IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社中農製作所の特許一覧

<>
  • 特許-塗装用治具の塗料洗浄装置 図1
  • 特許-塗装用治具の塗料洗浄装置 図2
  • 特許-塗装用治具の塗料洗浄装置 図3
  • 特許-塗装用治具の塗料洗浄装置 図4
  • 特許-塗装用治具の塗料洗浄装置 図5
  • 特許-塗装用治具の塗料洗浄装置 図6
  • 特許-塗装用治具の塗料洗浄装置 図7
  • 特許-塗装用治具の塗料洗浄装置 図8
  • 特許-塗装用治具の塗料洗浄装置 図9
  • 特許-塗装用治具の塗料洗浄装置 図10
  • 特許-塗装用治具の塗料洗浄装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】塗装用治具の塗料洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/02 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B08B3/02 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023116194
(22)【出願日】2023-07-14
【審査請求日】2023-09-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)2022年7月15日にヤンマーアグリ株式会社高知工場にて納品により公開 (2)2022年9月19日にGoogle LLCのウェブサイトの掲載アドレス(https://www.youtube.com/watch?v=r0WETmDGN6w)にて公開 (3)2022年10月5日~10月7日にマリンメッセ福岡で開催された「ものづくりフェア2022」にて公開 (4)2022年10月12日~10月28日に株式会社日刊工業新聞社のウェブサイトの掲載アドレス(https://autumnfair.nikkan.co.jp)にて公開 (5)2022年10月19日~10月21日に東京ビッグサイトで開催された「2022洗浄総合展」にて公開 (6)2022年11月1日にGoogle LLCのウェブサイトの掲載アドレス(https://www.youtube.com/watch?v=O1hGJUMd7PM)にて公開 (7)2022年11月9日~11月10日に「第35回東大阪産業展テクノメッセ2022」にて公開 (8)2022年12月21日にメタ・プラットフォームズ株式会社(Meta Platforms,Inc.)の掲載アドレス(https://fb.watch/l-2hnffnek/)にて公開 (9)2023年2月6日にGoogle LLCのウェブサイトの掲載アドレス(https://www.youtube.com/shorts/n7K8ImjJkrQ)にて公開 (10)2023年3月24日に株式会社エイトにて納品により公開 (11)2023年(令和5年)5月12日に日本経済新聞のウェブサイトの日経電子版の掲載アドレス(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF204VR0Q3A420C2000000/)にて公開 (12)2023年(令和5年)5月16日に株式会社日本経済新聞社(大阪本社)が発行した日本経済新聞朝刊の第39面にて公開 (13)2023年6月30日にZAZA株式会社の掲載アドレス(https://metoree.com/companies/15280/#catalogおよびhttps://metoree.com/catalogs/SWgc6ETrw2/)にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】591192292
【氏名又は名称】株式会社中農製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003915
【氏名又は名称】弁理士法人岡田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古野 重和
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-159923(JP,A)
【文献】特開2001-104895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物のマスキング部分をマスキングするマスキング治具に付着した塗料を洗浄する塗装用治具の塗料洗浄装置であって、
前記マスキング治具が収納された洗浄容器を保持する洗浄容器保持部、
前記洗浄容器保持部の上方に配置され、前記マスキング治具に水を高圧で噴射する噴射ノズル部を含み、
前記洗浄容器は、
筒状部、
前記筒状部の軸方向の一方側に配設されるボウル部、および
前記筒状部の半径方向に前記筒状部の胴部を貫通する複数の胴部貫通孔を含むことを特徴とする、塗料洗浄装置。
【請求項2】
前記ボウル部は、前記ボウル部の周面および底部の両方またはいずれか一方に配設され、当該周面および底部の両方またはいずれか一方を貫通する複数のボウル部貫通孔をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の塗料洗浄装置。
【請求項3】
前記筒状部の前記複数の胴部貫通孔の開口面積の総和をXとし、前記ボウル部の前記複数のボウル部貫通孔の開口面積の総和をYとしたき、X>Yとなるように設定されていることを特徴とする、請求項2に記載の塗料洗浄装置。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の塗料洗浄装置を用いた塗装用治具の塗料洗浄方法であって、前記噴射ノズル部から噴射された前記水を前記洗浄容器内に貯留させた状態で前記マスキング治具に噴射して洗浄する洗浄工程を含むことを特徴とする、塗料洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄工程は、
前記筒状部と前記ボウル部との境界およびその近傍を上限として、前記マスキング治具を前記洗浄容器に収納する工程、および
前記噴射ノズル部から噴射された前記水を、前記洗浄容器内において、前記筒状部と前記ボウル部との境界およびその近傍を上限として貯留させた状態で、前記マスキング治具に噴射して洗浄する工程を含むことを特徴とする、請求項4に記載の塗料洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装用治具の塗料洗浄装置に関し、エンジカバー,ステアリングシャフト,ブレーキ部品,ワイパーブレード,足回り部品等の自動車部品、換気扇,換気扇のカバー,ドア,ノブの取っ手,住宅設備機器、モータ,減速機,油圧配管の端部,機械カバー,フレームの連結部等の建設機器等のマスキング部分にマスキングする、特にたとえば、マスキングゴムに付着した塗料を洗浄・除去するのに好適な塗装用治具の塗料洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の工業製品、特にたとえば自動車部品の製造工程では、当該部品にウレタン系やシリコン系の塗料を塗装する塗装工程において使用されるマスキング治具は、被塗装品(塗装される製品)の所望する特定部位にだけ塗料を付着させるために、被塗装品の塗装部位以外の領域を被覆するように設置されて、塗料が付着しないようにする治具である。
このマスク治具は、シリコンゴム等合成樹脂材料で、被塗装品の塗装部位の形状に対応する形態に成型されている。被塗装品に対応するマスキング治具が選択されて塗装工程に供され、当該塗装工程で付着した塗料を洗浄することによって、繰り返し使用されるものである。この場合、具体的には、塗装工程で被塗装品の所望の塗装部位に塗布された塗料は、塗装部位の周辺にも飛散等するため、マスキング治具の表面、とりわけ塗装部位と近接するエッジ部分に塗料が付着してしまうので、塗装工程後には、マスキング治具から塗料を洗い落とすための洗浄工程が必要となっている。
そこで、本発明の背景となるマスク治具の洗浄方法としては、て、有機塩素系溶剤であるジクロロメタンを洗浄剤として用いる方法やシンナー系溶剤に浸漬させて、塗料を溶解する方法、高沸点溶剤を使用して塗料を溶解する方法等が挙げられる。
一方、本発明の背景となる従来のマスク治具の洗浄装置としては、当該装置内部に塗料が付着した被洗浄物であるマスク治具を供給する洗浄容器と、この洗浄容器内に設けられたマスク治具に向けて洗浄液を噴射するノズル体と、このノズル体とマスク治具の間隔を調整することができる制御機構とを具備したことを特徴とするものがある(例えば、特許文献1参照。)。
また、他の本発明の背景となる従来の塗装用マスク治具に付着した塗料の洗浄装置には、洗浄液が注入されている洗浄槽と、リンス剤が注入されているリンス槽と、スチーム又はエアーの噴射手段を備えていて、スチーム洗浄及びエアー乾燥するための槽と、洗浄槽、リンス槽及びスチーム洗浄及びエアー乾燥するための槽間にわたり塗装用マスク治具を水平に搬送し、かつそれを各槽に挿入できるように昇降可能となった搬送装置とを備えていて、洗浄液が、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート及びヘキシレングリコールのうち少なくとも一つである85~95重量%の第1成分と、液状炭化水素である炭素数8~18のα-オレフィン5~15重量%の第2成分とで構成されており、リンス剤が水溶性のグリコール類、水溶性のグリコールエーテル化合物及び水溶性アルコール類の少なくとも一つから構成されている洗浄装置がある(例えば、特許文献2参照。)。
この洗浄装置では、洗浄槽が、洗浄槽内の洗浄液を加熱するための手段、洗浄液から気泡を発生させるためのエアーレーション手段を備えていて、搬送装置が、塗装用マスク治具が洗浄槽の洗浄液に浸漬された状態でこれを上下動させて塗料を洗い落とし、リンス槽のリンス剤に浸漬された状態でこれを上下動させて洗浄液とリンス剤を置換するための上下動手段を有していることが好ましいものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-99799号公報
【文献】特許第4488681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したジクロロメタンを洗浄剤として使用する従来の洗浄方法では、ジクロロメタンが発ガン性物資である点が指摘されており、作業者の健康面での問題や地下水汚染等の環境問題を抱えている。しかも、洗浄剤中にマスク治具から洗い落とされた塗料が溶解して、洗浄力を急速に失ってしまうので、洗浄液の交換を定期的に行わなければならないので、手間がかかるとともに、洗浄液のランニングコストが高くなる。
また、上記したシンナー系溶剤にマスク治具を浸漬させて、付着塗料を溶解する方法では、塗料の溶解を促進させるために、浸漬槽内でのマスク治具を揺動させる作業が必須となるとともに、洗浄工程に時間がかかる。
さらに、上記した塗料を高沸点溶剤で溶解して洗浄する方法では、洗浄液自体のコストが高くなる、洗浄液をハンドリングするための設備のコストが高くなる、高沸点溶剤の使用が環境上問題となる、などの技術的な問題点がある。
さらに、上記した例えば特許文献1に開示されている洗浄装置では、マスク治具全体に洗浄液を吹き付けるという点、特に、たとえばマスク治具の屈曲形成されたエッジ部分に付着する塗料を確実に洗い落とすという点に関し、洗浄液のノズル吹き付け方法に改善の余地を残している。
また、上記した例えば特許文献2に開示されている洗浄装置およびそれを用いた洗浄方法では、洗浄液が注入されている洗浄槽と、リンス剤が注入されているリンス槽と、スチーム又はエアーの噴射手段を備えていてスチーム洗浄及びエアー乾燥するための槽と、洗浄槽、リンス槽及びスチーム洗浄及びエアー乾燥するための槽間にわたり塗装用マスク治具を水平に搬送し、かつ各槽に挿入できるように昇降可能となった搬送装置とを備え、塗装用マスク治具が洗浄槽の洗浄液に浸漬された状態で、これを上下動させて塗料を洗い落とし、リンス槽のリンス剤に浸漬された状態で上下動させて洗浄液とリンス剤を置換するための上下動手段を有しているため、洗浄作業に必要な洗浄設備が大型のものとなっている。
また、この洗浄装置を用いた洗浄方法では、洗浄液で塗装用マスク治具に付着した塗料を洗浄する第1工程と、塗装用マスク治具に付着した洗浄液を、水溶性のグリコール、水溶性のグリコールエーテル化合物及び水溶性アルコールの少なくとも一つから構成されているリンス剤で置換する第2工程と、塗装用マスク治具に付着した前記リンス剤をスチームで洗浄する第3工程と、塗装用マスク治具を圧縮エアーにより乾燥する第4工程とを含んでいるため、工程数が多く且つ作業時間も掛かるものとなっているので、作業効率の悪いものであった。
【0005】
それゆえに、本発明の主たる目的は、マスキングゴム等の塗装用治具全体の洗浄を確実に短時間で行うことができ、装置自体の小型化も可能となり、且つ、環境上の問題がなく、ランニングコストの低い塗装用治具の洗浄装置およびそれを用いた洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は、被塗装物のマスキング部分をマスキングするマスキング治具に付着した塗料を洗浄する塗装用治具の塗料洗浄装置であって、マスキング治具が収納された洗浄容器を保持する洗浄容器保持部と、洗浄容器保持部の上方に配置され、マスキング治具に水を高圧で噴射する噴射ノズル部とを含み、洗浄容器は、筒状部と、筒状部の軸方向の一方側に配設されるボウル部と、筒状部の半径方向に筒状部の胴部を貫通する複数の胴部貫通孔とを含むことを特徴とする、塗料洗浄装置である。
請求項2に係る本発明は、請求項1に係る発明に従属する発明であって、ボウル部は、ボウル部の周面および底部の両方またはいずれか一方に配設され、当該周面および底部の両方またはいずれか一方を貫通する複数のボウル部貫通孔をさらに含むことを特徴とする、塗料洗浄装置である。
請求項3に係る本発明は、請求項2に係る発明に従属する発明であって、筒状部の複数の胴部貫通孔の開口面積の総和をXとし、ボウル部の複数のボウル部貫通孔の開口面積の総和をYとしたき、X>Yとなるように設定されていることを特徴とする、塗料洗浄装置である。
請求項4に係る本発明は、請求項1または請求項3に記載の塗料洗浄装置を用いた塗装用治具の塗料洗浄方法であって、噴射ノズル部から噴射された水を洗浄容器内に貯留させた状態でマスキング治具に噴射して洗浄する洗浄工程を含むことを特徴とする、塗料洗浄方法である。
請求項5に係る本発明は、請求項4に係る発明に従属する発明であって、洗浄工程は、筒状部とボウル部との境界およびその近傍を上限として、マスキング治具を洗浄容器に収納する工程と、噴射ノズル部から噴射された水を、洗浄容器内において、筒状部とボウル部との境界およびその近傍を上限として貯留させた状態で、マスキング治具に噴射して洗浄する工程とを含むことを特徴とする、塗料洗浄方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塗装用治具の洗浄装置およびそれを用いた洗浄方法によれば、マスキングゴム等の塗装用治具全体の洗浄を確実に短時間で行うことができ、装置自体の小型化も可能となり、且つ、環境上の問題がなく、ランニングコストの低い塗装用治具の洗浄装置およびそれを用いた洗浄方法が得られるという効果がある。
【0008】
本発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る塗装用治具の塗料洗浄装置の実施の形態の一例を示す正面図解図である。
図2図1の左側面図解図である。
図3図1の平面図解図である。
図4図1図2および図3に図示した塗装用治具の塗料洗浄装置に適用される洗浄容器を保持する洗浄容器保持部の一例を示す正面図解図である。
図5図4の底面図解図である。
図6図4の左側面図解図である。
図7図1図2および図3に図示した塗装用治具の塗料洗浄装置に適用される洗浄容器の正面図解図である。
図8図7の平面図解図である。
図9図1図2および図3に図示した塗装用治具の塗料洗浄装置により洗浄されるマスキング治具(ワーク)の一例およびその使用例を示す斜視図解図である。
図10図1図2および図3に図示した塗装用治具の塗料洗浄装置によりマスキング治具(ワーク)を洗浄するときの作用・効果を示す説明図解図である。
図11図1図2および図3に図示した塗装用治具の塗料洗浄装置によりマスキング治具(ワーク)を洗浄した後の状態を示す説明図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係る塗装用治具の塗料洗浄装置の実施の形態の一例を示す正面図解図であり、図2図1の左側面図解図であり、図3図1の平面図解図である。
この塗料洗浄装置10は、概略的に言うと、主として、その下端側にキャスター14が備えられたハウジング(筐体)12、ハウジング12内の上部に配設された洗浄ブース18、その内部に洗浄ワークとしてのマスキング治具(例えば、マスキングプラグ)102が収納され、洗浄ブース18に配置される洗浄容器70、洗浄ブース18の上方に配設され、洗浄容器70内のマスキング治具102に高圧の水を噴射する噴射ノズル部34、ハウジング12内の下部に配設され、マスキング治具(例えば、マスキングプラグ)102を洗浄した後のマスキング治具102から除去された塗料カス(マスキング治具から剥離・除去された塗装膜)を含んだ洗浄水を集水して下方に流下させる集水部80、集水部80から流下された塗料カスを含んだ洗浄水から塗料カスをろ過するろ過部82等の構成要件を含むものである。この塗料洗浄装置10では、洗浄水として、たとえば水道水が用いられている。
【0011】
以下、この塗料洗浄装置10の上記した構成要件およびその他の構成要件について、詳述する。
先ず、この塗料洗浄装置10により洗浄されるワークとしてのたとえばマスキング治具の一例について、たとえば図9を参照しながら説明する。洗浄されるワークとしてのマスキング治具は、図9に示すように、たとえば自動車のブレーキ部品100の塗装時に用いられるマスキングプラグ102およびマスキングシール104等が挙げられる。この実施の形態に係る塗料洗浄装置10では、塗装工程後のマスキングプラグ102に付着し乾燥した塗料の塗膜層106を洗浄して除去するものである。
【0012】
塗料洗浄装置10は、図1図2に示すように、たとえば2つの支持ベース11a,11bで支持されるハウジング12を含む。2つの支持ベース11a,11bは、それぞれ、溝型鋼および角パイプ、または、C型鋼等,等辺アングル,不等辺アングル等の各種鋼材を組み合わせたものが適宜用いられる。ハウジング12は、当該ハウジング12を移動自在とする移動手段として、支持ベース11a,11bに、それぞれ、2つの移動キャスター14a,14bおよび15a,15bが配設されている。
ハウジング12内部の上部には、洗浄ブース18が配設される。洗浄ブース18は、カップ状の洗浄容器70(図7図8参照。)が保持される洗浄容器保持部50を含む。この洗浄容器保持部50は、洗浄容器70の載置テーブル52を含む。載置テーブル52は、図5に示すように、たとえば平面視6角形状に形成されている。載置テーブル52は、その一方主面から他方主面に貫通する複数の貫通部54を有する。複数の貫通部54は、たとえば細長い長孔に形成され、載置テーブル52の幅方向に間隔を隔てて、たとえば10列に配列されている。
【0013】
また、載置テーブル52には、図1図2図4図5および図6に示すように、当該載置テーブル52の長手方向の一端側(たとえば図4図6で見て、塗料洗浄装置10の前面側)に、案内部56が連接されている。案内部56は、図6に示すように、側面視弓形の湾曲状プレートにより形成されている。案内部56は、洗浄容器70を載置テーブル52にスムーズに導入して載置させるためのガイド機能を有するものである。
なお、この載置テーブル52と案内部56は、ステンレス,アルミ等の錆びにくい金属材料および合成樹脂材料で一体的に形成され得る。
【0014】
また、この洗浄容器保持部50は、図2に示すように、載置テーブル52と平面視略同形の保持プレート58を含む。保持プレート58は、たとえば各々2本の保持柱60a,60bにより、ハウジング12の天板12Aに保持されている。保持プレート58は、その前端部が2本の保持柱60aで天板12Aに接続され、その後端部が2本の保持柱60bによって天板12Aに接続されている。
【0015】
さらに、この保持プレート58は、図1図2図4および図6に示すように、たとえば各々2本の支柱62a,62b、支柱64a,64bおよび支柱66a,66bによって、載置テーブル52と接続されている。この場合、支柱62a,62bは、載置テーブル52の前端側と保持プレート58とを接続し、支柱66a,66bは、載置テーブル52の後端側と保持プレート58とを接続し、支柱64a,64bは、載置テーブル52の中間部を保持プレート58とを接続している。各々2本の支柱62a,62b、支柱64a,64bおよび支柱66a,66bは、それぞれ、載置テーブル52と保持プレート58とを接続する機能と共に、載置テーブル52と保持プレート58との間において、その高さ方向の間隔を、たとえば洗浄容器70の高さよりも僅かに高くなるようにするスペーサとしての機能も有している。また、支柱64a,64bおよび支柱66a,66bは、後述の位置決め部材68a,68bと協働して、載置テーブル52に載置される洗浄容器70を位置決めする位置決め機能をさらに有するものである。
【0016】
さらに、載置テーブル52には、図1図2図4図5および図6に示すように、上記した支柱64a,64bおよび支柱66a,66bとの協働作用により、載置テーブル52に載置される洗浄容器70を正確に所定の位置に載置できるように位置決めするための位置決め部材68a,68bが配設されている。この位置決め部材68a,68bは、たとえば図5に示すように、載置テーブル52に載置される洗浄容器70の載置位置の円周上よりも僅かに案内部56側に間隔を隔てた位置に配設される。この位置決め部材68a,68bは、特に、図4図5および図6に示すように、たとえばボールプランジャーで形成されている。この場合、洗浄容器70を載置テーブル52に載置する際に、当該洗浄容器70がこの位置決め部材68a,68bを通過するときは、ボールプランジャーのスプリング作用により球状部分が下方に移動し、洗浄容器70が通過して所定の位置に載置された後は球状部分が上方に移動するため、当該洗浄容器70は位置決め部材68a,68bより前方側に移動することが規制されるものである。
【0017】
すなわち、この位置決め部材68a,68bは、上記した支柱64a,64bおよび支柱66a,66bと協働して洗浄容器70を載置テーブル52の所定の位置に載置するための位置決め機能と、当該洗浄容器70が載置位置から案内部56側にズレ出ないようにするためのストッパ機能とを兼用するものとなっている。この場合、支柱62a,62b、支柱64a,64b、支柱66a,66bおよび位置決め部材68a,68bは、載置テーブル52に載置される洗浄容器70の所定の載置位置の円周上に配置されている。
なお、載置テーブル52には、図5に示すように、支柱62a,62bを取付ける際に、当該支柱62a,62bの取付け間隔を調整するための予備の取付け孔69a,69bが設けられている。
【0018】
また、この塗料洗浄装置10は、図1図2および図3に示すように、洗浄ブース18と対向するハウジング12の正面側の正面視横長矩形状の正面開放部12Aに対して、開閉自在とするたとえば正面視横長矩形状の正面扉20が配設されている。この正面扉20は、洗浄時に、洗浄水が飛散しないようにするために、適宜、洗浄ブース18の正面開放部12Aを閉塞するものである。この正面扉20は、正面扉開閉装置を駆動させるアクチュエータとしてのたとえばエアシリンダ22によって、上下方向に開閉自在となっている。この場合、エアシリンダ22は、ハウジング12の正面側の高さ方向の中間部で且つ左右側に間隔を隔てて配置された2つの正面扉開閉スイッチ98a,98bの作動により駆動される。2つの正面扉開閉スイッチ98a,98bは、両手で押すタイプのスイッチで、正面扉20の開扉時に手が挟まれるのを防止するようにしている。
【0019】
また、この塗料洗浄装置10は、図1図2および図3に示すように、洗浄ブース18に洗浄水を高圧で噴射するたとえば1つの噴射ノズル部34が配設されている。さらに、洗浄後の洗浄容器70に空気を高圧で噴射するたとえば2つのエアーブローノズル部36a,36bが、洗浄ブース18を正面側からみて、噴射ノズル部34の左右に横並びに間隔を隔てて配設されている。この1つの噴射ノズル部34および2つのエアーブローノズル部36a,36bは、それぞれ、その噴射孔(図示せず)が保持プレート58から洗浄容器70に向けて配置され、ノズル部ホルダ38により、ハウジング12の天板12Aに取付けられている。2つのエアーブローノズル部36a,36bは、洗浄後のマスキングプラグ102に付着している洗浄水および塗膜106の剥離片を吹き飛ばして乾燥させるためのものである。
この2つのエアーブローノズル部36a,36bは、たとえばコンプレッサ(図示せず)にホースを含む配管(図示せず)により接続され、当該コンプレッサ(図示せず)により圧縮空気が供給されるものである。
【0020】
正面扉20を上下動させるためのエアシリンダには、2つの近接センサ(図示せず)が取り付けてある。エアシリンダの上端に取り付けてある近接センサは、シリンダの内部のピストン(金属製)が上端に移動して正面扉20上昇させたらそれを検知するようになっている。そして、正面扉20は、シーケンス制御にて、2つのエアーブローノズル部36a,36bによる乾燥終了後、0.5秒後に降下を開始するようにプログラムでコントロールされている。正面扉20が開き始めてシリンダの内部のピストンが下端まで移動したら、こんどはシリンダ本体下側に取り付けてある近接センサがそれを検知し、ピストンの降下が終了する。
【0021】
この塗料洗浄装置10は、図2に示すように、噴射ノズル部34に高圧の洗浄水を供給する高圧ポンプユニット26を含む。高圧ポンプユニット26は、高圧ポンプ28と、当該高圧ポンプ28を駆動させる駆動モータ30を含む。駆動モータ30は、防振ゴム32で防振されている。この場合、図2で見て、2つの支持ベース11a,11b間の左側に防振ゴム32が架設され、この防振ゴム32の上に高圧ポンプ28が配設される。また、防振ゴム32および高圧ポンプ28を覆うようにカバー部材33が配設され、当該カバー部材33の上に駆動モータ30が配設されている。
【0022】
さらに、この塗料洗浄装置10において、図2に示すように、高圧ポンプ28は、吸入口28Aと吐出口28Bとを含む。吸入口28Aには、水(初期的には、たとえば水道水。)をタンク部24内から送入するための吸入配管40が配管され、吐出口28Bには、水(洗浄水および洗浄処理液)を後述するタンク部24内に供給する給水配管42が配管されている。高圧ポンプ28と噴射ノズル部34とは、高圧の水を供給する給水配管42および高圧の水を噴射ノズル部34に供給する高圧ホース46を介して、接続されている。すなわち、この塗料洗浄装置10では、水が、タンク部24から、吸入配管40、高圧ポンプ28の吸入口28A、高圧ポンプ28の吐出口28B、給水配管42および高圧ホース46を経由して、塗料洗浄装置10内の洗浄ブース18内の洗浄容器70、集水部80、ろ過部82およびタンク部24へと循環されるものとなっている。
また、この塗料洗浄装置10には、ハウジング12の底面側に、タンク部24内から水(洗浄水および洗浄処理液)を排出させるための排水配管44が配設されている。
【0023】
一方で、この塗料洗浄装置10は、図1図2に示すように、ハウジング12内の洗浄ブース18の下方に配設され、洗浄ブース18で、洗浄容器70内のマスキングプラグ102に付着した塗料を洗浄した後の洗浄水(以下、この洗浄後の塗料のカスを含んだ洗浄水のことを「洗浄処理液」という。)を集水して下方に流下させる集水部80を含む。この集水部80は、洗浄ブース18の下方において、たとえば上方が開放されたたとえば四角錐漏斗状の態様を有するものとなっている。集水部80の底面の中央部には、洗浄処理液を下方に落下させる流下口80Aが配設されている。
【0024】
さらに、この集水部80の下方には、直方体状のろ過部82が配置されている。このろ過部82は、少なくともその周面および底面がメッシュ部82Aで形成され、集水部80の流下口80Aから落下する洗浄処理液がろ過部82のメッシュ部82Aによって、ろ過されるものとなっている。このろ過部82は、図2に示すように、ハウジング12の正面側に開閉自在に設けられたろ過部取出し口カバー83を開けて、適宜、取出し可能となっている。ハウジング12の下部には、ろ過部82の下方にタンク部24が配設されている。このタンク部24の底面には、その中央部に、タンク部24内に貯留された洗浄処理液を排出する排出口86が備えられている。また、ハウジング12の正面側下部には、タンク部24内の水(洗浄水および洗浄処理液)の量を目視した確認するためのレベルゲージ84が配設されている。
【0025】
このレベルゲージ84は、初期的に洗浄水をタンク部24に注入する時に、あふれないようにするための水位上限の目安となる。洗浄水を注入し過ぎた場合には、タンク部24の下部の排水バルブ(図示せず)を手動で開いて排水する。タンク部24内の洗浄水が不足した場合、特に、渇水したとき、高圧ポンプ28が空回りとなり、焼き付いてしまうため、この塗料洗浄装置10には、当該塗料洗浄装置10の作動を停止させ、高圧ポンプ28を保護するための安全スイッチが配設されている。この場合、タンク部24内の水(洗浄水および洗浄処理液)が下限を切ると、当該タンク部24内に設けられているレベルスイッチとしてのたとえばフロートスイッチ(図示せず)が作動し、この塗料洗浄装置10の作動を停止させるものである。
【0026】
次に、この塗料洗浄装置10では、特に、既に上述した洗浄ブース18に保持され、ワークとしてのたとえばマスキングプラグ102が収納される洗浄容器70に特徴を有しているので、以下に、この洗浄容器70の構造について詳述する。
洗浄容器70は、図7および図8に示すように、底部として、たとえば円筒状の筒状部72を含む。筒状部72の内側には、当該筒状部72の軸方向の中間部に、たとえば半球状のボウル部74が形成されている。筒状部72の直径とボウル部74の開放部の直径とは、ほぼ同じに形成されている。このボウル部74は、筒状部72の軸方向の下端部(一端部)寄りに配設されている。ボウル部74は、半球状のボウル形状に限定されるものではなく、たとえば円錐台形ボウル状、三角錐大ボウル状,四角錐台ボウル状,五角錐台ボウル状等の角錐台ボウル状等を含む各種の錐台ボウル状に形成され得るものである。
筒状部72は、図7図8図6図10および図11に示すように、当該筒状部72の半径方向に貫通する胴部貫通孔として、当該筒状部72の胴部72aにたとえば複数の胴部スリット73を有している。複数の胴部スリット73は、筒状部72の円周方向に間隔を隔てて、且つ、胴部72aの内側面から外側面に貫通して配設されている。複数の胴部スリット73は、筒状部72の軸方向に所望の長さに延びる長円状の態様を有するものとなっている。この実施の形態の例では、たとえば23個の胴部スリット73が筒状部72の円周方向に所望の間隔を隔てて配列されている。
【0027】
一方、ボウル部74は、図7図8図10および図11に示すように、ボウル部74を貫通するボウル部貫通孔として、たとえば当該ボウル部の半球状壁部74aの周壁部に、たとえば複数の周壁部スリット75を有している。複数の周壁部スリット75は、半球状壁部74aの円周方向に間隔を隔てて、且つ、半球状壁部74aの内側面から外側に貫通して配設されている。複数の周壁部スリット75は、ボウル部74の半球面に沿って、たとえば弓形状の態様を有するものとなっている。この実施の形態の例では、半球状壁部74aの円周方向をたとえば3等分する位置に、つまり、円周方向にたとえば120度の間隔を隔てて3つの周壁部スリット75が配列されている。
さらに、このボウル部74は、その底部の中央付近で且つ円周方向に間隔を隔てて、他のボウル部貫通孔として、たとえば底部を貫通する3つの平面視円形の底部貫通孔76を有している。この実施の形態の例では、半球状壁部74aの底部の円周方向をたとえば3等分する位置に、つまり、円周方向に120度の間隔を隔てて3つの底部貫通孔76が配列されている。3つの底部貫通孔76は、たとえば図8で見て、3つの周壁部スリット75の一端側、この場合、ボウル部74の底部の中心側と間隔を隔てて配列されている。また、洗浄容器70には、図7および図8に示すように、筒状部72の外周面の一部に、たとえば「コ」字状の把持部78が配設されている。把持部78は、その一端部が筒状部72の軸方向の上部側に固着され、その他端部が筒状部72の軸方向の下部側に固着されている。
【0028】
この洗浄容器70では、特に、複数の胴部スリット73の開口面積の総和をXとし、周壁部スリット75および底部貫通孔76の開口面積の総和をYとしたとき、X>Yとなるように、たとえば複数の胴部スリット73の大きさ、個数、配列、配置される位置等が適宜設定されている。図7および図8で示す実施の形態の一例でいうと、胴部スリット73の筒状部72の軸方向で見た時の長さ(高さ)、筒状部72の円周方向で見た時の長さ(幅)、胴部スリット73の個数、複数の胴部スリット73の円周方向で見た時の間隔、配列等が適宜変更可能に設定され得る。この塗料洗浄装置10では、洗浄容器70内のボウル部74に洗浄水が溜まった状態を維持しながら、当該洗浄容器70内に収納されたマスキングプラグ102を洗浄することができるように、複数の胴部スリット73、周壁部スリット75および底部貫通孔76の開口面積が設定されている。
また、この塗料洗浄装置10では、洗浄容器70が周壁部スリット75および底部貫通孔76を必ずしも有していなくてもよく、胴部スリット73だけを有するようにしてもよい。
【0029】
次に、この塗料洗浄装置10において、洗浄容器70内に収納されたマスキングプラグ102が洗浄されるときの作用・効果について、以下、詳述する。
この塗料洗浄装置10では、図1図2図4図5図6に示すように、洗浄ブース18内において、その中にマスキングプラグ10が多数個収納された洗浄容器70が洗浄保持部50に保持された状態で洗浄・除去される。この場合、噴射ノズル部34から、載置テーブル52に載置された洗浄容器70内のマスキングプラグ102に向けて、図10に示すように、高圧の洗浄水が噴射される。
そうすると、高圧の洗浄水洗浄容器70内に流入し、ボウル部74および筒状部72の順で、順次、洗浄水の水位が上がっていくが、上述したように、ボウル部74に洗浄水が溜まった状態を維持しながら、すなわち、ボウル部74に貯留された貯留洗浄水内で、マスキングプラグ102を洗浄することができる。
【0030】
この場合、噴射ノズル部34から噴射された高圧の洗浄水は、マスキングプラグ102を吹き飛ばし、ボウル部74内の貯留洗浄水内において、マスキングプラグ102どうしが衝突し、且つ、吹き飛ばされたマスキングプラグ10は、筒状部72の胴部72aの内壁面およびボウル部74の半球状壁部74aに当たる。このとき、マスキングプラグ102が弾性変形して、塗膜層106に亀裂部108が発生する。さらに、当該亀裂部108に対して高圧の洗浄水が吹き付けられて亀裂部108内に侵入するため、塗膜層106が次々と剥離・除去されていくものとなる。
【0031】
すなわち、ボウル部74内の貯留洗浄水内では、マスキングプラグ102を浮遊且つ撹拌しながら、且つ、高圧の洗浄水を噴射して当該マスキングプラグ102に当てるため、マスキングプラグ102をランダムに、しかも、高速に姿勢変化、たとえば回転および揺動等を起こさせることによって、あたかも、疑似的に貯留洗浄水内でブラウン運動(気体または液体中に浮遊する微粒子が行う不規則な運動)のように、マスキングプラグ102に種々の不規則で複雑な動きを付与することができる。そのため、結果的に、多数のマスキングプラグ102全体にまんべんなく高圧の洗浄水が当たって、図11に示すように、当該マスキングプラグ102全体の塗膜層106を剥離・除去することができる。
【0032】
発明者の試験によれば、複数のマスキングプラグ102は、洗浄容器70のボウル部74内に収納されることが好ましい。また、ボウル部74内の貯留洗浄水内に洗浄水を維持した状態でマスキングプラグ102を洗浄することが好ましく、ボウル部74と筒状部72の境界付近に洗浄水の水位を維持した上で、洗浄することが最も好ましいものである。当該洗浄水の水位の位置は、実際に洗浄するワーク(例えば、マスキングプラグ102、マスキングシール104等。)の形状、大きさ、塗膜層106の付着量(汚れ具合等。)によって、最適な水位が設定される。この場合、洗浄容器70の胴部スリット73、周壁部スリット75および底部貫通孔76の数、形状、大きさ、開口位置を適宜コントロールすることによって変更可能に設定され得る。既に、上述したように、特に、複数の胴部スリット73の開口面積の総和をXとし、周壁部スリット75および底部貫通孔76の開口面積の総和をYとしたとき、X>Yとなるように、たとえば複数の胴部スリット73の大きさ、個数、配列、配置される位置等が適宜設定される。
【0033】
次に、この塗料洗浄装置10を用いた塗装用治具の塗料洗浄方法の一例について、説明する。
先ず、洗浄容器70の中に洗浄するワークとしてのたとえばマスキングプラグ102を、たとえば当該洗浄容器70のボウル部74内に複数個収納する[洗浄するマスキングプラグ102(ワーク)の準備工程]。
次に、予め、開いた状態の正面扉20の正面開放部13から洗浄容器70を入れて、洗浄ブース18内の載置テーブル52に当該洗浄容器70を載置する[洗浄容器を洗浄ブース18にセットする工程]。
それから、正面扉開閉用スイッチ98a,98bを押して正面扉20を上昇させて閉める。正面扉20が閉鎖すると、それをエアシリンダのオートスイッチが作動し、洗浄容器70内のマスキングプラグ102の洗浄が開始される[マスキングプラグ102(ワーク)の洗浄工程]。
洗浄が終了すると、エアーブローノズル部36a,36bが作動し、洗浄後のマスキングプラグ102に付着している洗浄水を吹き飛ばして乾燥させるようにシーケンス制御されているため、洗浄後のマスキングプラグ102が乾燥される[マスキングプラグ102(ワーク)の乾燥工程]。
マスキングプラグ102の乾燥が終了すると、正面扉20が自動的に下降して開くようにシーケンス制御されているため、当該乾燥が終了すると、正面扉20が開き、載置テーブル52にから洗浄容器70が取り出される[洗浄容器取出し工程]。
【0034】
上記した洗浄工程では、特に、複数のマスキングプラグ102は、図10に示すように、洗浄容器70のボウル部74内に収納されることが好ましい。また、洗浄容器70のボウル部74内に収納されたマスキングプラグ102(マスキング治具)において、ボウル部74内の貯留洗浄水内に洗浄水を維持した状態でマスキングプラグ102を洗浄することが好ましく、さらに、図10に示すように、ボウル部74と筒状部72の境界付近に洗浄水の水位を維持した上で、洗浄することが最も好ましい。
すなわち、上記した洗浄工程において、筒状部72とボウル部74との境界およびその近傍を上限として、マスキングプラグ102を前記洗浄容器に収納する工程と、噴射ノズル部34から噴射された水を、洗浄容器内70内において、筒状部72とボウル部74との境界およびその近傍を上限として貯留させた状態で、マスキングプラグ102に噴射して洗浄する工程とを含むことがさらに好ましいものとなっている。
【0035】
上記した発明の実施の形態の一例に係る塗装用治具の塗料洗浄装置10およびそれを用いた洗浄方法では、既述した従来の技術のように、特別な洗浄剤、洗浄液、高沸点溶剤などを必要とすることなく、たとえば水道水で塗装用治具(マスキングプラグ102)を洗浄することができ、また、従来の技術のように、洗浄作業に大型の洗浄設備を必要とすることがなく、ハンディーな洗浄容器70を洗浄ブース18に適宜出し入れする簡単な構造となっていて、さらに、従来の技術のように、塗装用治具(マスキングプラグ102)を洗浄するための多くの洗浄工程を必要とせず、作業時間の短縮化も図れる。
すなわち、本発明に係る塗装用治具の洗浄装置およびそれを用いた洗浄方法によれば、マスキングゴム等の塗装用治具全体の洗浄を確実に短時間で行うことができ、装置自体の小型化も可能となり、且つ、環境上の問題がなく、ランニングコストの低い塗装用治具の洗浄装置およびそれを用いた洗浄方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 塗装用治具の塗料洗浄装置
11 ベース架台
11a,11b 支持ベース
12 ハウジング(筐体)
12A 天板
13 正面開放部
14a,14b,15a,15b キャスター
16 レベルアジャスター
18 洗浄ブース
20 正面扉
22 正面扉開閉用アクチュエータ(エアシリンダ)
24 タンク部
26 高圧ポンプユニット
28 高圧ポンプ
28A 吸入口
28B 吐出口
30 駆動モータ
32 防振ゴム
33 カバー部材
34 噴射ノズル部
36a,36b エアーブローノズル部
38 ノズル部ホルダ
40 給水配管
42 吸入配管
44 排水配管
46 高圧ホース
50 洗浄容器保持部
52 載置テーブル
54 載置テーブルの貫通部
56 案内部
58 保持プレート
60a,60b 保持プレートを保持する保持柱
62a,62b 洗浄カップの案内部を支持する支柱
64a,64b 支柱
66a,66b 支柱
68a,68b 位置決め部材(ボールプランジャー)
69a,69b 予備の取付け孔
70 洗浄容器
72 筒状部
72a 胴部
73 胴部スリット
74 ボウル部
74a 半球状壁部
75 周壁部スリット
76 底部貫通孔
78 把持部
80 集水部
80A 流下口
82 ろ過部
82A メッシュ部
83 ろ過部取出し口カバー
84 レベルゲージ
86 排出口
88 制御盤
90 操作盤
92 タッチパネル
94 非常停止ボタン
96 電源スイッチ
98a,98b 正面扉開閉用スイッチ
100 自動車のブレーキ部品
102 マスキングプラグ(マスキング治具)
104 マスキングシール(マスキング治具)
106 塗膜層(マスキング塗料層)
108 亀裂部
【要約】      (修正有)
【課題】マスキングゴム等の塗装用治具全体の洗浄を確実に短時間で行うことができ、装置自体の小型化も可能となり、且つ、環境上の問題がなく、ランニングコストの低い塗装用治具の塗料洗浄装置およびそれを用いた塗料洗浄方法を提供することである。
【解決手段】被塗装物のマスキング部分をマスキングするマスキング治具102に付着した塗料を洗浄する塗装用治具の塗料洗浄装置であって、マスキング治具102が収納された洗浄容器70を保持する洗浄容器保持部と、洗浄容器保持部の上方に配置され、マスキング治具102に水を高圧で噴射する噴射ノズル部とを含み、洗浄容器70は、筒状部72と、筒状部72の軸方向の一方側に配設されるボウル部74と、筒状部72の半径方向に胴部72aを貫通する複数の胴部貫通孔73を含むことを特徴とする、塗料洗浄装置である。
【選択図】図10
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11