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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】固定構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/00 20060101AFI20241219BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
E04F15/00 601B
C09J201/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022210055
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2018114596の分割
【原出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2023029475
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 政輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹夫
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-019239(JP,A)
【文献】特開2006-036408(JP,A)
【文献】特開2004-324178(JP,A)
【文献】特開2010-024791(JP,A)
【文献】特開2010-059257(JP,A)
【文献】特開2006-118317(JP,A)
【文献】特開2011-173202(JP,A)
【文献】特開2019-218687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00
E04F 13/18
E02D 27/44
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の床面に対して、あと施工アンカーを用いずに設置物を固定するための固定構造であって、
前記コンクリート製の床面と前記設置物の間に配置されるプレートと、
前記コンクリート製の床面と前記プレートの第1面とに接する第1接着剤の層と、
前記プレートの第2面と前記設置物を支持する支持部材の下面に接する第2接着剤の層と
を含み、
前記第1接着剤は、その硬化により前記プレートを前記コンクリート製の床面に固定し、
前記第2接着剤は、その硬化により前記設置物を前記プレートの面に固定することで、
前記第接着剤の耐熱温度の上限よりも低い前記第接着剤と前記第接着剤の接着力によって前記コンクリート製の床面に対して前記設置物が固定され、
前記第2接着剤の温度を前記第2接着剤の耐熱温度の上限よりも低い温度から、前記第1接着剤の耐熱温度の上限よりも低く前記第2接着剤の耐熱温度の上限よりも高い特定温度に高めた場合に、前記第2接着剤の接着力が弱まり、
前記第1接着剤の温度を前記特定温度に高めた場合であっても、前記第1接着剤の接着力が大きく弱まらない
ことを特徴とする固定構造。
【請求項2】
前記プレートが、前記第1接着剤と前記第2接着剤との間に設けられている
請求項1に記載の固定構造。
【請求項3】
前記コンクリート製の床面に対して固定するように前記設置物を支持する支持部材
を備え、
前記プレートは、
前記第1接着剤の層を介して前記コンクリート製の床面に向かう前記第1面と、前記第2接着剤の層を介して前記支持部材に向かう前記第2面とを有する、
請求項1に記載の固定構造。
【請求項4】
前記第1接着剤は、熱硬化性接着剤であり、
前記第2接着剤は、室温硬化性接着剤である、
請求項1に記載の固定構造。
【請求項5】
前記第1接着剤は、コンクリートへの含浸性がある接着剤であり、
前記第2接着剤は、コンクリートへの含浸性が無い、または前記第1接着剤と比べてコンクリートへの含浸性が小さい接着剤である、
請求項1に記載の固定構造。
【請求項6】
前記支持部材の板状のベースの面には、前記ベースを貫通する穴があり、
硬化する前の前記第2接着剤の一部が前記第2接着剤の層から前記穴を通して前記ベースの上部に排出可能に構成されている
請求項3に記載の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製の床面に対して設置物を固定する場合、一般的に、あと施工アンカーが用いられる。すなわち、コンクリート製の床面に対してドリルなどで穴をあけ、あけた穴にアンカーボルトを埋め込むことで、設置物を支持する支持部材が床面に対して固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-118317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、あと施工アンカーを用いる場合、コンクリート製の床面の破壊のおそれ、コンクリート製の床面に埋設された埋設物(鉄筋やその他の埋設物)の損傷のおそれ、埋設物による、あと施工アンカー用の穴位置の制限、および施工時の騒音振動といった課題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、固定強度を確保するとともに、比較的容易に改変することができる固定構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の一態様の固定構造は、前記コンクリート製の床面と前記設置物の間に配置されるプレートと、前記コンクリート製の床面と前記プレートの第1面とに接する第1接着剤の層と、前記プレートの第2面と前記設置物を支持する支持部材の下面に接する第2接着剤の層とを含み、前記第接着剤の耐熱温度の上限よりも低い前記第接着剤と前記第接着剤の接着力によって前記コンクリート製の床面に対して前記設置物が固定され、前記第2接着剤の温度を前記第2接着剤の耐熱温度の上限よりも低い温度から、前記第1接着剤の耐熱温度の上限よりも低く前記第2接着剤の耐熱温度の上限よりも高い特定温度に高めた場合に、前記第2接着剤の接着力が弱まり、前記第1接着剤の温度を前記特定温度に高めた場合であっても、前記第1接着剤の接着力が大きく弱まらないことを特徴とする固定構造である。
[2]上記の固定構造において、前記プレートが、前記複数の層を成す前記第1接着剤と前記第2接着剤との間に金属のプレートが設けられている。
[3]上記の固定構造において、前記コンクリート製の床面に対して固定するように前記設置物を支持する支持部材を備え、前記プレートは、前記第1接着剤の層を介して前記コンクリート製の床面に向かう前記第1面と、前記第2接着剤の層を介して前記支持部材に向かう前記第2面とを有する。
[4]上記の固定構造において、前記第1接着剤は、熱硬化性接着剤であり、前記第2接着剤は、室温硬化性接着剤である。
[5]上記の固定構造において、前記第1接着剤は、コンクリートへの含浸性がある接着剤であり、前記第2接着剤は、コンクリートへの含浸性が無い、または前記第1接着剤と比べてコンクリートへの含浸性が小さい接着剤である。
[6]上記の固定構造において、前記支持部材の板状のベースの面には、前記ベースを貫通する穴があり、硬化する前の前記第2接着剤の一部が前記第2接着剤の層から前記穴を通して前記ベースの上部に排出可能に構成されている。
(1)本発明の一態様に関わる固定構造は、コンクリート製の床面に対して設置物を固定する固定構造であって、前記設置物を支持する支持部材と、前記支持部材と前記床面との間に配置されたプレートと、前記プレートと前記床面との間に設けられ、前記プレートを前記床面に固定した第1接着剤と、前記支持部材と前記プレートとの間に設けられ、前記支持部材を前記プレートに固定した第2接着剤とを備えたことを特徴とする。
【0007】
(2)上記の固定構造において、前記第1接着剤と前記第2接着剤とは、互いに種類が異なる。
【0008】
(3)上記の固定構造において、前記第1接着剤は、熱硬化性接着剤であり、前記第2接着剤は、室温硬化性接着剤である。
【0009】
(4)上記の固定構造において、前記第1接着剤は、コンクリートへの含浸性がある接着剤であり、前記第2接着剤は、コンクリートへの含浸性が無い、または前記第1接着剤と比べてコンクリートへの含浸性が小さい接着剤である。
【0010】
(5)上記の固定構造において、前記第1接着剤に含まれる粒子は、前記第2接着剤に含まれる粒子よりも小さい。
【0011】
(6)上記の固定構造において、前記第2接着剤は、前記第1接着剤と比べて所定の溶剤に溶けやすい。
【0012】
(7)上記の固定構造において、前記第2接着剤は、加熱された場合に、前記第1接着剤と比べて低い温度で接着力が弱まる。
【0013】
(8)上記の固定構造において、前記第1接着剤による接着面積は、前記第2接着剤による接着面積よりも大きい。
【0014】
(9)上記の固定構造において、前記支持部材は、板状のベースを有し、前記第2接着剤は、前記プレートと前記ベースとの間に設けられ、前記ベースを前記プレートに固定し、前記プレートは、前記ベースよりも大きく、前記第1接着剤による接着面積は、前記第2接着剤による接着面積よりも大きい。
【0015】
(10)上記の固定構造において、前記プレートの厚さは、前記ベースの厚さよりも薄い。
【0016】
(11)本発明の一態様の固定方法は、コンクリート製の床面に対して設置物を固定する固定方法であって、前記床面に対して第1接着剤を用いてプレートを固定し、前記プレートに対して第2接着剤を用いて前記設置物を支持する支持部材を固定する。
【0017】
(12)本発明の一態様の固定構造の改変方法は、設置物を支持する支持部材と、前記支持部材とコンクリート製の床面との間に配置されたプレートと、前記プレートと前記床面との間に設けられて前記プレートを前記床面に固定した第1接着剤と、前記支持部材と前記プレートとの間に設けられて前記支持部材を前記プレートに固定した第2接着剤とを有した固定構造の改変方法であって、前記プレートが前記第1接着剤によって前記床面に固定された状態で、前記第2接着剤の接着力を弱め、前記支持部材を前記プレートから取り外す。
【0018】
(13)上記の固定構造の改変方法において、前記プレートが前記床面に残置された状態で、新しい設置物を支持する新しい支持部材を前記プレートの上に、新しく塗布された前記第2接着剤または別の接着剤で固定する。
【0019】
(14)上記の固定構造の改変方法において、前記プレートが前記床面に残置された状態で、前記床面に対して新しく塗布された前記第1接着剤または別の接着剤を用いて新しいプレートを固定し、前記プレートが前記床面に残置された状態で、新しい設置物を支持する新しい支持部材を前記新しいプレートの上に、新しく塗布された前記第2接着剤または別の接着剤で固定する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、設置物の固定強度を確保するとともに、比較的容易に改変することができる固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施形態の設置物、固定構造、およびコンクリート床を示す断面図である。
図2図1中のF2線で囲まれた領域を拡大して示す断面図である。
図3図2中に示された固定構造のF3-F3線に沿う断面図である。
図4】エポキシ樹脂系接着剤およびウレタン樹脂系接着剤の特性を示す図である。
図5】第1の実施形態の固定方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態のある一例の改変の前後の固定構造を示す断面図。
図7】第1の実施形態の固定構造の改変方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】第1の実施形態の別の一例の改変の前後の固定構造を示す断面図。
図9】第1の実施形態の固定構造の改変方法の流れの別の一例を示すフローチャートである。
図10】第2の実施形態の固定構造およびコンクリート床を示す断面図である。
図11】第3の実施形態の設置物、固定構造、およびコンクリート床を示す斜視図である。
図12】第3の実施形態のある一例の改変の前後の設置物、固定構造、およびコンクリート床を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施形態の固定構造、固定方法、および固定構造の改変方法について説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0023】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の固定構造FSは、例えば、通信施設やデータセンター、その他種々の設備で広く利用可能であり、コンクリート製の床面1(例えば床スラブ、以下では「コンクリート床1」と称する)に対して設置物2を固定する固定構造である。すなわち本明細書で「コンクリート床に対して設置物を固定する」とは、コンクリート床に対して設置物自体を直接固定することに限定されず、設置物を支持する支持部材をコンクリート床に固定することでコンクリート床に対して設置物が動かないようにする場合も含む。
【0024】
本実施形態では、固定構造FSにより固定される設置物2は、建物に設置される各種機器(例えば、通信用の交換機や、空調機、電力系の各種装置(バッテリ))や、建物に二重床を形成するための部材などである。ただし、固定構造FSにより固定される設置物2は、特定の機器や装置、部材に限定されず、種々の機器や装置、部材が幅広く該当する。
【0025】
(固定構造)
まず、第1の実施形態の固定構造FSについて説明する。図1は、第1の実施形態の設置物2、固定構造FS、およびコンクリート床1を示す断面図である。なお図1では、説明の便宜上、固定構造FSに含まれるプレートおよび接着剤の図示は省略している。
【0026】
固定構造FSは、設置物2を支持する金属製の支持部材10を含む。本実施形態では、支持部材10は、設置物2の下方に配置され、設置物2を下方から支持する。支持部材10は、例えば、架台である。支持部材10は、例えば、支持部材本体(架台本体)11と、支持軸12と、ベース13とを含む。これら支持部材本体11、支持軸12、およびベース13は、金属製(例えば鋼材)である。
【0027】
支持部材本体11は、支持部材10の主要部を構成しており、設置物2の下方に配置され、設置物2を下方から支持する。言い換えると、設置物2は、支持部材本体11の上に載置され、不図示の固定部材によって支持部材本体11に固定される。これにより、設置物2が建物に設置される。
【0028】
支持軸12は、支持部材本体11の下端部から下方に突出している。支持軸12は、鉛直方向に沿う軸状に形成され、コンクリート床1に対して略垂直に配置されている。支持軸12は、平面視において、支持部材本体11の4つの角部に対応して配置されている。ただし、支持軸12の配置位置は、上記例に限定されない。
【0029】
ベース13は、支持部材10の最下部に配置されている。ベース13は、コンクリート床1の上面と略平行な板状に形成されている。ベース13は、多角形状(例えば四角形状)であるが、円形状やその他の形状でもよい。ベース13は、支持軸12の下端部に連結され、支持軸12を下方から支持する。
【0030】
図2は、図1中のF2線で囲まれた領域を拡大して示す断面図である。図3は、図2に示された固定構造FSのF3-F3線に沿う断面図である。図3では、理解容易化のため、第1接着剤21および第2接着剤22にドット模様のハッチングを施している。図2および図3に示すように、固定構造FSは、上述した支持部材10に加え、プレート20、第1接着剤21、および第2接着剤22を有する。
【0031】
プレート20は、コンクリート床1の上面に沿う板状に形成されている。プレート20は、支持部材10と、コンクリート床1との間に配置されている。本実施形態では、プレート20は、支持部材10のベース13と、コンクリート床1との間に配置されている。プレート20は、例えば金属製(例えば鋼材)である。プレート20は、例えば、支持部材10のベース13と略同じ材質で形成されている。
【0032】
プレート20の厚さT1は、ベース13の厚さT2よりも薄い(図2参照)。プレート20は、例えば、コンクリート床1の上面の歪みなどに応じて弾性変形可能な厚さである。プレート20の厚さT1は、例えば、1.0mm~2.0mmであるが、これに限定されない。例えば、プレート20は、コンクリート床1に長期的(例えば建物の取り壊しまで半永久的)に残置されても、新たな固定構造の設置やその他の作業の邪魔になりにくい厚さである。ただし、プレート20は、上記のような薄いものに限定されず、ある程度の厚さを有してもよい。
【0033】
プレート20は、平面視において、ベース13よりも大きな外形を有する(図3参照)。ここで説明の便宜上、第1方向Xおよび第2方向Yを定義する。第1方向Xおよび第2方向Yは、それぞれコンクリート床1の上面と略平行な方向である。第2方向Yは、第1方向Xとは略直交した方向である。このような第1方向Xおよび第2方向Yを定義した場合、プレート20の第1方向Xの幅W1Xは、ベース13の第1方向Xの幅W2Xよりも大きい。プレート20の第2方向Yの幅W1Yは、ベース13の第2方向Yの幅W2Yよりも大きい。
【0034】
言い換えると、プレート20は、第1領域31と、第2領域32とを有する。第1領域31は、プレート20の厚さ方向(本実施形態では鉛直方向)で支持部材10のベース13と重なる領域である。一方で、第2領域32は、第1領域31よりも外周側に位置し、プレート20の厚さ方向で支持部材10のベース13と重ならない領域である。
【0035】
第1接着剤(第1接着層)21は、プレート20とコンクリート床1との間に設けられ、プレート20をコンクリート床1に固定している。第1接着剤21は、例えば、金属製のプレート20とコンクリート床1とを強固に固定可能な特性を有する。第1接着剤21は、例えば、プレート20の全面(全域)に設けられている。すなわち、第1接着剤21は、プレート20の第1領域31および第2領域32の両方に設けられている。これにより、第1接着剤21は、プレート20をコンクリート床1により強固に固定している。
【0036】
第2接着剤(第2接着層)22は、支持部材10とプレート20との間に設けられ、支持部材10をプレート20に固定している。第2接着剤22は、例えば、金属製の支持部材10と、金属製のプレート20とを強固に固定可能な特性を有する。本実施形態では、第2接着剤22は、支持部材10のベース13とプレート20との間に設けられ、ベース13をプレート20に固定している。第2接着剤22は、例えば、ベース13の全面(全域)に設けられている。言い換えると、第2接着剤22は、プレート20の第1領域31とその近傍に設けられている。第2接着剤22は、プレート20の第2領域32の全部または大部分には設けられていない。
【0037】
このため、第1接着剤21による接着面積(第1接着剤21によるプレート20とコンクリート床1との接着面積)は、第2接着剤22による接着面積(第2接着剤22によるベース13とプレート20との接着面積)よりも大きい。
【0038】
本実施形態では、第1接着剤21と第2接着剤22とは、互いに異なる種類の接着剤である。以下に、第1接着剤21および第2接着剤22の各々の特性(特徴)の一例について述べる。ただし、第1接着剤21および第2接着剤22は、以下に説明する全ての特性を有する必要はなく、いずれか1つ以上の特性を有すればよい。
【0039】
例えば、第1接着剤21は、熱硬化性接着剤である。一方で、第2接着剤22は、室温硬化性接着剤である。一般的に、熱硬化性接着剤は、室温硬化性接着剤と比べて接着強度が大きく、第1接着剤21は、第2接着剤22と比べて、接着強度が大きい。例えば、第1接着剤21は、第2接着剤22と比べて、剪断接着強度が大きい。「剪断接着強度」とは、コンクリート床1の上面に沿う方向における接着強度を意味する。
【0040】
例えば、第1接着剤21は、コンクリートへの含浸性がある接着剤である。一方で、第2接着剤22は、コンクリートへの含浸性が無い、または第1接着剤21と比べてコンクリートへの含浸性が小さい接着剤である。例えば、第1接着剤21に含まれる粒子は、第2接着剤22に含まれる粒子よりも小さい。一般的に、接着剤を構成する粒子が小さいと、接着対象物(例えばコンクリート)への含浸性が良好になる。接着対象物への含浸性が大きいと、接着対象物に対する接着強度が高くなる。
【0041】
例えば、第2接着剤22は、第1接着剤21と比べて所定の溶剤に溶けやすい。所定の溶剤は、例えば、第2接着剤22に含浸することで第2接着剤の接着力を弱める剥離剤(溶解剤)である。
【0042】
例えば、第2接着剤22は、第1接着剤21と比べて耐熱性が小さい。第2接着剤22は、加熱された場合に、第1接着剤と比べて低い温度で接着力が弱まる。言い換えると、第2接着剤22は、特定温度に所定時間だけ連続して加熱されることで接着力が弱まる。一方で、第1接着剤21は、上記特定温度に前記所定時間だけ連続して加熱されても、第2接着剤22と比べて接着力が弱まりにくい。
【0043】
本実施形態では、第1接着剤21は、例えばエポキシ樹脂系接着剤である。一方で、第2接着剤22は、例えばウレタン樹脂系接着剤である。
【0044】
「エポキシ樹脂系接着剤」とは、エポキシ樹脂を主剤とし、変性ポリアミンまたは変性ポリアミドを硬化剤とする接着剤である。別の定義によれば、「エポキシ樹脂系接着剤」とは、エポキシ基を含有する化合物をアミン類や酸無水物などで硬化させる接着剤を意味する。
【0045】
「ウレタン樹脂系接着剤」とは、イソシアネート・ポリオールを主成分とする接着剤である。別の定義によれば、「ウレタン樹脂系接着剤」とは、例えば、分子中に含まれるイソシアネート基(-NCO)の反応性を応用した接着剤を意味する。「ウレタン樹脂系接着剤」の一例は、NCO基末端のプレポリマーを主成分とする湿気硬化性一液形接着剤である。
【0046】
図4は、エポキシ樹脂系接着剤およびウレタン樹脂系接着剤の代表的な特性を示す図である。図4に示すように、エポキシ樹脂系接着剤は、加熱硬化性を有し、100℃未満に連続して加熱されることに対して良好な耐熱性を有し、水、油、アルカリに対して優れた耐薬品性を有し、酸に対して良好な耐薬品性を有し、コンクリートへの含浸性がある。一方で、ウレタン樹脂系接着剤は、室温硬化性を有し、80℃未満に連続して加熱されることを許容し(例えばシリル化ウレタン樹脂系の場合)、水、酸、アルカリ、油に対して良好な耐薬品性を有し(例えばシリル化ウレタン樹脂系の場合)、コンクリートへの含浸性が実質的に無い。なお本明細書で「優れた」および「優」とは、「良好」および「良」よりも優れていることを意味する。ただし、第1接着剤21および第2接着剤22は、エポキシ樹脂系接着剤およびウレタン樹脂系接着剤に限定されない。
【0047】
(固定構造による固定方法)
次に、本実施形態の固定構造FSを用いた設置物2の固定方法について説明する。図5は、本実施形態の固定方法の流れの一例を示すフローチャートである。まず、コンクリート床1の表面のなかでプレート20を設置する領域に第1接着剤21を塗布する(S101)。次に、塗布された第1接着剤21の上にプレート20を載置する(S102)。なお、第1接着剤21は、コンクリート床1に加えて、またはコンクリート床1に代えて、プレート20の表面に塗布されてもよい。そして、例えば第1接着剤21を加熱することで、第1接着剤21を硬化させる(S103)。これにより、プレート20がコンクリート床1に接着される。
【0048】
このとき、コンクリート床1の上面の歪みなどに応じてプレート20を変形させるため、コンクリート床1に向けてプレート20に力が加えられてもよい。プレート20に力を加える方法は、人手や機械によるものでもよく、プレート20の上に重しを載せることによって行われてもよく、その手法は特に限定されない。これにより、コンクリート床1の上面の歪みなどに応じてプレート20が変形させられた状態で、プレート20がコンクリート床1に固定される。
【0049】
次に、プレート20の表面のなかで支持部材10のベース13を設置する領域に第2接着剤22を塗布する(S104)。次に、塗布された第2接着剤22の上に支持部材10のベース13を載置する(S105)。なお、第2接着剤22は、プレート20に加えて、またはプレート20に代えて、支持部材10のベース13の表面に塗布されてもよい。そして、第2接着剤22を硬化させる(S106)。これにより、支持部材10のベース13がプレート20に接着される。これにより、設置物2をコンクリート床1に対して固定するための固定構造FSが実現される。その後、設置物2を支持部材10に固定する。これにより、設置物2がコンクリート床1に対して固定される。
【0050】
(固定構造の改変方法1)
次に、本実施形態の固定構造FSの改変方法の一例について説明する。すなわち、設置物2は、技術の進歩や用途(要求)の変化、その他の理由で、新しい設置物2A(図12参照)に更改されることがある。新しい設置物2Aは、例えば、重さ、大きさ、要求される耐震性などが既設の設置物2と異なる。このため、新しい設置物2Aを設置する場合には、その新しい設置物2Aに対応する新しい支持部材10Aが設けられることがある。図6は、改変の前後の固定構造FSを示す断面図である。図6中の(a)は、改変が行われる前の固定構造FSを示す。図6中の(b)は、改変が行われた後の固定構造FSを示す。
【0051】
ここでは、新しい設置物2Aを支持する新しい支持部材10Aが、コンクリート床1に残置されたプレート20の上に固定される改変方法について説明する。なお、新しい支持部材10Aの構成は、既設の支持部材10と略同じ場合を例に取り上げる。すなわち、新しい支持部材10Aは、例えば板状のベース13を有する。ただし、新しい支持部材10Aは、既設の支持部材10とは異なる構成を有してもよい。
【0052】
図7は、本実施形態の固定構造FSの改変方法の流れの一例を示すフローチャートである。この改変方法では、まず、第2接着剤22の接着力を弱める(S201)。第2接着剤22の接着力を弱める方法は、例えば、第2接着剤22に対して剥離剤(溶解剤)を塗布し、剥離剤を第2接着剤22に含浸させることで行われてもよく、第2接着剤22を加熱することで行われてもよい。ただし、第2接着剤22の接着力を弱める方法は、上記例に限定されず、別の方法でもよい。
【0053】
ここで、第2接着剤22に対して塗布される剥離剤は、次のような所定の剥離剤でもよい。すなわち、「所定の剥離剤」は、第2接着剤22の接着力を弱める効果(第2接着剤22の組成に対する適正)が、第1接着剤21の接着力を弱める効果(第1接着剤21の組成に対する適正)よりも大きなものが好ましい。そのような剥離剤によれば、万が一に剥離剤が第1接着剤21にかかる場合があっても、第1接着剤21の接着力が大きく弱まることを避けることができる。
【0054】
第2接着剤22を加熱することは、例えば、支持部材10のベース13に熱を加えることで行われてもよい。このような方法によれば、例えばプレート20に熱を加えることで第2接着剤22を加熱する場合に比べて、第1接着剤21の温度上昇を抑制し、第1接着剤21の接着力が弱まることを抑制することができる。
【0055】
また、第2接着剤22を加熱することは、第2接着剤22を特定温度に加熱することで行われてもよい。「特定温度」は、例えば、第1接着剤21の耐熱温度の上限よりも低い温度(すなわち、第1接着剤21の接着力が所定以上に維持される温度)であって、第2接着剤22の接着力が弱まる温度である。例えば、エポキシ樹脂系接着剤が100℃未満に連続して加熱されることに対して良好な耐熱性を有する一方で、ウレタン樹脂系接着剤が80℃未満に連続して加熱されることを許容する場合、上記特定温度は、例えば80℃から100℃の間の温度である。このような方法によれば、第2接着剤22を加熱する場合であっても、第1接着剤21の接着力が大きく弱まることを避けることができる。
【0056】
次に、プレート20から支持部材10のベース13を取り外す(S202)。すなわち、プレート20が第1接着剤21によってコンクリート床1に固定されてプレート20がコンクリート床1に残置された状態で、第2接着剤22の接着力を弱めることで、支持部材10をプレート20から取り外す。次に、プレート20の上面に残っている第2接着剤22を、例えば剥離剤などを用いて除去する(S203)。これにより、古い支持部材10の撤去に関する作業が完了する。
【0057】
次に、プレート20がコンクリート床1に残置された状態で、新しい設置物2Aを支持する新しい支持部材10Aをプレート20に第2接着剤22で固定する。すなわち、プレート20の表面のなかで新しい支持部材10Aのベース13を設置する領域に、未硬化の第2接着剤22を新しく塗布する(S204)。次に、新しく塗布された未硬化の第2接着剤22の上に新しい支持部材10Aのベース13を載置する(S205)。なお、第2接着剤22は、プレート20に加えて、またはプレート20に代えて、新しい支持部材10Aのベース13の表面に塗布されてもよい。そして、新しく塗布された第2接着剤22を硬化させる(S206)。これにより、新しい支持部材10Aのベース13がプレート20に接着される。これにより、新しい支持部材10Aを固定する固定構造FSが実現される。
【0058】
なお、新しい支持部材10Aは、第2接着剤22に代えて、別の接着剤22Aによりプレート20に固定されてもよい。別の接着剤22Aは、例えば第2接着剤22と類似の特性を有するが、これに限定されない。別の接着剤22Aは、第2接着剤22と異なる特性を有する接着剤でもよい。
【0059】
(固定構造の改変方法2)
次に、本実施形態の固定構造FSの改変方法の別の一例について説明する。図8は、改変の前後の固定構造FSを示す断面図である。図8中の(a)は、改変が行われる前の固定構造FSを示す。図8中の(b)は、改変が行われた後の固定構造FSを示す。
【0060】
ここでは、新しい設置物2Aを支持する新しい支持部材10Aが、コンクリート床1に残置されたプレート20ではなく、コンクリート床1に新しく設置される新しいプレート20Aの上に固定される改変方法について説明する。なお、新しい支持部材10Aの構成は、既設の支持部材10と略同じ場合を例に取り上げる。すなわち、新しい支持部材10Aは、例えば板状のベース13を有する。ただし、新しい支持部材10Aは、既設の支持部材10とは異なる構成を有してもよい。プレート20Aは、例えば、既設のプレート20と略同じ材質を有する。ただし、プレート20Aは、既設のプレート20に対して、材質、形状および大きさが異なってもよい。
【0061】
図9は、本実施形態の固定構造FSの改変方法の流れの一例を示すフローチャートである。なお、S201からS203は、図7を参照して説明した改変方法と略同じであるため、重複する説明は省略する。
【0062】
ここで説明する改変方法では、古いプレート20が第1接着剤21によってコンクリート床1に固定されて古いプレート20がコンクリート床1に残置された状態で、コンクリート床1に新しいプレート20Aを固定する。すなわち、コンクリート床1の表面のなかで新しいプレート20Aを設置する領域に第1接着剤21を新しく塗布する(S301)。新しいプレート20Aが設置される領域は、例えば、古いプレート20が設置された領域とは異なる領域である。
【0063】
次に、新しく塗布された第1接着剤21の上に新しいプレート20Aを載置する(S302)。なお、第1接着剤21は、コンクリート床1に加えて、またはコンクリート床1に代えて、新しいプレート20Aの表面に塗布されてもよい。そして、例えば新しく塗布された第1接着剤21を加熱することで、新しく塗布された第1接着剤21を硬化させる(S303)。これにより、新しいプレート20Aがコンクリート床1に接着される。新しいプレート20Aは、新しい支持部材10Aのベース13の下方となる位置に配置される。
【0064】
このとき、例えばコンクリート床1に向けてプレート20Aに力を加え、コンクリート床1の上面の歪みなどに応じて新しいプレート20Aを変形させてもよい。なお、この作業の詳細は、上述したプレート20をコンクリート床1に固定する場合の作業と略同じであるため、重複する説明は省略する。
【0065】
次に、古いプレート20がコンクリート床1に残置された状態で、新しい設置物2Aを支持する新しい支持部材10Aを新しいプレート20Aに第2接着剤22で固定する。すなわち、新しいプレート20Aの表面のなかで新しい支持部材10Aのベース13を設置する領域に第2接着剤22を新しく塗布する(S304)。次に、新しく塗布された第2接着剤22の上に新しい支持部材10Aのベース13を載置する(S305)。なお、第2接着剤22は、新しいプレート20Aに加えて、またはプレート20Aに代えて、新しい支持部材10Aのベース13の表面に塗布されてもよい。そして、新しく塗布された第2接着剤22を硬化させる(S306)。これにより、新しい支持部材10Aのベース13が新しいプレート20Aに接着される。これにより、新しい支持部材10Aを固定する固定構造FSが実現される。
【0066】
また、新しいプレート20Aは、第1接着剤21に代えて、別の接着剤21Aによりコンクリート床1に固定されてもよい。別の接着剤21Aは、例えば第1接着剤21と類似の特性を有するが、これに限定されない。別の接着剤21Aは、第1接着剤21と異なる特性を有する接着剤でもよい。
【0067】
また、新しい支持部材10Aは、第2接着剤22に代えて、別の接着剤22Aにより新しいプレート20Aに固定されてもよい。別の接着剤22Aは、例えば第2接着剤22と類似の特性を有するが、これに限定されない。別の接着剤22Aは、第2接着剤22と異なる特性を有する接着剤でもよい。
【0068】
また、固定構造FSの改変方法は、上述した2つの例に限定されない。本明細書でいう「改変方法」とは、新しい支持部材10Aの設置が必ず伴うものではなく、プレート20から支持部材10が撤去された後、新しい支持部材10Aが設けられないような改変方法でもよい。すなわち、「改変方法」とは、古い支持部材10の撤去作業のみを意味してもよい。この場合、改変方法は、図7で説明したS203の作業で完了する。
【0069】
以上説明した構成によれば、あと施工アンカーを用いずに、コンクリート床に対して設置物の固定強度を確保するとともに、比較的容易に改変することができる固定構造、固定方法、および固定構造の改変方法を提供することができる。すなわち、建物に設置される設置物の支持部材は、例えば地震などが起きたときでも設置物が倒れないように、コンクリート床に対して強固に固定する必要がある。このような固定には、一般的に、あと施工アンカーが用いられる。
【0070】
ただし、あと施工アンカーを用いるためには、大掛かりな工事が必要になる。このため、施工時の騒音振動などが課題となる場合もある。また、あと施工アンカーを用いる場合、コンクリート床に穴をあける必要が生じるため、コンクリート床の破壊や、コンクリート製の床面に埋設された埋設物(鉄筋やその他の埋設物)の損傷のおそれ、それら埋設物による、あと施工アンカー用の穴位置の制限などの課題が生じる。
【0071】
また、建物に設置される設置物は、製品の進化やその他の理由で更改されることがある。このとき、設置物を支持する支持部材も、新しい設置物の重さやサイズ、要求される耐震性に応じて新しい支持部材に交換する必要が生じることがある。このような場合、あと施工アンカーを用いている場合は、アンカーボルトをコンクリート床から取り外す。ただし、アンカーボルトは、一般的に、コンクリート床に埋設された先端部がカットされることで、コンクリート床から取り外される。このため、カットされたアンカーボルトの先端部は、コンクリート床に残る。その結果、過去にアンカーボルトが設けられていた位置には、新しいアンカーボルトを設置できなくなる。
【0072】
そのため、設置物を支持する支持部材をコンクリート床に接着剤で固定することが考えられる。ここで、コンクリート床に対して接着強度を確保できる接着剤は、支持部材とコンクリート床を強固に接着する傾向にある。このため、設置物の更改に応じて支持部材をコンクリート床から取り外そうとしたときに、コンクリート床の厚さが薄い場合やコンクリート床の強度が小さい場合に、コンクリート床を破壊してしまう可能性がある。一方で、上記のような接着剤よりも接着強度が小さい接着剤、または剥離剤や熱を加えることで接着強度を弱めることができる接着剤も存在するが、これらの接着剤は、コンクリート床に対して必要な接着強度を確保することが難しい。
【0073】
そこで、本実施形態の固定構造FSは、設置物2を支持する支持部材10と、支持部材10とコンクリート床1との間に配置されたプレート20と、プレート20とコンクリート床1との間に設けられた第1接着剤21と、支持部材10とプレート20との間に設けられた第2接着剤22とを有する。このような構成によれば、第2接着剤22として、コンクリート床1に対して必要な接着強度を確保できる接着剤を選択することで、プレート20とコンクリート床1とを強固に固定することができる。一方で、支持部材10とプレート20との間は、第2接着剤22によって必要な接着強度を確保することができる。ここで、支持部材10とコンクリート床1との間にプレート20が設けられているため、支持部材10を取り外す際には、支持部材10がコンクリート床1に直接に接着されている場合に比べて、コンクリート床1が破壊されにくい。このため、あと施工アンカーを用いずに、支持部材10をコンクリート床1に固定することができ、施工時の騒音振動や、コンクリート床の破壊、コンクリート製の床面に埋設された埋設物の損傷のおそれ、それら埋設物による穴位置の制限などを回避することができる。
【0074】
また、本実施形態の構成によれば、支持部材10の更改の際に、既設にプレート20をコンクリート床1に残置し、新しい支持部材10Aを既設のプレート20の上に固定することができる。これにより、更改作業に必要な部品の低コスト化や、作業自体の効率化などを図ることができる。
【0075】
本実施形態では、第2接着剤22は、第1接着剤21とは種類が異なる接着剤である。すなわち、支持部材10とコンクリート床1との間にプレート20が設けられているため、第2接着剤22は、コンクリート床1に対する高い接着性は必要なく、支持部材10およびプレート20の材質に対して必要な接着強度が確保できれば、支持部材10の更改時の取り外し性を考慮した接着剤が採用可能である。第2接着剤22として、例えば、第1接着剤21と比べて支持部材10を取り外しやすい接着剤(例えば、第1接着剤21と比べて接着強度が弱い接着剤、または剥離剤や熱を加えることで接着力が弱まる接着剤)を採用することで、プレート20から支持部材10を取り外しやすくなる。
【0076】
本実施形態では、第1接着剤21は、熱硬化性接着剤である。第2接着剤22は、室温硬化性接着剤である。一般的に、熱硬化性接着剤は、室温硬化性接着剤に比べて接着強度が高い。このため上記構成によれば、コンクリート床1に対して高い接着強度を確保することができるとともに、プレート20から支持部材10を取り外しやすくすることができる。
【0077】
本実施形態では、第1接着剤21は、コンクリートへの含浸性がある接着剤である。第2接着剤22は、コンクリートへの含浸性が無い、または第1接着剤21と比べてコンクリートへの含浸性が小さい接着剤である。このような構成によれば、コンクリート床1に対してさらに高い接着強度を確保することができる。また、プレート20から支持部材10をより取り外しやすくなる場合がある。
【0078】
本実施形態では、第1接着剤21に含まれる粒子は、第2接着剤に含まれる粒子よりも小さい。このような構成によれば、コンクリート床1に対してさらに高い接着強度を確保することができる。また、プレート20から支持部材10をより取り外しやすくなる場合がある。
【0079】
本実施形態では、第2接着剤22は、第1接着剤21と比べて所定の溶剤に溶けやすい。このような構成によれば、プレート20から支持部材10をより取り外しやすくすることができる。これにより、設置物2および支持部材10の更改作業の作業性を高めることができる。
【0080】
本実施形態では、第2接着剤22は、加熱された場合に、第1接着剤21と比べて低い温度で接着力が弱まる。このような構成によれば、プレート20から支持部材10をより取り外しやすくすることができる。これにより、設置物2および支持部材10の更改作業の作業性を高めることができる。また、加熱温度を適切に管理する(例えば上述した「特定温度」に加熱温度を管理する)ことで、第1接着剤21の接着力が弱まることを抑制することができる。
【0081】
本実施形態では、第1接着剤21による接着面積は、第2接着剤による接着面積よりも大きい。このような構成によれば、コンクリート床1に対して高い接着強度を確保することができるとともに、プレート20から支持部材10を取り外しやすくすることができる。
【0082】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の固定構造FSについて説明する。第2の実施形態は、支持部材10のベース13が複数の貫通穴41を有する点で、第1の実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0083】
図10は、第2の実施形態の固定構造FSおよびコンクリート床1を示す断面図である。本実施形態では、支持部材10のベース13は、複数の貫通穴41を有する。貫通穴41は、ベース13を鉛直方向に貫通している。貫通穴41は、例えば、従来のあと施工アンカー用として設けられた穴であるが、別の目的で設けられた穴でもよい。
【0084】
本実施形態では、第2接着剤22の一部は、複数の貫通穴41の各々の内側にも入り込み、貫通穴41の内周面にも付着している。これにより、プレート20に対する支持部材10の横ずれ強度がさらに高められている。
【0085】
本実施形態では、第2接着剤22を加熱して第2接着剤22の接着力を弱める際には、例えば、貫通穴41の内部にヒーターを差し込み、第2接着剤22のなかで貫通穴41の内部に露出した部分を直接加熱する。これにより、第1の実施形態と比べて、第2接着剤22の全域をより均一に加熱しやすくなる。その結果、支持部材10をプレート20からより容易に取り外しやすくなる。
【0086】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態の固定構造FSについて説明する。第3の実施形態は、プレート20が複数の設置物2に対して共通して設けられた点で、第1の実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0087】
図11は、第3の実施形態の設置物2、固定構造FS、およびコンクリート床1を示す斜視図である。本実施形態では、プレート20は、複数の設置物2(複数の支持部材10)に対して一体に設けられている。詳しく述べると、各設置物2の支持部材10は、4つのベース13として、各設置物2の4つの隅部に対応して配置された第1ベース13A、第2ベース13B、第3ベース13C、および第4ベース13Dを含む。また、複数のプレート20は、第1プレート51と、第2プレート52とを含む。
【0088】
第1プレート51は、長方形状に形成されて、複数の設置物2の第1ベース13Aと第2ベース13Bの下方に亘る。第1プレート51は、第1接着剤21によってコンクリート床1に固定されている。第1プレート51は、第2接着剤22によって複数の設置物2の第1ベース13Aと第2ベース13Bに固定されている。
【0089】
第2プレート52は、長方形状に形成されて、複数の設置物2の第3ベース13Cと第4ベース13Dの下方に亘る。第2プレート52は、第1接着剤21によってコンクリート床1に固定されている。第2プレート52は、第2接着剤22によって複数の設置物2の第3ベース13Cと第4ベース13Dに固定されている。
【0090】
図12は、改変の前後の設置物2、固定構造FS、およびコンクリート床1を示す平面図である。図12中の(a)は、改変が行われる前の状態を示す。図12中の(b)は、改変が行われた後の状態を示す。図12は、改変後の固定構造の一部として、新しい支持部材10Aを支持する新しいプレート20Aが設置される例を示す。本実施形態では、新しい支持部材10Aの第3ベース13Cおよび第4ベース13Dの下方に新しいプレート20Aが設置される。新しい支持部材10Aの第3ベース13Cおよび第4ベース13Dは、新しく塗布された第2接着剤22または別の接着剤22Aにより新しいプレート20Aに固定される。一方で、新しい支持部材10Aの第1ベース13Aおよび第2ベース13Bは、新しく塗布された第2接着剤22または別の接着剤22Aにより既設のプレート51に固定される。
【0091】
図12に示すように、設置物2が更改される場合、新しい設置物2Aのサイズが古い設置物2のサイズよりも大きくなる場合がある。このような場合は、必要な箇所にだけ新しいプレート20Aを設置することで、設置物2の柔軟な改変に対応することができる。
【0092】
以上、第1から第3の実施形態について説明した。ただし、実施形態は、上記例に限定されない。例えば、固定構造FSが設けられるコンクリート床1は、コンクリート素材の表面に仕上げ加工が行われた(例えば防塵塗装が行われた)床面でもよい。例えば、支持部材とコンクリート床との間に設けられる部材は、プレートに限定されず、ブロック(例えば金属ブロック)などでもよい。このため、本明細書の「プレート」とは、「中間部材」または「介在部材」などと読み替えられてもよい。言い換えると、「プレート」は、「中間部材」または「介在部材」のそれぞれ一例である。また、第1接着剤21と第2接着剤22とは、互いに種類が同じ接着剤でもよい。
【符号の説明】
【0093】
FS…固定構造、1…コンクリート床、2…設置物、10,10A…支持部材、11…支持部材本体、12…支持軸、13…ベース、20,20A…プレート、21…第1接着剤、22…第2接着剤。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12