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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ドア開閉装置、及びドア開閉方法
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/73 20150101AFI20241219BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20241219BHJP
   E05F 15/77 20150101ALN20241219BHJP
【FI】
E05F15/73
B60J5/10 K
E05F15/77
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022054162
(22)【出願日】2022-03-29
(65)【公開番号】P2023146786
(43)【公開日】2023-10-12
【審査請求日】2024-10-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】徳留 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 悦朗
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 陽一
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-082390(JP,A)
【文献】特開2020-180523(JP,A)
【文献】特開2018-034793(JP,A)
【文献】特開2020-100963(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0214991(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対してドアを開閉する駆動部と、
前記ドアの周辺に設定された第1検出範囲内に存在する被検出物を繰り返し検出する第1検出部と、
前記第1検出部に対して水平方向に間隔をあけて配置され、前記第1検出範囲と一部が重複するように前記ドアの周辺に設定された第2検出範囲内に存在する前記被検出物を繰り返し検出する第2検出部と、
前記第1検出部の検出結果に基づいて前記第1検出部から前記被検出物までの第1距離を測定するとともに、前記第2検出部の検出結果に基づいて前記第2検出部から前記被検出物までの第2距離を測定する測定部と、
前記測定部が測定した前記第1距離と前記第2距離に基づいて、前記第1検出範囲及び前記第2検出範囲のうち一方の少なくとも一部を、前記被検出物による設定動作のうちの第1段階を検出するための第1区域に設定するとともに、前記第1検出範囲及び前記第2検出範囲のうち他方の一部を、前記設定動作のうちの第2段階を検出するための第2区域に設定する設定部と、
前記測定部が測定した前記第1距離の変化と前記第2距離の変化とによって、前記第1区域と前記第2区域の間の移動を含む前記設定動作を前記被検出物が行ったと判断すると、前記駆動部によって前記ドアを開閉する制御部と
を備え
前記設定部は、前記第1区域と前記第2区域の配置がそれぞれ異なる第1アクセスモードと第2アクセスモードに設定可能であり、
前記第1アクセスモードでは、前記第1検出範囲の一部を前記第1区域に設定するとともに、前記第2検出範囲の一部を前記第2区域に設定し、
前記第2アクセスモードでは、前記第2検出範囲の一部を前記第1区域に設定するとともに、前記第1検出範囲の一部を前記第2区域に設定する、ドア開閉装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記第1アクセスモード及び前記第2アクセスモードとは前記第1区域と前記第2区域の配置が異なる第3アクセスモードに更に設定可能であ、請求項に記載のドア開閉装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記第3アクセスモードでは、前記第1検出範囲と前記第2検出範囲の重複した領域のうち、前記ドアから離れて位置する一部を前記第1区域に設定し、前記第1区域よりも前記ドアに近い一部を前記第2区域に設定する、請求項2に記載のドア開閉装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記測定部が測定した前記第1距離と前記第2距離の差が設定範囲内であるとき、前記第3アクセスモードに設定する、請求項2又は3に記載のドア開閉装置。
【請求項5】
前記測定部が測定した前記第1距離の変化によって、前記第1検出部が検出した前記被検出物である第1被検出物が移動物及び静止物のいずれであるかを判定するとともに、前記測定部が測定した前記第2距離の変化によって、前記第2検出部が検出した前記被検出物である第2被検出物が移動物及び静止物のいずれであるかを判定する判定部を備え、
前記第1被検出物が移動物であり、前記第2被検出物が静止物であると前記判定部が判定すると、前記設定部は前記第1アクセスモードに設定し、
前記第1被検出物が静止物であり、前記第2被検出物が移動物であると前記判定部が判定すると、前記設定部は前記第2アクセスモードに設定し、
前記第1被検出物及び前記第2被検出物の両方が移動物であると前記判定部が判定すると、前記設定部は、前記測定部が測定した前記第1距離及び前記第2距離の差と設定範囲に基づいて、前記第1アクセスモード、前記第2アクセスモード、及び前記第3アクセスモードのうちのいずれかに設定する、
請求項2から4のいずれか1項に記載のドア開閉装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記測定部が測定した前記第1距離と前記第2距離の差が設定範囲外であり、前記第1距離よりも前記第2距離が長いとき、前記第1アクセスモードに設定する、請求項1から5のいずれか1項に記載のドア開閉装置。
【請求項7】
前記設定部は、前記測定部が測定した前記第1距離と前記第2距離の差が設定範囲外であり、前記第1距離よりも前記第2距離が短いとき、前記第2アクセスモードに設定する、請求項1から6のいずれか1項に記載のドア開閉装置。
【請求項8】
前記第1検出範囲は、前記第1検出部からの距離によって、第1部分と、この第1部分よりも前記ドアに近い第2部分とに区画され、
前記第2検出範囲は、前記第2検出部からの距離によって、第1部分と、この第1部分よりも前記ドアに近い第2部分とに区画されており、
前記設定部は、
前記第1アクセスモードでは、前記第1検出範囲の前記第1部分と前記第1検出範囲の前記第2部分のうち、前記第2検出範囲の前記第2部分が重複した領域以外を前記第1区域に設定するとともに、前記第2検出範囲の前記第2部分を前記第2区域に設定し、
前記第2アクセスモードでは、前記第2検出範囲の前記第1部分と前記第2検出範囲の前記第2部分のうち、前記第1検出範囲の前記第2部分が重複した領域以外を前記第1区域に設定するとともに、前記第1検出範囲の前記第2部分を前記第2区域に設定する、
請求項からのいずれか1項に記載のドア開閉装置。
【請求項9】
ドアの周辺に設定された第1検出範囲内に存在する被検出物を第1検出部によって繰り返し検出するとともに、前記第1検出範囲と一部が重複するように前記ドアの周辺に設定された第2検出範囲内に存在する前記被検出物を第2検出部によって繰り返し検出し、
前記第1検出部の検出結果に基づいて前記第1検出部から前記被検出物までの第1距離を測定するとともに、前記第2検出部の検出結果に基づいて前記第2検出部から前記被検出物までの第2距離を測定し、
測定した前記第1距離と前記第2距離に基づいて、前記第1検出範囲及び前記第2検出範囲のうち一方の少なくとも一部を、前記被検出物による設定動作のうちの第1段階を検出するための第1区域に設定するとともに、前記第1検出範囲及び前記第2検出範囲のうち他方の一部を、前記設定動作のうちの第2段階を検出するための第2区域に設定し、
測定した前記第1距離の変化と前記第2距離の変化とによって、前記第1区域と前記第2区域の間の移動を含む前記設定動作を前記被検出物が行ったと判断すると、前記ドアを開閉する、ドア開閉方法であって、
前記第1区域と前記第2区域の配置がそれぞれ異なる第1アクセスモードと第2アクセスモードに設定可能であり、
前記第1アクセスモードでは、前記第1検出範囲の一部を前記第1区域に設定するとともに、前記第2検出範囲の一部を前記第2区域に設定し、
前記第2アクセスモードでは、前記第2検出範囲の一部を前記第1区域に設定するとともに、前記第1検出範囲の一部を前記第2区域に設定する、
ドア開閉方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開閉装置、及びドア開閉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者がドアハンドルに触れることなく、ドアの開放と閉鎖を自動的に行うことが可能なドア開閉装置が知られている。ドア開閉装置は、超音波センサからなる一対の検出部を備え、検出部が発した超音波による扇形状の検出範囲内に存在する使用者を検出する。また、一対の検出部の検出結果から得られる距離の変化によって、使用者が定められた設定動作を行ったと判断すると、駆動部によってドアの開閉を行う。
【0003】
特許文献1には、一対の検出部の検出結果に基づいて使用者の進入位置を判断し、サイドアクセスモードとセンタアクセスモードのいずれかにモード設定を行って設定動作を検出し、ドアを開閉するようにしたドア開閉装置が開示されている。サイドアクセスモードでは、一対の検出部のうち一方の検出結果に基づいて、ドアに平行な方向に沿って行う使用者の設定動作を検出する。センタアクセスモードでは、一対の検出部それぞれの検出結果に基づいて、ドアに交差する方向に沿って行う使用者の設定動作を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-180523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検出部の検出範囲は、検出部から離れるに従って次第に広がる扇形状であるため、ドアの近傍では使用者を検出可能な領域が狭い。よって、サイドアクセスモードでは、使用者が設定動作を行うための領域(距離)の確保が困難である。この点で、特許文献1のドア開閉装置には、操作性について改善の余地がある。
【0006】
本発明は、使用者がドアに沿って設定動作を行う領域を確保でき、ドアを開閉する操作性を向上できるドア開閉装置、及びドア開閉方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車体に対してドアを開閉する駆動部と、前記ドアの周辺に設定された第1検出範囲内に存在する被検出物を繰り返し検出する第1検出部と、前記第1検出部に対して水平方向に間隔をあけて配置され、前記第1検出範囲と一部が重複するように前記ドアの周辺に設定された第2検出範囲内に存在する前記被検出物を繰り返し検出する第2検出部と、前記第1検出部の検出結果に基づいて前記第1検出部から前記被検出物までの第1距離を測定するとともに、前記第2検出部の検出結果に基づいて前記第2検出部から前記被検出物までの第2距離を測定する測定部と、前記測定部が測定した前記第1距離と前記第2距離に基づいて、前記第1検出範囲及び前記第2検出範囲のうち一方の少なくとも一部を、前記被検出物による設定動作のうちの第1段階を検出するための第1区域に設定するとともに、前記第1検出範囲及び前記第2検出範囲のうち他方の一部を、前記設定動作のうちの第2段階を検出するための第2区域に設定する設定部と、前記測定部が測定した前記第1距離の変化と前記第2距離の変化とによって、前記第1区域と前記第2区域の間の移動を含む前記設定動作を前記被検出物が行ったと判断すると、前記駆動部によって前記ドアを開閉する制御部とを備え、前記設定部は、前記第1区域と前記第2区域の配置がそれぞれ異なる第1アクセスモードと第2アクセスモードに設定可能であり、前記第1アクセスモードでは、前記第1検出範囲の一部を前記第1区域に設定するとともに、前記第2検出範囲の一部を前記第2区域に設定し、前記第2アクセスモードでは、前記第2検出範囲の一部を前記第1区域に設定するとともに、前記第1検出範囲の一部を前記第2区域に設定する、ドア開閉装置を提供する。
【0008】
測定部が測定した第1距離と第2距離に基づいて、第1検出範囲及び第2検出範囲のうち一方の少なくとも一部を、設定動作のうちの第1段階を検出するための第1区域に設定するとともに、第1検出範囲及び第2検出範囲のうち他方の一部を、設定動作のうちの第2段階を検出するための第2区域に設定する設定部を備える。そのため、第1検出部と第2検出部のうちの一方の検出範囲内に第1区域と第2区域を設定する場合と比較して、使用者が設定動作を行う領域を確保できる。よって、使用者によるドアの開閉操作性を向上できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドア開閉装置では、使用者がドアに沿って設定動作を行う領域を確保でき、ドアを開閉する操作性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るドア開閉装置のブロック図。
図2】ドアの閉状態を示す斜視図。
図3】ドアの開状態を示す斜視図。
図4】第1検出範囲と第2検出範囲に対するモード設定の概要を示す平面図。
図5】第1検出範囲と第2検出範囲を示す平面図。
図6】第1検出部と第2検出部が検出した被検出物とドアに対する被検出物の位置とに基づくモード設定を示す図表。
図7】左アクセスモードでのスタート区域とトリガ区域を示す平面図。
図8】右アクセスモードでのスタート区域とトリガ区域を示す平面図。
図9】中央アクセスモードでのスタート区域とトリガ区域を示す平面図。
図10】制御部によるメインの制御を示すフローチャート。
図11A図10のモード設定処理を示すフローチャート。
図11B図11Aの続きのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
図1から図3を参照すると、本発明の実施形態に係る車両用のドア開閉装置10は、車両1のドア2の前で使用者が定められた設定動作Sm1~Sm3(図7から図9を参照)を行うことで、使用者に手を使わせることなくドア2を自動開閉する。制御対象のドア2は、本実施形態ではハッチバックドアであるが、ハッチバックドア以外であってもよい。
【0013】
図1を参照すると、ドア開閉装置10は、検出ユニット12、駆動部28、認証部29、及び制御部30を備える。図1中、一点鎖線で囲まれた部分が今回追加した構成であり、認証部29には車両1に搭載された既存の部品が利用される。走行時に車両1の後方を監視するためのバックソナーセンサを搭載した車両1の場合、検出ユニット12も既存の部品を利用できる。キー(携帯機)によってドア2を自動開閉可能なリモコン式オートドアを搭載した車両1の場合、駆動部28も既存の部品を利用できる。
【0014】
検出ユニット12は、2個の検出部13A,13Bを備え、使用者及び使用者以外の第三者を含む移動物、並びに障害物である壁等の静止物を検出する。これらの移動物と静止物が、本発明における被検出物7である。
【0015】
図1を参照すると、制御部30は、記憶部31、検出部13A,13Bから被検出物7までの距離を測定する測定部32、被検出物7が移動物と静止物のいずれであるかを判定する判定部33、及びモード設定を行う設定部34を備える。図4を参照すると、設定部34は、最初に検出した被検出物7のドア2に対する位置によって、左アクセスモード(第1アクセスモード)、右アクセスモード(第2アクセスモード)、及び中央アクセスモード(第3アクセスモード)のうちのいずれかにモード設定を行う。これらのモードでは、スタート区域(第1区域)35とトリガ区域(第2区域)36の配置がいずれも異なっている。制御部30は、測定部32が測定した距離Md1,Md2の変化によって、判定部33が判定した移動物の動きを検出し、設定部34が設定したスタート区域35とトリガ区域36の間の移動を含む設定動作Sm1~Sm3(図7から図9を参照)のいずれかが成立したと判断すると、駆動部28によってドア2を開閉させる。
【0016】
図7から図9を参照すると、設定動作Sm1~Sm3は、進退する一連の動き(複数の段階)に設定されており、左アクセスモード、右アクセスモード、及び中央アクセスモードでそれぞれ異なる。図7を参照すると、第1の設定動作Sm1は、被検出物7が車体3の左側からドア2に近づいたときの左アクセスモード用であり、ドア2に沿って右側に前進した後、左側に後退する一連の動きに設定されている(Sm1a→Sm1b→Sm1c)。図8を参照すると、第2の設定動作Sm2は、使用者が車体3の右側からドア2に近づいたときの右アクセスモード用であり、ドア2に沿って左側に前進した後、右側に後退する一連の動きに設定されている(Sm2a→Sm2b→Sm2c)。図9を参照すると、第3の設定動作Sm3は、使用者が車体3の背面側からドア2に近づいたときの中央アクセスモード用であり、ドア2に向けて前進した後、ドア2から離れるように後退する一連の動きに設定されている(Sm3a→Sm3b→Sm3c)。但し、設定動作Sm1~Sm3は、進退する一連の動き以外であってもよい。
【0017】
以下、検出ユニット12、駆動部28、認証部29、及び制御部30について、具体的に説明する。
【0018】
図1から図4を参照すると、検出ユニット12は、ドア2に沿って車幅方向(水平方向)に間隔をあけて位置するように、車体3のリアバンパ4に取り付けられた2個の検出部13A,13Bを備える。検出部13A,13Bは、それぞれ定められた検出範囲16A,16B内に位置する被検出物7を設定時間(例えば80msec)毎に繰り返し検出する。以下の説明では、ドア2を正対する向きから見て左側に位置する方を第1検出部13Aと言い、ドア2を正対する向きから見て右側に位置する方を第2検出部13Bと言うことがある。
【0019】
図1を参照すると、検出部13A,13Bは、いずれも送波器14と受波器15を備える超音波センサであり、通信ケーブルによって制御部30に通信可能に接続されている。
【0020】
図5を参照すると、検出部13A,13Bそれぞれの送波器14から発せられる超音波によって、ドア2から後方に向かって概ね円錐状に広がった検出範囲16A,16Bが形成される。地面では、扇形状(例えば中心角度が約90度)に広がった検出範囲16A,16Bとなる。検出範囲16A,16Bそれぞれの検出中心軸(図示せず)は、車長方向の後方側に平行に延びている。検出範囲16A,16Bは部分的に重複している。以下の説明では、第1検出部13Aによる検出範囲を第1検出範囲16Aと言い、第2検出部13Bによる検出範囲を第2検出範囲16Bと言うことがある。
【0021】
送波器14から送波された超音波の反射波は受波器15で受波される。この検出結果は制御部30に出力され、被検出物7までの距離の演算と、被検出物7の移動速度の演算に利用され、検出範囲16A,16B内での被検出物7の有無の判断に利用される。但し、検出部13A,13Bを車両1のECU(Electronic Control Unit)5に通信可能に接続し、検出部13A,13Bの検出結果をECU5から制御部30に入力させてもよい。
【0022】
図5を参照して検出部13A,13Bの検出範囲16A,16Bについて、より具体的に説明する。
【0023】
検出範囲16A,16Bはそれぞれ、検出部13A,13Bから設定距離D1(例えば900mm)までの領域に設定されている。第1検出範囲16Aと第2検出範囲16Bを合わせた全領域が、移動物の進入により設定動作Sm1~Sm3の検出を開始するためのアプローチ領域20である。
【0024】
検出範囲16A,16Bは、検出部13A,13Bからの距離D1~D3によって、第1区画17A,17Bから第3区画19A,19Bにそれぞれ区画されている。この区画は、アプローチ領域20内での被検出物7の位置を特定するために、設定部34が電気的に行っている。設定距離D2は設定距離D1よりも短く(例えば500mm)、設定距離D3は設定距離D2よりも短い(例えば200mm)。設定距離D1,D2間が第1区画(第1部分)17A,17Bであり、設定距離D2,D3間が第2区画(第2部分)18A,18Bであり、設定距離D3と検出部13A,13Bの間が第3区画(第3部分)19A,19Bである。第1区画17A,17Bそれぞれの一部は互いに重複し、第2区画18A,18Bそれぞれの一部も互いに重複している。言い換えれば、このような重複状態になるように、距離D2,D3が設定されている。第3区画19A,19Bについては、本実施形態では重複する部分はない。但し、第3区画19A,19Bも一部が重複するようにD1を設定してもよい。
【0025】
このように区画された検出範囲16A,16Bからなるアプローチ領域20には、3種の重複領域21,22,23A,23Bと3種の非重複領域24A,24B~26A,26Bとが形成される。重複領域21,22,23A,23Bに位置する被検出物7は、第1検出部13A及び第2検出部13Bの両方によって検出される。非重複領域24A,25A,26Aに位置する被検出物7は、第1検出部13Aによって検出され、第2検出部13Bでは検出されない。非重複領域24B,25B,26Bに位置する被検出物7は、第2検出部13Bによって検出され、第1検出部13Aでは検出されない。
【0026】
第1の重複領域21は、第1検出範囲16Aの第1区画17Aと第2検出範囲16Bの第1区画17Bとが重複した領域からなる。
【0027】
第2の重複領域22は、第1検出範囲16Aの第2区画18Aと第2検出範囲16Bの第2区画18Bとが重複した領域からなる。第2の重複領域22は、第1の重複領域21の車体3側に隣接している。
【0028】
第3の重複領域23Aは、第1検出範囲16Aの第1区画17Aと第2検出範囲16Bの第2区画18Bとが重複した領域からなる。第3の重複領域23Bは、第1検出範囲16Aの第2区画18Aと第2検出範囲16Bの第1区画17Bとが重複した領域からなる。図5において、第3の重複領域23Aは重複領域21,22の右側に隣接し、第3の重複領域23Bは重複領域21,22の左側に隣接している。
【0029】
第1の非重複領域24Aは、第1検出範囲16Aの第1区画17Aのうち、第2検出範囲16Bが重複しない領域からなる。第1の非重複領域24Bは、第2検出範囲16Bの第1区画17Bのうち第1検出範囲16Aが重複しない領域からなる。図5において、第1の非重複領域24Aは第1の重複領域21の左側に隣接し、第1の非重複領域24Bは第1の重複領域21の右側に隣接している。
【0030】
第2の非重複領域25Aは、第1検出範囲16Aの第2区画18Aのうち、第2検出範囲16Bが重複しない領域からなる。第2の非重複領域25Bは、第2検出範囲16Bの第2区画18Bのうち、第1検出範囲16Aが重複しない領域からなる。図5において、第2の非重複領域25Aは、第1の非重複領域24Aの車体3側に隣接するとともに重複領域22,23Bの左側に隣接し、第2の非重複領域25Bは、第1の非重複領域24Bの車体3側に隣接するとともに重複領域22,23Aの右側に隣接している。
【0031】
第3の非重複領域26Aは、第1検出範囲16Aの第3区画19Aからなる。第3の非重複領域26Bは、第2検出範囲16Bの第3区画19Bからなる。図5において、第3の非重複領域26Aは第2の非重複領域25Aの車体3側に隣接し、第3の非重複領域26Bは第2の非重複領域25Bの車体3側に隣接している。
【0032】
図1から図3を参照すると、駆動部28は、車体3とドア2の間に配置されており、電気的に接続された制御部30によって駆動され、ドア2を開閉する。駆動部28の構成については具体的に図示しないが、ドア2を開方向及び閉方向に回転可能なモータ、ギア機構、ダンパー等で構成されている。但し、駆動部28をECU5に電気的に接続し、ECU5を介して制御部30が駆動部28を駆動させてもよい。
【0033】
認証部29は、キーとLF(Low Frequency)信号による通信を行い、車外のキーの認証を行う車外LF送受信アンテナを有する送受信機を備え、移動物が使用者であるか否かの判断(認証処理)を行う。送受信機は、通信ケーブルによってECU5に通信可能に接続され、ECU5からの命令に応じて起動して認証処理に関する通信を行う。認証処理で認証部29は、キーに対して認証コードの送信要求を行い、キーから受信した認証コードを登録された正規コードと比較する。認証コードと正規コードが合致すると(認証成立)、認証部29に電気的に接続されたECU5は、移動物が使用者であると判断し、駆動部28によるドア2の開閉を許容する。認証コードと正規コードが合致しなければ(認証不成立)、認証部29に電気的に接続されたECU5は、移動物が第三者であると判断し、駆動部28によるドア2の開閉を無効にする。無効とは、例えば制御部30から出力された駆動信号が駆動部28に入力されないように遮断すること等、駆動部28を駆動させないことを意味する。
【0034】
図1を参照すると、制御部30は、検出ユニット12に通信可能に接続され、駆動部28に電気的に接続されている。また、制御部30は、ECU5に対して通信可能又は電気的に接続されている。制御部30は、記憶部31、測定部32、判定部33、及び設定部34を備え、単一又は複数のマイクロコンピュータ、及びその他の電子デバイスにより構成されている。但し、記憶部31、測定部32、判定部33、及び設定部34は、制御部30とは別のマイクロコンピュータ、及びその他の電子デバイスにより個別に構成されてもよい。
【0035】
記憶部31には、制御プログラム、制御プログラムで使用する閾値や判定値等の設定データ、及び検出部13A,13Bの検出結果から距離を演算するためのデータテーブル等が記憶されている。また、記憶部31には、測定部32が測定した測定距離Md1,Md2が記憶される。本実施形態では、10回分の測定距離Md1a,Md2a~Md1j,Md2jを記憶可能であり、10回分記憶された記憶部31に最新の測定距離Md1,Md2を記憶するときには、最古の測定距離Md1j,Md2jが消去される。
【0036】
測定部32は、第1検出部13Aの送波器14が超音波を送波してから、第1検出部13Aの受波器15が反射波を受波するまでの時間(検出結果)に基づいて、第1検出部13Aから被検出物7までの第1距離Md1を測定する。また、第2検出部13Bの送波器14が超音波を送波してから、第2検出部13Bの受波器15が反射波を受波するまでの時間に基づいて、第2検出部13Bから被検出物7までの第2距離Md2を測定する。つまり、測定部32と検出部13A,13Bによって、検出部13A,13Bから被検出物7までの距離を測定する2つの測距センサが構成されている。2以上の被検出物7が検出範囲16A,16B内の異なる位置に存在する場合、検出部13A,13Bによる測定結果の数は被検出物7の数と同じになるが、そのうち最も早く受波した検出結果を用いて、測定部32は被検出物7までの距離Md1,Md2を算出する。つまり、第1検出部13Aが検出した第1被検出物7と第2検出部13Bが検出した第2被検出物7は、同じ対象物である場合と異なる対象物の場合とがある。これらの測定距離Md1,Md2は記憶部31に記憶される。
【0037】
判定部33は、検出部13A,13Bが検出した被検出物7が移動物であるか静止物であるかを個別に判定する。具体的には、判定部33は、測定した最新の第1測定距離Md1と記憶部31に記憶された前回の第1測定距離Md1aとに基づいて、第1検出部13Aが検出した被検出物(第1被検出物)7の移動速度Ms1を算出する。この移動速度Ms1と予め定められた判定値(設定速度)Jv(例えば20mm/s)とを比較し、移動速度Ms1が判定値Jv以上であれば被検出物7が移動物であると判定し、移動速度Ms1が判定値Jv未満であれば被検出物7が静止物であると判定する。また、判定部33は、測定した最新の第2測定距離Md2と記憶部31に記憶された前回の第2測定距離Md2aとに基づいて、第2検出部13Bが検出した被検出物(第2被検出物)7の移動速度Ms2を算出する。この移動速度Ms2と予め定められた判定値Jvとを比較し、移動速度Ms1が判定値Jv以上であれば被検出物7が移動物であると判定し、移動速度Ms1が判定値Jv未満であれば被検出物7が静止物であると判定する。
【0038】
今回測定した測定距離Md1,Md2と前回測定した測定距離Md1a,Md2aとの差(変化量)が大きければ被検出物7の移動距離は長く、移動速度Ms1,Ms2は速い。逆に変化量が小さければ、被検出物7の移動距離は短く、移動速度Ms1,Ms2は遅い。よって、判定部33は、測定した第1測定距離Md1の変化によって第1検出部13Aが検出した被検出物7が移動物であるか静止物であるかを判定でき、測定した第2測定距離Md2の変化によって第2検出部13Bが検出した被検出物7が移動物であるか静止物であるかを判定できる。移動物であるか静止物であるかの判定は、1回の比較のみで成立させてもよいが、所定回数(例えば8回=640msec)連続して同じ比較結果を示した場合に成立させることが好ましい。なお、所定回数分の検出結果の平均の傾き(距離の変化率)を移動速度Ms1,Ms2としてもよい。
【0039】
図4を参照すると、設定部34は、検出した被検出物7のドア2に対する位置に基づいて、左アクセスモード、右アクセスモード、及び中央アクセスモードのうちのいずれかにモード設定を行う。これらのモードには、図7から図9に示す設定動作Sm1~Sm3のうち、第1段階Sm1a~Sm3aを検出するためのスタート区域35と、第2段階Sm1b~Sm3bを検出するためのトリガ区域36とがそれぞれ設定されている。スタート区域35とトリガ区域36の配置は、個々のアクセスモードで異なっている。
【0040】
具体的には、図6に示すように、第1検出部13Aが検出した被検出物7が移動物で、第2検出部13Bが検出した被検出物7が静止物であると判定部33が判定すると、設定部34は図7に示す左アクセスモードに設定する。また、第1検出部13Aが検出した被検出物7が静止物で、第2検出部13Bが検出した被検出物7が移動物であると判定部33が判定すると、設定部34は図8に示す右アクセスモードに設定する。
【0041】
第1検出部13Aが検出した被検出物7と第2検出部13Bが検出した被検出物7がいずれも移動物であると判定部33が判定すると、設定部34は、測定部32による第1測定距離Md1と第2測定距離Md2の差(Md1-Md2)と、予め設定した設定範囲Srとに基づいてモード設定を行う。例えば、設定範囲Srの下限値Sr1は-100mmであり、設定範囲Srの上限値Sr2は+100mmである。つまり、測定距離Md1,Md2の差が、下限値Sr1以上で上限値Sr2以下であるか否かによって、設定部34は、左アクセスモード、右アクセスモード、及び中央アクセスモードのうちのいずれかにモード設定を行う。
【0042】
測定距離Md1,Md2の差(Md1-Md2)が設定範囲Sr外であり、第1測定距離Md1よりも第2測定距離Md2が長いとき、つまり被検出物7が第1検出部13A側に位置するとき、設定部34は左アクセスモードに設定する。測定距離Md1,Md2の差(Md1-Md2)が設定範囲Sr外であり、第1測定距離Md1よりも第2測定距離Md2が短いとき、つまり被検出物7が第2検出部13B側に位置するとき、設定部34は右アクセスモードに設定する。測定距離Md1,Md2の差(Md1-Md2)が設定範囲Sr内であるとき、つまり被検出物7がドア2の中央寄りに位置するとき、設定部34は中央アクセスモードに設定する。
【0043】
一方、第1検出部13Aが検出した被検出物7と第2検出部13Bが検出した被検出物7がいずれも静止物であると判定部33が判定すると、設定部34は、左アクセスモード、右アクセスモード、及び中央アクセスモードのうちのいずれにもモード変更を行うことなく、現在設定されている前回のモード設定を維持する。
【0044】
図5及び図7を参照すると、左アクセスモードでは、設定部34は、重複領域21,23Bと非重複領域24A,25A,26Aをスタート区域35に設定し、重複領域22,23Aと非重複領域25Bをトリガ区域36に設定する。非重複領域24B,26Bについては、スタート区域35とトリガ区域36のいずれにも設定しない。
【0045】
つまり、左アクセスモードでは、設定部34は、第1検出範囲16A(区画17A~19A)のうち、第2検出範囲16Bの第2区画18Bが重複した重複領域22,23A以外をスタート区域35に設定し、第2検出範囲16Bの第2区画18Bをトリガ区域36に設定している。つまり、左アクセスモードでは、設定部34は、第1検出範囲16Aの一部をスタート区域35に設定するとともに、第2検出範囲16Bの一部をトリガ区域36に設定している。但し、第1検出範囲16Aの全てをスタート区域35に設定し、第2検出範囲16Bの第2区画18Bのうち重複領域22,23Aを除く領域をトリガ区域36に設定してもよい。また、検出部13Aに近すぎて誤検出が生じ得る第3区画19A(非重複領域26A)については、スタート区域35から除外してもよい。また、設定動作Sm1中の段落Sm1a~Sm1cによって、スタート区域35に非重複領域26Aを含めるか否かを変更してもよい。
【0046】
図5及び図8を参照すると、右アクセスモードでは、設定部34は、重複領域21,23Aと非重複領域24B,25B,26Bをスタート区域35に設定し、重複領域22,23Bと非重複領域25Aをトリガ区域36に設定する。非重複領域24A,26Aについては、スタート区域35とトリガ区域36のいずれにも設定しない。
【0047】
つまり、右アクセスモードでは、設定部34は、第2検出範囲16B(区画17B~19B)のうち、第1検出範囲16Aの第2区画18Aが重複した重複領域22,23B以外をスタート区域35に設定し、第1検出範囲16Aの第2区画18Aをトリガ区域36に設定している。つまり、右アクセスモードでは、設定部34は、第2検出範囲16Bの一部をスタート区域35に設定するとともに、第1検出範囲16Aの一部をトリガ区域36に設定している。但し、第2検出範囲16Bの全てをスタート区域35に設定し、第1検出範囲16Aの第2区画18Aのうち重複領域22,23Bを除く領域をトリガ区域36に設定してもよい。また、検出部13Bに近すぎて誤検出が生じ得る第3区画19B(非重複領域26B)については、スタート区域35から除外してもよい。また、設定動作Sm2中の段落Sm2a~Sm2cによって、スタート区域35に非重複領域26Bを含めるか否かを変更してもよい。
【0048】
以上のように、設定部34は、車体3の横からドア2に沿って移動物が進入すると、検出範囲16A,16Bのうち一方の一部をスタート区域35に設定し、検出範囲16A,16Bのうち他方の一部をトリガ区域36に設定する。そのため、設定動作Sm1,Sm2のうちの第1段階Sm1a,Sm2aを検出するスタート区域35の面積を広く確保できる。よって、設定動作Sm1,Sm2のうちの第2段階Sm1b,Sm2bを検出するトリガ区域36までの距離を確保できる。仮に、スタート区域35の面積が狭い場合、トリガ区域36までの距離も短くなるため、設定部34がモード設定を完了したときに移動物が既にトリガ区域36に移動している可能性がある。これに対し、本実施形態ではスタート区域35の面積を広く確保できるため、このような不都合が生じることを抑制できる。
【0049】
図5及び図9を参照すると、中央アクセスモードでは、設定部34は、重複領域21,23A,23Bをスタート区域35に設定し、重複領域22をトリガ区域36に設定する。非重複領域24A,24B~26A,26Bについては、スタート区域35とトリガ区域36のいずれにも設定しない。
【0050】
つまり、中央アクセスモードでは、設定部34は、第1検出範囲16Aと第2検出範囲16Bの重複した領域のうち、それぞれの第2区画18A,18Bの重複領域22以外の領域21,23A,23Bをスタート区域35に設定し、それぞれの第2区画18A,18Bの重複領域を22トリガ区域36に設定している。但し、重複領域23A,23Bについては、スタート区域35とトリガ区域36のいずれにも設定しなくてもよい。このように、中央アクセスモードでは、設定部34は、第1検出範囲16Aと第2検出範囲16Bの重複した領域のうち、ドア2から離れて位置する一部をスタート区域35に設定し、スタート区域35よりもドア2に近い一部をトリガ区域36に設定している。
【0051】
制御部30は、車両1が駐車され、エンジンが停止されることで、検出部13A,13Bによる被検出物7の検出を開始し、ドア2を自動開閉するための制御を行う。制御部30は、検出部13A,13Bの検出結果から得られる測定距離Md1,Md2の変化、つまり判定部33が判定した移動物の位置変化によって、設定動作Sm1~Sm3のうちいずれかを移動物である被検出物7が行ったと判断すると、駆動部28によってドア2を開閉する駆動信号を出力する。設定動作Sm1~Sm3の成立判断には、判定部33が静止物と判定した被検出物7の測定距離Md1,Md2は使用されない。
【0052】
図7を参照すると、左アクセスモードの設定動作Sm1は、移動物がSm1aに示すスタート区域35(領域21,23B,24A,25A,26A)に位置する状態から、Sm1bに示すトリガ区域36(領域22,23A,25B)に移動し、Sm1cに示すスタート区域35(領域21,23B,24A,25A,26A)に戻る、一連の動きに設定されている。但し、スタート区域35に戻る第3段階Sm1cについては、スタート区域35に非重複領域26Aを含めなくてもよい。
【0053】
図5及び図7を参照すると、第1区画17Aから第3区画19Aのいずれかに第1被検出物7が位置することを第1測定距離Md1が示し、第2被検出物7が検出されてないことを第2測定距離Md2が示す場合、制御部30は、非重複領域24A~26Aのいずれかに被検出物7が位置していると判断できる。第1区画17A又は第2区画18Aに第1被検出物7が位置することを第1測定距離Md1が示し、第1区画17Bに第2被検出物7が位置することを第2測定距離Md2が示す場合、制御部30は、重複領域21又は23Bに被検出物7が位置していると判断できる。これらの場合、制御部30は、左アクセスモードのスタート区域35に被検出物7が位置していると判断できる。
【0054】
第1区画17A又は第2区画18Aに第1被検出物7が位置することを第1測定距離Md1が示し、第2区画18Bに第2被検出物7が位置することを第2測定距離Md2が示す場合、制御部30は、重複領域23A又は22に被検出物7が位置していると判断できる。第1被検出物7が検出されてないことを第1測定距離Md1が示し、第2区画18Bに第2被検出物7が位置することを第2測定距離Md2が示す場合、制御部30は、非重複領域25Bに被検出物7が位置していると判断できる。これらの場合、制御部30は、左アクセスモードのトリガ区域36に被検出物7が位置していると判断できる。
【0055】
図8を参照すると、右アクセスモードの設定動作Sm2は、移動物がSm2aに示すスタート区域35(領域21,23A,24B,25B,26B)に位置する状態から、Sm2bに示すトリガ区域36(領域22,23B,25A)に移動し、Sm2cに示すスタート区域35(領域21,23A,24B,25B,26B)に戻る、一連の動きに設定されている。但し、スタート区域35に戻る第3段階Sm2cについては、スタート区域35に非重複領域26Bを含めなくてもよい。
【0056】
図5及び図8を参照すると、第1被検出物7が検出されてないことを第1測定距離Md1が示し、第1区画17Bから第3区画19Bのいずれかに第2被検出物7が位置することを第2測定距離Md2が示す場合、制御部30は、非重複領域24B~26Bのいずれかに被検出物7が位置していると判断できる。第1区画17Aに第1被検出物7が位置することを第1測定距離Md1が示し、第1区画17B又は第2区画18Bに第2被検出物7が位置することを第2測定距離Md2が示す場合、制御部30は、重複領域21又は23Aに被検出物7が位置していると判断できる。これらの場合、制御部30は、右アクセスモードのスタート区域35に被検出物7が位置していると判断できる。
【0057】
第2区画18Aに第1被検出物7が位置することを第1測定距離Md1が示し、第1区画17B又は第2区画18Bに第2被検出物7が位置することを第2測定距離Md2が示す場合、制御部30は、重複領域22又は23Bに被検出物7が位置していると判断できる。第2区画18Aに第1被検出物7が位置することを第1測定距離Md1が示し、第2被検出物7が検出されてないことを第2測定距離Md2が示す場合、制御部30は、非重複領域25Aに被検出物7が位置していると判断できる。これらの場合、制御部30は、右アクセスモードのトリガ区域36に被検出物7が位置していると判断できる。
【0058】
図9を参照すると、中央アクセスモードの設定動作Sm3は、移動物がSm3aに示すスタート区域35(領域21,23A,23B)に位置する状態から、Sm3bに示すトリガ区域36(領域22)に移動し、Sm3cに示すスタート区域35(領域21,23A,23B)に戻る、一連の動きに設定されている。
【0059】
図5及び図9を参照すると、第1区画17Aに第1被検出物7が位置することを第1測定距離Md1が示し、第1区画17Bに第2被検出物7が位置することを第2測定距離Md2が示す場合、制御部30は、重複領域21に被検出物7が位置していると判断できる。第1区画17Aに第1被検出物7が位置することを第1測定距離Md1が示し、第2区画18Bに第2被検出物7が位置することを第2測定距離Md2が示す場合、制御部30は、重複領域23Aに被検出物7が位置していると判断できる。第2区画18Aに第1被検出物7が位置することを第1測定距離Md1が示し、第1区画17Bに第2被検出物7が位置することを第2測定距離Md2が示す場合、制御部30は、重複領域23Bに被検出物7が位置していると判断できる。これらの場合、制御部30は、中央アクセスモードのスタート区域35に被検出物7が位置していると判断できる。
【0060】
第2区画18Aに第1被検出物7が位置することを第1測定距離Md1が示し、第2区画18Bに第2被検出物7が位置することを第2測定距離Md2が示す場合、制御部30は、重複領域22に被検出物7が位置していると判断できる。この場合、制御部30は、中央アクセスモードのトリガ区域36に被検出物7が位置していると判断できる。
【0061】
次に、ドア開閉装置10の制御について、図10に示すフローチャートに従って説明する。
【0062】
車両1が駐車され、エンジンが停止されると、制御部30は、検出部13A,13Bによって設定時間(例えば80msec)毎に被検出物7を繰り返し検出し(ステップS2)、測定部32によって測定距離Md1,Md2の測定を行い(ステップS3)、判定部33によって移動物か静止物かの判定を行い(ステップS4)、設定部34によってモード設定処理(ステップS5)を行い、移動物が設定動作Sm1~Sm3のいずれかを行うと(ステップS6)、駆動部28によってドア2を開放(ステップS8)又は閉鎖(ステップS9)させる。但し、認証部29による認証が不成立の場合、ECU5が駆動部28の駆動を無効にする。
【0063】
具体的には、制御部30は、ステップS1で、記憶部31に記憶された前回のドア開閉制御での測定距離Md1a,Md2a~Md1j,Md2jを初期化(消去)する。続いて、ステップS2で、第1検出部13Aによって超音波の送波と受波を行い、残響を完全に消滅させるために一定時間待機した後、第2検出部13Bによって超音波の送波と受波を行う。つまり、送波器14から超音波を送波と受波器15での反射波を受波とを検出部13Aと13Bで交互に行い、検出部13A,13B間の誤検出を防止する。
【0064】
続いて、ステップS3で、検出部13A,13Bの検出結果(送波から受波までの時間)に基づいて、個々の検出部13A,13Bから被検出物7までの距離Md1,Md2を測定部32が個別に算出する。この際、被検出物7の数に応じた同数の検出結果が入力されるが、測定部32は、そのうち最も早く受波した検出結果を用いて、被検出物7までの距離Md1,Md2を算出する。
【0065】
続いて、ステップS4で、今回の測定距離Md1,Md2と記憶部31に記憶された前回の測定距離Md1a,Md2aとを用い、これらの変化量から被検出物7の移動速度Ms1,Ms2を判定部33が算出する。そして、判定部33は、算出した移動速度Ms1,Ms2と判定値Jvに基づいて、第1検出部13Aが検出した第1被検出物7と、第2検出部13Bが検出した第2被検出物7が、移動物であるか静止物であるかの判定を個別に行う。
【0066】
続いて、ステップS5で、モード設定処理を実行してステップS6に進む。なお、このモード設定処理については、後に詳述する。
【0067】
ステップS6では、制御部30は、検出部13A,13Bの検出結果から得られる測定距離Md1,Md2の変化によって、移動物によるスタート区域35とトリガ区域36の間の移動を検出し、設定動作Sm1~Sm3のうちいずれかが成立した否かを判断する。そして、設定動作Sm1~Sm3のうちいずれかが成立した場合にはステップS7に進み、設定動作Sm1~Sm3のいずれも成立していない場合にはステップS2に戻る。
【0068】
ステップS7では、制御部30は、ドア2が閉鎖状態であるか開放状態であるかを検出する。そして、閉鎖状態である場合にはステップS8で駆動部28にドア2の開駆動信号を出力してステップS2に戻り、開放状態である場合にはステップS9で駆動部28にドア2の閉駆動信号を出力してステップS2に戻る。
【0069】
次に、図11A及び図11Bを参照して、設定部34によるステップS5のモード設定処理について説明する。
【0070】
図11Aを参照すると、設定部34は、判定部33による判定結果と制御部30による設定動作Sm1~Sm3の進行状況判断結果とに基づいて、モード設定を変更するか否かの判断を行う。具体的には、ステップS5-1で、トリガ区域36への移動物の進入判断が成立しているか否かを読み込む。そして、進入判断が成立している場合には以後のステップを行うことなくリターンし、進入判断が成立していない場合にはステップS5-2に進む。ここで、通常では、移動物である使用者がスタート区域35からトリガ区域36に移動するのに必要な時間は、例えば人が歩く速度を1300mm/secとすると300msec程度である。これに対して、判定部33による移動物か静止物かの判定を、所定回数(例えば8回)連続して同じ結果を示したときに成立させる場合、判定に必要な時間は640msecである。つまり、スタート区域35からトリガ区域36への使用者の移動時間は、判定部33による移動物か静止物かの判定時間よりも短い。よって、通常では、使用者がトリガ区域36に移動している最中に、設定部34が別のアクセスモードに変更することはない。
【0071】
ステップS5-2では、判定部33による判定結果が、第1被検出物7と第2被検出物7のいずれも静止物であるかを判断する。両方が静止物の場合、以後のステップを行うことなくリターンする。いずれか一方でも静止物でない場合、ステップS5-3に進む。なお、ステップS5-1,2において、ステップS5-3以降を行わずにリターンするということは、現設定モードを維持することを意味する。
【0072】
ステップS5-3では、第1被検出物7が移動物で第2被検出物7が静止物であるかを判断する。そして、条件成立の場合にはステップS5-4に進み、左アクセスモードにモード設定を行ってリターンする。一方、ステップS5-3で条件不成立の場合にはステップS5-5に進み、第1被検出物7が静止物で第2被検出物7が移動物であるかを判断する。そして、条件成立の場合にはステップS5-6に進み、右アクセスモードにモード設定を行ってリターンする。一方、ステップS5-5で条件不成立の場合、つまり両方の被検出物7がいずれも移動物の場合にはステップS5-7に進む。
【0073】
図11Bを参照すると、ステップS5-7では、設定部34は、測定部32による測定距離Md1,Md2の差(Md1-Md2)が設定範囲Srの下限値Sr1よりも小さいか否かを判断する。そして、条件成立の場合、つまり被検出物7が第1検出部13A側に位置することを示す場合にはステップS5-4に進み、左アクセスモードにモード設定を行ってリターンする。一方、ステップS5-7で条件不成立の場合にはステップS5-8に進む。
【0074】
ステップS5-8では、設定部34は、測定部32による測定距離Md1,Md2の差(Md1-Md2)が設定範囲Srの上限値Sr2よりも大きい否かを判断する。そして、条件成立の場合、つまり被検出物7が第2検出部13B側に位置することを示す場合にはステップS5-6に進み、右アクセスモードにモード設定を行ってリターンする。一方、ステップS5-8で条件不成立の場合にはステップS5-9に進む。
【0075】
ステップS5-9では、設定部34は、中央アクセスモードにモード設定を行ってリターンする。具体的には、測定部32による測定距離Md1,Md2の差(Md1-Md2)が設定範囲Sr内(Sr1≦Md1-Md2≦Sr2)の場合、つまり被検出物7が車体3の背面の中央寄りに位置することを示す場合には中央アクセスモードにモード設定する。
【0076】
以上のように、モード設定処理で設定部34は、移動物の進入位置に応じて左アクセスモード、右アクセスモード、及び中央アクセスモードのうちのいずれかに、モード設定を行う。そのため、移動物である使用者は、その時点から設定動作Sm1~Sm3を行うことができる。よって、使用者によるドア開閉装置10の操作性を向上できる。
【0077】
このように構成したドア開閉装置10は、以下の特徴を有する。
【0078】
設定部34は、測定部32が測定した距離Md1,Md2に基づいて、第1検出範囲16A及び第2検出範囲16Bのうち一方の少なくとも一部を、設定動作Sm1,Sm2のうちの第1段階Sm1a,Sm2aを検出するためのスタート区域(第1区域)35に設定する。また、第1検出範囲16A及び第2検出範囲16Bのうち他方の一部を、設定動作Sm1,Sm2のうちの第2段階Sm1b,Sm2bを検出するためのトリガ区域(第2区域)36に設定する。そのため、検出部13A,13Bのうちの一方の検出範囲16A,16B内にスタート区域35とトリガ区域36を設定する場合と比較して、使用者が設定動作Sm1,Sm2を行う領域を確保できる。よって、使用者によるドア2の開閉操作性を向上できる。
【0079】
左アクセスモードでは、第1検出範囲16Aの一部をスタート区域35に設定して第2検出範囲16Bの一部をトリガ区域36に設定するため、使用者がドア2に沿って左側から進入して設定動作Sm1を行うときの操作性を向上できる。右アクセスモードでは、第2検出範囲16Bの一部をスタート区域35に設定して第1検出範囲16Aの一部をトリガ区域36に設定するため、使用者がドア2に沿って右側から進入して設定動作Sm2を行うときの操作性を向上できる。
【0080】
設定部34は、測定部32が測定した距離Md1,Md2の差が設定範囲Sr外であり、第1距離Md1よりも第2距離Md2が長いとき、左アクセスモードに設定する。また、測定部32が測定した距離Md1,Md2の差が設定範囲Sr外であり、第1距離Md1よりも第2距離Md2が短いとき、右アクセスモードに設定する。つまり、測定部32が測定した距離Md1,Md2の差と設定範囲Srによって、ドア2に対する被検出物7の位置を判断し、適切にモード設定するため、使用者によるドア2の開閉操作性を向上できる。
【0081】
左アクセスモードでは、第1検出範囲16Aの第1区画17Aと第1検出範囲16Aの第2区画18Aのうち第2検出範囲16Bの第2区画18Bが重複した領域以外をスタート区域35に設定する。右アクセスモードでは、第2検出範囲16Bの第1区画17Bと第2検出範囲16Bの第2区画18Bのうち第1検出範囲16Aの第2区画18Aが重複した領域以外をスタート区域35に設定する。そのため、設定動作Sm1,Sm2のうちの第1段階Sm1a,Sm2aを検出ためのスタート区域35の面積を広く確保できる。スタート区域35の面積が狭い場合、第1検出部13A又は第2検出部13Bが使用者を検出して設定部34がモード設定したときには、使用者が既にトリガ区域36に移動している可能性があるが、スタート区域35の面積を広く確保できるため、このような不都合が生じることを抑制できる。
【0082】
中央アクセスモードでは、第1検出範囲16Aと第2検出範囲16Bの重複した領域のうち、第1検出範囲16Aと第2検出範囲16Bそれぞれの第2区画18A,18Bの重複した領域以外をスタート区域35に設定するため、使用者がドア2に向かって設定動作Sm3を行うときの操作性を向上できる。
【0083】
設定部34は、測定部32が測定した距離Md1,Md2の差が設定範囲Sr内であるとき、中央アクセスモードに設定する。つまり、測定部32が測定した距離Md1,Md2の差と設定範囲Srによって、ドア2に対する被検出物7の位置を判断し、適切にモード設定するため、使用者によるドア2の開閉操作性を向上できる。
【0084】
第1検出部13Aが検出した第1被検出物7が移動物であり、第2検出部13Bが検出した第2被検出物7が静止物であると判定部33が判定すると、設定部34が左アクセスモードに設定する。また、第1検出部13Aが検出した第1被検出物7が静止物であり、第2検出部13Bが検出した第2被検出物7が移動物であると判定部33が判定すると、設定部34が右アクセスモードに設定する。また、第1被検出物7及び第2被検出物7の両方が移動物であると判定部33が判定すると、測定部32が測定した距離Md1,Md2の差と設定範囲Srとに基づいて設定部34がモード設定を行う。そのため、使用者の進入方向を正確に判断でき、適切にモード設定を行うことができる。
【0085】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0086】
例えば、設定部34によるモード設定には、中央アクセスモードが無くてもよい。左アクセスモードと右アクセスモードでは、第1検出範囲16Aと第2検出範囲16Bのうち、一方の一部にスタート区域35を設定して他方の一部にトリガ区域36を設定すれば、具体的な設定領域は必要に応じて変更が可能である。
【0087】
トリガ区域36の地面を表示可能な表示装置(誘導手段)を設けて、設定動作Sm1~Sm3を検出する際に表示を行って使用者を誘導してもよい。視覚による誘導に限られず、ブザー等の聴覚による誘導手段を設けてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 車両
2 ドア
3 車体
4 リアバンパ
5 ECU
7 被検出物
10 ドア開閉装置
12 検出ユニット
13A 第1検出部
13B 第2検出部
14 送波器
15 受波器
16A 第1検出範囲
16B 第2検出範囲
17A,17B 第1区画(第1部分)
18A,18B 第2区画(第2部分)
19A,19B 第3区画(第3部分)
20 アプローチ領域
21 第1重複領域
22 第2重複領域
23A,23B 第3重複領域
24A,24B 第1非重複領域
25A,25B 第2非重複領域
26A,26B 第3非重複領域
28 駆動部
29 認証部
30 制御部
31 記憶部
32 測定部
33 判定部
34 設定部
35 スタート区域(第1区域)
36 トリガ区域(第2区域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B