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特許7607137ネオジム化合物を電解精錬する方法およびこれに使用されるネオジム化合物グラニュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ネオジム化合物を電解精錬する方法およびこれに使用されるネオジム化合物グラニュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25C 3/34 20060101AFI20241219BHJP
   C25C 7/02 20060101ALI20241219BHJP
   C25C 7/06 20060101ALI20241219BHJP
   C22B 59/00 20060101ALI20241219BHJP
   C22B 5/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C25C3/34 Z
C25C7/02 308Z
C25C7/06 302
C22B59/00
C22B5/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023541096
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 KR2022013361
(87)【国際公開番号】W WO2023038401
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0120861
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523180584
【氏名又は名称】ケーエスエム テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KSM TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】リュ, ホン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ファ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ, ウラジスラヴ
(72)【発明者】
【氏名】ソン, ジュ ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム, チョン モ
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-176296(JP,A)
【文献】特開2002-080988(JP,A)
【文献】特開平07-048688(JP,A)
【文献】特開2008-195969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 3/34
C25C 7/02
C25C 7/06
C22B 59/00
C22B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードおよびアノードが備えられた電解槽上に定義された開口部を通じてフッ化物系電解質を提供する段階と、
前記電解槽上に定義された開口部を通じてネオジム化合物を含み、1以上の空隙が定義されたグラニュールを提供する段階と、
前記電解質の溶融塩に前記グラニュールの少なくとも一部が溶解される段階と、
前記カソードでネオジムが還元される段階と、を含み、
前記空隙は前記グラニュールの内部または外部に定義され、前記グラニュールの見掛け密度は前記溶融塩の密度よりも小さいものである、ネオジム化合物を電解精錬する方法。
【請求項2】
前記カソードおよびアノードの少なくとも一部は前記溶融塩に浸漬されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アノードの少なくとも一部は空気中に露出されており、
前記グラニュールを提供する段階において、前記グラニュールは前記溶融塩の界面および前記アノードの露出部の少なくとも一部を覆い前記アノードおよび前記溶融塩が気体と接触することを遮断または減少させるものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記カソードはタングステン、モリブデンまたは鉄を含み、
前記アノードはグラファイトを含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記グラニュールの直径は1mm以上50mm以下のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記グラニュールは見掛け密度が2.0g/cm以上6.0g/cm以下であり、空隙率が15%以上のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フッ化物系電解質はLiFおよびNdFを含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フッ化物系電解質はLiFおよびNdFを40:60ないし5:95の重量比で含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記溶融塩の密度は3.0g/cm以上6.0g/cm以下のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ネオジム化合物は、ネオジム酸化物、プラセオジム-ネオジム酸化物、シュウ酸ネオジム、プラセオジム-シュウ酸ネオジム、炭酸ネオジム、およびプラセオジム-炭酸ネオジムからなる群から選択される1つ以上を含むものである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記プラセオジム-ネオジム酸化物はNd+Pr11(Nd>70重量%)を含み、前記プラセオジム-シュウ酸ネオジムはNd(C+Pr(C(Nd(C>70重量%)を含み、前記プラセオジム-炭酸ネオジムはNd(CO+Pr(CO(Nd(CO>70重量%)を含むものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記グラニュールを提供する段階は、
ネオジム化合物の粉末に結合剤を添加するか、ネオジム化合物の粉末と黒鉛粉末を混合した混合物に結合剤を添加してグラニュール前駆体を形成する段階と、
前記グラニュール前駆体を乾燥する段階と、
前記乾燥したグラニュール前駆体に800℃ないし1500℃の熱を加えて熱処理および焼結する段階と、を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネオジム化合物の電解精錬方法およびこれに使用されるネオジム化合物グラニュールの製造方法に関するものであって、より具体的には、1以上の空隙が定義されたネオジム化合物グラニュールの製造方法およびこれにより製造されたネオジム化合物グラニュールを用いて、環境に優しいながらも低費用および高効率でネオジム化合物を還元する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
永久磁石は多様な分野において応用されており、永久磁石の性能を向上させるために多様な研究が行われている。特に、省エネルギーや環境に優しいという観点から、IT、自動車、家電などの分野で永久磁石に関する研究が急激に進められている。
【0003】
永久磁石のうち最も広く使用されているネオジム磁石は、ネオジム-鉄-ホウ素(Nd-Fe-B)系金属間化合物(NdFe14B)を主成分とする永久磁石である。ネオジム磁石は優れた磁気特性、高い強度、安価な生産費用などの長所を有するため多様な産業製品に使用され、生産量が幾何級数的に増加している。ネオジム(Nd)磁石の主要用途としては、ハードディスクのボイスコイルモータ、エアコンコンプレッサーモータ、ハイブリッド自動車用モータなどを挙げることができる。
【0004】
一方、ネオジム磁石の原料となるネオジム(Nd)は、採掘性に優れた鉱床が特定の国家に偏在しており、当該国家の輸出規制などによって価格が変動しやすく、安定的な供給が困難になっているのが実情である。したがって、永久磁石などの製造に使用されるネオジムを精錬するための効率的な工程がされに要求されている。
【0005】
一方、ネオジムの精錬には熱還元方法も使用されているが、連続的な精錬が不可能であるため産業的な大量生産方法には適さない。
【0006】
ネオジムの電解精錬方法に関連して、従来、ネオジム酸化物の粉末を用いてネオジム酸化物を還元させて電解精錬する方法が知られている。しかし、ネオジム酸化物の粉末を用いる場合、工程中に原料が飛散するため工程上の問題を引き起こす。また、電解槽内にネオジム酸化物の粉末が沈殿しつつ互いに絡み付くため、還元されたネオジムの回収にも難点が発生する。また、フッ化物系電解質を用いてネオジム酸化物を還元させる際に工程条件を維持できない場合、温室ガスであるCFガスなどのフッ素含有化合物が微量発生して温室効果に大きな影響を及ぼす。
【0007】
さらに、既存の工程は露出した電解質界面から電解質が容易に蒸発し、露出した電極が空気中の酸素と反応して容易に酸化するという問題があった。
【0008】
ゆえに、環境に優しいながらも低費用および高効率のネオジム酸化物の還元方法に関する工程が持続的に要求されている。
【0009】
特許文献
日本公開特許公報特開2020-158730号
韓国公開特許公報第10-2007-0001137号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、ネオジム化合物を含み、1以上の空隙が定義されたグラニュールを用いて環境に優しいながらも低費用および高効率のネオジム化合物を還元する方法を提供することを1つの目的とする。
【0011】
また、本発明は、従来技術に比べて最終製品の高品位の生産比率を高めることができ、エネルギー効率が高くて商業化に有利なネオジム化合物を還元する方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、前述した優れたネオジム化合物の還元方法に使用されるのに適したネオジム化合物のグラニュールを製造する方法を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態によると、カソードおよびアノードが備えられた電解槽上に定義された開口部を通じてフッ化物系電解質を提供する段階;前記電解槽上に定義された開口部を通じてネオジム化合物を含み、1以上の空隙が定義されたグラニュールを提供する段階;前記フッ化物系電解質の溶融塩に前記グラニュールの少なくとも一部が溶解される段階;および、前記カソードでネオジムが還元される段階を含み、前記空隙は前記グラニュールの内部または外部に定義され、前記グラニュールの見掛け密度は前記溶融塩の密度よりも小さいものである、ネオジムを電解精錬する方法が提供される。
【0014】
また、本発明の一実施形態によると、ネオジム化合物の粉末に結合剤を添加するか、ネオジム化合物の粉末と黒鉛粉末を混合した混合物に結合剤を添加してグラニュール前駆体を形成する段階、前記グラニュール前駆体を乾燥する段階、および前記乾燥したグラニュール前駆体に800℃ないし1500℃の熱を加えて熱処理および焼結する段階を含む、電解精錬に使用されるネオジム化合物グラニュールの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】電解精錬工程が進行している電解槽の断面を概略的に示した図面である。
図2】ネオジム化合物、詳しくはネオジム酸化物のグラニュールを示した図面である。
図3】Nd粉末および黒鉛粉末の混合段階(a~c)とグラニュール形成段階、およびグラニュールの球形化段階(d)を示した図面である。
図4】実施例1のネオジム酸化物のグラニュールを示した図面である。
図5】実施例2のネオジム酸化物のグラニュールを示した図面である。
図6a】実施例1のグラニュールの欠片を示した図面である。
図6b】実施例1のグラニュールを1000倍に拡大して示した拡大図である。
図6c】実施例1のグラニュールを5000倍に拡大して示した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施形態とその理解を助け、この実施のための具体的な説明および実施形態を通じて、本発明の意図、作用および効果を詳述する。ただし、以下の説明および実施形態は、前述したように本発明の理解を助けるための例示として提示されたものであって、これに限って発明の権利範囲が定められるか限定されるものではない。
【0017】
本発明を具体的に説明するに先立ち、本明細書および請求の範囲に使用された用語や単語は、通常または辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は、自分自身の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に基づいて、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0018】
したがって、本明細書に記載の実施形態の構成は、本発明の最も好ましい1つの実施形態に過ぎないだけで、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないため、本出願の時点において、これらに代わり得る多様な均等物と変形形態が存在し得ることを理解しなければならない。
【0019】
本明細書において単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味でない限り、複数の表現を含む。本明細書で「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないものとして理解されなければならない。
【0020】
本明細書において用語「および/または」は、羅列された1以上の構成要素から導出されるすべての構成の組み合わせを指称する用語として使用される。
【0021】
本明細書において用語「同一」は、当技術分野で工程などの多様な理由で発生し得る通常的かつ微細な違いだけがある場合を含む用語として使用される。
【0022】
以下では、ネオジム化合物の電解精錬方法において使用されるグラニュールの製造方法、ネオジム化合物の電解精錬方法および実施形態の順で本発明を詳細に説明する。
【0023】
1.ネオジム化合物の電解精錬方法
【0024】
以下、図1および図2を参照して、本発明に係るネオジム化合物を電解精錬して還元された純粋なネオジム(ND)金属を収得する方法に関して詳しく説明する。本明細書において各段階別に電解精錬方法を説明しても、これは工程の順序を特定するものではない。本発明の方法に係る各段階は、矛盾しない限り記載の順序通りに進められ得ず、各段階が同時に進められ得ることは当然である。図1は電解精錬工程が進行している電解槽(EB)の断面を概略的に示した図面である。図2はネオジム化合物中のネオジム酸化物のグラニュール(GR)を示した図面である。
【0025】
本発明に係るネオジム化合物を電解精錬する方法は、
【0026】
カソード(CT)およびアノード(AN)が備えられた電解槽上に定義された開口部(EB-O)を通じてフッ化物系電解質(EL)を提供する段階;電解槽(EB)上に定義された開口部(EB-O)を通じてネオジム化合物を含み、1以上の空隙(CV)が定義されたグラニュール(GR)を提供する段階;電解質(EL)の溶融塩にグラニュール(GR)の少なくとも一部が溶解される段階;および、カソード(CT)でネオジム(ND)が還元される段階を含むことができ、前記空隙は前記グラニュール(GR)の内部または外部に定義され、グラニュール(GR)の見掛け密度は溶融塩の密度よりも小さいものであり得る。
【0027】
電解槽(EB)は、下端部(EB-B)および側面部(EB-S)を含むことができる。また、電解槽(EB)には開口部(EB-O)が定義され得る。工程中に開口部(EB-O)を通じて電解質(EL)および/またはグラニュール(GR)などが提供され得る。
【0028】
電解槽(EB)の下端(EB-B)には、電解質(EL)とカソード(CT)の反応により還元されたネオジム(ND)を収容するバスケット(BS)が備えられ得る。バスケット(BS)は、カソード(CT)の位置と対応するようにカソード(CT)の下に備えられ得るが、実施形態がこれに限定するものではない。図示されていないが、バスケット(BS)は還元されたネオジム(ND)を容易に回収するための出湯路を含み得る。出湯路は別途の装置を通じて開閉することができ、出湯路を通じて溶融状態の還元されたネオジム(ND)が回収され得る。ただし、実施形態がこれに限定するものではなく、還元されたネオジム(ND)は電解槽(EB)に定義された開口部(EB-O)を通じて回収され得る。
【0029】
一実施形態において、フッ化物系電解質(EL)はアルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化化合物とNdFの混合塩を含むことができる。フッ化物系電解質(EL)はアルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化化合物とNdFの溶融塩の形態で提供され得る。フッ化物系電解質(EL)に含まれたアルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化化合物は1または2以上であり得る。アルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化化合物においてアルカリ金属またはアルカリ土類金属は、例えば、Li、Mg、Na、K、またはCaなどを挙げることができる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化化合物は、LiFまたはCaFなどの当技術分野で使用される化合物であれば特に制限なく使用され得る。フッ化物系電解質(EL)は、例えば、LiFとNdFの混合塩を含むことができる。NdFの高い融点によりNdFを単独では電解精錬に困難があるが、LiFのようなフッ化アルカリ化合物を共に使用することによって融点の低い共融組成物を工程に用いることができる。
【0030】
これに限定されるものではないが、フッ化物系電解質(EL)は、電解質(EL)の全重量を基準にLiFを5ないし50重量%、または10ないし50重量%で含むことができ、NdFを20ないし95重量%、または20ないし80重量%で含むことができる。電解質(EL)内でLiFおよびNdFは、約40:60ないし5:95、約40:60ないし20:80、例えば、約30:70の重量比で含まれ得る。
【0031】
カソード(CT)およびアノード(AN)は所定の距離を置いて離隔され得る。カソード(CT)およびアノード(AN)は電源を供給する電源部(PO)と電気的に連結され得る。例えば、カソード(CT)およびアノード(AN)のそれぞれは電源供給ライン(PL)を通じて電源部(PO)と電気的に連結され得る。電源部(PO)から電源供給ライン(PL)を通じてカソード(CT)およびアノード(AN)に電流を提供すると、カソード(CT)でネオジムが還元されるため、純粋なネオジム(ND)金属が得られる。
【0032】
カソード(CT)および/またはアノード(AN)の少なくとも一部は溶融塩に浸漬されたものであり得る。カソード(CT)および/またはアノード(AN)、特にアノード(AN)の少なくとも一部は空気中に露出されたものであり得る。即ち、カソード(CT)および/またはアノード(AN)は電解質(EL)に浸漬されて電解質と接触する接触部および空気中に露出した露出部を含むことができる。
【0033】
図1を参照すると、電解槽(EB)内に1つのカソード(CT)と2つのアノード(AN)が備えられたものとして図示されたが、実施形態はこれに限定されない。カソード(CT)および/またはアノード(AN)は、それぞれ独立的に1以上5以下、1以上4以下、1以上3以下、または1以上2以下で備えられ得る。例えば、カソード(CT)が1つ備えられ、アノード(AN)は1つ、2つ、または4つ備えられ得る。図1に示されたように、アノード(AN)はカソード(CT)を取り囲むように配置されたものとして示されたが、実施形態がこれに限定されるものではなく、当技術分野で通常の電極配置であれば本発明に制限なく適用され得る。
【0034】
前述のカソード(CT)、アノード(AN)、および電解槽(EB)に関する説明は例示的なものであり、カソード(CT)、アノード(AN)および電解槽(EB)の構造が当業界で通常使用される形態に変形が可能であることは当然である。
【0035】
一方、従来は、ネオジム酸化物を含む粉末が電解槽(EB)に投入されて工程が進められた。そのため、ネオジム酸化物を含む粉末が空中に飛散して原料の損失および工程上の困難が発生した。特に、電解精錬工程には非常に高い熱が印加されるため、熱によって発生する熱対流により粉末が非常に活発に飛散して原料の損失が発生し、工程安全性(safety)にも大きな問題があった。
【0036】
さらに、ネオジム酸化物を含む粉末の密度は電解質(EL)の密度よりも大きいため、粉末が電解槽(EB)の底に沈殿する問題が発生した。沈殿したネオジム酸化物の粉末は、電解質にうまく溶解せず反応に参加しない。また、沈殿したネオジム酸化物の粉末を処理するために周期的な撹拌工程が必要である。これにより、工程の難度が上昇し収率が減少するなどの多様な工程上の問題が発生した。
【0037】
本発明の一実施形態では、ネオジム化合物を含むグラニュール(GR)が電解槽に提供される。そのため、グラニュール(GR)が空中に飛散されず容易に投入され得る。また、グラニュール(GR)の密度が電解質(EL)の密度よりも小さいため持続的に電解質(EL)の界面(EL-S)上に浮いていることができるので、グラニュール(GR)が電解槽(EB)の底に沈殿しない。
【0038】
また、グラニュール(GR)が電解質(EL)の界面(EL-S)に留まりながら、電解質(EL)に持続的にネオジム化合物を供給することができる。長時間の連続的電解精錬が可能であるため工程速度が速くなり、工程に使用される費用も節減され得る。
【0039】
一実施形態において、グラニュール(GR)はネオジムが還元されたことより電解質(EL)に持続的に溶解するので、電解質(EL)内でネオジム化合物の濃度が一定に維持され得る。例えば、電解質(EL)においてネオジム化合物の濃度は、約0.1ないし5重量%、約0.5ないし3重量%、約1ないし3重量%、または約2重量%に維持され得る。
【0040】
グラニュール(GR)を提供する段階は、グラニュール(GR)が電解質(EL)の界面(EL-S)およびアノード(AN)の露出部を覆う段階を含むことができる。本明細書において電解質(EL)の界面(EL-S)は、電解質(EL)と空気が当接する境界面として定義される。
【0041】
カソード(CT)およびアノード(AN)は当分野で通常に使用される材料を含むことができる。例えば、カソード(CT)はタングステンまたはモリブデンを含むことができ、アノード(AN)はグラファイトを含むことができる。例えば、カソード(CT)はタングステンからなるタングステン電極であり、アノード(AN)はグラファイトからなるグラファイト電極であり得る。カソード(CT)は、例えば、鉄(Fe)を含むことができる。例えば、カソード(CT)が鉄を含む場合、ネオジムは鉄との合金形態(NdFe)として精錬され得る。
【0042】
図示されたように、電解槽(EB)内のアノード(AN)は1以上、例えば、2以上配置され得るが、これに制限されるものではない。
【0043】
カソード(CT)では、以下反応式1に係る反応によりネオジム金属が還元され得る。
【0044】
(反応式1)
Nd3++3e=Nd
【0045】
アノード(AN)では以下の反応式2に係る反応によって二酸化炭素の気体が生成され、工程条件を維持できない場合、以下の反応式3に係る反応により四フッ化炭素のような気体が生成され得る。
【0046】
(反応式2)
C+2O2-=CO+4e
【0047】
(反応式3)
C+4F=CF+4e
【0048】
電解精錬工程の工程温度は、電解質を溶融させてネオジム化合物が還元される過程が行われ得る温度以上であれば構わない。例えば、電解精錬工程は約800ないし1300℃、約800ないし1100℃、約800ないし900℃、または約1200℃の温度のうち熱効率の観点から最も合理的な温度を選択して進められ得る。このように、高温の工程において、カソード(CT)および/またはアノード(AN)が高温に加熱され得る。このとき、カソード(CT)および/またはアノード(AN)の露出部は空気と接触して酸化され得る。例えば、アノード(AN)がグラファイトを含む場合、アノード(AN)露出部の炭素が空気中の酸素と反応して二酸化炭素を形成し得る。この場合、アノード(AN)の酸化による消耗率が大きくなるため、アノード(AN)の交換周期が非常に頻繁になり得る。また、電解質(EL)に高温の熱が印加される場合、溶融塩が気化して失われるため、持続的に電解質(EL)を補充する工程が必要である。したがって、工程速度が遅延し工程費用が増加する問題がある。
【0049】
しかし、本発明の一実施形態では、グラニュール(GR)が電解質(EL)の界面(EL-S)およびアノード(AN)の露出部を覆うように提供されるため、電解質(EL)の界面(EL-S)とアノード(AN)の露出部が空気に露出することを防ぐ。
【0050】
より具体的には、電解槽(EB)にグラニュール(GR)を提供する段階において、グラニュール(GR)は、溶融塩の界面およびアノード(AN)の露出部の少なくとも一部を覆うため、アノード(AN)および溶融塩が気体と接触することを遮断または減少させることができる。例えば、グラニュール(GR)は溶融塩の界面およびアノード(AN)の露出部をすべて覆うことができる。
【0051】
したがって、本発明の一実施形態によると、アノード(AN)が空気と反応して酸化するのを防止または低減させることができ、電解質(EL)が空気中に気化するのも防止または低減させることができる。したがって、アノード(AN)を交換するか、電解質(EL)を補充する間隔が最小化されるため、長時間の連続的な電解精錬が可能であり、材料費が節減され得る。したがって、一実施形態によると、優れた工程速度および費用削減が達成され得る。
【0052】
一方、ネオジム化合物の電解精錬工程中に温室ガスであるCFまたはCのようなフッ化炭素ガスが発生し得る。CFはCOに比べて温暖化指数が約6,500倍ほど高く、大気中で自然分解される期間が約50,000年に達し、CはCOに比べて温暖化指数が約9,200倍ほど高く、大気中で自然分解される期間が約10,000年に達するため、致命的な環境汚染の原因となり得る。したがって、既存の工程によると、フッ化炭素ガスを処理するための設備を備えるために多くの費用が消耗され得る。しかし、一実施形態によると、ネオジム化合物のグラニュール(GR)が電解質の界面(EL-S)の少なくとも一部または全部を覆うため、CFガスが排出されながらネオジム化合物のグラニュール(GR)と接触して、例えば、以下の反応式4により化学反応し得る。
【0053】
(反応式4)
2Nd+3CF=2NdF+3CO
【0054】
これにより、CFを処理するための設備費用を節減することができ、温室ガスであるCFを再びNdFに製造され得るので、工程費用を節減し得る。
【0055】
図2を参照すると、一実施形態において、グラニュール(GR)の形態は球形(Spherical)であり得、球形の表面に屈曲を有する準球形(Quasi-spherical)であり得る。ただし、実施形態がこれに限定されるものではなく、製造工程および製造方法によりグラニュール(GR)は多様な形態で定義され得る。図2を参照すると、一実施形態において、グラニュール(GR)の直径は、約1mm以上50mm以下、約1mm以上30mm以下、約1mm以上15mm以下、約1mm以上10mm以下、約1mm以上5mm以下、または約1mmであり得る。グラニュール(GR)が球形でない場合、グラニュール(GR)の直径はグラニュール(GR)の重心を通る直線であり、そのグラニュール(GR)の周囲上の2点を結ぶ線分の平均の長さを意味し得る。
【0056】
前述したグラニュール(GR)の直径はグラニュール(GR)それぞれの個別の直径または複数のグラニュール(GR)の平均直径を意味し得る。一実施形態において、複数のグラニュール(GR)それぞれの直径は互いに実質的に同一または異なり得る。
【0057】
グラニュール(GR)の直径は前述した長さに限定されるものではないが、グラニュール(GR)の直径が前述した範囲内に含まれる場合、アノード(AN)の露出部および電解質(EL)の界面(EL-S)が空気と十分に遮断されながらも体積が適切に維持され得る。
【0058】
本明細書において「ネオジム化合物」は、ネオジム酸化物、プラセオジム-ネオジム酸化物、シュウ酸ネオジム、プラセオジム-シュウ酸ネオジム、炭酸ネオジム、およびプラセオジム-炭酸ネオジムからなる群から選択される1つ以上を含むものとして定義され得る。
【0059】
一実施形態において、ネオジム酸化物はNdを含むことができ、シュウ酸ネオジムはNd(Cを含むことができ、炭酸ネオジムはNd(COを含むことができる。Ndの理論分解電位は約2.4~2.6Vであって、NdFの分解電位である約4.6~5.6Vよりも低い値を有する。したがって、Ndの分解電位領域の電流を印加して電解質(EL)内のNdの選択的精錬が可能である。
【0060】
一実施形態において、プラセオジム-ネオジム酸化物、プラセオジム-シュウ酸ネオジム、およびプラセオジム-炭酸ネオジムは、それぞれ、NdとPr11、Nd(CとPr(C、およびNd(COとPr(COが物理的に混合または化学的に結合された形態であり得る。
【0061】
一実施形態において、NdとPr11が化学的に結合されたプラセオジム-ネオジム酸化物(Nd+Pr11)でNdはプラセオジム-ネオジム酸化物全体の重量を基準に70重量%超過(Nd>70%)、75重量%超過、80重量%超過、85重量%超過、90重量%超過、95重量%を超過して含むことができ、Pr11は30重量%未満、25重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満で含むことができる。プラセオジム-ネオジム酸化物において、プラセオジムとネオジム元素の全モル数を基準にプラセオジムのモル比は、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、または約5%以下であり得る。
【0062】
一実施形態において、Nd(CとPr(Cが化学的に結合されたプラセオジム-シュウ酸ネオジム(Nd(C+Pr(C)においてNd(Cは、プラセオジム-シュウ酸ネオジム全体の重量を基準に70重量%超過(Nd(C>70%)、75重量%超過、80重量%超過、85重量%超過、90重量%超過、95重量%を超過して含むことができ、Pr(Cは30重量%未満、25重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満で含むことができる。プラセオジム-シュウ酸ネオジムにおいて、プラセオジムとネオジム元素の全モル数を基準にプラセオジムのモル比は、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、または約5%以下であり得る。
【0063】
一実施形態において、Nd(COとPr(COが化学的に結合されたプラセオジム-炭酸ネオジム(Nd(CO+Pr(CO)において、Nd(COはプラセオジム-炭酸ネオジム全体の重量を基準に70重量%超過(Nd(CO>70%)、75重量%超過、80重量%超過、85重量%超過、90重量%超過、95重量%を超過して含むことができ、Pr(COは30重量%未満、25重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、10重量%未満、5重量%未満で含むことができる。プラセオジム-炭酸ネオジムにおいて、プラセオジムとネオジム元素の全モル数を基準にプラセオジムのモル比は、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、または約5%以下であり得る。
【0064】
一実施形態において、ネオジム酸化物、シュウ酸ネオジム、および炭酸ネオジムからなるグループから選択されるいずれか1つ以上を、プラセオジム-ネオジム酸化物、プラセオジム-シュウ酸ネオジム、およびプラセオジム-炭酸ネオジムからなるグループから選択されるいずれか1つ以上と共に、本発明の一実施形態により電解精錬する場合、プラセオジム-ネオジム合金形態で精錬され得る。プラセオジムはネオジムと類似した性質を有するため、一実施形態により精錬されたプラセオジム-ネオジム合金として永久磁石を製造することができる。例えば、プラセオジムのモル比が約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、または約5%以下である場合、優れた効果を示す永久磁石の製造が可能である。
【0065】
一実施形態において、空隙(CV)はグラニュール(GR)の内部に定義されるか、またはグラニュール(GR)の表面に定義され得る。空隙(CV)がグラニュール(GR)の表面に定義される場合、空隙(CV)は半球形または準半球形(Quasi-hemispherical)として定義され得る。
【0066】
一実施形態において、空隙(CV)の直径は1μm以上100μm以下に定義され得る。空隙(CV)に関しては、後述する図6aないし図6cにおいてさらに詳しく図示される。
【0067】
ネオジム化合物グラニュール(GR)において、空隙(CV)の体積比は、グラニュール(GR)の密度が電解質(EL)の密度よりも小さい値を有するように定義され得る。例えば、ネオジム化合物グラニュール(GR)に定義される空隙(CV)の体積比(空隙の体積/グラニュールの体積、以下、空隙率)は、下記式1により計算された値(単位:%)以上で定義され得る。
【0068】
【数1】
【0069】
一実施形態において、空隙率は、約15%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、または約37.55%以上であり得る。空隙率が前記式1で計算された値以上である場合、グラニュール(GR)の見掛け密度は溶融塩の密度よりも小さくなり得る。
【0070】
本明細書において、空隙率はグラニュール(GR)に定義されたすべての空隙(CV)により定義される体積を基準に計算される。
【0071】
一実施形態において、グラニュール(GR)の見掛け密度は、2.0g/cm以上6.0g/cm以下、2.0g/cm以上5.0g/cm以下、2.5g/cm以上5.0g/cm以下、3.0g/cm以上5.0g/cm以下、または3.0g/cm以上4.5g/cm以下であり、溶融塩の密度は、3.0g/cm以上6.0g/cm以下、3.0g/cm以上5.0g/cm以下、3.5g/cm以上5.0g/cm以下、4.1g/cm以上5.0g/cm以下、3.5g/cm以上4.5g/cm以下、または4.1g/cm以上4.5g/cm以下であり得る。
【0072】
例えば、フッ化物系電解質(EL)がLiFおよびNdFを30:70の重量比で含み、ネオジム酸化物がNdである場合、空隙率は37.55%以上であり、グラニュール(GR)の見掛け密度は約4.52以下であり得る。
【0073】
空隙率が前述した範囲に含まれる場合、グラニュール(GR)が溶融塩上に十分に浮いていることができる。また、グラニュール(GR)の輸送中の衝撃によって壊れ難いため、保管および輸送の利便性が向上され得る。
【0074】
2.ネオジム化合物のグラニュールの製造方法
【0075】
以下、前述したネオジム化合物のグラニュール(GR)の製造方法に関して詳しく説明する。本明細書において各段階別にネオジム化合物のグラニュール(GR)の製造方法を説明しても、これは工程の順序を特定するものではない。本発明の方法に係る各段階は、矛盾しない限り記載の順序通りに進められ得ず、各段階が同時に進められ得ることは当然である。また、矛盾しない限り、本発明に係る製造方法により製造されたネオジム化合物のグラニュール(GR)に関して、前述したネオジム化合物の電解精錬方法で使用されたネオジム化合物のグラニュール(GR)に関する説明がそのまま適用され得ることは当然である。
【0076】
本発明に係る電解精錬に使用されるネオジム化合物グラニュール(GR)の製造方法は、
【0077】
ネオジム化合物の粉末に結合剤を添加するか、ネオジム化合物の粉末と黒鉛粉末とを混合した混合物に結合剤を添加してグラニュール前駆体を形成する段階;グラニュール前駆体を乾燥する段階;および乾燥したグラニュール前駆体に800℃ないし1500℃の熱を30分ないし90分間加えて熱処理および焼結する段階を含むことができる。
【0078】
ネオジム化合物の粉末と黒鉛粉末とを混合する段階は、ネオジム化合物の粉末と黒鉛粉末を混合装置に提供する段階および混合装置を回転させる段階を含むことができる。グラニュール前駆体を形成する段階は、回転する混合装置に結合剤を添加する段階を含むことができる。結合剤はネオジム化合物間またはネオジム化合物と黒鉛粉末が互いに十分に結合して、グラニュール前駆体が容易に形成されるようにする。結合剤は、結合剤が蒸留水のような水溶性溶媒に溶解された溶液の形態で提供され得る。例えば、結合剤溶液の全重量を基準に結合剤の比率は、約1重量%ないし約10重量%、約3重量%ないし約7重量%、または約4重量%であり得る。結合剤の非制限的な例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、tert-ブタノール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸またはポリメチルメタクリレートを挙げることができる。混合装置は、約50rpmないし約200rpm、約50rpmないし約150rpm、約80rpmないし約120rpmで回転することができ、例えば、約100rpmで回転することができる。
【0079】
混合する段階は、揮発性有機化合物を噴射する段階を含むことができる。揮発性有機化合物の非制限的な例としては、例えば、沸点が80℃以下である有機化合物を挙げることができる。沸点が80℃以下である有機化合物の非制限的な例としては、メタノール、エタノールのようなアルコール化合物、n-ヘキサン、酢酸エチルなど、当技術分野で通常で使用される化合物を挙げることができる。
【0080】
焼結する段階は、乾燥したグラニュール前駆体に約800℃ないし約1500℃、約1100℃ないし約1400℃、約1200℃ないし約1400℃、約1250℃ないし約1350℃、または約1300℃の熱を加える段階を含むことができる。前述した熱を加える段階は、約30分ないし90分間進められ得る。例えば、焼結する段階は、約800℃ないし約1500℃、約1100℃ないし約1400℃、約1200℃ないし約1400℃、約1250℃ないし約1350℃、または約1300℃の熱を約30分ないし90分間加える段階を含むことができる。前述した温度範囲内で焼結工程が進められる場合、製造されたネオジム化合物グラニュールの焼結の程度および密度が、前述した電解精錬工程に使用するに適し得る。
【0081】
グラニュール前駆体を製造するため使用されるネオジム化合物と黒鉛粉末の重量比は、60:40ないし90:10、70:30ないし80:20、または75:25ないし85:15であり得る。結合剤は、ネオジム化合物と黒鉛粉末全体の重量を基準に、約0.5重量%ないし約3重量%、約1重量%ないし約2重量%、または約1.5重量%の比率で添加され得る。
【0082】
一実施形態において、ネオジム酸化物はNdであり得、シュウ酸ネオジムはNd(Cであり得、炭酸ネオジムはNd(COであり得る。一実施形態において、ネオジム酸化物はプラセオジム-ネオジム酸化物であり得る。
【0083】
一実施形態において、ネオジム化合物のグラニュール(GR)は1以上の空隙が定義されたものであり得る。ネオジム化合物のグラニュール(GR)の製造時に黒鉛が燃焼するか、結合剤が蒸発しつつ空隙(CV)が定義され得、ネオジム化合物が焼結しつつ空隙(CV)が定義され得る。
【0084】
一実施形態において、グラニュール(GR)の見掛け密度は、2.0g/cm以上6.0g/cm以下、3.0g/cm以上5.0g/cm以下、または3.0g/cm以上4.5g/cm以下であり得、溶融塩の密度は、3.0g/cm以上6.0g/cm以下、3.0g/cm以上5.0g/cm以下、3.5g/cm以上5.0g/cm以下、4.1g/cm以上5.0g/cm以下、3.5g/cm以上4.5g/cm以下、または4.1g/cm以上4.5g/cm以下であり得る。一実施形態において、空隙率は、約15%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、または約37.55%以上であり得る。
【0085】
一実施形態の製造方法により製造されたネオジム化合物グラニュール(GR)は、前述したネオジムの電解精錬工程に使用され得る。一実施形態において、製造されたネオジム化合物グラニュール(GR)を2以上の欠片に粉砕してネオジム電解精錬工程に使用し得る。本明細書において、ネオジム化合物グラニュール(GR)はネオジム化合物グラニュール(GR)の粉砕物を含むものとして定義される。
【0086】
3.実施形態
【0087】
以下では、図3ないし図5、および図6aないし図6cを参照して実施形態に関して詳しく説明し、これを通じて本発明の作用および効果を立証する。しかし、以下の実施形態は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これにより発明の権利範囲が定められるものではない。
【0088】
ネオジム化合物のグラニュール(GR)の実施形態
【0089】
(1)製造例1:実施例1のグラニュールの製造
【0090】
Nd粉末78.5g、黒鉛粉末20.0g、および約4重量%濃度のPVA(Polyvinyl Alcohol)37.5gを準備した。準備したNd粉末および黒鉛粉末を混合装置である原料顆粒装置に入れ、回転速度100rpmで約30分間回転させた。その後、PVA溶液を少しずつ追加してグラニュールを形成し、エタノールを約10ml噴射してグラニュール形状を球形化した。その後、50℃のファンヒーターで乾燥後、回収した。
【0091】
その後、製造された乾燥グラニュールに約1300℃で1時間熱を加えて黒鉛およびPVAを燃焼(酸化)または蒸発させ、Ndを焼結させて実施例1のグラニュールを製造した。
【0092】
図3および図4に各工程の段階に係る図面を示した。図3は、Nd粉末および黒鉛粉末の混合段階(a~c)とグラニュール形成段階、およびグラニュールの球形化段階(d)を示した図面である。図4は、乾燥グラニュールに熱を加えて製造された実施例1のネオジム酸化物グラニュール(GR)を示した図である。
【0093】
(2)製造例2:実施例2のグラニュールの製造
【0094】
Nd粉末83.5g、黒鉛粉末15.0g、および約4重量%濃度のPVA(Polyvinyl Alcohol)37.5gを使用したことを除き、製造例1と同一の方法で実施例2のグラニュールを製造した。図5に製造された実施例2のグラニュールを示した。図5は、乾燥グラニュールに熱を加えて製造された実施例2のネオジム酸化物グラニュール(GR)を示した図面である。
【0095】
(3)製造されたグラニュールの評価
【0096】
以下、図6aないし図6cを参照して製造されたグラニュール(GR)の評価結果に関して詳しく説明する。図6aは、実施例1のグラニュール(GR)の欠片を示した図面である。図6bは、実施例1のグラニュール(GR)を1000倍に拡大して示した拡大図である。図6cは、実施例1のグラニュール(GR)を5000倍に拡大して示した拡大図である。図6bを参照すると、黒鉛粒子が燃焼しつつ、定義された空隙(CV)が確認される。図6cを参照すると、ネオジム酸化物が焼結しつつ、定義された空隙(CV)が確認される。図6aないし図6cを参照すると、黒鉛粒子の燃焼およびネオジム酸化物の焼結によりグラニュール(GR)に空隙(CV)が定義されて、グラニュール(GR)が電解質(EL)の密度よりも小さくなり得ることが確認される。また、焼結によりグラニュール(GR)の強度が強くなり、容易に割れないため、輸送の容易性にも優れることが確認される。
【0097】
実施例1のグラニュール(GR)の焼結程度、定義された空隙(CV)の直径および密度をより具体的に評価し、その結果を表1に記載した。
【0098】
【表1】
【0099】
表1および図6aないし図6cを参照すると、製造されたグラニュール(GR)の内部まで焼結が十分に進められNd粒子が十分に連結されており、外部衝撃によって割れ難い強度を有するものと確認される。また、グラニュール(GR)の密度も、フッ化物系電解質を使用するネオジム化合物の電解精錬工程に非常に適して形成されるものと確認される。したがって、一実施形態により製造されたネオジム化合物を含むグラニュール(GR)は、ネオジム電解精錬工程に使用するのに非常に適する。
【0100】
ネオジム化合物の電解精錬方法
【0101】
トンバックに入っている原料をホイストを用いて、それぞれの貯蔵ホッパーに投入した。貯蔵ホッパーにミックスされたNdF+LiF原料(電解質)を移送装置であるシャトルカーとスクリューコンベアを用いて電解精錬炉に投入した。AC power supplyに連結された黒鉛電極を用いて電解質を溶融させて溶融塩を生成しつつ、追加で電解質を投入して適当な高さまで溶融させた。電解精錬炉は、DC power supplyに黒鉛陽極とタングステン陰極で連結し、電流を印加しつつNd oxideを投入した。電解精錬炉下段のタングステンるつぼ(crucible)に生成されたNd金属をチタンレードルを用いて汲み取るか、下端部の出湯路を用いて回収した。回収された金属をチェーンコンベアとアルゴンチャンバーを用いて凝固させて還元されたネオジムを収得した。
【0102】
EB:電解槽 CT:カソード
AN:アノード EL:電解質
GR:グラニュール ND:還元されたネオジム
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によると、ネオジム化合物を含み1以上の空隙が定義されたグラニュールを用いてネオジムを電解精錬することにより、工程中に粉末が飛散するか、電解槽内に沈殿することを防ぐため、優れた工程効率を達成し、産業的大量生産に適したネオジムの電解精錬工程が提供される。
【0104】
また、本発明によると、電解槽に備えられた電極の酸化および電解質の気化を防ぎ、温室ガスの排出が減少するため、優れた工程効率を達成して産業的大量生産に適し、環境に優しいネオジムの電解精錬工程が提供される。
【0105】
また、本発明によると、優れた工程効率を達成し、産業的大量生産に適したネオジムの電解精錬工程に使用することに適したネオジム化合物グラニュールの製造工程が提供される。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4
図5
図6a
図6b
図6c