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特許7607080バシラエン産生細菌またはその調製物を含有する組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】バシラエン産生細菌またはその調製物を含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20241219BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20241219BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20241219BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20241219BHJP
   A23K 10/18 20160101ALI20241219BHJP
   A23K 50/80 20160101ALI20241219BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23L33/135
A61P1/00
A61K35/74 A
A61K35/74 D
A61K31/202
A23K10/18
A23K50/80
C12N15/31
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023090941
(22)【出願日】2023-06-01
(62)【分割の表示】P 2021546779の分割
【原出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2023123473
(43)【公開日】2023-09-05
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】19156407.9
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM 33014
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロレーナ シュタネク-ゲーベル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ペルツァー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ベアングルーバー
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア ボアクマイアー
(72)【発明者】
【氏名】シュテラ モルク
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05364623(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0045288(US,A1)
【文献】特表2008-508471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0295901(US,A1)
【文献】特表2013-538567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-5/28
C12Q 1/00-3/00
C12M 1/00-3/10
C12P
G01N
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAPLUS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.3wt%胆汁の存在下で増殖することが可能であることを特徴とし、0.3wt%胆汁への曝露に少なくとも3時間耐えることが可能であることを特徴とする、バシラエン産生微生物であって、
a)バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)株DSM 33014;
b)DSM 33014で寄託されたバチルス株のゲノム配列に対して少なくとも98%の配列同一性を有する、DSM 33014で寄託されたバチルス株の突然変異体
から選択される、バシラエン産生微生物
【請求項2】
C.パーフリンゲンス(C. perfringens)、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、E.コリ(E. coli)、および/またはビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)の増殖を阻害することが可能であることを特徴とする、請求項1記載のバシラエン産生微生物。
【請求項3】
嫌気的に増殖することが可能であり、かつ非水溶性セルロースおよびタンパク質を嫌気条件下で分解することが可能であることを特徴とし、かつ/または前記微生物の胞子の少なくとも50%が99℃への20分間の曝露に耐えることを特徴とする、請求項1または2記載のバシラエン産生微生物。
【請求項4】
前記微生物が、以下の特性:
a)株DSM 33014の16 S rDNA配列および/または配列番号1に対して少なくとも98%の配列同一性を有する16 S rDNA配列;
a)株DSM 33014のyqfD配列および/または配列番号2に対して少なくとも98%の配列同一性を有するyqfD配列;
b)株DSM 33014のgyrB配列および/または配列番号3に対して少なくとも98%の配列同一性を有するgyrB配列;
c)株DSM 33014のrpoB配列および/または配列番号4に対して少なくとも98%の配列同一性を有するrpoB配列;
d)株DSM 33014のgroEL配列および/または配列番号5に対して少なくとも98%の配列同一性を有するgroEL配列
の少なくとも1つを有する、請求項1からまでのいずれか1項記載のバシラエン産生微生物。
【請求項5】
ヒトを除く物に給餌する方法であって、前記動物に請求項1から4までのいずれか1項記載のバシラエン産生微生物もしくはその調製物、または前記バシラエン産生微生物もしくはその調製物を含有する飼料組成物を投与することを含む、方法。
【請求項6】
ヒトを除く動物の健康状態を改善する方法であって、前記動物に請求項1から4までのいずれか1項記載のバシラエン産生微生物もしくはその調製物、または前記バシラエン産生微生物もしくはその調製物を含有する組成物、および/またはバシラエンもしくはその誘導体を投与することを含む、方法。
【請求項7】
動物の全身的な身体状態を改善し、かつ/または動物の飼料要求率を改善し、かつ/または動物の死亡率を低下させ、かつ/または動物の生存率を高め、かつ/または動物の体重増加を改善し、かつ/または動物の耐病性を高め、かつ/または動物の免疫応答を増大させ、かつ/または動物において健常な腸内微生物叢を確立もしくは維持し、かつ/または動物の糞便による病原体の排出を減少させる方法であって、請求項1から4までのいずれか1項記載のバシラエン産生微生物もしくはその調製物、または前記バシラエン産生微生物もしくはその調製物を含有する組成物を、ヒトを除く動物に投与する、方法。
【請求項8】
堆肥または汚染液体の有害な環境影響を制御および/または回避する方法であって、堆肥、汚染液体、敷料、ピットまたは堆肥溜めに請求項1から4までのいずれか1項記載のバシラエン産生微生物もしくはその調製物、または前記バシラエン産生微生物もしくはその調製物を含有する組成物を適用する工程を含む、方法。
【請求項9】
水または水溶液の品質を制御および/または改善する方法であって、水または水溶液に請求項1から4までのいずれか1項記載のバシラエン産生微生物もしくはその調製物、または前記バシラエン産生微生物もしくはその調製物を含有する組成物を適用する工程を含む、方法。
【請求項10】
栽培植物の微生物性疾患を治療および/または予防する方法であって、栽培植物に請求項1から4までのいずれか1項記載のバシラエン産生微生物もしくはその調製物、または前記バシラエン産生微生物もしくはその調製物を含有する組成物を適用する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロバイオティクス飼料成分としてのバシラエン産生細菌の使用、およびバシラエン産生細菌を含有する組成物、ならびに細菌性疾患の治療のためのバシラエンまたはその誘導体の使用に関する。
【0002】
飼料産業におけるプロバイオティクス成分としての或る特定の細菌株の使用は、以前に現行の技術水準で開示されている。プロバイオティクス(「直接給与生菌剤」または「DFM」とも称される)の機能は、有益な細菌の増殖を支持し、かつ/または病原性細菌の増殖を抑制することによって腸内微生物叢に良い影響を与えることである。理想的には、プロバイオティクスを使用することで、増殖促進抗生物質(AGP)の使用が不必要になる。しかし、それに加えて、プロバイオティクスが特定の飼料成分の消化を助ける等の更なる機能を果たすことが望ましい。
【0003】
このため、現行の技術水準に鑑みると、腸内微生物叢に良い影響を与えるだけでなく、望ましくは少なくとも1つの更なる機能を果たすプロバイオティクスが必要とされている。
【0004】
バシラエンは、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株の発酵ブロスから発見され、単離された、ポリエン類に属する二次代謝産物である(Patel et al., The Journal of Antibiotics (1995), Vol. 48(9), 997-1003)。
【0005】
本発明によると、驚くべきことに、ノックアウト突然変異体を用いて実験を行うことで、バシラエンが、特に壊死性腸炎の原因である毒素産生クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)、早期死亡症候群のような甲殻類の疾患の原因であるビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、および食中毒の主な原因の1つであるサルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)のような商業的に重要な病原体の増殖を効果的に阻害することが可能であることが見出された。このため、バシラエンを産生する細菌がプロバイオティクス飼料および食品成分としての使用に適し、バシラエンまたはその誘導体が細菌性疾患の治療に適していることが判明した。
【0006】
このため、本発明の第1の主題は、バシラエンまたはその誘導体、特にバシラエン産生微生物および/またはそのバシラエン含有調製物を含む組成物、特に食品、飼料および治療用組成物、ならびに植物の治療用の組成物である。
【0007】
本発明によると、「バシラエンの誘導体」は特に、バシラエンの水素化変異体、特に文献に報告されているジヒドロバシラエンを指す。
【0008】
このため、本発明の更なる主題は、プロバイオティクス飼料または食品成分としてのバシラエン産生微生物またはその調製物の使用でもある。
【0009】
本発明の更なる主題は特に、プロバイオティクスとして適したバシラエン産生微生物でもある。プロバイオティクスとして適しているためには、本発明による微生物は、好ましくは胆汁耐性、耐熱性、および/または嫌気条件下で増殖する能力のような或る特定の基準を満たす必要がある。
【0010】
本発明によるバシラエン産生細菌は特に、クロストリジウム、好ましくはC.パーフリンゲンス(C. perfringens)、特にC.パーフリンゲンス(C. perfringens)ATCC 13124、サルモネラ、好ましくはサルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)、特にサルモネラ・エンテリカ亜種エンテリカ・エンテリティディス(Salmonella enterica subsp. enterica enteritidis)DSM 14221、E.コリ(E. coli)、特にE.コリ(E. coli)ATCC11775、ならびにビブリオ、好ましくはビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、特にビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)DSM10027および/またはビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)TW01から選択される株を阻害することが可能である。
【0011】
本発明によるバシラエン産生微生物は、好ましくは細菌であり、より好ましくはバチルス、特にB.サブティリス(B. subtilis)、B.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)、B.メチロトロフィカス(B. methylotrophicus)およびB.アトロフェウス(B. atropheus)、ならびにパエニバチルス、特にP.ポリミクサ(P. polymixa)およびP.ダラス(P. durus)から選択される。本発明の非常に好ましい実施形態では、バシラエン産生微生物は、B.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)またはB.サブティリス(B. subtilis)である。
【0012】
本発明によるバシラエン産生微生物は、好ましくは、2mM胆汁の存在下、好ましくは4mM胆汁の存在下で増殖することが可能であることをさらに特徴とし、特に2mM胆汁の存在下で少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.65、とりわけ少なくとも0.8のAUC5性能値、および少なくとも1.2、好ましくは少なくとも1.4、とりわけ少なくとも1.6のAUC10性能値をさらに特徴とし、かつ/または0.3wt%胆汁の存在下、特に0.3wt%ニワトリ胆汁の存在下、および/もしくは0.3wt%ブタ胆汁の存在下で増殖することが可能であることをさらに特徴とし、好ましくは0.3wt%胆汁、特に0.3wt%ニワトリ胆汁および/または0.3wt%ブタ胆汁への曝露に少なくとも3時間、好ましくは少なくとも5または8時間耐えることが可能であることを特徴とする。
【0013】
本発明によるバシラエン産生微生物は、好ましくは、嫌気的に増殖することが可能であり、特に非水溶性セルロースおよびタンパク質を嫌気条件下で分解することが可能であることをさらに特徴とする。
【0014】
本発明によるバシラエン産生微生物は、好ましくは、胞子の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70または90%が99℃への20分間の曝露に耐えることをさらに特徴とする。
【0015】
好適なバシラエン産生プロバイオティクスであることが判明したバチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)株は、自然発生分離株のスクリーニングによって同定され、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の規定の下、Evonik Degussa GmbHの名義でアクセッション番号DSM 33014にて2019年2月7日付けでDSMZ(Leibniz-Institute DSMZ-German Collection of Microorganisms and Cell Cultures, Inhoffenstrasse 7B, 38124 Braunschweig, Germany)に寄託されている。
【0016】
このため、本発明の好ましい実施形態では、バシラエン産生微生物は、以下の群から選択される:
a)バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)株DSM 33014;
b)DSM 33014で寄託されたバチルス株のゲノム配列に対して好ましくは少なくとも98%、特に99または99.5%の配列同一性を有する、DSM 33014で寄託されたバチルス株の突然変異体であって、好ましくは胆汁耐性および/もしくは耐熱性を示し、かつ/または嫌気条件下で増殖することが可能である、突然変異体。
【0017】
B.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)株DSM 33014は、配列番号1による16 S rDNA、配列番号2によるyqfD配列、配列番号3によるgyrB配列、配列番号4によるrpoB配列、および配列番号5によるgroEL配列を示す。
【0018】
このため、本発明の好ましい実施形態では、好ましいバシラエン産生バチルス株、特にバチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)株DSM 33014は、以下の特性の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは全てを有する:
a)株DSM 33014の16 S rDNA配列および/または配列番号1に対して少なくとも98、好ましくは少なくとも99、99.5または99.8%、より好ましくは100%の配列同一性を有する16 S rDNA配列;
a)株DSM 33014のyqfD配列および/または配列番号2に対して少なくとも98、好ましくは少なくとも99、99.5または99.8%、より好ましくは100%の配列同一性を有するyqfD配列;
b)株DSM 33014のgyrB配列および/または配列番号3に対して少なくとも98、好ましくは少なくとも99、99.5または99.8%、より好ましくは100%の配列同一性を有するgyrB配列;
c)株DSM 33014のrpoB配列および/または配列番号4に対して少なくとも98、好ましくは少なくとも99、99.5または99.8%、より好ましくは100%の配列同一性を有するrpoB配列;
d)株DSM 33014のgroEL配列および/または配列番号5に対して少なくとも98、好ましくは少なくとも99、99.5または99.8%、より好ましくは100%の配列同一性を有するgroEL配列。
【0019】
本発明によるバシラエン産生細菌は、バシラエンの産生を可能にする遺伝子クラスターを含む。遺伝子クラスターは、好ましくは、ポリケチド合成酵素またはPKSタンパク質とも称されるバシラエン合成タンパク質複合体のサブユニットをコードする遺伝子baeJ、baeL、baeM、baeNおよびbaeRを含む。
【0020】
B.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)株DSM 33014は、配列番号6によるbaeJ配列、配列番号7によるbaeL配列、配列番号8によるbaeM配列、配列番号9によるbaeN配列、および配列番号10によるbaeR配列を示す。
【0021】
このため、本発明によると、PKSタンパク質の遺伝子クラスターは、好ましくは以下の遺伝子を含む:
a)株DSM 33014のbaeJ配列の配列および/または配列番号6に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85、90または95%、より好ましくは少なくとも98または99%、とりわけ100%の配列同一性を有するbaeJ遺伝子;
b)株DSM 33014のbaeL配列の配列および/または配列番号7に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85、90または95%、より好ましくは少なくとも98または99%、とりわけ100%の配列同一性を有するbaeL遺伝子;
a)株DSM 33014のbaeM配列の配列および/または配列番号8に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85、90または95%、より好ましくは少なくとも98または99%、とりわけ100%の配列同一性を有するbaeM遺伝子;
c)株DSM 33014のbaeN配列の配列および/または配列番号9に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85、90または95%、より好ましくは少なくとも98または99%、とりわけ100%の配列同一性を有するbaeN遺伝子;
d)株DSM 33014のbaeR配列の配列および/または配列番号10に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85、90または95%、より好ましくは少なくとも98または99%、とりわけ100%の配列同一性を有するbaeR遺伝子。
【0022】
本発明による微生物は、好ましくは自然分離株であるが、自然分離株の突然変異体、特に自然突然変異体であってもよい。さらに、本発明による微生物は、遺伝子操作、特にバシラエン産生酵素サブユニットをコードする遺伝子、特に先に言及した遺伝子baeJ、baeL、baeM、baeNおよびbaeRを微生物、好ましくは先に言及した微生物、より好ましくはB.サブティリス(B. subtilis)またはB.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)株に組み込むことによって得ることもでき、この場合、遺伝子の組込みの前に、微生物はバシラエンを産生することが可能でないのが好ましい。
【0023】
「自然突然変異体」という用語は、突然変異原を意図的に使用することなく自然分離株から生じる突然変異体を指す。かかる自然突然変異体は、古典的方法、例えばUV光の存在下で、かつ/または高温もしくはプロトプラスト形成を適用して、かつ/または親株が感受性を示す或る特定の抗生物質の存在下で自然分離株を増殖させ、任意の耐性突然変異体を生物活性の改善、または動物健康、特に腸の健康の指標の1つ以上を向上させる能力の改善について試験することによって得ることができる。自然突然変異体を同定する他の方法は、当業者に知られている。しかし、これらの好ましい自然突然変異体に加えて、遺伝子操作によって得られる突然変異体のような自然分離株の他のあらゆる種類の突然変異体も本発明に含まれる。
【0024】
このため、本発明の特定の一実施形態は、好ましくは本明細書で上述した特徴を特徴とする、自然発生バシラエン産生株の非自然発生突然変異体、特に先に規定した自然突然変異体である。
【0025】
このため、本発明の更なる特定の一実施形態は、バシラエン産生酵素のサブユニットをコードする遺伝子、特に本明細書で先に言及した遺伝子baeJ、baeL、baeM、baeNおよびbaeRの組込みによって得られたバシラエン産生微生物である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の微生物および調製物を動物またはヒトに経口投与する。
【0027】
このため、本発明の更なる主題は、バシラエン産生微生物および/もしくはその調製物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体を含有する飼料、食品、飲料水および飼育水等の組成物、ならびに治療用組成物である。
【0028】
本発明の更なる主題は、飼料または食品製品中のプロバイオティクス成分(DFM)としてのバシラエン産生微生物および/またはその調製物の使用でもある。
【0029】
本発明による好ましい食品は、乳製品、特にヨーグルト、チーズ、牛乳、バターおよびクワルクである。
【0030】
本発明の微生物の細胞は、特に本発明の組成物中で胞子(休眠状態である)、栄養細胞(増殖中である)、移行状態細胞(増殖期から胞子形成期への移行段階にある)、またはこれらの細胞型の少なくとも2つ、特に全ての組合せとして存在し得る。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、主に胞子を含むか、または胞子のみを含む。
【0031】
加えてまたは代替として、微生物の細胞は、非生細胞であってもプロバイオティクス効果を有することが予想されるため、生きていない不活性化形態で使用してもよい。細胞を不活性化する方法は、当業者に知られている。
【0032】
本発明のバシラエン産生微生物およびそれらを含有する組成物は、動物に投与した場合に、好ましくはかかる動物の健康を増進し、かつ/またはかかる動物の全身的な身体状態を改善し、かつ/またはかかる動物の飼料要求率を改善し、かつ/またはかかる動物の死亡率を低下させ、かつ/またはかかる動物の生存率を高め、かつ/またはかかる動物の体重増加を改善し、かつ/またはかかる動物の生産性を高め、かつ/またはかかる動物の耐病性を高め、かつ/またはかかる動物の免疫応答を増大させ、かつ/またはかかる動物において健常な腸内微生物叢を確立もしくは維持し、かつ/またはかかる動物の糞便による病原体の排出を減少させる。特に、本発明の微生物および組成物は、治療目的での抗生物質の投与後に腸内微生物叢の健全なバランスが再確立されるのを補助するために使用され得る。
【0033】
本発明の更なる主題は、したがって、動物の健康を増進し、かつ/または動物の全身的な身体状態を改善し、かつ/または動物の飼料要求率を改善し、かつ/または動物の死亡率を低下させ、かつ/または動物の生存率を高め、かつ/または動物の体重増加を改善し、かつ/または動物の生産性を高め、かつ/または動物の耐病性を高め、かつ/または動物の免疫応答を増大させ、かつ/または動物において健常な腸内微生物叢を確立もしくは維持し、かつ/または動物の糞便による病原体の排出を減少させる方法であって、本発明の微生物および/もしくはその調製物および/もしくは本発明の組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体を動物、特に水生動物に投与する、方法である。
【0034】
本発明の更なる主題は、したがって、動物の健康を増進し、かつ/または動物の全身的な身体状態を改善し、かつ/または動物の飼料要求率を改善し、かつ/または動物の死亡率を低下させ、かつ/または動物の生存率を高め、かつ/または動物の体重増加を改善し、かつ/または動物の生産性を高め、かつ/または動物の耐病性を高め、かつ/または動物の免疫応答を増大させ、かつ/または動物において健常な腸内微生物叢を確立もしくは維持し、かつ/または動物の糞便による病原体の排出を減少させるための本発明の微生物および/または調製物および/または組成物の使用であって、本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体を動物に投与し、動物が特に水生動物である、使用でもある。
【0035】
本発明の更なる主題は、したがって、動物の健康を増進し、かつ/または動物の全身的な身体状態を改善し、かつ/または動物の飼料要求率を改善し、かつ/または動物の死亡率を低下させ、かつ/または動物の生存率を高め、かつ/または動物の体重増加を改善し、かつ/または動物の生産性を高め、かつ/または動物の耐病性を高め、かつ/または動物の免疫応答を増大させ、かつ/または動物において健常な腸内微生物叢を確立もしくは維持し、かつ/または動物の糞便による病原体の排出を減少させる、先に言及した本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体でもある。
【0036】
「動物の生産性を高める」とは、特に以下のいずれかを指す:より多くのまたはより高品質の卵、乳もしくは肉の生産、または離乳子の生産の増加。
【0037】
本発明の微生物、調製物および組成物の方法および使用は、治療的であってもまたは非治療的であってもよい。本発明の特に好ましい実施形態では、方法および使用は非治療的であり、特に給餌用途である。
【0038】
動物の未処理の堆肥は、病原性細菌および他の成分のために、特に動物自体に対して、かつ/または堆肥と接触するヒトに対して有害な環境影響を有する恐れがあるが、これは動物に本発明の微生物、組成物もしくは調製物を給餌するか、または堆肥もしくは動物の敷料を本発明の微生物、組成物もしくは調製物で直接処理することによって回避され得るため、本発明の更なる主題は、堆肥または汚染液体の有害な環境影響を制御および/または回避する方法であって、堆肥、汚染液体、敷料、ピットまたは堆肥溜めに本発明による少なくとも1つのバシラエン産生微生物および/またはその調製物および/または組成物を適用する工程を含む、方法である。好ましくは、微生物、調製物または組成物は、液体形態で、例えば噴霧によって、または粉末として、例えば散布によって適用される。
【0039】
有害な細菌は、敷料の粘稠度に悪影響を与える恐れがあり、特に家禽の足蹠病変を引き起し得る、やや流動性のまたは非常に流動性の敷料を生じさせる恐れがあるが、これは動物に本発明の微生物、組成物または調製物を給餌することによって回避され得るため、本発明の更なる主題は、動物、特に家禽に本発明による少なくとも1つの微生物、1つの調製物および/または1つの組成物を給餌する工程を含む、敷料の粘稠度を制御および/または改善する方法、特に敷料の固体の粘稠度を確保する方法、および/または足蹠病変を回避する方法である。
【0040】
本発明による微生物および調製物は、飼料および食品組成物の品質の改善、ならびに水および水溶液の品質の改善にも使用することができる。本発明の更なる主題は、したがって、飼料、食品、水または水溶液に本発明の少なくとも1つの微生物および/または少なくとも1つの調製物および/または少なくとも1つの組成物を適用する工程を含む、飼料または食品組成物の品質、ならびに水または水溶液、特に飲料水および/または飼育水の品質を制御および/または改善する方法でもある。
【0041】
さらに、本発明による微生物および調製物は、植物の微生物性疾患の治療にも使用することができる。本発明の更なる主題は、したがって、植物に本発明の少なくとも1つの微生物および/または少なくとも1つの調製物および/または少なくとも1つの組成物を適用する工程を含む、植物、特に栽培植物の微生物性疾患を治療および/または予防する方法でもある。適用は液体形態で、例えば噴霧によって、または固体形態で、特に粉末、好ましくは配合粉末として行うことができる。
【0042】
本発明の微生物、調製物および組成物を使用することによって、好ましくは先に言及した特徴の少なくとも1つの改善が実現され、ここでの特徴の実現は、好ましくは、適切な陰性対照と比較して少なくとも1%、より好ましくは少なくとも3または少なくとも5%の改善を意味する。陰性対照としては、畜産分野で既知の平均的なものを用いることができるが、好ましくは陰性対照として、試験動物と同じ処理に供するが、本発明の微生物および/または調製物の投与を行わない動物が使用される。
【0043】
バシラエンの産生により先に言及した病原性細菌の増殖を阻害する能力に加えて、本発明に従って使用される微生物および調製物は、好ましくは更なる病原性細菌の増殖を阻害することが可能である。
【0044】
特に、本発明の微生物、調製物および組成物は、動物の腸における病原性細菌の増殖を阻害および/または低減するのに効果的な量で動物に投与または給餌することができる。かかる病原性細菌としては、クロストリジウム、サルモネラ、ビブリオおよびエシェリキア・コリ(Escherichia coli)に加えて、特にリステリア、エンテロコッカス、スタフィロコッカス、アエロモナス、ストレプトコッカス、カンピロバクター、シゲラ、ヘモフィラスおよびブラキスピラを挙げることができる。これに関連して、本発明の方法を用いることで、動物の糞便中に排出される病原性細菌、ウイルスおよび原生動物の量を減少させることができる。本発明の方法は、動物の腸における乳酸菌等の有益な細菌の増殖を維持もしくは増大するために用いることもできる。病原性細菌を減少させ、かつ/または有益な細菌を増加させるもしくは維持することで、本発明の組成物は、全体として健常な腸内微生物叢を維持することが可能である。
【0045】
このため、本発明の更なる主題は、特に動物またはヒトの腸において病原性細菌の増殖を阻害および/もしくは低減し、かつ/または有益な細菌の増殖を維持および/もしくは増大する方法であって、本発明の微生物、調製物および/または組成物を動物またはヒトに投与し、病原性細菌が好ましくはクロストリジウム、特にC.パーフリンゲンス(C. perfringens)、C.ディフィシル(C. difficile)、C.ノビイ(C. novyi)、C.セプティカム(C. septicum)およびC.コリナム(C. colinum)、リステリア、特にL.モノサイトゲネス(L. monocytogenes)、L.シーリジェリー(L. seeligeri)およびL.ウェルシメリー(L. welshimeri)、サルモネラ、特に亜種エンテリカ(enterica)、アリゾナエ(arizonae)、ボンゴリ(bongori)、特に血清型S.ガリナルム(S. gallinarum)、S.プロラム(S. pullorum)、S.ティフィムリウム(S. typhimurium)、S.エンテリティディス(S. enteritidis)、S.コレラスイス(S. cholerasuis)、S.ハイデルベルグ(S. heidelberg)、S.ダブリン(S. dublin)、S.ハダール(S. hadar)、S.ティフィ(S. typhi)、S.パラティフィ(S. paratyphi)およびS.インファンティス(S. infantis)を含むS.エンテリカ(S. enterica)、エンテロコッカス、特にE.フェカリス(E. faecalis)、E.フェシウム(E. faecium)およびE.セコルム(E. cecorum)、スタフィロコッカス、特にS.アウレウス(S. aureus)、アエロモナス、ストレプトコッカス、特にS.スイス(S. suis)およびS.ガリナセウス(S. gallinaceus)、カンピロバクター、特にC.ジェジュニ(C. jejuni)およびC.コリ(C. coli)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、ヘモフィラス、特にヘモフィラス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、ブラキスピラ、特にブラキスピラ・ハイオディセンテリアエ(Brachyspira hyodysenteriae)、ならびにビブリオ、特にV.パラヘモリティカス(V. parahaemolyticus)およびV.ハーベイ(V. harveyi)から選択され、有益な細菌が好ましくは乳酸菌、特にラクトバチルスおよびビフィドバクテリウムから選択される、方法でもある。病原性微生物は、好ましい実施形態ではクロストリジウム、特にC.パーフリンゲンス(C. perfringens)、サルモネラ、特にS.エンテリカ(S. enterica)、およびビブリオ、特にV.パラヘモリティカス(V. parahaemolyticus)から選択される。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの病原性細菌の量、特にC.パーフリンゲンス(C. perfringens)、S.エンテリカ(S. enterica)および/またはV.パラヘモリティカス(V. parahaemolyticus)の量が少なくとも0.5log、より好ましくは少なくとも1log、2logまたは3log減少する。
【0047】
このため、本発明の更なる主題は、特に動物またはヒトの腸において病原性細菌の増殖を阻害および/もしくは低減し、かつ/または有益な細菌の増殖を維持および/もしくは増大するための本発明の微生物、調製物および組成物でもあり、ここで、病原性細菌は、好ましくはクロストリジウム、特にC.パーフリンゲンス(C. perfringens)、C.ディフィシル(C. difficile)、C.ノビイ(C. novyi)、C.セプティカム(C. septicum)およびC.コリ(C. coli)ナム(C. colinum)、リステリア、特にL.モノサイトゲネス(L. monocytogenes)、L.シーリジェリー(L. seeligeri)およびL.ウェルシメリー(L. welshimeri)、サルモネラ、特に亜種エンテリカ(enterica)、アリゾナエ(arizonae)、ボンゴリ(bongori)、特に血清型S.ガリナルム(S. gallinarum)、S.プロラム(S. pullorum)、S.ティフィムリウム(S. typhimurium)、S.エンテリティディス(S. enteritidis)、S.コレラスイス(S. cholerasuis)、S.ハイデルベルグ(S. heidelberg)、S.ダブリン(S. dublin)、S.ハダール(S. hadar)、S.ティフィ(S. typhi)、S.パラティフィ(S. paratyphi)およびS.インファンティス(S. infantis)を含むS.エンテリカ(S. enterica)、エンテロコッカス、特にE.フェカリス(E. faecalis)、E.フェシウム(E. faecium)およびE.セコルム(E. cecorum)、スタフィロコッカス、特にS.アウレウス(S. aureus)、アエロモナス、ストレプトコッカス、特にS.スイス(S. suis)およびS.ガリナセウス(S. gallinaceus)、カンピロバクター、特にC.ジェジュニ(C. jejuni)およびC.コリ(C. coli)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、ヘモフィラス、特にヘモフィラス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、ブラキスピラ、特にブラキスピラ・ハイオディセンテリアエ(Brachyspira hyodysenteriae)、ならびにビブリオ、特にV.パラヘモリティカス(V. parahaemolyticus)およびV.ハーベイ(V. harveyi)から選択され、有益な細菌は、好ましくは乳酸菌、特にラクトバチルスおよびビフィドバクテリウムから選択される。病原性微生物は、好ましい実施形態では、クロストリジウム、特にC.パーフリンゲンス(C. perfringens)、サルモネラ、特にS.エンテリカ(S. enterica)、およびビブリオ、特にV.パラヘモリティカス(V. parahaemolyticus)から選択される。
【0048】
病原性細菌の発生および/または増殖の増大は、或る特定の疾患の発生を引き起こす、または引き起こす恐れがある。例えば、クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)の発生および/または増殖の増大は、ブタおよび家禽における腸疾患の発生、特に壊死性腸炎の発生を引き起こす恐れがある。C.パーフリンゲンス(C. perfringens)の発生および/または増殖の増大は、細菌性腸炎、壊疽性皮膚炎および胆管肝炎(colangiohepatitis)のような更なる疾患の発生を引き起こす恐れもある。C.パーフリンゲンス(C. perfringens)による感染は、最軽症型であっても既に下痢を伴う可能性があり、これが敷料を湿らせ、趾蹠皮膚炎のような二次疾患を引き起こす場合がある。C.パーフリンゲンス(C. perfringens)C型は、一般に子ブタにおける壊死性腸炎および壊死性出血性腸炎の主因であると考えられ、A型は、軽症の壊死性全腸炎および絨毛萎縮を有する哺乳および摂餌ブタにおける腸疾患と関連付けられている。
【0049】
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は、主に新生子ブタにおいて下痢を引き起こす重要な新興病原体である。罹患子ブタは呼吸困難、腹部膨満および陰嚢浮腫を有する可能性がある。
【0050】
スタフィロコッカス・アウレウス亜種アウレウス(Staphylococcus aureus subsp. aureus)は、ニワトリにおいて趾瘤、雌ブタにおいて連鎖球菌性乳腺炎を引き起こす場合があり、人体において食中毒を起こす毒素を生成し得る。
【0051】
E.セコルム(E. cecorum)は、ブロイラーにおいて、通常は関節および/または骨組織の炎症に起因する跛行、関節炎および骨髄炎を引き起こすことが知られている。さらに、E.セコルム(E. cecorum)は、心膜の炎症を引き起こす場合がある。
【0052】
サルモネラ細菌は、家禽肉、豚肉またはそれらに由来する製品等の肉の摂取と関連していることが多い、ヒトの食中毒の重要な原因である。したがって、サルモネラの制御は、食肉生産業にとって重要な課題である。欧州では、産卵群におけるサルモネラの有病率について2005年に実施された基礎研究から、EU全体レベルで、大規模産卵鶏舎(holdings)の20.3%がS.エンテリティディス(S. enteritidis)について細菌学的に陽性であることが示されている。一部の国では、有病率は80%よりもさらに高かった[European Food Safety Authority (2006), “Preliminary report: analysis of the baseline study on the prevalence of salmonella in laying hen flocks of Gallus gallus”]。
【0053】
S.ガリナルム(S. gallinarum)は、家禽チフス症の原因であり、S.プロラム(S. pullorum)は、ひな白痢症の原因であるが、どちらの疾患も養鶏業において大きな損害を与える。
【0054】
C.コリ(C. coli)は、食物媒介性の細菌であり、殆どの人は通常、細菌を含有する豚肉を食べることで感染する。これは、ヒトにおける胃腸炎および急性全腸炎、さらには急性下痢症を引き起こす。ブタが主な宿主であるが、ヒト、鳥類および広範な他の動物にも感染する可能性がある。
【0055】
S.ガリナセウス(S. gallinaceus)は、家禽において敗血症を引き起こす場合がある。肉眼的病変には、脾腫、肝腫、腎肥大および鬱血が含まれていた。弁膜性心内膜炎を伴う、肝臓および脾臓における複数の壊死部および/または梗塞も観察された。
【0056】
S.スイス(S. suis)は、ブタにおける重要な病原体であり、離乳後の子ブタにおける細菌による死亡の最も重要な原因の1つであり、敗血症、髄膜炎および他の多くの感染症を引き起こす。
【0057】
ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)は特に、ウシエビ(ペナエウス・モノドン(Penaeus monodon))およびバナメイエビ(ペナエウス・バナメイ(Penaeus vannamei))の両方を侵す、急性肝膵臓壊死症(AHPND)としても知られる早期死亡症候群(EMS)のような甲殻類の疾患に関与する。
【0058】
病原体は、多発性関節炎、線維性多発性漿膜炎、離乳後下痢および浮腫病のような離乳後腸障害、ならびに豚赤痢のような更なる疾患を引き起こす場合がある。
【0059】
本発明の更なる主題は、したがって、本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体を含む治療用組成物、特に水生動物の治療のための治療用組成物でもある。
【0060】
本発明の好ましい主題は、したがって、特にクロストリジウム、特にC.パーフリンゲンス(C. perfringens)、および/またはサルモネラ、特にS.エンテリカ(S. enterica)、好ましくはS.エンテリカ亜種エンテリカ・エンテリティディス(S. enterica subsp. enterica enteritidis)、および/またはビブリオ、特にビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)による細菌感染に関連する疾患、特に腸疾患の治療のための治療用組成物である。
【0061】
これに関連するさらに好ましい主題は、したがって、本発明の株および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体を含む、動物、好ましくはブタまたは家禽において壊死性腸炎および/または壊死性出血性腸炎、特に無症候性の壊死性腸炎および/または壊死性出血性腸炎を治療および/または予防するための治療用組成物である。
【0062】
これに関連するさらに好ましい主題は、したがって、本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体を含む、動物、好ましくは水産養殖で飼育される動物、より好ましくは甲殻類、特に小エビおよびエビにおいて早期死亡症候群を治療および/または予防するための治療用組成物である。
【0063】
これに関連するさらに好ましい主題は、したがって、本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体を含む、食中毒に起因する疾患を治療および/または予防するための治療用組成物である。
【0064】
これに関連する別の好ましい主題は、したがって、本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体を含む、動物、好ましくはブタまたは家禽において細菌性腸炎、壊疽性皮膚炎、胆管肝炎、クロストリジウム症、下痢、呼吸困難、腹部膨満、陰嚢浮腫、趾瘤、趾蹠皮膚炎、連鎖球菌性乳腺炎、跛行、関節炎、多発性関節炎、線維性多発性漿膜炎、離乳後下痢および浮腫病のような離乳後腸障害、赤痢、骨髄炎、関節および/もしくは骨組織の炎症、心膜の炎症、脾腫、肝腫、腎肥大、鬱血、肝臓もしくは脾臓の壊死、梗塞、弁膜性心内膜炎、敗血症、ならびに/または髄膜炎を治療および/または予防するための治療用組成物である。
【0065】
本発明の更なる主題は、したがって、クロストリジウム、特にC.パーフリンゲンス(C. perfringens)、および/またはサルモネラ、特にS.エンテリカ(S. enterica)、好ましくはS.エンテリカ亜種エンテリカ・エンテリティディス(S. enterica subsp. enterica enteritidis)、および/またはビブリオ、特にビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)による細菌感染に関連する疾患、特に腸疾患の治療および/または予防でもあり、ここでは、本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体を、それを必要とする動物に投与し、動物は、好ましくはブタまたは家禽である。
【0066】
本発明の更なる主題は、したがって、疾患、特に腸疾患、好ましくは壊死性腸炎または壊死性出血性腸炎、特に無症候性壊死性腸炎または無症候性壊死性出血性腸炎の治療および/または予防でもあり、ここでは、本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体を、それを必要とする動物に投与し、動物は、好ましくはブタまたは家禽である。
【0067】
本発明の更なる主題は、したがって、水生動物の疾患、特に早期死亡症候群の治療および/または予防でもあり、ここでは、本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体を、それを必要とする動物に投与し、動物は、好ましくは水産養殖で飼育される動物、より好ましくは甲殻類、特に小エビおよびエビである。
【0068】
本発明の更なる主題は、したがって、食中毒に起因する疾患の治療および/または予防でもあり、ここでは、本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体を、それを必要とする動物またはヒトに投与する。
【0069】
本発明の更なる主題は、したがって、食中毒に起因する疾患の治療および/または予防でもあり、ここでは、本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体を、ヒトの中毒を回避するために動物性食品、特に肉または卵に適用する。
【0070】
本発明の更なる主題は、したがって、疾患、好ましくは細菌性腸炎、壊疽性皮膚炎、胆管肝炎、クロストリジウム症、下痢、呼吸困難、腹部膨満、陰嚢浮腫、趾瘤、趾蹠皮膚炎、連鎖球菌性乳腺炎、跛行、関節炎、多発性関節炎、線維性多発性漿膜炎、離乳後下痢および浮腫病のような離乳後腸障害、赤痢、骨髄炎、関節および/もしくは骨組織の炎症、心膜の炎症、脾腫、肝腫、腎肥大、鬱血、肝臓もしくは脾臓の壊死、梗塞、弁膜性心内膜炎、敗血症、ならびに/または髄膜炎から選択されるブタまたは家禽の疾患の治療および/または予防でもあり、ここでは、本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体を、それを必要とする動物に投与する。
【0071】
本発明の微生物および/または調製物および/または組成物は、動物の生涯を通じて、または動物の生涯の特定の段階もしくは部分において数日にわたって飼料および/または飲料水中で動物に投与することができる。例えば、微生物および/または調製物および/または組成物は、家畜の離乳飼料中でのみ投与しても、または仕上げ飼料中でのみ投与してもよい。
【0072】
本発明の特定の主題は、ヒトの健康を増進し、かつ/またはヒトの全身的な身体状態を改善し、かつ/またはヒトの耐病性を高め、かつ/またはヒトの免疫応答を増大させ、かつ/またはヒトにおいて健常な腸内微生物叢を確立もしくは維持する方法であって、本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体をヒトに投与する、方法でもある。
【0073】
本発明の更なる主題は、したがって、ヒトの健康を増進し、かつ/またはヒトの全身的な身体状態を改善し、かつ/またはヒトの耐病性を高め、かつ/またはヒトの免疫応答を増大させ、かつ/またはヒトにおいて健常な腸内微生物叢を確立もしくは維持するための本発明の微生物および/または調製物および/または組成物の使用であって、本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体をヒトに投与する、使用でもある。
【0074】
本発明の組成物、特に飼料、食品および医薬組成物、ならびに飲料水または飼育水は、好ましくは本発明の微生物を含み、約1×10~約2×1012CFU/g飼料またはml水の割合、特に約1×10または約1×10または約1×10または約1×10または約1×10または約1×10または約1×10または約1×1010または約1×1011または約1×1012CFU/g飼料またはml水の割合、好ましくは約1×10~約1×1010CFU/g飼料またはml水の量、より好ましくは1×10~1×10CFU/g飼料またはml水の量で動物に投与される。
【0075】
相応して、本発明の飼料、食品および水組成物中の本発明の株および/または調製物の好ましい量は、好ましくは0.1wt%~10wt%、より好ましくは0.2wt%~5wt%、特に0.3wt%~3wt%の範囲である。
【0076】
本発明の方法は、あらゆる種類の動物、特にあらゆる種類の非ヒトおよび非昆虫動物、より好ましくはあらゆる種類の脊椎動物、例えば哺乳動物、水生動物および鳥類に対して使用することができる。
【0077】
本発明から利益を得る可能性がある動物としては、家畜、ペット、エキゾチックアニマル、動物園の動物、水生動物、スポーツ、娯楽または労働に使用される動物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
ペットは、好ましくはイヌ、ネコ、飼い慣らされた(domestic)鳥類および飼い慣らされたエキゾチックアニマルから選択される。
【0079】
水生動物は好ましくは、好ましくはヒトの栄養を目的とする、ひれのある魚および甲殻類から選択される。これらとしては、特にコイ、ティラピア、ナマズ、マグロ、サケ、マス、バラマンディ、ブリーム、パーチ、タラ、小エビ、ロブスター、カニ、エビおよびザリガニが挙げられる。これに関連して好ましいサケの種類は、タイセイヨウサケ、ベニザケ、サクラマス、キングサーモン、ケタサーモン、ギンザケ、ドナウイトウ、タイヘイヨウサケおよびカラフトマスである。
【0080】
さらに好ましい水生動物は、後に魚粉または魚油を得るために加工される養殖魚である。これに関連して、魚類は、好ましくはニシン、ポラック、メンハーデン、アンチョビ、カペリンまたはタラである。
【0081】
更なる好ましい実施形態では、動物は、食物摂取のためにまたは食物を生み出すものとして飼育される家畜、例えば家禽、ブタおよび反芻動物である。
【0082】
家禽は、生産的(productive)または飼い慣らされた家禽だけでなく、観賞用家禽または野鳥からも選択することができる。
【0083】
これに関連する好ましい生産的家禽は、ニワトリ、シチメンチョウ、カモおよびガチョウである。これに関連する生産的家畜は、好ましくは若齢畜を生産するのに最適化された家禽または肉を生み出すのに最適化された家禽である。
【0084】
好ましい観賞用家禽または野鳥はクジャク、キジ、ヤマウズラ、イワシャコ(chukkars)、ホロホロチョウ、ウズラ、オオライチョウ、ライチョウ、ハトおよびハクチョウであり、ウズラが特に好ましい。
【0085】
さらに好ましい家禽は走鳥類、特にダチョウおよびエミュー、ならびにオウムである。
【0086】
本発明による反芻動物は、好ましくはウシ、ヤギおよびヒツジから選択される。一実施形態では、本発明の組成物を離乳前の動物(preruminants)に給餌し、それらの健康を増進し、特に、これらの動物における下痢の発生率を低下させることができる。離乳前の動物は、出生直後から約12週齢までの範囲の子ウシを含む反芻動物である。
【0087】
本発明の特に好ましい実施形態は、したがって、動物にバシラエン産生微生物もしくはその調製物、またはバシラエン産生微生物もしくはその調製物を含有する飼料組成物を投与することを含む、動物、好ましくは陸生動物、特にブタもしくは鳥類、または水生動物、特に小エビおよびエビのような甲殻類に給餌する方法である。
【0088】
本発明の組成物は、少なくとも1つの担体もしくは典型的な飼料成分、またはそれらの組合せを含み得る。
【0089】
好適な担体は、回収率、有効性もしくは物理的特性を改善し、かつ/または包装および投与を補助するために添加される不活性の配合成分である。かかる担体は、個別にまたは組み合わせて添加することができる。これらの担体は、固化防止剤、酸化防止剤、増量剤および/または保護剤から選択することができる。有用な担体の例としては、多糖(特にデンプン、マルトデキストリン、メチルセルロース、ガム、キトサンおよび/またはイヌリン)、タンパク質源(特に脱脂粉乳および/またはスイートホエイ粉末)、ペプチド、糖(特にラクトース、トレハロース、スクロースおよび/またはデキストロース)、脂質(特にレシチン、植物油および/または鉱油)、塩(特に塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、チョーク、石灰石、炭酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムおよび/またはクエン酸ナトリウム)、およびシリケート(特にクレイ、特にゼオライトクレイ、非晶質シリカ、ヒュームド/沈降シリカ、ゼオライト、フラー土、baylith、クリントポライト(clintpolite)、モンモリロナイト、珪藻土、タルク、ベントナイト、ならびに/またはケイ酸アルミニウム、マグネシウムおよび/もしくはカルシウムのようなケイ酸塩)が挙げられる。動物用飼料添加物に好適な担体は、毎年発行されるAmerican Feed Control Officials, Inc.の公式刊行物に記載されている。例えばOfficial Publication of American Feed Control Officials, Sharon Krebs, editor, 2006 edition, ISBN 1-878341-18-9を参照されたい。担体は、発酵ブロスを濃縮した後、かつ/または乾燥時および/もしくは乾燥後に添加することができる。本発明による好ましい担体は、炭酸カルシウム、珪藻土および植物油から選択される。
【0090】
本発明の好ましい実施形態は、濃縮組成物、特に飼料添加組成物、すなわち本発明の少なくとも1つの微生物と先に言及した少なくとも1つの担体とを含む飼料組成物の調製に適した組成物であり、ここで、少なくとも1つの微生物は、好ましくは0.1~10wt%の量、より好ましくは0.2~5wt%の量、特に0.3~3wt%の量、とりわけ0.4~2.2wt%の量で含まれ、少なくとも1つの担体は、好ましくは少なくとも90wt%の量、好ましくは90~99.9wt%の量、より好ましくは95~99.8wt%の量、特に97~99.7wt%の量、とりわけ97.8~99.6wt%の量で含まれ、担体は、好ましくは実質的に石灰石、特に少量の珪藻土および/または植物油を含む石灰石からなる。
【0091】
安定化させた微生物を含有する、本発明のこれらの好ましい組成物を、好ましくは本発明による株を本明細書で上に言及した量で含む飼料および医薬組成物、ならびに飲料水および飼育水の調製に使用することができる。好ましい実施形態では、飼料、飲料水または飼育水1トン当たり50~1000グラムのかかる濃縮組成物、特に50、100、250、500または1000グラムのかかる濃縮組成物を使用して、動物の給餌に使用することができる組成物を得る。これらの濃縮組成物は、好ましくは本発明の少なくとも1つの株を濃縮組成物1g当たり1×10~2×1011CFU、特に2×10~1×1011CFUの量で含む。
【0092】
これらの濃縮組成物から出発して、濃縮組成物を、それぞれ典型的な飼料または食品成分と混合することで飼料および食品組成物を調製することができる。
【0093】
本発明による組成物に含有され、かつ/または本発明による濃縮組成物から出発する飼料組成物の調製に使用することができる好適な典型的な動物用飼料成分には、以下の1つ以上が含まれる:タンパク質、炭水化物、脂肪、更なるプロバイオティクス、プレバイオティクス、酵素、ビタミン、免疫調節物質、代用乳、ミネラル、アミノ酸、抗コクシジウム剤、酸ベースの生成物、および/または抗生物質等の薬剤。
【0094】
本発明に従って使用することができる炭水化物を含有する成分は、例えば茎葉飼料、粗飼料、小麦全粒粉、ヒマワリかすまたは大豆かす、およびそれらの混合物である。
【0095】
本発明に従って使用することができるタンパク質を含有する成分は、例えば大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、小麦グルテンまたはトウモロコシグルテン、およびそれらの混合物である。
【0096】
本発明に従って使用することができる脂肪を含有する成分は、特に植物油、例えば大豆油、菜種油、ヒマワリ種子油、アマニ油またはヤシ油、魚油、およびそれらの混合物のような動物由来および植物由来の両方の油である。
【0097】
付加的に脂肪を含有する、本発明に従って使用することができるタンパク質を含有する成分は、例えば魚粉、オキアミ粉末、二枚貝類粉末、イカ粉末またはエビ殻、およびそれらの組合せである。
【0098】
本発明に従い、本発明の微生物および調製物と組み合わせて使用することができる更なるプロバイオティクス(DFM)は、好ましくはバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ラテロスポラス(Bacillus laterosporus)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・アルベイ(Bacillus alevi)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・バディウス(Bacillus badius)、バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thurigiensis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)およびペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)の種から選択される細菌である。好ましい例は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)DSM 32539(特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の規定の下、2017年6月14日付けでDSMZに寄託された)およびその誘導体、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)DSM 32314およびバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)DSM 32315(どちらも特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の規定の下、2016年5月12日付でDSMZに寄託された)ならびにその誘導体、KeminによってCLOSTAT(登録商標)の商標で販売されているバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)PB6(米国特許第7,247,299号明細書に記載され、ATCCアクセッション番号PTA-6737として寄託されている)、CalpisによってCALSPORIN(登録商標)として販売されているバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)C-3102(米国特許第4,919,936号明細書に記載され、日本の公益財団法人発酵研究所(Fermentation Research Institute)、国立研究開発法人産業技術総合研究所(Agency of Industrial Science and Technology)にFERM BP-1096として寄託されている)、Chr. HansenによってGalliPro(登録商標)の商標で販売されているバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)DSM 17299、Chr. HansenによってGalliProTect(登録商標)の商標で販売されているバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)DSM 17236、Chr. HansenによってBioPlus(登録商標)YCの商標で販売されているバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)DSMZ 5749およびバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)DSMZ 5750の胞子の混合物、Adisseo/NovozymesによってAlterion(登録商標)の商標で販売されているB.サブティリス(B. subtilis)DSM 29784、Chr. HansenによってPORCBOOST(登録商標)の商標で販売されているバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、または米国特許第6,849,256号明細書に記載されているバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)株である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)またはハンゼヌラ等の他の非バチルスプロバイオティクスを本発明の組成物に使用することもできる。特に食品組成物では、ヒトの健康に有用であることが知られている更なるプロバイオティクス、例えば乳酸産生細菌、特にラクトバチルスまたはビフィドバクテリウムを使用することができる。上記の更なるプロバイオティクスを本発明の組成物の一部として配合しない場合、これらを本発明の組成物と共に(同時にまたは異なる時点で)投与することができる。
【0099】
本発明に従って使用することができるプレバイオティクスは、好ましくはオリゴ糖、特にガラクトオリゴ糖、シアリルオリゴ糖、ラクツロース、乳果オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、パラチノースまたはイソマルトースオリゴ糖、グリコシルスクロース、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、シクロデキストリン、ゲンチオオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、デキストラン、ペクチン、ポリガラクツロナン、ラムノガラクツロナン、マンナン、ヘミセルロース、アラビノガラクタン、アラビナン、アラビノキシラン、レジスタントスターチ、メビオース、キトサン、アガロース、イヌリン、タガトース、ポリデキストロースおよびアルギン酸塩から選択される。
【0100】
本発明による飼料組成物に使用することができ、飼料の消化を補助し得る酵素は、好ましくはフィターゼ(EC 3.1.3.8または3.1.3.26)、キシラナーゼ(EC 3.2.1.8)、ガラクタナーゼ(EC 3.2.1.89)、ガラクトシダーゼ、特にα-ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.22)、プロテアーゼ(EC 3.4)、ホスホリパーゼ、特にホスホリパーゼA1(EC 3.1.1.32)、A2(EC 3.1.1.4)、C(EC 3.1.4.3)およびD(EC 3.1.4.4)、リゾホスホリパーゼ(EC 3.1.1.5)、アミラーゼ、特にα-アミラーゼ(EC 3.2.1.1);リゾチーム(EC 3.2.1.17)、グルカナーゼ、特にβ-グルカナーゼ(EC 3.2.1.4またはEC 3.2.1.6)、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、またはそれらの任意の混合物から選択される。
【0101】
市販のフィターゼの例としては、Bio-Feed(商標) Phytase(Novozymes)、Ronozyme(登録商標) PおよびHiPhos(商標)(DSM Nutritional Products)、Natuphos(商標)(BASF)、Finase(登録商標)およびQuantum(登録商標) Blue(AB Enzymes)、Phyzyme(登録商標) XP(Verenium/DuPont)、ならびにAxtra(登録商標) PHY(DuPont)が挙げられる。他の好ましいフィターゼとしては、例えば国際公開第98/28408号、国際公開第00/43503号および国際公開第03/066847号に記載のものが挙げられる。
【0102】
市販のキシラナーゼの例としては、Ronozyme(登録商標) WXおよびG2(DSM Nutritional Products)、Econase(登録商標) XTおよびBarley(AB Vista)、Xylathin(登録商標)(Verenium)およびAxtra(登録商標) XB(キシラナーゼ/β-グルカナーゼ、DuPont)が挙げられる。市販のプロテアーゼの例としては、Ronozyme(登録商標) ProAct(DSM Nutritional Products)が挙げられる。
【0103】
本発明に従って使用することができるビタミンは、例えばビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンK、例えばビタミンK3、ビタミンB12、ビオチン、コリン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、葉酸およびパントテン酸塩、例えばD-パントテン酸Ca、またはそれらの組合せである。
【0104】
使用することができる免疫調節物質は、例えば抗体、サイトカイン、噴霧乾燥血漿、インターロイキンもしくはインターフェロン、またはそれらの組合せである。
【0105】
本発明に従って使用することができるミネラルは、例えばホウ素、コバルト、塩化物、クロム、銅、フッ化物、ヨウ素、鉄、マンガン、モリブデン、セレン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、カリウムもしくはナトリウム、またはそれらの組合せである。
【0106】
本発明に従って使用することができるアミノ酸は、例えばリジン、アラニン、トレオニン、メチオニンもしくはトリプトファン、またはそれらの組合せである。
【0107】
このため、本発明の更なる実施形態は、本発明の少なくとも1つの微生物および/または少なくとも1つの調製物および/または少なくとも1つの濃縮組成物を、特に動物の健康、特に腸の健康を増進するのに効果的な量で、タンパク質、脂質および/または炭水化物等の飼料成分、ならびに任意に更なる有益な物質、好ましくは先に言及した物質と混合して、給餌用生成物を得ることを含む、動物用飼料組成物を調製する方法である。この方法は、例えばペレット成形工程も含み得る。
【0108】
乾燥したまたはやや湿った飼料の押し出し加工を含む、当業者に知られている標準的なペレット成形プロセスを用いることができる。好ましいペレット成形温度は、約65℃~約120℃である。
【0109】
本発明の微生物および組成物は、例えば米国特許第6,060,051号明細書、欧州特許第0287699号明細書または米国特許出願公開第2014/0010792号明細書に記載されている培地および他の方法を用いることを含む、当該技術分野で既知の方法に従って本発明の微生物を培養することによって得ることができる。従来の大規模微生物培養プロセスとしては、液中発酵、固形発酵または液面培養が挙げられる。発酵の終盤で栄養素が枯渇するにつれ、細胞が増殖期から胞子形成期への移行を開始するため、発酵の最終生成物は主に胞子、代謝産物および残留発酵培地となる。胞子形成は、これらの微生物の自然な生活環の一部であり、概して栄養素の制限に応じて細胞により開始される。発酵は、高レベルのコロニー形成単位の細胞が得られ、胞子形成が促進されるように構成される。発酵によって生じる培養培地中の細菌細胞、胞子および代謝産物は直接使用しても、または遠心分離、タンジェント流濾過、深層濾過および蒸発等の従来の工業的方法によって濃縮してもよい。濃縮発酵ブロスを、例えば透析濾過プロセスによって洗浄し、残留発酵ブロスおよび代謝産物を除去することができる。
【0110】
発酵ブロスまたはブロス濃縮物は、担体を添加してまたは添加せずに、噴霧乾燥、凍結乾燥、トレイ乾燥、流動層乾燥、ドラム乾燥または蒸発等の従来の乾燥プロセスまたは方法を用いて乾燥させることができる。得られる乾燥生成物を粉砕または造粒等によってさらに加工して、特定の粒径または物理的形状を達成することができる。上記の担体を乾燥後に添加してもよい。
【0111】
本発明の特定の主題である本発明の微生物の調製物は、無細胞調製物であっても、または細胞残屑を含有する調製物であっても、または無傷細胞と細胞残屑との混合物を含有する調製物であってもよい。微生物の調製物の特定の例は、発酵の終了後に得られる発酵ブロスの上清、および微生物細胞を破壊することによって得ることができるサイトゾル調製物である。
【0112】
本発明の微生物の無細胞調製物は、例えば発酵ブロスの遠心分離および/もしくは濾過、ならびに/または微生物細胞の破壊後に得られる懸濁液の遠心分離および/もしくは濾過によって得ることができる。用いられる手法に応じて、これらの無細胞調製物は、完全に細胞を欠いていなくてもよく、依然として少量の細胞または細胞残屑を含んでいてもよい。細胞が代謝産物、酵素および/またはペプチドのような化合物を周囲の培地に分泌するため、細胞の上清は、細胞によって分泌される、かかる化合物、特に代謝産物、酵素および/またはペプチドの混合物を含む。このため、本発明の好ましい実施形態では、微生物の調製物は、発酵ブロスの上清である。
【0113】
微生物の細胞残屑を含む組成物は、当業者に知られている手法を用いて、例えば機械的手段によってまたは高圧を加えることで細胞を破裂させることにより得ることができる。加えられる力の程度に応じて、破裂した細胞のみを含む組成物、または細胞残屑と無傷細胞との混合物を含む組成物が得られる。細胞の均質化は、例えばフレンチ細胞プレス、超音波破砕機、ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、ボールミル、ロッドミル、ペブルミル、ビーズミル、高圧粉砕ロール、垂直シャフトインパクター、工業用ブレンダー、高剪断ミキサー、パドルミキサーおよび/またはポリトロンホモジナイザーを用いて実現することができる。好適な代替手段は、細胞の酵素的および/または化学的処理である。
【0114】
本発明の無細胞調製物には、初めに先に言及した手法を用いて細胞を破裂させ、続いて細胞残屑および残りの無傷細胞を除去することによって得られる調製物も含まれる。細胞残屑および残りの無傷細胞の除去は、特に遠心分離および/または濾過によって行うことができる。
【0115】
本発明の微生物の調製物は、活性化合物としてのバシラエンに加えて、少なくとも1つの更なる代謝産物、好ましくは下にさらに記載される更なる代謝産物の混合物、ならびに/またはプロテアーゼ、特にサブチリシン、キシラナーゼおよび/もしくはセルラーゼから選択される少なくとも1つの酵素、ならびに/または少なくとも1つのペプチド、ならびに/またはそれらの組合せを含み得る。
【0116】
本発明の微生物に含まれ、かつ/または先に言及した細胞調製物に含まれる代謝産物の有効な混合物を含有する調製物は、例えば米国特許第6,060,051号明細書に記載の方法に従って得ることができる。特に、調製物は、先に言及した調製物に含まれる代謝産物を、酢酸エチルのような有機溶媒を用いて沈殿させ、続いて沈殿した代謝産物を適切な溶媒に再溶解することによって得ることができる。代謝産物を、続いて分子量カットオフに基づいて代謝産物を異なる画分に分類するサイズ排除濾過によって精製することができる。
【0117】
バシラエンと本発明の更なる代謝産物の有効な混合物とを含有する調製物は、好ましくは本発明の微生物の少なくとも3、より好ましくは少なくとも4、5、6、8、10または12種、特に全ての代謝産物を含む。代謝産物は、好ましくは400~4000ダルトン、より好ましくは500~3500ダルトンの分子量を有する。
【0118】
好ましくは、本発明によると、有効量の本発明の微生物および/もしくは調製物および/もしくは組成物、ならびに/またはバシラエンもしくはその誘導体が本発明の実施形態において常に使用される。「有効量」という用語は、本発明の株および/または調製物および/または組成物を投与していないのに加え、同じ食餌(飼料および他の化合物を含む)を投与した動物と比較して、特に先に既に言及した特徴に関して少なくとも1つの有益な効果を動物および/または環境に対してもたらす量を指す。
【0119】
治療用途の場合、好ましくは治療量の本発明の微生物および/または調製物および/または組成物を使用する。「治療量」という用語は、動物における病状を改善し、回復させ、または予防するのに十分な量を指す。当業者は、様々な動物についての最適な投与量レベルを、特に(i)様々な用量で腸内の病原性細菌を阻害もしくは低減し、(ii)有益な細菌のレベルを増大もしくは維持し、かつ/または(iii)様々な用量で動物の健康、特に腸の健康を増進する組成物の能力を評価することによって容易に決定することができる。
【0120】
実施例
実施例1.バシラエン生合成のクラスターをコードするプロバイオティクスB.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)株の病原体阻害能力の評価
プロバイオティクスバチルス株による病原体阻害に対するバシラエンの潜在的効果を、ウェル拡散拮抗試験を用いて評価した(Parente et al. 1995)。株DSM 33014および更なるプロバイオティクスバシラエン産生B.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)株(「B.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)株A」)を試験に使用した。B.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)株Aについて、baeJ遺伝子を破壊し、株がバシラエンを産生することができないようにしたノックアウト突然変異体を構築した(Chen et al., 2006)。加えて、バシラエン遺伝子クラスターを有しないB.サブティリス(B. subtilis)株(「B.サブティリス(B. subtilis)株B」)を試験した。
【0121】
S.エンテリカ亜種エンテリカ・エンテリティディス(S. enterica subsp. enterica enteritidis)DSM 14221、E.コリ(E. coli)ATCC 11775、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)DSM 10027およびC.パーフリンゲンス(C. perfringens)ATCC 13124の種々の病原体を用いたウェル拡散拮抗試験を行った。
【0122】
バチルス株を、100mLの振盪フラスコにおいて1リットル当たり40gの大豆ペプトン、40gのデキストリン10、1.8gのKHPO、4.5gのKHPO、0.3gのMgSO・7HOおよび0.2mlのKellyT微量金属溶液(Scholz et al., 2011に記載されている)を含有する10mlのLB Kelly培地中、37℃および200rpmで16時間増殖させた。病原性株を、600nmの光学密度が少なくとも1となるまで液体培養物として好適な条件下で増殖させた後、130μlを滅菌スパチュラで寒天プレートの表面上に塗布した。全ての病原体について、TSBYE(30g/l TSB+6g/l酵母エキス)寒天プレートを使用した。直径9mmのウェルを乾燥させたプレートに切り込んだ。最初のウェルを、培養物を含まない非接種培地対照として使用し、他のウェルにはOD600 5に調整した100μLのバチルス培養物を接種した。E.コリ(E. coli)ATCC 11775およびS.エンテリカ亜種エンテリカ・エンテリティディス(S. enterica subsp. enterica enteritidis)DSM 14221を用いたアッセイについては、嫌気条件下で24時間のインキュベーション後に、プレートを好気条件下でさらに16時間インキュベートした。各プレートを、切り込んだウェルの周囲の阻止円(inhibition halos)の外観について分析した。切り込んだウェルの端から排除された菌叢(lawn)の境界までを測定することで、排除ゾーンをmmで決定した。各阻止円を2回(水平に、垂直に)測定した後、平均した。結果は以下の表1および2に見ることができる。V.パラヘモリティカス(V. parahaemolyticus)DSM 10027を用いたアッセイについては、バチルス培養物をLB Kelly培地中で10時間だけ増殖させ、OD600をOD600 10に調整し、寒天プレートを嫌気条件下で24時間のインキュベーション後に直接分析した(表3を参照されたい)。寒天プレート上でのC.パーフリンゲンス(C. perfringens)ATCC 13124を用いた阻害アッセイについては、バチルス培養物を16時間増殖させ、OD600をOD600 5に調整し、寒天プレートを嫌気条件下で24時間のインキュベーション後に直接分析した(表4)。
【0123】
【表1】
【0124】
データから、バシラエンを産生するB.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)株がS.エンテリカ亜種エンテリカ・エンテリティディス(S. enterica subsp. enterica enteritidis)DSM 14221の増殖を阻害するが、baeJノックアウト突然変異体、およびバシラエンを産生しないB.サブティリス(B. subtilis)株が病原体を阻害しないことが示される。
【0125】
【表2】
【0126】
データから、バシラエンを産生するB.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)株がE.コリ(E. coli)ATCC 11775の増殖を阻害するが、baeJノックアウト突然変異体、およびバシラエンを産生しないB.サブティリス(B. subtilis)株が病原体を阻害しないことが示される。
【0127】
【表3】
【0128】
データから、バシラエンを産生するB.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)株がV.パラヘモリティカス(V. parahaemolyticus)DSM 10027の増殖を阻害するが、バシラエンを産生しないbaeJノックアウト突然変異体が病原体を阻害しないことが示される。
【0129】
【表4】
【0130】
データから、バシラエンを産生するB.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)株がC.パーフリンゲンス(C. perfringens)ATCC 13124の増殖を阻害するが、バシラエンを産生しないbaeJノックアウト突然変異体については、C.パーフリンゲンス(C. perfringens)ATCC 13124に対する阻害の減少が観察されることが示される。
【0131】
B.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)DSM 33014によるC.パーフリンゲンス(C. perfringens)ATCC 13124の阻害を液体環境において分析した。B.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)DSM 33014を10mLのLB Kelly培地中で一晩増殖させた。培養物を遠心分離し、0.2ミクロンのセルロースアセテート膜で濾過して、細胞および胞子を除去した。細胞および胞子を含まない上清を、二倍強度ブレインハートインフュージョン(GranuCult(商標) BHIブロス、Merck)と1:10で混合した。陰性対照として、細胞および胞子を含まない上清の代わりにLB Kellyを使用した。C.パーフリンゲンス(C. perfringens)ATCC 13124を嫌気条件下にて2×BHI中、37℃で一晩増殖させ、1:100希釈の上清/2×BHI混合物および陰性対照に1:10で接種した。37℃で一晩の増殖後に、C.パーフリンゲンス(C. perfringens)ATCC 13124の培養物は、B.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)DSM 33014の細胞および胞子を含まない上清の存在下で増殖を示さなかったが(透明な培地)、陰性対照中では大きな増殖を示した(濁った培地)。このため、バシラエンクラスターをコードするB.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)DSM 33014は、C.パーフリンゲンス(C. perfringens)ATCC 13124を液体中で阻害することが可能である。
【0132】
文献
Parente, E., Brienza, C., Moles, M., & Ricciardi, A. 1995: A comparison of methods for the measurement of bacteriocin activity. Journal of microbiological methods, 22(1), 95-108.
Chen, X.-H., Vater, J., Piel, J., Franke, P., Scholz, R., Schneider, K., Koumoutsi, A., Hitzeroth, G., Grammel, N., Strittmatter, A.W., Gottschalk, G., Suessmuth, R. and Borriss, R. 2006: Structural and Functional Characterization of Three Polyketide Synthase Gene Clusters in Bacillus amyloliquefaciens FZB 42. Journal of Bacteriology, 188(11): 4024-4036.
【0133】
実施例2:胃腸管内での生存に関する株の特性
B.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)DSM 33014が、動物用の直接給与生菌剤/プロバイオティクスとして優れた株の特性である、様々な環境条件および腸関連条件に耐え、標的動物の腸内でその全潜在能力を発揮することが可能であるかをスクリーニングした。
【0134】
B.アミロリクエファシエンス(B. amyloliquefaciens)DSM 33014をDifco胞子形成培地(DSM、1リットル当たりの組成:8gのbacto nutrient broth、10mlの10%(w/v)KCl、10mlの1.2%(w/v)MgSO・7HOおよび1mlの1M Ca(NO、1mlの0.01M MnCl、1mlの1mM FeSO)中、37℃で一晩増殖させ、胞子を生成させた(Monteiro et al., 2005)。この溶液を用いて胞子の熱安定性を評価し、胞子を80℃に10分間曝露することによるペレット成形安定性(Leuschner and Bew, 2003)および胆汁耐性を決定した。胞子懸濁液のサンプルをpH7のVIBプレート(Difco(商標) Veal Infusion Broth、BD)上にスポットした。プレートを37℃でインキュベートし、胞子の成長について分析した。
【0135】
加えて、胞子の生存および栄養細胞の胆汁耐性の定性的評価を分析した。3μlの熱処理した胞子溶液を、0.3%ニワトリ胆汁または0.3%ブタ胆汁(Sigma)を含有するVIBプレート上にスポットした。プレートを37℃で一晩インキュベートし、株の増殖について分析した。
【0136】
株DSM 33014の胞子は、80℃で10分間の熱処理後に生存していた。加えて、株DSM 33014は、0.3%ニワトリ胆汁または0.3%ブタ胆汁の存在下で増殖することが可能であった。
【0137】
文献
Monteiro, S.M., Clemente, J.J., Henriques, A.O., Gomes, R.J., Carrondo, M.J. and Cunha, A.E. 2005: A procedure for high-yield spore production by Bacillus subtilis. Biotechnology Progress, 21(4):1026-31.
Scholz, R., Molohon, K.J., Nachtigall, J., Vater, J., Markley, A.L., Suessmuth, R.D., Mitchell, D.A. and Borriss, R. 2011: Plantazolicin, a novel microcin B17/streptolysin S-like natural product from Bacillus amyloliquefaciens FZB42. Journal of Bacteriology, 193(1):215-24.
Leuschner, R.G.K. and Bew, J. 2003: Enumeration of Probiotic Bacilli Spores in Animal Feed: Interlaboratory Study. Journal of AOAC International, 86(3):568-75.
【配列表】
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