(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241219BHJP
H02M 3/07 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/07
(21)【出願番号】P 2022517535
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2021009449
(87)【国際公開番号】W WO2021220629
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2020077926
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112955
【氏名又は名称】丸島 敏一
(72)【発明者】
【氏名】小野 和俊
(72)【発明者】
【氏名】執行 信彦
(72)【発明者】
【氏名】前田 秀雄
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10061339(US,B1)
【文献】国際公開第2013/128806(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0226890(US,A1)
【文献】特開2002-051538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02M 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の直流電源から所定の出力電圧を生成するチャージポンプと、
前記チャージポンプを動作させるためのクロックを出力するクロック発生器と、
前記チャージポンプの前記出力電圧を監視して
、第1または第2の電位の何れか一方を基準として前記出力電圧との比較を行って前記出力電圧が上回っているときに前記クロックの出力を有効にする制御信号を出力し、前記制御信号が前記クロックの無効を示しているときには前記第1の電位を基準として前記比較を行い、前記制御信号が前記クロックの有効を示しているときには前記第2の電位を基準として前記比較を行って、前記出力電圧が
前記第1の電位から前記第2の電位の範囲を維持するように前記クロック発生器から出力される前記クロックを制御する電圧監視部と、
前記チャージポンプの前記出力電圧からバイアス電圧を生成する電圧レギュレータと
を具備するDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記チャージポンプは、所定の正電位の前記直流電源から所定の負電位の前記出力電圧を生成し、
前記電圧レギュレータは、前記出力電圧から所定の負電位の前記バイアス電圧を生成する
請求項1記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記バイアス電圧は、完全空乏型SOI(シリコン・オン・インシュレータ)プロセスによる回路のボディバイアス電圧である
請求項2記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記チャージポンプの出力は容量に接続され、前記チャージポンプの動作に応じて前記容量において電荷が充放電される
請求項1記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記電圧監視部は、前記クロックを出力させているときに前記出力電圧が前記第2の電位を下回ると前記クロックの出力を停止させ、前記クロックの出力を停止させているときに前記出力電圧が前記第1の電位を上回ると前記クロックの出力を開始させる
請求項
1記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記電圧監視部は、前記制御信号が前記クロックの無効を示しているときであっても所定の強制信号が入力されているときには前記第2の電位を基準として前記比較を行う
請求項
1記載のDC/DCコンバータ。
【請求項7】
前記第1の電位は-1.4Vであり、前記第2の電位は-1.5Vである
請求項
1記載のDC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、DC/DCコンバータに関する。詳しくは、直流電源から任意の電源を生成し、被バイアス回路に任意の電位を供給するDC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)トランジスタの製造技術として、FD-SOI(Fully-Depleted Silicon on Insulator:完全空乏型SOI)プロセスが注目されている。FD-SOIプロセスは、チャネル層、ソースおよびドレインと基板とがBOX(Buried Oxide)層で分離されており、ソースおよびドレインと基板との間に寄生ダイオードが存在しない。そのため、順方向リークを考慮する必要がなく、例えばNチャネルトランジスタのソースを0Vとし、基板に-1.3Vなどの電位をかけることができ、トランジスタの閾値電位をアグレッシブに調整することが可能となる。すなわち、FD-SOIプロセスは、基板にかける電圧に自由度があり、ダイナミックにその電圧を調整することで、低リークと高速動作を両立させることができ、結果として、チップ全体の電力の低下を図ることができる。このとき、基板(ボディ)電圧をバイアスするためにボディバイアスジェネレータが用いられる。このようなFD-SOIプロセスのCMOSトランジスタのためのボディバイアスジェネレータとして、チャージポンプを用いた回路構成が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】David Jacquet, et. al: "A 3 GHz Dual Core Processor ARM CortexTM-A9 in 28 nm UTBB FD-SOI CMOS With Ultra-Wide Voltage Range and Energy Efficiency Optimization", IEEE Journal of Solid-State Circuits, VOL.49, NO.4, 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、1.8V電源およびチャージポンプを用いて-1.8Vの負電源を生成し、レギュレータを介して、Nチャネルの基板に負電位を供給している。しかしながら、上述の従来技術では、1.8V電源の反転電圧をチャージポンプの出力電位としており、電荷転送量が少ないため、ポンピング頻度が高くなって、消費電流が大きくなってしまうという問題がある。
【0005】
本技術はこのような状況に鑑みて生み出されたものであり、基板のバイアス電圧を生成する際に、チャージポンプの出力電圧を適切なレベルに制御することにより、消費電流の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の側面は、所定の直流電源から所定の出力電圧を生成するチャージポンプと、上記チャージポンプを動作させるためのクロックを出力するクロック発生器と、上記チャージポンプの上記出力電圧を監視して上記出力電圧が所定の範囲を維持するように上記クロック発生器から出力される上記クロックを制御する電圧監視部と、上記チャージポンプの上記出力電圧からバイアス電圧を生成する電圧レギュレータとを具備するDC/DCコンバータである。これにより、チャージポンプの出力電圧を所定の範囲に維持して消費電流を低減するという作用をもたらす。
【0007】
また、この第1の側面において、上記チャージポンプは、所定の正電位の上記直流電源から所定の負電位の上記出力電圧を生成し、上記電圧レギュレータは、上記出力電圧から所定の負電位の上記バイアス電圧を生成するようにしてもよい。この場合において、上記バイアス電圧は、完全空乏型SOI(シリコン・オン・インシュレータ)プロセスによる回路のボディバイアス電圧を想定してもよい。
【0008】
また、この第1の側面において、上記チャージポンプの出力は容量に接続され、上記チャージポンプの動作に応じて上記容量において電荷が充放電されるようにしてもよい。これにより、チャージポンプが動作を停止している期間には容量から電圧レギュレータに給電させるという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記電圧監視部は、第1または第2の電位の何れか一方を基準として上記出力電圧との比較を行って上記出力電圧が上回っているときに上記クロックの出力を有効にする制御信号を出力し、上記制御信号が上記クロックの無効を示しているときには上記第1の電位を基準として上記比較を行い、上記制御信号が上記クロックの有効を示しているときには上記第2の電位を基準として上記比較を行うようにしてもよい。これにより、チャージポンプの出力電圧を第1の電位と第2の電位の範囲に維持して消費電流を低減するという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記電圧監視部は、上記クロックを出力させているときに上記出力電圧が上記第2の電位を下回ると上記クロックの出力を停止させ、上記クロックの出力を停止させているときに上記出力電圧が上記第1の電位を上回ると上記クロックの出力を開始させるようにしてもよい。
【0011】
また、この第1の側面において、上記電圧監視部は、上記制御信号が上記クロックの無効を示しているときであっても所定の強制信号が入力されているときには上記第2の電位を基準として上記比較を行うようにしてもよい。これにより、強制信号が入力されているときにチャージポンプの動作を促進するという作用をもたらす。
【0012】
なお、この第1の側面において、例えば、上記第1の電位は-1.4Vであり、上記第2の電位は-1.5Vであることが想定される。これにより、ポンピング回数を抑制して消費電力を低減するという作用をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本技術の実施の形態における半導体装置の一例を示す図である。
【
図2】本技術の第1の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200のブロック構成例を示す図である。
【
図3】本技術の第1の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200の動作タイミング例を示す図である。
【
図4】本技術の実施の形態におけるチャージポンプ230の回路構成例を示す図である。
【
図5】本技術の実施の形態におけるチャージポンプ230の転送可能電荷量の算出例を示す図である。
【
図6】本技術の第1の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200の回路構成例を示す図である。
【
図7】本技術の第2の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200のブロック構成例を示す図である。
【
図8】本技術の第2の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200の動作タイミングの第1の例を示す図である。
【
図9】本技術の第2の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200の動作タイミングの他の例を示す図である。
【
図10】本技術の第2の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200の回路構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(消費電流を低減する例)
2.第2の実施の形態(放射性ノイズを低減する例)
【0015】
<1.第1の実施の形態>
[モバイルワイヤレス通信チップ]
図1は、本技術の実施の形態における半導体装置の一例を示す図である。
【0016】
ここでは、半導体装置の一例として、モバイルワイヤレス通信チップのブロック構成図を示している。このモバイルワイヤレス通信チップは、LDOレギュレータ100と、ボディバイアスジェネレータ200と、無線通信モジュール300とを備える。
【0017】
LDO(Low Drop Out)レギュレータ100は、モバイルワイヤレス通信チップに給電を行うためのリニアレギュレータである。この例では、LDOレギュレータ100が「-1.8V」の電源電圧を給電するものと想定する。
【0018】
ボディバイアスジェネレータ200は、LDOレギュレータ100から電源電圧を受けて、無線通信モジュール300のボディバイアス電圧を生成する回路である。このボディバイアスジェネレータ200は、直流の電源電圧から直流のボディバイアス電圧を生成するため、DC(Direct Current:直流)/DCコンバータとしての機能を備える。すなわち、このボディバイアスジェネレータ200は、特許請求の範囲に記載のDC/DCコンバータの一例である。このボディバイアスジェネレータ200の詳細については後述する。
【0019】
無線通信モジュール300は、Bluetooth(登録商標)Low Energy規格に則った通信(BLE通信)を行うための通信モジュールである。BLEは、近距離において小さいサイズのデータを周囲に送信する技術であり、低消費電力で無線通信を行うことができる。この無線通信モジュール300は、ボディバイアスジェネレータ200から供給されたボディバイアス電圧により動作する。
【0020】
この無線通信モジュール300は、FD-SOIプロセスのCMOSを想定しており、Nチャネルトランジスタのボディバイアス電圧を「0V」乃至「-1.3V」間で可変にすることが可能である。また、Pチャネルトランジスタのボディバイアス電圧も同様に「0V」乃至「+1.3V」間で可変にすることが可能である。この例では、Nチャネルトランジスタに着目して、ボディバイアスジェネレータ200がNチャネルトランジスタのボディバイアス電圧NBBとして「-1.3V」を生成するものとする。
【0021】
なお、ここでは、BLE通信のモジュールを例示したが、これは適用対象の一例であり、本技術の実施の形態は他の回路のボディバイアス電圧を生成する際にも広く適用することができる。
【0022】
[ボディバイアスジェネレータ]
図2は、本技術の第1の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200のブロック構成例を示す図である。
【0023】
このボディバイアスジェネレータ200は、電圧監視部210と、クロック発生器220と、チャージポンプ230と、電圧レギュレータ240とを備える。また、チャージポンプ230の出力にはパッド291が設けられる。このパッド291には外部の容量292が接続される。
【0024】
電圧監視部210は、チャージポンプ230の出力電圧VCPを監視する回路である。この電圧監視部210は、オペアンプ217を備える。このオペアンプ217は、チャージポンプ230の出力電圧VCPと参照電圧とを比較して、出力電圧VCPが参照電圧を上回っているときに、クロック発生器220からのクロックの出力を有効にする制御信号Aを出力する。
【0025】
ここで、制御信号Aが無効を示している場合には、電圧監視部210は、VREF1を基準の参照電圧として、出力電圧VCPとの比較を行う。一方、制御信号Aが有効を示している場合には、電圧監視部210は、VREF2を基準の参照電圧として、出力電圧VCPとの比較を行う。この例では、VREF1が「-1.4V」であり、VREF2が「-1.5V」であることを想定する。すなわち、このような動作を行うオペアンプ217は、例えば、ヒステリシスコンパレータとして実現することができる。
【0026】
クロック発生器220は、電圧監視部210からの制御信号Aに従って、クロック信号Bを発生する回路である。すなわち、制御信号Aがクロック出力の有効を示している場合には、クロック発生器220はクロック信号Bを発生する。一方、制御信号Aがクロック出力の無効を示している場合には、クロック発生器220はクロック信号Bを発生しない。
【0027】
チャージポンプ230は、クロック発生器220からのクロック信号Bに従って、LDOレギュレータ100からの直流電源により容量292の充放電を行う回路である。容量292にはチャージポンプ230の出力電圧VCPが印加される。クロック発生器220からクロック信号Bが出力されているときには、容量292には電荷が充電される。一方、クロック発生器220からクロック信号Bが出力されていないときには、容量292に充電されている電荷が放電される。
【0028】
電圧レギュレータ240は、チャージポンプ230の出力電圧VCPからボディバイアス電圧NBBを生成するものである。この電圧レギュレータ240は、例えば、DAC(Digital-to-Analog Converter)により構成される。
【0029】
図3は、本技術の第1の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200の動作タイミング例を示す図である。
【0030】
初回の起動時には、チャージポンプ230の出力電圧VCPは「0V」である。クロック発生器220を動作させてクロック信号Bを発生することにより、チャージポンプ230が駆動され、容量292に電荷が充電され、チャージポンプ230の出力電圧VCPが負電位の方向に低下する。
【0031】
このとき、制御信号Aがクロック出力の有効を示しているため、電圧監視部210は、VREF2(-1.5V)を基準の参照電圧として、出力電圧VCPとの比較を行う。これにより、出力電圧VCPがVREF2(-1.5V)を下回ると、制御信号Aがクロック出力の無効を示すようになり、クロック発生器220はクロック信号Bを発生しなくなる。クロック信号Bの停止中は、容量292に充電された電荷と負荷電流との関係により、電荷が放電されていく。これにより、チャージポンプ230の出力電圧VCPは、VREF2(-1.5V)からVREF1(-1.4V)に向けて遷移する。
【0032】
このとき、制御信号Aがクロック出力の無効を示しているため、電圧監視部210は、VREF1(-1.4V)を基準の参照電圧として、出力電圧VCPとの比較を行う。これにより、容量292の電荷の放電によりチャージポンプ230の出力電圧VCPがVREF1(-1.4V)を上回ると、制御信号Aがクロック出力の有効を示すようになり、クロック発生器220はクロック信号Bを発生し、チャージポンプ230の動作により容量292には電荷が充電されていく。
【0033】
以下、同様の動作を繰り返す。これにより、チャージポンプ230の出力電圧VCPは、VREF1(-1.4V)からVREF2(-1.5V)の範囲を維持するように制御される。
【0034】
[チャージポンプ]
図4は、本技術の実施の形態におけるチャージポンプ230の回路構成例を示す図である。
【0035】
このチャージポンプ230は、フライイングキャパシタ(Cfly)231と、4つのスイッチ232乃至235とを備える。スイッチ232および234の一端は、フライイングキャパシタ231の一端に接続される。スイッチ233および235の一端は、フライイングキャパシタ231の他端に接続される。スイッチ232および233の他端は、電源レベルに接地される。スイッチ234の他端は、電源電位VDD(1.8V)に接続される。スイッチ235の他端は、チャージポンプ230の出力電圧VCPとして、容量292の一端に接続される。
【0036】
スイッチ232乃至235は、クロック発生器220からのクロック信号Bによりオンまたはオフに駆動される。すなわち、クロックが「0」を示すときは、スイッチ233および234をオンにするとともに、スイッチ232および235をオフにして、フライイングキャパシタ231を電源電位VDD(1.8V)により充電する。一方、クロックが「0」を示すときは、スイッチ233および234をオフにするとともに、スイッチ232および235をオンにして、フライイングキャパシタ231に充電されていた電荷を放電して、その電荷を容量292に充電する。
【0037】
図5は、本技術の実施の形態におけるチャージポンプ230の転送可能電荷量の算出例を示す図である。
【0038】
一般に、1.8V電源によりチャージポンプを用いて負電源を生成した際の起動プロファイルの曲線は同図に示すようになる。この曲線では、出力電圧VCPが「-1.8V」に近づくほど変化がなだらかになっている。これは、1.8V電源と出力電圧VCPのレベルに関係があるためである。
【0039】
これは、フライイングキャパシタCflyに正電源(1.8V)とVSS間で充電した電荷を、出力電圧VCPの負電源に転送する動きとなる。1回当たりに転送できる電荷量ΔQは、次式により示される。
ΔQ = Cfly *ΔV = Cfly *(正電源 + VCP)
【0040】
例えば、正電源が「1.8V」、Cflyが100pFの場合に、出力電圧VCPのレベルによって転送できる電荷量は、以下に示すように算出される。
VCP = 0Vの場合:
ΔQ = 100pF *(1.8V -0V)= 180p[q]
VCP = -1.4Vの場合:
ΔQ = 100pF *(1.8V -1.4V)= 40p[q]
VCP = -1.75Vの場合:
ΔQ = 100pF *(1.8V -1.75V)= 5p[q]
【0041】
出力電圧VCPのレベルが「-1.4V」の場合と「-1.75V」の場合の電荷転送量を比較した場合、前者の方が8倍多く電荷を転送することができる。つまり、出力電圧VCPから消費される電流(電荷)が一定の場合でも、出力電圧VCPのレベルによっては、ポンピング回数(頻度)が大きく異なることがわかる。
【0042】
チャージポンプの消費電流は、理想のスイッチで構成されている場合であればゼロであるが、実際にはスイッチには寄生容量があり、また、それを駆動するためのバッファなどが電力を消費してしまう。言い換えると、チャージポンプの消費電力はポンピング回数(頻度)に比例する。チャージポンプの消費電力を低下させるためには、ポンピング回数を低く抑えることが効果的なアプローチと考えられる。
【0043】
そこで、この実施の形態では、チャージポンプ230の出力電圧VCPが「-1.4V」から「-1.5V」の範囲を維持するように制御することにより、ポンピング回数を低く抑えて、チャージポンプの消費電力の低下を図る。
【0044】
[ボディバイアスジェネレータの回路構成]
図6は、本技術の第1の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200の回路構成例を示す図である。ボディバイアスジェネレータ200のブロック構成については上述の通りである。
【0045】
電圧監視部210は、電流源211および212と、抵抗213および214と、スイッチ215および216と、オペアンプ217とを備える。抵抗213には電流源211からの電流が流れ、出力電圧VCPが「-1.4V」のときに「0V」を示す電位が、スイッチ215の一端に供給される。抵抗214には電流源212からの電流が流れ、出力電圧VCPが「-1.5V」のときに「0V」を示す電位が、スイッチ216の一端に供給される。スイッチ215および216は、オペアンプ217の出力に応じて何れか一方がオン状態になり、他方がオフ状態になる。オペアンプ217は、スイッチ215および216の何れかから供給される電位と、VSSの「0V」とを比較して、出力電圧VCPが参照電圧(-1.4Vまたは-1.5V)を上回っているときに、クロック発生器220からのクロックの出力を有効にする制御信号Aを出力する。
【0046】
クロック発生器220は、発振器221を備える。発振器221は、電圧監視部210からの制御信号Aをイネーブル端子ENに入力して、CLK端子からクロック信号Bを出力する。すなわち、制御信号Aがクロック出力の有効を示している場合には、発振器221はクロック信号Bを発生する。一方、制御信号Aがクロック出力の無効を示している場合には、発振器221はクロック信号Bを発生しない。
【0047】
チャージポンプ230は、上述のように、フライイングキャパシタ231と、4つのスイッチ232乃至235とを備える。チャージポンプ230の出力は、上述のように、パッド291に接続される。このパッド291には外部の容量292が接続される。このチャージポンプ230の動作については上述の通りであるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0048】
電圧レギュレータ240は、電流源241と、MOSトランジスタ242および243と、抵抗244と、オペアンプ245とを備える。電流源241、MOSトランジスタ242および243は、カレントミラー回路を構成し、電流源241の電流Ib3をオペアンプ245に供給する。オペアンプ245はVSS(0V)を基準として、電流Ib3からボディバイアス電圧NBB(-1.3V)を生成する。ボディバイアス電圧NBBは、被バイアス回路301に供給される。
【0049】
このように、本技術の第1の実施の形態では、ボディバイアスジェネレータ200におけるチャージポンプ230の出力電圧VCPを電圧監視部210において監視して、出力電圧VCPがVREF1からVREF2の範囲を維持するように制御する。これにより、チャージポンプ230の1回当たりの電荷転送量を増加させて、ポンピング頻度を低下させ、消費電力を低減することができる。
【0050】
<2.第2の実施の形態>
ボディバイアスジェネレータ200においては、チャージポンプ230が容量292に対して電荷を急速に充放電するため、磁界が発生してしまう。モバイルワイヤレス通信チップを想定すると、無線信号の受信パスがその磁界をノイズとして拾ってしまうおそれがある。また、チャージポンプ230が動作する場合、その出力電圧VCPにリプル(ripple)が生じ、そのリプルが電圧レギュレータ240を介して無線通信モジュール300のボディに伝搬してしまうおそれがある。
【0051】
そこで、この第2の実施の形態では、そのような放射性ノイズを低減するために、無線通信中にチャージポンプ230を停止させる機能を持たせる。なお、チャージポンプ230を停止する場合、その間の給電は外付けの容量292に充電しておいた電荷からの給電になる。そのため、長期間停止すると出力電圧VCPのレベルは0Vになってしまう。一方、BLE通信においては、送信と受信を繰り返し行い、その間にインターバル区間が存在する。したがって、そのインターバル区間に、チャージポンプ230を動作させて再充電することにより、システムとしての動作を担保する。
【0052】
[ボディバイアスジェネレータ]
図7は、本技術の第2の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200のブロック構成例を示す図である。
【0053】
この第2の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200の構成は、上述の第1の実施の形態と基本的には同様である。ただし、電圧監視部210が論理和回路218をさらに備える点が上述の第1の実施の形態と異なる。論理和回路218は、オペアンプ217からの制御信号Aと外部からの強制信号FORCEとの論理和を生成し、参照電圧を選択するスイッチ215および216に供給するものである。
【0054】
強制信号FORCEは、無線通信が行われていない旨(非通信状態)を示す信号であり、モバイルワイヤレス通信チップのコアロジックなどによって生成される制御信号である。上述の第1の実施の形態では、制御信号Aがクロックの無効を示しているときにはVREF1を基準としてチャージポンプ230の出力電圧VCPとの比較を行い、制御信号Aがクロックの有効を示しているときにはVREF2を基準として比較を行っていた。この第2の実施の形態では、制御信号Aがクロックの無効を示しているときであっても、強制信号FORCEが非通信状態を示しているときにはVREF2を基準として比較を行う。
【0055】
これにより、非通信状態においては、容量292の放電により出力電圧VCPがVREF2(-1.5V)を上回る段階で、クロック発生器220からのクロックを有効にしてチャージポンプ230を動作させ、容量292に電荷を充電する。すなわち、非通信状態において積極的に充電を行っておくことにより、無線通信中のチャージポンプ230の動作を抑制することができる。
【0056】
図8は、本技術の第2の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200の動作タイミングの第1の例を示す図である。
【0057】
この第2の実施の形態では、上述の第1の実施の形態に加えて、無線通信中か否かの視点を加えている。すなわち、強制信号FORCEが「H」(非通信状態)を示すときには、チャージポンプ230の出力電圧VCPが「-1.5V」になるように負帰還がかかるようになっている。
【0058】
無線通信中には、強制信号FORCEが「L」になる。その際、出力電圧VCPが「-1.4V」を下回っている状態であればクロックが停止され、容量292から給電(放電)される。
【0059】
ここで、これらの動作が成立するためには、以下の条件が成り立つように設計を行う必要がある。ただし、Q1は強制信号FORCEが非通信状態を示す期間に充電する電荷量であり、Q2は強制信号FORCEが無線通信中を示す期間に容量292から放電される電荷量である。
Q1 > Q2
【0060】
なお、この第1の例では、強制信号FORCEが非通信状態を示す期間が短い場合について説明した。強制信号FORCEが非通信状態を示す期間が長い場合には、以下の第2の例のように電圧監視部210が基準とする参照電圧は「-1.5V」に固定されるため、出力電圧VCPは負帰還ループにより「-1.5V」を出力し続ける。
【0061】
図9は、本技術の第2の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200の動作タイミングの他の例を示す図である。この例は、非通信状態におけるチャージポンプ230の出力電圧VCPの遷移の詳細を示している。
【0062】
無線通信中であれば制御信号Aがクロックの無効を示しているときには出力電圧VCPが「-1.4V」を上回るまで放電が進んだ状態でクロックが再開するが、非通信状態であれば出力電圧VCPが「-1.5V」を上回った時点でクロックが再開する。クロックが入力されることによりチャージポンプ230が動作して、容量292に電荷が充電される。充電が進み、出力電圧VCPが「-1.5V」を下回るようになると、クロックは停止する。これを繰り返すことにより、非通信状態においては出力電圧VCPが「-1.5V」になるように維持される。
【0063】
[ボディバイアスジェネレータの回路構成]
図10は、本技術の第2の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200の回路構成例を示す図である。
【0064】
この第2の実施の形態におけるボディバイアスジェネレータ200の回路構成は、上述の第1の実施の形態と基本的には同様である。ただし、上述のように、電圧監視部210が論理和回路218をさらに備える点が上述の第1の実施の形態と異なる。
【0065】
このように、本技術の第2の実施の形態では、論理和回路218がオペアンプ217からの制御信号Aと強制信号FORCEとの論理和を生成して、オペアンプ217の参照電圧の選択信号とする。すなわち、強制信号FORCEが非通信状態を示す期間においては、出力電圧VCPが「-1.5V」になるように維持され、積極的にチャージポンプ230を動作させて容量292に電荷を充電する。これにより、無線通信中のチャージポンプ230の動作を抑制して、放射性ノイズの発生を低減し、無線通信の送受信特性に影響を与えることなく、ボディバイアス電圧を生成することができる。
【0066】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0067】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって、限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0068】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)所定の直流電源から所定の出力電圧を生成するチャージポンプと、
前記チャージポンプを動作させるためのクロックを出力するクロック発生器と、
前記チャージポンプの前記出力電圧を監視して前記出力電圧が所定の範囲を維持するように前記クロック発生器から出力される前記クロックを制御する電圧監視部と、
前記チャージポンプの前記出力電圧からバイアス電圧を生成する電圧レギュレータと
を具備するDC/DCコンバータ。
(2)前記チャージポンプは、所定の正電位の前記直流電源から所定の負電位の前記出力電圧を生成し、
前記電圧レギュレータは、前記出力電圧から所定の負電位の前記バイアス電圧を生成する
前記(1)に記載のDC/DCコンバータ。
(3)前記バイアス電圧は、完全空乏型SOI(シリコン・オン・インシュレータ)プロセスによる回路のボディバイアス電圧である
前記(2)に記載のDC/DCコンバータ。
(4)前記チャージポンプの出力は容量に接続され、前記チャージポンプの動作に応じて前記容量において電荷が充放電される
前記(1)から(3)のいずれかに記載のDC/DCコンバータ。
(5)前記電圧監視部は、第1または第2の電位の何れか一方を基準として前記出力電圧との比較を行って前記出力電圧が上回っているときに前記クロックの出力を有効にする制御信号を出力し、前記制御信号が前記クロックの無効を示しているときには前記第1の電位を基準として前記比較を行い、前記制御信号が前記クロックの有効を示しているときには前記第2の電位を基準として前記比較を行う
前記(1)から(4)のいずれかに記載のDC/DCコンバータ。
(6)前記電圧監視部は、前記クロックを出力させているときに前記出力電圧が前記第2の電位を下回ると前記クロックの出力を停止させ、前記クロックの出力を停止させているときに前記出力電圧が前記第1の電位を上回ると前記クロックの出力を開始させる
前記(5)に記載のDC/DCコンバータ。
(7)前記電圧監視部は、前記制御信号が前記クロックの無効を示しているときであっても所定の強制信号が入力されているときには前記第2の電位を基準として前記比較を行う
前記(5)に記載のDC/DCコンバータ。
(8)前記第1の電位は-1.4Vであり、前記第2の電位は-1.5Vである
前記(5)から(7)のいずれかに記載のDC/DCコンバータ。
【符号の説明】
【0069】
100 LDOレギュレータ
200 ボディバイアスジェネレータ
210 電圧監視部
211、212 電流源
213、214 抵抗
215、216 スイッチ
217 オペアンプ
218 論理和回路
220 クロック発生器
221 発振器
230 チャージポンプ
231 フライイングキャパシタ
232~235 スイッチ
240 電圧レギュレータ
241 電流源
242、243 MOSトランジスタ
244 抵抗
245 オペアンプ
291 パッド
292 容量
300 無線通信モジュール
301 被バイアス回路