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特許7607123高温動作型の二次電池の単電池およびモジュール電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】高温動作型の二次電池の単電池およびモジュール電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/617 20140101AFI20241219BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241219BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20241219BHJP
   H01M 10/627 20140101ALI20241219BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20241219BHJP
   H01M 10/654 20140101ALI20241219BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20241219BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20241219BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20241219BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20241219BHJP
   H01M 50/251 20210101ALI20241219BHJP
   H01M 50/253 20210101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M10/617
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/627
H01M10/643
H01M10/654
H01M10/6557
H01M10/6563
H01M10/6571
H01M10/658
H01M50/251
H01M50/253
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023525713
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2022020618
(87)【国際公開番号】W WO2022255099
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2021090970
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】福原 基広
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-294127(JP,A)
【文献】特開2011-060477(JP,A)
【文献】特表2012-528458(JP,A)
【文献】特表2021-524983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0025471(US,A1)
【文献】国際公開第2015/056739(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/221860(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/617
H01M 10/627
H01M 10/643
H01M 10/654
H01M 10/6557
H01M 10/6563
H01M 10/6571
H01M 10/658
H01M 50/251
H01M 50/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温動作型の二次電池の単電池であって、
正極部と負極部とを備える円筒状の本体部と、
前記本体部の周囲に環装されてなり、少なくとも円筒状の金属部と前記金属部の外側面に環装された絶縁部とを含む外装部と、
導電性の線材が巻回されることによって前記絶縁部の外側面に設けられたコイルと、
を備え
前記金属部が、
前記本体部の外側面と接触させて設けられ、前記本体部の変形を拘束する内管と、
前記内管の外側面と接触させて設けられた外管と、
の2層構成を有してなり、
前記金属部においては、少なくとも前記外管が、前記コイルの両端部間に高周波交流電流が通電されることにより誘導加熱される、
ことを特徴とする、高温動作型の二次電池の単電池。
【請求項2】
請求項1に記載の高温動作型の二次電池の単電池であって、
前記線材が中空の金属製のパイプである、
ことを特徴とする、高温動作型の二次電池の単電池。
【請求項3】
高温動作型の二次電池のモジュール電池であって、
断熱構造を有する収容容器と、
前記収容容器に収容された、それぞれが請求項1または請求項2に記載の単電池である複数の単電池と、
前記複数の単電池のそれぞれに備わる前記コイルに高周波交流電流を通電可能な少なくとも一つの高周波交流電流発生装置と、
を備え、
前記高周波交流電流発生装置が前記コイルに前記高周波交流電流を通電することによって前記金属部が誘導加熱され、
前記収容容器においては、前記複数の単電池の全てが前記収容容器と隣接する、
ことを特徴とするモジュール電池。
【請求項4】
高温動作型の二次電池のモジュール電池であって、
断熱構造を有する収容容器と、
前記収容容器に収容された、それぞれが請求項に記載の単電池である複数の単電池と、
前記複数の単電池のそれぞれに備わる前記コイルに高周波交流電流を通電可能な少なくとも一つの高周波交流電流発生装置と、
前記収容容器の側部に付設されたダクトと、
前記ダクトに対して冷却気体を供給可能なブロアと、
を備え、
前記高周波交流電流発生装置が前記コイルに前記高周波交流電流を通電することによって前記金属部が誘導加熱され、
前記コイルの一方端部が前記収容容器の側部を貫通して前記ダクト内に延在してなり、
前記コイルの他方端部が前記収容容器の側部を貫通して外部に延在してなり、
前記ブロアが供給した前記冷却気体が前記コイルの内部を流通することで前記複数の単電池のそれぞれにおいて生じる熱が排出される、
ことを特徴とするモジュール電池。
【請求項5】
請求項に記載の高温動作型の二次電池のモジュール電池であって、
前記収容容器においては、前記複数の単電池の全てが前記収容容器と隣接する、
ことを特徴とするモジュール電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温動作型の二次電池およびこれを多数接続してなるモジュール電池に関するものであり、特に、それらの温度制御のための構成に向けられてなる。
【背景技術】
【0002】
電力系統に接続して使用される蓄電池として、ナトリウム-硫黄電池(以下、NaS電池と称する)がすでに公知である。単一のNaS電池(単電池)は概略、活物質である金属ナトリウム(Na)と硫黄(S)とが、Naイオン伝導性を有する固体電解質であるベータアルミナをセパレータとしてセル(電池容器)に隔離収納された構造を有する、高温動作型の二次電池である。運転温度は約300℃であり、単電池においては、係る運転温度において溶融(液体)状態にある両活物質の電気化学反応により、起電力が発生する。
【0003】
NaS電池は通常、所望の容量および出力を確保するために、複数の単電池(集合電池)を相互に接続し断熱の収容容器に収容したモジュール電池の形で使用される(例えば、特許文献1参照)。モジュール電池においては、それぞれに複数の単電池を直列に接続した複数の回路(ストリング)が並列に接続されることでブロックが構成されており、複数の該ブロックが直列に接続されている。
【0004】
複数の単電池から構成されたNaS電池のモジュール電池を従来よりもさらに高出力かつ長時間運転したいという一般的なニーズが存在する。これを例えば、特許文献1に開示されているような、複数のストリングが並列に接続されてなる従来のモジュール電池において実現するのであれば、一見、ストリングを構成する単電池の個数(直接接続数)を増やすことや、ブロックの数を増やすことで、容易になし得るようにも思料される。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているような従来構成のモジュール電池は、以下のような理由から、高出力化への適応が難しい場合がある。
【0006】
まず、モジュール電池においては一般に、待機時には単電池内の活物質を溶融状態に保つべく単電池を加熱する必要がある一方で、動作時(充放電時)には活物質の反応により生じる熱を速やかに外部へと逃がす必要がある。特許文献1に開示されてなるモジュール電池の場合、係る要請に対応するべく、単電池の収容容器は断熱構造とされており、底面および内側面にはヒータが配置されてなる一方で、排熱のためのファンおよびダクトも設けられてなる。そして、このような構成の収容容器内に、複数の単電池が縦横に多数個ずつ(3個以上ずつ)配列される態様にて2次元的に収容されてなる。
【0007】
仮に、同様の構成を維持しつつ収容容器を大型化して単電池の収容個数を増やすことによって従来よりも高出力化を図ろうした場合、収容容器内の温度分布の均一性を維持するのが困難となる。具体的には、高出力化に伴い動作時(充放電時)の収容容器内における発熱量が増大するほど、収容容器の中央部からの排熱が困難となって、中央部の温度が端縁部に比して高くなる。係る場合、該中央部に配置された単電池が収容容器の端部に配置された単電池よりも高温化するため放電時の反応熱および通電加熱により許容温度に早く到達する。また、収容容器の端部に配置された単電池は中央部に配置された単電池よりも温度が低いために化学的内部抵抗が高い。そのため、単電池の配列の仕方を従来通りとしつつ収容容器を大型化して単電池の収容個数を増やしたモジュール電池の場合、列ごとの通電電流が不均等となり保有電気量の有効利用が阻害される。一方でヒータの加熱により単電池が高温状態に維持される待機時においても、収容容器内部全体の温度分布を均一にすることが難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2015/056739号
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高温動作型の二次電池のモジュール電池における温度の均一性を安定的に確保するための技術を提供することを、目的とする。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、高温動作型の二次電池の単電池であって、正極部と負極部とを備える円筒状の本体部と、前記本体部の周囲に環装されてなり、少なくとも円筒状の金属部と前記金属部の外側面に環装された絶縁部とを含む外装部と、導電性の線材が巻回されることによって前記絶縁部の外側面に設けられたコイルと、を備え、前記金属部が、前記本体部の外側面と接触させて設けられ、前記本体部の変形を拘束する内管と、前記内管の外側面と接触させて設けられた外管と、の2層構成を有してなり、前記金属部においては、少なくとも前記外管が、前記コイルの両端部間に高周波交流電流が通電されることにより誘導加熱される、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第の態様は、第1の態様に係る高温動作型の二次電池の単電池であって、前記線材が中空の金属製のパイプである、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第の態様は、高温動作型の二次電池のモジュール電池であって、断熱構造を有する収容容器と、前記収容容器に収容された、それぞれが第1またはの態様に係る単電池である複数の単電池と、前記複数の単電池のそれぞれに備わる前記コイルに高周波交流電流を通電可能な少なくとも一つの高周波交流電流発生装置と、を備え、前記高周波交流電流発生装置が前記コイルに前記高周波交流電流を通電することによって前記金属部が誘導加熱され、前記収容容器においては、前記複数の単電池の全てが前記収容容器と隣接する、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第の態様は、高温動作型の二次電池のモジュール電池であって、断熱構造を有する収容容器と、前記収容容器に収容された、それぞれが第2の態様に係る単電池である複数の単電池と、前記複数の単電池のそれぞれに備わる前記コイルに高周波交流電流を通電可能な少なくとも一つの高周波交流電流発生装置と、前記収容容器の側部に付設されたダクトと、前記ダクトに対して冷却気体を供給可能なブロアと、を備え、前記高周波交流電流発生装置が前記コイルに前記高周波交流電流を通電することによって前記金属部が誘導加熱され、前記コイルの一方端部が前記収容容器の側部を貫通して前記ダクト内に延在してなり、前記コイルの他方端部が前記収容容器の側部を貫通して外部に延在してなり、前記ブロアが供給した前記冷却気体が前記コイルの内部を流通することで前記複数の単電池のそれぞれにおいて生じる熱が排出される、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第の態様は、第の態様に係る高温動作型の二次電池のモジュール電池であって、前記収容容器においては、前記複数の単電池の全てが前記収容容器と隣接する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第1またはの態様によれば、複数の単電池を収容容器に収容してモジュール電池を構成する場合において、コイルの両端部間に高周波交流電流を通電して金属部を誘導加熱することにより、個々の単電池を独立に加熱することが出来る。これにより、単電池を高温に維持する必要があるモジュール電池の待機時において、それぞれの単電池に備わる金属部を誘導加熱することにより、収容容器内の単電池の温度の均一性を安定的に確保することが出来る。
【0017】
特に、第の態様によれば、複数の単電池を収容容器に収容してモジュール電池を構成する場合において、それぞれの単電池に備わるコイルにおいてパイプの両端部間に所定の流体を流通させることが可能となるので、係るパイプに冷却気体を流通させることで、個々の単電池を独立に冷却することが出来る。単電池内での活物質の反応により生じた熱を外部へと排出する必要があるモジュール電池の充放電時に、係る流通を行うことにより、収容容器内の単電池の温度の均一性を安定的に確保することが出来る。
【0018】
また、本発明の第の態様によれば、モジュール電池において、個々の単電池を独立に加熱することが出来る。これにより、単電池を高温に維持する必要があるモジュール電池の待機時において、それぞれの単電池に備わる金属部を誘導加熱することにより、収容容器内の単電池の温度の均一性を安定的に確保することが出来る。また、それぞれの単電池に熱電対を設けるなどして、各単電池の温度を個別に測定することにより、単電池を個別に制御することも可能となる。
【0019】
また、本発明の第および第の態様によれば、モジュール電池において、それぞれの単電池に備わるコイルのパイプに冷却気体を流通させることで、個々の単電池を独立に冷却することが出来る。単電池内での活物質の反応により生じた熱を外部へと排出する必要があるモジュール電池の充放電時に、係る流通を行うことにより、収容容器内の単電池の温度の均一性を安定的に確保することが出来る。
【0020】
また、本発明の第および第の態様によれば、モジュール電池において、周囲を他の単電池のみに囲繞された単電池が存在しないので、収容容器の内部において周縁部に配置された単電池と中央部に配置された単電池との間に温度差が生じるという問題が、構成上生じない。これにより、収容容器内における温度の均一性がさらに安定的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】単電池1の概略的な構成を示す側面図である。
図2】単電池1の概略的な構成を示す平面図である。
図3】モジュール電池100の概略的な構成を示す平面図である。
図4】モジュール電池100の概略的な構成を示す側面図である。
図5】モジュール電池100の温度制御に関するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<単電池およびモジュール電池の構成>
図1および図2はそれぞれ、本実施の形態に係る単電池1の概略的な構成を示す側面図および平面図である。図3および図4はそれぞれ、本実施の形態に係るモジュール電池100の(より詳細にはその本体部の)概略的な構成を示す平面図および側面図である。図5は、モジュール電池100の温度制御に係るブロック図である。
【0023】
図1に示すように、単電池1は、金属ナトリウム(Na)と硫黄(S)とを活物質とし、両者を離隔するセパレータとしてNaイオン伝導性を有する固体電解質であるベータアルミナが用いられてなる有底円筒形の電池本体1aの側面(側周面)に、これと同軸の円筒形をなす外装部1bを環装した構造を有する、高温動作型の二次電池である。電池本体1aの一方端においては、周縁部から正極端子1pが、中央部から負極端子1nが、それぞれ突出している。
【0024】
これに加え、単電池1の外側面には、金属製(例えば銅製、その他アルミニウム製なども可)のパイプ(中空の金属線材あるいは細管)が巻回されることによってコイル10が設けられてなる。
【0025】
外装部1bは、電池本体1aの外側面(アルミナ製)と接触する円筒状の金属部5と、金属部5の外側面と接触する同じく円筒状の絶縁部6とから構成される。金属部5はさらに、内管5aと外管5bとが同心円状に積層された2層構成を有する。
【0026】
内管5aは、鞘管とも称され、モジュール電池100の使用時および待機時に高温となる電池本体1aが変形することを防ぐために(電池本体1aの変形を拘束するために)設けられる、金属製(例えばステンレス製)の円筒状の部材である。係る目的を果たすという点からは、内管5aは数百μm~数mm程度の厚みに設けられればよい。
【0027】
外管5bは、モジュール電池100の待機時に単電池1を(より詳細には当該外管5bが環装された電池本体1aを)加熱する際の加熱源として利用するべく設けられる、金属製(例えば鋼製)の円筒状の部材である。
【0028】
具体的には、単電池1の外側面には上述のようにコイル10が設けられてなり、外管5bは、モジュール電池100に備わる所定の交流電源(交流電流発生装置)である加熱電源20によりコイル10の2つの端部10aおよび端部10b(以下、両端10a、10bとも称する)の間に高周波交流電流が通電されることによって生じる渦電流にて誘導加熱される。そして、この誘導加熱された外管5bが熱源となって、当該単電池1が加熱されるようになっている。なお、外管5bに加えて内管5aも誘導加熱され、単電池1の加熱に寄与する態様であってもよい。
【0029】
外管5bの厚みやコイル10におけるパイプの厚み、巻数などは、係る誘導加熱による単電池1の加熱が好適に実現されるように適宜に定められてよい。外管5bは通常、加熱対象である単電池1と該外管5bとの熱容量が同等となる質量が得られる程度の厚みに、設けられる。係る条件をみたす外管5bとしては、外径が100mm程度で、厚さが3mm程度のものが例示される。
【0030】
なお、金属部5が内管5aと外管5bとの2層構成を有することは必須の態様ではなく、金属部5が内管5aと外管5bのそれぞれに要求される性能を有した一の金属製の円筒状の部材にて構成される態様であってもよい。すなわち、一の円筒状の部材からなる金属部5が、電池本体1aの変形を拘束する機能と、単電池1の加熱源としての機能とを、ともに有する態様であってもよい。
【0031】
絶縁部6は、金属部5とコイル10とを絶縁するために設けられた、主として絶縁体(例えばマイカ)からなる円筒状の部材である。絶縁部6は、係る絶縁が好適に行われる一方で、外管5bの誘導加熱の妨げとならない厚みにて設けられる。
【0032】
そして、本実施の形態においては、図3に示すように、それぞれが以上のような構成を有する複数の単電池1(集合電池とも称する)が収容容器30に収容されることによって、モジュール電池100が構成されてなる。
【0033】
収容容器30は、概略、外面31aおよび内面31bが金属板からなるとともに、その側面および底面においてそれら金属板の間に断熱材32が充填された直方体状の容器である。以降においては、収容容器30の平面視長手方向に沿った一対の外面31aおよび一対の内面31bをそれぞれ外面31a1、内面31b1と称し、平面視短手方向に沿った一対の外面31aおよび一対の内面31bをそれぞれ外面31a2、内面31b2と称する。また、収容容器30は、その底部および側部(側辺部)を支持枠33にて支持されてなる。
【0034】
また、図3および図4に示すように、収容容器30の一対の外面31a1のそれぞれには、ブロア41(41a、41b)と、これに連続するダクト42(42a、42b)とが付設されてなる。さらに、収容容器30内の適宜の位置には、図3および図4においては図示を省略する温度センサ35(図5)が設けられており、収容容器30内の温度をモニタできるようになっている。温度センサ35には公知のものを使用可能であり、その個数および配置位置、種類などは、モジュール電池100の動作に支障を来さず、かつ、所望の温度を精度よく測定出来る限りにおいて、適宜に定められてよい。
【0035】
より詳細には、収容容器30の上部には、収容容器30内の断熱を確保する目的で、図示しない蓋体が配置される。蓋体は、収容容器30と同様、外面および内面が金属板からなるとともに、内部に断熱材が充填された構成を有する。また、収容容器30内の配置物以外の隙間には、砂材が充填される。砂材は、単電池1において破損、異常加熱、活物質の漏洩などの不具合が生じた場合に周囲に対する影響を低減する目的で、充填される。砂材としては、膨張ひる石(バーミキュライト)や珪砂などが例示される。
【0036】
また、好ましくは、断熱構造の維持の容易さと高断熱性の両立の観点から、収容容器30および蓋体には、真空断熱構造ではなく大気断熱構造が採用される。なお、大気断熱構造にて十分な断熱性能を確保する観点からは、断熱材の熱伝導率は小さいほど好ましく、一般的なグラスウール断熱材の熱伝導率の半分以下である、20mW/m・K以下であることがより好ましい。その場合、真空断熱構造が採用される場合に比して収容容器30や蓋体の厚みを過度に増大させることなく、モジュール電池100の動作に必要な断熱性を確保することが出来る。
【0037】
本実施の形態に係るモジュール電池100においては、それぞれが円筒状をなす単電池1が、正極端子1pと負極端子1nが備わる側の端部を上方とする姿勢にて、平面視長手方向に沿って2列に並べられて、収容容器30に収容される。図3に示す場合においては、各列8個ずつの単電池1が配列されてなる。換言すれば、係る単電池1の配列形態に合わせて、収容容器30の形状が定められてなる。
【0038】
係る収容容器30内においては、隣り合って配置された単電池1の一方の正極端子1pと他方の負極端子1nとが接続端子C1にて電気的に接続されることで、複数の単電池1が直列に接続された回路(ストリング)が形成されてなる。ただし、図3においては、一部の接続端子C1のみを図示している。
【0039】
さらに、収容容器30内において端部に配置された4つの単電池1には、収容容器30の外部との間で電気的接続を図るための外部接続端子C2が接続されている。外部接続端子C2は、収容容器30の側部において外部へと貫通させられてなる。より詳細には、係る貫通は、外部接続端子C2と収容容器30の外面31a1および内面31b1との電気的絶縁を確保しつつなされている。
【0040】
また、それぞれの単電池1の外側面に設けられてなるコイル10の両端10a、10bについてもそれぞれ、収容容器30の側部において外部へと貫通させられてなる。係る貫通も、コイル10と収容容器30の外面31a1および内面31b1との電気的絶縁を確保しつつなされている。
【0041】
より具体的には、一方の端部10aはダクト42内に突出している。換言すれば、端部10aはダクト42に覆われている。これに対し、もう一方の端部10bは収容容器30の外部に露出してなる。加えて、図3および図4においては図示を省略しているが、それぞれの単電池1にて外側面に巻回されてなるコイル10の両端10a、10bは、収容容器30外に備わる加熱電源20に接続されてなる。
【0042】
上述したように、コイル10は中空のパイプを巻回することによって設けられてなる。それゆえ、コイル10においては、加熱電源20により通電が可能であることに加えて、その内部に流体を通すことも可能となっている。換言すれば、本実施の形態に係る単電池1においては、両端10a、10bの間で通電と内部に(パイプに)流体を流通させることの双方が可能なコイル10が、電池本体1aに巻回されてなる。
【0043】
本実施の形態に係るモジュール電池100においては、係る構成を利用し、待機時にはコイル10による誘導加熱にてそれぞれの単電池1を個別に加熱する一方、充放電時には、ブロア41を駆動させてダクト42内に外部から常温あるいは低温の冷却気体(例えば常温の空気)を供給することによって、該ダクト42に突出した一方の端部10aからコイル10内へと強制的に冷却気体を導入し、他方の端部10bから排出させることができるようになっている。前者によれば、待機時にそれぞれの単電池1が同じ条件にて加熱されることで、収容容器30内の温度分布が均一化される。後者によれば、充放電時にコイル10が巻回されてなるそれぞれの単電池1にて生じた熱が、当該コイル10を流れる冷却気体により奪われることで、収容容器内の温度分布が均一化される。
【0044】
すなわち、本実施の形態に係るモジュール電池100においては、収容容器30に収容されてなる全ての単電池1において個別に、待機時の加熱と充放電時の排熱とが行えるようになっており、これにより、待機時と充放電時の双方において、個々の単電池1における温度の均一性を安定的に確保出来るようになっている。
【0045】
また、コイル10に対する通電にて個々の単電池1を直接に加熱するので、従来のモジュール電池よりも単電池1を効率的に加熱することが出来る。それゆえ、本実施の形態に係るモジュール電池100においては、従来のモジュール電池に比して小電力での加熱が可能である。これにより、本実施の形態に係るモジュール電池100においては、大気断熱構造を採用しつつも、十分な断熱性を確保出来るようになっている。
【0046】
しかも、本実施の形態に係るモジュール電池100においては、図3に示すように、複数の単電池1が収容容器30内に2列に収容されることで、全ての単電池1が収容容器30と隣接している。換言すれば、単電池が多数列に配列されて収容容器に収容されていた従来のモジュール電池とは異なり、周囲を他の単電池1のみに囲繞された単電池1が存在しない。それゆえ、本実施の形態に係るモジュール電池100においては、従来のモジュール電池において生じていたような、収容容器の内部において周縁部に配置された単電池と中央部に配置された単電池との間に温度差が生じるという問題が、構成上生じないようになっている。すなわち、本実施の形態に係るモジュール電池100においては、係る単電池1の収容態様が、収容容器30内における温度の均一性をさらに安定化させる効果を有している。
【0047】
なお、図3に示す場合であれば、収容容器30には、8個ずつ2列に計16個の単電池1が収容されているにすぎない。係る収容容器30における単電池1の収容個数は、一の収容容器に単電池を縦横ともに多数列に収容してなる従来のモジュール電池に比して、かなり少ない。例えば、特許文献1には、12×22=264個の単電池が一の収容容器に収容される場合が例示されている。このことは、本実施の形態に係るモジュール電池100の単独での出力は、従来のモジュール電池よりも相当に小さいということを意味する。もちろん、本実施の形態に係るモジュール電池100においても、1列あたりの個数を増やすことで出力は増大可能であるが、係る対応は収容容器の形状(アスペクト比)の点から限界がある。
【0048】
しかしながら、係る問題は、モジュール電池100を複数個用意し、それぞれの収容容器30に収容され互いに接続されてなる複数の単電池1(つまりは集合電池)を一つの接続単位として、直列接続および並列接続を適宜に行い、従来のモジュール電池と同等の出力が得られるようにすることで、解消することが可能である。
【0049】
好ましくは、収容容器30が平面的あるいは立体的に連接(連結や積層)可能な構造とされ、当該構造を利用することで、複数のモジュール電池100が、一の収容容器に多数の単電池を収容してなる従来のモジュール電池と同等の占有面積あるいは占有体積にて配置される。その際、個々のモジュール電池100はそれぞれに断熱構造を有する収容容器30を備え、かつ、待機時および充放電時の当該収容容器30内の温度の均一性は独立に確保されるようになっているので、占有面積あるいは占有体積が従来のモジュール電池と同等であったとしても、温度の不均一の問題が生じることはない。
【0050】
むしろ、従来のモジュール電池に比して、収容容器における温度の均一性の安定性という点で優れていることから、本実施の形態に係るモジュール電池100においては、従来のモジュール電池においては不均一が生じるために行い得なかった高い出力での運転も、行うことが可能である。
【0051】
<モジュール電池における温度制御>
図5は、モジュール電池100の温度制御に関するブロック図である。モジュール電池100における待機時および充放電時の温度制御は、図3および図4に図示した本体部とは別体に設けられたモジュール電池100のコントローラ50により行われる。
【0052】
コントローラ50は、モジュール電池100の待機時や充放電時の動作を制御する電池動作制御部51と、待機時および充放電時の双方において収容容器30の温度を制御する温度制御部52とを主に備える。コントローラ50は、CPU、メモリ、ストレージなどを備えた専用あるいは汎用のコンピュータ(図示省略)において所定の動作プログラムが実行されることで実現可能とされており、電池動作制御部51と温度制御部52とは、係るコンピュータにおいて仮想的構成要素として実現される。
【0053】
温度制御部52は、ブロア制御部53と加熱制御部54とを備える。ブロア制御部53と加熱制御部54とはそれぞれ、収容容器30に備わる温度センサ35からの出力信号に応じて、収容容器30の一対の外面31a1のそれぞれに備わるブロア41aおよび41bと、それぞれの単電池1に備わるコイル10を加熱するための加熱電源20の動作を制御する。なお、図5においては、図3に示すモジュール電池100に対応して、8個×2列=16個の単電池1のそれぞれに備わるコイル10をコイル10<1>~10<16>と表し、それらコイル10<1>~10<16>のそれぞれに接続される加熱電源20を加熱電源20<1>~20<16>と表している。ただし、加熱電源20をコイル10に1対1に対応させて設ける必要はなく、一の加熱電源20が複数のコイル10に対し電圧を印加する態様であってもよい。
【0054】
概略的にいえば、充放電時には、ブロア制御部53による制御のもと、ブロア41(41a、41b)における送風動作のon/offが制御されることで、活物質の反応により発熱する単電池1の冷却がなされる。一方、待機時には、加熱制御部54による制御のもと、加熱電源20における通電動作のon/offが制御されることで、収容容器30内の単電池1の温度が所定の待機温度(例えば300℃程度)に維持される。
【0055】
これにより、本実施の形態に係るモジュール電池100においては、充放電時および待機時のいずれにおいても、収容容器30の内部が均一に、所望の温度に維持されるようになる。
【0056】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、高温動作型の二次電池のモジュール電池に収容容器に収容される単電池の外側面に、金属製のパイプが巻回することによってコイルを設け、該コイルへの通電によって単電池の外装部に備わる金属部を誘導加熱できるようにするとともに、パイプに冷却気体を流通させることによる単電池からの排熱を可能とすることで、収容容器に収容されるそれぞれの単電池において個別に、待機時の加熱と充放電時の排熱とを行うことができる。
【0057】
これにより、充放電時および待機時のいずれにおいても、収容容器内における温度の均一性が高いモジュール電池が実現される。
【0058】
加えて、全ての単電池が収容容器と隣接するように収容容器に収容し、周囲を他の単電池のみに囲繞された単電池が存在しないようにすることで、収容容器内における温度の均一性がさらに高められたモジュール電池が実現される。
【0059】
<変形例>
上述の実施の形態においては、コイル10が金属製のパイプにて設けられてなり、該コイル10の両端10a、10bの間において通電と冷却気体の流通とが可能となっているが、コイル10を導電性を有する(金属その他の)中実の線材にて設け、通電による加熱のみが行える構成の場合も、待機時に関しては、上述の実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。係る場合、充放電時の冷却に関しては、適宜の代替手段が採用されてよいが、少なくとも、単電池1を2列に収容することにより収容容器30内の温度の均一性を確保するという作用効果については、単電池1のサイズおよび性能、収容容器30の断熱性能などが好適に定められることで、一定程度得ることが出来る。
図1
図2
図3
図4
図5