(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】弾性のある吸水フロアマット
(51)【国際特許分類】
A47G 27/02 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A47G27/02 102
(21)【出願番号】P 2022573451
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(86)【国際出願番号】 CN2020097314
(87)【国際公開番号】W WO2021258234
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-11-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521118857
【氏名又は名称】簡単緑能股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】高 振益
(72)【発明者】
【氏名】高 上傑
(72)【発明者】
【氏名】潘 裕仁
(72)【発明者】
【氏名】高 雪芳
(72)【発明者】
【氏名】唐 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】頼 永彬
(72)【発明者】
【氏名】施 詠瀚
(72)【発明者】
【氏名】張 憲光
(72)【発明者】
【氏名】張 宇呈
(72)【発明者】
【氏名】柯 勝欽
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0141198(US,A1)
【文献】中国実用新案第210706384(CN,U)
【文献】特開2009-172295(JP,A)
【文献】特開2019-201697(JP,A)
【文献】国際公開第2005/087484(WO,A1)
【文献】実開平05-018388(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第106963220(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性層と織物層とを有し、
前記弾性層は、吸水効果のある発泡材からなる連通多孔質発泡体であり、床に貼り付けるために用いられ、かつ、前記発泡体には、吸水材を含み、
前記織物層は、前記弾性層の上側に貼り付けられ、多孔質布であり、
前記織物層の表面に吸水材を含むインクで印刷された複数の印刷エリアが設けられ、
前記弾性層の発泡材は、5%~85%の吸水材を含み、
前記織物層の表面の印刷エリアは、織物層の表面積の5%~100%を占め、
前記印刷エリアにおけるインクは、5%~95%の吸水材を含み、
各前記印刷エリアにおけるインクは、前記織物層に染み込み、前記弾性層に達していて、前記印刷エリア42に吸収された水が、インクのみを介しても前記弾性層に流入可能である
ことを特徴とする弾性のある吸水フロアマット。
【請求項2】
前記弾性層の底側には、複数の滑り止め部がさらに設けられる
請求項1に記載の弾性のある吸水フロアマット。
【請求項3】
各前記滑り止め部は、凹凸状の構造である
請求項2に記載の弾性のある吸水フロアマット。
【請求項4】
前記吸水材は、鉱石粉末、及び/又は植物粉末、及び/又は化学粉末であり、
前記鉱石粉末は、珪藻土、陶土、粘土、砂のうちの少なくとも1種から製造され、
前記植物粉末は、コットン、寒天のうちの少なくとも1種から製造され、
前記化学粉末は、シルト、スラグ、高吸水性樹脂、ナイロン、ポリアクリレートのうちの少なくとも1種から製造される
請求項1に記載の弾性のある吸水フロアマット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の入り口に用いられる吸水フロアマットに関し、特に、弾性のある吸水フロアマットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の浴室の入り口に用いられる吸水フロアマットは、毛細管現象を利用して吸水する織布であるが、滑り止め効果を有せず、踏んだ時に滑って転倒する可能性がある。上記問題を解決するために、当業者は、織布とゴムとを貼り合わせた吸水フロアマットであって、上側の織布によって吸水し、底側のゴム底層によって滑り止め効果を発揮し、吸水及び滑り止め効果を両立できる吸水フロアマットが開発されている。
【0003】
前述ゴム底層を有する吸水フロアマットは、従来の織布より優れた効果を有するが、使用者が吸水フロアマットとの接触時間が短いため、織布が短時間で毛細管現象を利用して足の裏又は靴底の水分を吸収し切れにくく、足の裏又は靴底に残存の水が室内の床に落ちる場合が多い。
【0004】
また、近年よく見られる硬質な珪藻土吸水フロアマットは、主に、石膏と珪藻土粉末と水とを混合することによって製造され、多孔質材の特性を発揮して素早く吸水することができ、その吸水速度が織布より速いが、踏み心地が悪く、割れ易く、及び滑り易い(滑り止めマットと組み合わせて使用する必要がある)等の問題があるので、改善の余地がある。
【0005】
そのため、本願の出願人は、特許文献1-3:中国実用新案第ZL201921062530.3号、台湾特許第I693909号、台湾実用新案第M582806号にて「弾性のある吸水フロアマット」を提出し、前記弾性のある吸水フロアマットは、連通多孔質発泡体である滑り止め層及び弾性層で構成され、弾性層の表面には、壊れた穴である粗い破壊エリアが複数設けられ、弾性層の発泡体には、吸水材をさらに含む。前記弾性のある吸水フロアマットは、前記弾性層を利用して足の裏又は靴底の水を素早く吸収することができ、かつ、踏み心地が柔軟で滑りにくいため、従来のゴム底層を有する吸水フロアマット及び硬質な珪藻土吸水フロアマットの欠点を解決することができる。
【0006】
しかし、前記弾性のある吸水フロアマットは、多孔質発泡体で構成されるため、見た目が綺麗ではない。よって、消費者の購入意欲を高めるために、弾性層の表面に染色や印刷された布層を貼り付ける必要がある。しかしながら、印刷インクが、水の布層への吸収を阻害しやすい(1mLの水の吸収時間が30秒から約60秒まで延長し)、逆に弾性のある吸水フロアマットの吸水速度を低下させる。今までの本発明の技術分野において、インクによる吸水速度の低下を解決できる技術がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国実用新案第ZL201921062530.3号
【文献】台湾特許第I693909号
【文献】台湾実用新案第M582806号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述課題を解決できる弾性のある吸水フロアマットを提供する。本発明に係る弾性のある吸水フロアマットは、吸水速度が速く、踏み心地が柔軟で、染色や印刷された布層であっても素早く吸水・排水でき、実用性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、弾性層と織物層とを有する弾性のある吸水フロアマットであって、前記弾性層は、吸水効果のある発泡材からなる連通多孔質発泡体であり、床に貼り付けるために用いられ、かつ、前記発泡材には、所定の比率の吸水材を含み、前記織物層は、前記弾性層の上側に貼り付けられ、、多孔質布であり、その表面に所定の比率の吸水材を含むインクで印刷された複数の印刷エリアが設けられる、弾性のある吸水フロアマットを提供する。
【0010】
好ましくは、前記弾性層の発泡材は、5%~85%の吸水材を含む。
【0011】
好ましくは、前記弾性層の底側には、複数の滑り止め部がさらに設けられる。
【0012】
好ましくは、各前記滑り止め部は、凹凸状の構造である。
【0013】
好ましくは、各前記印刷エリアのインクは、織物層に染み込んでいる。
【0014】
好ましくは、各前記印刷エリアのインクは、織物層に染み込んで弾性層に接着する。
【0015】
好ましくは、前記織物層の表面の印刷エリアは、織物層の表面積の5%~100%を占める。
【0016】
好ましくは、前記印刷エリアのインクは、5%~95%の吸水材を含む。
【0017】
好ましくは、前記吸水材は、珪藻土、陶土、粘土、砂等の鉱石粉末、及び/又はコットン、寒天等の植物粉末、及び/又はシルト、スラグ、高吸水性樹脂、ナイロン、ポリアクリレート等の化学粉末である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る弾性のある吸水フロアマットは、吸水速度が速く、踏み心地が柔軟で、染色や印刷された布層であっても素早く吸水・排水できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の1つの好ましい実施例の立体図である。
【
図2】本発明の1つの好ましい実施例の断面及び水の移動状態を示す模式図である。
【
図3】本発明のもう1つの好ましい実施例の断面及び水の移動状態を示す模式図である。
【
図4】本発明のさらにもう1つの好ましい実施例の断面及び水の移動状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、当業者が本発明をより理解できるように、図面と具体的な実施例と組み合わせて本発明についてさらに説明するが、本発明は例示の実施例に限定されない。
【0021】
図1及び
図2に示すように、本発明の1つの好ましい実施例に係る弾性のある吸水フロアマット10は、弾性層12と織物層14とを有し、浴室の入り口に置いてもよい。
【0022】
前記弾性層12は、吸水効果のある発泡材からなる連通多孔質発泡体であり、例えば、天然ゴム(NR)、合成ゴム(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、又はスチレンブタジエンゴム(SBR)等の発泡材が挙げられ、本実施例では、合成ゴムであり、前記発泡材は、5%~85%の吸水材(比率が高いほど、弾性層14の柔軟性が低くなる。)を含み、前記吸水材は、例えば、珪藻土、陶土、粘土、砂等の鉱石粉末、及び/又はコットン、寒天等の植物粉末、及び/又はシルト、スラグ、高吸水性樹脂、ナイロン、ポリアクリレート等の化学粉末であり、その底側に凹凸状構造である滑り止め部22がさらに設けられている。
【0023】
前記織物層14は、不織布又はスペーサーファブリック等の多孔質布であり、前記弾性層12が発泡する時に生じた力と原料に含まれる発泡剤の化学変化で生じた気体の圧力とを利用して接着剤なしで前記弾性層12の上側に接着され、その表面にインクで印刷された複数の印刷エリア24を有する。各前記印刷エリア24は、織物層14の表面積の5%~100%を占める。かつ、印刷用インクには、5%~95%の吸水材を含む。前記吸水材は、例えば、珪藻土、陶土、粘土、砂等の鉱石粉末、及び/又はコットン、寒天等の植物粉末、及び/又はシルト、スラグ、高吸水性樹脂、ナイロン、ポリアクリレート等の化学粉末である。
【0024】
そのため、本発明に係る前記弾性のある吸水フロアマット10は、多孔質発泡エラストマーからなる弾性層12、及び織物層14の表面に設けられた複数の印刷エリア24により、使用者が浴室から出る時に踏むことができ、踏み心地が柔軟である。また、前記織物層14の表面に複数の印刷エリア24が設けられ、各前記印刷エリア24のインクが吸水材を含むため、
図2に示すように、各前記印刷エリア24によって靴底又は足の裏の水を素早く吸収し、水が前記織物層14に吸収されて弾性層12に流入する。前記織物層14の三次元でルーズな構造は、水を吸収してガイドし、弾性層12に排出することだけでなく、吸収された水を自然乾燥させるのに役立てることができる。また、前記弾性層12の底側の滑り止め部22の床に対する滑り止め性により、前記弾性のある吸水フロアマット10が踏まれる時に滑りにくく、足のねじれ又は滑って転倒する状況を予防できる。
【0025】
従来の発泡材からなる多孔質発泡マット(例えば、ヨガマット)は、吸水効果を有するが、吸水速度が相当に遅い。それに対して、本発明に係る前記弾性のある吸水フロアマット10は、吸水速度が相当に速くて、実際の測定により、水を前記織物層14の表面の印刷エリア24に滴下すると、1mLの水の吸収時間が約1秒以下であり、即ち、吸水速度は、従来の多孔質発泡マットの15~30倍である。そのため、各前記印刷エリア24は、織物層14の吸水効果を確実に向上させる。
【0026】
また、各前記印刷エリア24が織物層14の全表面積を占める比率が高いほど、靴又は足が前記弾性のある吸水フロアマット10を踏んだ時に各前記印刷エリア24に接触する確率が高くなり、靴又は足の裏の水を素早く完全に吸収することを確保できる。もちろん、各前記印刷エリア24が織物層14の全表面積を占める比率が低い場合、各前記印刷エリア24を前記織物層14の上側の中間部に設けることで、踏まれる可能性を高くすることができる。
【0027】
実際の測定により、各前記印刷エリア24のインク及び弾性層12に含まれる吸水材の比率が5%である場合、吸水時間を約15%~20%短縮できる。前記弾性層12に含まれる吸水材の比率を25%に増やす場合(各前記印刷エリア24に含まれる吸水材の比率が変わらない)、吸水時間を約35%~40%短縮できる。即ち、各前記印刷エリア24の1mLの水の吸収時間が1秒(5%の吸水材を含む)であり、前記弾性層1が10%の吸水材を含む場合には、0.15~0.2秒の吸水時間を短縮し、即ち、吸水時間が0.8~0.85秒になる。また、前記弾性層14が25%の吸水材を含む場合(各前記印刷エリア24に含まれる吸水材の比率が依然として5%である)には、0.35~0.4秒の吸水時間を短縮し、即ち、吸水時間が0.6~0.65秒になる。つまり、前記弾性層12に含まれる吸水材の比率が高くなるにつれて吸水時間は縮短する。前記弾性層12は、吸水材の比率が高いほど柔軟性が低くなる。前記弾性層12の弾性をすべて失わないように、本発明の前記弾性層12に含まれる吸水材の比率は、最大85%である。
【0028】
言い換えると、各前記印刷エリア24のインク及び弾性層12に含まれる吸水材の比率が高いほど、前記弾性のある吸水フロアマット10の吸水速度が速くなる。
【0029】
さらに、前記弾性層12の底側の滑り止め部22は、床に対する滑り止め性を持つ上に、前記弾性層12の底側に複数の隙間を提供し、空気を通過させ、前記弾性のある吸水フロアマット10の底側の自然乾燥効果を高める。
【0030】
また、
図3に示すように、本発明のもう1つの好ましい実施例に係る弾性のある吸水フロアマット30は、その構成が前記弾性のある吸水フロアマット10とほぼ同じであるが、その相違点としては、各印刷エリア32のインクが織物層34に染み込んで、即ち、各前記印刷エリア32の底部の一部が前記織物層34の内部まで延伸される。これらの構造によって、各前記印刷エリア32と織物層34との接触面積を増加し、各印刷エリア32に吸収された水を前記織物層34を介して弾性層36にガイドする速度を増加できる。また、各前記印刷エリア32のインクが織物層34に染み込んだ程度は、インク量及び前記織物層34の織り密度によって調整することができる。
【0031】
図4に示すように、本発明のさらにもう1つの実施例に係る弾性のある吸水フロアマット40は、前記弾性のある吸水フロアマット30との相違点としては、各印刷エリア42のインクが織物層44に染み込んで弾性層46に接着する。よって、前記弾性のある吸水フロアマット30と比べて、前記弾性のある吸水フロアマット40は、各印刷エリア42の一部が弾性層46に接着した構造により、各前記印刷エリア42に吸収される水が2種類のルート(織物層44を介するルート、及び印刷エリア42からそのまま弾性層46に流入するルート)を介して弾性層46に流入し、吸水速度が前記弾性のある吸水フロアマット30より速い。インク量を増加し、又は前記織物層34の織り密度を調整することで、各前記印刷エリア42のインクが織物層34に染み込んで弾性層46に接着することができる。
【0032】
上記から分かるように、本発明に係る弾性のある吸水フロアマットは、前記弾性層と織物層の表面の複数の印刷エリアとを有するため、吸水速度が速く、踏み心地が柔軟で、滑りにくい。そのため、従来の織布フロアマットの吸水効果が足りなく、滑りやすいという欠点、近年よく見られる硬質な珪藻土吸水フロアマットが割れやすく、滑りやすく、踏み心地が悪い等の課題、及び布層の表面に印刷されたインクが水の吸収を阻害するという課題を解決することができ、実用性がある。
【0033】
上記の実施例は、あくまで本発明を説明するための好ましい実施例であり、本発明を限定するためのものではない。よって、当業者が本発明に基づいてなされた変更や改良は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって決定される。
【符号の説明】
【0034】
10 弾性のある吸水フロアマット
12 弾性層
14 織物層
24 印刷エリア
30 弾性のある吸水フロアマット
32 印刷エリア
34 織物層
36 弾性層
40 弾性のある吸水フロアマット
42 印刷エリア
44 織物層
46 弾性層