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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ロッドアセンブリ及び緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
F16F9/32 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023529835
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2022023334
(87)【国際公開番号】W WO2022270326
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2021105698
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 健伍
(72)【発明者】
【氏名】山田 和誠
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 裕樹
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112727980(CN,A)
【文献】特開昭54-080926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝器に使用されるロッドアセンブリであって、該ロッドアセンブリは、
棒状に形成される棒状部と、該棒状部の一端に設けられ、前記棒状部よりも小径に形成された小径部とを有する棒状部材と、
前記棒状部材の前記小径部が挿入されると共に該小径部と締結される第1締結部を有するブラケットと、
前記ブラケットの外周面と前記小径部の少なくとも一部とが溶接により締結される第2締結部と、
を備えることを特徴とするロッドアセンブリ。
【請求項2】
緩衝器に使用されるロッドアセンブリであって、該ロッドアセンブリは、
棒状に形成される棒状部と、該棒状部の一端に設けられ、前記棒状部よりも小径に形成された小径部とを有する棒状部材と、
前記棒状部材の前記小径部が締結される第1締結部と前記小径部と前記棒状部との間に形成されるフランジ部が着座する着座部と、を有するブラケットと、
を有し、
前記ブラケットの前記着座部から軸方向へ離間した位置に、前記棒状部と溶接される第2締結部を備えることを特徴とするロッドアセンブリ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のロッドアセンブリであって、
前記ブラケットと前記小径部とが締結される前記第1締結部は、ねじ構造により締結されることを特徴とするロッドアセンブリ。
【請求項4】
緩衝器であって、該緩衝器は、
作動流体が封入されるシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に設けられるピストンと、
前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部へ延出され、棒状に形成される棒状部と、該棒状部の一端に設けられ、前記棒状部よりも小径に形成された小径部とを有するピストンロッドと、
前記ピストンロッドの前記小径部が締結される第1締結部と前記小径部と前記棒状部との間に形成されるフランジ部が着座する着座部と、を有するブラケットと、
を有し、
前記ブラケットの前記着座部から軸方向へ離間した位置に、前記棒状部と溶接される第2締結部を備えることを特徴とする緩衝器。
【請求項5】
請求項4に記載の緩衝器であって、
前記ブラケットと前記小径部とが締結される前記第1締結部は、ねじ構造により締結されることを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に使用されるロッドアセンブリ、及び該ロッドアセンブリを使用した緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両用緩衝器におけるピストンロッド(棒状部材)と取付アイ(ブラケット)との締結構造が開示されている。この締結構造では、ピストンロッドと取付アイとをねじ構造により締結させた後、ピストンロッドのフランジ部が着座する取付アイの着座部近傍で、ピストンロッドと取付アイとが溶接されていた(以下「従来の締結構造」と称する)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-105385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の締結構造では、緩衝器に入力された荷重を、ねじ締結による軸力と溶接部(接合部)とで受けているので、溶接の熱影響により着座部が剥離すると、溶接部に応力が集中して溶接割れが発生する虞がある。
【0005】
本発明は、製造過程における溶接の熱影響による着座部の剥離を抑止したロッドアセンブリ、及び該ロッドアセンブリを使用した緩衝器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロッドアセンブリは、緩衝器に使用されるロッドアセンブリであって、棒状に形成される棒状部と、該棒状部の一端に設けられ、前記棒状部よりも小径に形成された小径部とを有する棒状部材と、前記棒状部材の前記小径部が締結される第1締結部と、前記棒状部の少なくとも一部が挿入されると共に前記小径部と前記棒状部との間に形成されるフランジ部が着座する着座部と、を有するブラケットと、を有し、前記ブラケットの前記着座部から軸方向へ離間した位置に、前記棒状部と溶接される第2締結部を備えることを特徴とする。
本発明の緩衝器は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に設けられるピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部へ延出され、棒状に形成される棒状部と、該棒状部の一端に設けられ、前記棒状部よりも小径に形成された小径部とを有するピストンロッドと、前記ピストンロッドの前記小径部が締結される第1締結部と前記小径部と前記棒状部との間に形成されるフランジ部が着座する着座部と、を有するブラケットと、を有し、前記ブラケットの前記着座部から軸方向へ離間した位置に、前記棒状部と溶接される第2締結部を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、ロッドアセンブリ及び該ロッドアセンブリを使用した緩衝器において、製造過程における溶接の熱影響により締結部が発生する着座部の剥離を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る緩衝器の一部を断面で示す正面図である。
図2図1の要部を拡大して示す図である。
図3】第1実施形態の説明図であって、試験2の試験結果を示す図表である。
図4】第2実施形態の説明図である。
図5】第3実施形態の説明図である。
図6】第4実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を添付した図1乃至図3を参照して説明する。
図1は、第1実施形態に係るロッドアセンブリ10を備えた緩衝器1を示す。この緩衝器1は、鉄道車両(図示省略)の車体と台車との間に設けられる。便宜上、図1における上下方向をそのまま「上下方向」と称するが、緩衝器1の取付姿勢を限定するものではない。
【0010】
図1に示されるように、緩衝器1は、作動流体が封入されたシリンダ2と、該シリンダ2内に摺動可能に挿入されたピストン3と、該ピストン3に連結されたピストンロッド11(棒状部材)と、を有する。ピストンロッド11は、上端側がシリンダ2の外部へ延出されるロッド本体部14(棒状部)と、該ロッド本体部14の上端(一端)に設けられ、ロッド本体部14よりも小径の小径部13とを有する。なお、ピストンロッド11の下端には、台車に取り付けられる取付アイ5が設けられる。
【0011】
図2に示されるように、ロッド本体部14は、シリンダ2の上端に設けられたロッドガイド(図示省略)により案内され、めっき処理されるロッド摺動部16と、ロッド本体部14の上端部に形成され、ロッド摺動部16よりも僅かに小径の軸端部15とを有する。なお、軸端部15とロッド摺動部16との間には、面取り部17が形成される。また、ピストン3は、ロッド摺動部16の下端に連結される。
【0012】
小径部13は、雄ねじ部18が形成されたねじ軸をなす。軸端部15の端面には、一定幅を有する環状のフランジ部19が形成される。フランジ部19は、ピストンロッド11の軸線に垂直な平面に対して平行をなす。なお、軸端部15の軸長は、小径部13の軸長よりも短く設定されているが、同じ長さや長く設定されていてもよい。
【0013】
ピストンロッド11の上端(一端)には、取付アイ31(ブラケット)が設けられる。取付アイ31は、取付アイ31の上端側に設けられて車体に接続される円環部32と、該円環部32の軸線(中心線)に直交する軸線を有する円筒部33と、取付アイ31の下端に設けられた蓋部34と、を有する。蓋部34の外周面35には、ピストンロッド11(ロッド摺動部16)の、シリンダ2の外部へ延出された部分を蔽うロッドカバー4が取り付けられる。
【0014】
蓋部34の下端面36は、円筒部33の軸線に対して垂直な取付アイ31の下端面40と同一の平面上に位置する。蓋部34の上端面37は、下端面36(取付アイ31の下端面40)からの高さが円筒部33の軸線に近づくにつれて漸増するように傾斜される。円筒部33の外周面38には、下端が蓋部34の上端面37に接する円弧形断面を有する環状溝39が形成される。
【0015】
取付アイ31の下端面40には、ザグリ部41が形成される。ザグリ部41の底面42には、ピストンロッド11の軸端部15の上端部20(棒状部の少なくとも一部)が挿入されるロッド挿入部43の下端が開口される。ザグリ部41の深さ、即ち、ザグリ部41の底面42から取付アイ31の下端面44までの軸方向(上下方向)の長さは、後述する溶接部50の脚長よりも深く(長く)設定されているが同じ長さや長く設定されていてもよい。第1実施形態では、軸端部15の軸長の約1/2に設定されているが同じ長さや長く設定されていてもよい。ザグリ部41の底面42の直径(ザグリ径)は、溶接部50の形成時に溶接トーチ(図示省略)の進行を妨げないように設定され、第1実施形態では、円筒部33の外径よりも大きく設定される。また、ザグリ部41の内径は、底面32から取付アイ31の下端面40に向かって漸増される。
【0016】
ロッド挿入部43は、円筒部33の外径よりも小さく、かつピストンロッド11の小径部13の外径よりも大きい直径を有する円形断面を有する。ロッド挿入部43の軸長(上下方向長さ)は、軸端部15の軸長の約1/2に設定されているが同じ長さや長く設定されていてもよい。ロッド挿入部43の底部には、ピストンロッド11のフランジ部19が着座する(軸方向に突き当てられる)環状の着座部44が形成される。着座部44の内側(内周)には、円筒部33の軸孔45(第1締結部)が開口される。なお、着座部44と円筒部33の軸孔45との間には、面取り部46が形成される。
【0017】
取付アイ31の円筒部33の軸孔45には、ピストンロッド11の小径部13の雄ねじ部18が螺合される雌ねじ部47が形成される。即ち、取付アイ31の円筒部33の軸孔45(第1締結部)は、ねじ構造により、ピストンロッド11の小径部13に締結される。取付アイ31の円筒部33の軸孔45は、上端が取付アイ31の円環部32の内周面48に開口される。ピストンロッド11の小径部13の軸長は、ピストンロッド11の軸端部15に形成されたフランジ部19が取付アイ31の着座部44に着座された状態で、小径部13の端面22が取付アイ31の円環部32の内周面48の内側(上側)へ突出しないように設定される。
【0018】
ロッドアセンブリ10は、ピストンロッド11の軸端部15の下端部21の外周面23と取付アイ31のザグリ部41の底面42との間を全周溶接することで形成された溶接部50(第2締結部)を有する。溶接部50は、ピストンロッド11の小径部13と取付アイ31の円筒部33の軸孔45とをねじ締結させ、ピストンロッド11のフランジ部19を取付アイ31の着座部44に着座させた状態、即ち、当該ねじ締結によりフランジ部19と着座部44との間に面圧を作用させた状態で、取付アイ31のロッド挿入部43に挿入されたピストンロッド11の軸端部15を差込み溶接することにより形成される。
【0019】
これにより、溶接部50(第2締結部)は、取付アイ31のロッド挿入部43の軸長(ピストンロッド11の軸端部15のロッド挿入部43への挿入長さ)の分、換言すれば、取付アイ31における着座部44からザグリ部41の底面42までの軸方向距離の分だけ、着座部44から軸方向へ離間した位置に形成される。なお、溶接部50は、全周溶接である必要はなく、必要に応じて一部を溶接することで形成してもよい。また、前述したように、溶接部50の脚長は、ザグリ部41のザグリ深さよりも小さく設定されているが強度が確保できれば必ずしもこの限りではない。
【0020】
ここで、従来のロッドアセンブリは、取付アイが、ピストンロッドの軸端部を挿入させるロッド挿入部を有していないため、ピストンロッドのフランジ部(軸端部の端面)が取付アイの下端面(ザグリ部)に着座されていた。その結果、従来のロッドアセンブリでは、ピストンロッドのフランジ部が着座する取付アイの着座部から溶接部までの軸方向距離が0となり、着座部に隣接して溶接部が形成される。
これにより、従来のロッドアセンブリでは、溶接の熱影響によりピストンロッドと取付アイとのねじ締結による軸力が解放され、ピストンロッドのフランジ部が取付アイの着座部から遊離したり、溶接部に溶け込み不良が発生する虞がある。この場合、溶接部に応力が集中することで亀裂の起点となり、溶接割れが発生する虞がある。
【0021】
これに対し、第1実施形態では、ピストンロッド11(棒状部材)のロッド本体部14(棒状部)の一端に小径部13を設け、取付アイ31(ブラケット)の円筒部33の軸孔45(第1締結部)に、ピストンロッド11の小径部13をねじ構造により締結させた。
一方、取付アイ31に形成されたロッド挿入部43に、ピストンロッド11の軸端部15の上端部20(棒状部の少なくとも一部)を挿入すると共に、取付アイ31のロッド挿入部43の底部に形成された着座部44に、ピストンロッド11の小径部13とロッド本体部14の軸端部15との間に形成されたフランジ部19を着座させることにより、ピストンロッド11と取付アイ31とのねじ締結による軸力を発生させた。
そして、取付アイ31のロッド挿入部43に挿入されたピストンロッド11の軸端部15を差込み溶接することにより、取付アイ31の着座部44から軸方向へ離間させた位置に溶接部50(第2締結部)を形成した。
【0022】
第1実施形態によれば、取付アイ31(ブラケット)の着座部44から軸方向へ離間させた位置に、ロッド本体部14(棒状部)の軸端部15と溶接される溶接部50(第2締結部)を形成したので、ピストンロッド11のフランジ部19が着座する取付アイ31の着座部44への溶接の熱影響を抑制することができる。
これにより、第1実施形態では、ピストンロッド11の小径部13と取付アイ31の円筒部33の軸孔45(第1締結部)とのねじ締結による軸力が、溶接の熱影響により解放されるのを抑止することができる。その結果、ロッドアセンブリ10に入力される荷重を、ねじ締結による軸力と溶接部50(第2締結部)との双方で受けることが可能であり、ピストンロッド11のフランジ部19が取付アイ31の着座部44から遊離したり、溶接部50に溶け込み不良が発生する事態を回避することができる。よって、溶接部50に応力が集中することによる溶接割れの発生が抑止される。
【0023】
(第2実施形態)
次に、図4を参照して第2実施形態を説明する。
なお、第1実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。第1実施形態(図2参照)では、ピストンロッド11の小径部13と取付アイ31の円筒部33の軸孔45とが、ねじ構造による締結(ねじ締結)であった。
【0024】
これに対し、第2実施形態では、ピストンロッド11(棒状部材)のロッド本体部14(棒状部)の一端の小径部13を、取付アイ31(ブラケット)の円筒部33の軸孔45(第1締結部)に圧入構造により締結させた。
そして、第2実施形態では、取付アイ31に形成されたロッド挿入部43に、ピストンロッド11の軸端部15の上端部20(棒状部の少なくとも一部)を挿入すると共に、取付アイ31のロッド挿入部43の底部に形成された着座部44に、ピストンロッド11の小径部13とロッド本体部14の軸端部15との間に形成されたフランジ部19を着座させることにより、ピストンロッド11と取付アイ31との圧入締結による軸力を発生させた。
さらに、第2実施形態では、取付アイ31のロッド挿入部43に挿入されたピストンロッド11の軸端部15を差込み溶接することにより、取付アイ31の着座部44から軸方向へ離間させた位置に溶接部50(第2締結部)を形成した。
【0025】
第2実施形態によれば、前述した第1実施形態が奏する作用効果と同等の作用効果を得ることができる。即ち、第2実施形態では、取付アイ31の着座部44から軸方向へ離間させた位置に溶接部50(第2締結部)を形成したことにより、ピストンロッド11の小径部13と取付アイ31の円筒部33の軸孔45(第1締結部)との圧入締結による着座部が溶接の熱影響により剥離されるのを抑止することができる。
これにより、第2実施形態では、ロッドアセンブリ10に入力される荷重を、圧入締結による軸力と溶接部50(第2締結部)との双方で受けることが可能であり、ピストンロッド11のフランジ部19が取付アイ31の着座部44から遊離したり、溶接部50に溶け込み不良が発生する事態が回避される。よって、溶接部50に応力が集中することによる溶接割れの発生を抑止することができる。
【0026】
(第3実施形態)
次に、図5を参照して第3実施形態を説明する。
なお、第1乃至第2実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。
【0027】
第1実施形態(図2参照)では、取付アイ31に形成されたロッド挿入部43に、ピストンロッド11のロッド本体部14の、軸端部15の上端部20を挿入すると共に、取付アイ31のロッド挿入部43の底部に形成された着座部44に、ピストンロッド11の小径部13とロッド本体部14の軸端部15との間に形成されたフランジ部19を着座させ、この状態で、取付アイ31のロッド挿入部43に挿入されたピストンロッド11の軸端部15を差込み溶接する、換言すれば、ピストンロッド11の軸端部15の下端部21の外周面23と取付アイ31のザグリ部41の底面42との間に溶接部50を形成することにより、取付アイ31の着座部44から軸方向(下方向)へ離間させた位置に溶接部50形成した。
【0028】
これに対し、第3実施形態では、取付アイ31(ブラケット)にロッド挿入部43が設けられていない。このため、第3実施形態では、ピストンロッド11(棒状部材)のロッド本体部14(棒状部)の軸端部15の端面22に形成された環状のフランジ部19が、取付アイ31のザグリ部41の底面42に形成された着座部44に着座される。即ち、着座部44は、ザグリ部41の環状の底面42の内周縁部に形成される。この点で、第3実施形態は、従来の締結構造(ねじ締結)を使用したロッドアセンブリと共通する。
【0029】
そして、第3実施形態では、ピストンロッド11の小径部13の端面22と取付アイ31の円筒部33の雌ねじ部47が形成された軸孔45(第1締結部)の表面との間に溶接部50(第2締結部)を形成することにより、溶接部50を、取付アイ31の着座部44から軸方向(上方向)へ離間させた位置に形成した。よって、第3実施形態では、溶接部50を形成するため、ピストンロッド11のフランジ部19が取付アイ31の着座部44に着座された状態において、ピストンロッド11の小径部13の端面22から取付アイ31の円環部32の内周面48までの軸方向長さを、溶接部50の脚長よりも長く設定した。
【0030】
第3実施形態では、ピストンロッド11の軸端部15を取付アイ31のロッド挿入部43に挿入させない分、即ち、ロッド挿入部43の軸方向長さ分だけ、軸端部15の軸長が短くなる。
第3実施形態によれば、取付アイ31(ブラケット)の着座部44から軸方向へ離間させた位置に、ロッド本体部14(棒状部)の軸端部15と溶接される溶接部50(第2締結部)を形成したので、ピストンロッド11のフランジ部19が着座する取付アイ31の着座部44への溶接の熱影響が抑制される。
また、ロッド摺動部16との距離が離れるため、ロッド摺動部16のめっきへの溶接の熱影響が抑制される。
よって、第3実施形態では、前述した第1実施形態が奏する作用効果と同等の作用効果を得ることができる。
【0031】
なお、第3実施形態では、ピストンロッド11(棒状部材)の小径部13と取付アイ31の円筒部33の軸孔45(第1締結部)とがねじ構造による締結(ねじ締結)であったが、第2実施形態(図4参照)のように、ピストンロッド11の小径部13と取付アイ31の円筒部33の軸孔45とを圧入構造による締結(圧入締結)としてもよい。
【0032】
(第4実施形態)
次に、図6を参照して第4実施形態を説明する。
なお、第1乃至第3実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。
【0033】
第2実施形態(図4参照)では、取付アイ31に形成されたロッド挿入部43に、ピストンロッド11の軸端部15の上端部20を挿入すると共に、取付アイ31のロッド挿入部43の底部に形成された着座部44に、ピストンロッド11の小径部13とロッド本体部14の軸端部15との間に形成されたフランジ部19を着座させ、この状態で、ピストンロッド11の軸端部15の下端部21の外周面23と取付アイ31のザグリ部41の底面42との間に溶接部50を形成することにより、溶接部50を、取付アイ31の着座部44から軸方向(下方向)へ離間させた位置に形成した。
【0034】
これに対し、第4実施形態では、ピストンロッド11(棒状部材)は、ロッド本体部14(棒状部)と、該ロッド本体部14の上端(一端)に設けられ、ロッド本体部14よりも小径に形成された小径部13とにより構成され、小径部13とロッド本体部14との間には、第1乃至第3実施形態のようなフランジ部19が形成されていない。このため、第4実施形態における小径部13の外径は、第1乃至第3実施形態における軸端部15の外径と同一である。
【0035】
また、第4実施形態では、取付アイ31の下端面40に形成されたザグリ部41の底面42に、第1乃至第3実施形態のようなロッド挿入部43が形成されていないため、小径部13の軸長は、取付アイ31の下端面40から円環部32の内周面48までの軸方向距離に略等しく設定される。そして、第4実施形態では、取付アイ31の円筒部33の軸孔45(第1締結部)にピストンロッド11の小径部13が圧入された状態で、ピストンロッド11の小径部13を差込み溶接することにより、溶接部50(第2締結部)が形成される。即ち、溶接部50は、取付アイ31の外周面(ザグリ部41の底面42)と小径部13の外周面25との間に形成される。
【0036】
第4実施形態では、ピストンロッド11と取付アイ31との圧入部(第1締結部)の外径及び軸長を、第2実施形態におけるピストンロッド11と取付アイ31との圧入部の外径及び軸長に対して大きく(長く)設定することが可能であり、当該圧入部(第1締結部)による締結力を高めることができる。また、第4実施形態では、第1乃至第3実施形態のような、ピストンロッド11のフランジ部19を取付アイ31の着座部44に着座させる構造を使用していないので、溶接の熱により着座部が剥離するといった影響が発生することがない。
【0037】
なお、実施形態は、前述した形態に限定されるものではなく、例えば、次のように構成することができる。
前述した第1乃至第4実施形態では、緩衝器1のピストンロッド11(棒状部材)と取付アイ31(ブラケット)とが締結されたロッドアセンブリ10を説明したが、ロッドアセンブリ10における棒状部材及びブラケットを、緩衝器1のピストンロッド11及び取付アイ31に限定することを意図したものではない。
【0038】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0039】
本願は、2021年6月25日付出願の日本国特許出願第2021-105698号に基づく優先権を主張する。2021年6月25日付出願の日本国特許出願第2021-105698号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書を含む全開示内容は、参照により本願に全体として組み込まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 緩衝器、10 ロッドアセンブリ、11 ピストンロッド(棒状部材)、13 小径部、14 ロッド本体部(棒状部)、31 取付アイ(ブラケット)、45 軸孔(第1締結部)、50 溶接部(第2締結部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6