(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】少なくとも1つの測定空間において流体媒体の少なくとも1つの特性を測定するためのセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/18 20060101AFI20241219BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20241219BHJP
G01N 25/18 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G01N27/18
G01N27/04 D
G01N25/18 K
(21)【出願番号】P 2023518348
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2021072035
(87)【国際公開番号】W WO2022063476
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】102020211893.0
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】フックス,ティノ
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03540420(EP,A1)
【文献】特開2020-030137(JP,A)
【文献】特開2007-327926(JP,A)
【文献】特開平06-082407(JP,A)
【文献】特開平06-102217(JP,A)
【文献】特開2018-004593(JP,A)
【文献】特開2018-194409(JP,A)
【文献】特開平06-130017(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0311108(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
G01N 25/00-25/72
G06N 20/00-20/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの測定空間(14)にお
ける測定ガス(16)中のH
2
濃度を測定するためのセンサ(10)であって、
前記
測定ガス(16)の熱伝導度を測定して第1の測定信号を出力するように構成されている第1のセンサ要素(18)と、
半導体金属酸化物を有し、第2の測定信号を出力するように構成されている第2のセンサ要素(20)と、
前記
測定ガス(16)の物理的特性を測定するための第3のセンサ要素(22)であって、測定される物理的特性に関して前記第1のセンサ要素(18)および前記第2のセンサ要素(20)とは異なる第3の測定信号を出力するように構成されている、第3のセンサ要素(22)と、
機械学習の方法によりトレーニングされた人工ニューラルネットワークを含むアルゴリズム(30)を用いて、前記第1の測定信号、前記第2の測定信号、および前記第3の測定信号を解析
することで前記H
2
濃度を確定し、さらに
前記アルゴリズム(30)を用いて、前記第1のセンサ要素(18)および/または前記第2のセンサ要素(20)の動作パラメータを変更するように構成されている電子解析部(28)と
を少なくとも含み、
前記電子解析部(28)が、前記動作パラメータを変更するために、制御信号および/または補正信号を前記第1のセンサ要素(18)または前記第2のセンサ要素(20)に出力するように構成されており、前記第1のセンサ要素(18)の当該動作パラメータが、前記第1のセンサ要素(18)の測定要素の温度であり、前記第2のセンサ要素(20)の当該動作パラメータが、前記第2のセンサ要素(20)の温度である、センサ(10)。
【請求項2】
前記第3のセンサ要素(22)が、湿度、特に相対空気湿度と、圧力、特に空気圧力と、温度、特に空気温度とからなるグループから選ばれた少なくとも1つの物理的特性を測定するように構成されている、請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項3】
前記第1のセンサ要素(18)、前記第2のセンサ要素(20)、または前記第3のセンサ要素(22)が互いに別々のセンサ要素である、請求項1または2に記載のセンサ(10)。
【請求項4】
前記第1のセンサ要素(18)、前記第2のセンサ要素(20)、または前記第3のセンサ要素(22)が、1つのセンサチップに統合されたセンサ要素である、請求項1または2に記載のセンサ(10)。
【請求項5】
変圧器(32)をさらに含み、
前記変圧器(32)が、外部の電圧源と接続されるように構成されており、
前記変圧器(32)が、前記第1のセンサ要素(18)、前記第2のセンサ要素(20)、および前記第3のセンサ要素(22)のための供給電圧をさらに生成するように構成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のセンサ(10)。
【請求項6】
インターフェース(34)をさらに含み、
前記インターフェース(34)が、外部の制御部からの制御指令を受信し、かつ/またはセンサの測定データを外部の制御部に出力するように構成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のセンサ(10)。
【請求項7】
センサハウジング(36)をさらに含み、
前記第1のセンサ要素(18)、前記第2のセンサ要素(20)、前記第3のセンサ要素(22)、および前記電子解析部(28)が前記センサハウジング(36)内に配置されており、
前記センサハウジング(36)が少なくとも1つの開口部(38)を有し、前記開口部(38)を用いて、前記第1のセンサ要素(18)、前記第2のセンサ要素(20)、前記第3のセンサ要素(22)を前記
測定ガス(16)に曝すようにする、請求項1から6のいずれか1項に記載のセンサ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
測定空間において流体媒体の少なくとも1つの特性を測定するための多数のセンサ、センサ要素、および方法が従来技術から知られている。この特性は、基本的にはガス状または液状の流体媒体の任意の特性であり得、1つまたは複数の特性が測定され得る。以下では本発明を、さらなる実施形態および用途を制限することなく、ガスを測定するための、特に測定ガス中のH2の割合を測定するための、特にセンサ要素に関して説明する。
【背景技術】
【0002】
ここで説明される種類のセンサ要素は、例えば自動車技術、プロセス技術、化学、および機械製造といった多数の分野において、特にガス濃度を決定するために使用される。つまり、例えば空気・水素混合物等における水素濃度の決定は、水素燃料電池システムの使用において重要な役割を果たす。この場合、安全に関する用途も挙げられる。空気・水素混合物は、例えば水素の割合が4%になると発火可能になる。水素を測定するためのセンサ要素は、例えば損傷または欠陥に起因して漏出する水素を検出し、対応するシステムと結合することによって、警告信号および/または保護措置を発動させるために例えば水素燃料電池車において使用することができる。そのため、燃料電池車1台につき複数の水素センサが必要であり、これらのセンサは排ガスシステムに取り付けられるか(排ガス下)、または大気条件下(外気)で動作する。
【0003】
この種の水素センサについて、多数の測定原理を利用することができる。これらの測定原理には、中でも特に熱伝導、触媒ペリスタ、電気化学セル、半導体金属酸化物、ケミレジスタ、電界効果トランジスタが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術から知られている流体媒体の少なくとも1つの特性を測定するためのセンサ要素には利点があるものの、まだ改善の余地がある。自動車技術において使用するには、このような水素センサは特定の要求事項を満たさなければならない。先に挙げた測定原理は、これらの要求事項に関してそれぞれなんらかの欠点または短所を有している。つまり、この種のセンサ要素は、その大部分が、不十分な反応時間、最小測定範囲を超える測定範囲、および/または、ヘリウムや揮発性有機成分のようなさらなる成分に対する交差感度を有している。さらに、これらのセンサ要素は部分的に費用のかかる構造技術および接続技術に基づいている。
【0005】
そこで、本発明の範囲内で、測定空間において流体媒体の少なくとも1つの特性を測定するための既知のセンサの短所を少なくともかなりの程度まで回避するとともに、自動車技術における要求事項に関して十分な感度、測定範囲、反応時間、および選択性を示す、測定空間において流体媒体の少なくとも1つの特性を測定するためのセンサが提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
少なくとも1つの測定空間において流体媒体の少なくとも1つの特性を測定するための、特に測定ガス中のH2の割合を測定するための本発明によるセンサは、流体媒体の熱伝導度を測定して第1の測定信号を出力するように構成されている第1のセンサ要素と、半導体金属酸化物を有し、第2の測定信号を出力するように構成されている第2のセンサ要素と、流体媒体の物理的特性を測定するための第3のセンサ要素であって、測定される物理的特性に関して第1のセンサ要素および第2のセンサ要素とは異なる第3の測定信号を出力するように構成されている第3のセンサ要素と、第1の測定信号、第2の測定信号、および第3の測定信号を解析するための電子解析部であって、さらに第1のセンサ要素、第2のセンサ要素、および/または第3のセンサ要素の動作パラメータを変更するように構成されている電子解析部と、を少なくとも含む。
【0007】
流体媒体の測定対象の特性に関する情報、例えば供給された測定ガス中のH2濃度は、主に熱伝導度センサ要素の形の第1のセンサ要素およびMOXセンサ要素(MOX=金属酸化物)の形の第2のセンサ要素によって生成される。ガスの熱伝導度はガス分子の質量の累乗根に反比例するので、例えばH2分子やHe原子のような軽い原子を有するガスは、基本的にN2およびO2分子から構成される空気よりもはるかに熱伝導度が高い。測定される熱伝導度が高いほど、軽分子の割合がより大きい。MOXセンサ要素は、例えば水素、メタン、または水蒸気のような化学的に還元作用のあるガスが空気中に含まれている場合に電気抵抗が低下する、例えばSnO2やWO3のような半導体金属酸化物からなる。したがって、測定された電気抵抗を介して、空気中の還元性ガスの含有量を決定することができる。ただし、熱伝導度センサ要素およびMOXセンサ要素の信号は、空気中の水素濃度によって一義的には決定されない。というのも、空気中の他のガスによっても同じ測定結果につながり得るからである。ここで述べているのは、他のガスに関する交差感度であり、これによって絶対的なセンサ精度が制限される。H2について0.1vol%の目標精度を、考えられるあらゆる空気組成において保証可能にするために、追加的な測定値が測定、解析される信号処理における補正が必要である。そこで、本発明によれば、流体媒体のさらなる物理的特性を測定するための少なくとも1つのさらなるセンサ要素が提案される。例えば、相対空気湿度、ガス温度、およびガス圧力のためのさらなるセンサ要素がH2センサに統合され、これらのセンサ要素の信号が中央電子信号処理部としての電子解析部において考慮される。ただし、この考慮は、特性マップの形で行われるのではなく、例えばニューラルネットワークのトレーニング(訓練)のような機械学習の方法によって行われる。
【0008】
電子解析部は、第1のセンサ要素、第2のセンサ要素、および/または第3のセンサ要素の動作パラメータを、アルゴリズムを用いて変更するように構成されていてもよい。アルゴリズムは特に人工ニューラルネットワークを含んでもよい。
【0009】
ニューラルネットワークのトレーニングはセンサの出荷前に行われる。その際、本発明によれば、時間のかかる完全なニューラルネットワークのトレーニングが少数のセンサ製品に対してのみ行われるように、伝達学習の方法が使用される。残りのセンサ製品は、そのプログラミング時にこれらのノードパラメータが与えられ、個別的な微調整を目的とした短期間のトレーニングのみを受ける。このトレーニングは、様々な相対湿度および異なる空気圧力および温度において、とりわけH2、または例えばHeやCH4等の干渉ガスのようなガスを様々な割合で含む空気にセンサを次々にさらし、ガス濃度、相対空気湿度、空気圧力、および温度についての設定されたパラメータをニューラルネットワーク用のトレーニングデータとして使用するというものである。
【0010】
第3のセンサ要素は、湿度、特に相対空気湿度と、圧力、特に空気圧力と、温度、特に空気温度とからなるグループから選ばれた少なくとも1つの物理的特性を測定するように構成されていてもよい。
【0011】
センサは4つ以上のセンサ要素、例えば4つ、5つ、またはより多くのセンサ要素を有し得ることを明確に強調しておきたい。
【0012】
ニューラルネットワークの完全なトレーニングにおいて、本発明によれば、個々のセンサ要素の動作パラメータの最適化が行われるので、測定値が得られるまでの時間、および空気中のH2濃度の測定値と実際の値との間の誤差が最小化される。ここで、本発明によれば、通常は動作のために加熱されるMOX要素の温度、または熱伝導度センサ要素の測定要素の温度がトレーニング対象のパラメータとして選定される。
【0013】
第1のセンサ要素、第2のセンサ要素、および第3のセンサ要素は互いに別々のセンサ要素であってもよい。代替的に、第1のセンサ要素、第2のセンサ要素、および第3のセンサ要素は1つのセンサチップに統合されたセンサ要素であってもよい。
【0014】
したがって、センサ要素は、必ずしも回路基板によって接続されている物理的に別々の部品として存在している必要はない。センサ機能は1つの部品あるいはチップに統合されていてもよい。つまり、例えば、熱伝導度用のセンサ要素およびMOXを含む要素は1つのチップまたはモジュールに統合されていてもよい。同様に、空気湿度、圧力、および温度用のセンサ要素は1つのモジュールまたはチップに統合されていてもよい。1つのモジュールにおける少数の、またはより多くの機能の全ての考えられる集合体が好ましい。
【0015】
センサは変圧器をさらに含んでもよい。変圧器は、外部の電圧源と接続されるように構成されていてもよい。変圧器は、第1のセンサ要素、第2のセンサ要素、および第3のセンサ要素のための供給電圧をさらに生成するように構成されていてもよい。
【0016】
このように、変圧器は外部からセンサ全体のための供給電圧を取得し、この供給電圧からセンサ要素に必要な供給電圧を生成する。
【0017】
センサはインターフェースをさらに含んでもよい。インターフェースは、外部の制御部からの制御指令を受信し、かつ/またはセンサの測定データを外部の制御部に出力するように構成されていてもよい。インターフェースは、例えばデータ交換要素である。データ交換要素は、外部からセンサ全体のための制御指令を受信し、水素濃度に関する測定データおよびその他の必要とされる測定データまたはメタデータを外部に発信する。このようなデータ交換要素は通信チップとしても知られている。
【0018】
センサはセンサハウジングをさらに含んでもよい。第1のセンサ要素、第2のセンサ要素、第3のセンサ要素、および電子解析部はセンサハウジング内に配置されていてもよい。センサハウジングは少なくとも1つの開口部を有してもよく、開口部を用いて、第1のセンサ要素、第2のセンサ要素、第3のセンサ要素を流体媒体にさらすことが可能である。
【0019】
このように、センサハウジングのガスが通過可能な開口部を介して、水素濃度が測定されるガスがハウジング内に取り込まれ、そこでセンサ要素へ導かれる。
【0020】
電子解析部は、動作パラメータを変更するために、制御信号および/または補正信号を第1のセンサ要素、第2のセンサ要素、第3のセンサ要素に出力するように構成されていてもよい。
【0021】
このように、センサは複数のセンサ要素および中央電子処理部をセンサハウジング内に含み、中央電子処理部はセンサ要素の信号を機械学習の方法で処理することによって、これらの信号から、存在するH2濃度についての測定値を1秒未満で0.1vol%H2未満の僅かな誤差で確定し、この測定値がセンサの出力インターフェースを介してユーザに提供される。その際、中央電子処理部によって、信号処理において、制御信号あるいは補正信号もまたセンサ要素に送られるようにすることも同様に意図されており、それによって、センサの全体性能が向上し、あるいは、精度あるいは反応時間が最適化される。
【0022】
本発明の範囲内で、センサは基本的に、流体媒体の少なくとも1つの特性を測定可能であり、例えば測定された特性に応じて少なくとも1つの測定信号、例えば圧力または電流のような電気信号を生成可能な任意の装置として理解される。その際、測定信号は、センサの構成要素としての1つまたは複数のセンサ要素によって出力されてもよい。特性は、例えば物理的および/または化学的特性であり得る。特性の組み合わせも測定可能であり得る。特にセンサは、ガスの少なくとも1つの特性、特に測定ガス中のH2の割合を測定するように構成されていてもよい。他の特性および/または特性の組み合わせも測定可能であり得る。
【0023】
センサは、特に水素燃料電池車において使用されるように適合させられていてもよい。測定空間は基本的に、流体媒体、特に測定ガスが取り込まれ、かつ/または流体媒体、特に測定ガスが貫流する開放または封止された任意の空間であり得る。
【0024】
本発明の範囲内で、ハウジングは基本的に、センサ要素を全体的または部分的に包囲し、かつ/または外部に対して封止し、センサ要素に機械的安定性を付与し得る任意の構成要素または構成要素のグループとして理解される。特に、ハウジングは少なくとも1つの内部空間を包囲していてもよい。例えば、ハウジングは、内部空間を少なくとも部分的に包囲し、その空間をその周囲から少なくとも部分的に境界付けてもよい。ハウジングは特に、全体的または部分的に、プラスチック、金属、セラミック、およびガラスのうちの少なくとも1つの材料から製造されていてもよい。
【0025】
本発明のさらなる任意的な詳細事項および特徴は、図面に概略的に描かれている好ましい実施例の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】少なくとも1つの測定空間において流体媒体の少なくとも1つの特性を測定するための本発明によるセンサの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、少なくとも1つの測定空間14において流体媒体12の少なくとも1つの特性を測定するための、特に測定ガス16中のH
2の割合を測定するための本発明によるセンサ10の概略図を示す。センサ10は、特に水素燃料電池車において使用されるように適合させられていてもよい。ただし、他の用途も可能である。センサ10は特に、例えば電極、電極導線および接点、複数の層、またはその他の要素のような、1つまたは複数の不図示のさらなる機能要素を含んでもよい。それに応じて、センサ10は、水素燃料電池車の排ガスシステムに取り付けられる(排ガス下)、または大気条件下(外気)で動作することができる。以下では測定空間は、水素燃料電池車の排ガスシステムまたは内部空間であり得る。
【0028】
センサ10は、第1のセンサ要素18を有する。第1のセンサ要素18は、流体媒体12の熱伝導度を測定するように構成されている。第1のセンサ要素18は、さらに測定信号を出力するように構成されている。
【0029】
センサ10は、さらに第2のセンサ要素20を有する。第2のセンサ要素20はMOXセンサ要素である。したがって、第2のセンサ要素20は半導体金属酸化物を有する。第2のセンサ要素20は、さらに第2の測定信号を出力するように構成されている。
【0030】
センサ10は、さらに第3のセンサ要素22を有する。第3のセンサ要素22は、流体媒体の物理的特性を測定するように構成されている。第3のセンサ要素22は、測定される物理的特性に関して第1のセンサ要素18および第2のセンサ要素20とは異なる。図示の実施形態では、第3のセンサ要素22は流体媒体12の湿度を測定するように構成されている。例えば、第3のセンサ要素22は相対湿度を測定するように構成されている。第3のセンサ要素22は、第3の測定信号を出力するように構成されている。
【0031】
センサ10は、図示の実施形態では4つ以上のセンサ要素を有する。つまり、センサ10はさらに第4のセンサ要素24を有する。第4のセンサ要素24は、流体媒体の物理的特性を測定するように構成されている。第4のセンサ要素24は、測定される物理的特性に関して第1のセンサ要素18および第2のセンサ要素20とは異なる。図示の実施形態では、第4のセンサ要素24は流体媒体12の温度を測定するように構成されている。例えば、第4のセンサ要素24は空気温度を測定するように構成されている。第4のセンサ要素24は、第4の測定信号を出力するように構成されている。
【0032】
センサ10は、さらに第5のセンサ要素26を有する。第5のセンサ要素26は、流体媒体の物理的特性を測定するように構成されている。第5のセンサ要素26は、測定される物理的特性に関して第1のセンサ要素18および第2のセンサ要素20とは異なる。図示の実施形態では、第5のセンサ要素26は流体媒体12の圧力を測定するように構成されている。例えば、第5のセンサ要素26は空気圧力を測定するように構成されている。第5のセンサ要素26は第5の測定信号を出力するように構成されている。
【0033】
センサ要素18、20、22、24、26は互いに別々のセンサ要素であってもよい。好ましくは、センサ要素18、20、22、24、26は詳細には不図示のセンサチップまたはセンサモジュールに統合されたセンサ要素であってもよい。
【0034】
センサ10は、さらに電子解析部28を有する。電子解析部28は、第1の測定信号、第2の測定信号、および第3の測定信号を解析するように構成されている。さらに、電子解析部28は、第4の測定信号および第5の測定信号を解析するように構成されている。この目的のために、電子解析部28はセンサ要素18、20、22、24、26と通信する。電子解析部28は、さらに第1のセンサ要素18、第2のセンサ要素20、および/または第3のセンサ要素24の動作パラメータを変更するように構成されている。さらに、電子解析部28は、第4のセンサ要素24および第5のセンサ要素26の動作パラメータを変更するように構成されている。電子解析部28は、第1のセンサ要素18、第2のセンサ要素20、第3のセンサ要素22、第4のセンサ要素24、および第5のセンサ要素26の動作パラメータを、アルゴリズム30を用いて変更するように構成されている。アルゴリズム30は人工ニューラルネットワークを含む。この場合、人工ニューラルネットワークについて、機械学習の方法が利用され得る。電子解析部28は、センサ要素18、20、22、24、26に制御信号および/または補正信号を出力することによって、動作パラメータを変更あるいは適合させるように構成されている。
【0035】
センサ10は、さらに変圧器32を有する。変圧器32は、外部の電圧源(詳細不図示)と接続するように構成されている。変圧器32は、さらにセンサ要素18、20、22、24、26のための供給電圧を生成するように構成されている。言い換えれば、変圧器32はセンサ要素18、20、22、24、26にそれぞれ必要な供給電圧を供給する。
【0036】
センサ10は、さらにインターフェース34を有する。インターフェース34は、外部の制御部(詳細不図示)から制御指令を受信するように構成されている。インターフェース34は、さらにセンサ10の測定データを外部の制御部に出力するするように構成されている。それに応じて、インターフェース34はデータ交換要素として構成されていてもよい。
【0037】
センサ10は、さらにセンサハウジング36を有する。センサ要素18、20、22、24、26および電子解析部28はセンサハウジング36内に配置されている。さらに、変圧器32およびインターフェース34は少なくとも部分的にセンサハウジング36内に配置されている。センサハウジング36は少なくとも1つの開口部38を有する。開口部38を用いて、センサ要素18、20、22、24、26を流体媒体に曝すことができ、流体媒体と接触させることができる。
【0038】
図2は電子解析部28の概略図を示す。既に述べたように、電子解析部では、人工ニューラルネットワークを含むアルゴリズム30が動作する。
図2は、特にアルゴリズム30の概略図を示す。アルゴリズム30には、第1のセンサ要素18の第1の測定データ40、第2のセンサ要素20の第2の測定データ42、第3のセンサ要素22の第3の測定データ44、第4のセンサ要素24の第4の測定データ46、および第5のセンサ要素46の第5の測定データ48が供給される。アルゴリズム30を用いて、測定データ40、42、44、46、48からH
2濃度50が確定され、例えばvol%で、空気中のH
2のパーセントで爆発限界52のパーセントによる到達度が確定される。
【0039】
続いて、センサ10の動作形態が説明される。センサ要素18、20、22、24、26および中央電子信号処理部としての電子解析部28の他に、変圧器32およびデータ交換要素としてのインターフェース34もセンサ10に含まれている。
【0040】
変圧器32は、外部からセンサ10全体のための供給電圧を取得し、この供給電圧からセンサ要素18、20、22、24、26に必要な供給電圧を生成する。データ交換要素34は、センサ10全体のための制御指令を外部から受信し、水素濃度およびその他の要求される測定データまたはメタデータを外部へ発信する。センサハウジング36のガスが通過可能な開口部38を介して、水素濃度が測定される測定ガス16がセンサハウジング36内に取り込まれ、そこでセンサ要素18、20、22、24、26へ導かれる。
【0041】
供給された測定ガス16中の測定対象のH
2濃度に関する情報は、主に熱伝導度センサ要素としての第1のセンサ要素18およびMOXセンサ要素としての第2のセンサ要素20によって生成される。ガスの熱伝導度はガス分子の質量の累乗根に反比例するので、例えばH
2分子やHe原子のような軽い原子を備えたガスでは、基本的にN
2およびO
2分子からなる空気よりもはるかに熱伝導度が高い。測定される熱伝導度が高いほど、軽い分子の割合がより大きい。第2のセンサ要素20は、例えば水素、メタン、または水蒸気のような化学的に還元作用のあるガスが空気中に含まれている場合に電気抵抗が低下する、SnO
2またはWO
3のような半導体金属酸化物を有する、またはそのような半導体金属酸化物からなる。したがって、測定された電気抵抗を介して、空気中の還元性ガスの含有量を決定することができる。前述のように、第1のセンサ要素18および第2のセンサ要素20の信号は、空気中の水素濃度によって一義的には決定されない。というのも、空気中の他のガスによっても同じ測定結果につながり得るからである。ここで述べているのは、他のガスに関する交差感度であり、これによって絶対的なセンサ精度が制限される。H
2について0.1vol%の目標精度を、考えられるあらゆる空気組成において保証可能にするために、追加的な測定値が測定、解析される信号処理における補正が必要である。本発明によれば、相対空気湿度、ガス温度、およびガス圧力のためのセンサ要素22、24、26がH
2センサに統合され、これらのセンサ要素の信号が電子解析部28において考慮される。ただし、この考慮は、特性マップの形で行われるのではなく、機械学習の方法によって、例えば
図2に概略的に描かれているようにアルゴリズム30のニューラルネットワークのトレーニング(訓練)によって行われる。ニューラルネットワークのトレーニングはセンサ10の出荷前に行われる。その際、時間のかかる完全なニューラルネットワークのトレーニングが少数のセンサ製品に対してのみ行われるように、伝達学習の方法が使用される。残りのセンサ製品は、そのプログラミング時にこれらのノードパラメータが与えられ、個別的な微調整を目的とした短期間のトレーニングのみを受ける。このトレーニングは、様々な相対湿度および異なる空気圧力および温度において、とりわけH
2、または例えばHeやCH
4等の干渉ガスといったガスを様々な割合で含む空気にセンサ10を次々に曝し、ガス濃度、相対空気湿度、空気圧力、および温度についての設定されたパラメータをニューラルネットワーク用のトレーニングデータとして使用するということからなる。
【0042】
ニューラルネットワークの完全なトレーニングにおいて、本発明によれば、個々のセンサ要素18、20、22、24、26の動作パラメータの最適化が行われるので、測定値が得られるまでの時間、および空気中のH2濃度の測定値と実際の値との間の誤差が最小化される。ここで、本発明によれば、通常は動作のために加熱される第2のセンサ要素20の温度または第1のセンサ要素18の測定要素の温度がトレーニング対象のパラメータとして選定される。
【0043】
本発明によるセンサ10は、熱伝導度用のセンサ要素および半導体金属酸化物を含むセンサ要素、ならびに、例えば相対湿度、圧力、および温度のような他の物理値のための少なくとも1つのセンサ要素、ならびに中央電子信号処理部の存在によって実証可能である。さらに、本発明は、動作中の製品において、センサ要素の動作パラメータが外部条件に適合させられ、それによってH2vol%の測定精度および反応時間に対する要求事項を常に満たすことにおいて認識可能である。中央電子信号処理部において、ニューラルネットワーク向けに最適化されている回路要素あるいは回路部を認識することができる。