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特許76070499,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/78 20060101AFI20241219BHJP
   C07C 211/54 20060101ALI20241219BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C07C209/78
C07C211/54
C07B61/00 300
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022560766
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2021040276
(87)【国際公開番号】W WO2022097609
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2024-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2020185510
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000187046
【氏名又は名称】東レ・ファインケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中谷 仁郎
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145747(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/137406(WO,A1)
【文献】特開昭62-149650(JP,A)
【文献】特開2020-189827(JP,A)
【文献】特開2021-4227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 209/78
C07C 211/54
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
9-フルオレノンと、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基のいずれかを表す。)
で表される2,6-ジアルキルアニリン類を、アミド結合を有する沸点170℃以上の非プロトン性極性溶媒中、酸触媒共存下で、反応させる、下記一般式(2)
【化2】
(式中、Rは、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基のいずれかを表す。)
で表される9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記非プロトン性極性溶媒が、N-メチルピロリドンまたはN-エチルピロリドンである請求項1記載の9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)および(2)中のRが、メチル基、エチル基、またはイソプロピル基である請求項1または2に記載の9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の製造方法に関し、さらに詳しくは、工業的に有用な9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物は、高分子化学の分野で用いられる化合物であり、特に、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂の原料として有用である。この化合物を含むポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂は電子情報材料、光学材料、複合材料など、工業用途として多岐にわたる分野で使用可能である。
【0003】
9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン構造の4-アミノフェニル基にアルキル基が置換されていない9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンの製造法としては、特許文献1、2では、9-フルオレノンとアニリンを反応させる際、反応により生成した水を反応系外に除去するために、共沸溶媒として、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素溶媒を共存させて、反応させている。
【0004】
特許文献3では、芳香族ケトンとアニリンを反応させる際、共沸溶媒を用いずに、大過剰のアニリン共存下で反応させ、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン化合物を生成させている。
【0005】
上記特許文献1、2、3では、本発明の9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物のアミノ基が結合する炭素の隣の炭素の水素がアルキル基で置換されていない9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(後述する一般式(2)に示す構造式で置換基Rが水素であるもの)が例示されているのみで、アミノ基が結合する炭素の両隣の炭素の水素がいずれも同じアルキル基で置換されている9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物について記載されていない。
【0006】
非特許文献1では、2つのアルキル基がメチル基またはエチル基である9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の合成法が開示されている。ここでは、反応させるアニリン類とそのアニリン類塩酸塩を9-フルオレノンに対し、大過剰量用いて、アニリン類がリフラックスする条件である200℃以上の高温で反応を行っている。しかし、この方法では、9,9-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)フルオレンの収率が30%(9-フルオレノン基準)、9,9-ビス(3,5-ジエチル-4-アミノフェニル)フルオレンの収率が20%(9-フルオレノン基準)であり、工業的に適用するには、収率が低く、生産性が悪かった。これは、反応原料となる2,6-ジアルキルアニリンの場合では、二つのアルキル基による立体障害により反応が進行しづらくなるためと考えられる。また、反応温度が200℃を超えると、大過剰使用しているアニリン類の一部が変質し、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の量産化において、重要なアニリン類の回収率が低下してしまう。その結果、アニリン類の原単位悪化や廃棄物の増大を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開昭62-149650号公報
【文献】日本国特開平03-215455号公報
【文献】日本国特開2009-102252号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Polymer 46(2005)5278-5283
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物を高収率で生産できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の製造方法は、9-フルオレノンと下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基のいずれかを表す。)
で表される2,6-ジアルキルアニリン類を、アミド結合を有する沸点170℃以上の非プロトン性極性溶媒中、酸触媒共存下で、反応させる、下記一般式(2)
【化2】
(式中、Rは、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基のいずれかを表す。)
で表される9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の製造方法によれば、アミド結合を有する沸点170℃以上の非プロトン性極性溶媒中で、酸触媒共存下、9-フルオレノンと一般式(1)で表される2,6-ジアルキルアニリン類を反応させることにより、一般式(2)で表される9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物を高収率で製造することができ、工業的に優れた製造方法である。本発明の製造方法により得られた9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物は、電子情報材料、光学材料、複合材料などで使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の詳細を記載する。
本発明で製造する9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物は、一般式(2)で表され、9-フルオレノンと下記一般式(1)で示される2,6-ジアルキルアニリン類を縮合反応させることにより製造される。
【化3】
【化4】
(式(1)(2)中、Rは、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基のいずれかを表す。)
式(1)および(2)において、Rは、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基のいずれかであり、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルから選ばれ、好ましくはメチル、エチル、またはイソプロピルである。
【0013】
一般式(1)で示される2,6-ジアルキルアニリン類として、例えば2,6-ジメチルアニリン、2,6-ジエチルアニリン、2,6-ジn-プロピルアニリン、2,6-ジイソプロピルアニリン、2,6-ジn-ブチルアニリン、2,6-ジイソブチルアニリン、2,6-ジsec-ブチルアニリン、2,6-ジtert-ブチルアニリンが挙げられる。好ましくは、2,6-ジメチルアニリン、2,6-ジエチルアニリン、2,6-ジイソプロピルアニリンがよい。
【0014】
一般式(2)で表される9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物は、結晶性であり、4-アミノフェニル基の3位および5位に炭素数1~4の脂肪族炭化水素基を有する。9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物として、例えば9,9-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジエチル-4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジn-プロピル-4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジイソプロピル-4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジn-ブチル-4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジイソブチル-4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジsecブチル-4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジtertブチル-4-アミノフェニル)フルオレンが挙げられる。好ましくは、9,9-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジエチル-4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジイソプロピル-4-アミノフェニル)フルオレンがよい。
【0015】
本発明の縮合反応で用いる2,6-ジアルキルアニリン類は、9-フルオレノンのモル数に対し、好ましくは2.0~10モル倍、より好ましくは、2.0モル倍から5.0モル倍であるとよい。2,6-ジアルキルアニリン類を2.0モル倍以上にすることにより、所望の9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物を製造することができる。またアニリン類を10モル倍以下にすることにより、反応液から未反応のアニリン類を除去する労力を少なくすることができる。
【0016】
9-フルオレノンおよび2,6-ジアルキルアニリン類の縮合反応は、酸触媒の存在下で行われる。酸触媒として、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸、ヘテロポリ酸等のプロトン酸、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル錯体、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、三塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化スズ(IV)、塩化鉄(III)、フッ化アンチモン(V)、塩化アンチモン(V)、三塩化りん、五塩化りん、オキシ塩化りん、四塩化チタン、三塩化チタン、バナジルクロライド(VOCl2)、塩化ジルコニウム、塩化ハフニウム、テトライソプロポキシチタン、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)、三塩化ニオブおよび五塩化ニオブなどのルイス酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ピバル酸、吉草酸、メタンスルフォン酸、パラトルエンスルフォン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、シリカアルミナ、ゼオライト等の固体酸が例示される。また、酸触媒を、アニリン類の酸塩の形で使用してもよい。
【0017】
酸触媒の量は、9-フルオレノンのモル数に対し、好ましくは0.1~10モル倍であり、より好ましくは、0.5~3モル倍である。酸触媒を0.5モル倍以上使用することにより、縮合反応を効率的に進めることができる。また、酸触媒を10モル倍以下使用することにより、後工程で中和に用いるアルカリ量を低減することができる。
【0018】
9-フルオレノンおよび2,6-ジアルキルアニリン類の縮合反応は、アミド結合を有する沸点170℃以上の非プロトン性極性溶媒中で行われる。アミド結合を有する沸点170℃以上の非プロトン性極性溶媒以外の溶媒を用いると縮合反応が起きず、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレンが生成しない。アミド結合を有する沸点170℃以上の非プロトン性極性溶媒として、例えば、N-メチルピロリドン(沸点202℃)またはN-エチルピロリドン(沸点218℃)などが挙げられる。中でも好ましく用いられる溶媒は、N-メチルピロリドンである。
【0019】
非プロトン性極性溶媒の使用量は、9-フルオレノンの質量に対して、好ましくは1~20質量倍であり、より好ましくは、2~10質量倍である。非プロトン性極性溶媒を1質量倍以上使用することにより、溶媒による反応促進効果が発現する。また、非プロトン性極性溶媒を20質量倍以下使用することにより、反応促進効果を発現させつつ、高い生産性を確保できる。
【0020】
9-フルオレノンおよび2,6-ジアルキルアニリン類の縮合反応において、水が副生するが、これを除去しながら反応させることが好ましい。この目的で反応系内に共沸溶媒を共存させて、連続的に副生水を除去する方法が好ましく用いられる。共沸溶媒としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられるが、トルエンまたはキシレンが好ましく用いられる。この共沸溶媒の使用量は、9-フルオレノンの質量に対し、0.5~10質量倍が好ましい。
【0021】
縮合反応は、酸素を含まない不活性雰囲気下で行うことが好ましい。具体的には、実質的に酸素を含まない窒素ガスを反応系内に通気させることで行うことができる。酸素存在下で行うと、アニリン類が酸化され、着色し、これが、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物に残存し、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物を着色させてしまうことがある。
【0022】
反応温度は、好ましくは80~200℃である。より好ましくは、120~180℃である。反応温度が80℃より低いと反応完結に長時間を要することになり、200℃よりも高いと、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物にさらに9-フルオレノンが反応した二量体が生成し、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の収率が低下することになる。また、大過剰使用しているアニリン類の一部が変質し、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の量産化において、重要なアニリン類の回収率が低下してしまう。その結果、アニリン類の原単位悪化や廃棄物の増大を招いてしまう。
【0023】
反応時間は、反応温度に依存するが、好ましくは3~100時間、より好ましくは5~80時間である。反応終点は、9-フルオレノンが完全に消費され、中間体である9-フルオレノンにアニリン1分子が縮合したイミン体の残存量が反応液の液クロマトグラフィー分析で、好ましくは全体のピーク面積からアニリン類のピーク面積を除いたピーク面積の10面積%以下、より好ましくは、2.0面積%以下となる時点と設定できる。
【0024】
縮合反応の終了後、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物を反応液から分離する方法として、生成した9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の酸塩を一旦、ろ過により反応液から濾別し、これを有機溶媒中、アルカリで中和・解塩しても良いし、あるいは反応終了後の反応液を直接アルカリで中和し、生成した有機相と水相を分液しても良い。いずれにしても得られた有機相から9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物を取得することができる。
【0025】
用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム水溶液または、水酸化カリウム水溶液が用いられ、中和で生じた塩を水相側へ抽出し、除去することができる。また、用いるアルカリの量は、縮合反応で用いた酸触媒と同じ当量あるいはそれ以上にすることができる。
【0026】
得られた有機相から9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の単離方法としては、有機相を濃縮する濃縮晶析法または有機相に貧溶媒を添加する貧溶媒晶析法が好ましく用いられる。
【0027】
濃縮晶析法では、アミド結合を有する沸点170℃以上の非プロトン性極性溶媒および/またはアニリン類を留去し、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物を濃縮晶析させることで、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物を得ることができる。
【0028】
濃縮は、常圧、減圧のどちらで行ってもよいが、常圧でアニリン類を留去しようとすると、200℃以上の高温条件が必要となり、これにより、アニリン類が酸化を受け、着色したり、アニリン類の回収率が低下することから、減圧下で、温度150℃以下で行うことが好ましい。好ましい減圧度としては、0.13~20kPaである。
【0029】
濃縮晶析後、冷却して得られたスラリーを固液分離することで、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物が得られる。得られた9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の表面に晶析母液が付着していることがあることから、得られた9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物に十分リンス液をかけて、洗浄する、あるいは溶媒でリスラリー洗浄することで高純度9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物を得ることができる。
【0030】
リンスおよびリスラリーの溶媒としては、アルコール系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒またはアミド系溶媒を使用してもよいが、好ましくは、アルコール系溶媒または芳香族炭化水素系溶媒が用いられる。アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールであり、芳香族炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレンである。リスラリーは、室温で行ってもよいし、溶媒がリフラックスする温度で行っても良い。
【0031】
使用するリンス液量は、9-フルオレノンに対し、好ましくは0.1~10質量倍であり、リスラリーで用いられるリスラリー液量は、9-フルオレノンに対し、1.0~30質量倍が好ましく用いられる。
【0032】
貧溶媒晶析法では、得られた有機相に水、アルコール類、低級脂肪族ケトン類から選ばれた少なくとも一つを含む溶媒を混合し、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物を晶析させることで、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物を高収率で取得する。
【0033】
貧溶媒晶析法に用いるアルコール類は、炭素数1~6のアルコール、および/または炭素数2~3のグリコールであり、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノールおよび1-ヘキサノールなどの1級アルコール類、イソプロパノール、2-ブタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-ヘキサノール、およびシクロヘキサノールなどの2級アルコール類、ターシャリーブタノール、ターシャリーペンタノール、エチレングリコールおよびプロピレングリコールが挙げられる。好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、である。
【0034】
低級脂肪族ケトン類は、炭素数3~9の脂肪族ケトンであり、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジブチルケトン、メチルブチルケトンが挙げられる。好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトンである。
【0035】
貧溶媒晶析法において、使用する溶媒量は、9-フルオレノンの質量に対し、好ましくは0.5~30質量倍、より好ましくは1.0~5質量倍である。
【0036】
晶析後、得られたスラリーを固液分離することで、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物が高収率で得られる。得られた9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の表面に晶析母液が付着していることがあることから、得られた9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物に十分リンス液をかけて洗浄する、あるいは溶媒でリスラリー洗浄することで高純度の9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物を得ることができる。
【0037】
リンスおよびリスラリーの溶媒としては、アルコール系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒またはアミド系溶媒を使用してもよいが、好ましくは、アルコール系溶媒または芳香族炭化水素系溶媒が用いられる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが例示され、芳香族炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレンが例示される。リスラリーは、室温で行ってもよいし、溶媒がリフラックスする温度で行っても良い。
【0038】
使用するリンス液量は、9-フルオレノンの質量に対し、好ましくは0.1~10質量倍であり、リスラリーで用いられるリスラリー液量は、9-フルオレノンの質量に対し、1.0~30質量倍が好ましく用いられる。
【実施例
【0039】
以下、実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例に制限されるものではない。なお、本明細書において得られる9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物の分析値は、次の方法により測定した。
【0040】
(化学純度)
以下の条件の液体クロマトグラフィー(島津製作所社製CLASS-VP)により測定された、全体のピーク面積からアニリン類のピーク面積を除いた面積に対する、9,9-ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物のピーク面積の分率(HPLC 面積%)を測定し、これを化学純度(%)とした。
・カラム: YMC―Pack ODS-AM303 4.6φ×250mm
・カラム温度: 40℃
・移動相: 0.1%(v/v)リン酸水溶液を組成(A)、アセトニトリルを組成(B)とし、下記のグラジエントに示した組成(A/B)で変化させた。
・グラジエント
時間(分) 組成(A/B)
0 60/40
10 45/55
15 20/80
25 20/80
30 60/40
40 60/40
・流量: 1ml/min
・注入量: 10μl
・検出: UV 254nm
・分析時間: 40分
・分析サンプル調製:サンプル0.02gを秤量し、アセトニトリル約40mlに希釈
ただし、上記の分析条件に基づく分析結果と同じ結果が得られる限り、この分析条件に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)9,9-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)フルオレン
温度計、滴下漏斗、冷却管および攪拌機を取り付けた300mL四つ口フラスコに、9-フルオレノン 15.0g(0.083モル)、N-メチルピロリドン 30.25g、トルエン 30.25gおよび35%塩酸 17.37g(0.166モル)を仕込んだ。窒素パージ攪拌下、溶液を15℃以下に冷却し、2,6-ジメチルアニリン 20.17g(0.166モル)を滴下した。発熱が収まった後、液温90~110℃に昇温し、系中の水とトルエンを共沸させた。留出が収まった後、さらにN-メチルピロリドン 15.0gを投入し、液温140℃まで昇温し、50時間撹拌しながら熟成することにより縮合反応を行った。
【0042】
縮合反応後、反応液を室温へ冷却し、スラリー液を濾過した。濾別したケークにイソプロパノール 15.0gのリンスを2回繰り返した。
【0043】
続いて、イソプロパノール 66.0g、水 66.0g、48%苛性ソーダ水溶液 13.87g(0.166モル)を仕込んだ溶液中に得られたケークを投入し、60℃で3時間攪拌し、解塩した。これを室温まで冷却し、結晶をろ過し、イソプロパノール 10g、水 10gの混合溶液で、2回リンスを行った。得られたケークを温度60℃、減圧度 0.01kPa以下で一晩真空乾燥し、9,9-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)フルオレン 29.5g(収率 88%/9-フルオレノン)を取得した。液体クロマトグラフィー分析による化学純度は、99.0%であった。
【0044】
(実施例2)9,9-ビス(3,5-ジエチル-4-アミノフェニル)フルオレン
実施例1において、2,6-ジメチルアニリン 20.17gを、2,6-ジエチルアニリン 24.85g(0.166モル)に、反応時間を50時間から20時間に変更した以外は、実施例1と同様に反応を行った。
9,9-ビス(3,5-ジエチル-4-アミノフェニル)フルオレン 28.6(収率 75%/9-フルオレノン)を取得した。液体クロマトグラフィー分析による化学純度は、99.1%であった。
【0045】
(実施例3)9,9-ビス(3,5-ジイソプロピル-4-アミノフェニル)フルオレン
実施例1において、2,6-ジメチルアニリン 20.17gを、2,6-ジイソプロピルアニリン 29.52g(0.166モル)に、反応時間を50時間から20時間に変更した以外は、実施例1と同様に反応を行った。
9,9-ビス(3,5-ジイソプロピル-4-アミノフェニル)フルオレン 15.5g(収率 36%/9-フルオレノン)を取得した。液体クロマトグラフィー分析による化学純度は、96.9%であった。
【0046】
(比較例1~5)
実施例1において、N-メチルピロリドン 30.25gをそれぞれ2,6-ジメチルアニリン(沸点216℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、N,N-ジメチルアセトアミド(沸点165℃)、キシレン(沸点144℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル アセテート(沸点146℃) 30.25gに代えた以外同様に行った。反応後、反応溶液には目的物である9,9-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)フルオレンの生成は認められなかった。
【0047】
(比較例6~9)
実施例2において、N-メチルピロリドン 30.25gをそれぞれ2,6-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、キシレン 30.25gに代えた以外同様に行った。反応後、反応溶液には目的物である9,9-ビス(3,5-ジエチル-4-アミノフェニル)フルオレンの生成は認められなかった。
【0048】
(比較例10~12)
実施例3において、N-メチルピロリドン 30.25gをそれぞれN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、キシレン 30.25gに代えた以外同様に行った。反応後、反応溶液には目的物である9,9-ビス(3,5-ジイソプロピル-4-アミノフェニル)フルオレンの生成は認められなかった。