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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】蓄電池セットおよび蓄電池システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20241219BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H02J7/00 302C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023525716
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2022020682
(87)【国際公開番号】W WO2022255104
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2021091486
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】福原 基広
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-053838(JP,A)
【文献】特開2011-199971(JP,A)
【文献】特開2013-172552(JP,A)
【文献】特開2001-309563(JP,A)
【文献】特開2008-079364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが高温動作型の二次電池である多数の単電池が直列に接続された少なくとも1つのストリングを備える、蓄電池セットであって、
前記少なくとも1つのストリングを構成する前記多数の単電池が複数のセルグループに区分されており、
前記複数のセルグループが直列に接続された主経路と、
前記複数のセルグループのそれぞれを前記少なくとも1つのストリング内において個別にバイパス可能なバイパス経路と、
を備え、
前記複数のセルグループのうち前記主経路において互いに直列に接続されるセルグループ同士の間と、それぞれのセルグループの上下流側と前記バイパス経路との間を接続するブリッジ経路とに、通電状態のON/OFFを切替可能な、半導体素子からなるゲートスイッチが設けられてなり、
前記複数のセルグループにおいては、互いに直列に接続された2つのセルグループ毎に一のモジュール電池が構成されてなり、
前記バイパス経路が、前記モジュール電池毎に設けられてなり、
前記モジュール電池が前記ゲートスイッチとして、
前記主経路において前記2つのセルグループの間に備わるグループ間ゲートと、
前記主経路において前記2つのセルグループの下流側と当該モジュール電池に接続された他のモジュール電池との間に備わるモジュール端ゲートと、
前記主経路における前記2つのセルグループのそれぞれの上下流側と、前記モジュール電池に設けられた前記バイパス経路との間を接続する4つのブリッジゲートと、
前記主経路における最下流側と前記モジュール電池に設けられた前記バイパス経路とを接続する終端ブリッジゲートと、
を備え、
前記多数の単電池の少なくとも1つが故障した場合には、当該故障した単電池の属するセルグループに対応する前記ゲートスイッチのON/OFF状態の切り替えにより、通電経路が当該故障した単電池の属するセルグループのところで前記主経路から前記バイパス経路にバイパスされる、
ことを特徴とする蓄電池セット。
【請求項2】
請求項に記載の蓄電池セットであって、
前記モジュール電池がそれぞれに一の収容容器に収容されており、
前記収容容器はヒータ及び冷却ファンを備えており、
前記収容容器においては、前記2つのセルグループに属する単電池が前記セルグループごとに配列されて2列に収容されてなり、
前記単電池の配列方向に垂直な前記収容容器の一側部に、前記グループ間ゲートと前記モジュール端ゲートと前記4つのブリッジゲートと前記終端ブリッジゲートとを備える接続部が設けられてなる、
ことを特徴とする蓄電池セット。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の蓄電池セットであって、
前記複数のセルグループが8個の単電池から構成される、
ことを特徴とする蓄電池セット。
【請求項4】
請求項1または請求項に記載の蓄電池セットであって、
前記少なくとも1つのストリングが、第1のストリングと第2のストリングの2つのストリングであり、
前記第1のストリングにおいて前記通電経路がバイパスされた場合には、前記第2のストリングにおいても、前記第1のストリングにおいてバイパスされた前記セルグループの数と同じ数のセルグループの通電経路がバイパスされる、
ことを特徴とする蓄電池セット。
【請求項5】
前記少なくとも1つのストリングに接続された交流-直流変換器をさらに備える、請求項1または請求項に記載の蓄電池セットと、
前記蓄電池セットを制御するコントローラと、
を備え、
前記蓄電池セットが変圧器に接続される、
ことを特徴とする蓄電池システム。
【請求項6】
請求項に記載の蓄電池システムであって、
複数の前記蓄電池セットと、
それぞれの前記蓄電池セットを制御する複数の前記コントローラと
を備え、
前記複数の前記蓄電池セットが並列に前記変圧器に接続される、
ことを特徴とする蓄電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温動作型の二次電池を多数接続してなるモジュール電池に関するものであり、特に、その通電経路の構成に向けられてなる。
【背景技術】
【0002】
電力系統に接続して使用される蓄電池として、ナトリウム-硫黄電池(以下、NaS電池と称する)がすでに公知である。単一のNaS電池(単電池)は概略、活物質である金属ナトリウム(Na)と硫黄(S)とが、Naイオン伝導性を有する固体電解質であるベータアルミナをセパレータとしてセル(電池容器)に隔離収納された構造を有する、高温動作型の二次電池である。運転温度は約300℃であり、単電池においては、係る運転温度において溶融(液体)状態にある両活物質の電気化学反応により、起電力が発生する。
【0003】
NaS電池は通常、所望の容量および出力を確保するために、複数の単電池(集合電池)を相互に接続し断熱の収容容器に収容したモジュール電池の形で使用される(例えば、特許文献1参照)。モジュール電池においては、それぞれに複数の単電池を直列に接続した複数の回路(ストリング)が並列に接続されることでブロックが構成されており、複数の該ブロックが直列に接続されている。
【0004】
複数の単電池から構成されたNaS電池のモジュール電池を従来よりもさらに高出力かつ長時間運転したいという一般的なニーズが存在する。これを例えば、特許文献1に開示されているような、複数のストリングが並列に接続されてなる従来のモジュール電池において実現するのであれば、一見、ストリングを構成する単電池の個数(直接接続数)を増やすことや、ブロックの数を増やすことで、容易になし得るようにも思料される。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているような従来構成のモジュール電池は、以下のような理由から、高出力化への適応が難しい場合がある。
【0006】
まず、あるブロックのいずれかのストリングに属する単電池が故障した場合、故障した単電池を含むストリングにおいては、正常なものも含め全ての単電池が不使用となる。そのため、1つのストリングにおいて直列に接続されている単電池の個数が多いほど、正常であるにも関わらず使用されない単電池の数が多くなる。これは、単電池の利用効率の点からは好ましくない。
【0007】
また、単電池の故障により当該ブロックのあるストリングに電流が流れなくなった場合、全ての単電池が正常に動作している(故障している単電池のない)残りのストリングのみで電圧(出力)が維持される。この場合、当然ながら、故障前と同等の出力を維持するためには、それら残りのストリングを構成する単電池を流れる電流の大きさを増大させる必要がある。すなわち、単電池が故障したストリングの数が増えるほど、残りのストリングを構成する単電池における負荷が増大する。例えば、12個のストリングが並列されたモジュール電池において2個のストリングに単電池の故障が生じた場合、残りのストリングにおける単電池における過負荷比は12/(12-10)=1.09倍となる。
【0008】
その一方で、安全性確保のため、個々のストリングにはヒューズが設けられており、単電池にあらかじめ設定された限界値(例えば200A)を超える電流が流れないようになっている。
【0009】
それゆえ、従来のモジュール電池においては、その寿命が、故障した単電池が存在するストリングの数と、単電池の限界電流値とに左右されるようになっており、高出力化は、その双方の因子に影響を与える。
【0010】
なお、ストリングの並列数をあらかじめ多くしておくことによって、個々のストリングに流れる電流の大きさを限界電流値に比して抑制するという考え方もあるが、この場合、正常時に流れるトータルの電流(個々のストリングを流れる電流の総和)が必要以上に大きくなりすぎるという、電流設計上の問題が生じる。
【0011】
また、コストの面からは、単電池の総数をなるべく少なくしつつ高出力が実現されることが望ましい。
【0012】
本発明の発明者は、鋭意検討の結果、単電池の故障に対する冗長性をより高めることが、換言すれば、ある単電池の故障に伴い不使用となる単電池の個数をなるべく少なくし、かつ単電池に流れる電流の増大を抑制することが、モジュール電池の高出力化において有効であることを見出し、本発明に想到するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第2015/056739号
【発明の概要】
【0014】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、単電池の故障に対する冗長性に優れた蓄電池セットおよび蓄電池システムを提供することを、目的とする。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、それぞれが高温動作型の二次電池である多数の単電池が直列に接続された少なくとも1つのストリングを備える、蓄電池セットであって、前記少なくとも1つのストリングを構成する前記多数の単電池が複数のセルグループに区分されており、前記複数のセルグループが直列に接続された主経路と、前記複数のセルグループのそれぞれを前記少なくとも1つのストリング内において個別にバイパス可能なバイパス経路と、を備え、前記複数のセルグループのうち前記主経路において互いに直列に接続されるセルグループ同士の間と、それぞれのセルグループの上下流側と前記バイパス経路との間を接続するブリッジ経路とに、通電状態のON/OFFを切替可能な、半導体素子からなるゲートスイッチが設けられてなり、前記複数のセルグループにおいては、互いに直列に接続された2つのセルグループ毎に一のモジュール電池が構成されてなり、前記バイパス経路が、前記モジュール電池毎に設けられてなり、前記モジュール電池が前記ゲートスイッチとして、前記主経路において前記2つのセルグループの間に備わるグループ間ゲートと、前記主経路において前記2つのセルグループの下流側と当該モジュール電池に接続された他のモジュール電池との間に備わるモジュール端ゲートと、前記主経路における前記2つのセルグループのそれぞれの上下流側と、前記モジュール電池に設けられた前記バイパス経路との間を接続する4つのブリッジゲートと、前記主経路における最下流側と前記モジュール電池に設けられた前記バイパス経路とを接続する終端ブリッジゲートと、を備え、前記多数の単電池の少なくとも1つが故障した場合には、当該故障した単電池の属するセルグループに対応する前記ゲートスイッチのON/OFF状態の切り替えにより、通電経路が当該故障した単電池の属するセルグループのところで前記主経路から前記バイパス経路にバイパスされる、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第の態様は、第の態様に係る蓄電池セットであって、前記モジュール電池がそれぞれに一の収容容器に収容されており、前記収容容器はヒータ及び冷却ファンを備えており、前記収容容器においては、前記2つのセルグループに属する単電池が前記セルグループごとに配列されて2列に収容されてなり、前記単電池の配列方向に垂直な前記収容容器の一側部に、前記グループ間ゲートと前記モジュール端ゲートと前記4つのブリッジゲートと前記終端ブリッジゲートとを備える接続部が設けられてなる、ことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の第の態様は、第1またはの態様に係る蓄電池セットであって、前記複数のセルグループが8個の単電池から構成される、ことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の第の態様は、第1またはの態様に係る蓄電池セットであって、前記少なくとも1つのストリングが、第1のストリングと第2のストリングの2つのストリングであり、前記第1のストリングにおいて前記通電経路がバイパスされた場合には、前記第2のストリングにおいても、前記第1のストリングにおいてバイパスされた前記セルグループの数と同じ数のセルグループの通電経路がバイパスされる、ことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の第の態様は、蓄電池システムであって、前記少なくとも1つのストリングに接続された交流-直流変換器をさらに備える、第1または第2の態様に係る蓄電池セットと、前記蓄電池セットを制御するコントローラと、を備え、前記蓄電池セットが変圧器に接続される、ことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の第の態様は、第の態様に係る蓄電池システムであって、複数の前記蓄電池セットと、それぞれの前記蓄電池セットを制御する複数の前記コントローラとを備え、前記複数の前記蓄電池セットが並列に前記変圧器に接続される、ことを特徴とする。
【0024】
本発明の第1ないし第の態様によれば、モジュール電池に備わるある単電池が故障した場合であっても、当該単電池の属するセルグループを含む少なくとも1つのセルグループをバイパスすることで、当該単電池を含むストリングに対しては通電を継続することが可能となる。これにより、単電池の故障に対する冗長性に優れたモジュール電池さらにはこれを備える充電池システムが、実現される。
【0025】
特に、第1およびの態様によれば、それぞれのゲートスイッチのON/OFF状態を好適に定めることで、故障した単電池の数が増えた場合であっても、バイパスによって通電経路となるゲートスイッチの個数の増大を抑制することができるので、単電池の故障に起因して通電経路となるゲートスイッチの個数が増大することに伴う電圧降下の影響が、好適に抑制されてなる。
【0026】
特に、第および第の態様によれば、単電池が故障した場合のそれぞれのゲートスイッチのON/OFF状態の切り替えはモジュール電池を単位として行われ、同じストリングに属する他のモジュール電池に影響しない。また、ON/OFF状態の切り替え制御の対象となるモジュール電池においてのみ、使用するゲートスイッチの個数の増大を抑制さえすれば、ストリング全体においてゲートスイッチの使用個数が増大することもない。
【0027】
特に、第の態様によれば、一方のストリングにおいて単電池が故障した場合であっても、2つのストリングにおける起電力は同じ値に揃ったままとなるので、単電池の故障に対する冗長性が、より好適に確保される。

【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】蓄電池システム1の構成を概略的に示す図である。
図2】ストリングSTの一部における回路構成を示す図である。
図3】単電池の故障がない場合のストリングSTにおける通電態様を示す図である。
図4】あるストリングSTにおいて1個の単電池5が故障した場合の、ストリングSTにおける通電態様の一例を示す図である。
図5】あるストリングSTの同じ収容容器11に収容された2個の単電池5が故障した場合の、ストリングSTにおける通電態様の一例を示す図である。
図6】単電池5が収容容器11に収容された状態を例示する上面図である。
図7】単電池5が収容容器11に収容された状態を例示する側面図である。
図8】単電池5が収容容器11に収容された状態を例示する側面図である。
図9】モジュール電池収容体100の模式的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<蓄電池システムの構成>
図1は、本実施の形態に係る蓄電池システム1の構成を概略的に示す図である。蓄電池システム1は、それぞれが蓄電池である複数の単電池5を含む蓄電池セット2とこれを制御するコントローラ3とを備える。
【0030】
蓄電池セット2は概略、それぞれに複数の単電池(セルとも称する)5が直列に接続された2つのストリングST(ST1、ST2)を備える。それぞれのストリングSTにおいては、連続的に直列接続されたm個(mは自然数)の単電池5(5(1)~5(m))ごとに1つのセルグループ10が構成されている。さらには、互いに直列に接続された2つのセルグループ10が1つの収容容器11に収容されて、1つのモジュール電池4が構成されている。図1においては、それぞれのストリングSTを構成する単電池5によってn個(nは自然数)のモジュール電池4(4(1)~4(n))が構成されてなる場合を例示している。
【0031】
換言すれば、図1においてはn×2m=2mn個の単電池5が直列に接続されて1つのストリングSTが構成されてなり、それぞれのストリングSTにおいては、それら2mn個の単電池5が2m個ずつ、n個の収容容器11に区分されて収容され、n個のモジュール電池4が構成されてなる。蓄電池セット2全体での単電池の個数は2mn個×2=4mn個となる。そして、それらn個のモジュール電池4のそれぞれにおいては、2m個の単電池5が、2つのセルグループ10に区分されている。なお、それぞれのストリングSTにおけるm、nの具体的な値は同じとされる。ストリングSTのより詳細な構成については後述する。
【0032】
それぞれの単電池5は、ナトリウム-硫黄電池(NaS電池)である。より具体的には、それぞれの単電池5は、金属ナトリウム(Na)と硫黄(S)とを活物質とし、両者を離隔するセパレータとしてNaイオン伝導性を有する固体電解質であるベータアルミナが用いられてなる高温動作型の二次電池である。以降においては、1つの単電池5の放電時の起電力をV0とする。
【0033】
また、それぞれの収容容器11は、待機時に単電池5を加熱して両活物質を溶融(液体)状態に保つためのヒータ11hと、運転時に両活物質が反応することによって発熱する単電池5を冷却するためのファン11fと、収容容器11内の温度を監視(検知)するための温度センサ11tとを備える。なお、図1においては個々の収容容器11にヒータ11h、ファン11f、および温度センサ11tが1つずつ示されているが、これはあくまで模式的なものに過ぎず、実際のそれぞれの配置個数および配置態様は適宜に設定されてよい。
【0034】
ストリング(第1のストリング)ST1とストリング(第2のストリング)ST2とは、それぞれに過大な電流が流れることを防ぐためのヒューズなど備える終端ユニット12を介してPCS(交流-直流変換器:Power Conversion System)13の直流側に並列に接続されている。PCS13の交流側は変圧器14に接続されており、変圧器14が蓄電池セット2の外部の系統15に接続されている。
【0035】
なお、本実施の形態においては、説明の簡単のため、蓄電池システム1が一の蓄電池セット2のみを備える構成を対象とするが、これは必須の態様ではなく、複数の蓄電池セット2が並列に変圧器14に接続される態様であってもよい。
【0036】
コントローラ3は、蓄電池セット2における充放電動作を制御する充放電制御部31と、運転時および待機時の双方において収容容器11の温度を制御する温度制御部32とを主に備える。コントローラ3は、CPU、メモリ、ストレージなどを備えた専用あるいは汎用のコンピュータ(図示省略)において所定の動作プログラムが実行されることで実現可能とされており、充放電制御部31と温度制御部32とは、係るコンピュータにおいて仮想的構成要素として実現される。
【0037】
充放電制御部31は、バイパス制御部31bを備える。バイパス制御部31bは概略、それぞれのストリングSTを構成するいずれかの単電池5が何らかの原因にて故障した場合に、その故障した単電池5を含むセルグループ10がバイパスされるよう、当該ストリングSTにおける通電経路を切り替える機能を有する。
【0038】
温度制御部32は、ヒータ制御部32hとファン制御部32fとを備える。ヒータ制御部32hとファン制御部32fはそれぞれ、収容容器11に備わる温度センサ11tからの出力信号に応じて、ヒータ11hとファン11fの動作を制御する。概略的にいえば、待機時には、ヒータ制御部32hによる制御のもと、ヒータ11hにおける加熱動作のon/offが制御されることで、収容容器11内の単電池5の温度が所定の大気温度(例えば300℃程度)に維持され、運転時には、ファン制御部32fによる制御のもと、ファン11fにおける送風動作のon/offが制御されることで、活物質の反応により発熱する単電池5の冷却がなされる。
【0039】
<ストリングの詳細構成>
次に、ストリングST(ST1、ST2)のより詳細な構成について説明する。図2は、ストリングSTの一部における回路構成を示す図である。蓄電池セット2に備わる2つのストリングST1、ST2は同一の構成を有するので、図2においては1つのストリングSTのみを示している。
【0040】
より具体的には、図2は、ストリングSTのうち、k(kはn-1以下の自然数)個目のモジュール電池4(k)を構成する収容容器11とk+1個目のモジュール電池4(k+1)を構成する収容容器11とに収容されている単電池5の近傍における、接続の様子を示している。
【0041】
なお、以降の説明では、それぞれのストリングSTにおいて単電池5が直列に接続されてなる経路を主経路Laと称する。また、便宜上、図面視において主経路Laの上方に向かう向きを上流側と称し、下方に向かう向きを下流側と称する。それぞれのストリングSTにおいては、充電時には下流側に向けて電流が流れ、放電時には上流側に向けて電流が流れる。
【0042】
上述のように、ストリングSTにおいては、m個ずつ2つのセルグループ10に区分された2m個の単電池5が、それぞれの収容容器11に収容されているが、図1においては簡略化のため、それら2m個の単電池5が、単に直列に接続されるように図示していた。
【0043】
しかしながら、実際のストリングSTの主経路Laにおいては、図2に示すように、一の収容容器11に収容された2つのセルグループ10の間に、グループ間ゲートG1が設けられてなる。
【0044】
加えて、ストリングSTの個々の収容容器11においては、主経路Laとは別に、バイパス経路Lbが設けられてなる。バイパス経路Lbは、回路構成上は、主経路Laと並列に設けられてなるものとみなされる。それゆえ、バイパス経路Lbについても、主経路Laと同様、図面視における上下方の向きに応じて、上流側および下流側という文言を用いる。
【0045】
そして、主経路Laにおける2つのセルグループ10の上流側と下流側のそれぞれと、バイパス経路Lbとを接続する4つのブリッジ経路Lca、Lcb、Lcc、Lcdが設けられ、それぞれのブリッジ経路Lca、Lcb、Lcc、Lcdには順に、ブリッジゲートG2a、G2b、G2c、G2dが備わっている。
【0046】
また、主経路Laにおいては、一の収容容器11に収容された2つのセルグループ10よりも下流側に、モジュール端ゲートG3が設けられてなる。ストリングSTにおいては、相異なる収容容器11に収容されたセルグループ10に属する単電池5同士も、主経路Laにて直列に接続されており、モジュール端ゲートG3は、主経路Laにおいて、それら収容容器11が異なるセルグループ10の間に備わっている。すなわち、モジュール端ゲートG3は、主経路Laにおいてセルグループ10の間に設けられてなる点で、グループ間ゲートG1と共通する。
【0047】
さらには、主経路Laにおけるモジュール端ゲートG3の下流側とバイパス経路Lbの収容容器11の間とが、ブリッジ経路Lceにて接続されてなる。そして、係るブリッジ経路Lceには、ブリッジゲートG2eが備わっている。以降においては、係るブリッジゲートG2eを特に、終端ブリッジゲートG2eと称することがある。
【0048】
なお、図2においては図示を省略しているが、主経路Laの最上流側(モジュール電池4(1)を構成する収容容器11に収容されているセルグループ10の上流側)と最下流側(モジュール電池4(n)を構成する収容容器11に収容されているセルグループ10の下流側)とはPCS13に接続されている。
【0049】
グループ間ゲートG1、5つのブリッジゲートG2(G2a、G2b、G2c、G2d、G2e)、および、モジュール端ゲートG3は、2つの半導体素子(より具体的にはMOSFET)SDを備える同一構成のゲートスイッチである。以降においては、これらのゲートスイッチに電流が流れる状態を「ON状態」あるいは単に「ON」と称し、電流が流れない状態を「OFF状態」あるいは単に「OFF」と称する。これらゲートスイッチのON/OFF状態の制御は、バイパス制御部31bによりなされる。
【0050】
本実施の形態に係る蓄電池システム1においては、その動作時(充放電時)、蓄電池セット2に備わるそれぞれのストリングSTにおける単電池5の故障の状況(発生箇所および個数)に応じて、バイパス制御部31bが個々のゲートスイッチのON/OFF状態を切り替える、バイパス制御を行うようになっている。これにより、蓄電池システム1においては、選択された特定のセルグループ10のみをバイパスしてストリングSTに通電することが可能となっている。
【0051】
<蓄電池セットにおけるバイパス制御>
以下、蓄電池システム1の動作時におけるバイパス制御と、これにより実現される通電態様について、単電池5の故障の程度に応じて段階的に説明する。
【0052】
原則として、本実施の形態に係る蓄電池システム1においては、多数の単電池5が複数のセルグループ10に区分されつつ直列に接続されて構成されたストリングSTに属する、ある単電池5が故障した場合、当該単電池5を含むセルグループ10を単位として、バイパスがなされる。換言すれば、同じストリングSTに属しているものの故障した単電池5を含まないセルグループ10は、係る故障が生じた後もそのまま使用される。
【0053】
なお、あるセルグループ10がバイパスされると、該セルグループ10の分だけストリングSTにおける最大起電力が低下するが、係る態様にて起電力が低下したストリングSTであっても、あらかじめ設定された限界値の範囲内において故障がない場合よりも大きな電流を流すことで、故障がない場合と同程度の出力を得ることは可能である。その際に個々の単電池5に流れる電流の大きさの、故障がないときに流れる電流の大きさに対する比である過負荷比は、故障した単電池の本数をαとすると、2mn/(2mn-αm)=2n/(2n-α)なる値にて表される。係る過負荷比の値が大きくなるほど、単電池5に流れる電流が限界値に近づくことになる。
【0054】
(単電池の故障がない場合)
図3は、単電池の故障がない場合のストリングSTにおける通電態様を示す図である。具体的には、図3には、図2と同じストリングSTの一部における回路構成を示すとともに、それぞれのゲートスイッチのON/OFF状態と、これにより実現される通電経路についても、併せて示している。
【0055】
いずれの単電池5も故障してはいない場合、バイパス制御部31bは、ストリングSTに備わる全てのグループ間ゲートG1とモジュール端ゲートG3とをON状態とし、全てのブリッジゲートG2(G2a、G2b、G2c、G2d、G2e)をOFF状態とする。これにより、いずれのストリングSTにおいても、矢印AR11~AR14に示すように主経路Laにのみ電流が流れ、バイパス経路Lbおよび各ブリッジ経路には電流は流れない。係る場合、蓄電池セット2においては、2mn個の単電池5が直接に接続された2つのストリングST1、ST2が並列に接続された状態となっているので、放電時には最大で2mnV0なる大きさの起電力が得られる。
【0056】
(あるストリングの1個の単電池が故障した場合)
図4は、あるストリングSTにおいて1個の単電池5が故障した場合の、ストリングSTにおける通電態様の一例を示す図である。
【0057】
より具体的には、図4は、ストリングST1およびST2の双方について、図2と同様にk個目のモジュール電池4(k)を構成する収容容器11とk+1個目のモジュール電池4(k+1)を構成する収容容器11に収容されている単電池5の近傍における、接続の様子を示している。
【0058】
いま、ストリングST1のモジュール電池4(k)に属するある単電池5x(1)が故障したとする。充放電制御部31が係る故障を検知すると、バイパス制御部31bは、故障した単電池5x(1)が属するモジュール電池4(k)の主経路Laに備わるグループ間ゲートG1およびモジュール端ゲートG3をON状態からOFF状態に切り替えるとともに、グループ間ゲートG1の上流側に接続されているブリッジ経路Lcbに備わるブリッジゲートG2bと、当該モジュール電池4(k)の最下流側に接続されているブリッジ経路Lceに備わる終端ブリッジゲートG2eとを、OFF状態からON状態に切り替える。
【0059】
これにより、ストリングST1のモジュール電池4(k)においては、故障した単電池5x(1)の属するセルグループ10とこれを挟むグループ間ゲートG1およびモジュール端ゲートG3には電流は流れず、代わって、矢印AR21~AR24に示すように、通電経路が、主経路Laからブリッジ経路Lcb、バイパス経路Lb、終端ブリッジ経路Lceという経路にバイパスされる。
【0060】
なお、故障した単電池5が属するモジュール電池4(k)を除くストリングST1においては、例えば矢印AR25およびAR26に示すように、単電池5の故障がないときと同様、主経路Laが通電経路として維持される。
【0061】
なお、本実施の形態に係る蓄電池システム1においてある単電池5が故障した際に行われる、係る単電池5を含むセルグループ10のバイパスは原則として、グループ間ゲートG1をON状態からOFF状態に切り替えるとともに、当該セルグループ10の上流側と下流側のそれぞれに位置するブリッジゲートG2のうち意図するバイパスを実現可能な1つずつのブリッジゲートG2をOFF状態からON状態に切り替えることにより、実現される。
【0062】
例えば、図4に示す場合であれば、グループ間ゲートG1をON状態からOFF状態に切り替え、ブリッジゲートG2bおよびG2dをOFF状態からON状態へと切り替えることでも、故障した単電池5x(1)を含むセルグループをバイパス可能である。この場合、バイパスに伴い通電経路を構成するゲートスイッチの個数が1つ増えることになる。
【0063】
しかしながら、ゲートスイッチの個数が増えるほど抵抗ロスは増大するため、バイパスするにあたっては、ゲートスイッチの個数がなるべく増えないことが望ましい。
【0064】
図4に示した例では、この点を鑑み、主経路Laにおいてグループ間ゲートG1に加えてモジュール端ゲートG3もON状態からOFF状態に切り替るとともに、故障した単電池5x(1)が属するセルグループ10の下流側においてバイパスに用いるゲートスイッチを、終端ブリッジゲートG2eとすることで、使用するゲートスイッチの個数をバイパス実行前後で変わらないようにしている。これにより、バイパスに伴い抵抗ロスが増大しないようになっている。
【0065】
また、図示は省略するが、単電池5x(1)が属するセルグループ10ではなく、同じ収容容器11に収容されてなるもう一方のセルグループ10に属する単電池5が故障した場合には、バイパス制御部31bは、ストリングST1の収容容器11(k)に備わるグループ間ゲートG1をON状態からOFF状態に切り替えるとともに、故障した単電池5の属するセルグループ10の上流側に接続されているブリッジ経路Lcaに備わるブリッジゲートG2aと、グループ間ゲートG1の下流側に接続されているブリッジ経路Lccに備わるブリッジゲートG2cとを、OFF状態からON状態に切り替える。
【0066】
この場合も、ストリングST1のモジュール電池4(k)においては、故障した単電池5の属するセルグループ10とその下流側に位置するグループ間ゲートG1には電流は流れず、代わって、通電経路が、主経路Laからブリッジ経路Lca、バイパス経路Lb、ブリッジ経路Lccという経路にバイパスされる。この場合は、バイパスに伴い通電経路を構成するゲートスイッチの個数が1つ増えることになる。
【0067】
いずれにせよ、ストリングST1に属する単電池5が故障した場合には、ストリングST1における最大起電力は、故障した単電池5がない状態の2mnV0なる値からmV0だけ低下することになる。
【0068】
ただし、このようにストリングST1においてバイパスを行っただけであると、ストリングST2における最大起電力は2mnV0なる値のままであるので、ストリングST1における起電力とこれに並列するストリングST2における起電力とが、バランスしなくなる。そこで、本実施の形態に係る蓄電池システム1においては、2つのストリングSTの一方においてあるセルグループ10に属する単電池5が故障することにより当該ストリングSTにおける最大起電力が低下することになる場合、故障した単電池が属していないストリングSTにおいても意図的に、同じだけの起電力低下が生じるようにする。
【0069】
具体的には、ゲートスイッチのON/OFF状態を切り替えて、いずれかのセルグループ10に電流が流れないようにし、故障した単電池5が属するストリングSTと同様の通電経路のバイパスを、故障した単電池5が属していないストリングSTにおいても行うようにする。
【0070】
図4に示す場合であれば、故障した単電池5x(1)が属していないストリングST2のモジュール電池4(k+1)において、係るバイパスが行われている。より詳細には、係るモジュール電池4(k+1)に属するグループ間ゲートG1およびモジュール端ゲートG3がON状態からOFF状態に切り替えられてなるとともに、グループ間ゲートG1の上流側に接続されているブリッジ経路Lcbに備わるブリッジゲートG2bと、ブリッジ経路Lceに備わる終端ブリッジゲートG2eとが、OFF状態からON状態に切り替えられている。
【0071】
これにより、ストリングST2のモジュール電池4(k+1)においては、グループ間ゲートG1とその下流側に位置するセルグループ10には電流は流れず、代わって、矢印AR33~AR36に示すように、通電経路が、主経路Laからブリッジ経路Lcb、バイパス経路Lb、ブリッジ経路Lceという経路にバイパスされる。
【0072】
モジュール電池4(k+1)を除くストリングST2においては、例えば矢印AR31およびAR32に示すように、主経路Laが通電経路として維持される。
【0073】
結果として、ストリングST2における最大起電力も、2mnV0なる値からmV0だけ低下し、ストリングST1とST2とにおける最大起電力が2mnV0-mV0=(2n-1)mV0で揃うことになる。
【0074】
故障した単電池5が属していないストリングSTにおいてバイパスの対象となるセルグループ10の選択は、基本的には任意である。それゆえ、図4においてストリングST2のモジュール電池4(k+1)に属するセルグループ10がバイパスの対象として選択されているのはあくまで例示にすぎず、同じあるいは他の収容容器11に含まれるセルグループ10がバイパスの対象として選択されてよい。その場合も同様に、当該セルグループ10と、同じ収容容器11に含まれるグループ間ゲートG1とが、2つのブリッジ経路とバイパス経路Lbとによってバイパスされる。
【0075】
ただし、動作状態等から寿命が近い単電池5が存在することがあらかじめわかっているような場合は、当該単電池5が優先的にバイパスの対象として選択されてよい。
【0076】
以上のように、いずれかのストリングSTに属する1個の単電池5が故障した場合、蓄電池セット2は、最大起電力が(2n-1)mV0の電池として使用が継続される。
【0077】
(2個の単電池が故障した場合)
次に、図4に示すように1個の単電池5が故障した後、さらにもう1個の単電池5が故障した場合を考える。これには、以下のケース(i)~(iii)の3通りの場合がある。
【0078】
[ケース(i):1個目に故障した単電池5が属していないストリングSTにおいて、単電池5が故障する場合]
この場合は、新たに故障した単電池5が属するストリングSTにおいて、それまで故障した単電池5が存在しないにも関わらず最大起電力を揃えるべくバイパスの対象として選択されていたセルグループ10に代えて、新たに故障した単電池5を含むセルグループ10がバイパスの対象となるよう、バイパス制御部31bが対象となるゲートスイッチのON/OFF状態を切り替える。
【0079】
従って、ケース(i)の場合、蓄電池セット2は変わらず、最大起電力が(2n-1)mV0の電池として使用が継続されることになる。
【0080】
[ケース(ii):1個目に故障した単電池5が属しているストリングSTにおいて、当該単電池5と同じモジュール電池4に属する単電池5が故障する場合]
この場合は、1個目に故障した単電池5が属するストリングSTにおいて、新たに故障した単電池5を含むセルグループ10がさらにバイパスされる。加えて、起電力を揃えるため、故障した単電池5が属していないストリングSTにおいても、任意のセルグループ10がさらにバイパスされる。
【0081】
より詳細には、故障した2つの単電池5が属するストリングSTにおいては、それら2つの単電池5がそれぞれに属するモジュール電池4の2つのセルグループ10がまとめてバイパスされる。一方、故障した単電池が存在しないストリングSTにおいては、該ストリングSTの全体から2つのセルグループ10が任意に選択されてバイパスされる。なお、その際は、故障した単電池5が1個だけであった場合にバイパスされていたセルグループ10が引き続きバイパスされる態様であってもよいし、新たに2つのセルグループ10が選択されてバイパスされる態様であってもよい。
【0082】
いずれにせよ、係るケース(ii)の場合、それぞれのストリングSTにおける最大起電力は、故障した単電池5が1個だけであった場合からさらに、mV0だけ低下する。これにより、ケース(ii)の場合、蓄電池セット2は、最大起電力が2(n-1)mV0の電池として使用が継続されることになる。
【0083】
図5は、ケース(ii)の場合を例示するべく示す、あるストリングSTの同じ収容容器11に収容された2個の単電池5が故障した場合の、ストリングSTにおける通電態様の一例を示す図である。
【0084】
より具体的には、図5は、図4に示していたように、ストリングST1のあるモジュール電池4(k)に含まれる一方のセルグループ10に属する単電池5x(1)が先に故障していた(1個目に故障した)単電池5である場合において、同じ収容容器11に収容された他方のセルグループ10に属する単電池5x(2)が新たに故障した(2個目に故障した)ために、それら2つのセルグループ10がバイパスされるときの様子を、示している。
【0085】
さらに、図5には、故障した単電池5が存在しないストリングST2においても、図4に示す、故障した単電池5が1個であったときにバイパスされていたセルグループ10と同じモジュール電池4(k+1)に含まれるもう一方のセルグループ10がさらにバイパスされることにより、一の収容容器に収容された2つのセルグループ10がバイパスされることとなったときの様子も、併せて示している。
【0086】
まず、ストリングST1について説明すると、充放電制御部31が新たに単電池5x(2)の故障を検知した結果として、バイパス制御部31bが、この故障した単電池5x(2)が属するセルグループ10の上流側に接続されているブリッジ経路Lcaに備わるブリッジゲートG2aを、OFF状態からON状態に切り替える一方、単電池5x(1)の故障以降はバイパスのためにON状態とされていた、ブリッジ経路Lcbに備わるブリッジゲートG2bを再び、ON状態からOFF状態に切り替えている。
【0087】
これにより、ストリングST1のモジュール電池4(k)においては、故障した単電池5x(1)と単電池5x(2)のそれぞれが属するセルグループ10とその間に位置するグループ間ゲートG1には電流は流れず、代わって、矢印AR41~AR45に示すように、通電経路が、主経路Laからブリッジ経路Lca、バイパス経路Lb、ブリッジ経路Lceという経路にバイパスされる。一方、故障した2つの単電池5(5x(1)、5x(2))が属するモジュール電池4(k)を除くストリングST1においては、例えば矢印AR46およびAR47に示すように、単電池5の故障がないときと同様、主経路Laが通電経路として維持される。
【0088】
次に、ストリングST2について説明すると、図4に示していた状態からさらに、同じ収容容器11に属するもう一つのセルグループ10についてもバイパスするべく、バイパス制御部31bは、ブリッジ経路Lcaに備わるブリッジゲートG2aをOFF状態からON状態に切り替える一方、ブリッジ経路Lcbに備わるブリッジゲートG2bをON状態からOFF状態に切り替えている。
【0089】
最低限、これらの切り替えが行われれば、ストリングST2のモジュール電池4(k+1)におけるゲートスイッチのON/OFF状態は、故障した単電池5が属するストリングST1のモジュール電池4(k)におけるゲートスイッチのON/OFF状態と同じとなる。それゆえ、上述の切り替えが行われさえすれば、ストリングST2の通電経路において、モジュール電池4(k+1)を構成する収容容器11に含まれる2つのセルグループ10はともにバイパスされる。
【0090】
なお、図5に示した場合とは異なり、2個目に故障した単電池5が1個目に故障した単電池5と同じセルグループ10に属している場合については、あえて想定する必要がない。これは、蓄電池セット2に含まれるいずれのセルグループ10においても、ある単電池5が故障した場合にはそれ以降、当該セルグループ10はバイパスの対象とされて通電されることがないため、さらなる故障が生じ得ないからである。
【0091】
[ケース(iii):1個目に故障した単電池5が属しているストリングSTにおいて、当該単電池5とは異なるモジュール電池4に属する単電池5が故障する場合]
この場合は、2個目に故障した単電池5が属するセルグループ10が含まれるモジュール電池4と、故障した単電池5の存在しないもう一方のストリングSTのいずれかのモジュール電池4とのそれぞれにおいて、セルグループ10のバイパスが新たになされるよう、バイパス制御部31bが対象となるゲートスイッチのON/OFF状態を切り替える。故障した単電池5の存在しないストリングSTにおいては、新たにバイパスされるセルグループ10と最初にバイパスされたセルグループ10とが同じ収容容器11に収容されていて両者がある一のモジュール電池4を構成していてもよいし、相異なる収容容器11に収容されて異なるモジュール電池4を構成していてもよい。バイパスされるセルグループ10が同じ収容容器11に収容されている場合は、図5のストリングST1収容容器11(k)とストリングST2の収容容器11(k+1)の双方にて例示したような、バイパス態様が採用されてもよい。
【0092】
ケース(iii)の場合、それぞれのストリングSTにおいて最大起電力がさらにmV0だけ低下することになるので、蓄電池セット2は、最大起電力が2(n-1)mV0の電池として使用が継続されることになる。
【0093】
(3個以上の単電池が故障した場合)
2個目の単電池5が故障して以降、さらに多くの単電池5が故障した場合も、基本的には、上述した1個あるいは2個の単電池5が故障した場合におけるゲートスイッチのON/OFF状態の切り替えを、新たに故障した単電池5が属するセルグループ10が収容されている収容容器11に備わるゲートスイッチを対象に行うことで、対処が可能である。
【0094】
ただし、故障した単電池5の個数が多くなるほど残りの単電池5における過負荷比は増大し、流れる電流の限界値に近づく。それゆえ、蓄電池セット2において許容されている故障した単電池5の個数は、それら過負荷比や、電流の限界値に応じてあらかじめ定まっている。
【0095】
なお、単電池5の故障が発生した都度、通電経路を切り替えるにあたっては、通電経路を構成するゲートスイッチの個数がなるべく増えることのないように、ON状態とOFF状態の切り替え対象となるゲートスイッチが選択される。
【0096】
(バイパス制御の特徴と利点)
以上のように、本実施の形態においては、蓄電池セット2を構成する2つのストリングST(ST1、ST2)のそれぞれのモジュール電池4に、単電池5がセルグループ10ごとに区分されて直列に接続される主経路Laに加えて、バイパス経路Lbを設けられてなり、かつ、主経路Laにおけるセルグループ10の間と、主経路Laとバイパス経路Lbとをつなぐブリッジ経路とに、ゲートスイッチ(グループ間ゲートG1、ブリッジゲートG2a、G2b、G2c、G2d、G2e、モジュール端ゲートG3)が設けられてなる。
【0097】
そして、いずれの単電池5にも故障がない場合にはそれぞれのストリングSTにおいて主経路Laのみを用いて通電を行う一方、いずれかのストリングSTにおいて単電池5が故障した場合には、係る故障した単電池5が備わる箇所に応じてゲートスイッチのON/OFF状態を適宜に切り替えることで、当該単電池5を含むセルグループ10をバイパス経路Lbにてバイパスするとともに、故障した単電池5が備わっていないストリングSTにおいても、同様のバイパスを行って、2つのストリングSTにおける起電力を揃えるようにしている。
【0098】
これにより、蓄電池セット2においては、それぞれのストリングSTにおける単電池5の直列接続数が大きい一方で、ストリングSTの並列数が少ない構成を採用した場合であっても、単電池5の故障が蓄電池セット2の全体としての出力に及ぼす影響が好適に低減されるようになっている。
【0099】
特に、1つのセルグループ10を構成する単電池5の個数mを比較的小さな値に抑える一方で、モジュール電池4の個数であるnの値を大きくした場合には、最大起電力が十分に確保される一方で、過負荷比の増大は抑制される。
【0100】
より具体的には、mは10未満(例えば8)とされ、nは数十(例えば35)程度とされるのが好適である。ただし、nの値が一定の場合、mの値が小さいほど、必要となるゲートスイッチの個数が多くなる点には、留意が必要である。
【0101】
仮に、m=8、n=35であり、単電池5の起電力V0が2Vである場合をモデルケースとすると、係るモデルケースの蓄電池セット2における単電池の総数は1120個となり、単電池5の故障がない場合の最大起電力は1120Vである一方、4個の単電池5が故障した場合に不使用となる蓄電池セット2の個数は64個に留まり、過負荷比は2×35/(2×35-4)=1.061となる。
【0102】
従来のバイパス経路を有さないモジュール電池の一例として、1152個の単電池を、それぞれに96個の単電池を直接に接続してなる12個のストリングを並列に接続してなるモジュール電池を想定すると、係るモジュール電池の場合、単電池の個数は多いにも関わらず最大起電力は96×2=192Vに留まる。また、2つのストリングに属する単電池が1つずつ故障しただけであっても、過負荷比は12/10=1.09となり、上述のモデルケースの場合の過負荷比を上回ることになる。
【0103】
このことは、本実施の形態に係るモジュール電池の構成を採用することで、従来よりも単電池の個数を削減しつつ、故障に対する冗長性に優れたモジュール電池を実現出来ることを指し示している。
【0104】
また、本実施の形態においては、蓄電池セット2を構成するそれぞれのストリングSTにグループ間ゲートG1、ブリッジゲートG2、およびモジュール端ゲートG3という3種類のゲートスイッチが設けられている。そして、単電池5の故障がない場合はそれぞれの収容容器11内においてグループ間ゲートG1とモジュール端ゲートG3の2個のみがON状態とされており、その後の単電池5の故障の発生状況に応じて、バイパス制御部31bが各ゲートスイッチのON/OFF状態を切り替えるようになっている。
【0105】
単に、故障した単電池5を含むセルグループ10をバイパスするという目的を果たすためだけであれば、それぞれのセルグループ10の上流側と下流側とにおいて主経路Laとバイパス経路Lbとを接続する4つのブリッジ経路Lca、Lcb、Lcc、Lcdに設けられてなる、ブリッジゲートG2a、G2b、G2c、G2dを具備すれば足りる。すなわち、グループ間ゲートG1、モジュール端ゲートG3、および、ブリッジ経路Lceならびにこれに設けられた終端ブリッジゲートG2eは、あるいはさらに、ブリッジゲートG2aとG2bの間とブリッジゲートG2cとG2dの間を除くバイパス経路Lbは、省略することができる。
【0106】
それにも関わらず、本実施の形態に係る蓄電池セット2においてそれらを敢えて設けているのは、上述のように、バイパスに伴い通電経路を構成するゲートスイッチの個数が1つ増えることに伴う抵抗ロスの増大を、なるべく抑制するためである。通電経路に含まれるゲートスイッチの個数が多いほど、ストリングSTにおいてはこれに起因した電圧低下が増大することになる。
【0107】
例えば、省略することが出来るとした上記各要素を実際に省略した場合、あるストリングSTにおいて新たにバイパスする必要があるセルグループ10が生じるたびに、バイパスのために通過するゲートスイッチが2個ずつ増えることになる。
【0108】
これに対し、本実施の形態のようにゲートスイッチを配置した構成において、収容容器11に収容されている2つのセルグループ10のいずれかが初めてバイパスされる場合には、上述のように、上流側のセルグループ10がバイパスされるケースにおいてのみ、通電経路となるゲートスイッチの個数は差引で1つ増える。図4に示すように、下流側のセルグループ10がバイパスされるケースでは、使用されるゲートスイッチの個数はバイパス実行前と変わらず2個のままである。
【0109】
また、先にバイパスされたセルグループ10と同じ収容容器11に収容されておりそれゆえに両者で一のモジュール電池4を構成しているもう一つのセルグループ10がさらにバイパスされる場合、ON状態とされるのはブリッジゲートG2aと終端ブリッジゲートG2eの2個のみとなるため、通電経路となるゲートスイッチの個数は単電池5に故障がない場合と同じとなる。
【0110】
それゆえ、本実施の形態に係る蓄電池セット2においては、バイパスに際して通電経路となるゲートスイッチの個数が最小化されてなるので、単電池5の故障に起因して通電経路となるゲートスイッチの個数が増大することに伴う電圧降下の影響が、好適に抑制されてなる。
【0111】
さらに、本実施の形態に係る蓄電池システム1においては、同一の構成とされた2つのストリングST(ST1、ST2)を並列に接続することによって蓄電池セット2を構成し、かつ、一方のストリングSTにおいて単電池5の故障が生じたことによって当該単電池5を含む1または複数のセルグループ10をバイパスすることになった場合には、他方のストリングSTにおいてもいずれかのセルグループ10を同じ数だけバイパスさせるようしている。
【0112】
これにより、それぞれのストリングSTにおける最大起電力が、同じ値(具体的には、単電池の起電力V0×一のセルグループ10に属する単電池5の個数m×故障した単電池5が属するセルグループ10の数)だけ低下することになる。それゆえ、いずれかのストリングSTにおいて単電池5の故障があったとしても、2つのストリングSTにおける起電力は同じ値に揃ったままとなる。このことも、単電池の故障に対する冗長性の確保に寄与している。
【0113】
<蓄電池セットの具体的構成例>
以降、上述のような特徴を有する蓄電池セット2の具体的構成例について説明する。なお、以降においては、セルグループ10が8個の単電池5で構成される場合(m=8の場合)を例としている。
【0114】
図6は、単電池5が収容容器11に収容された状態を例示する上面図であり、図7および図8はそれぞれ、係る収容状態における収容容器11の相異なる向きの側面図である。換言すれば、図6ないし図8は、ある一のモジュール電池4の構成例でもある。なお、図6ないし以降の図面においては、収容容器11の平面視長手方向(図6においては図面左右方向)をx軸方向とし、平面視短手方向(図6においては図面上下方向)をy軸方向とし、鉛直方向をz方向とする、右手系のxyz座標を付している。
【0115】
図6に示す収容容器11は概略、外面および内面が金属板からなるとともに、その側面および底面においてそれら金属板の間に断熱材11aが充填された直方体状の容器である。
【0116】
また、収容容器11は、その底部および側部を支持枠11bにて支持されており、支持枠11bの四隅の上端部には他の収容容器11を積層載置可能な被載置部11b1となっている。また、収容容器11の底部の四隅は、他の収容容器11の被載置部11b1に積層載置可能な載置部11cが設けられてなる。すなわち、収容容器11は、鉛直方向に積層可能な構造を有してなる。なお、以降においては、収容容器11の平面視長手方向に沿った側面を一対の主側面11s1と称し、平面視短手方向に沿った側面を一対の副側面11s2と称する。
【0117】
図6および図7においては、それぞれが円筒状をなす8個の単電池5(1)~5(8)からなる2つのセルグループ10が、x軸方向に沿って2列に並べられて、係る収容容器11に収容されてなる様子を示している。なお、図6ないし図8においては図示を省略しているが、収容容器11には、上述したヒータ11h、ファン11f、および温度センサ11tも、適宜の箇所に設けられてなる。
【0118】
より詳細には、収容容器11の上部には、収容容器11内の断熱を確保する目的で、図示しない蓋体が配置される。蓋体は、収容容器11と同様、外面および内面が金属板からなるとともに、内部に断熱材が充填された構成を有する。また、収容容器11内の配置物以外の隙間には、砂材が充填される。砂材は、単電池5において破損、異常加熱、活物質の漏洩などの不具合が生じた場合に周囲に対する影響を低減する目的で、充填される。砂材としては、膨張ひる石(バーミキュライト)や珪砂などが例示される。
【0119】
単電池5の一方端(収容容器11に収容された状態においては上端)の中央からは負極端子5nが、周縁部からは正極端子5pが、それぞれ突出している。それぞれのセルグループ10においては、収容容器11の平面視長手方向に沿って隣り合って配置された単電池5の一方の正極端子5pと他方の負極端子5nとが、接続端子C1にて電気的に接続されてなる。ただし、図6においては、一部の接続端子C1のみを示している。
【0120】
また、それぞれのセルグループ10において一方端に配置されてなる単電池5(1)の負極端子5nと、他方端に配置されてなる単電池5(8)の正極端子5pとには、主側面11s1から収容容器11の外側へと突出する外部接続端子C2が接続されてなる。なお、図示は省略しているが、係る外部接続端子C2と収容容器11を構成する金属板とは、所定の絶縁部材によって絶縁されてなる。
【0121】
さらに、図7および図8に示すように、収容容器11の副側面11s2の一方には、図6においては図示しない接続部20が、設けられてなる。
【0122】
接続部20は、第1接続銅板21と、第2接続銅板22と、第3接続銅板23と、第4接続銅板24と、第5接続銅板25と、第6接続銅板26とを備える。これら第1ないし第6接続銅板21~26は、0.3mm~3.0mm程度の厚みを有する銅板からなる。あるいは、同程度の厚みを有する板状基材に銅箔を貼り付けたものが用いられてもよい。後述するように、第1ないし第6接続銅板21~26は、蓄電池セット2の動作時の通電経路として設けられてなる。第1~第4接続銅板21~24は、収容容器11の副側面11s2から一対の主側面11s1のいずれかに向けて屈曲させて設けられてなる。
【0123】
図7には、一対の主側面11s1の一方の面上において、図面視手前側に位置するセルグループ10と接続部20とが電気的に接続される様子を示している。具体的には、ケーブルC4が、単電池5(1)に接続されてなる外部接続端子C2と第1接続銅板21の一方端部とを接続してなり、ケーブルC3が、単電池5(8)に接続されてなる外部接続端子C2と第2接続銅板22の一方端部とを接続してなる様子を示している。
【0124】
また、図示は省略するが、一対の主側面11s1の他方の面上においても、もう一方のセルグループ10と接続部20とが図示しないケーブルにて電気的に接続されている。すなわち、単電池5(1)に接続されてなる外部接続端子C2と第3接続銅板23の一方端部とが接続されてなるとともに、単電池5(8)に接続されてなる外部接続端子C2と第4接続銅板24の一方端部とが接続されてなる。
【0125】
さらには、図8に示すように、第1接続銅板21ないし第4接続銅板24のそれぞれと第5接続銅板25との間には、ゲートスイッチGが設けられてなる。さらには、第2接続銅板22と第3接続銅板23との間、第4接続銅板24と第6接続銅板26との間、および、第5接続銅板25と第6接続銅板26との間にも、ゲートスイッチGが設けられてなる。
【0126】
以上のような、収容容器11における接続端子C1、外部接続端子C2、ケーブルC3およびC4などによる電気的な接続は、図2などに示した回路構成に対応する。
【0127】
すなわち、第1接続銅板21ないし第4接続銅板24のそれぞれと第5接続銅板25との間がそれぞれ、ブリッジ経路Lca~Lcdに該当し、それぞれに備わるゲートスイッチGはそれぞれ、ブリッジゲートG2a、G2b、G2c、G2dに該当する。さらには、第2接続銅板22と第3接続銅板23との間のゲートスイッチGは、グループ間ゲートG1に該当する。また、第4接続銅板24と第6接続銅板26との間のゲートスイッチGは、モジュール端ゲートG3に該当する。そして、第5接続銅板25と第6接続銅板26との間のゲートスイッチGは、終端ブリッジゲートG2eに該当する。
【0128】
そして、第1接続銅板21→(ケーブルC4、外部接続端子C2)→セルグループ10(単電池5(1)~単電池5(8)の直列)→(外部接続端子C2、ケーブルC3)→第2接続銅板22→ゲートスイッチG(G1)→第3接続銅板23→(ケーブル、外部接続端子C2)→セルグループ10(単電池5(1)~単電池5(8)の直列)→(外部接続端子、ケーブルC4)→第4接続銅板24→ゲートスイッチG(G3)→第6接続銅板26という経路が、主経路Laに該当する。
【0129】
また、第5接続銅板25が収容容器11内におけるバイパス経路Lbに該当する。
【0130】
加えて、第1接続銅板21の他方端部21aと第6接続銅板26の他方端部26aとは、それぞれ、別の収容容器11との間で電気的接続を行うための端子部とされてなる。
【0131】
例えば、図6ないし図8が、図4に示した単電池5x(1)の故障したストリングST1のモジュール電池4(k)を構成する収容容器11である場合、バイパス時の通電経路は、第1接続銅板21→(ケーブルC4、外部接続端子C2)→セルグループ10(単電池5(1)~単電池5(8)の直列)→(外部接続端子C2、ケーブルC3)→第2接続銅板22→ゲートスイッチG(G2b)→第5接続銅板25→ゲートスイッチG(G2)→第6接続銅板26となる。
【0132】
以上より、図6ないし図8は、図2に例示した回路構成を備えたモジュール電池4が実際に実現可能なものであることを示している。
【0133】
図9は、それぞれが図6ないし図8に示した構成を有する複数の収容容器11を一のコンテナ100cに収容してなる、モジュール電池収容体100の模式的な構成を示す図である。図9においては収容容器11との関係において図6ないし図8と共通のxyz座標を付している。以降においては、蓄電池セット2のそれぞれのストリングSTが35個の収容容器11からなる(n=35)ものとする。
【0134】
図9に示す場合においては、コンテナ100c上に、12箇所×3段=36箇所の収容容器収容箇所がそれぞれのストリングST(ST1、ST2)用に2列に用意され、それぞれの列においては、最下段の一方端部側を除く35箇所の部分に、それぞれのストリングSTの35個の収容容器11が配置されてなる。なお、底部をハッチングにて示す最下段の一方端部側の一箇所には、2列分まとめて終端ユニット12の配置箇所とされる。
【0135】
より具体的には、個々のストリングSTにおいて、収容容器11は、それぞれの接続部20がモジュール電池収容体100の側面(yz平面)に露出するように配置される。すなわち、それぞれの収容容器11においては、斜線部に接続部20が位置するように配置される。
【0136】
なお、上述したように、それぞれの収容容器11には被載置部11b1と載置部11cとが備わっているので、図9に示すような積層載置は好適に行える。
【0137】
係る態様にて収容容器11を積層した状態で、相異なる収容容器11の第1接続銅板21の他方端部21aと第6接続銅板26の他方端部26aとを接続することで、図1および図2に示した回路構成の蓄電池セット2を、実際に構成することが出来る。
【0138】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、それぞれが高温動作型の二次電池である多数の単電池を直列に接続することによって構成されたストリングを備える、蓄電池システムにおいて、該ストリングを構成する単電池を複数のセルグループに区分し、それぞれのセルグループを該ストリング内において個別にバイパス可能なバイパス経路を設けることで、ある単電池が故障した場合であっても、当該単電池の属するセルグループを含む少なくとも1つのセルグループをバイパスすることで、当該単電池を含むストリングに対しては通電を継続することが可能となる。
【0139】
これにより、本実施の形態によれば、単電池の故障に対する冗長性に優れたモジュール電池さらにはこれを備える充電池システムが、実現される。
【0140】
また、本実施の形態に係る蓄電池システムにおいては、互いに直列に接続されるセルグループ同士の間と、それぞれのセルグループの上下流側とバイパス経路との間を接続するブリッジ経路とにゲートスイッチを設けるようにし、通電経路をバイパスさせるに際しては、それらゲートスイッチのON/OFF状態を適宜に組み合わせることで、通電経路に位置するゲートスイッチの個数を最小化されてなる。これにより、単電池の故障に起因したゲートスイッチの切り替えに伴う電圧降下の影響が、好適に低減されてなる。
【0141】
さらに、本実施の形態に係る蓄電池システムにおいては、同一の構成とされた2つのストリングを並列に接続し、かつ、一方のストリングにおいて単電池の故障が生じたことによって当該単電池を含むセルグループをバイパスすることになった場合には、他方のストリングにおいてもいずれかのセルグループをバイパスさせるようしている。これにより、それぞれのストリングにおける最大起電力が、同じ値だけ低下することになる。それゆえ、いずれかのストリングにおいて単電池の故障があったとしても、2つのストリングにおける起電力は同じ値に揃ったままとなる。このことも、単電池の故障に対する冗長性の確保に寄与している。
【0142】
また、本実施の形態に係る蓄電池システムにおいては、単電池が故障した場合のそれぞれのゲートスイッチのON/OFF状態の切り替えが、当該単電池を含むモジュール電池を単位として行われ、同じストリングに属する他のモジュール電池に影響しない。すなわち、ON/OFF状態の切り替え制御は個々のモジュール電池内で完結する。また、ON/OFF状態の切り替え制御の対象となるモジュール電池においてのみ、使用するゲートスイッチの個数の増大を抑制さえすれば、ストリング全体においてゲートスイッチの使用個数が増大することもない。
【0143】
特に、1つのセルグループを構成する単電池の個数を比較的小さな値に抑える一方で、収容容器の個数を大きくした場合には、最大起電力が十分に確保される一方で、単電池における過負荷比の増大が抑制される。
【0144】
<変形例>
上述の実施の形態においては、一の蓄電池セット2が、互いに並列に接続された2つのストリングSTから構成される例を示しているが、これは必須の態様ではなく、さらに多くのストリングSTが並列に接続されていてもよい。
【0145】
ただし、一の蓄電池セット2を2つのストリングSTにて構成する態様は、図9に示すモジュール電池収容体100のように、それぞれが各ストリングSTに属するモジュール電池4を構成する全ての収容容器11を、隙間なく、かつ、当該モジュール電池収容体100の外面をなすように配置することが容易であるという点で、好適である。
【0146】
また、上述の実施の形態では、主経路Laとバイパス経路Lbとの間での通電経路の切り替えを半導体素子SDからなるゲートスイッチを用いて行っているが、これに代わり、機械式のスイッチを用いて係る切り替えを行う態様であってもよい。その際には、上述の実施の形態と同様のバイパスが実現される限りにおいて、各セルグループとスイッチとの接続の仕方が、上述の実施の形態とは違えられてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9