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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】無給電素子
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/30 20060101AFI20241219BHJP
   H01Q 9/16 20060101ALI20241219BHJP
   H01Q 19/22 20060101ALI20241219BHJP
   H01P 5/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01Q9/30
H01Q9/16
H01Q19/22
H01P5/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023544963
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2021032610
(87)【国際公開番号】W WO2023032186
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】辻田 泰久
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-340731(JP,A)
【文献】国際公開第2018/199007(WO,A1)
【文献】実開昭62-139112(JP,U)
【文献】特開2001-284946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/30
H01Q 9/16
H01Q 19/22
H01P 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを送信するように構成された送信機に用いられる無給電素子であって、
前記送信機は、給電されたループアンテナと、前記ループアンテナを収容する筐体と、を備え、
前記筐体の外に位置するように配置された前記無給電素子は、
当該無給電素子の一部分であるループ部と、
前記ループ部以外の部分であり、当該ループ部から延びる1つの延長部と、を備え、
前記ループ部は、前記ループアンテナと電磁気的に結合するように構成され、
前記無給電素子は、開放端である第1端と、グランドに接続されるように構成された第2端と、を有し、
前記延長部は、前記無給電素子の前記第1端を有し
前記ループアンテナの使用周波数での波長をλとすると、前記延長部は、0.20λの長さを有する、無給電素子。
【請求項2】
前記延長部に並んで配置された直線状素子をさらに含む、請求項1に記載の無給電素子。
【請求項3】
データを送信するように構成された送信機に用いられる無給電素子であって、
前記送信機は、給電されたループアンテナと、前記ループアンテナを収容する筐体と、を備え、
前記筐体の外に位置するように配置された前記無給電素子は、
当該無給電素子の一部分であるループ部と、
前記ループ部の両側に位置する2つの延長部と、を備え、
前記2つの延長部は、前記ループ部以外の部分であり、当該ループ部から延びており、
前記ループ部は、前記ループアンテナと電磁気的に結合するように構成され、
前記2つの延長部の各々は、前記無給電素子の両端の一方を開放端として有し、
前記ループアンテナの使用周波数での波長をλとすると、前記2つの延長部の各々は、0.22λの長さを有する、無給電素子。
【請求項4】
前記2つの延長部に並んで配置された直線状素子をさらに含む、請求項3に記載の無給電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信機に用いられる無給電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
データを送信するように構成された送信機は、データを送信するための送信アンテナを備える。特許文献1には、送信アンテナであるアンテナ装置が、送信機としての携帯機のケースに内蔵されることが開示されている。特許文献1の携帯機は、車両のキーレスシステムに用いられる送信機である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-35644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の携帯機を他のシステムでの送信機に使用しようとする場合、つまり、既存の送信機を他の用途で使用しようとする場合がある。このとき、送信機の送信出力が足りない場合には、送信機の送信アンテナを含めたハードウエアの変更や電源を必要とする機器を追加せずに送信出力を上げることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様によれば、データを送信するように構成された送信機に用いられる無給電素子であって、前記送信機は、給電されたループアンテナと、前記ループアンテナを収容する筐体と、を備え、前記筐体の外に位置するように配置された前記無給電素子は、当該無給電素子の一部分であるループ部と、前記ループ部以外の部分であり、当該ループ部から延びる延長部と、を備え、前記ループ部は、前記ループアンテナと電磁気的に結合するように構成され、前記延長部は、前記無給電素子の少なくとも一端を開放端として有する。
【0006】
これによれば、送信機のループアンテナに送信電力が供給されると、ループアンテナの周囲に磁界が発生するとともに電界が発生してループアンテナからエネルギーが放射される。筐体の外では、ループアンテナの磁界と結合したループ部に誘導電流が流れる。筐体の外に配置された素子を直線状にした場合を比較例とすると、ループ部には比較例よりも大きな誘導電流が流れる。
【0007】
そして、誘導電流の流れた無給電素子において、延長部の開放端付近と、その他の部分との間に電位差が生じるため、電界が延長部にも発生する。その結果、ループアンテナから受けたエネルギーが、延長部を利用して電波として効率良く放射される。送信機のループアンテナ単体からエネルギーが電波として放射される場合と比べると、送信機からの送信出力を上げることができる。ループアンテナへの送信電力が同じなら、送信機からの通信距離を伸ばすことができる。したがって、既存の送信機であっても、無給電素子を筐体の外に追加するだけで、送信機のループアンテナを含めたハードウエアを変更することなく、また、電源を必要とする機器を追加することなく、送信機の送信出力を上げることができる。
【0008】
上記無給電素子について、前記延長部は1つであり、前記開放端は1つであり、前記無給電素子は、前記開放端である第1端と、グランドに接続されるように構成された第2端と、を有してもよい。
【0009】
上記無給電素子について、前記ループアンテナの使用周波数での波長をλとすると、前記延長部は、0.10λ~0.40λの長さを有してもよい。
【0010】
上記無給電素子について、前記延長部は、前記ループ部の両側に位置する2つの延長部を含み、2つの前記延長部の各々が前記開放端を有してもよい。
【0011】
上記無給電素子について、前記ループアンテナの使用周波数での波長をλとすると、2つの前記延長部は、0.19λ~0.25λの長さを有してもよい。
【0012】
上記無給電素子について、前記延長部に並んで配置された直線状素子をさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態の送信機および無給電素子を示す斜視図である。
図2図1の送信機の内部、および無給電素子を示す端面図である。
図3図1の送信機を示す分解斜視図である。
図4図1の無給電素子および送信機を示す正面図である。
図5図1の無給電素子の延長部の長さと利得との関係を示すグラフである。
図6】第2の実施形態の送信機および無給電素子を示す斜視図である。
図7図6の無給電素子を示す正面図である。
図8図7の無給電素子の延長部の長さと利得との関係を示すグラフである。
図9】第1の実施形態の無給電素子の別例を示す斜視図である。
図10】第1の実施形態の無給電素子のもう一つの別例を示す斜視図である。
図11】直線状素子を含む、別例の無給電素子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
無給電素子の第1の実施形態について説明する。
【0015】
<送信機>
送信機は、例えば、タイヤ状態監視装置の送信機とほぼ同じ構成である。つまり、送信機は既存の送信機であるといえる。図示しないが、タイヤ状態監視装置は、車両の4つの車輪にそれぞれ装着される送信機と、車両に設置される受信機とを備えている。送信機は、車輪のホイールやタイヤに装着されている。また、送信機は、タイヤの内部空間に配置されている。
【0016】
送信機は、筐体と、タイヤ状態検出部と、基板と、送信回路と、ループアンテナと、を備えている。筐体は、タイヤ状態検出部、基板、送信回路およびループアンテナを収容している。送信機は、送信回路およびループアンテナにより、タイヤ状態検出部によって検出したタイヤの情報を含むデータ信号を受信機に無線送信する。タイヤ状態監視装置は、送信機から送信されるデータ信号を受信機で受信することで、タイヤの状態を監視する。
【0017】
タイヤ状態監視装置の送信機は、タイヤ内の水分や腐食性ガスといったタイヤ内の環境に耐え得るよう高い耐環境性能を有している。高い耐環境性能を持たせるため、送信機の筐体は密閉構造を有している。また、送信機は、車両走行中に常に遠心力を受けるホイールやタイヤに装着されるため、小型化かつ軽量化されている。送信機の小型化および軽量化のため、筐体が小型化されるとともに、ループアンテナも小型化されている。
【0018】
このように、密閉構造を有するとともに小型化された送信機は、屋外でも使用されるニーズがあり、例えば、路面温度測定システムの送信機として使用される。
【0019】
路面温度測定システムは、送信機を備える1つ以上の温度測定装置と、1つ以上の受信機と、を備える。1つ以上の温度測定装置は、屋外の道路に配置されている。温度測定装置は、道路の温度を測定するとともに、測定した温度をデータ信号として、送信機から受信機に無線送信する。路面温度測定システムに用いられる送信機は、タイヤ状態検出部の代わりに、温度センサを備えている。以下、路面温度測定システムの送信機に用いられる無給電素子に具体化して説明する。
【0020】
図1図3に示すように、送信機10は、筐体11と、基板22と、給電部23と、ループアンテナ25と、を備えている。送信機10はデータを送信するように構成されている。なお、給電部23は模式的に図示しているため、図2では詳細な図示を省略している。
【0021】
<筐体>
筐体11は、基板22、給電部23およびループアンテナ25を収容している。つまり、送信機10は、ループアンテナ25を筐体11内に備えている。
【0022】
筐体11は、筐体本体12と、筐体本体12の開口部を閉塞する平板状の蓋13とを有している。筐体本体12は、第1壁14と、第2壁15と、を備えている。第1壁14は、平板状である。第2壁15は四角筒状の周壁である。第2壁15は、第1壁14の周縁から延びている。筐体本体12と蓋13とは固定されている。この固定により、筐体11は密閉構造を有している。この密閉構造により、水分やガス等が筐体11の外部から内部に侵入することが抑制されている。このため、筐体11は高い耐環境性能を有しているといえる。筐体11は、筐体本体12の内部に樹脂が充填されることによって密閉構造を有していてもよい。この場合、筐体11は、蓋13を備えていなくてもよい。また、筐体11の表面には電気的な接続、又は信号的な接続のための外部接続端子は設けられていない。このため、筐体11は外部から内部の基板22および給電部23への接続が不可能な構造である。
【0023】
<基板>
基板22は、表面に板面22aを備えている。基板22の板面22aには給電部23、および図示しない温度センサが実装されている。給電部23は、図示しない送信回路、および制御装置を含む電子部品である。給電部23は、温度センサが検出した信号を無線信号に変調した後、使用周波数に応じた送信電力をループアンテナ25に出力する。使用周波数帯としては、例えば、LF帯、MF帯、HF帯、VHF帯、UHF帯、及び2.4GHz帯を挙げることができる。
【0024】
<ループアンテナ>
送信アンテナとしてのループアンテナ25は、導体の一例である金属線材を屈曲させることで製造されている。ループアンテナ25は、基部26と、2つの延設部27と、2つの端子接続部28とを備えている。送信機10の小型化および軽量化を目的として、ループアンテナ25は可能な限り小型化されている。
【0025】
2つの延設部27の各々は、基部26の各端部から基板22に向けて突出している。2つの端子接続部28の各々は、基部26とは反対側に位置する各延設部27の端部から互いの端子接続部28に近付くように突出している。詳細に図示しないが、ループアンテナ25の端子接続部28は給電部23と電気的に接続されている。ループアンテナ25は給電部23から給電される。
【0026】
ループアンテナ25は、筐体本体12の底に基部26が近接するとともに、延設部27が基部26の両端部から基板22に向けて突出する形状で筐体11内に収容されている。
【0027】
ループアンテナ25と基板22とは、開口領域S2を画定している。開口領域S2は、ループアンテナ25に囲まれた部分であるといえる。開口領域S2は、金属線材に沿う仮想面35に開口している。仮想面35は、開口領域S2を囲むように金属線材に沿って延びる端縁31を仮想的に延長した面である。ループアンテナ25は、ループアンテナ25で囲まれた部分に開口面36を備えている。開口面36は、基板22の板面22aに垂直である。開口面36に垂直な直線を垂線Lとする。なお、ループアンテナ25は、開口面36が板面22aに対し斜めになるように基板22に配置されていてもよい。
【0028】
<無給電素子>
無給電素子50は、筐体11の外に位置するように配置されている。無給電素子50は、送信機10に対して非接触である。無給電素子50は、筐体11の第2壁15に近接するように配置されている。無給電素子50は、第2壁15を間に挟んで、ループアンテナ25に向かい合っている。無給電素子50は、ループアンテナ25と電磁気的に結合できるようにループアンテナ25に近接している。電磁気的に結合できるとは、ループアンテナ25で生じた磁界によって、無給電素子50に誘導電流を流すことができることを示す。ループアンテナ25で生じた磁界によって、無給電素子50により多くの誘導電流を流すためには、無給電素子50は、ループアンテナ25に近い程、好ましい。
【0029】
無給電素子50は、導体の一例である金属線材製である。無給電素子50は、第1端51と第2端52とを備えている。無給電素子50の第1端51は、金属線材の一端であるとともに、無給電素子50の第2端52は、金属線材の他端である。第2端52は、グランドとしてのグランド基板70と電気的に接続されている。なお、グランド基板70は四角板状である。また、グランド基板70は、導体製である。無給電素子50の第1端51は、開放端とされている。
【0030】
図3および図4に示すように、無給電素子50は、ループ部53と、延長部61とを備えている。また、無給電素子50は、接続部54を備えていてもよい。無給電素子50は、金属線材を折り曲げて形成されている。
【0031】
<接続部>
接続部54は、ループ部53から延出している部分である。接続部54は、鉛直方向に延びている。第2端52は接続部54の先端である。接続部54は、ループ部53とグランド基板70とを接続する部分である。接続部54は、グランド基板70とループ部53との間で延びている。
【0032】
<ループ部>
ループ部53は、無給電素子50の一部分である。ループ部53は、無給電素子50のうち、ループアンテナ25と電磁気的に結合する部分である。ループ部53は、第1端51および第2端52から離れている。ループ部53は、金属線材の全体のなかで、ループ状に折り曲げられた部分である。ループ部53を一方向から見ると長四角枠状である。ループ部53が長四角枠状に見えるように無給電素子50を見ることを正面視とする。
【0033】
無給電素子50の正面視で、ループ部53は、長四角形状の領域S3を画定している。ループ部53は、軸線Mを備えている。軸線Mは、無給電素子50の正面視で領域S3の中心を通る線である。無給電素子50の正面視でループ部53が長四角枠状となるように金属線材が折り曲げられている。
【0034】
ループ部53は、第1辺部53aと、第2辺部53bと、第3辺部53cと、第4辺部53dと、第5辺部53eとを備えている。第1辺部53aは、無給電素子50の正面視で接続部54から鉛直方向に延びている。第2辺部53bは、第1辺部53aと第3辺部53cとの間で延びている。第2辺部53bは、水平方向に延びている。第3辺部53cは、第2辺部53bと第4辺部53dとの間で延びている。第3辺部53cは、鉛直方向に延びている。第4辺部53dは、第3辺部53cと第5辺部53eとの間で延びている。第4辺部53dは、水平方向に延びている。第5辺部53eは、第4辺部53dから鉛直方向に延びている。
【0035】
無給電素子50の正面視で、第1辺部53aと第3辺部53cとは平行であるとともに、第5辺部53eと第3辺部53cとは平行である。また、無給電素子50の正面視で、第2辺部53bと第4辺部53dとは平行である。
【0036】
第5辺部53eは、軸線Mの延びる方向に第1辺部53aから離れている。このため、第4辺部53dは、第3辺部53cから第5辺部53eに向かうに従い水平方向に延びつつ斜めに延びている。
【0037】
<延長部>
延長部61は、無給電素子50のうち、ループ部53および接続部54以外の部分であって、ループ部53から延びる部分である。延長部61は、第1端51とループ部53との間で鉛直方向へ真っ直ぐに延びている。このように構成された無給電素子50は、ループ部53の軸線Mと、ループアンテナ25の垂線Lとが平行となるように筐体11の外に配置されている。このため、無給電素子50の正面視では、ループ部53とループアンテナ25は重なり合って見える。
【0038】
<無給電素子の機能>
給電部23からループアンテナ25に送信電力が入力されると、ループアンテナ25から放射されたエネルギーが、無給電素子50を利用して増幅されるとともに、電波として放射される。
【0039】
<ループアンテナの利得>
ループアンテナ25では、無給電素子50を用いることで、ループアンテナ25単体の場合と比べて利得Ga[dBi]が高められている。ループアンテナ25と無給電素子50の双方を用いた場合の利得Gaを、ループアンテナ25の利得Gaとして記載する。なお、利得Ga[dBi]は、全方位に均等な感度を持つ無指向性アンテナの感度を基準としたときの最大感度方位の感度を倍数として表している。
【0040】
ループアンテナ25単体での利得Gaが-12[dBi]程度であったのに対し、ループアンテナ25の利得Gaが3~5[dBi]程度に改善されている。このため、ループアンテナ25単体の場合との差である改善効果は15~17[dB]程度になっている。
【0041】
<無給電素子の長さ>
ループアンテナ25の使用周波数での波長を「λ」とする。
【0042】
ループアンテナ25の利得Gaを高めるため、ループアンテナ25からの電波と延長部61を共振させる。延長部61を共振させるため、延長部61の長さは、0.10λ~0.40λに設定されるのが好ましい。
【0043】
図5に示すように、延長部61の長さは、0.20λ付近であると、利得Gaが最も高くなるため、特に好ましい。共振特性を考慮すると、延長部61の長さは0.25λが理想の長さである。ただし、延長部61の長さは、0.25λより若干短くなる。これは、ループ部53がインダクタンスを持って位相がずれることにより、延長部61の長さが0.25λより短くなるためである。したがって、本実施形態では、延長部61の長さは、0.25λより若干短い0.20λが特に好ましい。延長部61の長さが0.10λより短い、および0.40λより長いと、利得Gaが著しく低下するため、好ましくない。
【0044】
<無給電素子の位置>
ループアンテナ25の磁界との結合を強くするため、無給電素子50は、ループアンテナ25に近いほど、好ましい。上記したように、ループアンテナ25で生じた磁界の影響を受けてループ部53に誘導電流が流れる。この誘導電流を多く流すために、ループアンテナ25で生じた磁界が、ループ部53に強く及ぶことが好ましい。このことから、軸線Mに沿ってループアンテナ25にループ部53を可能な限り近づけるのが好ましい。ただし、無給電素子50とループアンテナ25との距離は、使用周波数および周囲環境に応じて適宜変更してもよい。
【0045】
<作用>
本実施形態の作用について説明する。
【0046】
ループアンテナ25に送信電力が供給されて、ループアンテナ25に電流が流れると、ループアンテナ25の周囲に磁界が発生するとともに電界が発生してループアンテナ25からエネルギーが放射される。筐体11の外では、ループアンテナ25の磁界と結合したループ部53に誘導電流が流れる。そして、延長部61において、第1端51付近と、その他の部位とに電位差が生じる結果、延長部61に電界が発生する。ループアンテナ25から受けたエネルギーが、電波として延長部61を利用して効率良く放射される。
【0047】
第1の実施形態の効果について説明する。
【0048】
(1-1)ループ部53を備えない延長部61だけの無給電素子50を比較例とする。この比較例と比べると、ループ部53を備える無給電素子50は、ループアンテナ25の磁界の影響を強く受けるため、ループ部53には比較例よりも大きな誘導電流が流れる。そして、ループアンテナ25から受けたエネルギーを、延長部61を利用して効率良く放射できるため、ループアンテナ25単体から、エネルギーが電波として放射される場合と比べると、送信機10からの送信出力を上げることができる。ループアンテナ25への給電量が同じなら、送信機10からの通信距離を伸ばすことができる。
【0049】
送信機10は、タイヤ状態監視装置の送信機としても使用可能な既存の送信機である。また、送信機10の筐体11は密閉構造を有するとともに、筐体11およびループアンテナ25は小型化されている。タイヤ状態監視装置の送信機として使用可能な送信機を、路面温度測定システムの送信機10として単体で使用したとき、その送信出力が足りない場合がある。この場合、筐体11の外に無給電素子50を配置するだけで、ループアンテナ25を含めたハードウエアを変更することなく、また、電源を必要とする機器を追加しなくても、送信機10の送信出力を上げることができる。
【0050】
(1-2)無給電素子50は、第1端51を開放端として有する延長部61を1つ備えている。無給電素子50の第2端52は、グランド基板70に接続されている。同じ送信出力とした場合、無給電素子50が、延長部61を2つ備える場合と比べると、無給電素子50の長さを短縮できる。
【0051】
(1-3)延長部61の長さを0.10λ~0.40λとしている。延長部61の長さを規定するため、ループアンテナ25からの電波と延長部61を共振させやすくなる。このため、ループアンテナ25単体の場合と比べて、無給電素子50を用いたループアンテナ25による利得Gaを高めることができる。
【0052】
(1-4)無給電素子50は、第1端51を開放端とする延長部61を1つ有するとともに、給電部23とは電気的に接続されていない。このような開放端を有する無給電素子50を送信機10に直接電気的に接続する場合と比べると、ループアンテナ25に対する落雷や静電気による送信回路への影響を軽減できる。
【0053】
(第2の実施形態)
無給電素子の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態の第1の実施形態との主な違いは、延長部の数と形状である。以下、その点について説明し、第1の実施形態と同じ構成については詳細な説明を割愛する。
【0054】
<無給電素子の全体>
図6および図7に示すように、無給電素子50は、ループ部53を中心とした両側で2つの開放端を有するように延長部61を2つ備えている。2つの延長部61は、ループ部53の両側に位置するように、ループ部53から互いに反対方向に延びている。一方の延長部61は、先端に第1端51を有し、他方の延長部61は、先端に第2端52を有する。2つの延長部61の各々は直線状である。
【0055】
一方の延長部61は、第1端51とループ部53との間で延びる。他方の延長部61は、第2端52とループ部53との間で延びる。2つの延長部61の長さは同じである。ループ部53は、2つの延長部61によって挟まれている。
【0056】
<ループ部>
ループ部53は、第1辺部53aと、第2辺部53bと、第3辺部53cと、第4辺部53dと、第5辺部53eとを備えている。第1辺部53aは、無給電素子50の正面視で、2つの延長部61の間に位置している。第1辺部53aは水平方向に延びている。第1辺部53aから一つの延長部61が延びている。第1辺部53aと一方の延長部61とは直線状に延びている。
【0057】
第2辺部53bは、第1辺部53aと第3辺部53cとの間で延びている。第2辺部53bは、鉛直方向に延びている。第3辺部53cは、第2辺部53bと第4辺部53dとの間で延びている。第3辺部53cは、水平方向に延びている。第4辺部53dは、第3辺部53cと第5辺部53eとの間で延びている。第4辺部53dは鉛直方向に延びている。
【0058】
第5辺部53eは、第4辺部53dから水平方向に延びている。第5辺部53eから、もう一つの延長部61が延びている。第5辺部53eと、もう一つの延長部61とは直線状に延びている。無給電素子50の正面視では、一方の延長部61と、ループ部53の第1辺部53aと、他方の延長部61とが一直線状に並んでいる。
【0059】
無給電素子50の正面視で、第1辺部53aと第3辺部53cとは平行である。無給電素子50の正面視で、第2辺部53bと第4辺部53dとは平行である。
【0060】
第1辺部53aおよび第5辺部53eは、第2壁15を挟んで、ループアンテナ25の基部26と向き合っている。第2辺部53bは、第2壁15を挟んで、一方の延設部27と向き合っているとともに、第4辺部53dは、第2壁15を挟んで、他方の延設部27と向き合っている。第3辺部53cは、第2壁15を挟んで、ループアンテナ25の2つの端子接続部28と向き合っている。無給電素子50の正面視でのループ部53の四角枠の大きさは、ループアンテナ25の四角枠の大きさとほぼ同じである。
【0061】
このように構成された無給電素子50は、ループ部53の軸線Mと、ループアンテナ25の垂線Lとが平行となるように配置されている。
【0062】
<延長部>
ループ部53から各端51,52までの長さを各延長部61の長さとする。ループアンテナ25の利得Gaを高めるため、ループアンテナ25からの電波と延長部61を共振させる。
【0063】
図8に示すように、延長部61を共振させるため、延長部61の長さは、0.19λ~0.25λが好ましい。無給電素子50は、2つの延長部61の長さの合計は、0.38λ~0.50λが好ましいといえる。
【0064】
各延長部61の長さが、0.22λ付近であると、利得Gaが最大となるため、特に好ましい。延長部61の長さが0.19λ未満および0.25λを越えると、利得Gaが著しく低くなるため、好ましくない。
【0065】
第2の実施形態では、第1の実施形態の(1-1)に記載の効果に加え、以下の効果も奏する。
【0066】
(2-1)延長部61の長さを0.19λ~0.25λとしている。このため、延長部61をループアンテナ25からの電波と共振させやすくなる。よって、ループアンテナ25単体の場合と比べて、無給電素子50を用いたループアンテナ25による利得Gaを高めることができる。
【0067】
(2-2)無給電素子50は、第1端51を開放端とする延長部61と、第2端52を開放端とする延長部61とを有する。このような開放端を有する無給電素子50を送信機10に直接電気的に接続する場合と比べると、ループアンテナ25に対する落雷や静電気による送信回路への影響を軽減できる。
【0068】
上記の各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記の各実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0069】
図9に示すように、第1の実施形態において、延長部61は、第1直線部63と、第2直線部64とを備えるように折り曲げられていてもよい。第1直線部63は、無給電素子50の正面視で、ループ部53と第2直線部64との間で延びている。第1直線部63は、鉛直方向に延びている。第1直線部63は、ループ部53の第5辺部53eと第2直線部64との間で延びている。
【0070】
第2直線部64は、第1直線部63から真っ直ぐに延びている。第2直線部64は、水平方向に延びている。第1端51は、第2直線部64の先端である。したがって、延長部61は、第1端51を開放端として有する。無給電素子50は、1つの開放端を有するように延長部61を1つ備えているといえる。
【0071】
この場合、第1直線部63および第2直線部64の長さを異ならせてもよい。第1の実施形態と異なり、延長部61を折り曲げることで、使用周波数に対する共振特性が若干ずれたり、利得Gaが変化するが、延長部61が一直線状の場合と比べると、無給電素子50を小型化できる。
【0072】
・延長部61の形状は、第1の実施形態および第2の実施形態に開示した形状以外にも、所謂、メアンダラインといわれるようなジグザグ状であったり、螺旋状であったり適宜変更してもよい。また、延長部61の形状は、送信機10の周囲の空間や、送信機10の周囲での物品の配置に応じて適宜変更してもよい。さらに、延長部61の形状は、送信機10の筐体11の表面に沿うように変更してもよい。
【0073】
図10に示すように、延長部61は、第1直線部63と、第2直線部64と、第3直線部65と、第4直線部66と、を備えていてもよい。第1直線部63は、無給電素子50の正面視で、ループ部53と第2直線部64との間で延びている。第1直線部63は、鉛直方向に延びている。第1直線部63は、ループ部53の第5辺部53eと第2直線部64との間で延びている。
【0074】
第2直線部64は、第1直線部63と第3直線部65との間で延びている。第2直線部64は、水平方向に延びている。第3直線部65は、第2直線部64と第4直線部66との間で延びている。第3直線部65は、水平方向に延びている。第4直線部66は、第3直線部65から延びている。第4直線部66は、水平方向に延びている。
【0075】
第2直線部64と第4直線部66は平行である。第1端51は、第4直線部66の先端である。したがって、延長部61は、第1端51を開放端として有する。無給電素子50は、1つの開放端を有するように延長部61を1つ備えているといえる。
【0076】
本実施形態では、延長部61を小型化するために、第1直線部63、第2直線部64、第3直線部65、および第4直線部66を有するように折り曲げている。延長部61を折り曲げるにあたり、利得Gaが低下しないように、各直線部63~66の長さを調整するのが好ましい。
【0077】
図11に示すように、第2の実施形態の無給電素子50と、直線状素子90とを含んで、無給電素子91としてもよい。直線状素子90は、金属線材製である。直線状素子90は直線状である。直線状素子90は、無給電素子50の2つの延長部61の各々に対し平行となるように、軸線Mの延びる方向に沿って延長部61に並んで配置されている。
【0078】
直線状素子90の長さは、改善効果[dB]を高めるため、0.50λ前後が好ましく、0.50λより若干短いのが特に好ましい。
【0079】
直線状素子90は、ループアンテナ25の開口面36に平行に配置される。直線状素子90は、ループアンテナ25から0.10λ付近離れた位置に配置されるのが好ましい。
【0080】
このように構成すると、直線状素子90を、無給電素子50から放射されたエネルギーを引き出す導波器として機能させることができる。このため、直線状素子90を含む無給電素子91では、ループアンテナ25に近接した無給電素子50から放射された電波の指向性を直線状素子90によって高めることができる。その結果として、ループアンテナ25単体の場合と比べて、無給電素子91を用いたループアンテナ25による利得Gaを高めることができる。
【0081】
なお、直線状素子90は、無給電素子50の2つの延長部61の各々に対し平行とならずに、若干傾くように配置されていてもよい。なお、直線状素子90は、金属線や金属板を用いた金属加工品によって形成されていてもよいし、プリント基板やフレキシブル基板上に設けた導体パターンによって形成されていてもよい。又は、直線状素子90は、単線および撚り線を含むリード線によって形成されていてもよいし、導電性樹脂又は導電性ゴム材料で形成されていてもよい。
【0082】
・第1の実施形態の無給電素子50と、直線状素子90とを含んで、無給電素子91としてもよい。この場合、直線状素子90は、無給電素子50の延長部61に対し平行となるように、鉛直方向に延びるように配置される。
【0083】
図9に示す無給電素子50と、直線状素子90とを含んで、無給電素子91としてもよい。この場合、直線状素子90は、延長部61の第2直線部64と平行となるように、延長部61に並んで配置されるのが好ましい。
【0084】
・ループ部53の四角枠の大きさは、ループアンテナ25の四角枠の大きさより小さくてもよいし、大きくてもよい。つまり、無給電素子50の正面視において、ループ部53とループアンテナ25は重なり合っていなくてもよい。
【0085】
又は、ループ部53の第1辺部53a~第5辺部53eの少なくとも一つが、ループアンテナ25と重なり合っていてもよい。
【0086】
・ループアンテナ25および無給電素子50を導体としての金属線材で形成したが、これに限らない。ループアンテナ25および無給電素子50は導体であれば、材質の限定はない。ループアンテナ25および無給電素子50は、金属線や金属板を用いた金属加工品によって形成されていてもよいし、プリント基板やフレキシブル基板上に設けた導体パターンによって形成されていてもよい。又は、ループアンテナ25および無給電素子50は、単線および撚り線を含むリード線によって形成されていてもよいし、導電性樹脂又は導電性ゴム材料で形成されていてもよい。さらに、ループアンテナ25および無給電素子50は、樹脂又はセラミック製の筐体11に対するメッキや導電性塗料によるパターンによって形成されていてもよい。
【0087】
・送信機10の基板22に設けられる電子部品は、圧力センサなど、どのような電子部品でもよい。
【0088】
・送信機10は、路面温度測定システム以外のシステムの送信機として用いられてもよい。
【0089】
・ループアンテナ25は、一つの長方形状の板バネを屈曲させることで製造されていてもよい。この場合は、ループアンテナ25は、導体の一例であるステンレス製である。この場合も、ループアンテナ25は、基部26と、2つの延設部27と、2つの端子接続部28とを備えている。基部26、延設部27、および端子接続部28の各々は長板状である。
【符号の説明】
【0090】
10…送信機、11…筐体、25…ループアンテナ、50,91…無給電素子、51…開放端としての第1端、52…開放端としての第2端、53…ループ部、61…延長部、90…直線状素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11