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特許7607026歯科処置および方法をシミュレートするための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】歯科処置および方法をシミュレートするための装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/28 20060101AFI20241219BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G09B23/28
G09B9/00 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022507796
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2020071871
(87)【国際公開番号】W WO2021028260
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】PA201970503
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA201970504
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA201970505
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA201970506
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA201970507
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(31)【優先権主張番号】PA201970508
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】522050103
【氏名又は名称】シムトゥライフ ビー. ヴィ.
【氏名又は名称原語表記】SIMTOLIFE B.V.
【住所又は居所原語表記】Johan Braakensiekhof 6 1068 KK Amsterdam The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ボーデ ディオン
(72)【発明者】
【氏名】ブリンクマン デニス
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブラベル ニールス
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヘルデル カレル
【審査官】西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-512299(JP,A)
【文献】特表2011-527462(JP,A)
【文献】特開2010-231167(JP,A)
【文献】特開平11-065426(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050543(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/002487(WO,A1)
【文献】米国特許第08716973(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56,
17/00-19/26,
23/00-29/14
G06F 3/01, 3/048-3/04895
A61C 1/00- 5/00,
5/40- 5/68,5/90-7/36,
19/00-19/10
A61G 15/14-15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体と、
ディスプレイスクリーンと、
歯科処置または治療をシミュレートするように構成されたコンピュータと、
前記支持構造体から吊設されたリンケージであって、ハプティック力フィードバックを提供することによって医療処置または治療をシミュレートするために前記コンピュータによって制御されるリンケージと、
前記リンケージに動作可能に連結され、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間において前記ユーザによって操作されるように構成されたハンドピースと、
前記支持構造体によって移動可能に支持され、前記作業空間内に設けられた模型上顎および/または模型下顎と
を備える歯科処置シミュレータであって、
前記コンピュータは、前記模型上顎または前記模型下顎と同位置に置かれた少なくとも一つの仮想歯を含む仮想環境を前記ディスプレイスクリーンに表示するように構成され、
前記模型上顎は、一、二、または三回転自由度の回転を可能にするように前記支持構造体から吊設され、各自由度の回転中心は前記模型上顎と前記模型下顎との間に位置する、
歯科処置シミュレータ。
【請求項2】
支持構造体と、
ディスプレイスクリーンと、
歯科処置または治療をシミュレートするように構成されたコンピュータと、
前記支持構造体から吊設されたリンケージであって、ハプティック力フィードバックを提供することによって医療処置または治療をシミュレートするために前記コンピュータによって制御されるリンケージと、
前記リンケージに動作可能に連結され、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間において前記ユーザによって操作されるように構成されたハンドピースと、
前記支持構造体によって移動可能に支持され、前記作業空間内に設けられた模型上顎および/または模型下顎と
を備える歯科処置シミュレータであって、
前記コンピュータは、前記模型上顎または前記模型下顎と同位置に置かれた少なくとも一つの仮想歯を含む仮想環境を前記ディスプレイスクリーンに表示するように構成され、
前記模型下顎は、開位置と閉位置との間の移動を可能にするように前記模型上顎から吊設され、
前記閉位置は咬合減少を検査するための位置に対応する、
歯科処置シミュレータ。
【請求項3】
支持構造体と、
ディスプレイスクリーンと、
歯科処置または治療をシミュレートするように構成されたコンピュータと、
前記支持構造体から吊設されたリンケージであって、ハプティック力フィードバックを提供することによって医療処置または治療をシミュレートするために前記コンピュータによって制御されるリンケージと、
前記リンケージに動作可能に連結され、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間において前記ユーザによって操作されるように構成されたハンドピースと、
前記支持構造体によって移動可能に支持され、前記作業空間内に設けられた模型上顎および/または模型下顎と
を備える歯科処置シミュレータであって、
前記コンピュータは、前記模型上顎または前記模型下顎と同位置に置かれた少なくとも一つの仮想歯を含む仮想環境を前記ディスプレイスクリーンに表示するように構成され、
前記模型上顎は、
・ 第一機構が前記作業空間に入り込むことなく前記作業空間に配置された第一水平軸Yの周りで前記模型上顎が回転することを可能にする前記第一機構によって前記支持構造体から吊設されるか、又は、
・ 第三機構が前記作業空間と交差することなく垂直軸Zの周りでの前記模型上顎の回転を可能にする前記第三機構によって前記支持構造体から吊設され、
ただし前記第一機構は遠隔中心リンケージを備える、
歯科処置シミュレータ。
【請求項4】
支持構造体と、
ディスプレイハウジングに搭載されるディスプレイスクリーンと、
歯科処置または治療をシミュレートするように構成されたコンピュータと、
前記支持構造体から吊設されたリンケージであって、ハプティック力フィードバックを提供することによって医療処置または治療をシミュレートするために前記コンピュータによって制御されるリンケージと、
前記リンケージに動作可能に連結され、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間において前記ユーザによって操作されるように構成されたハンドピースと、
前記支持構造体によって移動可能に支持され、前記作業空間内に設けられた模型上顎および/または模型下顎と、
前記ディスプレイハウジングに搭載され、前記ディスプレイスクリーンからの画像を前記ユーザの目に反射するように設けられた一部透明反射要素と、
を備える歯科処置シミュレータであって、
前記コンピュータは、前記ディスプレイスクリーン上の表示のために前記シミュレートされた歯科処置の画像を生成するように構成され、
前記コンピュータは、前記模型上顎または前記模型下顎と同位置に置かれた少なくとも一つの仮想歯を含む仮想環境を前記ディスプレイスクリーンに表示するように構成され、
前記作業空間は、前記一部透明反射要素を通して前記ユーザに視認可能であるように設けられる、
歯科処置シミュレータ。
【請求項5】
前記一、二、または三自由度の回転は手動で与えられ、前記歯科処置シミュレータは、前記一~三自由度の各々の前記模型上顎の回転を感知するための一つ以上の回転位置センサを備える、請求項1に記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項6】
前記コンピュータはディスプレイスクリーンに前記模型上顎のための仮想上歯群および前記模型下顎のための下仮想歯群を表示するように構成される、請求項2に記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項7】
前記模型上顎は、第二機構が前記作業空間と交差することなく前記作業空間に配置された第二水平軸Xの周りで前記模型上顎が回転することを可能にする前記第二機構によって前記支持構造体から吊設される、請求項2又は6に記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項8】
前記第一機構は遠隔中心リンケージを備える、請求項3に記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項9】
前記コンピュータは、仮想ハンドピース、仮想上顎、および仮想下顎を含む仮想環境を生成するように構成され、前記コンピュータは、前記仮想環境を前記ディスプレイスクリーンに表示するように構成され、前記コンピュータは、
前記仮想ハンドピースを前記ハンドピースと同位置に置き、
前記仮想上顎を前記模型上顎と同位置に置き、および/または
前記仮想下顎を前記模型下顎と同位置に置く
ように構成される、請求項1から8のいずれかに記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項10】
前記コンピュータは、前記仮想上顎の少なくとも一部分および前記仮想下顎の一部分を表示するように構成され、前記コンピュータは、前記模型上顎または前記模型下顎が移動されたときにも、前記ディスプレイスクリーン上で前記仮想上顎を前記模型上顎と同位置に置き、前記仮想下顎を前記模型下顎と同位置に置くように構成される、請求項9に記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項11】
前記模型下顎は、前記模型上顎に対して移動可能に設けられる、請求項1~10のいずれかに記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項12】
前記模型上顎および前記模型下顎は、模型歯を受けるための一つ以上の凹部が提供され、前記少なくとも一つの仮想歯は、前記ディスプレイスクリーン上で模型歯を受けるための前記一つ以上の凹部の一つと同位置に置かれる、請求項1~11のいずれか一項に記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項13】
前記模型上顎は、前記支持構造体に対して移動可能であり、
前記歯科処置シミュレータは、前記支持構造体に対する前記模型上顎および前記模型下顎の位置および向きを感知するように構成された一つ以上のセンサを備え、
前記コンピュータは、前記一つ以上のセンサを通じて、前記模型上顎および前記模型下顎の位置および向きを受信し、
前記コンピュータは、前記模型上顎または模型下顎が移動されたときに前記少なくとも一つの仮想歯が前記ディスプレイスクリーン上で前記模型上顎または模型下顎と同位置に置かれたままであるように、前記模型上顎または前記模型下顎の移動に合わせて前記少なくとも一つの仮想歯の向きおよび位置を調整するように構成される、
請求項1~12のいずれか一項に記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項14】
前記模型下顎は、ヒンジ機構によって、前記模型上顎から吊設される、請求項1~13のいずれか一項に記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項15】
前記模型上顎に対する前記模型下顎の位置を示す信号を生成するように構成された位置センサを備える、請求項1~14のいずれかに記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項16】
前記模型上顎は、除去可能上顎要素が除去可能に取り付けられる上側支持部材を備え、前記模型下顎は、除去可能下顎要素が除去可能に取り付けられる下側支持部材を備える、請求項1~15のいずれか一項に記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項17】
前記除去可能上顎要素は一般的上顎要素であり、前記一般的上顎要素は模型歯を有さず、前記除去可能下顎要素は一般的下顎要素であり、前記除去可能下顎要素は模型歯を有しない、請求項16に記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項18】
前記除去可能上顎要素は、上側模型歯が提供された特定上顎要素であり、前記除去可能下顎要素は、下側模型歯が提供された特定下顎要素である、請求項16又は17に記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項19】
前記上側模型歯は、前記特定上顎要素に除去可能に取り付けられ、前記下側模型歯は、前記特定下顎要素に除去可能に取り付けられる、請求項18に記載の歯科処置シミュレータ。
【請求項20】
前記模型上顎および/または前記模型下顎は、セグメントの少なくとも一つが除去可能に設けられるセグメント化された模型顎である、請求項1~19のいずれか一項に記載の歯科処置シミュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療および歯科処置ならびに方法をシミュレートするための装置および方法に関し、特に医師、歯科医、歯科/口腔/顎顔面外科医、歯科衛生士または歯科療法士の活動をシミュレートするために仮想、複合および/または拡張現実を用いる装置および方法に関する。
【背景】
【0002】
歯科医術は歯科および口腔医学としても知られ、口腔の一般には歯列であるがそれだけでなく口腔粘膜の、ならびに隣接および関連構造体および組織の特に顎顔面(顎および顔面)領域の疾患、障害、および状態の研究、診断、予防、および治療からなる医学の一分野である。歯科医術は、歯科処置および治療の形で歯科医、歯科外科医、口腔外科医、顎顔面外科医、歯科衛生士、および歯科療法士によって行われる口腔に関する行為を包含する。
【0003】
歯学生は訓練のための設備が必要であり、本物の患者を用いることには明らかな欠点がある。
【0004】
歯科処置をシミュレートするための歯科シミュレータが、当技術分野で知られている。これらのシミュレータが歯科医術生を訓練するために使用され、それによってプラスチック模型歯を備えたプラスチック模型頭部(これは正確なシミュレーションが得られず、作業の客観的評価または追跡ができず、環境に優しくない)で訓練する必要性が減少し、本物の患者で訓練する必要性が減少する。既知の歯科シミュレータは、シミュレーションを制御し仮想環境をホストするコンピュータ、シミュレートされた環境を表示するディスプレイスクリーン、ならびに入力を提供するためにコンピュータに接続された一つまたは二つのハンドピースを備える。シミュレートされた環境は、対象、仮想歯群、ハンドピースによって制御されるツールの仮想バージョン、ならびにハンドピース自体の仮想バージョンを含む。ツールは、外科器具(メス、注射器など)または他のデバイス(ミラーまたはプローブ等)でありうる。ハンドピースは、仮想環境におけるツールの位置を制御(表示)するために用いられるハンドピースの位置および向きを判断するセンサに接続される。通常、ハンドピースの一つは、ハンドピースを通してユーザが感じる力をコンピュータが制御するハプティックフィードバックシステム上に装着される。
【0005】
静止したU字型レールなどが、歯科医術生(ユーザ)の手/指のためのハンドレストとして働く。実際の歯科処置または治療では、歯科医は通常、患者の歯および顎上に指を置くため、既知の歯科シミュレータにおける単一の固定U字型レールを用いたシミュレーションはリアルなシミュレーションではない。
【0006】
視覚的ディスプレイスクリーンは、ユーザの目とハンドピースおよびレールとの間に配置され、仮想顎上の仮想歯群を示す仮想環境を提示する。既知のシミュレータは、シミュレーションを制御し仮想環境をホストするコンピュータ、シミュレートされた環境を表示するディスプレイスクリーン、ならびに入力/出力を提供するためにコンピュータに接続された一つまたは二つのハンドピースを備える。シミュレートされた環境は、対象、ならびにハンドピースによって制御されるツールの仮想バージョンを含む。ツールは、外科器具(メス、注射器など)または他のデバイス(ミラーまたはプローブ等)でありうる。ハンドピースは、仮想環境におけるツールの位置を制御するために用いられるハンドピースの位置を判断するセンサに接続される。ハンドピースの一つは、ハンドピースを通してユーザが感じる力をコンピュータが制御することができるハプティックフィードバックシステム上に装着され、よりリアルなシミュレーションを可能にする。したがって、ハンドピースの仮想バージョンがディスプレイスクリーンに表示されるが、ユーザは自分自身の指または手を見ることができず、ユーザに重要な視覚的入力が与えられないため、これは欠点である。
【摘要】
【0007】
上述の問題の少なくとも一つを克服するかまたは少なくとも軽減する歯科シミュレータを提供することが目的である。
【0008】
前述の目的および他の目的は、独立請求項の特徴によって達成される。さらなる実施形態は、従属請求項、説明、および図面から明らかである。
【0009】
第一態様によれば、支持構造体と、ディスプレイスクリーンと、歯科処置または治療をシミュレートするように構成されたコンピュータと、前記支持構造体から吊設されたリンケージであって、ハプティック力フィードバックを提供することによって医療処置または治療をシミュレートするために前記コンピュータによって制御されるリンケージと、前記リンケージに動作可能に連結され、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間において前記ユーザによって操作されるように構成されたハンドピースと、前記支持構造体によって支持され、前記作業空間内に設けられた模型上顎および模型下顎とを備える歯科処置シミュレータであって、前記模型下顎は、前記模型上顎に対して移動可能に設けられるのが好ましく、前記コンピュータは、前記模型上顎または前記模型下顎と同位置に置かれた少なくとも一つの仮想歯を含む仮想環境を前記ディスプレイスクリーンに表示するように構成される、歯科処置シミュレータが提供される。
【0010】
模型上顎および下顎を提供することにより、上顎および/または下顎の存在による複合現実に起因して、歯科処置のコンピュータシミュレーションがユーザにとってはるかにリアルになる。歯科医が本物の患者上で手/指を支えるやり方に非常に類似した、コンピュータシミュレーションの体験を強化するやり方でユーザが手/指を支えることができる模型顎の存在。さらに、上顎および下顎の視覚的な存在により、本物の患者での作業環境のはるかにリアルな表現が与えられ、したがってよりリアルなシミュレーションが提供される。
【0011】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記模型上顎および前記模型下顎は、前記支持構造体に対して移動可能であり、前記歯科処置シミュレータは、前記支持構造体に対する前記模型上顎および前記模型下顎の位置および向きを感知するように構成された一つ以上のセンサを備え、前記コンピュータは、前記一つ以上のセンサを通じて、前記模型上顎および前記模型下顎の位置および向きを受信し、前記コンピュータは、前記模型上顎または前記模型下顎が移動されたときに前記少なくとも一つの仮想歯が前記ディスプレイスクリーン上で前記模型上顎または前記模型下顎と同位置に置かれたままであるように、前記模型上顎または前記模型下顎の移動に合わせて前記少なくとも一つの仮想歯の向きおよび位置を調整するように構成される。
【0012】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記模型上顎および前記模型下顎はユーザによって手動で移動可能である。
【0013】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記コンピュータは、前記仮想上顎の少なくとも一部分および前記仮想下顎の一部分を表示するように構成され、前記コンピュータは、前記模型上顎または前記模型下顎が移動されたときにも、前記ディスプレイスクリーン上で前記仮想上顎を前記模型上顎と同位置に置き、前記仮想下顎を前記模型下顎と同位置に置くように構成される。
【0014】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記模型下顎は、ヒンジ機構、例えば四バーリンケージ、好ましくは人間の顎の動きを模倣するヒンジ機構によって、前記模型上顎から吊設される。
【0015】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記模型下顎は、開位置と閉位置との間の移動を可能にするように前記模型上顎から吊設される。
【0016】
第一態様の可能な実施形態によれば、歯科処置シミュレータは、前記模型上顎に対する前記模型下顎の位置を示す信号を生成するように構成された位置センサを備える。
【0017】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記閉位置は咬合減少を検査するための位置に対応する。
【0018】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記コンピュータは、ディスプレイスクリーンに前記模型上顎のための仮想上歯群および前記模型下顎のための下仮想歯群を表示し、それにより前記閉位置での前記仮想歯群の視覚的咬合検査を可能にするように構成される。
【0019】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記模型上顎は、一、二、または三回転自由度の回転を可能にするように前記支持構造体から吊設され、好ましくは各自由度の回転中心は前記模型上顎と前記模型下顎との間に位置する。
【0020】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記一、二、または三自由度の回転は、手動で与えられるのが好ましく、前記歯科処置シミュレータは、前記一~三自由度の各々の前記模型上顎の回転を感知するための一つ以上の回転位置センサを備える。
【0021】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記コンピュータは、前記一つ以上の回転位置センサからの信号を受信し、前記コンピュータ(80)は、前記回転位置センサからの前記信号に合わせて歯科処置または治療のシミュレーションを調整するように構成される。
【0022】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記模型上顎は、第一機構が作業空間に入り込むことなく前記作業空間に配置された第一水平軸Yの周りで前記上顎が回転することを可能にする前記第一機構によって前記支持構造体から吊設され、前記第一機構は、好ましくは遠隔中心リンケージ、好ましくは二つの離隔された平行な遠隔中心リンケージを備える。
【0023】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記模型上顎は、第二機構が前記作業空間と交差することなく作業空間に配置された第二水平軸の周りで模型上顎が回転することを可能にする第二機構によって支持構造体から吊設される。
【0024】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記模型上顎は、第三機構が前記作業空間と交差することなく垂直軸Zの周りでの前記模型上顎の回転を可能にする前記第三機構によって前記支持構造体から吊設される。
【0025】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記模型上顎は、除去可能上顎要素が除去可能に取り付けられる上側支持部材を備え、前記模型下顎は、除去可能下顎要素が除去可能に取り付けられる下側支持部材を備える。
【0026】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記除去可能上顎要素は、一般的上顎要素であり、前記一般的上顎要素は、歯を有しない/画成しないのが好ましく、前記除去可能下顎要素は、一般的下顎要素であり、前記除去可能下顎要素は、歯を有しない/画成しないのが好ましい。
【0027】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記除去可能上顎要素は、模型歯が提供された特定上顎要素であり、前記模型歯は、前記特定上顎要素に除去可能に取り付けられるのが好ましく、前記特定上顎要素とその模型歯は、本物の人間の上顎の一部分とその歯の正確な複製であるのが好ましく、前記除去可能下顎要素は、模型歯が提供された特定下顎要素であり、前記模型歯は、前記特定下顎要素に除去可能に取り付けられるのが好ましく、前記特定下顎要素とその模型歯は、本物の人間の下顎の一部分とその歯の正確な複製であるのが好ましい。
【0028】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記コンピュータに前記特定上顎要素および/または前記特定下顎要素の仮想モデルが提供される。
【0029】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記模型上顎および前記模型下顎は、模型頭部の一部であり、前記模型頭部とその模型下顎および模型上顎は互いに一体となって移動するように構成されるのが好ましい。
【0030】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記コンピュータは、支持部材上に/支持部材から特定上顎要素または下顎要素を設置/除去するようユーザに指示するように構成され、前記コンピュータは、好ましくは、特定顎要素内に/顎要素から模型歯を挿入/除去するよう前記ユーザに指示するようにも構成される。
【0031】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記コンピュータはディスプレイスクリーンに連結され、前記歯科処置シミュレータは、ユーザが一部透明反射要素を通して前記作業空間、前記ハンドピース、前記模型上顎、および前記模型下顎を見ることを可能にしながら、前記ディスプレイスクリーンからの画像を前記一部透明反射要素を介して前記ユーザの目に投影するように構成される。
【0032】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記コンピュータは、前記作業空間における前記ユーザによる前記ハンドピースの操作に応答した力フィードバックを通じて医療または歯科処置もしくは治療をシミュレートするように構成される。
【0033】
第一態様の可能な実施形態によれば、前記模型上顎および/または前記模型下顎は、セグメントの少なくとも一つが除去可能であるセグメント化された模型顎である。
【0034】
少なくとも一つ以上または全てのセグメントを除去することができ、もちろん再度設置することもできるセグメント化された模型顎を使用することにより、下顎に関連する仮想歯のシミュレートされた治療に関係する活動で特に生じうるハプティックアームと模型顎との間の接触を回避することが可能である。換言すれば、状況によっては、模型顎の一部分がハプティックアームの邪魔になり、該当するセグメント化された模型顎のセクションを除去することによって、ユーザが自分の手の支持として使用するためおよびシミュレーションにリアルさを提供するために模型顎の大部分がなお存在しながら、ハプティックアームのための場所があけられる。
【0035】
第二態様によれば、支持構造体と、歯科処置または治療をシミュレートするように構成されたコンピュータと、前記支持構造体から吊設されたリンケージであって、歯科処置または治療をシミュレートするように構成されたハプティック力フィードバックを提供することによって医療処置または治療をシミュレートするために前記コンピュータによって制御されるリンケージと、前記リンケージに動作可能に連結され、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間において前記ユーザによって操作されるように構成されたハンドピースと、前記支持構造体によって移動可能に支持され、前記作業空間内に設けられた模型上顎とを備える歯科処置シミュレータであって、前記模型上顎は、機構が前記作業空間と交差することなく前記作業空間に配置された少なくとも一つの軸の周りで前記模型上顎が回転することを可能にする前記機構によって前記支持構造体から吊設される、歯科処置シミュレータが提供される。
【0036】
作業空間に入り込まないリンケージを提供することにより、ハンドピースの移動に必要な作業空間に干渉しない歯科処置または治療のコンピュータシミュレーションにおいて模型頭部を使用することが可能である。
【0037】
第二態様の可能な実施形態によれば、前記模型上顎は、第一機構が前記作業空間に入り込むことなく前記作業空間に配置された水平軸の周りで前記上顎が回転することを可能にする前記第一機構によって前記支持構造体から吊設され、前記第一機構は、好ましくは少なくとも一つの離隔された平行な遠隔中心リンケージを備える。
【0038】
第二態様の可能な実施形態によれば、前記模型上顎は、第二機構が前記作業空間と交差することなく水平軸の周りでの前記模型上顎の回転を可能にする前記第二機構によって前記支持構造体から吊設され、前記第二機構は、好ましくは、前記模型頭部と前記模型上顎との間に延びるL字型プレートを備える。
【0039】
第二態様の可能な実施形態によれば、前記模型上顎は、第三機構が前記作業空間と交差することなく垂直軸の周りでの前記模型上顎の回転を可能にする第三機構によって前記支持構造体から吊設され、前記第三機構は、好ましくは、前記第一機構をL字型プレートに接続し、前記L字型プレートが垂直軸の周りで回転することを可能にするヒンジピンを備える。
【0040】
第三態様によれば、歯科処置または治療をシミュレートまたは訓練するための装置であって、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間において前記ユーザによって操作されるように構成されたハンドピースと、歯科処置または治療をシミュレートするように構成されたコンピュータによって制御されるハプティックアームであって、前記ハンドピースは、前記ハプティックアームに機械的に接続される、ハプティックアームと、歯科バーを駆動するためのモータを備えた動力付き歯科ハンドピースと、前記作業空間内で少なくとも一つの模型歯を支持するための支持体とを備える装置が提供される。
【0041】
歯科処置または治療のコンピュータシミュレーションのためのハンドピースと歯科処置の物理的シミュレーションのためのハンドピースとの両方を提供することにより、一つのマシンにより両方のタイプの訓練が行われることができ、それによって費用および空間の大幅な節約が提供される。
【0042】
第三態様の可能な実施形態によれば、前記動力付き歯科ハンドピースは、前記動力付き歯科ハンドピースに接続されたケーブルを介して電気または空気動力が提供される。
【0043】
第三態様の可能な実施形態によれば、前記装置は、前記少なくとも一つの模型歯を支持するための少なくとも一つの模型顎を備える。
【0044】
第三態様の可能な実施形態によれば、前記模型歯は、少なくとも部分的にポリマー材料で作製される。
【0045】
第三態様の可能な実施形態によれば、前記コンピュータは、前記ハンドピースを使用して歯科処置または治療をシミュレートするための第一動作モードと、前記動力付き歯科ハンドピースを使用して歯科処置または治療を訓練するための第二動作モードとを少なくとも有する。
【0046】
第三態様の可能な実施形態によれば、前記ハンドピースは、モータを備えず、歯科バーを動作させるように構成されない受動ハンドピースである。
【0047】
第四態様によれば、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間において前記ユーザによって操作されるように構成されたハンドピースと、医療処置または治療をシミュレートするように構成されたコンピュータによって制御されるリンケージであって、細長メインリンクを備えるリンケージと、第一クランク、第二クランクおよび第三クランクと、前記第一クランクを駆動する第一アクチュエータと、前記第二クランクを駆動する第二アクチュエータと、前記第三クランクを駆動する第三アクチュエータとを備え、前記ハンドピースは機械継手によってメインリンクの先端に接続され、前記第一クランクは前記メインリンクを長手方向に作動させるように設けられ、前記第二クランクは前記メインリンクを第一横断方向に作動させるように設けられ、前記第三クランクは前記メインリンクを前記第一横断方向とは異なる第二横断方向に作動させるように設けられる、医療処置シミュレータであって、前記第一クランクは第二機械継手によって前記メインリンクに直接連結され、前記第二クランクは第一接続ロッドによって前記メインリンクに連結され、前記第一接続ロッドは第一端で前記第二クランクに連結され、前記第一接続ロッドは第二端で前記メインリンクに連結され、前記第三クランクは第二接続ロッドを介して前記メインリンクに連結され、前記第二接続ロッドは第一端で前記第三クランクに連結され、前記第二接続ロッドは第二端で前記メインリンクに連結される、医療処置シミュレータが提供される。
【0048】
医療処置シミュレータのリンケージは複雑ではなく、したがって含まれる構成要素の数が比較的少ないため、信頼性が高く安価である。さらに、リンケージは、作業空間の側部が垂直および水平である立方体の作業空間を提供するのに適する。
【0049】
第四態様の第一の可能な実施形態では、前記第一クランクは第一軸位置で前記メインリンクに接続され、前記第一接続ロッドは前記先端と前記第一軸位置との間の第二軸位置で前記メインリンクに連結され、前記第二接続ロッドは前記先端と前記第一位置との間の第三軸位置で前記メインリンクに連結され、前記第二および第三軸位置は、好ましくは実質的に同一である。
【0050】
第四態様の第二の可能な実施形態では、前記メインリンクは、前記ユーザによって前記ハンドピースに加えられる力を三次元で感知するための三次元力センサを備え、前記三次元力センサは前記極限位置と前記第二および/または第三軸位置との間に配置され、前記三次元力センサは、好ましくは前記メインリンクの一体部分である。
【0051】
第四態様の第三の可能な実施形態では、前記第一、第二、および/または第三クランクは、回転位置センサまたはエンコーダに連結される。
【0052】
第四態様の第四の可能な実施形態では、前記第一、第二、および/または第三アクチュエータは回転アクチュエータである。
【0053】
第四態様の第五の可能な実施形態では、前記第一、第二、および第三クランクのそれぞれの回転軸は、互いに対して直交して設けられる。
【0054】
第四態様の第六の可能な実施形態では、前記第一接続ロッドは実質的に水平に延び、前記第二接続ロッドは実質的に垂直に延び、前記第一クランクの回転軸は実質的に垂直に延びる。
【0055】
第四態様の第七の可能な実施形態では、前記コンピュータは、前記リンケージによるハプティックフィードバック、好ましくはハプティック力制御フィードバックを通じて、およびディスプレイスクリーンによる視覚的フィードバックを通じて、医療処置または治療をシミュレートするように構成される。
【0056】
第四態様の第八の可能な実施形態では、前記医療処置シミュレータは基準を備え、前記第一、第二、および第三クランクは前記基準上に装着される。
【0057】
第四態様の第九の可能な実施形態では、前記医療処置シミュレータは基準を備え、前記リンケージは、前記ハンドピースに前記基準に対して少なくとも六つの独立した自由度を提供する。
【0058】
第四態様の第十の可能な実施形態では、前記リンケージは、前記ハンドピースを前記基準に接続する。
【0059】
第四態様の第十一の可能な実施形態では、前記ハンドピースは慣性測定ユニットを備え、前記慣性測定ユニットは、前記ハンドピースの回転向き、好ましくは現実空間内のおよび/または前記基準に対する前記ハンドピースの回転向きを示す向きデータを作成するように構成されるのが好ましい。
【0060】
第四態様の第十二の可能な実施形態では、前記第一クランクの自由端は、好ましくは例えば自在継手等、前記メインリンクと前記第一クランクとの間の少なくとも二自由度の相対移動を提供する機械継手によって、前記メインリンクに連結される。
【0061】
第一態様の第十三の可能な実施形態では、前記第二横断方向は前記第一横断方向に対して実質的に直角である。
【0062】
第四態様の第十四の可能な実施形態では、前記コンピュータは、前記三次元力センサからの前記信号を入力として使用することによって、およびそれに応じて前記先端の速度を制御することによって、医療処置または治療をシミュレートするように構成される。
【0063】
第五態様によれば、ハプティック力フィードバックを提供するハプティック力フィードバックシステムに連結されたハンドピースであって、前記力フィードバックシステムは少なくとも一つのアクチュエータを備える、ハンドピースを備えた医療処置シミュレータであって、制御システムは、仮想力を計算するように構成された仮想モデルと、前記ハンドピースに加えられる力を感知するように構成された力センサとを備え、前記仮想モデルは、前記ハンドピースの速度を表す信号を受信し、合算点が前記仮想力と前記感知された力とを加算し、リードラグ補償器が前記合算点の出力を受信し、PIまたはPIDコントローラが前記リードラグ補償器の出力を受信し、モータドライブが前記PIまたはPIDコントローラから速度コマンドを受信し、前記少なくとも一つのアクチュエータは前記モータドライブによって電気的に駆動される、医療処置シミュレータが提供される。
【0064】
医療処置シミュレータにおいてリードラグ補償器を使用することにより、接触不安定またはシステム共振の結果生じる高周波数がPIまたはPIDコントローラへの入力信号から除去され、医療処置シミュレータのリアルな感触のより安定したスムーズな動作がもたらされる。
【0065】
第五態様の可能な実施態様では、前記仮想モデルは前記ハンドピース30の向きを示す信号を受信する。
【0066】
第二態様の別の可能な実施態様では、前記仮想モデルは前記仮想バーの回転スピードを示す信号を受信する。
【0067】
第六態様によれば、歯科処置または治療をシミュレートするように構成されたコンピュータと、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間においてユーザによって操作されるように構成されたハンドピースとを備え、前記コンピュータは、ディスプレイスクリーン上の表示のために前記シミュレートされた歯科処置の画像を生成するように構成される、歯科処置シミュレータであって、前記ディスプレイスクリーン上の画像を前記ユーザの目に反射するように設けられた一部透明反射要素を備え、前記作業空間は前記一部透明反射要素を通して前記ユーザに視認可能であるように設けられる、歯科処置シミュレータが提供される。
【0068】
一部透明反射スクリーンを提供することにより、ユーザが医療処置の訓練をしながら自分の手を見ることが可能になる。これは、ユーザ体験を大幅に強化する重要な視覚的フィードバックである。結果として生じる複合現実は、全体的なユーザ体験を強化する。
【0069】
第一態様の第六の可能な実施態様によれば、前記歯科処置シミュレータは、前記一部透明反射要素上の反射によって前記ディスプレイスクリーンからの前記画像を前記ユーザの目に反射するように構成され、前記画像を前記一部透明反射要素を通して前記ユーザに見える前記作業空間(W)の視界と混合するように構成される。
【0070】
第六態様の第一の可能な実施態様によれば、前記ユーザが目視空間から前記一部透明反射要素を見たときに、前記ディスプレイスクリーン上の前記画像が前記ユーザの目に反射され、同時に前記一部透明反射要素を通して前記作業空間が前記ユーザに視認可能である。
【0071】
第六態様の第三の可能な実施態様によれば、前記ディスプレイスクリーンは立体ディスプレイスクリーンである。
【0072】
第六態様の第四の可能な実施態様によれば、前記コンピュータは、立体画像を前記立体ディスプレイスクリーンに送信するように構成される。
【0073】
第六態様の第五の可能な実施態様によれば、前記立体ディスプレイスクリーンは自動立体ディスプレイスクリーンである。
【0074】
第六態様の第六の可能な実施態様によれば、前記コンピュータは、前記ハンドピースと同位置に置かれた仮想ハンドピースの画像を生成するように構成され、前記画像は好ましくは立体画像である。
【0075】
第六態様の第七の可能な実施態様によれば、前記コンピュータは、第一仮想位置と第一仮想向きとを有する第一仮想ツールを含む三次元仮想環境を提供するように構成され、前記第一仮想ツールは、サイズおよび形状が前記ハンドピースに対応し、前記第一仮想ツールは、前記ハンドピースと同位置に置かれる。
【0076】
第六態様の第八の可能な実施態様によれば、前記一部透明反射要素は、一部透明ミラーまたは半透明ミラーである。
【0077】
第六態様の第九の可能な実施態様によれば、前記歯科処置シミュレータは、前記作業空間上の調整可能な照明が提供される。
【0078】
第六態様の第十の可能な実施態様によれば、前記歯科処置シミュレータは、いずれも前記作業空間に配置された模型上顎および模型下顎が提供される。
【0079】
第六態様の第十一の可能な実施態様によれば、前記歯科処置シミュレータは、前記作業空間に配置された模型頭部が提供され、前記模型頭部は、好ましくは前記模型上顎および前記模型下顎を備える。
【0080】
第七態様によれば、歯科処置または治療をシミュレートする方法であって、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間においてユーザによって操作されるように構成されたハンドピースを備える歯科処置シミュレータを提供することと、スペース、前記シミュレートされた歯科処置または治療を含む仮想環境の画像をディスプレイスクリーンに生成することと、一部透明反射要素を介して前記画像をユーザに反射することと、前記ユーザが前記一部透明反射要素を通した前記作業空間と前記一部透明反射要素による反射を通した前記仮想環境の前記画像とを同時に目視することを可能にすることとを含む方法が提供される。
【0081】
第七態様の第一の可能な実施態様によれば、前記作業空間は、少なくとも一つの移動可能模型顎および/または移動可能模型頭部を含み、前記仮想環境は、仮想歯を備えた少なくとも一つの仮想顎を含み、前記方法は、前記模型顎との同位置性を維持するために前記仮想歯を備えた仮想顎の位置を調整することを含む。
【0082】
第八態様によれば、歯科処置または治療をシミュレートするように構成されたコンピュータと、前記コンピュータによって制御される並列ロボットであって、少なくとも三並進自由度を提供し、前記並列ロボットを通してハプティック力フィードバックを提供することによって歯科処置または治療をシミュレートするために前記コンピュータによって制御される並列ロボットと、少なくとも三回転自由度を提供する機構によって前記並列ロボットに動作可能に連結されたハンドピースであって、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間においてユーザによって操作されるように構成されたハンドピースと、自動立体ディスプレイスクリーンとを備え、前記コンピュータは、前記自動立体ディスプレイスクリーン上の表示のために前記シミュレートされた歯科処置の立体画像を生成するように構成され、前記コンピュータは、前記ハンドピースと同位置に置かれた仮想ハンドピースの立体画像を生成するように構成される、歯科処置シミュレータが提供される。
【0083】
自動立体ディスプレイと組み合わせた力フィードバック並列ロボットを備えた歯科処置シミュレータを提供することにより、訓練を受ける者が3D(シャッタ)眼鏡を使用することを必要とせずに歯科医師または歯学生に非常にリアルな訓練を提供することが可能である。
【0084】
第八態様の可能な実施形態によれば、歯科処置シミュレータは、前記コンピュータによって制御される並列ロボットを備え、前記並列ロボットは、少なくとも三並進自由度を提供し、前記並列ロボットは、前記並列ロボットを通してハプティック力フィードバックを提供することによって歯科処置または治療をシミュレートするために前記コンピュータによって制御され、前記ハンドピースは、少なくとも三回転自由度を提供する機構によって前記並列ロボットに動作可能に連結される。
【0085】
第八態様の可能な実施形態によれば、前記並列ロボットは、並進自由度ごとに一つのアクチュエータを備える。
【0086】
第八態様の可能な実施形態によれば、前記歯科処置シミュレータは、前記ハンドピースの向きを感知するためのセンサを備える。
【0087】
第八態様の可能な実施形態によれば、前記歯科処置シミュレータは、前記自動立体ディスプレイスクリーンからの画像を前記ユーザの目に反射するように設けられた一部透明反射要素を備え、前記作業空間は、前記一部透明反射要素を通して前記ユーザに視認可能であるように設けられる。
【0088】
第八態様の可能な実施形態によれば、前記コンピュータは、第一仮想位置と第一仮想向きとを有する第一仮想ツールを含む三次元仮想環境を生成するように構成され、前記第一仮想ツールは、好ましくはサイズおよび形状が前記ハンドピースに対応し、前記コンピュータは、前記第一仮想ツールを前記ハンドピースと同位置に置くように構成される。
【0089】
第九態様によれば、歯科処置または治療をシミュレートするように構成されたコンピュータと、基準と、歯科ドリルをシミュレートする第一ハンドピースであって、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間において前記ユーザによって操作されるように構成された第一ハンドピースと、前記基準に連結されたリンケージであって、前記リンケージを通してハプティックフィードバックを提供することによって歯科処置または治療をシミュレートするように構成された前記コンピュータによって制御されるリンケージと、歯科ミラーをシミュレートするための第二ハンドピースであって、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間において前記ユーザによって操作されるように構成された第二ハンドピースと、第一および第二自由度を提供する一つ以上の継手によって前記基準に連結された一次リンクと、第三および第四自由度を提供する一つ以上の継手によって前記一次リンクに連結された二次リンクとを備え、前記第二ハンドピースは、前記第二ハンドピースを前記基準に六自由度で接続するシリアルチェーンを形成するように、第五および第六自由度を提供する一つ以上の継手によって前記二次リンクに接続される、歯科処置シミュレータであって、前記第一自由度の移動を感知するための第一センサと、前記第二自由度の移動を感知するための第二センサと、前記第三自由度の移動を感知するための第三センサとを備え、前記第一、第二および第三位置センサは、前記コンピュータとデータ接続される、歯科処置シミュレータであって、前記第二ハンドピース内に設けられた慣性測定ユニットであって、前記コンピュータとデータ接続され、少なくとも前記第四、第五および第六自由度の移動を感知するように構成された慣性測定ユニットを備える歯科処置シミュレータが提供される。
【0090】
三つの位置センサとハンドピース内の慣性測定ユニットとの組み合わせにより、慣性測定ユニットのドリフトを補償するために位置センサからの信号を用いることができるため、基準に対するハンドピースの正確な位置を判断するための比較的複雑でないがそれでも正確なシステムが提供される。
【0091】
第九態様の第一の可能な実施形態では、前記ハンドピースは、第六自由度を提供する一つ以上の継手によって前記二次リンクに接続され、前記第六自由度は、前記ハンドピースが前記ハンドピースの軸の周りで回転することを可能にし、前記慣性測定ユニットは、前記第六自由度を感知するように構成される。
【0092】
第九態様の第二の可能な実施形態では、前記第一センサ、前記第二センサまたは前記第三センサは回転位置センサである。
【0093】
第九態様の第三の可能な実施形態では、前記一次リンクは、前記第一自由度を実現するために前記一次リンクがその長手軸の周りで回転することを可能にする第三ピボット継手によって前記基準に連結される細長リンクである。
【0094】
第九態様の第四の可能な実施形態では、前記第一センサは、前記長手軸の周りの前記一次リンクの回転を感知するように構成された回転位置センサである。
【0095】
第九態様の第五の可能な実施形態では、前記一次リンクは、前記第二自由度を得るために前記一次リンクが横軸の周りで回転することを可能にするヒンジによって前記基準に連結される細長リンクである。
【0096】
第九態様の第六の可能な実施形態では、前記第二位置センサは、前記横軸の周りの前記一次リンクの回転を感知するように構成された回転位置センサである。
【0097】
第九態様の第七の可能な実施形態では、前記二次リンクは、前記第三自由度を得るために前記二次リンクが横軸の周りで回転することを可能にする第三ヒンジによって前記一次リンクに連結される細長リンクである。
【0098】
第九態様の第八の可能な実施形態では、前記第三センサは、前記横軸の周りの前記二次リンクの回転移動を感知するように構成された回転位置センサである。
【0099】
第九態様の第九の可能な実施形態では、前記二次リンクは、前記第四自由度を得るために前記二次リンクがその長手軸の周りで回転することを可能にする第二ピボット継手によって前記一次リンクに連結される細長リンクである。
【0100】
第九態様の第十の可能な実施形態では、前記医療処置シミュレータは、四次リンクに連結された三次リンクを備え、前記二次リンクの前記横軸の周りの前記二次リンクの回転を前記第三センサの回転移動に変換するシリアルチェーンを形成するように、前記三次リンクは前記一次リンクまたは前記二次リンクに連結され、前記四次リンクは前記第三センサに連結される。
【0101】
第九態様の第十一の可能な実施形態では、前記医療処置シミュレータは、前記ハンドピースに第五自由度を提供するための第二ヒンジを備える。
【0102】
第九態様の第十二の可能な実施形態では、前記医療処置シミュレータは、第六自由度を提供するために前記ハンドピースが前記ハンドピースの軸の周りで回転することを可能にする第四ピボット継手を備える。
【0103】
第九態様の第十三の可能な実施形態では、前記医療処置シミュレータは、前記ハンドピースの前記軸の周りの前記ハンドピースの回転を感知するために、前記ハンドピースの内側に回転位置センサを備える。
【0104】
第九態様の第十四の可能な実施形態では、前記慣性測定ユニットは、前記ハンドピースの前記軸の周りの前記ハンドピースの回転を感知するように構成される。
【0105】
第九態様の第十五の可能な実施形態では、前記慣性測定ユニットは、最大六自由度、好ましくは三回転自由度の移動を感知するように構成され、前記コンピュータは、前記第一、第二およびまたは第三センサからの前記信号を前記慣性測定ユニットを較正するための基準として使用するように構成される。
【0106】
第十態様によれば、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間において前記ユーザによって操作されるように構成されたハンドピースと、医療処置または治療をシミュレートするように構成されたコンピュータによって制御されるリンケージとを備え、前記ハンドピースは、外側部内に延びる内側部を備え、前記外側部は前記内側部の周りで回転するように構成され、前記内側部の一部分が前記外側部から突出し、前記部分は少なくとも二自由度の継手によって前記リンケージに連結される、医療処置シミュレータであって、前記内側部に装着され、前記コンピュータに連結された慣性測定ユニットと、前記内側部に対する前記外側部の回転移動を感知するための回転位置センサであって、前記回転位置センサは前記コンピュータに連結され、前記回転位置センサの少なくとも第一部分が前記内側部上に装着され、前記第一部分は、前記内側部によって案内または支持されるケーブルによって前記コンピュータに接続される、回転位置センサとを備える医療処置シミュレータが提供される。
【0107】
ハンドピースの内側部および外側部の装備により、自分の手でハンドピースを動作させるユーザの自由度が高まる。回転センサの少なくとも第一部が内側部上に装着される装備により、内側部に対して外側部が無限に回転でき、ハンドピースがその長手軸の周りで無限に回転する。回転位置センサは少なくとも部分的に内側部上に設けられうるため、ケーブルが回転を受けないため、回転を可能にするためにスリップリングなどを必要とせずに、回転センサをケーブルによってコンピュータに接続することが可能である。回転位置センサとコンピュータとの間の接続部にスリップリングなどがないことにより、回転位置センサとコンピュータとの間により信頼性の高い接続が提供される。
【0108】
第十態様の第一の可能な実施形態では、前記慣性測定ユニットは、前記ハンドピースの回転向きを示す向きデータを作成するように構成される。
【0109】
第十態様の第二の可能な実施形態では、前記慣性測定ユニットは、前記内側部によって案内または支持されるケーブルによって前記コンピュータに連結される。
【0110】
第十態様の第三の可能な実施形態では、前記医療処置シミュレータは、前記内側部と前記外側部との間の第一回転ベアリングと、好ましくは前記第一回転ベアリングから軸方向に離隔された第二回転ベアリングとを備える。
【0111】
第十態様の第四の可能な実施形態では、前記外側部は、前記内側部の長手軸の周りで回転するように設けられる。
【0112】
第十態様の第五の可能な実施形態では、前記内側部は細長く、前記内側部の第一先端で継手に接続され、前記回転位置センサは、前記内側部の第二先端またはその近くに設けられ、前記第二先端は前記外側部の内側に位置する。
【0113】
第十態様の第六の可能な実施形態では、前記慣性測定ユニットは、現実空間内の前記ハンドピースの、好ましくは基準に対する位置および/または向きデータを作成するために構成される。
【0114】
第十態様の第七の可能な実施形態では、前記慣性測定ユニットの前記コンピュータへの前記連結は、位置および/または向きデータの伝送のための前記慣性測定ユニットから前記コンピュータへのデータリンクを備える。
【0115】
第十態様の第八の可能な実施形態では、前記回転位置センサの前記コンピュータへの前記連結は、回転位置データの伝送のための前記回転位置センサから前記コンピュータへのデータリンクを備える。
【0116】
第十態様の第九の可能な実施形態では、前記外側部は前記内側部に対して無限に回転する。
【0117】
第十態様の第十の可能な実施形態では、前記外側部の長手範囲は、近接部分と、前記近接部分に対してある角度で延びる遠位部分とを備え、前記内側部は前記遠位部分を通って前記外側部から突出する。
【0118】
第十一態様によれば、前側と後側とを備えた歯科処置シミュレータであって、歯科処置または治療をシミュレートするように構成されたコンピュータと、前記コンピュータによって制御されるリンケージと、前記リンケージに連結され、ユーザの手に保持され、現実空間内の作業空間において前記ユーザによって操作されるように構成されたハンドピースと、前記コンピュータによって生成された画像を表示するために前記コンピュータに連結されたディスプレイスクリーンと、ベースと、実質的に平坦な底部を備えたメイン構造体とを備え、前記リンケージは前記メイン構造体に少なくとも部分的に受け入れられる、歯科処置シミュレータであって、前記実質的に平坦な底部と前記ベースとの間に空間を生み出すために前記実質的に平坦な底部と前記ベースとの間に距離を置いて前記ベースの上方に前記メイン構造体を支持する支柱を備え、前記支柱は、前記ベースが置かれる表面と前記実質的に平坦な底部との間の距離を、好ましくは少なくとも70~80cmの間の距離、より好ましくは少なくとも65~85cmの間の距離を含む範囲に変更するために高さ調整可能であり、前記支柱(3)は、前記ベースに対しておよび前記実質的に平坦な底部に対して側方にオフセットして配置され、前記支柱は、前記ベースの前側に隣接する位置、好ましくは前記ベースの前記前側の位置から、前記メイン構造体の前側に隣接する位置、好ましくは前記メイン構造体の前記前側の位置に延びる、歯科処置シミュレータが提供される。
【0119】
実質的に平坦な底部とベースとの間の空間により、歯科処置シミュレータは、様々な部屋のセッティングに容易に合わせられうるため、占有する空間がより少なくてよい。特に、メインハウジングの実質的に平坦な底部および支柱の高さ調整可能性により、メインハウジングを例えばワークトップまたはデスクトップの上に設けることができ、それによって貴重な部屋の空間が節約される。
【0120】
第十一態様の第一の可能な実施形態では、前記ベースと前記平坦な底部との間の空間は、前記支柱のみが交差する空いた空間である。
【0121】
第十一態様の第二の可能な実施形態では、前記空間は、前記支柱によってアクセスが妨げられる箇所を除き全ての側方方向からアクセス可能である。
【0122】
第十一態様の第三の可能な実施形態では、前記歯科処置シミュレータは二つ以上の支柱を備え、前記二つ以上の支柱はいずれも前記ベースのおよび前記メインハウジングの一つの同じ側に側方にオフセットして配置される。
【0123】
第十一態様の第四の可能な実施形態では、前記メインハウジングは一つの支柱によって支持されるだけである。
【0124】
第十一態様の第五の可能な実施形態では、前記空間は、前記空間が前記ベース、前記実質的に平坦な底部、または前記支柱によって遮蔽される箇所を除き環境に対して開いている。
【0125】
第十一態様の第六の可能な実施形態では、前記支柱は、前記ベースと前記実質的に平坦な底部との間の距離を変更するために高さ調整可能であり、好ましくは電動高さ調整可能支柱である。
【0126】
第十一態様の第七の可能な実施形態では、前記支柱は、高さ調整のためにリニアアクチュエータを備える。
【0127】
第十一態様の第八の可能な実施形態では、前記ディスプレイスクリーンは、前記メインハウジングの上方に配置されたディスプレイハウジング内に設けられ、前記ディスプレイハウジングは、好ましくは前記支柱にまたは前記メインハウジングに接続されたアームによって前記メインハウジングの上方に支持される。
【0128】
第十一態様の第九の可能な実施形態では、前記ベースは下側ハウジングを備える。
【0129】
第十一態様の第十の可能な実施形態では、前記メインハウジングは前記リンケージを支持するための基準を備える。
【0130】
第十一態様の第十一の可能な実施形態では、前記ベースは床に載るために構成され、前記ベースは好ましくは車輪付きである。
【0131】
第十一態様の第十二の可能な実施形態では、前記コンピュータは、前記ディスプレイスクリーンに表示するために前記シミュレートされた歯科処置または治療の画像を生成するように構成される。
【0132】
第十一態様の第十三の可能な実施形態では、前記支柱は前記ベースから前記メインハウジングに延びる。
【0133】
第十一態様の第十四の可能な実施形態では、前記支柱は前記ベースの側方側に隣接する位置から前記メインハウジングの側方側に隣接する位置に延びる。
【0134】
これらおよび他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになるであろう。
【0135】
本開示の以下の詳細な部分においては、態様、実施形態、および実施態様が図面に示される例示的な実施形態を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0136】
図1】一実施形態による歯科処置シミュレータの立面図である。
図2】第一高さの図1の歯科処置シミュレータの側面図である。
図3】第一高さよりも低い第二高さの図1の歯科処置シミュレータの側面図である。
図4図1の歯科処置シミュレータのディスプレイハウジングの正面図である。
図5図4のディスプレイハウジングの断面図であり、作業空間、ユーザの目、および視覚空間も示す。
図6図1の歯科処置シミュレータのディスプレイハウジングの半透明ミラーを通して作業空間までのユーザの視点からの立面図であり、半透明ミラーからの反射を通した仮想環境も示す。
図7図1の歯科処置シミュレータによって表示される複合現実仮想環境の画像である。
図8図1の歯科処置シミュレータにおいて使用される特定模型顎の立面図である。
図9図1の歯科処置シミュレータにおいて使用される特定模型顎の立面図である。
図10図1の歯科処置シミュレータにおいて使用される特定模型顎の立面図である。
図11図1の歯科処置シミュレータにおいて使用される特定模型顎の立面図である。
図12】下特定模型顎および特定模型上顎を使用した模型頭部およびそのマウントシステムの立面図である。
図13図12の模型頭部の側面図である。
図14図1の歯科処置シミュレータにおいて使用される一般的模型顎の立面図である。
図15図1の歯科処置シミュレータにおいて使用される一般的模型顎の立面図である。
図16】一般的模型顎が設置された模型頭部の歯科処置シミュレータに対する三つの回転軸を示す、図12の模型頭部の立面図である。
図17】Z軸の周りの回転を示す、図16の模型頭部の立面図である。
図18】X軸の周りの回転を示す、図16の模型頭部の立面図である。
図19】模型上顎に対する模型下顎の異なる位置を示す、図12の模型頭部の側面図である。
図20】模型上顎に対する模型下顎の異なる位置を示す、図12の模型頭部の側面図である。
図21】Y軸の周りの回転を示す、図16の模型頭部の側面図である。
図22】Y軸の周りの回転を示す、図16の模型頭部の側面図である。
図23】駆動システムを備えたリンケージおよびリンケージに接続されたハンドピースの実施形態の等角図である。
図24】駆動システムを備えたリンケージおよびリンケージに接続されたハンドピースの実施形態の立面図である。
図25】駆動システムを備えたリンケージおよびリンケージに接続されたハンドピースの実施形態の立面図である。
図26】駆動システムを備えたリンケージおよびリンケージに接続されたハンドピースの実施形態の立面図である。
図27】一実施形態によるハンドピースの断面図である。
図28図27のハンドピースの側面図である。
図29図27のハンドピースの側面図である。
図30】二次ツールを備える別の実施形態による歯科処置シミュレータの立面図である。
図31】二次ツールの実施形態の立面図である。
図32図31の二次ツールの端面図である。
図33図31の二次ツールの側面図である。
図34】ユーザの目および視覚空間も示す、図1の歯科処置シミュレータの概略図である。
図35】歯科処置シミュレータにおいて使用されうる制御システムの実施形態の概略図である。
図36】プラスチック模型歯への穿孔を訓練する追加機能を備えた歯科処置シミュレータの別の実施形態を示す。
図37】歯科処置シミュレータにおける使用のためのセグメント化された模型顎の実施形態を示す。
図38】歯科処置シミュレータにおける使用のためのセグメント化された模型顎の実施形態を示す。
【詳細説明】
【0137】
医療処置シミュレータ1、特に歯科処置および治療をシミュレートするための歯科処置シミュレータ1の第一実施形態を示す図面、特に図1~7および34を参照する。医療処置シミュレータ1は、医療専門家または医学生の技能および能力を訓練するために使用されることが意図される。歯科処置シミュレータ1の場合、歯科処置シミュレータは、歯科医、歯科外科医、口腔外科医、顎顔面外科医、歯科衛生士、および歯科療法士の技能および能力を訓練するために使用されることが意図される。歯科処置シミュレータで訓練を受けるユーザは、学生または専門家でありうる。歯科処置シミュレータ1は、一般に、第一ハンドピース30、本実施形態では歯科ドリルハンドルを表す第一ハンドピース30と、ベース2、本実施形態ではコンピュータ80を収容する下側ハウジングを備えたベースと、支柱3、本実施形態では高さ調整可能柱と、第一ハンドピース30が接続されるリンケージ40を収容するメインハウジング4と、模型頭部10と、ディスプレイハウジング6を支持する支持アーム5とを含む。
【0138】
ベース2は、一実施形態では、医療処置シミュレータ1がユーザによって別の位置に容易に転がされることを可能にするための車輪付きベースである。支柱3は、ベース2からメインハウジング4に延び、実質的に平坦な底部とベース2との間に空間Rを生み出すためにメインハウジング4の実質的に平坦な底部とベース2との間に距離を置いてベース2の上方にメインハウジング4を支持する。支柱3は、空間Rを(支柱3が設けられる側を除き)全ての側からアクセス可能にするように、ベース2に対しておよび実質的に平坦な底部に対して側方にオフセットして配置される。一実施形態では、支柱3は、ベース2の側方側(前側)に隣接する位置からメインハウジング4の側方側(前側)に隣接する位置に延びる。
【0139】
ベース2と平坦な底部との間の空間Rは、支柱3のみが交差する空いた空間Rである。空間Rは、支柱3によってアクセスが妨げられる箇所を除き全ての側方方向からアクセス可能である。
【0140】
一実施形態(図示せず)では、歯科処置シミュレータ1は、いずれもベース2のおよびメインハウジング4の一つの同じ側に側方にオフセットして配置される二つ以上の支柱3を備える。図示された実施形態では、メインハウジング4は一つの支柱3によって支持されるだけである。空間Rは、空間Rがベース2、実質的に平坦な底部、または支柱3によって遮蔽される箇所を除き環境に対して開いている。
【0141】
メインハウジング4の高さは、一実施形態では例えば電気リニアアクチュエータによる電動の支柱3の動作によって、図2および3の二重線の矢印で示されるように調整可能である。支柱3は、実質的に平坦な底部とベース2との間に空間を生み出すためにメインハウジング4の実質的に平坦な底部とベース2との間に距離を置いてベース2の上方にメイン構造体を支持する。支柱は、ベースが置かれる表面(例えば床)と実質的に平坦な底部との間の距離を、好ましくは少なくとも70~80cmの間の距離、より好ましくは少なくとも65~85cmの間の距離を含む範囲に変更するために高さ調整可能である。支柱3は、ベース2に対しておよび実質的に平坦な底部に対して側方にオフセットして配置される。支柱3は、ベース2の前側に隣接する位置、好ましくはベース2の前側の位置から、メイン構造体101の前側に隣接する位置、好ましくはメイン構造体101の前側の位置に延びる。
【0142】
メインハウジング4の高さが調整されるときに模型頭部10およびディスプレイハウジング6ならびに第一ハンドピース30がメインハウジング4と一体となって移動するように、模型頭部10がメインハウジング4の前側から吊設され、ディスプレイハウジング6が支持アーム5によってメインハウジング4から吊設される。メインハウジング4は、支持アーム5およびディスプレイハウジング6と一緒にメイン構造体101を形成し、そこに模型頭部10も取り付けられる。
【0143】
メインハウジング4は、高さ調整可能性とあわせて図2に示すようにワークトップまたはデスクトップ85の上にメインハウジング4が設けられることを可能にし、それにより貴重な訓練室の空間を節約する、実質的に平坦な底部を有する。図3は、より低い位置のメインハウジングを示す。高さ調整可能性により、模型頭部10およびハンドピース30がメインハウジング4と同時に上下に移動するため、歯科処置シミュレータ1の作業高さが個々のユーザに合わせて調整されることも可能になる。
【0144】
医療処置シミュレータ1は、コンピュータ80がコンピュータ80および医療処置シミュレータ1の他の電気部品のための電源と一緒に中に設けられたベース2上の下側ハウジングを備える。一実施形態では、医療処置シミュレータ1は、複数のコンピュータを備える。
【0145】
コンピュータ80は、メモリとプロセッサとを有する。プロセッサは、メモリに記憶されたソフトウェア、特に医療処置または治療をシミュレートするように構成されたソフトウェア、とりわけ訓練または教育の状況でのシミュレーションを実行するように用意される。
【0146】
コンピュータ80は、ディスプレイスクリーン9、作業空間W内のモデル、メインハウジング4と作業空間W内に同じく設けられた第一ハンドピース30とに装着されたリンケージ40に接続される。リンケージ40(図23~26を参照して以下で詳細に説明する)は、第一ハンドピース30に機械的に接続される。作業空間Wは、現実世界の三次元空間であり、第一ハンドピース30は、リンケージ40から制約(第一ハンドピース30が接続されるリンケージの先端の現実空間における直交方向の範囲が制限されることによって引き起こされる制約)を受けずに空間内でユーザにより操作されうる。
【0147】
モデルは、対象の一部(例えば模型歯群を伴うまたは伴わない、および模型頭部10を伴うまたは伴わない模型上顎13および下顎14)を表し、医療処置または治療が行われるために必要な機械的環境を提供する。例えば、外科医/歯科医は、処置中に自分の手を模型顎/歯/頭部10、13、14、22に載せ、このように自分の手を本物の患者の治療の際と同じように拘束することができる。
【0148】
ハンドピース30の速度は、ユーザが第一ハンドピース30に加える力、および仮想ドリル30'と歯29を備えた顎の仮想モデルの仮想歯との相互作用に応答して調整される。仮想環境は、(3DOFセンサ50からの)ユーザによって第一ハンドピース30に加えられるx、y、z力の和および仮想ドリルまたはハンドピース30'と仮想歯との仮想接触による任意の反力に応答して仮想ドリル30'の速度がどのように変化すべきかを判断するためのアルゴリズムを含む。仮想環境は、仮想ドリル30'と仮想歯との間の反力をモデル化するためにいくつかの側面でニュートン物理学(すなわち力=ばね定数×たわみ)を用いるが、PID制御ループを用いてハンドピース30の速度の変化が判断される。仮想歯は、硬度および剛性が割り当てられる。剛性は、接触されたときに歯が提供するばね定数と相関し、硬度は、ある量の仮想歯をドリルで除去するために仮想ドリルが行わなければならない作業量と相関する。仮想歯との接触があるか否かを判断するために、現実のドリル(第一ハンドピース)30の位置が用いられる。
【0149】
仮想環境は仮想ドリル30'で作用する仮想力を計算すると、第一ハンドピース30の現実世界の速度を変更するために、システム内のアクチュエータの速度(さらに以下で詳しく説明する)を制御するPID制御ループにこの力をコマンドする。ユーザは、第一ハンドピース30の移動を感知する。第一ハンドピース30の速度は歯科処置シミュレータ1によって制御される一方で、第一ハンドピース30の向きはユーザによって制御される。システムは、ユーザによって制御される第一ハンドピース30の向きを測定し、それに応答して仮想環境における仮想ドリル30'の向きを更新する。コンピュータ80は、仮想環境における仮想ドリル30'の位置を更新するようにも構成される。
【0150】
ディスプレイ9に示される仮想環境の向きを調整するために、移動可能に吊設された模型頭部10が用いられる。模型頭部10の向きは、手動で調整されることができ、仮想モデルの向きは、それに応じて模型頭部10の回転を測定するコンピュータ80に連結されたセンサ(図示せず)を用いて調整される。したがって、模型頭部10および模型顎は、仮想模型頭部および仮想顎と同位置に置かれ、リンクされる。ユーザが模型頭部10を回すと仮想頭部がシーン内で回転し、ユーザが下顎の開き度を変更すると、それに応じて仮想下顎が仮想環境内での位置を調整する。模型頭部10は、仮想モデルの向きの直感的制御部である。
【0151】
コンピュータ80は、シミュレートされる様々な仮想環境処置および治療を選択し、多様な訓練ソフトウェアアプリケーションを実行するためのインタフェースをユーザに提供する。訓練アプリケーションは、ユーザのパフォーマンスを評価するためにユーザの仮想環境および第一ハンドピース30との相互作用を監視し、多様な基準を測定する。
【0152】
ここで、特に図4~7を参照すると、ビジュアルハウジング6は、ディスプレイハウジング6の後方に配置されたディスプレイスクリーン9が提供される。ディスプレイハウジング6の上側のディスプレイハウジング6の前端の方の目視開口部または窓8によって、ユーザが目視エリアVから一部透明反射要素7を目視することができる。一部透明反射要素7は、ディスプレイハウジング6の下側のディスプレイハウジング6の前端の方に配置され、ユーザが目視エリアVから一部透明反射要素7を通して作業空間Wを見ることを可能にする。一部透明反射要素7は、ディスプレイスクリーン9に表示された画像をユーザの目に反射し、同時に一部透明反射要素7を通して作業空間Wがユーザに視認可能であるように、設けられる(ユーザの目は目視エリアVに位置し、ユーザが一部透明反射要素7の方を見ていると想定する)。したがって、ユーザの視界では、仮想環境の仮想画像が作業空間Wの現実の画像と混合される。
【0153】
ディスプレイスクリーン9および一部透明反射要素7は、視界が第一ハンドピース30の位置と同位置に置かれるように配置される。これによりシステムは、ユーザの視線内で現実世界の第一ハンドピース30と並ぶ仮想歯科ドリル30'の画像を生成することができる。
【0154】
歯科処置シミュレータは、一部透明反射要素7上の反射によってディスプレイスクリーン9からの画像をユーザの目に反射するように構成され、仮想環境の画像を一部透明反射要素7を通してユーザに見える作業空間(W)の視界と混合するように構成される。
【0155】
したがって、ユーザが目視空間Vから半反射要素7を見たときに、ディスプレイスクリーン9上の画像がユーザの目に反射され、同時に一部透明反射要素7を通して作業空間Wがユーザに視認可能である。
【0156】
一実施形態では、ディスプレイスクリーン9は立体ディスプレイスクリーンであり、コンピュータ80は、立体画像を立体ディスプレイスクリーン9に送信するように構成される。一実施形態では、立体ディスプレイスクリーン9は、自動立体ディスプレイスクリーン9である。一実施形態では、ディスプレイスクリーン9は、立体視のレベルが特定のユーザに最適なレベルに調整されうるように調整可能である立体ディスプレイスクリーンである。
【0157】
コンピュータ80は、第一仮想位置と第一仮想向きとを有する第一仮想ツール30'を含む三次元仮想環境を提供するように構成され、第一仮想ツール30'は、サイズおよび形状がハンドピース30に対応し、第一仮想ツール30'は、ハンドピース30と同位置に置かれる。仮想バー99および少なくとも一つの仮想歯が、3次元仮想環境の一部として表示される。図7の例では、完全な仮想下顎29が表示される。実施形態では、仮想下顎29および仮想上顎の両方が表示される。
【0158】
コンピュータ80は、シミュレートされた歯科処置または治療の画像をディスプレイスクリーン9に送信する。ディスプレイスクリーン上の画像は、半透明反射要素7(例えば半透明ミラー等)を介してユーザに対しユーザの目に反射される(ユーザの目が視覚空間Vに位置し、ユーザが半透明反射要素7に向いていると想定する)。視覚空間は、ユーザが半透明反射要素7による反射を通したディスプレイスクリーン9からの画像と、半透明反射要素7を通した作業空間W内の物体とを同時に観察できる三次元空間である。
【0159】
ソフトウェアは、仮想歯等の少なくとも一つの仮想物体を含む仮想環境を提示するように構成され、これらは全て一部透明反射要素7を介してユーザによって目視される。仮想環境は、仮想ツール、本実施形態では現実世界のハプティックドリルハンドル30に対応する仮想歯科ドリル30'を含む。
【0160】
一実施形態では、歯科処置シミュレータ1は、作業空間W上の調整可能な照明(図示せず)が提供される。照明は、一実施形態では、ディスプレイハウジング6の下側に装着され、作業空間Wに向けられる。調整可能な照明は、所与のユーザのために一部透明反射要素7を通して見える作業空間Wの画像と一部透明反射要素7から反射される仮想環境の画像との適切なバランスを生み出すことを容易にする。
【0161】
ここで、特に図8~22を参照すると、模型上顎13および模型下顎14が歯科処置シミュレータ1の構造体によって支持され、作業空間W内に設けられる。模型下顎14は、模型上顎13に対して(手動で)移動可能に設けられる。模型下顎14は、ヒンジ機構15、一実施形態では四バーリンケージによって模型上顎13から吊設される。ヒンジ機構15は、モデルをリアルにするために人間の顎の動きを模倣するのが好ましい。
【0162】
模型下顎14は、図19および20にそれぞれ示される完全開位置と閉位置との間の(手動で与えられる)移動を可能にするように模型上顎13から吊設される。位置センサ(図示せず)が、模型上顎13に対する模型下顎14の位置を示す信号を生成するように構成され、コンピュータ80に接続される。ソフトウェアは、センサの信号に合わせて仮想下顎の位置を調整するように構成される。
【0163】
模型下顎14の閉位置は、咬合減少を検査するための位置に対応する。ソフトウェアは、ディスプレイスクリーン9に仮想上顎のための仮想上歯群および仮想下顎のための下仮想歯群を表示し、それにより仮想歯群の咬合検査を可能にするように構成される。
【0164】
模型上顎13は、三自由度の回転を可能にするように支持構造体から吊設され、模型上顎13が回転時に作業空間Wを出ないように各自由度の回転中心が模型上顎13と模型下顎14との間、すなわち作業空間Wの中心に位置する。X、Y、Z回転軸が図16に示される。回転は手動で与えられ、好ましくは模型頭部10と一体である。上顎13の回転を感知するための三つの回転位置センサ(図示せず)が、三自由度のそれぞれの回転を感知するために提供される。コンピュータ80は、三つの回転位置センサからの信号を受信する。ソフトウェアは、回転位置センサからの前記信号に合わせて歯科処置または治療のシミュレーションを調整するように構成され、特に、ソフトウェアは仮想上顎の向きおよび位置ならびに仮想下顎の向きおよび位置を調整する。
【0165】
模型上顎13は、第一機構11が作業空間Wと交差することなく作業空間Wの中心を通って延びる第一水平軸Yの周りで上顎が回転することを可能にする第一機構11によって支持構造体から吊設され、この機構は、遠隔中心リンケージ11、好ましくは模型頭部10の装着構造体をより剛性かつ安定にする二つの離隔された平行な遠隔中心リンケージ11を備える。リンケージ11は、ブラケット17によってメインハウジング4に接続される。
【0166】
模型上顎13は、第二機構が作業空間Wと交差することなく作業空間Wに配置された第二水平軸Xの周りで模型上顎13が回転することを可能にする第二機構によって支持構造体から吊設される。第二機構は、模型頭部10と模型上顎13との間に延びるL字型プレート12を備える。模型上顎13は、模型上顎13および模型頭部10が第二水平軸Xの周りで一体となって回転することを可能にするヒンジピン(図面では見えない)によってL字型プレート12を通して接続される。
【0167】
模型上顎13は、第三機構16が作業空間Wと交差することなく作業空間Wの中心を通って延びる垂直軸Zの周りでの模型上顎13の回転を可能にする第三機構16によって支持構造体から吊設される。第三機構16は、第一機構11をL字型プレート12に接続し、L字型プレート12が垂直Z軸の周りで回転することを可能にするヒンジピンを備える。
【0168】
模型上顎13は、除去可能模型上顎要素21、25が除去可能に取り付けられる上側支持部材19を備え、模型下顎14は、除去可能模型下顎要素20、24が除去可能に取り付けられる下側支持部材18を備える。一実施形態では、除去可能模型顎要素20、21、24、25は、支持要素と模型顎要素とにそれぞれ関連する永久磁石と磁性材料の部材との組み合わせからの磁力によって、上側または下側支持要素18、19に解放可能に取り付けられる。
【0169】
一般的模型上顎要素25および一般的模型下顎要素24は模型歯を有しないが、それでも模型上顎および模型下顎をそれぞれ構成すると見なされる。したがって、模型下顎または模型上顎は、実質的に人間の下顎または上顎、好ましくは平均的な人間の下顎または上顎のような形状およびサイズであるが、歯がなく、歯を受け入れるための凹部がない単純なU字型の部材によって形成されうる。一般的模型上顎および下顎は、例えばプラスチック、天然および/または合成ゴム等のポリマー材料から作製されうる。
【0170】
特定模型上顎要素20および特定下顎要素21は、模型歯22が提供される。模型歯22は、模型歯22が特定模型上顎または下顎要素20、21の特定凹部23に挿入されることによって除去可能に取り付けられる。一実施形態では、模型歯22を備えた特定上顎および下顎要素20、21は、上歯を備えた本物の人間の上顎および下顎の一部分の正確なモデルである。歯科処置または治療を受ける単数または複数の模型歯22は、第一ハンドピース30が該当する単数または複数の模型歯22によって妨害されずに移動するための空間を提供するために除去される。図8~11では、例として一つの模型歯22が除去されており、該当する模型顎20、21の凹部23は空である。残りの模型歯22は、ユーザの手および/または指を支持するためにユーザによって使用されうる。(上または下)模型顎13、14(または特定下顎要素20/特定上顎要素21)の該当する歯の空の位置/凹部とともに仮想歯が表示され、リンクされ、同位置に置かれる。コンピュータ80は、上および下模型顎13、14のそれぞれの向きおよび位置をセンサによって知らされるため、コンピュータ80は、それに応じて仮想歯の位置および向き、一実施形態では仮想モデルにおける仮想顎の位置および向きも適合させる。
【0171】
特定上および/または下模型顎要素20、21が使用されるときには、コンピュータ80に特定下顎要素20および/または特定上顎要素21の仮想モデルが提供される。この仮想モデルは、該当する顎の全ての歯、または模型歯22が提供されないそれぞれの模型顎の位置/凹部に対応する一つ以上の歯の仮想モデルのみのいずれかを含むことができる。
【0172】
コンピュータ80は、模型上顎13または模型下顎14と同位置に置かれた少なくとも一つの仮想歯を含む仮想環境をディスプレイスクリーン9に表示するように構成される。
【0173】
模型上顎13および模型下顎14、20は、支持構造体に対して移動可能である。コンピュータ80は、一つ以上のセンサを通じて、模型上顎13、21および模型下顎14、20の位置および向きを受信し、コンピュータ80は、模型上顎13、21または模型下顎14、20が移動されたときに少なくとも一つの仮想歯がディスプレイスクリーン9上で模型上顎13、21または模型下顎14、20と同位置に置かれたままになるように、模型上顎13、21または模型下顎14、20の移動に合わせて少なくとも一つの仮想歯の向きおよび位置を調整するように構成される。
【0174】
一実施形態では、コンピュータ80は、仮想上顎の少なくとも一部分および仮想下顎29の一部分を表示するように構成され、コンピュータは、模型上顎13、21または模型下顎14、20が支持構造体に対して移動されたときにも、ディスプレイスクリーン9上で仮想上顎を模型上顎13と同位置に置き、仮想下顎29を模型下顎14と同位置に置くように構成される。
【0175】
一実施形態では、コンピュータ80は、仮想歯を前記模型上顎13、21、または模型下顎14、20と同位置に置くように構成される。したがって、ユーザが模型顎13、14に加えうる移動に関わらず、コンピュータは仮想歯を模型顎13、14と同位置に置く。
【0176】
一実施形態では、コンピュータ80は、複数の仮想歯を表示するように構成され、仮想歯をそれぞれの上または下模型顎13、14と同位置に置くように構成される。
【0177】
コンピュータ80は、所与の練習のためにいずれの顎要素(一般的または特定)が設置されるべきかをユーザに指示する。したがって、コンピュータ80は、一般的上もしくは下顎要素25、24、または特別な特定上もしくは下顎要素20、21を設置するようにユーザに指示するように構成される。
【0178】
図12~21に示される実施形態では、模型上顎13および模型下顎14は模型頭部10の一部である。模型下顎14および模型上顎13を備えた模型頭部10は、歯科処置シミュレータ1の支持構造体に対して移動可能に設けられ、模型頭部10はその模型下顎14および模型上顎13と互いに一体となって移動する。
【0179】
図37および38は、セグメント化された上顎22の実施形態を示す。この実施形態では、模型上顎21および/または模型下顎20は、セグメントの少なくとも一つが除去可能であるセグメント化された模型顎である。図示される実施形態では、セグメント化された模型顎は、五つのセグメント21a、21b、21c、21d、および21eを有する。セグメントの少なくとも一つは除去可能であるのが好ましい。図38は、中央セクション21cが除去された模型顎を示す。一実施形態では、全てのセクションが除去可能である、すなわちツールを使用せずに取り出され、ツールを使用せずに再び設置されることができる。セクションは、レールに滑り込んでも、磁気的に取り付けられても、取り付けられるがVelcro(登録商標)または他の適切な解放可能な取り付け手段を用いてもよい。
【0180】
少なくとも一つ以上または全てのセグメントを除去することができるセグメント化された模型顎を使用することにより、下顎に関連する仮想歯のシミュレートされた治療に関係する活動で特に生じうるハプティックアームと模型顎との間の接触を回避することが可能である。換言すれば、状況によっては、模型顎の一部分がハプティックアーム、特にハンドピースリンク31の邪魔になり、該当するセグメント化された模型顎のセクション21a、21b、21c、21dまたは21eを除去することによって、ユーザが自分の手の支持として使用するためおよびシミュレーションにリアルさを提供するために模型顎の大部分がなお存在しながら、ハプティックアームのための場所があけられる。
【0181】
ここで、医療処置または治療をシミュレートするためにコンピュータ80によって制御されるリンケージ40を示す図23~26を特に参照する。リンケージ40は、メインリンク41(一実施形態では細長真直部材)を備え、第一ハンドピース30は、さらに以下でより詳細に説明される少なくとも二自由度の機械継手によってメインリンク41の前先端に接続される。リンケージ40は、第一回転アクチュエータ47によって駆動される第一クランク42と、第二回転アクチュエータ48によって駆動される第二クランク44と、第三回転アクチュエータ49によって駆動される第三クランク46とを有する。第一、第二、および第三クランク42、44、46のそれぞれの回転軸は、一実施形態(図示せず)では、互いに対して直交して設けられうる。
【0182】
第一クランク42の回転軸は、実質的に垂直に延びる。第一クランク42は、例えば自在継手等、二自由度のヒンジによって、メインリンク41の後先端またはその近くの第一位置でメインリンク41に直接(すなわち間に中間リンクなしで)連結される。
【0183】
第二クランク44は、好ましくは二軸の周りの回転を可能にする自在継手によって、水平に延びる第一接続ロッド43を介してメインリンク41に直接(すなわち間に中間リンクなしで)連結され、第三クランク46は、垂直に延びる第二接続ロッド45を介してメインリンク41に連結される。第一クランク42は、メインリンク41を第一(水平)軸方向Xに作動させるように設けられる。第二クランク44は、メインリンク41を第二(水平)横断方向Yに作動させるように設けられ、第三クランク46は、メインリンク41を第二(垂直)横断方向Zに作動させるように設けられる。
【0184】
第一接続ロッド43は、前先端と第一位置との間の第二軸位置でメインリンク41に連結され、第二接続ロッド45は、前先端と第一位置との間の第三軸位置でメインリンク41に連結される。一実施形態では、第二および第三軸位置は実質的に一致する。
【0185】
メインリンク41は、ユーザによって第一ハンドピース30に加えられる力を三次元で感知するための三次元力センサ(3DOFセンサ)50を備える。三次元力センサ50は、前極限位置と第二および/または第三軸位置との間に配置され、三次元力センサ50は、好ましくはメインリンク41の一体部分である。三次元力センサ50は、例えば信号ケーブルによってコンピュータ80に連結(データ接続)される。
【0186】
第一、第二、および第三クランク42、44、46は、コンピュータ80とデータ接続されるそれぞれの第一、第二および第三回転位置センサまたはエンコーダ26、27、28に(直接またはそれぞれのクランクを駆動する回転モータに)連結される。図示される実施形態では、第二クランク44および第三クランク46の回転軸はいずれも水平および平行に延びる。しかし、第二クランク44および第三クランク46の主な実施形態の回転軸は、水平および互いに対してある角度で、例えば直角にも延びる。
【0187】
第一、第二、および第三クランク42、44、46は、基準51(例えばフレームまたはベース)上に装着される。基準51は、メインハウジング4によってまたは歯科処置シミュレータ1の支持構造体によって支持される。リンケージ40は、ハンドピース30を基準51に接続し、リンケージ40は、ハンドピース30に基準51に対して六つの独立した自由度を提供する。
【0188】
ハンドピースレスト32が、第一ハンドピース30が使用されないときに第一ハンドピース30のためのパーキング位置を提供する。第一ハンドピース30のパーキングされた位置を検知するために、ハンドピースレスト32にパークセンサ59が関連する。
【0189】
リンケージ40の装備により、第一ハンドピース30がユーザによって操作されうる水平の上下を備えた立方体の形状の作業空間Wがもたらされる。
【0190】
ここで、第一ハンドピース30をより詳細に示す図27~29を特に参照する。第一ハンドピース30は、外側部37内に延びる内側部38を備え、外側部37は、内側部38の周りで回転するように構成される。外側部37は、第一ハンドピース30の外側シェルを形成し、ハンドピース30の長手軸Lの周りを内側部38の周りで回転するように構成される。内側部38の部分57が外側部37から突出し、部分57は、少なくとも二自由度の継手によってリンケージ40の前先端に連結される。この継手は、一自由度を提供するために第一ピボットヒンジ34によってその先端の一方で内側部38に連結されるハンドピースリンク31を備える。ハンドピースリンク31の他方の先端は、第二自由度を提供するために第一ピボット継手36によって接続要素56に取り付けられる。接続要素56は、メインリンク41の先端にしっかりと接続される。
【0191】
第一慣性測定ユニット52が、内側部38に装着される。第四回転位置センサ53が、内側部38に対する外側部37の回転移動を感知する。第四回転位置センサ53は、内側部38上に装着され、内側部38に対する外側部37の回転位置を測定するように設けられる。第四回転位置センサ53の少なくとも第一部分が内側部38上に装着され、第一部分は内側部38によって案内または支持されるケーブル58によってコンピュータ80に接続される。
【0192】
第一慣性測定ユニット52および第四回転位置センサ53は、内側部38を通って延びるケーブルチャネル35に受け入れられるケーブル58によってコンピュータ80に連結される。ケーブル58は、第一ヒンジ34の近くで内側部38を出、その後ハンドピースリンク31を通って延びるケーブルチャネル33に入る。ケーブル58は、位置および/または向きデータの伝送のために慣性測定ユニット52とコンピュータ80との間に、および回転位置データの伝送のために第四回転位置センサ54とコンピュータ80との間にデータリンクを確立する。
【0193】
キャップ39が、第一ハンドピース30の自由端を形成する。第一回転ベアリング54および軸方向に離隔された第二回転ベアリング55が、内側部38と外側部37との間に設けられる。制限構造体がないため、外側部37は内側部38に対して無限に転動する。
【0194】
内側部38は細長く、内側部38の第一先端でハンドピースリンク31に接続される。第四回転位置センサ53は、内側部38の第二先端またはその近くに設けられ、第二先端は外側部37の内側に位置する。
【0195】
外側部37の長手範囲は、(ユーザに近接する)近接部分と(ユーザに対して遠位の)遠位部分とを備える。遠位部分は、近接部分に対してある角度で延び、内側部38は、遠位部分を通って外側部37から突出する。
【0196】
第一慣性測定ユニット52は、ハンドピース30の外側シェル37内に配置され、内側部38上に装着される。第一慣性測定ユニット52は、並進加速度、回転速度、および磁場を測定するように構成される。したがって、第一慣性測定ユニット52は、当技術分野で知られるデータ処理技術を用いて第一ハンドピース30のスピードおよび変位を判断することもできる。一実施形態では、第一慣性測定ユニット52は、3軸ジャイロスコープ、3軸加速度計、および3軸磁力計を含む九つのセンサを有する。第一慣性測定ユニット52は、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計からデータを取得し、データを処理する組み込みDigital Motion Processorが提供される。慣性測定ユニットチップは、例えば現実空間における基準に対する空間内の向きを記述する四元数を出力する。このデータ出力は、第四回転位置センサ53からの信号とともにケーブル58に沿ってコンピュータ80へ渡される。
【0197】
慣性測定ユニット52は、ワールド基準が揃うようにハンドピース30を定義された向きで置くことによって使用前に較正される。この実施形態は、図28に示されるハンドピースレスト32上のパーク位置を較正のために使用する。
【0198】
ここで、歯科処置シミュレータ1の別の実施形態を示す図30~33を特に参照する。この実施形態では、本明細書の以上で説明または図示された対応する構造体および特徴と同一または類似の構造体および特徴は、簡単のために以前に使用されたものと同じ参照番号で示される。
【0199】
この実施形態では、例えば歯科医が使用するミラーツールをシミュレートするために、第二ハンドピース61を備えた二次ツール60が追加される。歯科処置シミュレータ1によって現実世界の位置が制御される第一ハンドピース30とは異なり、第二ハンドピース61の現実世界の位置は、ユーザによって制御される(二次ツール60は作動されず、ハプティックフィードバックなしで手動で動かされる)。二次ツール60は、支持アーム5から吊設され、作業空間Wにおいてユーザによって操作されうる第二ハンドピース61を備える。二次ツール60は、リンケージによって歯科処置シミュレータのメイン構造体から吊設される。コンピュータ80は、仮想環境内の対応する仮想二次ツール、例えば現実世界の歯科ミラーハンドルに対応する仮想歯科ミラーを表示するように構成される。仮想第二ハンドピースの位置および移動は、第二ハンドピース61の現実世界の位置に直接合致するように調整される。
【0200】
二次ツール60は、第一および第二自由度を提供する一つ以上の継手によって歯科処置シミュレータ1の構造体に連結された一次リンク63と、第三および第四自由度を提供する一つ以上の継手によって一次リンク63に連結された二次リンク66とを備える。第二ハンドピース61は、ハンドピース61を歯科処置シミュレータ1のメイン構造体に六自由度で接続するシリアルチェーンを形成するように、第五および第六自由度を提供する一つ以上の継手によって二次リンク66に接続される。第五回転位置センサ68が第一自由度の移動を感知し、第六回転位置センサ72が第二自由度の移動を感知し、第七回転位置センサ73が第三自由度の移動を感知する。第五、第六および第七位置センサ68、72、73は、コンピュータ80とデータ接続される。
【0201】
第二慣性測定ユニット74が、第二ハンドピース61内に設けられ、第二ハンドピース61と一体となって移動する。第二慣性測定ユニット74はコンピュータ80とデータ接続され、第二慣性測定ユニット74は、少なくとも第四、第五、および第六自由度の移動を感知するように構成される。第二慣性測定ユニット74は、一実施形態では、第一慣性測定ユニット52と技術的に同一である。
【0202】
第二ハンドピース61は、第六自由度を提供する第四ピボット継手69によって二次リンク66に接続される。第六自由度は、第二ハンドピース61が第二ハンドピース61の(長手)軸の周りで回転することを可能にする。第二慣性測定ユニット74は、第六自由度を感知するように構成される。
【0203】
第四ピボット継手69は、第二ハンドピース61の第五自由度を提供する第二ヒンジ62によって二次リンクの先端に接続される。
【0204】
第二ハンドピース61は、三つの並進自由度で移動することができ、第二ハンドピース61自体が、三つの回転自由度で移動することができる。
【0205】
一次リンク63は、例えばロッドまたはチューブ等の細長リンクである。一次リンク63は、第二自由度を得るために一次リンク63が(一次リンク63の長手範囲に対して横断する)横軸の周りで回転することを可能にする第四ヒンジ75によって基準(例えば歯科処置シミュレータ1の支持構造体)に連結される。
【0206】
一次リンク63は、第一自由度を実現するために一次リンク63がその長手軸の周りで回転することを可能にする第三ピボット継手67によって第四ヒンジ75に連結される。
【0207】
第五回転位置センサ68は、一次リンク63の長手軸の周りの回転を感知するように設けられ、第二回転位置センサ72は、第三ヒンジ75の周りの回転を感知するように設けられる。
【0208】
二次リンク66は、第三自由度を得るために二次リンク66が(二次リンク66の長手軸に対して横断する)横軸の周りで回転することを可能にする第三ヒンジ65によって一次リンク63に連結される細長リンクである。
【0209】
第七回転位置センサ73は、第三ヒンジ65の周りの二次リンク66の回転移動を感知するように構成される。二次リンク66は、第四自由度を得るために二次リンク66がその長手軸の周りで回転することを可能にする第二ピボット継手64によって第三ヒンジ65に連結される。
【0210】
三次リンク70が、四次リンク71に連結される。二次リンク66の横軸の周り(第三ヒンジ65の周り)の二次リンク66の回転を第七回転位置センサ73の回転移動に変換するシリアルチェーンを形成するように、三次リンク70は一次リンク63または二次リンク66に連結され、四次リンク71は第七回転位置センサ73に連結される。
【0211】
第二慣性測定ユニット74は、ハンドピース61の(長手)軸の周りのハンドピース61の回転を感知するように、すなわち第六自由度の移動を感知するように構成される。第二慣性測定ユニット74は、好ましくは無線(RF)データ接続によって、コンピュータ80とデータ通信する。
【0212】
一実施形態(図示せず)では、ハンドピース61の長手軸の周りのハンドピース61の回転を感知するために、回転位置センサが第二ハンドピース61の内側に設けられる。
【0213】
一実施形態では、第二慣性測定ユニット74は、六自由度全ての移動を感知するように構成され、コンピュータ80は、第五、第六および/または第七センサ68、72、73からの信号を慣性第二測定ユニット74を較正するための基準として使用するように構成される。
【0214】
一般に、コンピュータ80は、第一、第二および第三クランクの回転位置を示す情報を受信するとともに第一、第二および第三クランクの作動(第一ハンドピース30の全体的な線形移動)を制御し、第一ハンドピース30および第二ハンドピース61の作動を示す情報を受信し、第一慣性測定ユニット52からの第一ハンドピース30の向き(回転位置)を示す情報および第二慣性測定ユニット74からの第二ハンドピース61の向き(回転位置)を示す情報を受信するように構成される。第一ハンドピース30の位置、向き、および作動がコンピュータ80に知られ、コンピュータ80がアクチュエータ47、48、49を介して第一ハンドピース30に仮想モデルの特性によって判断されるハプティックフィードバックを提供することもできる制御方式が使用される。仮想環境内の仮想ツールの位置は、ディスプレイスクリーン9に表示される。
【0215】
第一リンケージ40および第二リンケージ60に関連する回転位置センサ26、27、28、68、72、73からの、ならびに第一および第二慣性測定ユニット52、74に加えて回転位置センサ53からのデータを使用することによって、仮想環境内の仮想ツールの位置および向きが、現実のツールの位置および向きと同位置に置かれるようにディスプレイスクリーン9に表示される。
【0216】
一実施形態では、コンピュータ80は、リンケージ40とその関連するアクチュエータ47、48、49によるハプティックフィードバック、好ましくはハプティック力フィードバックを通じて、およびディスプレイスクリーン9による視覚的フィードバックを通じて、医療処置または治療をシミュレートするように構成される。本明細書に、コンピュータ80は、三次元力センサ50からの信号を入力として使用し、それに応じてリンケージ40の先端の位置を制御することによって構成される。
【0217】
一実施形態では、コンピュータ80は、訓練プラットフォームを提供し、教材およびビデオを提供し、ユーザのパフォーマンスを記録、再生および評価し、コンピュータネットワーク上での遠隔指導者との音声、視覚およびテキストによる通信を提供し、遠隔指導者にハプティックシステムへの力入力を提供する能力を提供し、仮想環境に様々な仮想物体(例えば歯、顎または完全な頭部)、ツールおよび物理的ルールを提供するためのソフトウェアアプリケーションを含む。
【0218】
一実施形態では、コンピュータ80は、仮想ドリル位置、仮想ドリルモデルおよび仮想歯モデルに基づいて仮想ドリルに加えられる相互作用力を判断するために、(第一ツール30の現実の位置を使用して)仮想歯科ドリルのバーの間の衝突を検知するように構成される。コンピュータ80は、相互作用力およびフットペダルから等のユーザ入力に基づいて仮想ドリルスピードを計算するようにも構成される。
【0219】
一実施形態では、歯モデルの体積は三次元ピクセルまたはボクセル群として表される。各ボクセルに、歯材料のタイプ/質(すなわち象牙質、エナメル質、歯髄)を表す硬度値が関連する。歯モデルボクセル群の等値面の三角形メッシュを作成するために、従来のマーチングキューブアルゴリズムが使用される。
【0220】
仮想ハンドピースは、解析的にまたはボクセルによってモデル化される。したがって、ハンドピースの物理モデルは、有限数のボクセル、または完全に解析的に定義された形状による。ハンドピースモデルは、ハンドピースの三次元速度のためのベクトルパラメータも有する。仮想ツールには仮想バーが提供される。仮想バーまたは仮想ハンドピースは、仮想歯と仮想的に接触しうる。本明細書に、仮想バーの形状は仮想歯のボクセルに対して描画される。仮想バーの位置を判断し、仮想バーと仮想歯との間の接触を判断するために、第一ハンドピース30の現実の位置が用いられる。
【0221】
ここで図35を特に参照すると、メインリンク41の端の一方向の速度、それにより第一ハンドピース30の速度を制御するために制御ループが使用される。三つの移動方向(3DOF)を制御するために、合計三つのこれらの力制御ループがアクティブである。力制御ループは、加算点86での仮想環境90によって計算される仮想力と、3DOF力センサ50によって測定される力から計算される一方向の現実の力との間の差を用いる。加算点86の出力は、高周波数を除去し、標準のPIまたはPIDコントローラ88に接続するリードラグ補償器87の入力である。PIまたはPIDコントローラは、モータドライブ89への速度コマンドを計算する。モータドライブ89はまた、回転位置センサ(エンコーダ)26、27、28からの信号を受信し、位置信号からハンドピース30の実際の速度を判断する。モータドライブ89は、第一回転アクチュエータ47を電気的に駆動する(他の二つの制御ループのモータドライブは第二回転アクチュエータ48および第三回転アクチュエータ49を駆動する)。モータドライブは、PIまたはPIDコントローラの速度コマンドと、それぞれの回転アクチュエータ46、47、48の位置センサ(エンコーダ)26、27、28によって測定される現実の位置から計算される現実の速度との間の差を用いる。微分器92が位置信号を受信し、実際の速度を出力信号として提供する。微分器92の出力は、モータドライブ89および仮想環境90に提供される。一実施形態では、微分器92は、モータドライブ89の一体部分である。第一、第二および第三回転アクチュエータ47、48、49は、上述の異なるセンサ(力、位置および向き)に接続するリンケージ40を介して第一ハンドピース30に接続される。仮想バーの回転スピードを判断するために、(データケーブルを介して歯科処置シミュレータ1およびコンピュータ80に接続される)フットペダルセンサ91からの入力が用いられる。仮想環境は、第一ハンドピース30の向きを知るためにIMU52からの信号を受信する。仮想環境90は、バーモデル、歯モデル、および顎モデルを含み、仮想バーの位置および向きを判断するために第一ハンドピース30の現実の位置および現実の向きを用いる。コマンドとして力制御ループに送り返され、ハンドピース30に加えられる結果として生じる仮想力を計算するために、仮想バーモデルおよび仮想歯モデルまたは顎モデルが用いられる。
【0222】
歯科処置シミュレータ1を開始する際には、ユーザは、歯科処置シミュレータ1の前の椅子(図示せず)に身を置く。ディスプレイスクリーン9が自動立体ディスプレイスクリーンであれば、ユーザはシャッタ眼鏡または偏光レンズ付き眼鏡を使用する必要はない。メインハウジング4の高さは、該当するユーザにとって理想的な作業高さに適切に調整される。椅子の高さも、該当するユーザの必要に応じて調整されうる。
【0223】
歯科処置シミュレータは、一実施形態では、コンピュータ80を通じてネットワーク(例えばLAN、WAN)接続が提供される。
【0224】
図36は、モータ駆動ドリルを含む従来の歯科ハンドピース130でプラスチック歯を穿孔することによってユーザを訓練する可能性を追加することによって歯科処置1シミュレータの機能性が強化される別の実施形態を示す。この実施形態では、少なくとも上または下模型顎に、歯科ドリルで穿孔されるのに適したポリマー(プラスチック)材料の一つ以上の模型歯22が提供される。模型歯22は、模型歯22が特定模型上顎または下顎要素20、21の特定凹部23に挿入されることによって除去可能に取り付けられる。したがって、ポリマー材料歯22は、穿孔された後に交換されることができ、または別の歯22で別の練習を提供するために交換されることができる。本実施形態では、模型歯22を備えた特定上顎および下顎要素20、21は、適切なポリマー(プラスチック)材料から作製された、上歯を備えた本物の人間の上顎および下顎の一部分の正確なモデルであるのが好ましい。歯科医(志望者)を訓練するための歯科処置または治療を受ける単数または複数の模型歯22は、従来の歯科ハンドピース130を使用して穿孔される。従来の歯科ハンドピース130には、従来の歯科ハンドピース130の空気または電気モータに動力を供給するために従来の歯科ハンドピース130をメインハウジング4に接続するケーブル133を通して(電気的または空気的に)動力が供給される。空気または電気モータは、プラスチック歯22を穿孔するために使用される歯科バー(図示せず)を駆動する。ケーブル133は、作業空間に水を噴霧するために従来の歯科ハンドピース130に加圧水も提供する。
【0225】
本実施形態の変形例では、装置1は、ユーザがプラスチック歯を穿孔する従来の歯科ハンドピース130を使用する際に別のモードで動作するように構成される。したがって、コンピュータ80は、従来の歯科ハンドピース130でプラスチック歯22を穿孔することによる訓練に適した特定の訓練プログラムを実行する。
【0226】
コンピュータ80は、ディスプレイスクリーン9上のグラフィックスによって、および/またはラウドスピーカを通した音声情報によって、従来の歯科ハンドピース130でプラスチック歯22を穿孔する際のユーザ体験を強化するようにプログラムされうる。このように、ディスプレイスクリーン9上で、またはラウドスピーカを介してユーザのパフォーマンスに対する指示またはフィードバックを提供することによって訓練体験が強化されうる。
【0227】
コンピュータ80は、ハンドピース30を使用して歯科処置または治療をシミュレートするための第一動作モードと、従来の動力付き歯科ハンドピース130を使用して歯科処置または治療を訓練するための第二動作モードとを少なくとも有する。
【0228】
本開示において、例えば歯、下顎、上顎、または頭部等の身体部分への言及は通常、これらの身体部分の人間バージョンを指したものである。したがって本開示においては、例えば模型下顎は人間の下顎の物理モデルであり、例えば仮想下顎は人間の下顎の仮想モデルである。模型身体部分と本物の身体部分との類似性は、模型身体部分が該当する身体部分のリアルな印象をユーザに提供する程度に模型部分の少なくとも形状が本物の身体部分の形状に非常に似ているレベルであることが好ましい。
【0229】
多様な態様および実施態様が、多様な実施形態に関連して本明細書に説明されている。しかし、図面、本開示および添付の特許請求の範囲の検討から、開示された実施形態に対する他の変形例が特許請求された主題を実践する際に当業者によって理解および実施されうる。特許請求の範囲において、「備える」という語は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a(一つの)」または「an(一つの)」は、複数を除外しない。単一のプロセッサまたは他のユニットが、特許請求の範囲に記載されたいくつかの項目の機能を果たしうる。単にある手段が相互に異なる従属クレームに記載されていることは、これらの手段の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともにまたは他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体または固体媒体等の適切な媒体に記憶/分散されうるが、インターネットまたは他の有線もしくは無線遠隔通信システムを介して等、他の形態で分散されてもよい。
【0230】
特許請求の範囲で使用される参照番号は、範囲を限定するものとして解釈されてはならない。別段の指示がない限り、図面は明細書と一緒に読まれることが意図されており(例えばクロスハッチング、部品の装備、比率、程度など)、本開示の文書による説明全体の一部分と見なされなければならない。説明で使用されるところの、「水平」、「垂直」、「左」、「右」、「上」および「下」という用語、ならびにそれらの形容詞および副詞の派生語(例えば「水平に」、「右方に」、「上方に」など)は、単に特定の描画図面が読者に向いた際の図示された構造体の向きを指す。同様に、「内方に」および「外方に」という用語は、一般に表面のその伸長軸または回転軸に対する向きを適宜指す。
図1
図2
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