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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】動的な変調電圧調整
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/105 20060101AFI20241219BHJP
   B41J 2/115 20060101ALI20241219BHJP
   B41J 2/03 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B41J2/105
B41J2/115
B41J2/03
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023535829
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2021086016
(87)【国際公開番号】W WO2022129242
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2024-09-30
(31)【優先権主張番号】2019897.4
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522352498
【氏名又は名称】ドミノ・ユーケー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリッジス,リチャード トーマス カルホーン
(72)【発明者】
【氏名】チェイス,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ウォーキントン,スチュアート マーク
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-207965(JP,A)
【文献】特表2011-502827(JP,A)
【文献】特表2001-506937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続インクジェット(CIJ)プリンタであって、電気機械式トランスデューサを含むインク液滴生成器と、前記トランスデューサに周期的な変調電圧を印加し、前記インク液滴生成器によって排出されたインクのジェットを、前記インク液滴生成器からの排出後の分解時間にインク液滴の流れに分解させるように動作可能なドライバと、前記変調電圧の変調電圧パラメータを変動させ、かつ前記分解時間を示す分解時間パラメータの対応する値を測定して、前記変調電圧パラメータに対する前記分解時間パラメータの特徴の一部を取得するように動作可能なコントローラと、を備え、前記コントローラが、変動範囲を取得することと、前記変動範囲にわたって前記変調電圧パラメータを変動させて前記特徴の前記一部を取得することと、前記特徴の前記一部から勾配を計算することと、前記計算された勾配を所定の勾配と比較することと、前記計算された勾配が前記所定の勾配よりも小さい場合、前記変動範囲に対して第1の方向に変位される調整された変動範囲を生成するか、又は、前記計算された勾配が前記所定の勾配よりも大きい場合、前記変動範囲に対して、前記第1の方向とは反対の第2の方向に変位される調整された変動範囲を生成することと、を行うように動作可能である、連続インクジェット(CIJ)プリンタ。
【請求項2】
前記変調電圧パラメータが、前記変調電圧の振幅である、請求項1に記載のCIJプリンタ。
【請求項3】
前記コントローラが、前記特徴の前記一部からの前記勾配を、前記一部への最良適合線を識別し、かつ前記最良適合線の勾配を計算することによって、計算するように動作可能である、請求項1又は2に記載のCIJプリンタ。
【請求項4】
前記分解時間パラメータが、前記インク液滴生成器のノズルから噴射されたインクがインク液滴に分離する時間を少なくとも示す分解時間である、先行請求項のいずれか一項に記載のCIJプリンタ。
【請求項5】
前記コントローラが、前記調整された変動範囲を前記プリンタの変動範囲メモリに記憶し、前記変動範囲メモリから前記変動範囲を取得するように動作可能である、先行請求項のいずれか一項に記載のCIJプリンタ。
【請求項6】
前記変動範囲が、前記特徴の前記一部を構成する前記変調電圧振幅とともに増加するサイズを有する、請求項2又は請求項2に従属するいずれかの請求項に記載のCIJプリンタ。
【請求項7】
前記ドライバが、デジタルアナログコンバータ(DAC)を含み、前記コントローラが、バイナリ入力信号を前記DACに印加するように構成されており、バイナリ入力信号が、前記DACによって受信可能なバイナリ入力信号のセットのサブセットから選択され、前記サブセットが、前記バイナリ入力信号に応答して前記DACによって生成される出力電圧がほぼ等しい量だけ互いに異なるように選択される、先行請求項のいずれか一項に記載のCIJプリンタ。
【請求項8】
前記サブセットが、前記バイナリ入力信号に応答して前記DACによって生成される出力電圧が可能な限り1Vに近い量だけ互いに異なるように選択される、請求項7に記載のCIJプリンタ。
【請求項9】
前記プリンタが、前記特徴の前記一部の変動範囲のサイズを指定するルックアップテーブルを含むメモリを含み、前記ルックアップテーブルの各エントリが、前記変調電圧パラメータの値と、前記変調電圧パラメータの前記値が前記特徴の前記一部を構成するそれらのルックアップテーブルエントリの指標と、を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のCIJプリンタ。
【請求項10】
前記ルックアップテーブルの各エントリが、前記エントリを識別するインデックス番号と、前記変調電圧パラメータの値と、前記特徴の前記一部のそれぞれの第1及び第2の端を規定する第1及び第2のインデックス番号と、を含み、前記特徴の前記一部が、前記第1及び第2のインデックス番号によって識別される前記ルックアップテーブルエントリの前記変調電圧パラメータの前記値によって規定される、請求項9に記載のCIJプリンタ。
【請求項11】
前記ルックアップテーブルの前記エントリが、前記変調電圧パラメータの前記値によって順序付けられ、前記ルックアップテーブルの各エントリが、前記ルックアップテーブルの一部のそれぞれの第1及び第2の端を規定する第1及び第2のエントリの指標を含み、前記ルックアップテーブルの前記一部の前記ルックアップテーブルエントリの前記変調電圧パラメータの前記値が、前記特徴の前記一部を構成する、請求項9又は10に記載のCIJプリンタ。
【請求項12】
前記コントローラが、前記変調電圧パラメータの各値について、前記対応する分解時間パラメータ値を少なくとも2回測定し、かつ前記測定された分解時間パラメータ値から平均分解時間パラメータ値を計算するように動作可能である、先行請求項のいずれか一項に記載のCIJプリンタ。
【請求項13】
前記プリンタが、生産ラインの速度を示す入力を受信するように、かつ前記変調電圧パラメータの値に対応する分解時間パラメータ値が前記入力に依存して測定される回数を変動させるように構成されている、請求項12に記載のCIJプリンタ。
【請求項14】
連続インクジェットプリンタを動作させる方法であって、インク液滴生成器の電気機械式トランスデューサに周期的な変調電圧を印加し、前記インク液滴生成器によって排出されたインクのジェットを、前記インク液滴生成器からの排出後の分解時間にインク液滴の流れに分解させることと、前記変調電圧の変調電圧パラメータを変動させることと、前記分解時間を示す分解時間パラメータの対応する値を測定し、前記変調電圧パラメータに対する前記分解時間パラメータの特徴の一部を取得することと、を含み、前記方法が、変動範囲を取得することと、前記変動範囲にわたって前記変調電圧パラメータを変動させて前記特徴の前記一部を取得することと、前記特徴の前記一部から勾配を計算することと、前記計算された勾配を所定の勾配と比較することと、前記計算された勾配が前記所定の勾配よりも小さい場合、前記変動範囲に対して第1の方向に変位される調整された変動範囲を生成するか、又は、前記計算された勾配が前記所定の勾配よりも大きい場合、前記変動範囲に対して、前記第1の方向とは反対の第2の方向に変位される調整された変動範囲を生成することと、を含む、方法。
【請求項15】
前記プリンタに請求項14に記載の方法を実施させるように連続インクジェットプリンタによって実行可能なコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続インクジェット(CIJ)プリンタ、CIJプリンタを動作させる方法、及びそのような方法を実施するためにCIJプリンタによって実行可能なコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CIJプリンタは、典型的には、電気機械式トランスデューサを含むインク液滴生成器と、トランスデューサに周期的な、典型的には正弦波の変調電圧を印加して、インク液滴生成器によって排出されたインクのジェットを、インク液滴生成器からの排出後の分解時間にインク液滴の流れに分解させるためのドライバと、変調電圧の動作値を確立するためのコントローラと、を有する。
【0003】
CIJプリンタはまた、典型的には、インク液滴のうちの選択されたものに電荷を印加するための電荷電極と、印刷基材上に帯電したインク液滴を偏向させるための静電偏向プレートと、インク液滴に印加された電荷を測定するための電荷検出器と、を有する。
【0004】
電荷検出器は、「位相調整」のために使用され、この場合、例えば、印刷に使用されるインク液滴を帯電させるために使用される帯電信号の持続時間の半分の、帯電信号よりも小さい位相調整信号のシーケンスが、変調電圧に対して位相シフトを増加させて電荷電極に印加される。インク液滴上の結果として生じる電荷を測定することによって、電荷電極に印加される帯電信号と変調電圧との間の最適な位相関係を識別することができる。
【0005】
最適な位相関係は、分解時間に依存し、分解時間の指標は、最適な位相関係から取得することができるが、最適な位相関係の決定、すなわち、位相調整は、印刷に必要とされないインク液滴を使用してのみ実施され得ることが理解されるであろう。
【0006】
EP 0 386 049は、変調電圧振幅に対する分解時間を示す分解時間パラメータの特徴の一部を取得して、所定の勾配を有する部分上の点に対応する変調電圧振幅を識別し、識別された変調電圧振幅から所定の量だけオフセットされた変調電圧振幅の動作値を確立することができる、CIJプリンタを開示している。
【0007】
EP 0 386 049は、変調電圧振幅の動作値が、初期ウォームアップ及びセトリング期間に関して2~10分ごとに1回確立され、動作状態が安定したら、それほど頻繁ではなく、典型的には30分~2時間ごとに1回確立され得ることを教示している。
【0008】
EP 2 209 636は、所定の勾配を有する部分上の点に対応する変調電圧振幅の動作値を確立するという点で異なる、同様のCIJプリンタに関する。
【0009】
EP 2 209 636は、変調電圧振幅の追跡が、物体への文字若しくは画像の印刷と印刷との間、又は画像若しくは文字のバッチが印刷された後に行われ得ることを示唆している。EP 2 209 636は、CIJプリンタを使用して高速移動の生産ライン上で間隔の近い製品に印刷する場合のように、印刷に必要とされない比較的少ないインク液滴が利用可能である場合に、そのような追跡がどのように達成され得るかを説明していない。
【発明の概要】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、連続インクジェットプリンタであって、電気機械式トランスデューサを含むインク液滴生成器と、トランスデューサに周期的な変調電圧を印加し、インク液滴生成器によって排出されたインクのジェットを、インク液滴生成器からの排出後の分解時間にインク液滴の流れに分解させるように動作可能なドライバと、変調電圧の変調電圧パラメータを変動させ、かつ分解時間を示す分解時間パラメータの対応する値を測定して、変調電圧パラメータに対する分解時間パラメータの特徴の一部を取得するように動作可能なコントローラと、を備え、コントローラは、変動範囲を取得することと、変動範囲にわたって変調電圧パラメータを変動させて特徴の一部を取得することと、特徴の一部から勾配を計算することと、計算された勾配を所定の勾配と比較することと、計算された勾配が所定の勾配よりも小さい場合、変動範囲に対して第1の方向(sense)に変位される調整された変動範囲を生成するか、又は、計算された勾配が所定の勾配よりも大きい場合、変動範囲に対して、第1の方向とは反対の第2の方向に変位される調整された変動範囲を生成することと、を行うように動作可能である、連続インクジェットプリンタが提供される。
【0011】
本発明は、周囲温度、湿度、又はインク粘度などのプリンタの動作状態の変化に応答して、物体への文字若しくは画像の印刷、又は画像若しくは文字のバッチの印刷などの印刷動作の完了を待つことなく、変調電圧パラメータを調整し得るCIJプリンタを提供することができる。
【0012】
好ましくは、電気機械式トランスデューサは、圧電素子であり、及び/又は変調電圧パラメータは、変調電圧の振幅である。
【0013】
好ましくは、コントローラは、特徴の一部からの勾配を、一部への最良適合線を識別し、かつ最良適合線の勾配を計算することによって、計算するように動作可能である。
【0014】
分解時間パラメータが、分解距離、すなわち、インクのジェットからインク液滴が分離する、インク液滴生成器のノズルからの距離、又は変調電圧とインク液滴に電荷を印加するための信号との間の位相シフトであり得ることが想定されるが、好ましくは、分解時間パラメータは、インク液滴生成器のノズルから噴射されたインクがインク液滴に分離する時間を少なくとも示す分解時間である。
【0015】
好ましくは、コントローラは、調整された変動範囲をプリンタの変動範囲メモリに記憶し、変動範囲メモリから変動範囲を取得するように動作可能である。
【0016】
したがって、コントローラは、反復して動作し、各反復において、変動範囲メモリから変動範囲を取得することであって、この変動範囲は前の反復によって生成されたものである、取得することと、変動範囲によって示された特徴の一部を取得することと、特徴の一部から勾配を計算することと、計算された勾配を所定の勾配と比較することと、調整された変動範囲を生成し、かつ、調整された変動範囲を、次の反復によって使用するために変動範囲メモリに記憶することと、で動作する。
【0017】
コントローラが、所定の勾配を有する特徴上の点について変調電圧パラメータを変動させるように連続的に動作し、この点は、プリンタの動作状態の変化に応答して変化することが明らかであろう。
【0018】
変動範囲は、一定のサイズ、例えば、10Vを有し得る。
【0019】
しかしながら、好ましくは、変動範囲は、変調電圧パラメータが変動する特徴の一部とともに変動するサイズを有する。
【0020】
好ましくは、変動範囲は、特徴の一部を構成する変調電圧振幅とともに増加するサイズを有する。
【0021】
例えば、およそ50Vの変調電圧振幅の場合、変動範囲のサイズは7Vであり得、一方で、およそ150Vの変調電圧振幅の場合、変動範囲のサイズは12Vであり得る。
【0022】
図1は、プリンタのそれぞれの第1の動作状態及び第2の動作状態に関する、変調電圧振幅(x軸)に対する分解時間(y軸)の第1の特徴10及び第2の特徴12を概略的に示す。
【0023】
参照符号14は、第1の特徴10の一部を示し、特徴の勾配の大きさは、第1の正の値からゼロに減少し、次に、ゼロから第2の負の値に増加する。勾配の大きさが第1の正の値から第2の非ゼロの正の値に減少する、第1の特徴10の部分14のサブ部分16に沿う、満足のいくプリンタ動作が予想され得る。参照符号18及び20は、それぞれ、第2の特徴12の対応する部分及びサブ部分を示す。
【0024】
部分14は、部分18よりも小さい変調電圧振幅及び小さい変調電圧振幅の範囲に対応することが分かる。すなわち、第1の特徴10の動作状態では、分解時間の所与の変化を取得するためには、比較的低い変調電圧振幅が必要となり、変調電圧振幅の比較的小さな変化が必要となり、一方、第2の特徴12の動作状態では、分解時間の所与の変化を取得するためには、比較的高い変調電圧振幅が必要となり、変調電圧振幅の比較的大きな変化が必要となる。
【0025】
特徴の一部を構成する変調電圧振幅で変動範囲のサイズを増加させると、プリンタの広範な動作状態にわたるコントローラの動作が可能になる。
【0026】
ドライバは、有利には、デジタルアナログコンバータ(DAC)を含み得る。これらのデバイスに一般的であるように、DACは、DACへのバイナリ入力値の所与の増加が、DACの動作範囲にわたるDACの出力電圧の同じ増加を生じないように、非線形応答を有する。
【0027】
したがって、好ましくは、コントローラは、バイナリ入力信号をDACに印加するように構成されており、バイナリ入力信号は、DACによって受信可能なバイナリ入力信号のセットのサブセットから選択され、サブセットは、バイナリ入力信号に応答してDACによって生成される出力電圧がほぼ等しい量だけ互いに異なるように選択される。
【0028】
好ましくは、サブセットは、バイナリ入力信号に応答してDACによって生成される出力電圧が可能な限り1Vに近い量だけ互いに異なるように選択される。
【0029】
コントローラが、サブセットから選択されるバイナリ入力信号をDACに印加するように構成されている場合、コントローラの動作に対するDACの非線形応答の影響が低減される。
【0030】
プリンタは、有利には、特徴の部分の変動範囲のサイズを指定するルックアップテーブルを含むメモリを含み得る。
【0031】
好ましくは、ルックアップテーブルの各エントリは、変調電圧パラメータの値と、変調電圧パラメータの値が特徴の一部を構成するそれらのルックアップテーブルエントリの指標と、を含む。
【0032】
好ましくは、ルックアップテーブルの各エントリは、変調電圧振幅を含む。
【0033】
好ましくは、ルックアップテーブルの各エントリは、エントリを識別するインデックス番号と、変調電圧パラメータの値と、特徴の一部のそれぞれの第1の端及び第2の端を規定する第1及び第2のインデックス番号と、を含み、特徴の一部は、第1及び第2のインデックス番号によって識別されるルックアップテーブルエントリの変調電圧パラメータの値によって規定される。
【0034】
好ましくは、ルックアップテーブルのエントリは、変調電圧パラメータの値によって順序付けられ、ルックアップテーブルの各エントリは、ルックアップテーブルの一部のそれぞれの第1の端及び第2の端を規定する第1及び第2のエントリの指標を含み、ルックアップテーブルの一部のルックアップテーブルエントリの変調電圧パラメータの値は、特徴の一部を構成する。
【0035】
コントローラは、有利には、変調電圧パラメータの各値について、対応する分解時間パラメータ値を少なくとも2回測定し、かつ測定された分解時間パラメータ値から平均分解時間パラメータ値を計算するように動作可能であり得る。
【0036】
このようにして、分解時間パラメータ値の何らかの不正確な測定が、特徴の一部から計算された勾配に及ぼす影響が低減される。
【0037】
上記で説明したように、本発明のCIJプリンタは、印刷に使用されるインク液滴のシーケンスの排出中でさえも含む任意の時点で、変調電圧パラメータの値を変動させることができるが、分解時間パラメータ値を測定するために使用されるインク液滴を印刷に使用することができないため、分解時間パラメータ値は、印刷していないときにのみ測定することができる。
【0038】
CIJプリンタは、通常、一連のストロークとして生産ライン上のプリンタを通過する製品にメッセージを印刷し、印刷に使用されないインク液滴は、ストローク間及びメッセージ間にインク液滴生成器から排出される。ストローク間及びメッセージ間にインク液滴生成器から排出される液滴は、位相調整に使用するため、したがって、分解時間パラメータ値の測定に使用するために利用可能である。
【0039】
生産ラインの移動が速いほど、ストローク及びメッセージ間に排出される液滴が少なくなり、分解時間パラメータ値を位相調整及び測定する機会が少なくなることが理解されるであろう。
【0040】
したがって、有利には、プリンタは、生産ラインの速度を示す入力を受信するように、かつ変調電圧パラメータの値に対応する分解時間パラメータ値が入力に依存して測定される回数を変動させるように構成され得る。
【0041】
このようにして、プリンタを使用して、比較的移動が遅い生産ライン上で製品に印刷し、ストローク及びメッセージ間で分解時間パラメータ値を測定するための多くのインク液滴が利用可能である場合、プリンタは、比較的多数の測定を行い、測定値を平均化することができ、何らかの不正確な測定の影響が、それに応じて低減され、一方で、プリンタを使用して、比較的移動が速い生産ライン上で製品に印刷し、ストローク(存在する場合)及びメッセージ間で分解時間パラメータ値を測定するための比較的少ないインク液滴が利用可能である場合、プリンタは、特徴の一部からの勾配の計算に影響を及ぼす何らかの不正確な測定のリスクを負って、分解時間パラメータ値のより少ない回数の、又は更には1回のみの測定を行うことができる。
【0042】
本発明の第2の態様によれば、連続インクジェットプリンタを動作させる方法であって、インク液滴生成器の電気機械式トランスデューサに周期的な変調電圧を印加し、インク液滴生成器によって排出されたインクのジェットを、インク液滴生成器からの排出後の分解時間にインク液滴の流れに分解させることと、変調電圧の変調電圧パラメータを変動させることと、分解時間を示す分解時間パラメータの対応する値を測定し、変調電圧パラメータに対する分解時間パラメータの特徴の一部を取得することと、を含み、方法が、変動範囲を取得することと、変動範囲にわたって変調電圧パラメータを変動させて特徴の一部を取得することと、特徴の一部から勾配を計算することと、計算された勾配を所定の勾配と比較することと、計算された勾配が所定の勾配よりも小さい場合、変動範囲に対して第1の方向に変位される調整された変動範囲を生成するか、又は、計算された勾配が所定の勾配よりも大きい場合、変動範囲に対して、第1の方向とは反対の第2の方向に変位される調整された変動範囲を生成することと、を含む、方法が提供される。
【0043】
本発明の第3の態様によれば、プリンタに本発明の第2の態様の方法を実施させるように連続インクジェットプリンタによって実行可能なコンピュータプログラムが提供される。
【0044】
ここで、本発明について、添付の図面を参照して、例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】CIJプリンタの2つの動作状態の変調電圧振幅特徴に対する分解時間の概略的なグラフである。
図2】本発明によるCIJプリンタの概略図である。
図3A-3B】図2のCIJプリンタの動作方法のフローチャートの一部である。
図4図2のCIJプリンタによって実行されるコンピュータプログラムによって使用されるルックアップテーブルの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図2のCIJプリンタ50は、圧電素子54の形態の電気機械式トランスデューサを含むインク液滴生成器52と、デジタル-アナログ変換器(DAC)及び電力増幅器を含み、圧電素子54に正弦波変調電圧を印加して、インク液滴生成器52によって排出されたインクのジェットを、インク液滴生成器52からの排出後の分解時間にインク液滴の流れに分解させるように動作可能であるドライバ56と、を備える。プログラムされたコンピュータ58の形態のコントローラが、圧電素子54に印加される変調電圧の振幅を変動させるために、ドライバ56のDACを制御するように動作可能である。
【0047】
CIJプリンタ50は更に、インク液滴生成器52によって生成されたインク液滴のうちの選択されたものに電荷を印加するための電荷電極60と、帯電したインク液滴を偏向させるための一対の静電偏向プレート62と、電荷検出器64と、印刷に使用されないインク液滴を収集するためのガター66を備える。
【0048】
CIJプリンタの使用では、印刷に使用される電荷電極60を通過するインク液滴は、コンピュータ58によって電荷電極60に印加されるようにされた帯電信号に従って帯電される。帯電したインク液滴は、偏向プレート62の下部偏向プレートから上部偏向プレートに向かって偏向され、基材68、典型的には生産ラインに沿って移動する製品の包装の一部に衝突する。
【0049】
帯電されていない液滴は、電荷検出器64を通ってガター66に偏向されずに続き、そこから、プリンタ50のインクシステム(図示せず)に戻される。
【0050】
CIJプリンタ50は、生産ラインの移動速度のプリンタに指標を提供するために、生産ラインのコンベヤのロータリエンコーダへの接続のための入力部70を含む。
【0051】
プリンタ50の位相調整は、プリンタの起動時に、及びプリンタの動作中に、印刷動作がこれを妨げない限り、典型的には30msごとに、随時行われる。
【0052】
位相調整動作では、インク液滴生成器から排出される8つのインク液滴のシーケンスが、電荷電極60に印加される位相調整信号によって帯電される。8つの液滴の16のシーケンスが、このようにして帯電され、8つのインク液滴の各シーケンスを帯電させるために使用される位相調整信号は、8つのインク液滴の前のシーケンスに対して、変調電圧の期間の16分の1だけ遅延される。
【0053】
位相調整信号により、位相調整に使用されるインク液滴に印加される電荷が、印刷に使用されるインク液滴に印加される電荷よりも小さくなる。位相調整に使用されるインク液滴は、偏向プレート62によって著しく偏向されず、電荷検出器64を通ってガター66に入る。
【0054】
8つのインク液滴のシーケンスに最大の電荷をもたらす位相調整信号の位相シフトを使用して、印刷に使用されるインク液滴の変調電圧に対する帯電信号の位相シフトを決定する。すなわち、位相調整に使用されるインク液滴において検出される最大の電荷をもたらす位相調整信号の位相シフトは、印刷に使用されるインク液滴に印加される帯電信号にも使用される。
【0055】
分解時間を示す分解時間パラメータは、次のように測定される。
【0056】
8つの位相調整信号のシーケンスの第1の位相調整信号が電荷電極60に印加されると、クロックが開始される。8つの帯電したインク液滴が電荷検出器64に接近し、電荷検出器64を通過し、電荷検出器64から離れるにつれて、電荷検出器64は、初期値から第1の方向にスイングし、ピークに達し、かつピークに達してスイングして初期値に戻る前に、第2の反対方向に初期値を通ってスイングして戻る出力電圧を生成する。
【0057】
電荷検出器64の出力電圧は、監視され、クロックは、出力電圧が第2の反対方向に初期値を通ってスイングして戻った後に閾値電圧を超えると停止される。
【0058】
クロックカウントは、分解時間を示す分解時間パラメータであるとみなされる。
【0059】
上述したように、圧電素子54に印加される変調電圧の振幅を変動させ、第1の位相調整信号と閾値電圧を横切る電荷検出器出力電圧との間のクロックカウントを記憶することによって、プリンタは、変調電圧振幅特徴に対する分解時間を取得する。
【0060】
プリンタは、所定の勾配を有する特徴上の点、例えば、0.2μs/Vを識別し、その点における特徴の変調電圧振幅を識別し、変調電圧振幅を、識別された変調電圧振幅よりも約7V小さい初期値に設定する。
【0061】
これは、EP 0 386 049に記載の自動調節プロセスであり、その開示は、本明細書に開示されているかのように、参照により援用される。
【0062】
ここまで説明したようなプリンタ50の動作は、大部分は従来のものである。
【0063】
本発明のCIJプリンタの動作方法は、以下のとおりである。
【0064】
以下の説明において、「変調電圧振幅動作点」という表現は、「電圧動作点」と略される。
【0065】
説明には、プリンタの動作を示すために数値例が伴う。
【0066】
図3Aを参照すると、ステップ100において自動調節によって初期電圧動作点を確立した後、ステップ102において、コンピュータ58は、本発明のコンピュータプログラムを実行して、初期電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリを識別する。参照符号200で示される、ルックアップテーブルの一部が図4に示される。
【0067】
ルックアップテーブルは、各々がルックアップテーブルエントリのインデックス番号によって識別される、プリンタの電圧動作点のリストである。図4に示すルックアップテーブルの部分200は、ルックアップテーブルエントリのインデックス番号165~185を示す。
【0068】
数値例として、初期電圧動作点が143.3Vである場合、コンピュータ58は、143.3Vの電圧動作点の値を含むルックアップテーブルエントリを探し出す。ルックアップテーブルエントリは、図4に示されるルックアップテーブルの部分200において174のインデックス番号を有する。ステップ100からステップ102に初期電圧動作点値とともにインデックス番号が渡される場合、コンピュータは、電圧動作点値を探すのではなく、そのインデックス番号によってルックアップテーブルエントリインデックス番号174を見つけることができることが明らかであろう。
【0069】
インデックス番号と同様に、各ルックアップテーブルエントリには、DACレベル、電圧動作点値、試験点低インデックス番号、試験点高インデックス番号、及びバッファサイズのフィールドを有する。
【0070】
図4から分かるように、参照符号210によって示されるルックアップテーブルエントリインデックス番号174の場合、DACレベルフィールドは、値811を有し、電圧動作点フィールドは、値143.3Vを有し、試験点低及び高インデックス番号フィールドは、それぞれ、値167及び181を有し、バッファサイズフィールドは、値15を有する。
【0071】
ステップ104において、コンピュータ58は、初期電圧動作点に対応する分解時間をコンピュータのバッファメモリに記憶し、ルックアップテーブルエントリインデックス番号174から試験点低インデックス番号167及び試験点高インデックス番号181を取得する。(初期電圧動作点に対応する分解時間は、自動調節処理中に取得される。)
【0072】
ステップ106において、コンピュータ58は、その時点の電圧動作点よりも低い次の電圧動作点を調べる。
【0073】
数値例に戻ると、ルックアップテーブルエントリインデックス番号174において指定されているような初期電圧動作点143.3Vの場合、その時点の電圧動作点よりも低い次の電圧動作点は、ルックアップテーブルエントリインデックス番号173に指定されるように、142.5Vである。
【0074】
コンピュータは、その時点の電圧動作点よりも低い次の電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリのDACレベル値をドライバ56のDACに適用し、これによって、その時点の電圧動作点よりも低い次の電圧動作点の振幅を有する変調電圧をインク液滴生成器52の圧電素子54に印加させる。
【0075】
数値例では、コンピュータは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号173によって指定されたDACレベル813をDACに適用し、これによって、142.5Vの振幅を有する変調電圧を圧電素子54に印加させる。
【0076】
位相調整は、位相調整に使用されるインク液滴上の電荷の大きさを最大化する変調電圧に対する位相調整信号の位相シフトを識別するために、上記で説明したように実施される。変調電圧振幅に対応する分解時間は、上記で説明したように測定される。
【0077】
分解時間の位相調整及び測定は、プリンタが使用される生産ラインの速度、及び分解時間測定値の平均から計算される分解時間に応じて数回実施され、何らかの不正確な分解時間測定値の影響を低減することができる。分解時間は、コンピュータ58のバッファメモリに記憶される。
【0078】
ステップ108において、コンピュータ58は、その時点の電圧動作点が、試験点低インデックス番号によって識別されるルックアップテーブルエントリによって指定されるものであるかどうかを判定する。そうでない場合、動作は、ステップ106に戻る。
【0079】
数値例では、コンピュータは、初期電圧動作点値143.3Vを含むルックアップテーブルエントリインデックス番号174によって、ルックアップテーブルエントリインデックス番号167が指定されるため、その時点の電圧動作点が、ルックアップテーブルエントリインデックス番号167によって指定されるもの、すなわち、137Vであるかどうかを判定する。
【0080】
そうでなければ、ステップ110において、コンピュータは、その時点の電圧動作点に対応する分解時間以外の全ての分解時間をバッファメモリからクリアする。
【0081】
数値例では、バッファメモリに記憶されている分解時間は、電圧動作点137Vに対応するものである。
【0082】
初期電圧動作点と、試験点低インデックス番号によって識別されたルックアップテーブルエントリによって指定された電圧動作点との間の電圧動作点に対応する分解時間を測定し、分解時間をバッファメモリに記憶した後、分解時間はすぐにバッファメモリからクリアされることは、驚くべきことであるように思われ得る。この理由は、変調電圧振幅が、初期電圧動作点から試験点低インデックス番号によって識別されたルックアップテーブルエントリによって指定された電圧動作点に1ステップで変化する場合に発生する、電圧動作点の大きな変化を回避するためである。そのような大きな変化により、プリンタの動作が不安定になる可能性がある。
【0083】
コンピュータは、バッファメモリに分解時間を追加するために変調電圧振幅の増加する値が使用されるべきであることを示す方向変数を設定する。
【0084】
コンピュータは、その時点の電圧動作点を上回る次の電圧動作点を調べる。
【0085】
数値例に戻ると、その時点の電圧動作点は、試験点低インデックス番号によって識別されるルックアップテーブルエントリインデックス番号167によって指定されるような137Vである。その時点の電圧動作点を上回る次の電圧動作点は、ルックアップテーブルエントリインデックス番号168において指定されるように、138Vである。
【0086】
コンピュータは、その時点の電圧動作点を上回る次の電圧動作点の振幅を有する変調電圧を圧電素子54に印加させ、新しい電圧動作点で分解時間の位相調整及び測定を実施する。コンピュータは、バッファメモリに分解時間を記憶する。
【0087】
ステップ112において、コンピュータ58は、その時点の電圧動作点を上回る次の電圧動作点を調べる。
【0088】
繰り返しになるが、コンピュータは、次の電圧動作点の振幅を有する変調電圧を圧電素子54に印加させ、新しい電圧動作点で分解時間の位相調整及び測定を実施する。コンピュータは、バッファメモリに分解時間を記憶する。
【0089】
ステップ114において、コンピュータは、その時点の電圧動作点が、試験点高インデックス番号によって識別されるルックアップテーブルエントリのものであるかどうかを判定する。そうでない場合、動作は、ステップ112に戻る。
【0090】
数値例では、コンピュータは、初期電圧動作点値143.3Vを含むルックアップテーブルエントリインデックス番号174によって、ルックアップテーブルエントリインデックス番号181が指定されるため、その時点の電圧動作点が、ルックアップテーブルエントリインデックス番号181によって指定されるもの、すなわち、149.1Vであるかどうかを判定する。
【0091】
そうでなければ、ステップ116において、コンピュータは、バッファメモリに記憶された分解時間への最良適合線を計算する。
【0092】
数値例では、バッファメモリは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号167~181によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を含む。
【0093】
コンピュータは、最良適合線の勾配を計算する。
【0094】
ステップ118において、コンピュータは、計算された勾配と、所定の0.2μs/Vの勾配とを比較する。
【0095】
最良適合線の勾配が所定の勾配よりも大きい場合、これは、周囲温度、湿度、又はインク粘度などのプリンタの動作状態が、x軸に沿った変調電圧振幅特徴に対して分解時間を延ばすように変化し、すなわち、特徴が、図1に示される第1の特徴10から離れて第2の特徴12に向かって変化したことを示す。最良適合線の勾配が所定の勾配よりも大きい場合、動作は、図3Aを参照して以下で説明するステップ120に進む。
【0096】
ステップ118において、最良適合線の勾配が所定の勾配よりも小さい場合、これは、変調電圧振幅特徴に対する分解時間がx軸に沿って圧縮されたこと、すなわち、特徴が、図1に示される第2の特徴12から離れて第1の特徴10に向かって変化したことを示す。最良適合線の勾配が所定の勾配よりも小さい場合、動作は、図3Bを参照して以下で説明するステップ150に進む。
【0097】
最良適合線の勾配が所定の勾配よりも大きい場合に最初に対処すると、ステップ120において、コンピュータ58は、場合によっては、初期又はその時点の基準電圧動作点を上回る次の電圧動作点を調べる。
【0098】
数値例では、初期動作点143.3Vを上回る次の電圧動作点は、ルックアップテーブルエントリインデックス番号175によって指定されるように、144.1Vである。
【0099】
コンピュータは、初期又はその時点の基準電圧動作点を上回る次の電圧動作点を基準電圧動作点として記憶する。
【0100】
基準電圧動作点が、圧電素子54に印加される変調電圧の振幅を直ちに決定するものではないことを強調する価値がある。むしろ、基準電圧動作点は、次の基準電圧動作点がコンピュータによって選択されるまで、試験点低及び高のインデックス番号値及びバッファサイズ値がプリンタの挙動を決定するルックアップテーブルエントリを確立する。
【0101】
したがって、数値例では、コンピュータは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号175によって指定された144.1Vの基準電圧動作点を記憶し、これは、試験点低及び高のインデックス番号値168及び182、並びにバッファサイズ15を指定している。
【0102】
コンピュータは、基準電圧動作点を指定するルックアップテーブルエントリから、試験点低インデックス番号及び試験点高インデックス番号を取得する。
【0103】
ステップ122において、コンピュータは、方向変数が変調電圧振幅の増加する値を示すか又は減少する値を示すかを判定する。この時点の方向変数は、バッファメモリに分解時間を追加するために変調電圧振幅の増加する値を使用したか又は減少する値を使用したかを示す。
【0104】
数値例では、ルックアップテーブルエントリインデックス番号167~181によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を記憶することにより、バッファメモリが追加されたため、方向変数は、変調電圧振幅の増加する値を示す。その時点の電圧動作点は、149.1V、すなわち、ルックアップテーブルエントリインデックス番号181によって指定される電圧動作点である。
【0105】
方向変数が変調電圧振幅の増加する値を示す場合、動作は、ステップ124に進む。そうでなければ、動作は、ステップ126に進む。
【0106】
ステップ124において、コンピュータは、その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリによって指定された試験点低インデックス番号が、初期又は前の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリによって指定された試験点低インデックス番号と異なるかどうかを判定する。
【0107】
試験点低インデックス番号が異なる場合、動作は、ステップ128に進む。
【0108】
ステップ128において、コンピュータは、その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリの試験点低インデックス番号によって識別されたルックアップテーブルエントリによって指定された電圧動作点よりも低い電圧動作点に対応する任意の分解時間を、バッファメモリから削除する。次に、動作は、ステップ130に進む。
【0109】
数値例では、バッファメモリは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号167~181によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を含む。その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリは、エントリインデックス番号175であり、これは、試験点低インデックス番号168を指定する。ルックアップテーブルエントリインデックス番号167によって指定された137Vの電圧動作点は、エントリインデックス番号168によって指定された138Vの電圧動作点よりも低い。したがって、ステップ128において、コンピュータは、バッファメモリから、137Vの電圧動作点に対応する分解時間を削除する。
【0110】
試験点低インデックス番号が同じである場合、動作は、ステップ124からステップ130に直接進む。
【0111】
ステップ130において、コンピュータは、その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリによって指定された試験点高インデックス番号が、初期又は前の電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリによって指定された試験点高インデックス番号と異なるかどうかを判定する。
【0112】
試験点高インデックス番号が異なる場合、動作は、ステップ132に進む。そうでなければ、動作は、ステップ116に戻る。
【0113】
ステップ132において、コンピュータは、その時点の電圧動作点を上回る次の電圧動作点を調べる。コンピュータは、その時点の電圧動作点を上回る次の電圧動作点の振幅を有する変調電圧を圧電素子54に印加させ、新しい電圧動作点で分解時間の位相調整及び測定を実施する。コンピュータは、バッファメモリに分解時間を記憶する。動作は、ステップ134に進む。
【0114】
数値例では、バッファメモリは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号168~181によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を含む。その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリは、エントリインデックス番号175であり、これは、試験点高インデックス番号182を指定する。エントリインデックス番号175によって指定された試験点高インデックス番号182は、エントリインデックス番号174によって指定された試験点高インデックス番号181とは異なる。したがって、コンピュータは、その時点の電圧動作点149.1Vを上回る次の電圧動作点、すなわち、ルックアップテーブルエントリインデックス番号182によって指定されるような149.9Vを調べる。
【0115】
コンピュータは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号182によって指定されたDACレベル795をDACに適用し、これによって、149.9Vの振幅を有する変調電圧を圧電素子54に印加させる。コンピュータは、電圧動作点149.9Vに対応する分解時間をバッファメモリに記憶するため、ルックアップテーブルエントリインデックス番号168~182によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を含む。
【0116】
ステップ134において、コンピュータは、その時点の電圧動作点が、試験点高インデックス番号によって識別されるルックアップテーブルエントリによって指定されるものであるかどうかを判定する。そうでない場合、動作は、ステップ132に戻る。
【0117】
数値例では、コンピュータは、その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリ番号175によって、ルックアップテーブルエントリインデックス番号182が指定されるため、その時点の電圧動作点が、ルックアップテーブルエントリインデックス番号182によって指定されるもの、すなわち、149.9Vであるかどうかを判定する。
【0118】
方向変数が変調電圧振幅の減少する値を示す場合に動作が進むステップ126に戻ると、コンピュータは、バッファメモリから、その時点の電圧動作点に対応する分解時間以外の全ての分解時間をクリアする。コンピュータは、バッファメモリに分解時間を追加するために変調電圧振幅の増加する値が使用されるべきであることを示す方向変数を設定する。
【0119】
数値例では、バッファメモリは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号167~181によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を含む。その時点の電圧動作点は、ルックアップテーブルエントリインデックス番号167によって指定されるように、137Vである(バッファメモリは、変調電圧振幅の減少する値を使用して入力されていたであろう)。したがって、コンピュータは、バッファメモリから、その時点の電圧動作点137Vに対応する分解時間以外の全ての分解時間を削除する。
【0120】
コンピュータは、その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリによって指定された試験点低インデックス番号が、前の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリによって指定された試験点低インデックス番号と異なるかどうかを判定する。(バッファメモリが、初期電圧動作点の確立時に変調電圧振幅の増加する値を使用して常に追加されるため、動作は、コンピュータが初期電圧動作点ではなく基準電圧動作点を確立した後にのみ、ステップ126に進むことができる。)
【0121】
試験点低番号が異なる場合、動作は、ステップ136に進む。そうでなければ、動作は、ステップ132に直接進む。
【0122】
ステップ136において、コンピュータは、バッファメモリから、その時点の電圧動作点に対応する分解時間を削除する。動作は、ステップ132に進む。
【0123】
数値例では、バッファメモリは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号167によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を含む。その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリは、エントリインデックス番号175であり、これは、試験点低インデックス番号168を指定する。エントリインデックス番号175によって指定された試験点低インデックス番号168は、エントリインデックス番号174によって指定された試験点低インデックス番号167とは異なる。したがって、コンピュータは、エントリインデックス番号167によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を削除する。この時点で、バッファメモリは空である。
【0124】
ステップ132及び134については前述した。
【0125】
数値例に戻ると、ステップ132において、その時点の電圧動作点137Vを上回る次の電圧動作点は、ルックアップテーブルエントリインデックス番号168によって指定されるように、138Vである。コンピュータは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号168によって指定されたDACレベル823をDACに適用し、これによって、138Vの振幅を有する変調電圧を圧電素子54に印加させる。
【0126】
コンピュータは、138Vの電圧動作点に対応する分解時間をバッファメモリに記憶する。
【0127】
ステップ134において、コンピュータは、その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリインデックス番号175によって、ルックアップテーブルエントリインデックス番号182が指定されるため、138Vのその時点の電圧動作点が、ルックアップテーブルエントリインデックス番号182によって指定されるもの、すなわち、149.9Vであるかどうかを判定する。
【0128】
動作は、149.9Vのその時点の電圧動作点がルックアップテーブルエントリインデックス番号182によって指定されるものであるとコンピュータが判定するまで、ステップ132~134を通してループする。この時点で、バッファメモリは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号168~182によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を含む。
【0129】
最後に、動作は、新しい最良適合線及び最良適合線の勾配の計算のためにステップ116に戻る。
【0130】
ここで、最良適合線の勾配が所定の勾配よりも小さい場合に目を向け、図3Bを参照すると、ステップ150において、コンピュータは、場合によっては、初期又はその時点の基準電圧動作点よりも低い次の電圧動作点を調べる。
【0131】
数値例では、初期動作点143.3Vよりも低い次の電圧動作点は、ルックアップテーブルエントリインデックス番号173によって指定されるように、142.5Vである。
【0132】
コンピュータは、初期又はその時点の基準電圧動作点よりも低い次の電圧動作点を基準電圧動作点として記憶し、基準電圧動作点を指定するルックアップテーブルエントリから試験点低及び高のインデックス番号を取得する。
【0133】
数値例に戻ると、コンピュータは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号173によって指定された142.5Vの基準電圧動作点を記憶し、これは、試験点低及び高のインデックス番号値166及び180、並びにバッファサイズ15を指定している。
【0134】
ステップ152において、コンピュータは、方向変数が変調電圧振幅の増加する値を示すか又は減少する値を示すかを判定する。この時点の方向変数は、バッファメモリに分解時間を追加するために変調電圧振幅の増加する値を使用したか又は減少する値を使用したかを示す。
【0135】
数値例では、ルックアップテーブルエントリインデックス番号167~181によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を記憶することにより、バッファメモリが追加されたため、方向変数は、変調電圧振幅の増加する値を示す。その時点の電圧動作点は、149.1V、すなわち、ルックアップテーブルエントリインデックス番号181によって指定される電圧動作点である。
【0136】
方向変数が変調電圧振幅の増加する値を示す場合、動作は、ステップ154に進む。そうでなければ、動作は、ステップ156に進む。
【0137】
ステップ154において、コンピュータは、バッファメモリから、その時点の電圧動作点に対応する分解時間以外の全ての分解時間をクリアする。コンピュータは、バッファメモリに分解時間を追加するために変調電圧振幅の減少する値が使用されるべきであることを示す方向変数を設定する。
【0138】
数値例では、バッファメモリは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号167~181によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を含む。その時点の電圧動作点は、ルックアップテーブルエントリインデックス番号181によって指定されるように、149.1Vである。したがって、コンピュータは、バッファメモリから、149.1Vのその時点の電圧動作点に対応する分解時間以外の全ての分解時間を削除する。
【0139】
コンピュータは、その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリによって指定された試験点高インデックス番号が、前の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリによって指定された試験点高インデックス番号と異なるかどうかを判定する。
【0140】
試験点高インデックス番号が異なる場合、動作は、ステップ166に進む。そうでない場合、動作は、ステップ162に直接進む。
【0141】
ステップ166において、コンピュータは、バッファメモリから、その時点の電圧動作点に対応する分解時間を削除する。動作は、ステップ162に進む。
【0142】
数値例では、バッファメモリは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号181によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を含む。その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリは、エントリインデックス番号173であり、これは、試験点高インデックス番号180を指定する。エントリインデックス番号173によって指定された試験点高インデックス番号180は、エントリインデックス番号174によって指定された試験点高インデックス番号181とは異なる。したがって、コンピュータは、エントリインデックス番号181によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を削除し、バッファメモリを空のままにする。
【0143】
ステップ162において、コンピュータは、その時点の電圧動作点よりも低い次の電圧動作点を調べる。コンピュータは、その時点の電圧動作点よりも低い次の電圧動作点の振幅を有する変調電圧を圧電素子54に印加させ、新しい電圧動作点で分解時間の位相調整及び測定を実施する。コンピュータは、バッファメモリに分解時間を記憶する。動作は、ステップ164に進む。
【0144】
数値例に戻ると、ステップ162において、その時点の電圧動作点149.1Vよりも低い次の電圧動作点は、ルックアップテーブルエントリインデックス番号180によって指定されるように、148.2Vである。コンピュータは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号180によって指定されたDACレベル799をDACに適用し、これによって、148.2Vの振幅を有する変調電圧を圧電素子54に印加させる。
【0145】
コンピュータは、148.2Vの電圧動作点に対応する分解時間をバッファメモリに記憶する。
【0146】
ステップ64において、コンピュータは、その時点の電圧動作点が、試験点低インデックス番号によって識別されるルックアップテーブルエントリによって指定されるものであるかどうかを判定する。そうでない場合、動作は、ステップ162に戻る。
【0147】
数値例では、コンピュータは、その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリインデックス番号173によって、ルックアップテーブルエントリインデックス番号166が指定されるため、その時点の電圧動作点が、ルックアップテーブルエントリインデックス番号166によって指定されるもの、すなわち、136Vであるかどうかを判定する。
【0148】
方向変数が変調電圧の減少する値を示す場合に動作が進むステップ156に戻ると、コンピュータは、その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリによって指定された試験点高インデックス番号が、初期又は前の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリによって指定された試験点高インデックス番号と異なるかどうかを判定する。
【0149】
試験点高インデックス番号が異なる場合、動作は、ステップ158に進む。
【0150】
ステップ158において、コンピュータは、その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリの試験点高インデックス番号によって識別されたルックアップテーブルエントリによって指定された電圧動作点よりも高い電圧動作点に対応する任意の分解時間を、バッファメモリから削除する。次に、動作は、ステップ160に進む。
【0151】
数値例では、バッファメモリは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号167~181によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を含む。その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリは、エントリインデックス番号173であり、これは、試験点高インデックス番号180を指定する。ルックアップテーブルエントリインデックス番号181によって指定された149.1Vの電圧動作点は、エントリインデックス番号180によって指定された148.2Vの電圧動作点よりも高い。したがって、ステップ158において、コンピュータは、バッファメモリから、149.1Vの電圧動作点に対応する分解時間を削除する。
【0152】
試験点高インデックス番号が同じである場合、動作は、ステップ156からステップ160に直接進む。
【0153】
ステップ160において、コンピュータは、その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリによって指定された試験点低インデックス番号が、初期又は前の電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリによって指定された試験点低インデックス番号と異なるかどうかを判定する。
【0154】
試験点低インデックス番号が異なる場合、動作は、ステップ162に進む。そうでなければ、動作は、ステップ116に戻る。
【0155】
ステップ162において、コンピュータは、その時点の電圧動作点よりも低い次の電圧動作点を調べる。コンピュータは、その時点の電圧動作点よりも低い次の電圧動作点の振幅を有する変調電圧を圧電素子54に印加させ、新しい電圧動作点で分解時間の位相調整及び測定を実施する。コンピュータは、バッファメモリに分解時間を記憶する。動作は、ステップ164に進む。
【0156】
数値例では、バッファメモリは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号167~180によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を含む。その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリは、エントリインデックス番号173であり、これは、試験点低インデックス番号166を指定する。エントリインデックス番号173によって指定された試験点低インデックス番号166は、エントリインデックス番号174によって指定された試験点低インデックス番号167とは異なる。したがって、コンピュータは、その時点の電圧動作点137Vよりも低い次の電圧動作点、すなわち、ルックアップテーブルエントリインデックス番号166によって指定されるような136Vを調べる。
【0157】
コンピュータは、ルックアップテーブルエントリインデックス番号166によって指定されたDACレベル827をDACに適用し、これによって、136Vの振幅を有する変調電圧を圧電素子54に印加させる。コンピュータは、電圧動作点136Vに対応する分解時間をバッファメモリに記憶するため、ルックアップテーブルエントリインデックス番号166~180によって指定された電圧動作点に対応する分解時間を含む。
【0158】
ステップ164において、コンピュータは、その時点の電圧動作点が、試験点低インデックス番号によって識別されるルックアップテーブルエントリによって指定されるものであるかどうかを判定する。そうでない場合、動作は、ステップ162に戻る。
【0159】
数値例では、コンピュータは、その時点の基準電圧動作点を含むルックアップテーブルエントリ番号173によって、ルックアップテーブルエントリインデックス番号166が指定されるため、その時点の電圧動作点が、ルックアップテーブルエントリインデックス番号166によって指定されるもの、すなわち、136Vであるかどうかを判定する。
【0160】
そうでなければ、動作は、新しい最良適合線及び最良適合線の勾配の計算のためにステップ116に戻る。
【0161】
電圧動作点は連続的に変化するが、ステップ120又は150で選択された基準電圧動作点は、電圧動作点を、所定の勾配を有する特徴の点の周りで変動させるように、変調電圧振幅特徴に対する分解時間の変化を効果的に追跡することが理解されるであろう。
【0162】
図4は、1つのルックアップテーブルエントリから次のルックアップテーブルエントリへと、DACレベルが2だけ減少することを示している。すなわち、ルックアップテーブルの部分200からコンピュータに利用可能なDACレベル値は、DACによって受信可能な値のサブセット、すなわち、829から789までの奇数のDACレベル値である。これは、連続したルックアップテーブルエントリの電圧動作点間の可能な限り1Vに近い差を与える。
【0163】
図4に示されるルックアップテーブルの部分200は、バッファサイズ、すなわち、電圧動作点に関する変調電圧振幅特徴に対する分解時間の一部の勾配を計算するために使用される電圧動作点の数が、変調電圧振幅とともに増加することを示す。例えば、ルックアップテーブルエントリインデックス番号167は、13の電圧動作点を使用し、一方で、ルックアップテーブルエントリインデックス番号181は、16のそのような動作点を使用する。連続したルックアップテーブルエントリの電圧動作点間の差が可能な限り1Vに近いように構成されていることを考えると、増加するバッファサイズは、変調電圧振幅とともに増加する、変調電圧振幅が変動する範囲をもたらすはずである。
【0164】
上記の説明は、本発明の一実施形態のみに関するものであり、本発明は、特許請求の範囲によって規定されるような他の実施形態を包含することが理解されるであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4