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特許7607075近接センサシステムのコントローラ、車両、設定方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】近接センサシステムのコントローラ、車両、設定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/14 20200101AFI20241219BHJP
【FI】
B60W50/14
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023080849
(22)【出願日】2023-05-16
(62)【分割の表示】P 2020503852の分割
【原出願日】2018-07-11
(65)【公開番号】P2023116455
(43)【公開日】2023-08-22
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】1712004.9
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512308720
【氏名又は名称】ジャガー ランド ローバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jaguar Land Rover Limited
【住所又は居所原語表記】Abbey Road Whitley Coventry CV3 4LF UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】イリアス・アイティディス
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-511755(JP,A)
【文献】特開平5-54297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラであって、
車両の軌道を示す1つ以上のパラメータを含む軌道パラメータ信号を受信する入力手段を含み、
前記軌道は、前記車両が占めると予測されるエリアを反映する平行な轍の間のエリアであり、
コントローラはまた、
前記1つ以上のパラメータに依存して、警報ゾーン境界の前記軌道からの距離を設定するように構成された処理手段を含み、
前記警報ゾーン境界は前記車両が占めると予測される前記エリアの端の外に位置し、前記軌道に平行であり、
前記警報ゾーン境界は、衝突する危険がない物体までの軌道からの最小距離として、前記処理手段において設定された前記距離に対応し、前記最小距離以下の距離内で物体が検出されると警報が起動し、
前記処理手段は、1つ以上のパラメータによって示される軌道調節の少なくとも1つの範囲について前記距離を継続的に調節するよう構成され、
前記処理手段は、
前記車両の軌道を示す1つ以上のパラメータが、減少した曲率半径の軌道を示す場合、方向変更の外側にある車両側部、および
前記車両の軌道を示す1つ以上のパラメータが、減少した曲率半径の軌道を示す場合、方向変更の内側にある車両側部、
のうちの少なくとも1つにおいて、前記距離を増大させるように構成される、
コントローラ。
【請求項2】
前記警報ゾーン境界内の物体の検出された位置に関連する前記軌道上のポイントから所定の距離の位置まで前記軌道に沿って前記車両が到達したという判断に従って警報信号を出力するように構成された出力手段を含む、請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記処理手段は、前記警報ゾーン境界の前記距離を決定するように構成され、少なくとも2つの異なる車両の軌道に関して異なる距離が決定される、請求項1または2に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記処理手段は、前記軌道の曲率半径に従って前記距離を決定するように構成される、請求項1-3のいずれか1つに記載のコントローラ。
【請求項5】
前記車両の軌道を示す前記1つ以上のパラメータは、車両軌道制御手段の動作状態を示す1つのパラメータ又は複数のパラメータを含む、請求項1-4のいずれか1つに記載のコントローラ。
【請求項6】
前記処理手段は、前記車両の軌道の変化率に従って前記警報ゾーン境界の前記距離を設定するように構成される、請求項1-5のいずれか1つに記載のコントローラ。
【請求項7】
前記処理手段は、前記車両の軌道を示す1つ以上のパラメータが、特定の所定の軌道からの逸脱の増大、および方向変更の曲率半径の減少、のうちの少なくとも1つを示す場合、少なくとも前記車両の一部について前記距離を増大させるように構成される、請求項1-6のいずれか1つに記載のコントローラ。
【請求項8】
前記処理手段は、前記車両の軌道を示す所与の1つのパラメータ又は複数のパラメータについて車両周りの異なる場所において異なる距離を決定するように構成される、請求項1-7のいずれか1つに記載のコントローラ。
【請求項9】
前記処理手段は、基準距離に対して前記距離を決定するように構成される、請求項1-8のいずれか1つに記載のコントローラ。
【請求項10】
前記処理手段は、前記1つ以上のパラメータによって示される軌道調節の少なくとも1つの範囲について前記距離を継続的に調節するように構成される、請求項1-9のいずれか1つに記載のコントローラ。
【請求項11】
近接センサ手段、及び請求項1-10のいずれか1つに記載のコントローラを含む、システム。
【請求項12】
請求項1-10のいずれか1つに記載のコントローラ、又は請求項11に記載のシステムを含む、車両。
【請求項13】
車両の軌道からの警報ゾーン境界の距離を、前記車両に取り付けられたコントローラを使用して設定する方法であって、
コントローラは、
前記車両の軌道を示す1つ以上のパラメータを含む軌道パラメータ信号を受け、
前記軌道は、前記車両が占めると予測されるエリアを反映する平行な轍の間のエリアであり、
コントローラはまた、
前記1つ以上のパラメータにしたがって軌道からの警報ゾーン境界の距離を設定し、
前記警報ゾーン境界は前記車両が占めると予測される前記エリアの端の外に位置し、前記軌道に平行であり、
前記警報ゾーン境界は、衝突する危険がない物体までの軌道からの最小距離として、設定された前記距離に対応し、前記最小距離以下の距離内で物体が検出されると警報が起動し、
コントローラはまた、
1つ以上のパラメータによって示される軌道調節の少なくとも1つの範囲について前記距離を継続的に調節し、
前記車両の軌道を示す1つ以上のパラメータが、減少した曲率半径の軌道を示す場合、方向変更の外側にある車両側部、および
前記車両の軌道を示す1つ以上のパラメータが、減少した曲率半径の軌道を示す場合、方向変更の内側にある車両側部、
のうちの少なくとも1つにおいて、前記距離を増大させるように構成される、
方法。
【請求項14】
プロセッサによって実行されると、請求項13に記載の方法を実施させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、近接センサシステム及びその制御に関する。本願発明の態様は、添付の特許請求の範囲でクレームされるとおり、コントローラ、システム、車両、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の近接センサシステム(駐車補助システムなど)のいくつかは、操舵角度に基づいて車両の軌道を判断し、障害物が軌道から閾値距離内にあると判断された場合、使用者に警報を出力する。閾値距離によって提供されるマージンにより、検知の不正確さ、及び/又は「死角」により起こり得る警報の不発や遅れの問題を軽減できるかもしれない。死角は、例えば近接センサが配置されない車両側部に存在し得る。
【0003】
しかし、そのようなシステムでは、衝突発生前の警報発信の失敗や警報発信の遅れの可能性が残る。特に、車両が方向転換(turn)している場合に軌道判断の正確度が損なわれ得る。とりわけ車両が方向転換している場合に、物体の検出、及び/又はその存在が警報を必要とすることのタイムリーな判断が損なわれ得る。例えば、後退や方向転換操作中、前方側のセンサによって検出された方向転換の外側の物体は、方向転換する車両の軌道に基づく閾値距離の外であると判断され得る。それでも物体は前方側のセンサによって感知可能な範囲を超えてずっと後方の距離まで延びているかもしれない。そして、軌道が調整されない場合、軌道と物体とは実際に衝突するために十分なほど物体は延びているかもしれない。
【0004】
たとえ軌道判断の正確度が著しく向上することが可能で、物体の検出及び警報発信の判断が著しく向上することが可能であったとしても、車両の使用者はシステムに(完全に、又は部分的に)頼りきれないと感じ得る。例えば、使用者はシステムの正確度及び誤り得ること(fallibility)に不安を抱く。使用者の信頼度は、特定の操作中(例えば方向転換)にさらに下がり得て、そのような状況では車両の軌道や車幅を予測する自身の能力が下がることが少なからずその原因となる。先行技術の1つ又はそれ以上の問題を少なくとも軽減することが本願発明の実施形態の目的である。
【発明の概要】
【0005】
本願発明の実施形態の態様は、添付の特許請求の範囲でクレームされるとおり、コントローラ、システム、車両、及び方法を提供する。
【0006】
本願発明の一態様によれば、コントローラが提供され、コントローラは、
1つ以上のパラメータに依存して、警報ゾーン(alert zone)の境界の軌道からの距離を設定するよう構成された処理手段を含み、
使用されると、警報ゾーンの境界は軌道からの最小距離を決定し、最小距離以下では検出された物体が警報を起動させる。
【0007】
本願発明の一態様によれば、コントローラが提供され、コントローラは、
車両の軌道を示す1つ以上のパラメータを含む軌道パラメータ信号を受信する入力手段と、
1つ以上のパラメータに依存して、警報ゾーンの境界の軌道からの距離を設定するよう構成された処理手段を含み、
使用されると、警報ゾーンの境界は軌道からの最小距離を決定し、最小距離以下では検出された物体が警報を起動させる。
【0008】
明らかにされるとおり、コントローラは、処理手段によって判断された距離に従って距離判断信号を出力するための出力手段を有してもよい。この距離判断信号は、次に軌道データ及び別のコントローラによる車両近傍の物体を示す近接センサデータと組み合わせて、選択的に物体に関する警報を車両の使用者に発信してもよい。代わりに、コントローラ自身が近接センサデータ入力を有してもよく、選択的に車両の使用者に警報信号出力を介して警報を発信してもよく、警報は受信された近接センサデータ、軌道を示すパラメータ、及び判断された距離に従って発信される。
【0009】
さらに、明らかにされるとおり、軌道パラメータ信号は、別の処理手段、又は車両軌道の判断に必須の1つ以上のパラメータによって計算された車両の軌道を含んでもよい。後者の場合、処理手段は、軌道パラメータ信号に含まれるパラメータに従って車両の軌道を計算してこの軌道に基づいて距離を決定してもよく、又は軌道パラメータ信号に含まれるパラメータに従って距離を計算してもよい。
【0010】
車両がたどる軌道(感知されたデータに基づいて処理手段によって計算されたものであれ、使用者によって判断されたものであれ)の信頼性は、その軌道の性質に依存して様々であり得る。例として、処理手段及び/又は使用者は、直線上を、及び/又は使用者が見ている方向へ走行している車両の軌道をより正確に判断できるかもしれない。しかし、車両が曲線上を、及び/又は使用者が見ている方向からある角度を有して走行している場合、使用者の心中の、及び/又は処理手段の計算に従う車両軌道の判断は、より大きな不確定要素を含み得る。したがって、検出された物体が警報を起動させる軌道からの距離を、車両が載っているようにみえる特定の軌道とリンクさせることにより、使用者の信頼度が増大し得る。さらに、衝突、及び/又は警報の誤発信の発生の可能性が減少し得る。
【0011】
いくつかの実施形態において、軌道とは車両が占めると予測されるエリアを反映する平行な轍(tracks)の間のエリアである。警報ゾーン境界は車両が占めると予測されるエリアの端の外に位置してもよい。警報ゾーン境界は軌道と平行でもよい。特に、いかなる瞬間も警報ゾーン境界は軌道と平行でもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、コントローラは、近接センサシステムのコントローラである。
【0013】
いくつかの実施形態において、コントローラは、警報ゾーン境界内の物体の検出された位置に関連する軌道上のポイントから所定の距離の位置まで軌道に沿って車両が到達したという判断に従って警報信号を出力するよう構成された出力手段を含む。この方法によれば、警報が発生するか否かは、車両の見掛けの軌道自体、その判断された軌道からの警報ゾーン境界の距離、及び車両からの物体の距離に依存し得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、軌道上のポイントは、軌道と直交し、且つ物体を通る架空の線上にある。
【0015】
いくつかの実施形態において、処理手段は、警報ゾーン境界内の全ての検出された物体に対して同様に、物体の所与の検出された位置に関連する軌道上のポイントを判断するよう構成される。例えば、軌道上のポイントは軌道と直交し、物体を通過する線上に提供されるかもしれない。
【0016】
いくつかの実施形態において、処理手段は、警報ゾーン境界の距離を決定するよう構成され、少なくとも2つの異なる車両軌道に関して異なる距離が決定される。
【0017】
いくつかの実施形態において、処理手段は、軌道の曲率半径に従って距離を決定するよう構成される。
【0018】
いくつかの実施形態において、車両の軌道を示す1つ以上のパラメータは、又は車両軌道制御手段の動作状態を示す1つのパラメータ又は複数のパラメータを含む。車両軌道制御手段は、適切なあらゆる制御インターフェースであり得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、車両軌道制御手段は、操舵ハンドルを含む。加えて、又は代わりに、車両の軌道を示す1つ以上のパラメータは、他の車両軌道を判断する要素(例えば、1つ以上の操舵可能車輪又は1つ以上の車両の連続した轍の操作)の構成を示す1つのパラメータ又は複数のパラメータを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、車両の軌道を示す1つ以上のパラメータは、例えば車両のギヤ選択(例えば、前進又は後退)、テレインタイプ、及び/又は状態、及び/又は車両の速度、重量、ヨー(yaw)、ピッチ、及び/又はロールなどの他のファクタを示す1つのパラメータ又は複数のパラメータを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、処理手段は、車両軌道の変化率に従って警報ゾーン境界の距離を設定するよう構成される。
【0022】
いくつかの実施形態において、処理手段は、車両の軌道を示す1つ以上のパラメータが特定の所定の軌道からの逸脱の増加を示す場合、少なくとも車両の一部について距離を増大させるよう構成される。車両の軌道が特定の所定の軌道からさらに逸脱するにつれて、実際の軌道に関する不確かさ(計算されたものであれ、使用者による判断であれ)が増大し得る。したがって、物体が、車両の少なくとも一部と衝突する危険が高いとみなされる警報を起動させる見掛けの軌道からの距離を増大させることが適切かもしれない。例えば、直線軌道からの逸脱は、不確かさを増大させ得る。たとえ直線軌道であったとしても、その軌道が車両の運転者が慣習的に見る方向の直線軌道と異なる場合は、不確かさを増大させ得る。そのような直線軌道は、例えば四輪又は全輪操舵が車両の前後の主軸と角度を有する直線上を車両に走行させる場合に発生する。
【0023】
いくつかの実施形態において、所定の軌道は、直線軌道及び/又は車両の運転者が慣習的に見る方向の直線軌道である。
【0024】
いくつかの実施形態において、処理手段は、車両の軌道を示す1つ以上のパラメータが方向転換の曲率半径の減少を示す場合、車両の少なくとも一部について距離を増大させるよう構成される。これは、方向転換の曲率半径の減少が軌道に関する不確かさを増大させる結果となる場合に有利であり得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、処理手段は、車両の軌道を示す所与の1つのパラメータ又は複数のパラメータについて車両周りの異なる場所において異なる距離を決定するよう構成される。これは、軌道の調節が、車両の異なる部分の衝突の危険性を異なる量だけ変える場合に有利であり得る。これは、車両周りの異なるポイントにおいて、現状の特定の軌道に従う衝突の危険性の度合いによって、異なるポイントごとに距離を適合させることを可能とするかもしれない。これは、車両の危険性が高い部分の保護を増大させること、及び/又はその他のエリアにおいて誤報の発生を減少させることを可能とするかもしれない。
【0026】
いくつかの実施形態において、処理手段は、車両の軌道を示す1つ以上のパラメータが減少した曲率半径の軌道を示す場合、方向転換の外側にある車両側部の距離を増大させるよう構成される。方向転換の外側にある車両の一部は、曲率半径が低減される結果、衝突の危険が増大し得る。これは、そうでなかった場合よりも車両からより離れた物体でも、方向転換の外側と交差するからかもしれない。さらに、方向転換率(rate of turn)が大きくなると軌道の判断の正確度が下がるかもしれない。したがって、車両のこちら側の距離を増大させることにより衝突の危険が減少するかもしれない。
【0027】
いくつかの実施形態において、処理手段は、車両の軌道を示す1つ以上のパラメータが減少した曲率半径の軌道を示すとき、方向転換の内側にある車両側部の距離を増大させるよう構成される。方向転換の曲率半径が減少すると、方向転換の外側にある車両側部の方が内側よりも衝突の危険が増大し得るが、内側も衝突の危険が増大し得る。したがって、車両のこちら側の距離を増大させることにより衝突の危険を低減できるかもしれない。
【0028】
いくつかの実施形態において、方向転換の外側にある車両側部の距離の増加が、方向転換の内側にある車両側部の距離の増加よりも大きい。この差により、方向転換の半径の減少に伴う車両の異なる側部の相対的な衝突の危険性をよりよく反映することが可能になり得る。この方法によれば、衝突の危険性及び誤報の危険性は、所与の方向転換の性質に合わせて車両の特定の側それぞれに適合させ得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、処理手段は、基準距離(nominal distance)に対して距離を決定するよう構成される。
【0030】
いくつかの実施形態において、基準距離は、車両の両側で等しい。これは、軌道変更の選択肢(options)及び範囲(extents)が車両の両側で等しい場合に適切であり得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、処理手段は、それが1つ以上のパラメータによって示される軌道調節に従って行う距離調節が、1つ以上のパラメータによって示される、等しく且つ反対方向への軌道調節に従って逆行されるように構成される。この方法によれば、車両の特定の軌道に応じて、一貫した距離が処理手段によって生成され得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、処理手段は、1つ以上のパラメータによって示される軌道調節の少なくとも1つの範囲について距離を継続的に調節するよう構成される。したがって、軌道の範囲は、対応する固有の距離判断の範囲に関連してもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、車両は陸用車両である。車両は例えば、二輪車、乗用車、バン、ローリー、HGV(重量積載物車両)、バス、又は農業、建設、もしくは軍事などの特定のセクターで使用される車両でもよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、入力手段は、電気入力を含み、処理手段は、電子プロセッサを含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、出力手段は電気出力を含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、物体は近接センサ手段によって検出される。近接センサ手段は、1つ以上の近接センサを含んでもよい。センサは、例えば、超音波、レーダー、赤外線、及び/又は光学でもよい。
【0037】
本願発明の別の態様によれば、既述の態様による近接センサ手段及びコントローラを含むシステムが提供される。
【0038】
いくつかの実施形態において、システムは、車両軌道を示す1つ以上のパラメータを感知するよう構成された1つ以上のパラメータセンサを含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、システムは、1つ以上の車両運転者警報インターフェースを含む。警報インターフェースは、任意の適切な手段(例えば、聴覚、視覚又は触覚)で警報を伝達するよう構成され得る。
【0040】
本願発明のさらなる態様によれば、既述のコントローラ態様によるコントローラ又は既述のシステム態様によるシステムを含む車両が提供される。
【0041】
本願発明のさらなる態様によれば、車両軌道からの警報ゾーン境界の距離を設定する方法が提供され、方法は、
車両軌道を示す1つ以上のパラメータを含む軌道パラメータ信号を受けるステップと、
1つ以上のパラメータにしたがって軌道からの警報ゾーン境界の距離を設定するステップを含み、使用されると、警報ゾーンの境界は軌道からの最小距離を決定し、最小距離以下では検出された物体が警報を起動させる。
【0042】
いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも2つの異なる車両軌道について異なる距離が決定されるように警報ゾーン境界の距離を決定するステップを含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、方法は、軌道の曲率半径にしたがって距離を決定するステップを含む。いくつかの実施形態において、方法は、車両軌道を示す所与の1つのパラメータ又は複数のパラメータについて、車両周りの異なる場所において異なる距離を決定するステップを含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、方法は、車両の軌道を示す1つ以上のパラメータが、減少した曲率半径の軌道を示す場合、方向転換の外側の車両側部において距離を増大させるステップを含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、方法は、車両の軌道を示す1つ以上のパラメータが、減少した曲率半径の軌道を示すとき、方向転換の内側の車両側部において距離を増大させるステップを含む。
【0046】
本願発明のさらなる態様によれば、プロセッサによって実行されると、上述の方法を実施させるコンピュータプログラムが提供される。
【0047】
本願発明のさらなる態様によれば、プロセッサによって実行されると、上述の方法を実施させるコンピュータ可読の命令を含む非一時的なコンピュータ可読の記憶媒体が提供される。
【0048】
本願発明のさらなる態様によれば、プロセッサによって実行されると、上述の方法を実施させるコンピュータ可読の命令を含む信号が提供される。
【0049】
本件特許出願の範囲において上記の段落、請求項、及び/又は下記の説明及び図面に示す種々の態様、実施形態、例、及び代替案、そして特にそれらの個々の特徴は、独自に又は任意の組み合わせで解釈され得ることが明白に意図されている。すなわち、全ての実施形態、及び/又はいずれかの実施形態の特徴は、その特徴が非互換性ではない限り、あらゆる方法、及び/又は組み合わせで結合可能である。出願人は最初に提出した任意の請求項の変更又は任意の新規請求項の提出の権利をも保有し、最初に提出した任意の請求項も変更し、最初にそのように請求されていなくても、任意の他の請求項の任意の特徴にも従属、及び/又は組み込ませる権利も含む。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本願発明の1つ以上の実施形態が、添付の図面を例示のみの目的で参照して説明される。
【0051】
図1図1は、本願発明の一実施形態に係る近接センサシステムの模式図である。
図2a図2aは、車両と直線軌道を示す。
図2b図2bは、車両と曲線軌道を示し、前方左側の近接センサ及び後方右側の近接センサの警報ゾーンの投影も同時に示す。
図3図3は、車両の片方にある物体に近接して、後退及び方向転換操作している車両を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1を参照して、近接センサシステムは、概して符号10で示される。この場合、近接センサシステムは、車両、具体的には乗用車に取り付けられる。しかしシステムが他のタイプの車両にも展開可能であることは明らかである。
【0053】
近接センサシステム10は、近接センサシステムコントローラ12を含む。コントローラ12は、プロセッサ(図示せず)、及びプロセッサが通信するメモリ(図示せず)を含む。メモリは、プロセッサによって読み込まれると、ここに記述される方法を実施させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムを記憶する。コンピュータプログラムは、ソフトウェアもしくはファームウェア(firmware)、又はソフトウェアとファームウェアの組み合わせでもよい。
【0054】
システム10はさらに、近接センサのアレイ、すなわち前方14aおよび後方14bの左側センサ、前方16aおよび後方16bの右側センサ、を含む。図1の実施形態において、近接センサは超音波センサであるが、他の実施形態においては、代わりの及び/又は追加のタイプのセンサが使用可能である(例えばレーダー、赤外線、又は光学)。他の実施形態において追加のセンサが提供されるが、本実施形態ではセンサ14a、14b、16a、16bのみが提供され、説明の簡略化のためであることは明らかである。図1の実施形態において、各近接センサは、対応する近接センサデータをコントローラ12のそれぞれの入力18へ出力する。近接センサデータは、関連する近接センサが検出する任意の物体の近接度を示す。近接センサデータは、プロセッサによる回収および使用のためにメモリに記憶される。
【0055】
システム10はまた、車両の軌道を示すパラメータ(この場合は、車両の操舵ハンドルの回転状態)を測定するよう構成されたパラメータセンサ(この場合は、操舵ハンドルセンサ20)を有する。操舵ハンドルセンサ20は軌道パラメータ信号(この場合は、操舵ハンドル回転データ信号)をコントローラ12の入力22へ出力する。操舵ハンドルデータは、操舵ハンドルの制御に従って随時に要求されるとおり、1つ以上の車両車輪の角度を示す。操舵ハンドル回転データは、プロセッサによる回収および使用のためにメモリに記憶される。明らかにされるとおり、車両軌道を示す代わりのパラメータを測定する異なるパラメータセンサによって、追加の及び/又は代わりの軌道パラメータ信号は生成され得て、コントローラ12に入力され得る。
【0056】
システム10はさらに、車両運転者警報インターフェース(この場合は、スピーカ24)を含む。スピーカ24は、コントローラ12の警報信号出力26を介してプロセッサによって選択的に送信される警報信号によって駆動される。
【0057】
システム10の機能が、図2a、2b、および3をさらに参照して説明される。
【0058】
図2aを参照して、車両は30で示される。車両30は、直線軌道32に沿って逆方向に走行中である。概して、軌道32は、それぞれが車両30の両側端と一致する、又は側端からオフセットされた平行な轍の間のエリアに対応し、制御入力及び/又は軌道に影響するその他の要因が現状を維持するという仮定に基づいて、車両30の進路を反映する。したがって、軌道は直線進路、又は特定の曲率半径を有する進路であり得る。図2aの場合、軌道32は、直線で示され、車両30の運転者が慣習的に見る方向と一致している。この軌道32は、主に運転者が車両30の操舵ハンドルを運転者が慣習的に見る方向に一致させるよう操舵ハンドルを制御することにより起こる。
【0059】
メモリから回収された操舵ハンドル回転データに基づいて、プロセッサは、車両30が直線軌道32に沿っていると判断する。また、操舵ハンドル回転データに基づいて、プロセッサは、直線軌道32の両側(車両が左側通行用に構成されていると仮定して、ニアサイド34およびオフサイド36)に警報ゾーン境界(図示せず)を設定する。警報ゾーン境界は、警報ゾーン境界と軌道の隣接する側との間の、それぞれの警報ゾーンを画定する。軌道32が直線状であるから、警報ゾーン境界は軌道32の両側34、36で、軌道のそれぞれの側34、36から基準距離と考慮される距離で等しく設定される。
【0060】
その後、1つ以上の近接センサ14a、14b、16a、16bが、警報ゾーン境界の1つで、又はその中で、物体を検出するかもしれない。そのような物体の位置に関する情報は、それぞれの近接センサ14a、14b、16a、16bを介して、近接センサデータ信号の中で発信される。プロセッサは、この情報を使って車両30が警報ゾーン境界内の物体の検出された位置に関連する軌道32内のポイントから所定の距離内であるか否かを判断する。本実施形態において、軌道32内のポイントは、軌道32と直交し、且つ物体を通る架空の線上にある。しかし、代わりの実施形態において、ポイントは別の方法で判断され得る。車両がポイントから所定の距離内にある場合、プロセッサは、警報信号を生成し、警報信号出力26を介してスピーカ24に発信する。スピーカ24は、車両30の車内に配置され、車両30の運転者に物体の存在を通知し得る。明らかにされるとおり、それぞれが他から区別可能な特徴を有する1つ以上の追加の警報が、類似した方法でより短い様々な所定の距離用に作成され得る。したがって、例えば物体が徐々に近づくにつれて警報を強くすることが可能である。
【0061】
図2bを参照して、車両30の軌道を変えるように運転者が操舵ハンドル制御を変化させることの影響が示される。操舵ハンドル制御の変化は直線軌道からそれて右向きに方向転換させるものである。メモリから回収された操舵ハンドル回転データに基づいて、プロセッサは、車両30が特定の曲線軌道38に沿っていると判断する。同様に操舵ハンドル回転データに基づいて、プロセッサは、軌道38の左側42に隣接する左側警報ゾーン境界40及び軌道38の右側46に隣接する右側警報ゾーン境界44を設定する。軌道の左側42からの左側警報ゾーン境界40の距離と、軌道38の右側46からの右側警報ゾーン境界44までの距離とは異なる。具体的には、左側警報ゾーン境界40は、右側警報ゾーン境界44よりも広い(すなわち、軌道38の右側46からの右側警報ゾーン境界44よりも、それは軌道38の左側42からより大きい距離にある)。これにも関わらず、軌道38の左側42からの左側警報ゾーン境界40の距離及び軌道38の右側46からの右側警報ゾーン境界44の距離の両方は基準距離よりも大きい。左側警報ゾーン境界40は、操舵ハンドル制御によって作られた方向転換の外側にあり、右側警報ゾーン境界44は方向転換の内側にある。
【0062】
本実施形態において、プロセッサによる左側及び右側の警報ゾーン境界の距離設定は、操舵ハンドル制御の変化につれて継続的に行われる。基準距離に対して具体的には、方向転換の内側及び外側の両方の警報ゾーンの幅は、方向転換の曲率半径の減少とともに増加するが、方向転換の外側の警報ゾーンの幅は方向転換の内側の警報ゾーンの幅の増加よりも大きく増加する。直線軌道32は、両方の警報ゾーンの幅が等しい所定の軌道と考えられる。さらに、操舵ハンドル回転データに示される軌道調節に従ってプロセッサによって行われる距離調節は、操舵ハンドル回転データに示される等しく反対方向の軌道調節に従って逆行される。
【0063】
図3を参照して、図1、2a、および2bの実施形態が有し得る有利な点が説明される。図3において、図2bの曲線軌道が反復され、車両30は再び後進している。また、この場合別の車両50が物体として示されている。別の車両50は、左側にある(すなわち、方向転換の外側に隣接する)。見てわかるように、曲線軌道38の左側42は、別の車両50に非常に近いところを通過し、実際に走行を継続すると、こする衝突の結果となる。説明したような所与の特定の軌道と、別の車両50の位置によれば、衝突の可能性をより高くし得る要因は多くある。第一に、別の車両は、少なくとも部分的に車両30のミラー内で車両30の運転者の視野外かもしれない。別の車両の位置はまた、少なくとも車両30と車両50が許容範囲を超えて衝突に近づくまで、左側の近接センサ14a、14bによって、別の車両全体の長さが検出不可能かもしれない。具体的に、左側後方の近接センサ14bが車両50の検出及びサイズ判断を補助できるために十分なほど車両50が長くないかもしれない。したがって、検出は左側前方の近接センサ14aからの信号のみに基づき得て、車両50の関連する長さ全体の検出は不可能かもしれない。したがって、プロセッサは、車両30の軌道が別の車両50と重なることをたとえ判断できたとしても、比較的遅くまで判断できないかもしれない。明らかにされるとおり、これらの難点は曲率半径の減少につれて増大し得る。
【0064】
したがって、図1、2a、および2bに関して説明される実施形態は、曲率半径の減少につれて許容誤差(すなわち警報ゾーンの幅)を大きくすることにより衝突の可能性を減少させ得る。曲率半径の減少につれて軌道及び/又は車両30の長さを正確に判断することが難しくなり得る運転者が、より大きい許容誤差によって警報への反応速度の観点から、より大きい自信を得ることも可能である。明らかにされるとおり、システムはまた、特定の軌道に従って特定の警報ゾーンの幅と車両の特定の場所の衝突リスクとを釣り合わせる(match)ことにより潜在的に誤報の発生を減らすことができるかもしれない。
【0065】
本願発明の実施形態がハードウェアとして、ソフトウェアとして、もしくはハードウェア及びソフトウェアの組み合わせとして実現可能であるのは明らかである。そのようなソフトウェアは、揮発性、もしくは非揮発性の記憶媒体に収納可能である。媒体の例として、消去可能、もしくは上書き可能、もしくは不可能等いずれかのROMのような媒体、もしくは例えばRAM、メモリチップ、メモリ装置もしくは集積回路等のメモリ、もしくはCD、DVD、磁気ディスクもしくは磁気テープ等の光学的もしくは磁気的に読める媒体等がある。記憶装置及び記憶媒体は、1つのプログラム又は複数のプログラムを収納するのに適した機械可読媒体の具体例であり、実行されると本願発明の実施形態を遂行する。従って、実施形態は、上記のいずれかの請求で主張するとおりのシステムもしくは方法を実行するコードを含むプログラム及びそのようなプログラムを収納する機械可読媒体を提供する。さらに、本願発明の実施形態は、有線もしくは無線接続の上で運ばれる通信信号等多くの手段で電子的に搬送可能であり得るため、実施形態はこれら全ても含む。
【0066】
本明細書で開示される全ての特質(全ての添付請求項、要約書、及び図面も含む)及び/又は開示された全ての方法もしくはプロセスは、それらの特質及び/又はステップの少なくともいくつかが相互に排他的である場合を除き、いかなる組み合わせも可能である。
【0067】
本明細書で開示される全ての特質(全ての添付請求項、要約書、及び図面も含む)は、他に明記されない限り同じ、同等の、もしくは類似の目的を果たせる代替の特質と交換し得る。従って、他に明記されない限り、開示された各特質は、一般的な一連の同等もしくは類似特質の1つの例にすぎない。
【0068】
本願発明は前述の実施形態のいずれかの詳細に制限されるものではない。本願発明は本明細書で開示の特質(全ての添付請求項、要約書、及び図面も含む)のあらゆる新規性特質、もしくはあらゆる新規性組み合わせにも、もしくはここで開示の全ての方法もしくはプロセスのステップのあらゆる新規性ステップ、もしくはあらゆる新規性組み合わせも含む。請求項は前述の実施形態を単に包含するのではなく、請求項のスコープ内のあらゆる実施形態を包含すると理解されるべきである。
図1
図2a
図2b
図3