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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】感光性組成物およびその利用
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20241219BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20241219BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20241219BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/075 521
H05K1/09 D
H01F17/00 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023038495
(22)【出願日】2023-03-13
(65)【公開番号】P2024129349
(43)【公開日】2024-09-27
【審査請求日】2023-04-04
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐合 佑一朗
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-507772(JP,A)
【文献】特開2008-116910(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069436(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/075
H05K 1/09
H01F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電性粒子と、光重合性化合物と、シリコーン樹脂と、を含む感光性組成物であって、
前記シリコーン樹脂は、下記式(I):
【化1】
(式I中のR~Rは互いに独立し、それぞれ、アルキル基、フェニル基、ポリエーテル基、アラルキル基、フロロアルキル基、脂肪酸エステル基、または脂肪酸アミド基が挿入された基を表す。また、m、nは互いに独立した0以上の整数を表す。)
で表され、
前記シリコーン樹脂は、前記導電性粒子の全重量を100%としたとき、0.05%~1.0%含まれ、
さらに有機バインダとして水中で酸性を示す置換基を有する水溶性セルロース系樹脂および水溶性アクリル系樹脂の両方を含
前記組成物に含まれる導電性粒子は、貴金属からなる単体、貴金属からなる単体のみからなる混合物、貴金属のみからなる合金のいずれかのみで構成されている、感光性組成物。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂は、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、および側鎖ポリエーテル変性ポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂の重量平均分子量は、1000~10万である、請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記導電性粒子のレーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布におけるD50である平均粒子径は、1μm~5μmである、請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記導電性粒子の、JIS Z 8781に基づくL*a*b表色系の明度L*は50以上である、請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記感光性組成物は、セラミックグリーンシート上に電極を形成するために用いられる、請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記感光性組成物は、線幅30μm以下の細線の形成に用いられる、請求項1または2に記載の感光性組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の感光性組成物の焼成体からなる、導体膜。
【請求項9】
請求項1または2に記載の感光性組成物の焼成体からなる導体膜を備えた、電子材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性組成物およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、積層チップインダクタ等の電子材料は、基材上に所定のパターンの導体膜(配線導体)が形成された回路基板を備えている。例えば特許文献1には、耐熱性が高い導体膜を得るという観点から、テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物を含む導電性組成物が開示されている。
【0003】
一方、近年では導体膜のさらなる細線化が要求されており、光重合性化合物と導電性粒子とを含む組成物(以下、「感光性組成物」という)を用い、光化学的な作用を利用して導体膜を作製する方法(典型的には、フォトリソグラフィ法)が好ましく用いられている。かかる方法では、まず予め調製した感光性組成物を基材上に塗布して乾燥させる。次に、塗布した組成物を露光・硬化(反応)させる。この際、フォトマスク等を用いて露光部位を制御することで、所望のパターンの配線回路を描くことができる。その後、現像液で洗浄することによって、フォトマスクで遮光された未硬化の部分を除去する。最後に、かかる基材を所定の温度で焼成することによって、硬化された部分、すなわちパターニングされた光硬化膜を基材の表面に作製(焼付け)する。かかる方法によれば、精細なパターンの導体膜を基材上に比較的簡便に作製することができる。例えば特許文献2には、このような用途に適する感光性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4965232号公報
【文献】特許第4660991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者らの検討によると、例えば上述したような感光性組成物によると、高温(例えば、800℃~900℃程度)での焼成にあたり、焼成温度が高くなる程得られる導体膜の体積が増大する(以下、かかる事象を単に「反転膨張」ともいう)傾向にあることがわかった。かかる場合、導体膜の導電率等が低下したり、焼成時に導体膜にクラックが発生するおそれがあるため、電子材料の性能の観点から好ましくない。また、かかる導体膜のさらなる低抵抗化も要求されている。
【0006】
本開示は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、例えば高温焼成時における導体膜の反転膨張を好適に抑制することができ、かつ、導体膜の低抵抗化やクラックの防止を好適に実現することができる感光性組成物を提供することである。また、他の目的は、かかる導体膜および該導体膜を備えた電子材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を実現すべく、本開示は、導電性粒子と、光重合性化合物と、シリコーン樹脂と、を含む感光性組成物であって、上記シリコーン樹脂は、下記式(I):
【化1】
(式I中のR~Rは互いに独立し、それぞれ、アルキル基、フェニル基、ポリエーテル基、アラルキル基、フロロアルキル基、脂肪酸エステル基、または脂肪酸アミド基が挿入された基を表す。また、m、nは互いに独立した0以上の整数を表す。)
で表され、上記シリコーン樹脂は、上記導電性粒子の全重量を100%としたとき、0.05%~1.0%含まれる、感光性組成物を提供する。詳細については後述するが、上記式(I)で表されるシリコーン樹脂を、上記範囲内で含有する感光性組成物によると、例えば高温焼成時における導体膜の反転膨張を好適に抑制することができ、かつ、導体膜の低抵抗化やクラックの防止を好適に実現することができる。
【0008】
また、上記シリコーン樹脂の好適例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、および側鎖ポリエーテル変性ポリシロキサンが挙げられる。上記シリコーン樹脂としてこれらの種類のシリコーン樹脂を用いる態様において、上述したような効果をより好適に得ることができる。
【0009】
ここで開示される感光性組成物の好適な一態様では、上記シリコーン樹脂の重量平均分子量は、1000~10万である。上記シリコーン樹脂として上記範囲内の重量平均分子量を有するシリコーン樹脂を用いる態様において、上述したような効果をより好適に得ることができる。
【0010】
ここで開示される感光性組成物の好適な一態様では、上記導電性粒子の平均粒子径は、1μm~5μmである。平均粒子径が1μm~5μmである導電性粒子を用いた態様において、上述したような効果に加えて、導体膜の細線化をより好適に実現することができる。
【0011】
ここで開示される感光性組成物の好適な一態様では、上記導電性粒子の、JIS Z 8781に基づくL*a*b表色系の明度L*は50以上である。明度L*は50以上である導電性粒子を含む態様によると、硬化前の導体膜の深部まで安定して照射光が届くようになるため、導体膜をより安定的に形成することができる。
【0012】
ここで開示される感光性組成物は、例えばセラミックグリーンシート上に電極を形成するために用いることができる。
【0013】
ここで開示される感光性組成物は、例えば線幅30μm以下の細線の形成に用いることができる。
【0014】
また、他の側面から、ここで開示されるいずれかの感光性組成物の焼成体からなる導体膜が提供される。さらに、ここで開示されるいずれかの感光性組成物の焼成体からなる導体膜を備えた電子材料が提供される。かかる電子材料は、例えば高温焼成時における反転膨張が好適に抑制され、かつ、低抵抗化が好適に実現された導体膜を備えるため、品質の高い電子材料ということができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る電子材料(積層チップインダクタ)の構造を模式的に示す断面図である。
図2】他の実施形態に係る電子材料(積層チップインダクタ)の製造方法について説明するための説明図である。
図3】試験例の例14に係る900℃焼成時の電極表面を示すSEM画像である。
図4】試験例の例3に係る900℃焼成時の電極表面を示すSEM画像である。
図5】試験例の例4に係る900℃焼成時の電極表面を示すSEM画像である。
図6】試験例の例6に係る900℃焼成時の電極表面を示すSEM画像である。
図7】試験例の例8に係る900℃焼成時の電極表面を示すSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の好適な実施形態について説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本開示の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。以下の実施形態は、ここで開示される技術をかかる実施形態に限定することを意図したものではない。また、以下の図面において、寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではなく、特に言及されない限りにおいて本開示を限定するものではない。なお、本明細書および特許請求の範囲において、所定の数値範囲をA~B(A、Bは任意の数値)と記すときは、A以上B以下の意味である。したがって、Aを上回り且つBを下回る場合を包含する。
【0017】
また、「導電性粒子」という場合は、特に1粒単位を指している場合を除いて、多数の微粒子の集団(即ち、particles)を意味している。日本語では、単数か複数かが曖昧なため、「導電性粒子」の意味を明確にするために上記のように規定する。また、本明細書において「ペースト」とは、スラリー状組成物、インク状組成物を包含する概念である。
【0018】
≪感光性組成物≫
ここで開示される感光性組成物は、導電性粒子と、光重合性化合物と、シリコーン樹脂と、を含む。また、上記シリコーン樹脂は、下記式(I):
【化2】
(式I中のR~Rは互いに独立し、それぞれ、アルキル基、フェニル基、ポリエーテル基、アラルキル基、フロロアルキル基、脂肪酸エステル基、または脂肪酸アミド基が挿入された基を表す。また、m、nは互いに独立した0以上の整数を表す。)で表される。そして、上記シリコーン樹脂は、上記導電性粒子の全重量を100%としたとき、0.05%~1.0%含まれる。
【0019】
本発明者らが鋭意検討した結果、例えば800℃~900℃の高温焼成に際して導電性粒子どうしの焼結・粒成長が進行するにあたり、シリコーン樹脂が導電性粒子の焼結助剤として機能することがわかった。また、シリコーン樹脂のなかでも、上記列挙したような光重合性樹脂等の樹脂との相溶性が低い(換言すると、反応性が低い)ものを用いた場合、導電性粒子への接触機会が増大するため、導電性粒子の焼結助剤として好適に機能することがわかった。そして、さらに導電性粒子とシリコーン樹脂との配合割合を種々検討した結果、上述したような効果を好適に得るという観点から、シリコーン樹脂は、導電性粒子の全重量を100%としたとき、0.05%~1.0%の割合で含有されることが好ましいことがわかった。即ち、上記式(I)で表されるシリコーン樹脂を、上記範囲内で含有する感光性組成物によると、高温焼成に際して導電性粒子どうしが密に空隙が少ない状態で焼結するため、得られる導体膜の低抵抗化やクラックの防止を好適に実現できることを見出した。また、かかる構成によると、焼成温度が高くなるにつれて導電性粒子どうしの焼結・粒成長が進行するため、得られる導体膜の反転膨張が好適に抑制されることも見出した。なお、上記説明は、実験結果に基づく本発明者の考察であり、ここで開示される技術は、上記メカニズムに限定して解釈されるものではない。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0020】
<導電性粒子>
ここで開示される感光性組成物は、導電性粒子を含む。導電性粒子は、電子材料等における電極、導線や電導膜等の電気伝導性(以下、単に「導電性」という。)の高い層を主として形成するための材料である。導電性粒子の種類は特に限定されず、従来公知のもののなかから、1種類または2種類以上を適宜組み合わせて用いることができる。導電性粒子の種類の一例としては、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)等の貴金属の単体、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の卑金属の単体、カーボンブラック等の炭素質材料、およびこれらの混合物や合金等が挙げられる。このなかでも、緻密でかつ低抵抗な導体膜を有する電子材料を好適に得るという観点から、銀(銀粒子)を好ましく用いることができる。また、合金としては、例えば、銀-パラジウム(Ag-Pd)合金、銀-白金(Ag-Pt)合金、銀-銅(Ag-Cu)合金等が挙げられる。そして、コアが上述したような金属から構成され、コアを覆うシェルからなるコアシェル粒子等を用いることもできる。なお、上述したような導電性粒子としては、例えば市販されているものを使用することができる。
【0021】
また、上記導電性粒子の平均粒子径は、ここで開示される技術の効果が得られる限りにおいて特に限定されない。上記導電性粒子の平均粒子径の下限は、例えば0.1μm以上であり、導電性粒子どうしの凝集を好適に抑制するという観点から、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1μm以上である。また、上記導電性粒子の平均粒子径の上限は、例えば10μm以下であり、導体膜の細線化を好適に実現するという観点から、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、さらに好ましくは2μm以下である。上記導電性粒子の平均粒子径は、例えば1μm~5μmの範囲内であることが好ましい。なお、導電性粒子の「平均粒子径」とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径の小さい側から積算値50%に相当する粒径(D50粒子径)を意味する。かかる測定は、例えば、市販の装置であるマイクロトラック・ベル株式会社製のマイクロトラックMT3000IIを用いて実施することができる。
【0022】
特に限定されるものではないが、上記導電性粒子の全体は、JIS Z 8781:2013年に基づくL*a*b*表色系において、明度L*が、50以上であるとよい。このことにより、硬化前の導体膜の深部まで安定して照射光が届くようになり、例えば、膜厚が5μm以上、さらには10μm以上のような厚めの導体膜をも安定的に実現することができる。上記観点からは、上記導電性粒子の明度L*が、概ね55以上、例えば60以上であってもよい。明度L*は、例えば上記した導電性粒子の種類や平均粒子径によって調整することができる。なお、明度L*の測定は、例えばJIS Z 8722:2009年に準拠する分光測色計で行うことができる。
【0023】
特に限定されるものではないが、感光性組成物全体に占める上記導電性粒子の割合(換言すると、感光性組成物全体を100重量%としたときの導電性粒子の割合)は、概ね50重量%以上、典型的には60~95重量%、例えば70~90重量%であるとよい。上記範囲を満たすことで、緻密性や電気伝導性に優れた導体膜を形成することができる。また、感光性組成物の取扱性や、導体膜を成形する際の作業性を向上することができる。
【0024】
<光重合化合物>
ここで開示される感光性組成物は、光重合性化合物を含む。光重合性化合物は、後述する光重合開始剤の分解で生じた活性種によって、重合反応や架橋反応等を生じて硬化する光硬化成分である。重合反応は、例えば付加重合であってもよいし開環重合であってもよい。光重合性化合物としては特に限定されず、従来公知のものの中から、例えば用途や基材の種類等に応じて、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。光重合性化合物は、典型的には、不飽和結合および/または環状構造を1つ以上有する。光重合性化合物の一好適例として、(メタ)アクリロイル基やビニル基のようなエチレン性不飽和結合を1つ以上有するラジカル重合性の化合物や、エポキシ基のような環状構造を有するカチオン重合性の化合物が挙げられる。なお、本明細書および請求の範囲において「光重合性化合物」は、光重合性ポリマー、光重合性オリゴマー、光重合性モノマーを包含する。
【0025】
ここで開示される感光性組成物は、光重合性化合物として光重合性ポリマーを含んでいてもよい。光重合性ポリマーは、モノマーやオリゴマーに比べて相対的に少ない露光量で硬化が可能である。このため、露光部分の深部(基材に近い部分)まで安定的に硬化させることができる。したがって、光重合性ポリマーを含むことで、基材と導体膜との密着性が高まり、導体膜に剥離や断線等の不具合が発生することを好適に抑制することができる。また、導体膜の耐水性や耐久性を向上することができる。加えて、光重合性化合物が光重合性ポリマーを含む場合、基材に対する粘着性(タック性)が高まり、現像工程において未露光部分の除去性が低下する。光重合性ポリマーの重量平均分子量は、概ね5000より大きく、典型的には1万以上、例えば1万5000以上、2万以上であって、概ね10万以下、例えば5万以下であってもよい。光重合性化合物は、光重合性ポリマーに加えて、光重合性モノマーおよび光重合性オリゴマーのうちの少なくとも一方をさらに含んでいることが好ましい。特に限定されないが、光重合性モノマーの重量平均分子量は、例えば500未満程度とすることができ、光重合性オリゴマーの重量平均分子量は、例えば500~5000程度とすることができる。なお、本明細書および特許請求の範囲において「重量平均分子量」とは、ゲルクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)によって測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した重量基準の平均分子量をいう。
【0026】
好適な一態様では、光重合性化合物が(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含んでいる。例えば、光重合性化合物は、上記光重合性ポリマーとしての(メタ)アクリレートポリマーを含んでいてもよいし、上記光重合性モノマーとしての(メタ)アクリレートモノマーを含んでいてもよいし、上記光重合性オリゴマーとしての(メタ)アクリレートオリゴマーを含んでいてもよい。光重合性化合物が(メタ)アクリレートを含むことにより、導体膜の柔軟性や基材に対する追従性を向上することができる。その結果、剥離や断線等の不具合の発生をより良く抑制することができる。(メタ)アクリレートポリマーの一好適例として、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体や、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして、当該主モノマーに共重合性を有する副モノマーを含む共重合体が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」とは、「メタクリロイル」および「アクリロイル」を包含し、「(メタ)アクリレート」とは、「メタクリレート」および「アクリレート」を包含する用語である。
【0027】
好適な他の一態様では、光重合性化合物が、ウレタン結合(-NH-C(=O)-O-)を有する光重合性化合物(ウレタン結合含有化合物)を含んでいる。例えば、光重合性化合物は、上記光重合性ポリマーとしてのウレタン結合を有するウレタン結合含有ポリマーを含んでいてもよいし、上記光重合性モノマーとしてのウレタン結合を有するウレタン結合含有モノマーを含んでいてもよいし、上記光重合性オリゴマーとしてのウレタン結合を有するウレタン結合含有オリゴマーを含んでいてもよい。光重合性化合物がウレタン結合含有化合物を含むことで、露光部分の耐エッチング性をより良く向上すると共に、柔軟性や伸縮性に一層優れた導体膜を実現することができる。したがって、基材と導体膜との密着性を向上して、剥離や断線等の不具合の発生を高いレベルで抑制することができる。ウレタン結合含有化合物の一好適例として、ウレタン変性(メタ)アクリレートやウレタン変性エポキシ、多官能ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、上述したような(メタ)アクリレート含有化合物、ウレタン結合含有化合物としては、市販されているものを特に制限なく使用することができる。
【0028】
特に限定されるものではないが、光重合性化合物が光重合性ポリマーを含む場合、光重合性化合物全体に占める光重合性ポリマーの割合は、重量基準で、概ね10重量%以上、典型的には20重量%以上、例えば30重量%以上であってもよく、概ね90重量%以下、典型的には80重量%以下、例えば70重量%以下であってもよい。上記範囲を満たす場合に、ここで開示される技術の効果が高いレベルで発揮される。また、特に限定されるものではないが、光重合性化合物が、光重合性モノマーおよび光重合性オリゴマーのうちの少なくとも一方を含む場合、光重合性化合物全体に占める光重合性モノマーおよび/または光重合性オリゴマーの割合は、重量基準で、概ね10重量%以上、典型的には20重量%以上、例えば50重量%以上であってもよく、概ね90重量%以下、典型的には80重量%以下、例えば70重量%以下であってもよい。
【0029】
特に限定されるものではないが、感光性組成物全体に占める光重合性化合物の割合は、概ね0.1~20重量%、典型的には0.5~10重量%、例えば1~5重量%等であり得る。また、特に限定されるものではないが、光重合性化合物の含有比率は、導電性粒子100重量部に対して、概ね0.1~20重量部、例えば0.5~10重量部であってもよい。上記範囲を満たすことで、感光性組成物の光硬化性が好適に発揮され、高いレベルで安定して導体膜を形成することができる。
【0030】
<シリコーン樹脂>
ここで開示される感光性組成物は、下記式(I)で表されるシリコーン樹脂を含む。ここで、下記式(I)中のR~Rは互いに独立しており、それぞれ、アルキル基、フェニル基、ポリエーテル基、アラルキル基、フロロアルキル基、脂肪酸エステル基、または脂肪酸アミド基が挿入された基を表す。また、m、nは互いに独立した0以上の整数を表す。ここで開示される感光性組成物は、下記式(I)で表されるシリコーン樹脂を1種または2種以上含んでいてもよい。シリコーン樹脂としては、シロキサン結合(Si-O-Si)による主骨格を有するものを好ましく用いることができる。
【0031】
【化3】
【0032】
ここで、アルキル基は、直鎖状であってもよいし分岐状であってもよい。特に限定されるものではないが、かかるアルキル基の炭素数は、例えば1~12であり、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~3である。また、特に限定されるものではないが、ポリエーテル基(典型的には、-R(CO)(CO)R’と表記される。a,bは、互いに独立した0以上の整数である。)において、a+bは、例えば1≦a+b≦80であり、2≦a+b≦70、3≦a+b≦60、5≦a+b≦50であってもよい。また、R,R’の炭素数は、例えば1~12であり、1~6や1~3であってもよい。なお、かかるR,R’の炭素数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。そして、特に限定されるものではないが、脂肪酸エステル基(典型的には、-OCORと表記される。)において、Rの炭素数は、例えば、例えば1~12であり、1~6や1~3であってもよい。また、特に限定されるものではないが、脂肪酸アミド基(典型的には、-RNHCOR’と表記される。)において、R,R’の炭素数は、例えば、例えば1~12であり、1~6や1~3であってもよい。なお、かかるR,R’の炭素数は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、R~Rの組み合わせは、例えば、ポリエーテル基、アルキル基、およびアラルキル基の組み合わせや、アルキル基およびアラルキル基の組み合わせ等であってもよい。
【0033】
上記シリコーン樹脂の一例としては、ポリジメチルシロキサン;ポリ(メチルフェニルシロキサン)(詳しくは、上記式(I)のR,R,R,Rがメチル基、R,Rがフェニル基であるポリシロキサン)、ポリ(ジメチルシロキサン-co-ジフェニルシロキサン)(詳しくは、上記式(I)のR,R,R,Rがメチル基、R,Rがフェニル基であるポリシロキサン)、ポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルフェニルシロキサン)(詳しくは、上記式(I)のR,R,R,R,Rがメチル基、Rがフェニル基であるポリシロキサン)等の側鎖フェニル変性ポリシロキサン、側鎖ポリエーテル変性ポリシロキサン(詳しくは、上記式(I)のR,Rがメチル基、R,R,RおよびRの少なくともいずれかがポリエーテル基で置換されたポリシロキサン)、側鎖フロロアルキル変性ポリシロキサン(詳しくは、上記式(I)のR,Rがメチル基、R,R,RおよびRの少なくともいずれかがフロロアルキル基で置換されたポリシロキサン)、側鎖脂肪酸エステル変性ポリシロキサン(詳しくは、上記式(I)のR,Rがメチル基、R,R,RおよびRの少なくともいずれかが脂肪酸エステル基で置換されたポリシロキサン)、側鎖脂肪酸アミド変性ポリシロキサン等(詳しくは、上記式(I)のR,Rがメチル基、R,R,RおよびRの少なくともいずれかが脂肪酸アミド基で置換されたポリシロキサン)の側鎖変性ポリシロキサン;片末端ポリエーテル変性シロキサン(詳しくは、上記式(I)のR,R,R,Rがメチル基、RおよびRのいずれかがポリエーテル基で置換されたポリシロキサン。置換されていない側の末端は、例えば、上記列挙した置換基のうちポリエーテル基以外の置換基とすることができる。);両末端ポリエーテル変性シロキサン(詳しくは、上記式(I)のR,R,R,Rがメチル基、RおよびRがポリエーテル基で置換されたポリシロキサン)等が挙げられる。なかでも、導体膜の反転膨張の抑制および低抵抗化をより好適に実現するという観点から、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、側鎖ポリエーテル変性ポリシロキサンが好ましく用いられ得る。また、上述したように、上記式(I)中のm、nは互いに独立した0以上の整数を表している。mおよびnは、同じであってもよいし、相互に異なっていてもよい。特に限定されるのものではないが、m+mは、例えば1≦m+n≦2000であり、1≦m+n≦1500、1≦m+n≦1000であってもよい。また、上記シリコーン樹脂としては、例えば光硬化しないものをより好ましく使用することができる。なお、上述シリコーン樹脂としては、市販されているものを特に制限なく用いることができる。シリコーン樹脂としては、例えば、信越化学工業株式会社製やダウ・東レ株式会社製、BYK-Chemie社製、旭化成株式会社製のものを用いることができる。
【0034】
上記シリコーン樹脂の重量平均分子量は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に限定されない。上記シリコーン樹脂の重量平均分子量の下限は、例えば500以上であり、導体膜の反転膨張の抑制および低抵抗化を好適に実現するという観点から、好ましくは1000以上であり、5000以上であってもよい。また、上記シリコーン樹脂の重量平均分子量の上限は、例えば20万以下であり、上述したような効果を好適に得るという観点から、好ましくは10万以下であり、例えば9万以下(9万未満)であってもよく、5万以下や1万以下であってもよい。上記シリコーン樹脂の重量平均分子量は、例えば1000~10万の範囲内であることが好ましい。また、上記効果に加えて、解像性の観点からは、例えば1000~1万の範囲内であることが好ましい。また、上記シリコーン樹脂は、導電性粒子との相溶性を高め、導電性粒子の焼結助剤として好適に機能させるという観点から、例えば常温(20±5℃程度)、1気圧条件下で液状ないしはオイル状であることが好ましい。シリコーン樹脂は、液状ないしはオイル状の組成物として、感光性組成物中に均一に分散または溶解されていることが好ましい。シリコーン樹脂が液状ないしはオイル状である場合、導電性粒子となじみやすくなるため、好ましい。また、シリコーン樹脂のなかでも、例えばシロキサン結合が2000以下の直鎖構造を主体とするものはオイル状を呈することから、好ましく用いることができる。
【0035】
ここで開示される感光性組成物においては、上記シリコーン樹脂は、上記導電性粒子の全重量を100%としたとき、0.05%~1.0%含まれる。上記シリコーン樹脂を上記範囲内で含有することによって、得られる導体膜の反転膨張の抑制と、低抵抗化とを好適に実現することができる。また、上述したような効果をより好適に得るという観点から、上記シリコーン樹脂は、上記導電性粒子の全重量を100%としたとき、0.1%~1.0%の範囲内であってもよく、0.15%~1.0%の範囲内、0.15%~0.8%の範囲内とすることがより好ましく、0.15%~0.6%の範囲内とすることがさらに好ましい。そして、上述したような効果に加えて、解像性を好適に得るという観点からは、上記シリコーン樹脂は、上記導電性粒子の全重量を100%としたとき、0.05%~0.8%の範囲内とすることが好ましい。
【0036】
<有機バインダ>
ここで開示される感光性組成物は、上記成分に加えて、有機バインダを含有してもよい。有機バインダは、基材と光硬化前の膜状体(未硬化物)との接着性を高める成分である。有機バインダとしては、従来公知のものの中から、例えば基材の種類や光重合性化合物の種類等に応じて、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。有機バインダとしては、現像工程において水系現像液で容易に除去可能なものが好ましい。例えば、現像工程においてアルカリ性の水系現像液を使用する場合には、アルカリ可溶樹脂等を好ましく用いることができる。このことにより、現像工程において未露光部分を一層除去し易くなる。
【0037】
上記アルカリ可溶樹脂としては、アルカリ可溶性の高い構造部分、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ボロン酸基のような酸性基(酸性官能基)を有しているとよい。なかでもカルボキシル基が好ましい。酸性基は、解離性のプロトンを有し、水中で酸性を示す置換基である。酸性基は一部がエステル化されていてもよい。酸性基は、アルカリ可溶樹脂の主鎖(炭素数が最大となる炭素鎖。以下同じ。)の炭素原子に結合していてもよく、側鎖(主鎖から枝分かれしている炭素鎖。以下同じ。)の炭素原子に結合していてもよい。アルカリ可溶性の高い構造部分を含むことにより、アルカリ性の水系現像液で、未露光部分を一層迅速かつ残渣なく除去し易くなる。
【0038】
好適な一態様では、上記アルカリ可溶樹脂が酸価を有する。上記アルカリ可溶樹脂の酸価は、例えば10mgKOH/g以上、好ましくは20mgKOH/g以上、より好ましくは25mgKOH/g以上、例えば30mgKOH/g以上であって、典型的には後述する(メタ)アクリル系の光硬化性樹脂よりも小さく、概ね150mgKOH/g以下、好ましくは100mgKOH/g以下、例えば50mgKOH/g以下であるとよい。有機バインダ全体の酸価は、上記範囲にあることがより好ましい。言い換えれば、有機バインダ全体が所定の酸性度を示すことが好ましい。酸価が所定値以上であると、現像工程において未露光部分の除去性が高められ、現像性をより良く向上することができる。また、酸価が所定値以下であると、水系現像液に対する溶解性が抑えられ、現像工程において露光部分の剥離や断線をより良く抑制することができる。このため、ここに開示される技術の効果をより高いレベルで発揮することができる。なお、本明細書において「酸価」とは、単位試料(1g)中に含まれる遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)の含量(mg)である。単位は、mgKOH/gである。
【0039】
有機バインダの一好適例として、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。なかでも、現像工程において除去し易いという観点から、セルロース系樹脂やアクリル系樹脂を好ましく用いることができる。上述したように、これらの樹脂は、酸性基を有していることが好ましく、酸価は上記範囲内であることが好ましい。また、有機バインダの重量平均分子量としては、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、概ね5000~50万であり、例えば7000~20万や1万~15万の範囲内とすることができる。なお、上述したような有機バインダとしては、市販されているものを特に制限なく使用することができる。
【0040】
感光性組成物は有機バインダを含む場合、特に限定されるものではないが、感光性組成物全体に占める有機バインダの割合は、概ね0.1~20重量%、典型的には0.5~10重量%、例えば1~5重量%であってもよい。
【0041】
<分散媒>
ここで開示される感光性組成物は、上記成分に加えて、これら成分を分散させる分散媒(例えば、有機系分散媒)を含有してもよい。分散媒は、感光性組成物に適度な粘性や流動性を付与して、感光性組成物の取扱性を向上したり、導体膜を成形する際の作業性を向上したりする成分である。また、導体膜を形成する際の作業性を向上するという観点から、感光性組成物は分散媒によってペースト状に調製されることが好ましい。分散媒としては、従来公知のものの中から、例えば光重合性化合物の種類等に応じて、1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0042】
分散媒の一好適例として、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、テキサノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤;ジプロピレングリコールメチルエーテル、メチルセロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル)、セロソルブ(エチレングリコールモノエチルエーテル)、エチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルカルビトール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)等のエーテル系溶剤;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート)、イソボルニルアセテート等のエステル系溶剤;トルエン、キシレン、ナフサ、石油系炭化水素等の炭化水素系溶剤;ミネラルスピリット;等の有機溶剤が挙げられる。なお、上述したような分散媒としては、市販されているものを特に制限なく使用することができる。
【0043】
なかでも、感光性組成物の保存安定性や導体膜成形時の取扱性を向上する観点からは、沸点が150℃以上の有機溶剤、さらには170℃以上の有機溶剤が好ましい。また、他の一好適例として、導電膜を印刷した後の乾燥温度を低く抑える観点からは、沸点が250℃以下の有機溶剤、さらには沸点が220℃以下の有機溶剤が好ましい。このことにより、生産性を向上すると共に、生産コストを低減することができる。
【0044】
感光性組成物に分散媒を含む場合、特に限定されるものではないが、感光性組成物全体に占める分散媒の割合は、概ね1~50重量%、典型的には3~30重量%、例えば5~20重量%であってもよい。また、感光性組成物が分散媒を含むペースト状に調製される場合、かかるペーストの粘度は特に制限されないが、概ね10~100mPa・s程度(例えば、20~70Pa・s程度)であることが好ましい。かかる粘度は、例えば市販の粘度計によって測定することができる。
【0045】
<光重合開始剤>
ここで開示される感光性組成物は、上記成分に加えて、光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、従来公知のものの中から、感光性樹脂の種類等に応じて1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。光重合開始剤は、可視光線、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することによって分解し、ラジカルや陽イオン等の活性種を発生させて、光重合性化合物の反応を開始させる成分である。一好適例として、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン等が挙げられる。なお、上述したような光重合開始剤としては、市販されているものを特に制限なく使用することができる。
【0046】
特に限定されるものではないが、感光性組成物全体に占める光重合開始剤の割合は、概ね0.01~5重量%、典型的には0.1~4重量%、例えば0.2~3重量%や0.3~2重量%であるとよい。このことにより、感光性組成物の光硬化性が好適に発揮され、一層安定して導体膜を形成することができる。
【0047】
<その他の添加成分>
ここで開示される感光性組成物は、ここで開示される技術の効果を著しく損なわない限りにおいて、上記成分に加えて、さらに必要に応じて種々の添加成分を含有することができる。添加成分としては、従来公知のものの中から1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。添加成分の一例としては、例えば、シリカ(SiO)やアルミナ(Al)等の無機フィラー、ガラス粒子、光増感剤、重合禁止剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、分散剤(例えば、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤、非イオン性分散剤等)、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、ゲル化防止剤、安定化剤、防腐剤、顔料等が挙げられる。特に限定されるものではないが、感光性組成物全体に占める添加成分の割合は、概ね5重量%以下、典型的には3重量%以下、例えば2重量%以下、好ましくは1重量%以下とするとよい。
【0048】
ここで開示される感光性組成物は、例えばセラミックグリーンシート上に電極を形成するために用いることができる(後述の≪感光性組成物の用途≫を参照)。かかるセラミックグリーンシートの種類の一例としては、ホウケイ酸ガラスからなるセラミックグリーンシート等が挙げられる。また、かかるセラミックシートは、耐熱性向上等の観点から、適宜アルミナやシリカ等のセラミック粒子を含んでいてもよい。
【0049】
ここで開示される感光性組成物は、線幅(換言すると、ラインL)30μm以下の細線の形成に用いることができる。また、さらには、スペースSが30μm以下の導体膜を形成することができる。なお、かかる場合の膜厚は特に制限されないが、概ね10μm以下であり、好ましくは8μm以下とすることができる。
【0050】
また、ここで開示される感光性組成物によると、800℃で焼成したときの円板収縮率A(%)と、900℃で焼成したときの円板収縮率B(%)との差:B-A(%)をB-A≧-0.5に調整することができる。ここで、「円板収縮率」とは、導体膜の収縮率を示すパラメータであり、例えば後述の試験例に記載の方法によって算出することができる値である。ここで、感光性組成物からなる導体膜の体積は、室温(例えば、25℃程度)からある温度(例えば800℃程度)においては、温度が上がるにつれて、樹脂の燃え抜けや感光性組成物の焼結によって同等または低減し得る。一方、樹脂含有率が5重量%以上さらには7重量%以上と比較的多い感光性組成物においては、例えば800℃程度で焼成したときの導体膜の体積よりも、900℃程度で焼成したときの導体膜の体積の方が大きくなる(即ち、収縮率が小さくなる)ことがある。これによって、導体膜の導電率が低下したり、例えば焼成温度が高くなるほど収縮する傾向にある基材(例えば、グリーンシート)との間に収縮差が生じ、基材から導体膜が剥離したり、クラックが生じたりするおそれがあるため、好ましくない。これに対して、ここで開示される感光性組成物によると、このような反転膨張を好適に抑制することができるため、上述したような課題を解消することができる。B-Aは、正の値になる程焼成温度が高くなる程好ましく、B-A>0であることが好ましく、B-A≧0.5(例えばB-A>0.5)であることがより好ましい。また、上記B-Aの上限は、ここで開示される技術の効果が得られる限りにおいて特に限定されないが、例えばB-A≦20であり、B-A≦10であってもよい。
【0051】
≪感光性組成物の用途≫
ここで開示される感光性組成物によれば、ファインラインの導体膜を安定して形成することができる。そのため、ここで開示される感光性組成物は、例えば、インダクタンス部品やコンデンサ部品、多層回路基板等の様々な電子材料における導電膜の形成に好適に利用することができる。換言すると、本開示は、ここで開示される感光性組成物の焼成体からなる導体膜や、ここで開示される感光性組成物の焼成体からなる導体膜を備えた電子材料を提供することができる。かかる電子材料は、例えば高温焼成時における反転膨張が好適に抑制され、かつ、低抵抗化が好適に実現された導体膜を備えるため、品質の高い電子材料ということができる。
【0052】
電子材料は、表面実装タイプやスルーホール実装タイプ等、各種の実装形態のものであってよい。電子材料は、積層型であってもよいし、巻線型であってもよいし、薄膜型であってもよい。インダクタンス部品の典型例としては、高周波フィルタ、コモンモードフィルタ、高周波回路用インダクタ(コイル)、一般回路用インダクタ(コイル)、高周波フィルタ、チョークコイル、トランス等が挙げられる。
【0053】
電子材料の一例として、セラミック電子材料が挙げられる。なお、本明細書において、「セラミック電子材料」とは、セラミック材料を用いてなる電子材料全般をいい、非晶質のセラミック基材(ガラスセラミック基材)あるいは結晶質(すなわち非ガラス)のセラミック基材を有する電子材料全般を包含する。セラミック電子材料の典型例として、セラミック基材を有する高周波フィルタ、セラミックインダクタ(コイル)、セラミックコンデンサ、低温焼成積層セラミック基材(Low Temperature Co-fired Ceramics Substrate:LTCC基材)、高温焼成積層セラミック基材(High Temperature Co-fired CeramicsSubstrate:HTCC基材)等が挙げられる。なお、セラミック材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記セラミック成分として挙げた成分から構成された材料が挙げられる。
【0054】
図1は、積層チップインダクタ1の構造を模式的に示した断面図である。なお、図1における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。また、図面中の符号X、Yは、それぞれ左右方向、上下方向を表す。ただし、これは説明の便宜上の方向に過ぎない。
【0055】
積層チップインダクタ1は、本体部10と、本体部10の左右方向Xの両側面部分に設けられた外部電極20とを備えている。積層チップインダクタ1は、例えば、0603(0.6mm×0.3mm)、0806形状(0.8mm×0.6mm)、1608形状(1.6mm×0.8mm)、2520形状(2.5mm×2.0mm)等のサイズである。
【0056】
本体部10は、セラミック層(誘電体層)12と内部電極層14とが一体化された構造を有する。セラミック層12は、セラミック材料で構成されている。上下方向Yにおいて、セラミック層12の間には、内部電極層14が配置されている。内部電極層14は、上述の感光性組成物を用いて形成されている。セラミック層12を挟んで上下方向Yに隣り合う内部電極層14は、セラミック層12に設けられたビア16を通じて導通されている。このことにより、内部電極層14は、3次元的な渦巻き形状(螺旋状)に構成されている。内部電極層14の両端はそれぞれ外部電極20と接続されている。
【0057】
かかる積層チップインダクタ1は、例えば、以下の手順で製造することができる。先ず、原料となるセラミック材料とバインダ樹脂と有機溶剤とを含むペーストを調製し、これをキャリアシート上に供給して、セラミックグリーンシートを形成する。次いで、このセラミックグリーンシートを圧延後、所望のサイズにカットして、複数のセラミック層形成用グリーンシートを得る。次いで、複数のセラミック層形成用グリーンシートの所定の位置に、穿孔機等を用いて適宜ビアホールを形成する。
【0058】
次いで、上述の感光性組成物を用いて、複数のセラミック層形成用グリーンシートの所定の位置に、所定のコイルパターンの導電膜を形成する。一例として、以下の工程:(ステップS1:膜状体の成形工程)感光性組成物をセラミック層形成用グリーンシート上に付与して乾燥することにより、感光性組成物の乾燥体からなる導電膜を成形する工程;(ステップS2:露光工程)導電膜に所定の開口パターンのフォトマスクを被せ、フォトマスクを介して露光して、導電膜を部分的に光硬化させる工程;(ステップS3:現像工程)光硬化後の導電膜をエッチングして、未露光部分を除去する工程;を包含する製造方法によって、未焼成の状態の導電膜を形成することができる。
【0059】
なお、上記感光性組成物を用いて導電膜を成形するにあたっては、従来公知の手法を適宜用いることができる。例えば、(ステップS1)において、感光性組成物の付与は、スクリーン印刷等の各種印刷法や、バーコータ等を用いて行うことができる。感光性組成物の乾燥は、光重合性化合物および光重合開始剤の沸点以下の温度、典型的には50~100℃で行うとよい。(ステップS2)において、露光には、例えば10~500nmの波長範囲の光線を発する露光機、例えば高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の紫外線照射灯を用いることができる。(ステップS3)において、エッチングには、典型的には、アルカリ性の水系現像液を用いることができる。例えば、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム等を含む水溶液を用いることができる。アルカリ性の水溶液の濃度は、例えば、0.01~0.5重量%に調整するとよい。
【0060】
次いで、(ステップS4:焼成工程)未焼成の状態の導電膜が形成されているセラミック層形成用グリーンシートを複数枚積層し、圧着する。このことによって、未焼成のセラミックグリーンシートの積層体を作製する。そして、かかる積層体を所望のチップサイズに切断する。次いで、チップサイズに切断した積層体を、例えば600~950℃で焼成する。これによって、セラミックグリーンシートが一体的に焼結され、セラミック層12と、感光性組成物の焼成体からなる内部電極層14とを備えた本体部10が形成される。そして、本体部10の両端部に適当な外部電極形成用ペーストを付与し、焼成することによって、外部電極20を形成する。以上のようにして、積層チップインダクタ1を製造することができる。
【0061】
また、ここで開示される感光性組成物は、例えば感光性ガラス組成物と組み合わせて電極を形成、さらには電子材料を製造することに用いることができる。ここで、図2は、かかる感光性組成物と感光性ガラス組成物を組み合わせて形成した電極を備えた積層チップインダクタの製造について説明するための説明図である。以下、かかる積層チップインダクタの製造方法の一例について説明する。
【0062】
先ず、セラミック材料とバインダ樹脂と有機溶剤とを含むペーストを調製し、これをキャリアシート上に供給して、セラミックグリーンシートを形成する。
【0063】
次いで、上述した感光性組成物を用いて、グリーンシートの所定の位置に、所定のコイルパターンの硬化膜を形成する。一例として、以下の工程:感光性ガラス組成物を基材としてのグリーンシート上に付与(印刷)して乾燥することにより、感光性ガラス組成物の乾燥体であるガラス膜状体を成形する第1成形工程;ガラス膜状体に所定のパターンを有したフォトマスクを被せ、開口部から露出したガラス膜状体の一部を露光し、ガラス膜状体の一部をガラス硬化膜とする第1露光工程;現像液を用いて未硬化のガラス膜状体を除去し、基材上に所定の溝部を有するガラス硬化膜を形成する第1現像工程;感光性組成物を形成されたガラス硬化膜の溝部に付与(印刷)して乾燥することにより、ガラス膜状体の溝部に、感光性組成物の乾燥体である導電膜状体を成形する第2成形工程;導電膜状体に所定のパターンを有したフォトマスクを被せ、開口部から露出した導電膜状体の一部を露光し、導電膜状体の一部を導電硬化膜とする第2露光工程;現像液を用いて未硬化の導電膜状体を除去する第2現像工程;を包含する。これによって、基材の表面に、未焼成の状態のガラス硬化膜と該ガラス硬化膜の溝部に導電硬化膜とを形成することができる。
【0064】
ここで、感光性ガラス組成物は、特に限定されず、電子部品を製造する際に用いられ得る従来公知の感光性ガラス組成物を特に限定することなく用いることができる。例えば、感光性組成物は、ガラス粉末と、光重合性化合物と、光重合開始材と、有機系分散媒と、を含むペースト状の組成物であってもよい。ガラス粉末としては、この種の感光性ガラス組成物に使用され得るものを、特に制限なく用いることができる。また、光重合性化合物、光重合開始剤および有機系分散媒としては、上記した感光性組成物と同種のものを特に制限することなく使用することができるため、詳細な説明は省略する。なお、感光性ガラス組成物は、上記した成分以外の添加成分を含有していてもよい。このような添加成分は、特に限定されず、重合禁止剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、ゲル化防止剤、安定化剤、防腐剤等が挙げられる。
【0065】
また、上記感光性ガラス組成物および感光性組成物を用いてガラス硬化膜および導電硬化膜を形成するにあたっては、従来公知の手法を適宜用いることができる。例えば、第1形成工程および第2形成工程において、感光性ガラス組成物および感光性組成物の付与は、スクリーン印刷等の各種印刷法や、バーコータ等を用いて行うことができる。これら組成物の乾燥は、典型的には40~100℃で行うとよい。
【0066】
次いで第1露光工程および第2露光工程は、所定パターンのスリットを有したフォトマスクをガラス膜状体の上に被せ、スリットから露出したガラス膜状体(または導電膜状体)の一部を露光することによって実施される。この露光処理では、例えば10nm~500nmの波長範囲の光線(典型的には紫外線)を発する露光機、例えば高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の紫外線照射灯を用いることができる。露光機の露光量は、例えば100mJ/cm~3000mJ/cmの条件に設定することができる。
【0067】
そして、第1現像工程および第2現像工程において、現像液には、アルカリ性の水系現像液などを使用できる。かかる水系現像液の一例として、水酸化ナトリウム水溶液や炭酸ナトリウム水溶液などを使用できる。なお、これら現像液のアルカリ濃度は、例えば、0.01~0.5重量%に調整するとよい。
【0068】
図2は、焼成前の積層体100を模式的に示す図である。図2に示すように、上記した第1形成工程~第2現像工程までを繰り返し実施することにより、セラミック基材50上に、精密な溝部を有するガラス硬化膜21と、当該溝部に形成された導電硬化膜22とを備えた複数の層(図2では、第1層L1~第4層L4)を備えた積層体100を作製することができる。また、この積層体100は、第1層L1~第4層L4の各層の導電硬化膜22がビア26を介して接続される。なお、ビア26は、例えば導穿孔機などを用いて、第1層L1の上面をなすガラス硬化膜21にビアホールを形成し、導電硬化膜22の一部の上面を露出させ、当該ビアホールに感光性組成物を充填した後に乾燥と露光を行うことによって形成することができる。
【0069】
上記積層体100に外部電極形成用のペーストを付与した後で、焼成処理を実施することによって、精密な導電層24を有した積層チップインダクタが製造される。なお、焼成温度(焼成処理における最高温度)は、例えば600~950℃程度が好ましい。かかる積層チップインダクタの製造では、ガラス硬化膜21の形成に上記構成の感光性ガラス組成物を用いているため、矩形性の高い精密なパターニングが可能である。当該ガラス硬化膜21に感光性組成物を付与して導電硬化膜22を形成することにより、微細なパターンを有する導電硬化膜22を形成することができる。そして、これらを焼成することにより、L/Sが30μm/30μm以下の微細なパターンを有する電子部品を精度よく製造することができる。すなわち、かかる製造方法によれば、微細なパターンを有する電子部品であっても、上記した現像工程において膜状体の露光部分が除去されてしまうアンダーカットを抑制し、信頼性の高い電子部品を製造することができる。さらに、かかる積層チップインダクタの製造では、焼成する過程において導体硬化膜の焼成体である電極層とガラス硬化膜の焼成体である誘電体層の密度は非常に重要であり、ここで開示される技術の効果がより発揮される。
【0070】
以下、ここで開示されるに関する試験例について説明するが、本開示をかかる試験例に限定することを意図したものではない。
【0071】
[試験例]
以下の試験例では、例1~18の18種類の感光性組成物を調製し、各々の感光性組成物の焼成体である導体膜の評価を行った。なお、後述する解像性の評価では、未焼成の状態の導電膜を使用して評価している。
【0072】
<各例に係る感光性組成物の調製>
(例1に係る感光性組成物)
先ず、導電性粒子としての銀粒子(平均粒子径(D50粒子径):2μm)を用意した。また、光重合化合物としての市販の反応性ポリマー(ウレタン,重量平均分子量:9000)および反応性オリゴマー(ウレタン,重量平均分子量:2000)と、バインダ樹脂としての市販のセルロース系水溶性樹脂およびアクリル系水溶性樹脂と、を用意した。また、シリコーン樹脂としての市販のポリジメチルシロキサン(重量平均分子量:50000)を用意した。光重合開始剤としての市販の2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノンと、2,4-ジエチルチオキサントンと、を重量平均分子量が300となるように混合したものを用意した。そして、上記用意した銀粒子と、光重合性化合物と、バインダ樹脂と、シリコーン樹脂と、光重合開始剤と、を、溶剤としての市販のジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートとジヒドロターピネオールとの混合溶媒に分散させることで、例1に係る感光性組成物を調製した。なお、各材料の配合割合(重量%)は、表1に示すとおりとした。また、感光性組成物の粘度は、25℃-100rpm(Brookfield HB型粘度計,スピンドル:SC-4-14,スモールカップ使用,測定温度25℃の条件で測定)における粘度が20~70Pa・s程度であった。
【0073】
(例2~7,15に係る感光性組成物)
シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン)の配合量を表1のとおりとしたこと以外は例1に係る感光性組成物と同様にして、例2~7,15に係る感光性組成物を調製した。
【0074】
(例8~10に係る感光性組成物)
シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン)の重量平均分子量を表1のとおりとしたこと以外は例4に係る感光性組成物と同様にして、例8~10に係る感光性組成物を調製した。
【0075】
(例11,12,16,17に係る感光性組成物)
シリコーン樹脂の種類を表1のとおりとしたこと以外は例1に係る感光性組成物と同様にして、例11,12,16,17に係る感光性組成物を調製した。なお、表1中の側鎖脂肪酸変性ポリシロキサンとは、上記式(I)のR,R,R,R,Rがメチル基、Rが脂肪酸であるポリシロキサンを意味し、側鎖アミン変性ポリシロキサンとは、上記式(I)のR,R,R,R,Rがメチル基、Rがアミンであるポリシロキサンを意味するものとする。これらは市販のものを用いた。
【0076】
(例13に係る感光性組成物)
シリコーン樹脂の代わりにシランカップリング剤(トリメトキシメチルシラン)を添加したこと以外は例4に係る感光性組成物と同様にして、例13に係る感光性組成物を調製した。
【0077】
(例14に係る感光性組成物)
シリコーン樹脂を添加しなかったこと以外は例1に係る感光性組成物と同様にして、例14に係る感光性組成物を調製した。
【0078】
(例18に係る感光性組成物)
シリコーン樹脂の代わりにシリカ(SiO)を添加したこと以外は例4に係る感光性組成物と同様にして、例18に係る感光性組成物を調製した。
【0079】
(評価試験)
本評価試験では、各例に係る感光性組成物を用いて、解像性の評価、収縮率の評価、および抵抗値の評価を行った。以下、各評価の手順について説明する。
【0080】
(1)解像性の評価
先ず、スクリーン印刷を用いて、感光性組成物(例1~18)を市販のホウケイ酸ガラス、アルミナからなるセラミックグリーンシート上に4cm×4cmの大きさで塗布した(印刷工程)。次に、これを60℃で15分間乾燥させて、グリーンシート上に膜状体(ベタ膜)を成形した(成形工程)。次に、所定のパターンの開口部を有するフォトマスクを膜状体の上に被せた後に、露光機により、照度50mW/cm、露光量300mJ/cmの条件で光を照射し、露光部分を硬化させた(露光工程)。このとき、フォトマスクに形成された開口部のパターンは、線状の開口部が所定の間隔を空けて平行に形成されたものである。そして、この開口部の幅(硬化膜の幅)と、隣接する開口部の間隔の幅(硬化膜の間隔)との比L/S(ライン/スペース)が30μm/30μmに設定されたフォトマスクを使用した。
【0081】
次いで、セラミックグリーンシートの表面に、0.1重量%のアルカリ性のNaCO水溶液(現像液)を、ブレイクポイント(B.P.)の1.1倍の時間に到達するまで吹き付けた(現像工程)。なお、B.P.としては、0.1重量%のアルカリ性の現像液によって未露光の膜状体が除去され、目視で膜状体が除去されたと確認できるまでの時間とした。そして、未露光の膜状体が除去された後のセラミックグリーンシートを純水で洗浄し、室温で乾燥させた。これによって、L/S=30μm/30μm、膜厚8μmの配線パターンでセラミックグリーンシート上に硬化膜が形成された複合体を得た。
【0082】
現像工程後に形成された硬化膜の配線パターンの間隔を光学顕微鏡で合計20視野の目視観察を行った。そして、除去されなかった膜状体の一部が残留しているか否か(残渣の有無)を確認した。結果を表1の該当欄に示した。本評価における評価基準は下記の通りである。
「◎」:20視野中、残渣が全く確認されなかった。
「○」:1つの視野において残渣が確認された。
「△」:2つ以上4つ以下の視野において残渣が確認された。
「×」:5つ以上の視野において残渣が確認された。
【0083】
(2)円板収縮率の評価
先ず、PETフィルム上に各例に係る感光性組成物を塗布して、塗膜を形成した。かかる塗布は、150μmのギャップを有するアプリケータを用いて行った。その後、塗膜を150℃で1時間乾燥させた。次に、かかる乾燥後の塗膜をφ15mmの金型で打ち抜き、ディスク状の乾燥膜を得た。続いて、かかる乾燥膜を、セラミック製の板上で焼成した。かかる焼成の条件は、8時間で400℃まで昇温した後30分間保持し、室温(25℃程度,以下同様)まで減温し、800℃(あるいは、900℃)まで10℃/分で加温し、さらに30分間保持した後、室温まで減温した。そして、乾燥膜の焼成前後における直径の比を円板収縮率として算出した。結果を表1の該当欄に示した。表1では、800℃における円板収縮率をA(%)、900℃における円板収縮率をB(%)としている。本評価における評価基準は下記の通りである。
「◎」:円板収縮率の差:B-A(%)が0.5超であった。
「○」:円板収縮率の差:B-A(%)が-0.5以上0.5以下であった。
「×」:円板収縮率の差:B-A(%)が-0.5未満であった。
【0084】
(3)電気抵抗率の評価
先ず、アルミナ基板上に各例に係る感光性組成物を形成した。かかる銀導電膜の形成はスクリーン印刷によって行い、スクリーンパターンは幅:200μm×長さ:2cmとした。これを900℃(30分間保持)で焼成することにより銀ライン電極を形成した。続いて、各例に係る銀ライン電極について、それぞれ2端子測定法に基づいた直流抵抗を測定し、銀ライン電極の断面積および長さ寸法から電気抵抗率を算出した。かかる直流抵抗の測定には、デジタルマルチメータ(岩崎通信機株式会社製 SC-7401)を使用し、電極断面積の測定には、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製 VK-X1050)を使用した。結果を、表1の「電気抵抗率」の欄に示した。本評価における評価基準は下記の通りである。
「◎」:電気抵抗率が、2.5×10μΩcm以下であった。
「○」:電気抵抗率が、2.5×10μΩcm超3.0×10μΩcm未満であった。
「×」:電気抵抗率が、3.0×10μΩcm以上であった。
【0085】
なお、図3図7は、それぞれ例14,例3,例4,例6,および例8に係る900℃焼成時の電極表面を示すSEM画像(倍率:9000倍)である。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示すように、導電性粒子(ここでは、銀粒子)と、光重合性化合物と、シリコーン樹脂と、を含む感光性組成物であって、上記シリコーン樹脂は、上記式(I)で表され、かつ、上記シリコーン樹脂は、上記導電性粒子の全重量を100%としたとき、0.05%~1.0%含まれる、例1~12によると、シランカップリング剤を添加した例13、シリコーン樹脂を添加していない例14、上記式(I)以外のシリコーン樹脂(換言すると、光重合性化合物や有機バインダ等の樹脂と反応性の高いシリコーン樹脂)を添加した16,17、シリカを添加した例18、上記式(I)で表されるシリコーン樹脂を上記範囲外で添加した例15と比較して、高温焼成時(ここでは、800℃~900℃)における導体膜の反転膨張が好適に抑制され、かつ、導体膜の低抵抗化が好適に実現されることが確認された。また、図3図7からわかるように、シリコーン樹脂を添加していない例14では銀粒子の焼結が十分に進行しておらず空隙が大きいのに対して、例3,例4,例6,および例8では銀粒子の焼結、粒成長が進行し、導体膜の導電性が高くなる(即ち、低抵抗化する)。
【0088】
また、例1~例7の結果からわかるように、上記導電性粒子の全重量を100%としたとき、上記シリコーン樹脂が0.15%~0.6%含まれる場合、高温焼成時における導体膜の反転膨張の抑制および導体膜の低抵抗化をより好適に実現することができる。そして、例8~例10の結果からわかるように、高温焼成時における導体膜の反転膨張の抑制および導体膜の低抵抗化に加えて、解像度をより好適に向上させるという観点から、上記シリコーン樹脂の重量平均分子量は1000~10000である場合がより好ましいといえる。
【0089】
以上、本開示の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0090】
以上のとおり、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項(item)に記載のものが挙げられる。
項1:導電性粒子と、光重合性化合物と、シリコーン樹脂と、を含む感光性組成物であって、上記シリコーン樹脂は、下記式(I):
【化4】
(式I中のR~Rは互いに独立し、それぞれ、アルキル基、フェニル基、ポリエーテル基、アラルキル基、フロロアルキル基、脂肪酸エステル基、または脂肪酸アミド基が挿入された基を表す。また、m、nは互いに独立した0以上の整数を表す。)
で表され、上記シリコーン樹脂は、上記導電性粒子の全重量を100%としたとき、0.05%~1.0%含まれる、感光性組成物。
項2:上記シリコーン樹脂は、ポリジメチルシロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、および側鎖ポリエーテル変性ポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、項1に記載の感光性組成物。
項3:上記シリコーン樹脂の重量平均分子量は、1000~10万である、項1または項2に記載の感光性組成物。
項4:上記導電性粒子の平均粒子径は、1μm~5μmである、項1~項3のいずれか一つに記載の感光性組成物。
項5:上記導電性粒子の、JIS Z 8781に基づくL*a*b表色系の明度L*は50以上である、項1~項4のいずれか一つに記載の感光性組成物。
項6:上記感光性組成物は、セラミックグリーンシート上に電極を形成するために用いられる、項1~項5のいずれか一つに記載の感光性組成物。
項7:上記感光性組成物は、線幅30μm以下の細線の形成に用いられる、項1~項6のいずれか一つに記載の感光性組成物。
項8:項1~項7のいずれか一つに記載の感光性組成物の焼成体からなる、導体膜。
項9:項1~項7のいずれか一つに記載の感光性組成物の焼成体からなる導体膜を備えた、電子材料。
【符号の説明】
【0091】
1 積層チップインダクタ
10 本体部
12 セラミック層
14 内部電極層
16 ビア
20 外部電極
21 ガラス硬化膜
22 導電硬化膜
26 ビア
50 セラミック基材
100 積層体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7