を蓋14に取り付けた合体物を用意しておき、かかる合体物の内部絶縁部材60の所定部位に、正極タブ21tが溶接された集電体33と、負極タブ22tが取り付けられた集電体43と、を取り付ける。
【0058】
折曲工程では、例えば、取付工程で蓋14に集電体33,34を取り付けた後、正極タブ21tと負極タブ22tとを折り曲げる。図2,3に示されているように、正極タブ21tと負極タブ22tとを、電極体をケース本体12に収容した後で幅広面12bに沿った状態となるように、折り曲げる。上記折り曲げを行う前に、必要に応じて、複数の電極タブを束ねてもよい。
【0059】
収容工程では、例えば、電極体20をケース本体12内に収容する。例えば、上記折曲工程後、電極体20を予め袋状に成形した絶縁フィルム29で包み込む。次いで、絶縁フィルム29で包み込まれた状態の電極体20を、ケース本体12内に収容する。
【0060】
封口工程では、例えば、電池ケース10を封口する。例えば、電極体20を収容した後、蓋14をケース本体12の開口12hに重ね合わせて、蓋14とケース本体12とを溶接する。
【0061】
封口工程後、例えば、電池ケース10内に従来公知の方法にて電解液を注液し、注液孔を封止して、電池ケースを密閉する。その後、例えば、所定の条件の下、初期充電およびエージング処理を実施し、使用可能状態の二次電池100を作製することができる。
【0062】
このように、この実施形態では、透明材料Gと集電体33とに正極タブ21tが挟み込まれた後、透明材料Gを貫通するようにレーザLAが照射されて集電体33と正極タブ21tとが溶接されている。この実施形態では、透明材料Gと集電体33とに正極タブ21tが挟み込まれることで、集電体33に重ねられた正極タブ21tの上に透明材料Gが配置されて、集電体33に正極タブ21tが隙間なく重ねられる。そして、透明材料Gを貫通するようにレーザLAが照射されることによって、隙間なく重ねられた集電体33に正極タブ21tをレーザ溶接することができる。これにより正極タブ21tと集電体33との溶接部91にボイドが発生するのを抑制することができ、延いては、二次電池100の電池抵抗の上昇を抑制することができる。
【0063】
電極体20は、正極タブ21tを複数備えている。この製造方法では、複数の正極タブ21tを重ね合わせた状態で、集電体33と透明材料Gとの間に挟み込む。ここでは、正極タブ21tと集電体33とを隙間なく重ねられるとともに、正極タブ21tと正極タブ21tとの間に隙間が生じるのを抑制することができる。そのため、正極タブ21tと集電体33との溶接部91にボイドが発生するのをよりよく抑制することができる。
【0064】
この製造方法では、溶接工程において、透明材料Gを用いて100N以上の圧力で正極タブ21tを押圧した状態でレーザLAを照射する。正極タブ21tを集電体33に対して押圧するため、より効果的に、正極タブ21tと集電体33とを隙間なく重ねられる。そのため、正極タブ21tと集電体33との溶接部91にボイドが発生するのをよりよく抑制することができる。
【0065】
この製造方法で用いられる透明材料Gの、正極タブ21tとの接触面G1の径Dは、レーザLAの照射径Dよりも大きい。レーザLAを照射する部位(例えば溶接予定部位)を透明材料Gでカバーすることができるため、正極タブ21tと集電体33との溶接部91におけるボイド発生抑制効果をよりよく実現することができる。
【0066】
この製造方法は、溶接後、透明材料Gの正極タブ21tとの接触面(面G1)を洗浄することを含む。透明材料Gの面G1を洗浄することで、透明材料Gをリサイクルすることができる。また、洗浄によって溶接時の付着物を取り除くことで、正極タブ21tと集電体33との溶接部91におけるボイド発生抑制効果をよりよく実現することができる。
【0067】
この製造方法では、透明材料Gとして、800℃以上の融点を有する透明材料が用いられる。レーザ照射中における透明材料Gの破損を抑制し、より安定的なレーザ溶接を実現することができる。
【0068】
この製造方法では、透明材料Gとして、結晶化ガラス、石英ガラス、フッ化バリウムガラス、フッ化カルシウムガラス、およびサファイヤガラスからなる群から選ばれた少なくとも一種の透明材料を用いる。かかる材質の透明材料Gは、正極タブ21tと集電体33との溶接部91におけるボイド発生抑制効果を実現するのに好適である。
【0069】
この製造方法を実施すると、二次電池100を製造することができる。二次電池100では、正極タブ21tは、集電体33にレーザ溶接されている。図6に示されているように正極タブ21tと集電体33との溶接部91では、正極タブ21tと集電体33とが、隙間なく重ねられた状態で溶接されている。溶接部91において、正極タブ21tと集電体33とが隙間なく重ねられた状態で溶接されていることは、例えば、正極タブ21tと集電体33との重ね合わせ方向に沿った断面を走査電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)で観察することによって確認されうる。例えば、上記SEM観察を行うと、正極タブ21tと集電体33との溶接部91にボイドが観察されない(詳しくは、後述の試験例参照)。正極タブ21tと集電体33との溶接部91におけるボイドの発生が抑制されていることによって、二次電池100の電池抵抗の上昇が抑制されうる。
【0070】
また、二次電池100では、電極体20は、正極タブ21tを複数備えている。複数の正極タブ21tは、重ね合わされた状態で集電体33に溶接されている。ここでは、正極タブ21tと集電体33との溶接部91における、ボイドの発生がよりよく抑制されている。
【0071】
二次電池100は、各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle (PHEV))、ハイブリッド自動車(Hybrid Electric Vehicle (HEV))、電気自動車(Battery Electric Vehicle (BEV))等が挙げられる。
【0072】
以下、本発明者が行った、ここで開示される二次電池の製造方法における正極タブ21tと集電体33とのレーザ溶接の一試験例を説明する。
【0073】
<実施例>
電極タブとしての60枚のアルミニウム箔(A1050、厚み:15μm)と、集電体としてのアルミニウム板(A1050、厚み:800μm)と、透明材料としての円柱状(径:10mm)のサファイヤガラスと、を用意した。アルミニウム箔を重ね合わせて、アルミニウム板上に配置した。次いで、重ね合わせられたアルミニウム箔の最上面に、サファイヤガラスを配置し、アルミニウム箔を、アルミニウム板とサファイヤガラスとの間に挟み込んだ。次いで、サファイヤガラスの上にバネ加圧の任意の治具を用いて、100Nの圧力で、アルミニウム箔をアルミニウム板に対して押圧した。このように押圧した状態で、サファイヤガラスを貫通するようにファイバーレーザ(波長:1070nm、照射径:0.6mm)を照射して、アルミニウム箔とアルミニウム板とを溶接した。
【0074】
<比較例>
サファイヤガラスを使用しなかった。そのため、サファイヤガラスとアルミニウム板との間にアルミニウム箔を挟み込まなかった。それ以外は、実施例と同様の材料および手順を用いてアルミニウム箔とアルミニウム板とを溶接した。
【0075】
溶接後、実施例および比較例のアルミニウム箔とアルミニウム板との溶接部位の断面を、SEMにて観察した。観察倍率は、50倍であった。図7は、実施例のSEM観察像である。図8は、比較例のSEM観察像である。図7,8に記載のスケールバーは、200μmを示している。図7,8に関して、図中の左上にある積層構造は積層されたアルミニウム箔である。当該積層構造の下側には、アルミニウム箔が示されている(図中の左下)。当該積層構造の右側には、アルミニウム箔とアルミニウム板との溶接部が示されている(図中の右上)。
【0076】
図7に示されているように、サファイヤガラスとアルミニウム板との間にアルミニウム箔を挟み込んだ後、サファイヤガラスを貫通するようにレーザを照射してアルミニウム箔とアルミニウム板とを溶接した、実施例では、アルミニウム箔とアルミニウム板との溶接部において、アルミニウム箔とアルミニウム板との間でボイドの発生が抑制されていた。一方、図8に示されているように、サファイヤガラスを使用しなかった比較例では、アルミニウム箔とアルミニウム板との溶接部において、ボイドの発生が観察された。
【0077】
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0078】
例えば、上記実施形態では正極側および負極側のいずれでも、透明材料Gを用いた電極タブと集電体との溶接を行った。しかし、これに限定されず、正極側および負極側のいずれか少なくとも一方で、透明材料Gを用いた電極タブと集電体との溶接を行えばよい。
【0079】
また、上記実施形態では、電池ケース10に収容した電極体20は、1つであった。しかし、これに限定されない。例えば、2つの電極体20を収容してもよい。この場合、例えば、2つの電極体20は、集電体33および集電体43に対して、正極タブ21tと負極タブ22tとを向けて対称に配置される(図4参照)。そして、正極タブ21tと負極タブ22tとは、集電体33および集電体43に重ねられて接合される。
【0080】
また、上記実施形態では、電極体20の電極シートの短手方向における同じ端部に正極タブ21tおよび負極タブ22tが設けられていた。しかし、これに限定されない。上記短手方向の一方の端部に正極タブ21tが設けられ、他方の端部に負極タブ22tが設けられてもよい。
【0081】
また、電極体20の形状は、上述の形状に限定されない。例えば、上記実施形態では、電極タブが、シート短手方向の一の端部から突出した矩形状の電極タブであった。しかし、電極タブは、例えば、シート短手方向の一の端部において、シート長手方向に沿って帯状に設けられた活物質層未形成部であってもよい。例えば、かかる活物質層未形成部を有する正極シートおよび負極シートを、セパレータを介在させつつ、シート短手方向の片側に正極活物質層未形成部が突出し、もう一方に負極活物質層未形成部が突出するように重ね合わせて捲回する。そして、正負極の活物質層未形成部を集箔して、それぞれ正負極集電体と溶接する。このような形状の捲回電極体を用いてもよい。また、上記実施形態では、電極体20は、捲回電極体であった。しかし、これに限定されない。電極体20は、矩形シート状の正極シートと矩形シート状の負極シートとが、矩形シート状のセパレータを介して積層された積層電極体であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 電池ケース
20 電極体
21 正極シート
21a 正極集電箔
21b 正極活物質層
21t 正極タブ
22 負極シート
22a 負極集電箔
22b 負極活物質層
22t 負極タブ
23 セパレータ
29 絶縁フィルム
30 正極端子
31 外部端子
32 接続部材
33 集電体
40 負極端子
41 外部端子
42 接続部材
43 集電体
50 外部絶縁部材
60 内部絶縁部材
91、92 溶接部
100 二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8