(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】発光装置及び光通信システム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/195 20200101AFI20241219BHJP
H05B 39/10 20060101ALI20241219BHJP
H04B 10/80 20130101ALI20241219BHJP
【FI】
H05B47/195
H05B39/10
H04B10/80
(21)【出願番号】P 2022035348
(22)【出願日】2022-03-08
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】西谷 明彦
(72)【発明者】
【氏名】吉原 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】川田 亮一
(72)【発明者】
【氏名】小島 淳一
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-005157(JP,A)
【文献】特開2006-352562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/195
H05B 39/10
H04B 10/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中におけるそれぞれが異なる向きに光を発する複数の発光体を有する光源と、
前記水中を移動する移動体の位置
と時刻とが関連付けられた移動計画データを参照することにより前記移動体の位置を特定する位置特定部と、
前記複数の発光体のうち、現在時刻における前記移動体の位置に向けて光を発する一以上の発光体が光を発し、当該一以上の発光体以外の発光体の発光強度を前記一以上の発光体の発光強度よりも小さくするように前記光源を制御する動作制御部と、
を有する発光装置。
【請求項2】
水中におけるそれぞれが異なる向きに光を発する複数の発光体を有する光源と、
前記水中を移動する移動体の位置を特定する位置特定部と、
前記複数の発光体のうち、現在時刻における前記移動体の位置に向けて光を発する一以上の発光体が光を発し、当該一以上の発光体以外の発光体の発光強度を前記一以上の発光体の発光強度よりも小さくするように前記光源を制御する動作制御部と、
前記移動体が送信した通知データを受信するデータ受信部と、
を有し、
前記動作制御部は、前記データ受信部が、前記一以上の発光体が発する光の強度が不足していることを示す前記通知データを受信した場合に、前記一以上の発光体が発する光の強度、又は光を発する前記一以上の発光体の数を増加させるように前記光源を制御する、発光装置。
【請求項3】
前記動作制御部は、前記移動計画データに含まれている前記移動体の複数の位置に対応する複数の時刻の間隔以下の時間間隔で前記移動計画データを参照することにより前記光源を制御する、
請求項
1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記移動計画データにおいては、前記移動体の位置を示す情報として緯度、経度及び深度を示す情報が含まれており、
前記動作制御部は、前記光源の緯度及び経度と、前記移動体の緯度、経度及び深度との関係に基づいて、前記光源に対する前記移動体の向きを特定し、特定した前記移動体の向きに対応する前記一以上の発光体が光を発するように前記光源を制御する、
請求項
1又は3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記位置特定部は、前記水中に向けて測定用信号を発した後に検出される前記移動体で反射した信号、又は前記移動体が送信した信号の少なくともいずれかに基づいて前記移動体の位置を特定する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記位置特定部は、複数の前記移動体の位置を特定し、
前記動作制御部は、前記複数の移動体の位置に向けて光を発する一以上の前記発光体が光を発するように前記光源を制御する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記動作制御部は、前記複数の移動体から一以上の移動体を選択し、選択した前記一以上の移動体の位置に対応する前記一以上の発光体が光を発するように前記光源を制御する、
請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記動作制御部は、前記光源と前記移動体との距離に基づいて前記一以上の移動体を選択する、
請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記動作制御部は、一定の時間間隔で、前記移動体の位置に対応する向きと異なる向きに対応する前記複数の発光体を点灯させるように前記光源を制御する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記水中に向けて音響を発する音響通信部をさらに有し、
前記動作制御部は、前記光源が光を発しない状態になった場合に、音響の発生を開始するように前記音響通信部を制御する、
請求項1から
9のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
水中を移動する移動体と、前記水中に向けて光を発する発光装置と、を備え、
前記発光装置は、
前記水中におけるそれぞれが異なる向きに光を発する複数の発光体を有する光源と、
前記移動体の位置
と時刻とが関連付けられた移動計画データを参照することにより前記移動体の位置を特定する位置特定部と、
前記複数の発光体のうち、現在時刻における前記移動体の位置に向けて光を発する一以上の発光体が光を発し、当該一以上の発光体以外の発光体の発光強度を前記一以上の発光体の発光強度よりも小さくするように前記光源を制御する動作制御部と、
を有し、
前記移動体は、
前記光源が発した光を受ける受光体と、
前記受光体が受けた光により前記発光装置から通知される情報に基づいて動作する動作部と、
を有する光通信システム。
【請求項12】
水中を移動する移動体と、前記水中に向けて光を発する発光装置と、を備え、
前記発光装置は、
前記水中におけるそれぞれが異なる向きに光を発する複数の発光体を有する光源と、
前記移動体の位置を特定する位置特定部と、
前記複数の発光体のうち、現在時刻における前記移動体の位置に向けて光を発する一以上の発光体が光を発し、当該一以上の発光体以外の発光体の発光強度を前記一以上の発光体の発光強度よりも小さくするように前記光源を制御する動作制御部と、
前記移動体が送信した通知データを受信するデータ受信部と、
を有し、
前記移動体は、
前記光源が発した光を受ける受光体と、
前記受光体が受けた光により前記発光装置から通知される情報に基づいて動作する動作部と、
を有
し、
前記動作制御部は、前記データ受信部が、前記一以上の発光体が発する光の強度が不足していることを示す前記通知データを受信した場合に、前記一以上の発光体が発する光の強度、又は光を発する前記一以上の発光体の数を増加させるように前記光源を制御する、
光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中で光無線通信をする技術が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】国立大学法人東京海洋大学、ソフトバンク株式会社、「世界初、水中で通信対象を自律的に追尾するトラッキング技術による光無線通信の実証に成功」、[online]、2021年10月22日、[令和4年2月12日検索]、インターネット<URL:https://www.kaiyodai.ac.jp/topics/img/47e4607781bdd7756122a2facf152fae_2.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載された技術においては、親機が姿勢を変化させる機構を有しており、親機が子機の位置に応じて姿勢を変化させていた。親機の姿勢を変化させるためには大きな電力が必要であるという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、親機の姿勢を変化させることなく水中を移動する子機との間で光無線通信を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の発光装置は、水中におけるそれぞれが異なる向きに光を発する複数の発光体を有する光源と、前記水中を移動する移動体の位置を特定する位置特定部と、前記複数の発光体のうち、現在時刻における前記移動体の位置に向けて光を発する一以上の発光体が光を発し、当該一以上の発光体以外の発光体の発光強度を前記一以上の発光体の発光強度よりも小さくするように前記光源を制御する動作制御部と、を有する。
【0007】
前記位置特定部は、前記移動体の位置と時刻とが関連付けられた移動計画データを参照することにより前記移動体の位置を特定してもよい。
【0008】
前記動作制御部は、前記移動計画データに含まれている前記移動体の複数の位置に対応する複数の時刻の間隔以下の時間間隔で前記移動計画データを参照することにより前記光源を制御してもよい。
【0009】
前記移動計画データにおいては、前記移動体の位置を示す情報として緯度、経度及び深度を示す情報が含まれており、前記動作制御部は、前記光源の緯度及び経度と、前記移動体の緯度、経度及び深度との関係に基づいて、前記光源に対する前記移動体の向きを特定し、特定した前記移動体の向きに対応する前記一以上の発光体が光を発するように前記光源を制御してもよい。
【0010】
前記位置特定部は、前記水中に向けて測定用信号を発した後に検出される前記移動体で反射した信号、又は前記移動体が送信した信号の少なくともいずれかに基づいて前記移動体の位置を特定してもよい。
【0011】
前記位置特定部は、複数の前記移動体の位置を特定し、前記動作制御部は、前記複数の移動体の位置に向けて光を発する一以上の前記発光体が光を発するように前記光源を制御してもよい。
【0012】
前記動作制御部は、前記複数の移動体から一以上の移動体を選択し、選択した前記一以上の移動体の位置に対応する前記一以上の発光体が光を発するように前記光源を制御してもよい。
【0013】
前記動作制御部は、前記光源と前記移動体との距離に基づいて前記一以上の移動体を選択してもよい。
【0014】
前記動作制御部は、一定の時間間隔で、前記移動体の位置に対応する向きと異なる向きに対応する前記複数の発光体を点灯させるように前記光源を制御してもよい。
【0015】
前記発光装置は、前記移動体が送信した通知データを受信するデータ受信部をさらに有し、前記動作制御部は、前記データ受信部が、前記一以上の発光体が発する光の強度が不足していることを示す前記通知データを受信した場合に、前記一以上の発光体が発する光の強度、又は光を発する前記一以上の発光体の数を増加させるように前記光源を制御してもよい。
【0016】
前記発光装置は、前記水中に向けて音響を発する音響通信部をさらに有し、前記動作制御部は、前記光源が光を発しない状態になった場合に、音響の発生を開始するように前記音響通信部を制御してもよい。
【0017】
本発明の第2の態様の光通信システムは、水中を移動する移動体と、前記水中に向けて光を発する発光装置と、を備え、前記発光装置は、前記水中におけるそれぞれが異なる向きに光を発する複数の発光体を有する光源と、前記移動体の位置を特定する位置特定部と、前記複数の発光体のうち、現在時刻における前記移動体の位置に向けて光を発する一以上の発光体が光を発し、当該一以上の発光体以外の発光体の発光強度を前記一以上の発光体の発光強度よりも小さくするように前記光源を制御する動作制御部と、を有し、前記移動体は、前記光源が発した光を受ける受光体と、前記受光体が受けた光により前記発光装置から通知される情報に基づいて動作する動作部と、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、親機の姿勢を変化させることなく水中を移動する子機との間で光無線通信を行えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】光通信システムSの概要を説明するための図である。
【
図6】方位角及び俯角について説明するための図である。
【
図7】発光装置2における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[光通信システムSの概要]
図1は、光通信システムSの概要を説明するための図である。光通信システムSは、水中を移動する移動体1と水面付近に設置された発光装置2との間で光信号を用いて通信するためのシステムである。
図1に示す例において、光通信システムSは、複数の移動体1(移動体1-1及び移動体1-2)、発光装置2、並びに監視制御装置3を備える。移動体1と発光装置2とは、光通信システムSにおける子機と親機の関係を有する。
【0021】
移動体1は、水中を移動する職業潜水士、レジャーダイバー又は水中観光客等(以下、「ユーザ」という)が保持又は装着して使用する通信端末である。移動体1は、例えば、ディスプレイ、操作部及び通信機能を有するスマートフォンのような端末であり、電池により動作する。複数の移動体1のそれぞれには、移動体1を識別するための移動体識別情報(以下、「移動体ID」という)が割り当てられている。
【0022】
移動体1は、発光装置2との間で、指向性がある光信号を用いて通信する。指向性がある光は、例えばLED光(発光ダイオード光)又はレーザ光である。移動体1は、例えば40m程度の水深でも使用できるように、6気圧程度に耐えられる防水耐圧容器内に密封されている。
【0023】
発光装置2は、水面付近に設置されるので、水深1m程度における水圧に耐えられる容器内に密封されている。
図1に示すように、発光装置2は複数の発光体211により構成される光源21を有する。発光装置2は、複数の受光体221により構成される受光部22を有していてもよい。
【0024】
複数の発光体211は、例えばレーザダイオードであり、それぞれが水中の異なる方向に光を発することができる。複数の受光体221は、例えば光センサであり、それぞれが水中の異なる方向から移動体1が発した光を受けることができる。複数の発光体211及び複数の受光体221は、それぞれ発光装置2における水に接する曲面における異なる位置に設けられている。
【0025】
発光装置2は、移動体1の位置に向けて光信号を発し、移動体1が発した光信号を受けることにより、移動体1との間で通信する。発光装置2は、複数の発光体211のうち、移動体1の位置に対応する位置に設けられた発光体211から光を発することにより、移動体1の位置に向けて光信号を発する。一例として、移動体1及び発光装置2は、送信するべきデータの内容に基づいて光を点滅させることで、光信号によりデータを送信することができる。
【0026】
また、発光装置2は、複数の受光体221のうち、移動体1の位置に対応する位置に設けられた受光体221により、移動体1が発した光を受ける。複数の受光体221は、移動体1が発する情報(例えば位置を示す位置情報)を含む光信号を受けることができるように常に動作状態になっていてもよいが、移動体1の位置に対応する受光体221のみが動作状態になっていてもよい。
【0027】
このように、発光装置2が複数の発光体211及び複数の受光体221のうち、移動体1の位置に対応する発光体211及び受光体221を用いることで、発光装置2が姿勢を変更することなく移動体1と光通信することができる。また、発光装置2は、複数の発光体211及び複数の受光体221のうち、移動体1の位置に対応する発光体211及び受光体221を用いることで、全ての発光体211及び受光体221を同時に動作させる場合に比べて消費電力を抑制することができるので、電池で動作する発光装置2に特に好適である。
【0028】
監視制御装置3は、発光装置2を制御するための装置であり、例えばコンピュータである。監視制御装置3は、移動体1が水中で移動する時刻ごとの位置を示す移動計画データの入力を受けて、移動計画データを発光装置2に通知する。発光装置2は、一例として、通知された移動計画データを参照することにより移動体1の位置を特定する。
以下、移動体1及び発光装置2の構成及び動作を詳細に説明する。
【0029】
[移動体1の構成]
図2は、移動体1の構成を示す図である。移動体1は、発光体11と、受光体12と、操作部13と、表示部14と、記憶部15と、動作部16と、を有する。
【0030】
発光体11は、発光装置2に向けて光を発するデバイスであり、例えば発光ダイオード又はレーザダイオードである。受光体12は、発光装置2から受けた光を検出するデバイスであり、例えば光センサである。
【0031】
操作部13は、移動体1を使用するユーザの操作を受け付けるためのデバイスであり、例えば各種のキー又はタッチパネルにより構成されている。表示部14は、ユーザに情報を表示するためのデバイスであり、例えばディスプレイである。
【0032】
記憶部15は、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)を有しており、各種のデータを記憶する記憶媒体を有する。記憶部15は、例えば動作部16が実行するプログラムを記憶する。記憶部15は、発光装置2から送信された各種のデータを記憶してもよい。
【0033】
動作部16は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。動作部16は、記憶部15に記憶されたプログラムを実行することにより、発光体11を制御して光を発光させたり、受光体12が受けた光の点滅パターンにより特定されるデータを表示部14に表示させたりする。
【0034】
[発光装置2の構成]
図3は、発光装置2の構成を示す図である。発光装置2は、光源21と、受光部22と、データ通信部23と、音響通信部24と、記憶部25と、制御部26と、音響測位部27と、を有する。制御部26は、データ取得部261と、位置特定部262と、データ受信部263と、動作制御部264と、を有する。一つの筐体にこれらの構成部が含まれていてもよく、光源21、受光部22及び音響通信部24と他の構成部とが異なる筐体に収容されていてもよい。記憶部25及び制御部26は、監視制御装置3に含まれていてもよい。
【0035】
光源21は、水中におけるそれぞれが異なる向きに光を発する複数の発光体211を有する。光源21は、動作制御部264の制御に基づいて、複数の発光体211のうち一以上の発光体211が発光する。
【0036】
受光部22は、移動体1が発射した光を受ける複数の受光体221を有する。受光部22は、動作制御部264の制御に基づいて、複数の受光体221のうち一以上の受光体221が光を検出する。
【0037】
データ通信部23は、監視制御装置3との間でデータを送受信するための通信インターフェースである。データ通信部23は、例えばインターネットに接続するための通信コントローラを有するが、データ通信部23は無線通信回線に接続するための通信コントローラを有していてもよい。データ通信部23は、例えば監視制御装置3から移動計画データを受信し、受信した移動計画データをデータ取得部261に通知する。
【0038】
音響測位部27は、移動体1の位置情報を計測するための音響信号を移動体1とやり取りするための通信インターフェースであり移動体1の位置情報を計測する機能を有する。音響測位部27は、例えば音響を発生する音源及びスピーカ、並びに移動体1が発した音響を検出するマイクロホンを有し、移動体1と測位用の音響信号をやりとりし、その信号から移動体1の緯度経度、深度、距離を計測する。音響測位部27は、計測した移動体1の現在位置情報を位置特定部262に通知する。
【0039】
音響通信部24は、移動体1との間で音響により通信するための通信インターフェースである。音響通信部24は、例えば音響を発生する音源及びスピーカ、並びに移動体1が発した音響を検出するマイクロホンを有する。音響通信部24は、動作制御部264の制御に基づいて移動体1に通知するべきデータを示す音響を発したり、検出した音響が示すデータを動作制御部264に通知したりする。
【0040】
記憶部25は、ROM、RAM及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部25は、例えば監視制御装置3から取得した移動計画データを記憶する。また、記憶部25は、制御部26が実行するプログラムを記憶する。
【0041】
図4は、移動計画データの一例を示す図である。移動計画データは、移動体1の位置と時刻とが関連付けられたデータである。
図4に示す移動計画データにおいては、到着時刻と、移動体1の位置を示す情報としての緯度、経度及び深度と、移動体1の滞在時間とが関連付けられている。
図4に示す移動計画データは、例えば1台の移動体1の位置の変化を示すデータであり、記憶部25は、複数の移動体1それぞれを識別するための移動体IDに関連付けて複数の移動計画データを記憶していてもよい。
【0042】
記憶部25は、複数の発光体それぞれが光を発する方向を示す発光体データをさらに記憶する。
図5は、発光体データの一例を示す図である。
図5に示す発光体データにおいては、発光体211を識別するための発光体IDと、発光体211が発した光が到達する範囲を示す方位角の範囲と俯角の範囲とが関連付けられている。
【0043】
図6は、方位角及び俯角について説明するための図である。
図6(a)は、発光装置2における複数の発光体211が設けられている半球状の領域の斜視図であり、
図6(a)には1つの発光体211-X(Xは自然数)が示されている。方位角は、水平面Pにおける基準方向Rに対する角度であり、
図6(a)は、発光体211-Xが発する光が方位角θ1からθ2までの範囲に到達することを示している。
【0044】
図6(b)は、発光装置2における複数の発光体211-Xが設けられている半球状の領域を横から見た図であり、
図6(a)に示した発光体211-Xが示されている。俯角は、水平面Pに対する角度であり、
図6(b)は、発光体211-Xが発する光が俯角γ1からγ2までの範囲に到達することを示している。すなわち、発光体211-Xが発する光は、方位角がθ1からθ2であり、かつ俯角がγ1からγ2までの範囲に到達する。
【0045】
制御部26は、例えばCPUである。制御部26は、記憶部25に記憶されたプログラムを実行することにより、データ取得部261、位置特定部262、データ受信部263及び動作制御部264として機能する。
【0046】
データ取得部261は、データ通信部23を介して監視制御装置3から各種のデータを取得する。データ取得部261は、例えば移動計画データを取得し、取得した移動計画データを位置特定部262に通知する。データ取得部261は、取得した移動計画データを記憶部25に記憶させることにより、移動計画データを位置特定部262に通知してもよい。
【0047】
位置特定部262は、水中を移動する移動体1の位置を特定する。一例として、位置特定部262は、移動体1の位置と時刻とが関連付けられた移動計画データを参照することにより移動体1の位置を特定する。すなわち、位置特定部262は、
図4に示す移動計画データにおける到着時刻、緯度・経度・深度及び滞在時間を参照することにより、どの移動体1がどの時点でどの位置に滞在しているかを特定する。位置特定部262は、所定の時間間隔(例えば1秒)で、移動体1の位置を動作制御部264に通知する。位置特定部262が移動計画データを参照して移動体1の位置を特定することで、移動体1が発光装置2に位置を示す位置情報を送信する機能がない場合にも、位置特定部262は移動体1の位置を特定することができる。
【0048】
図4に示す移動計画データにおいては、移動体1が移動している間の位置が示されていない。滞在している位置と次に滞在する位置との間の移動にn秒を要する場合、位置特定部262は、滞在している位置と次に滞在する位置とを結ぶ直線をnの線分に分割し、それぞれの線分の端部の位置を特定することにより、単位時間(例えば1秒)ごとの移動体1の位置を特定する。位置特定部262は、時刻に関連付けて、特定した位置を記憶部25に記憶させる。位置特定部262は、特定した位置を示すデータと時刻を示すデータとを移動計画データに追加してもよい。
【0049】
位置特定部262は、リアルタイムで発光装置2の位置を特定してもよい。位置特定部262がリアルタイムで移動体1の位置を特定する方法は任意であり、位置特定部262は、水中に向けて測定用信号を発した後に検出される移動体1で反射した信号、又は移動体1が送信した信号の少なくともいずれかに基づいて移動体1の位置を特定してもよい。具体的には、位置特定部262は、不図示のLiDAR(Light Detection and Ranging)装置を用いて水中に照射したレーザ光が物体に当たって戻ってくるまでの時間に基づいて、物体までの距離及び方向を特定してもよい。また、位置特定部262は、音響測位部27が移動体1の位置情報を計測するために送受信した音響信号に基づいて移動体1の緯度経度、深度、距離を計測してもよい。
【0050】
移動体1が定期的に音響信号を発信し、音響測位部27が複数のマイクロホンを有しており、位置特定部262は、複数のマイクロホンが受信した音響信号の位相差に基づいて移動体1の方向を特定してもよい。さらに、移動体1と発光装置2とが予め同期しており、位置特定部262は、移動体1が音響信号を発信するタイミングから発光装置2が当該音響信号を受信するまでの遅延時間の大きさに基づいて発光装置2から移動体1までの距離を特定してもよい。
【0051】
また、位置特定部262は、複数の移動体1の位置を特定してもよい。この場合、位置特定部262は、例えば、所定の時間間隔で、移動体1を識別するための移動体IDに関連付けて、複数の移動体1のそれぞれの位置を記憶部25に記憶させる。
【0052】
データ受信部263は、各種のデータを移動体1から受信する。データ受信部263は、例えば、移動体1において撮影された水中の映像データを受信する。また、データ受信部263は、受光部22を介して、移動体1が送信した通知データを受信する。通知データは、例えば移動体1のユーザが移動体1を操作することにより移動体1が送信するデータである。通知データは、移動体1又はユーザの状態を示すデータであり、例えば、一以上の発光体211が発する光を移動体1が受けられていることを示すデータ、又は一以上の発光体211が発する光の強度が不足していることを示すデータである。データ受信部263は、受信した通知データを動作制御部264に通知する。
【0053】
動作制御部264は、複数の発光体211及び複数の受光体221を制御する。動作制御部264は、例えば、複数の発光体211のうち、現在時刻における移動体1の位置に向けて光を発する一以上の発光体211が光を発し、当該一以上の発光体211以外の発光体211の発光強度を一以上の発光体211の発光強度よりも小さくするように光源21を制御する。一例として、動作制御部264は、現在時刻における移動体1の位置に向けて光を発する一以上の発光体211以外の発光体211が光を発しないようにしてもよい。動作制御部264が、移動体1の位置に対応していない発光体211の発光強度を小さくすることで、発光装置2は消費電力を小さくすることができるので、発光装置2が電池で動作する場合に好適である。
【0054】
動作制御部264は、例えば
図5に示した発光体データを参照し、複数の発光体211が発射した光が到達する複数の範囲のうち、位置特定部262が特定した移動体1の位置が含まれる範囲を特定する。動作制御部264は、特定した範囲に対応する一以上の発光体211を選択し、選択した一以上の発光体211に発光させる。
【0055】
動作制御部264は、例えば光源21の緯度及び経度と、移動体1の緯度、経度及び深度との関係に基づいて、光源に対する移動体1の向きを特定し、特定した移動体1の向きに対応する一以上の発光体211が光を発するように光源21を制御する。具体的には、動作制御部264は、複数の発光体211が光を発する複数の方向に対応する直線を結ぶ位置(例えば
図6における位置C)の緯度・経度・深度と、移動体1の緯度・経度・深度との関係に基づいて、
図6に示した基準方向Rに対する、位置Cと移動体1とを結ぶ直線の方向を算出する。
【0056】
より具体的には、動作制御部264は、移動体1の緯度・経度・深度を、位置Cを原点とする三次元座標に置換し、三次元座標を極座標に変換することにより方位角及び俯角を算出する。動作制御部264は、
図5を参照し、算出した方位角及び俯角が含まれる範囲に光を発することができる一以上の発光体211を選択する。
【0057】
水中を複数の移動体1が移動している場合、動作制御部264は、複数の移動体1の位置に向けて光を発する一以上の発光体211が光を発するように光源21を制御する。例えば移動体1-1が、
図5における発光体ID211-1の発光体211が発射した光が到達する範囲にあり、移動体1-2が、
図5における発光体ID211-20の発光体211が発射した光が到達する範囲にある場合、動作制御部264は、発光体ID211-1の発光体211及び発光体ID211-20の発光体211に光を発射させる。このように動作制御部264が動作することで、発光装置2が複数の移動体1と同時に通信することができる。
【0058】
動作制御部264は、複数の移動体1から一以上の移動体1を選択し、選択した一以上の移動体1の位置に対応する一以上の発光体211が光を発するように光源21を制御してもよい。動作制御部264は、例えば、予め管理者により設定され、記憶部25に記憶された複数の移動体1の優先順位に基づいて、優先順位が高い所定の台数(例えば3台)の移動体1を選択してもよい。動作制御部264は、管理者により設定され記憶部25に記憶された複数の移動体IDに対応する複数の移動体1を選択してもよい。動作制御部264がこのように動作することで、発光装置2の消費電力が大きくなり過ぎることを防げる。
【0059】
動作制御部264は、光源21と移動体1との距離に基づいて一以上の移動体1を選択してもよい。一例として、動作制御部264は、複数の移動体1のうち、光源21からの距離が相対的に近い所定の台数の移動体1を選択する。動作制御部264が相対的に近い移動体1を選択することで、発光装置2は、比較的浅い領域を移動する初心者が使用する移動体1と確実に通信することが可能になる。動作制御部264は、複数の移動体1のうち、光源21からの距離が相対的に遠い所定の台数の移動体1を選択してもよい。動作制御部264が相対的に遠い移動体1を選択することで、発光装置2は、深い位置を移動しており事故に遭遇している可能性があるユーザが使用する移動体1と確実に通信することが可能になるので、安全性が向上する。
【0060】
移動体1が、発光装置2を介して外部にデータ(例えば、撮像画像データ)を送信する機能を有する場合、動作制御部264は、移動体1が蓄積しているデータの量が相対的に多い端末を優先して選択してもよい。動作制御部264がこのように動作することで、移動体1がデータを記憶するメモリが不足してしまい、新たに発生したデータを記憶することができなくなってしまうことを防げる。
【0061】
水中を移動するユーザの安全性を向上させるために、動作制御部264は、一定の時間間隔で、移動体1の位置に対応する向きと異なる向きに対応する複数の発光体211を点灯させるように光源21を制御してもよい。具体的には、動作制御部264は、移動体1と通信するために点灯することが必要な発光体211以外の発光体211も一斉に点灯させる。動作制御部264は、全ての発光体211を点灯させてもよく、一部の発光体211を点灯させてもよい。
【0062】
動作制御部264は、ユーザの安全性を向上させるために一定の時間間隔で一部の発光体211を点灯させる場合、点灯させる発光体211に対応する方向が一部の方向に偏らないように、位置が所定の距離だけ離れた発光体211ごとに点灯させることが好ましい。このように、動作制御部264が一定の時間間隔で多数の発光体211を点灯させることで、移動体1が発光装置2と通信できない状況になったとしても、移動体1のユーザが発光装置2の位置を視認することが可能になり、安全性が向上する。
【0063】
なお、動作制御部264は、移動計画データに含まれている移動体1の複数の位置に対応する複数の時刻の間隔以下の時間間隔で移動計画データを参照することにより光源21を制御する。具体的には、移動計画データの到着時刻が10秒単位の時刻により示されている場合、動作制御部264は、10秒未満(例えば5秒)の間隔で移動計画データを参照し、10秒未満の間隔で、光を発する発光体211を切り替えられるように動作する。
【0064】
動作制御部264は、位置特定部262が移動体1の位置を特定する時間間隔以下の時間間隔で光源21を制御してもよい。具体的には、位置特定部262が1秒間隔で移動体1の位置を特定する場合、動作制御部264は1秒未満の時間間隔で、光を発する発光体211を切り替えるように動作する。動作制御部264がこのように動作することで、移動体1の位置が変化した場合に、光を発する発光体211を遅滞なく切り替えることができる。
【0065】
ところで、水の状態によっては、移動体1に到達する光の強度が不足してしまい移動体1と発光装置2との間の通信に支障が生じる場合がある。そこで、動作制御部264は、一以上の発光体211が発する光の強度が不足していることを示す通知データをデータ受信部263が移動体1から受信した場合に、一以上の発光体211が発する光の強度、又は光を発する一以上の発光体211の数を増加させるように光源21を制御してもよい。
【0066】
一例として、移動体1は、発光装置2から受ける光の強度を計測し、計測した強度が閾値以下である場合に、光の強度が不足していることを示す通知データを発光装置2に向けて送信する。移動体1は、計測した光の強度を示す通知データを発光装置2に向けて送信してもよい。移動体1は、発光装置2との間の通信の品質を示す情報を含む通知データを、光の強度が不足していることを示す通知データとして送信してもよい。
【0067】
動作制御部264は、光の強度が不足していることを示す通知データを受信した場合に、発光体211に流す電流を大きくしたり、発光体211の点滅デューティー比を大きくしたりすることにより、発光体211が発する光の強度を大きくする。動作制御部264は、移動体1から通知された光の強度と基準の強度との差に基づく大きさだけ光の強度を大きくしてもよい。また、動作制御部264は、光の強度が不足していると判定した場合に、点灯する発光体211の数を増やしてもよい。移動体1及び動作制御部264がこのように動作することで、発光装置2が送信するデータを移動体1が良好に受信できるようになる。
【0068】
また、光源21が故障したり、一部の発光体211が発光しなくなったりすることも想定される。そこで、動作制御部264は、光源21が光を発しない状態になった場合に、音響の発生を開始するように音響通信部24を制御してもよい。
【0069】
一例として、動作制御部264は、発光体211が発する光を検出できないことを示す通知データをデータ受信部263が移動体1から受信した場合に、当該移動体1の位置に対応する発光体211又は光源21が故障した可能性があると判定して音響通信機能を起動し、音響通信部24に音響の発生を開始させる。音響通信部24は、例えば、当該移動体1の移動体IDを含むデータを含む音響を発する。動作制御部264は、少なくとも一部の発光体211が故障した可能性があると判定した場合に、全ての移動体1が受信可能な音響を音響通信部24に発生させてもよい。
【0070】
[発光装置2における処理の流れ]
図7は、発光装置2における処理の流れを示すフローチャートである。位置特定部262は、音響測位部27から移動体1の位置を示す位置情報を受信したか否かを判定する(S1)。位置特定部262は、位置情報を受信していない場合(S1においてNO)、移動計画データを参照し(S2)、その時刻における移動体1の位置を特定する(S3)。位置特定部262は、位置情報を受信した場合(S1においてYES)、移動計画データを参照することなく処理をS4に進める。
【0071】
続いて、動作制御部264は、位置を特定した移動体1の数が閾値以上であるか否かを判定する(S4)。動作制御部264は、位置を特定した移動体1の数が閾値以上であると判定した場合(S4においてYES)、複数の移動体1のうち優先度が高い一部の移動体1を選択する(S5)。動作制御部264は、位置を特定した移動体1の数が閾値未満であると判定した場合(S4においてNO)、処理をS6に進める。
【0072】
続いて、動作制御部264は、位置を特定した移動体1又は選択した移動体1の位置に対応する発光体211を選択する(S6)。動作制御部264は、選択した発光体211を点灯させる(S7)。動作制御部264は、監視制御装置3から動作を終了させる指示を受けるまでの間(S8においてNO)、S1からS7までの処理を繰り返す。
【0073】
[光通信システムSによる効果]
発光装置2は、水中におけるそれぞれが異なる向きに光を発する複数の発光体211を有する光源21と、水中を移動する移動体1の位置を特定する位置特定部262を有する。そして、動作制御部264が、複数の発光体211のうち、現在時刻における移動体1の位置に向けて光を発する一以上の発光体211が光を発し、当該一以上の発光体211以外の発光体211の発光強度を一以上の発光体211の発光強度よりも小さくするように光源21を制御する。発光装置2がこのように構成されていることで、発光装置2が移動体1の位置に向けて光を発することができるので、発光装置2が姿勢を変化させることなく水中を移動する移動体1との間で光無線通信を行えるようになる。
【0074】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0075】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0076】
1 移動体
2 発光装置
11 発光体
12 受光体
13 操作部
14 表示部
15 記憶部
16 動作部
21 光源
22 受光部
23 データ通信部
24 音響通信部
25 記憶部
26 制御部
27 音響測位部
211 発光体
221 受光体
262 位置特定部
263 データ受信部
264 動作制御部