IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NOK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-中空糸膜モジュール 図1
  • 特許-中空糸膜モジュール 図2
  • 特許-中空糸膜モジュール 図3
  • 特許-中空糸膜モジュール 図4
  • 特許-中空糸膜モジュール 図5
  • 特許-中空糸膜モジュール 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】中空糸膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B01D63/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023525708
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2022020494
(87)【国際公開番号】W WO2022255086
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2021092809
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 陽祐
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-040675(JP,A)
【文献】特開平02-059016(JP,A)
【文献】特開2002-303435(JP,A)
【文献】国際公開第2020/026875(WO,A1)
【文献】特開2015-226859(JP,A)
【文献】国際公開第2006/112142(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01F 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空糸膜と、
前記複数の中空糸膜を収容し、かつ両端に開口部を有する樹脂製のケース本体を有するケースと、
前記ケースの両端側において、各中空糸膜の中空内部を開放させた状態で中空糸膜同士の隙間を封止し、かつ前記複数の中空糸膜を前記ケースに固定する一対の封止固定部と、
を備える中空糸膜モジュールであって、
前記ケース本体は、前記複数の中空糸膜を収容する内壁面のうち対向する一対の壁面同士を連結する補強部がこれら一対の壁面に一体に設けられていることを特徴とする中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記補強部は前記ケース本体における一端側と他端側との間の中央に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
前記ケース本体は、それぞれ流体が通る少なくとも一つの貫通孔が設けられた一対の略平板部と、これら一対の略平板部の両側をそれぞれ繋ぐ一対の湾曲部とを備え、前記ケース本体の一端側から他端側に向かう方向に対して垂直な断面形状がオーバル形状の部材により構成されており、
前記補強部は前記一対の湾曲部の内壁面同士を連結するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記補強部は前記ケース本体における前記一対の略平板部の間の中央に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の中空糸膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿装置などに適用可能な中空糸膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料電池用の加湿装置に備えられる中空糸膜モジュールにおいては、高出力システム向けの需要が高まっており、大型化する傾向にある。大型の中空糸膜モジュールにおいては、ケース内を流れる流体の圧力が高くなる。そのため、大型のケースの場合には、金属などの剛性材料を切削加工することにより製造するのが一般的である。特に、ボックス形状のケースの場合には、流体の圧力により変形し易いため、金属などの剛性材料により構成される。
【0003】
しかしながら、金属などの剛性材料を切削加工してケースを製造する場合にはコストが高くなる。そこで、金型を用いた樹脂成形によりケースを製造することが望まれるが、大型の中空糸膜モジュールの場合には、上記の通り、流体の圧力が高くなるため、使用中にケースが変形するおそれがある。ケースが変形すると、シール性が低下して、流体漏れが発生してしまい、加湿性能が低下するなど、品質が低下してしまうことが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/190147号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、樹脂製のケース本体を採用した場合でも、ケース本体の変形を抑制することのできる中空糸膜モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
すなわち、本発明の中空糸膜モジュールは、
複数の中空糸膜と、
前記複数の中空糸膜を収容し、かつ両端に開口部を有する樹脂製のケース本体を有するケースと、
前記ケースの両端側において、各中空糸膜の中空内部を開放させた状態で中空糸膜同士の隙間を封止し、かつ前記複数の中空糸膜を前記ケースに固定する一対の封止固定部と、
を備える中空糸膜モジュールであって、
前記ケース本体は、前記複数の中空糸膜を収容する内壁面のうち対向する一対の壁面同士を連結する補強部がこれら一対の壁面に一体に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ケース本体に補強部が設けられているため、ケース本体内の流体圧力が高くなっても、ケース本体が変形してしまうことを抑制することができる。
【0009】
前記補強部は前記ケース本体における一端側と他端側との間の中央に設けられているとよい。
【0010】
このような構成を採用することで、例えば、補強部を一端側から他端側に至るように設ける場合と比べて、ケース本体内に収容する中空糸膜の充填本数の低下を抑制し、かつ、中空糸膜の膜外を流れる流体の流れが阻害されてしまうことを抑制しつつ、ケース本体の変形を効果的に抑制することができる。
【0011】
前記ケース本体は、それぞれ流体が通る少なくとも一つの貫通孔が設けられた一対の略平板部と、これら一対の略平板部の両側をそれぞれ繋ぐ一対の湾曲部とを備え、前記ケース本体の一端側から他端側に向かう方向に対して垂直な断面形状がオーバル形状の部材により構成されており、
前記補強部は前記一対の湾曲部の内壁面同士を連結するように設けられているとよい。
【0012】
一般的には、このような形状、かつ樹脂製のケース本体は流体圧力によって変形し易いものの、上記の通り、補強部が設けられることで、変形が抑制される。
【0013】
前記補強部は前記ケース本体における前記一対の略平板部の間の中央に設けられているとよい。
【0014】
このような構成を採用することで、例えば、補強部を一対の略平板部に近い付近まで設ける場合と比べて、ケース本体内に収容する中空糸膜の充填本数の低下を抑制し、かつ、中空糸膜の膜外を流れる流体の流れが阻害されてしまうことを抑制しつつ、ケース本体の変形を効果的に抑制することができる。
【0015】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、樹脂製のケース本体を採用した場合でも、ケース本体の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの側面図である。
図2図2は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの正面図である。
図3図3は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの模式的断面図である。
図4図4は本発明の実施例に係るケース本体の正面図である。
図5図5は本発明の実施例に係るケース本体の平面図である。
図6図6は本発明の実施例に係るケース本体の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0019】
(実施例)
図1図6を参照して、本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールについて説明する。図1は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの側面図である。図2は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの正面図である。図3は本発明の実施例に係る中空糸膜モジュールの模式的断面図であり、図2中のAA断面図である。図4は本発明の実施例に係るケース本体の正面図である。図5は本発明の実施例に係るケース本体の平面図である。図6は本発明の実施例に係るケース本体の模式的断面図であり、図4中のBB断面図である。
【0020】
<中空糸膜モジュールの適用例>
本実施例に係る中空糸膜モジュール10の適用例について説明する。本実施例に係る中空糸膜モジュール10は、加湿装置や除湿装置として適用することができる。この点について簡単に説明する。中空糸膜モジュール10は、ケース100の内部に複数の中空糸膜200が設けられている。そして、中空糸膜モジュール10は、複数の中空糸膜200の膜外を通る流路と、膜内を通る流路が形成されるように構成されている。このような構成により、例えば、中空糸膜200の膜外に湿潤気体を供給し、複数の中空糸膜200の各中空内部に乾燥気体を供給することで、中空糸膜200による膜分離作用によって、湿潤気体中の水分が乾燥気体側に移動する。従って、乾燥気体については加湿され、湿潤気体については除湿されるため、加湿装置としても除湿装置としても利用することができる。
【0021】
なお、本実施例に係る中空糸膜モジュール10は、燃料電池に備えられる電解質膜を加湿するための加湿装置として好適に用いることができる。この場合、燃料電池において発生した湿潤空気が、上記の湿潤気体として利用される。そして、加湿された気体(空気)が、燃料電池に備えられる電解質膜に供給されることで、電解質膜については、湿った状態が維持される。ここで、中空糸膜200の素材としては、例えば、孔径制御による毛管凝縮機構により水分を透過する特性を有するPPSU(ポリフェニルスルホン)などを好適に用いることができる。なお、製膜溶液(中空糸膜の原料)を調整する際、溶媒中にPPSUと親水性高分子(ポリビニルポロリドン)を添加した製膜溶液を用いて紡糸を行うことで親水性を有する中空糸膜を得ることができる。また、溶解拡散により水分を透過する特性を有する親水性の材料であるナフィオン(登録商標)を用いることもできる。以上のような材料は、低溶出性であり、かつ強度も高いため、加湿装置や除湿装置に好適に用いることができる。
【0022】
<中空糸膜モジュール>
本実施例に係る中空糸膜モジュール10について、より詳細に説明する。中空糸膜モジュール10は、ケース100と、ケース100の内部に配される複数の中空糸膜200と、一対の封止固定部310,320とを備えている。そして、ケース100は、複数の中空糸膜200を収容し、かつ両端に開口部を有する樹脂製のケース本体110を備えている。
【0023】
ケース本体110は、一対の略平板部111,112と、これら一対の略平板部111,112の両側をそれぞれ繋ぐ一対の湾曲部113,114とを備えている。また、ケース本体110は、ケース本体110の一端側から他端側に向かう方向に対して垂直な断面形状がオーバル形状の部材により構成されている。上記の一対の略平板部111,112には、それぞれ流体が通る少なくとも一つ(本実施例では複数)の貫通孔111a,112aが設けられている。更に、ケース本体110は、複数の中空糸膜200を収容する内壁面のうち対向する一対の壁面同士を連結する補強部115が、これら一対の壁面に一体に設けられている。より具体的には、この補強部115は一対の湾曲部113,114の内壁面同士を連結するように設けられている。そして、この補強部115はケース本体110における一端側と他端側との間の中央(中心を含む一部の領域)であって、ケース本体110における一対の略平板部111,112の間の中央(中心を含む一部の領域)に設けられている。以上のように構成されるケース本体110は、PSU(ポリスルホン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、及びPPA(ポリフタルアミド)などの樹脂材料を用いて、金型により成形することができる。従って、一対の略平板部111,112と、一対の湾曲部113,114と、補強部115は一体となっている。
【0024】
また、ケース100は、ケース本体110の両端にそれぞれ固定される第1固定部材120及び第2固定部材130と、一対の略平板部111,112をそれぞれ覆うに設けられる一対の第3固定部材140及び第4固定部材150とを備えている。これら第1固定部材120、第2固定部材130、第3固定部材140及び第4固定部材150のケース本体110への固定方法は特に限定されるものではなく、ネジ締結などの各種公知の固定方法を採用することができる。また、これら第1固定部材120、第2固定部材130、第3固定部材140及び第4固定部材150についても、樹脂材料(樹脂成形品)により構成することができる。
【0025】
第1固定部材120と第2固定部材130には、中空糸膜200の膜内(中空内部)を流れる流体の入口又は出口となる管部121,131がそれぞれ設けられている。また、第3固定部材140及び第4固定部材150には、中空糸膜200の膜外を流れる流体の入口又は出口となる管部141,151がそれぞれ設けられている。なお、これらの管部141,151のうちの一方がケース本体110の一端側に配されて、他方がケース本体110の他端側に配されるように、第3固定部材140及び第4固定部材150はケース本体110に固定される。
【0026】
そして、一対の封止固定部310,320は、ケース100の両端側において、各中空糸膜200の中空内部を開放させた状態で中空糸膜同士の隙間を封止し、かつ複数の中空糸膜200をケース100に固定するように構成されている。これら一対の封止固定部310,320は、エポキシ樹脂などのポッティング材料が硬化することにより得られる。
【0027】
以上のように構成される中空糸膜モジュール10を、加湿装置又は除湿装置として適用する場合の一例を図3を参照して説明する。例えば、湿潤気体が第3固定部材140の管部141からケース100の内部に供給されると(矢印T0)、湿潤気体は、中空糸膜200の膜外を通って、第4固定部材150の管部151からケース100の外側に流れていく(矢印T1)。また、乾燥気体が第1固定部材120の管部121からケース100の内部に供給されると(点線矢印S0)、乾燥気体は、一端側の封止固定部310から複数の中空糸膜200の各中空内部に供給されて、それぞれの中空糸膜200の膜内を流れていく。その後、乾燥気体は、他端側の封止固定部320から排出されて、第2固定部材130の管部131からケース100の外側に流れていく(矢印S1)。以上の過程で、中空糸膜200による膜分離作用によって、湿潤気体中の水分が乾燥気体側に移動して、乾燥気体は加湿され、湿潤気体は除湿される。
【0028】
<本実施例に係る中空糸膜モジュールの優れた点>
本実施例に係る中空糸膜モジュール10によれば、ケース本体110に補強部115が設けられているため、ケース本体内の流体圧力が高くなっても、ケース本体110が変形してしまうことを抑制することができる。従って、シール性の低下を抑制でき、流体の漏れを抑制することができる。これにより、加湿性能や除湿性能の低下を抑制することもできる。また、ケース100の大型化が要求されるような場合でも、ケース本体110を樹脂による金型成形により製造できるため、金属材料の切削加工により製造する場合に比べて、コストを削減することができる。
【0029】
また、本実施例に係る補強部115はケース本体110における一端側と他端側との間の中央であって、ケース本体110における一対の略平板部111,112の間の中央に設けられている。このような構成を採用することで、ケース本体内に収容する中空糸膜200の充填本数の低下を抑制し、かつ、中空糸膜200の膜外を流れる流体の流れが阻害されてしまうことを抑制しつつ、ケース本体110の変形を効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 中空糸膜モジュール
100 ケース
110 ケース本体
111,112 平板部
111a,112a 貫通孔
113,114 湾曲部
115 補強部
120 第1固定部材
121 管部
130 第2固定部材
131 管部
140 第3固定部材
141 管部
150 第4固定部材
151 管部
200 中空糸膜
310,320 封止固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6