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特許7607153カム機構、カム機構の製造方法、カムシャフトの製造方法、NC円テーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】カム機構、カム機構の製造方法、カムシャフトの製造方法、NC円テーブル
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/06 20060101AFI20241219BHJP
   B23Q 1/58 20060101ALI20241219BHJP
   B23Q 16/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F16H25/06 Z
B23Q1/58 Z
B23Q16/02 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023578638
(86)(22)【出願日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2023003543
(87)【国際公開番号】W WO2023149540
(87)【国際公開日】2023-08-10
【審査請求日】2024-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2022017314
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 哲也
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-021262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/06
B23Q 1/58
B23Q 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、ローラギヤと、カムシャフトを備える、カム機構であって、
前記ローラギヤ及び前記カムシャフトは、前記ベースに回転可能に支持されており、
前記ローラギヤは、タレットと、その外周に取り付けられた複数のカムフォロアを備え、
前記カムシャフトは、第1及び第2テーパリブを有するテーパリブと、シャフト部を備え、
前記第1及び第2テーパリブは、それぞれ、前記カムフォロアに係合されており、
前記第1及び第2テーパリブが前記カムフォロアに押し付けられる予圧の調整の際には、前記第1及び第2テーパリブは、前記シャフト部の回転軸周りを相対回転可能に構成され、
前記予圧の調整後には、前記第2テーパリブを前記シャフト部に対して固定し且つ前記第1及び第2テーパリブを相対回転不能にできるように構成され、
前記カムシャフトは、第1及び第2カムシャフト部材と、締結部材と、軸移動阻止部材とを備え、
前記第1カムシャフト部材は、前記シャフト部と前記第1テーパリブが一体に形成された部材であり、
前記第2カムシャフト部材は、前記第2テーパリブと貫通孔を備える部材であり、
前記シャフト部が前記貫通孔に挿入されることによって前記第1及び第2カムシャフト部材が前記シャフト部の回転軸周りを相対回転可能に連結され、
前記締結部材は、前記シャフト部と前記第2カムシャフト部材の締結とその解除を切り替え可能に構成され、
前記軸移動阻止部材は、前記第1及び第2テーパリブを互いに当接させた状態で、前記第1及び第2テーパリブが互いに軸方向に移動することを阻止可能に構成され、
前記締結部材は、前記第2カムシャフト部材と前記軸移動阻止部材の間に配置される、カム機構。
【請求項2】
請求項1に記載のカム機構であって、
前記カムシャフトの一端は、ホルダに回転可能に支持されており、
前記ホルダは、前記カムシャフトの軸方向の位置を調整可能に前記ベースに固定されている、カム機構。
【請求項3】
請求項1に記載のカム機構の製造方法であって、
係合工程と、予圧調整工程を備え、
前記係合工程では、前記第1及び第2テーパリブと前記カムフォロアを係合させた係合状態とし、
前記予圧調整工程では、前記係合状態で前記第1及び第2テーパリブを相対回転させる際のトルクに基づいて、前記予圧を調整する、方法。
【請求項4】
カムシャフトの製造方法であって、
準備工程と、組み合わせ工程と、テーパリブ形成工程を備え、
前記準備工程では、シャフト部と第1テーパリブ形成部を有する第1カムシャフト部材と、貫通孔と第2テーパリブ形成部を有する第2カムシャフト部材を準備し、
前記組み合わせ工程では、前記シャフト部を前記貫通孔に挿入することによって、第1及び第2テーパリブ形成部が互いに接触するように前記第1及び第2カムシャフト部材を組み合わせ、
前記テーパリブ形成工程では、前記第1及び第2テーパリブ形成部が互いに接触した状態で前記第1及び第2テーパリブ形成部に第1及び第2テーパリブを連続的に形成
前記シャフト部に、前記第2カムシャフト部材、締結部材、及び軸移動阻止部材がこの順で取り付けられ、
前記締結部材は、前記シャフト部と前記第2カムシャフト部材の締結とその解除を切り替え可能に構成され、
前記軸移動阻止部材は、前記第1及び第2テーパリブを互いに当接させた状態で、前記第1及び第2テーパリブが互いに軸方向に移動することを阻止可能に構成される、方法。
【請求項5】
モータと、カム機構と、回転テーブルを備える、NC円テーブルであって、
前記カム機構は、請求項1又は請求項に記載のカム機構であり、
前記モータは、前記カムシャフトを回転駆動可能に構成され、
前記回転テーブルは、前記タレットの回転に伴って回転可能に構成されている、NC円テーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カム機構、カム機構の製造方法、カムシャフトの製造方法、及びNC円テーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1等に開示されているような、ローラギヤカム機構はバックラッシが無く、転がり接触のため高効率であることが知られており、工作機械で使用されるNC円テーブルなどで採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-224548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ローラギヤカム機構では、カムシャフト(特許文献1のローラギヤカム)のテーパリブをカムフォロアに対して適正荷重で予め押し付けておくこと(つまり、予圧しておくこと)によって、バックラッシを無くしている。ローラギヤカム機構を適切に動作させるためには、予圧を適正に設定することが重要である。
【0005】
予圧の調整は、一例では、カムシャフトの中心軸を移動させることによって行うことが考えられる。しかし、この方法で予圧を調整すると、カムシャフトの中心軸が理論上の位置から外れたところに配置されてしまうために、カムシャフト1回転中のタレット回転動作に僅かな回転ムラ(ゆらぎ)が発生しまい、その回転ムラにより、ローラギヤカム機構をNC円テーブル等で使用した際に割出精度が悪化する要因となっている。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、カムシャフトの中心軸を移動させることなく、予圧を調整可能な、カム機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]ベースと、ローラギヤと、カムシャフトを備える、カム機構であって、前記ローラギヤ及び前記カムシャフトは、前記ベースに回転可能に支持されており、前記ローラギヤは、タレットと、その外周に取り付けられた複数のカムフォロアを備え、前記カムシャフトは、第1及び第2テーパリブを有するテーパリブと、シャフト部を備え、第1及び第2テーパリブは、それぞれ、前記カムフォロアに係合されており、第1及び第2テーパリブが前記カムフォロアに押し付けられる予圧の調整の際には、第1及び第2テーパリブは、前記シャフト部の回転軸周りを相対回転可能に構成され、前記予圧の調整後には、第2テーパリブを前記シャフト部に対して固定し且つ第1及び第2テーパリブを相対回転不能にできるように構成される、カム機構。
[2][1]に記載のカム機構であって、前記カムシャフトは、第1及び第2カムシャフト部材と、締結部材を備え、第1カムシャフト部材は、前記シャフト部と第1テーパリブが一体に形成された部材であり、第2カムシャフト部材は、第2テーパリブと貫通孔を備える部材であり、前記シャフト部が前記貫通孔に挿入されることによって第1及び第2カムシャフト部材が前記シャフト部の回転軸周りを相対回転可能に連結され、前記締結部材は、前記シャフト部と第2カムシャフト部材の締結とその解除を切り替え可能に構成されている、カム機構。
[3][1]又は[2]に記載のカム機構であって、前記カムシャフトは、軸移動阻止部材を備え、前記軸移動阻止部材は、第1及び第2テーパリブを互いに当接させた状態で、第1及び第2テーパリブが互いに軸方向に移動することを阻止可能に構成される、カム機構。
[4][1]~[3]の何れか1つに記載のカム機構であって、前記カムシャフトの一端は、ホルダに回転可能に支持されており、前記ホルダは、前記カムシャフトの軸方向の位置を調整可能に前記ベースに固定されている、カム機構。
[5][1]~[4]の何れか1つに記載のカム機構の製造方法であって、係合工程と、予圧調整工程を備え、前記係合工程では、第1及び第2テーパリブと前記カムフォロアを係合させた係合状態とし、前記予圧調整工程では、前記係合状態で第1及び第2テーパリブを相対回転させる際のトルクに基づいて、前記予圧を調整する、方法。
[6]カムシャフトの製造方法であって、準備工程と、組み合わせ工程と、テーパリブ形成工程を備え、前記準備工程では、シャフト部と第1テーパリブ形成部を有する第1カムシャフト部材と、貫通孔と第2テーパリブ形成部を有する第2カムシャフト部材を準備し、前記組み合わせ工程では、前記シャフト部を前記貫通孔に挿入することによって、第1及び第2テーパリブ形成部が互いに接触するように第1及び第2カムシャフト部材を組み合わせ、前記テーパリブ形成工程では、第1及び第2テーパリブ形成部が互いに接触した状態で第1及び第2テーパリブ形成部に第1及び第2テーパリブを連続的に形成する、方法。
[7]モータと、カム機構と、回転テーブルを備える、NC円テーブルであって、前記カム機構は、[1]~[4]の何れか1つに記載のカム機構であり、前記モータは、前記カムシャフトを回転駆動可能に構成され、前記回転テーブルは、前記タレットの回転に伴って回転可能に構成されている、NC円テーブル。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカム機構では、カムシャフトが第1及び第2テーパリブを備えており、第1及び第2テーパリブをシャフト部の回転軸周りを相対回転させることによって予圧を調整することができる。このように、本発明のカム機構では、カムシャフトの中心軸を移動させることなく、予圧を調整することができるので、カムシャフトの中心軸が理論上の位置からずれることによって生じる問題の発生を抑制することができる。また、第1及び第2テーパリブを相対回転させる際のトルクが予圧荷重に相関するので、このトルクを管理することで予圧荷重を管理することで可能になる。このため、予圧荷重の管理にかかる手間を低減させることができる。また、予圧調整後には、第2テーパリブを前記シャフト部に対して固定し且つ第1及び第2テーパリブを相対回転不能にできるように構成されるので、予圧調整後には、第1及び第2テーパリブが相対回転せず、適正な予圧を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のNC円テーブル1の斜視図である。
図2図2Aは、図1のNC円テーブル1の正面図である。図2Bは、図2Aからモータケース5を外した上でベース6及びその内部の部材をシャフト部8bの中心を通り紙面に平行な面で切断した断面を示す図である。
図3図2B中の領域Aの拡大図である。
図4図3中の領域Bの拡大図である。
図5図3中のA-A断面図である。第2テーパリブ8a2は簡略表示している。
図6】カムシャフト8の製造方法を説明するための正面図であり、図6Aは、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2を形成する前の第1及び第2カムシャフト部材81,82が分離されている状態、図6Bは、図6Aの状態から第1及び第2カムシャフト部材81,82が組み合わされた後の状態、図6Cは、図6Bの状態から第1及び第2テーパリブ8a1,8a2を形成した後の状態、図6Dは、図6Cの状態から第1及び第2カムシャフト部材81,82を分離した後の状態を示す。
図7図7Aは、図3中のカムシャフト8とホルダ17を抜き出して互いに分離させた状態を示し、図7Bは、図7Aの状態からカムシャフト8とホルダ17を固定ナット20で連結した後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0011】
1.NC円テーブル1及びカム機構3の構成
図1図7に示すように、本発明の一実施形態のNC円テーブル1は、モータ2と、カム機構3と、回転テーブル4を備える。モータ2は、モータケース5で覆われている。
【0012】
図2図3及び図5に示すように、モータ2のモータ軸2aの回転が、カム機構3を介して回転テーブル4に伝達されて、回転テーブル4が回転制御される。回転テーブル4には、不図示のワークが取り付け可能であり、ワークを取り付けた状態で回転テーブル4が回転制御されることで、ワークが所望の加工姿勢に制御される。このため、NC工作機械の工具をワークに対して所望の角度で当てることができ、NC工作機械による加工時間の短縮及び作業効率の向上に寄与する。
【0013】
図3図4に示すように、カム機構3は、ベース6と、ローラギヤ7と、カムシャフト8を備える。ローラギヤ7及びカムシャフト8は、ベース6に回転可能に支持されている。ローラギヤ7の回転軸は、図3の紙面垂直方向に延び、カムシャフト8の回転軸は、図3の左右方向に延びる。従って、ローラギヤ7の回転軸は、カムシャフト8の回転軸の垂直方向に延びる。カム機構3は、カムシャフト8の回転運動をローラギヤ7の回転運動に変換する機構であり、ローラギヤカム機構とも称することができる。
【0014】
図3に示すように、ローラギヤ7は、タレット7aと、その外周に取り付けられた複数のカムフォロア7bを備える。カムフォロア7bは、放射状に等間隔に配置されることが好ましい。カムフォロア7bは、回転可能であり、その回転軸の方向は、タレット7aの回転中心Cから各カムフォロア7bに向かう直線の方向と一致することが好ましい。従って、各カムフォロア7bの回転軸は、タレット7aの回転軸に対して垂直に延びることが好ましい。
【0015】
図5に示すように、タレット7aは、ベアリング11によって回転可能に支持されており、タレット7aの前面側には、回転テーブル4が固定されている。このため、タレット7aの回転に伴って回転テーブル4が同心で回転する。ベース6の前面側(図5の右側)には、ベアリング11を覆うように固定外輪部12が設けられている。固定外輪部12がベース6に固定されることによってベアリング11がベース6に固定されるようになっている。ベアリング11は、好ましくは、クロスローラベアリングである。なお、ベアリング11がボルト固定穴を有する場合、固定外輪部12を用いずにベアリング11をベース6に固定してもよい。
【0016】
ベース6の背面側(図5の左側)には、リアプレート13が設けられている。リアプレート13を取り外すことによって、ベース6の背面側に設けた開口部6eを通じて、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2とカムフォロア7bの係合状態の確認等を行うことができる。
【0017】
図4に示すように、カムシャフト8は、テーパリブ8aと、シャフト部8bを備える。テーパリブ8aは、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2を備える。第1及び第2テーパリブ8a1,8a2は、それぞれ、別々のカムフォロア7bに係合されている。テーパリブ8aは、カムシャフト8の回転に伴ってカムシャフト8の軸方向に位相が変位するように構成されており、カムシャフト8の回転に伴ってテーパリブ8aにカムフォロア7bが順次係合することよって、カムシャフト8の回転がローラギヤ7に伝達する。第1及び第2テーパリブ8a1,8a2は、テーパリブ8aが分割されて構成されており、予圧の調整の際には、シャフト部8bの回転軸周りを相対回転可能に構成されている。この際、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2は、同軸で相対回転する。
【0018】
カムシャフト8の回転に伴ってテーパリブ8aがカムフォロア7bを押圧することによってローラギヤ7が回転する。テーパリブ8aとカムフォロア7bの間にバックラッシがあると、位置決め速度や精度が低くなるため、テーパリブ8aをカムフォロア7bに対して適正荷重で予め押し付け(つまり、予圧して)バックラッシを無くすことが好ましい。
【0019】
特許文献1のように、テーパリブ8aが分割されていない場合、一例では、カムシャフト8全体をカムフォロア7bに近づけることによって、予圧の調整を行うことができる。この場合、鉛直面とカムフォロア7bの側面の間の角度をθ(図4に図示)とし、カムシャフト8をカムフォロア7bに押し付ける力(図4の紙面上方向の力)をFとすると、力Fによって発生する予圧荷重Pは、Fsinθとなり、θに依存した値となる。このため、カムフォロア7bの周方向の位置に応じて予圧の大きさが変化してしまう。また、カムシャフト8全体をカムフォロア7bに近づけると、カムシャフト8の中心軸が理論上の位置から外れたところに配置されてしまう。このため、カムシャフト8の1回転中のタレット7aの回転動作に僅かな回転ムラ(ゆらぎ)が発生しまい、その回転ムラにより、ローラギヤカム機構をNC円テーブル等で使用した際に割出精度が悪化する要因となっている。
【0020】
これに対して、本実施形態のように、テーパリブ8aが分割されている場合、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2がカムフォロア7bに係合されている状態で、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2を相対回転させて、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2の間の角度位相をずらすことによって、予圧を調整することができる。このように、カムシャフト8の中心軸を移動させることなく、予圧を調整することができるので、カムシャフト8の中心軸が理論上の位置からずれることによって生じる問題の発生を抑制することができる。また、カムシャフト8を理論上の位置に設置することで、カムシャフト8の1回転当たりにおけるテーパリブ8aとカムフォロア7bとの接触を均一且つ正確にすることができる。さらに、カムフォロア7bの接触を均一且つ正確にすることで、予圧を一定にすることができる。さらに、カムフォロア7bにかかる予圧を一定にすることで、カムフォロア7bの寿命を延ばすことができるか、または、外部からの負荷を大きくすることができる。さらに、カムフォロア7bがテーパリブ8aと噛み合う時に衝突音及び振動が発生するが、それらを低減することができる。
【0021】
また、テーパリブ8aは、カムシャフト8の回転に伴ってタレット7aの周方向に均一に変位するように形成されている。このため、図4に示すように、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2の相対回転によって各カムフォロア7bにかかる荷重(矢印Pで図示)は、タレット7aの周方向(つまり、タレット7aの回転中心Cを中心とする回転の周方向)についてのカムフォロア7bの位置に関わらず一定となる。
【0022】
また、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2を相対回転させる際のトルクが予圧荷重に相関するので、このトルクを管理することで予圧荷重を管理することが可能になるので、予圧荷重の管理にかかる手間を低減させることができる。トルクの管理は、トルクレンチのようなトルク管理可能な工具を用いて行うことができる。また、予圧調整後には、第2テーパリブ8a2をシャフト部8bに対して固定し且つ第1及び第2テーパリブ8a1,8a2を相対回転不能にできるように構成されているので、予圧調整後には、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2が相対回転せず、適正な予圧を維持することができる。
【0023】
図4に示すように、カムシャフト8は、第1及び第2カムシャフト部材81,82と、締結部材83備えることが好ましい。第1カムシャフト部材81は、シャフト部8bと第1テーパリブ8a1が一体に形成された部材である。第2カムシャフト部材82は、第2テーパリブ8a2と貫通孔82aを備える部材である。シャフト部8bが貫通孔82aに挿入されることによって第1及び第2カムシャフト部材81,82が相対回転可能に連結される。シャフト部8bの外周面は、貫通孔82aの内周面の少なくとも一部を案内しており、シャフト部8bを貫通孔82a内に配置することによって、第1及び第2カムシャフト部材81,82が同軸上に位置決め可能になっている。
【0024】
第1及び第2テーパリブ8a1,8a2を相対回転させる際には、第2カムシャフト部材82の回転を阻止した状態で、第1カムシャフト部材81を回転させることが好ましい。好ましくは、第2カムシャフト部材82には、キリ穴82cが設けられており、図3に示すように、ベース6には、キリ穴82cに隣接した(好ましくは対向した)位置に開口部6aが設けられており、開口部6aを通じて、キリ穴82cにピンなどの固定治具を差し込むことによって、第2カムシャフト部材82の回転を阻止することができる。開口部6aは、好ましくは、ベース6の底面に設けられる。第1カムシャフト部材81は、例えば、図3に示すように端面に六角穴81aを設け、六角棒スパナを六角穴81aに差し込んで回転させたり、スパナに係合可能な二面を設け、これらの二面をスパナに係合させて回転させたりすることができる。第1カムシャフト部材81は、好ましくは、ベース6の側面に設けた開口部6cを通じて、ベース6内に工具を挿入して回転させることができる。
【0025】
図4に示すように、締結部材83は、シャフト部8bと第2カムシャフト部材82の締結とその解除を切り替え可能に構成されている。締結部材83が締結を解除した状態では、第1及び第2カムシャフト部材81,82が相対回転可能であり、この状態で、上述した方法によって、予圧を調整することができる。予圧の調整後は、締結部材83がシャフト部8bと第2カムシャフト部材82を締結すると、第1及び第2カムシャフト部材81,82が相対回転不能となり、調整済みの適正な予圧が維持される。
【0026】
締結部材83は、互いに連結されたフランジ83aとスリーブ83bを備えることが好ましい。スリーブ83bは、シャフト部8bの外周面と貫通孔82aの内周面の間に設けられたスリーブ配置空間82bに配置される。スリーブ配置空間82bは、好ましくは、貫通孔82aの内面に形成した凹部によって構成される。スリーブ83bの内周面がシャフト部8bの外周面によって案内される。スリーブ83bがスリーブ配置空間82bに配置された状態で、フランジ83aに設けた操作部83c(図2Aに図示)を操作してスリーブ83bを変位又は変形させることによって、締結部材83による締結及びその解除が実現される。操作部83cは、好ましくは、ベース6に設けた調整用穴6dを通じて操作することができる。調整用穴6dは、好ましくは、ベース6の正面側に設けられる。
【0027】
フランジ83aは、径方向外側に張り出した部位であり、操作部83cは、フランジ83aに設けられることが好ましい。また、図4に示すように、フランジ83aの側面が、第2カムシャフト部材82の端面に当接することが好ましい。
【0028】
一例では、締結部材83はハイドロ式であり、操作部83cの操作によってスリーブ83b内に封入された圧力媒体(例:油)を加圧することによってスリーブ83bを拡張させることによって、締結部材83を締結状態にすることができる。圧力媒体の加圧を解除することによって、締結部材83を締結解除状態にすることができる。操作部83cは、一例では、ボルトを備える構成であり、ボルトの回転によって締結部材83の締結及びその解除を切り替えることができる。
【0029】
別の例では、締結部材83は機械式であり、例えばシュパンリングのように、楔の作用によって締結及びその解除を実現するものが挙げられる。
【0030】
カムシャフト8は、軸移動阻止部材84を備えることが好ましい。軸移動阻止部材84は、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2を互いに当接させた状態で、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2が互いに軸方向に移動することを阻止可能に構成される。第1及び第2テーパリブ8a1,8a2を相対回転させる際に第1及び第2テーパリブ8a1,8a2が軸方向に相対移動可能な状態になっていると、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2が互いに離れる方向に相対移動して、両者の間に隙間が形成されてしまう虞がある。本実施形態では、軸移動阻止部材84を設けることによって、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2を相対回転させる際に第1及び第2テーパリブ8a1,8a2の間に隙間が形成されることを阻止することができる。
【0031】
締結部材83は、第2カムシャフト部材82と軸移動阻止部材84の間に配置されることが好ましい。軸移動阻止部材84は、僅かな荷重で締結部材83を押して第1及び第2カムシャフト部材81,82を互いに接触させた状態で、第1及び第2カムシャフト部材81,82の軸方向の相対回転を阻止することが好ましい。
【0032】
好ましくは、シャフト部8bは、雄ねじ部8b2を備え、軸移動阻止部材84は、雄ねじ部8b2に螺合可能なロックナット84aである。ロックナット84aを回転させることによって、ロックナット84aを適正な位置に配置し、その状態でロックナット84aの外周面に設けたネジ穴84a1に止めネジ21を螺合させ、止めネジ21の先端に配置した銅合金のブッシュ21aを変形させ、雄ねじ部8b2との隙間を潰すことによって、ロックナット84aを回転不能にしてシャフト部8bに固定することができる。
【0033】
締結部材83とロックナット84aの間にスペーサ85が配置されることが好ましい。雄ねじ部8b2を設ける場所に制約がある場合には、ロックナット84aを十分に締結部材83に近づけられない場合があるが、その場合、スペーサ85を設けることによって、ロックナット84aからの圧力を締結部材83に伝達することができる。
【0034】
図7Aに示すように、カムシャフト8は、一端8c1及び他端8c2を備える。一端8c1及び他端8c2の間にテーパリブ8aが配置される。図3に示すように、他端8c2側は、好ましくはベアリング14を介して、ベース6に回転可能に支持されることが好ましい。他端8c2側は、カップリング15を介して、モータ軸2aに連結されることが好ましい。これによって、モータ軸2aの回転に伴ってカムシャフト8が回転する。
【0035】
図7Aに示すように、一端8c1側は、好ましくはベアリング16を介して、ホルダ17に回転可能に支持されることが好ましい。図3に示すように、ホルダ17は、ベース6に固定される。従って、一端8c1側は、ホルダ17を介して、ベース6に回転可能に支持される。ホルダ17は、カムシャフト8の軸方向の位置を調整可能にベース6に固定されていることが好ましい。このような構成によれば、カムシャフト8の軸方向の位置を調整が容易になるので、カム機構3のアセンブリにかかる労力が低減される。また、この場合、カムシャフト8は、その軸方向のみに移動させることができるので、ローラギヤカム機構の理論位置へカムシャフト8を配置することが容易である。
【0036】
図7Aに示すように、シャフト部8bの一端8c1側には、ベアリング16によって支持される支持部8b3と、雄ねじ部8b1が設けられることが好ましい。支持部8b3は、雄ねじ部8b1とテーパリブ8aの間に配置される。支持部8b3がベアリング16で支持された状態で、図7Bに示すように固定ナット20を雄ねじ部8b1に螺合させることによって、カムシャフト8をホルダ17に固定することができる。固定ナット20は、ネジ穴20aにボルトを挿入して締め付けることによって緩みの発生を抑制することができる。
【0037】
図3に示すように、ベース6の側面には、サイドプレート19が設けられている。サイドプレート19を取り外すことによって、開口部6cを通じて、ベース6内にカムシャフト8及びホルダ17を挿入することができる。
【0038】
2.カムシャフト8の製造方法
ローラギヤカム機構では、タレット回転動作の回転ムラを低減するために、テーパリブ8aを精度良く形成することが極めて重要であるが、本実施形態では、テーパリブ8aが第1及び第2テーパリブ8a1,8a2に分割されているため、テーパリブ8aを精度良く形成することが容易ではない。
【0039】
そのため、以下、テーパリブ8aを精度良く形成することが可能な、カムシャフト8の製造方法について説明する。
【0040】
本発明の一実施形態のカムシャフト8の製造方法は、準備工程と、組み合わせ工程と、テーパリブ形成工程を備える。
【0041】
準備工程では、図6Aに示すように、シャフト部8bと第1テーパリブ形成部81bを有する第1カムシャフト部材81と、貫通孔82aと第2テーパリブ形成部82dを有する第2カムシャフト部材82を準備する。
【0042】
次に、組み合わせ工程では、図6Bに示すように、シャフト部8bを貫通孔82a内に配置することによって、第1及び第2テーパリブ形成部81b,82dが互いに接触するように第1及び第2カムシャフト部材81,82を組み合わせる。この際に、第1及び第2カムシャフト部材81,82が相対回転しないように固定することが好ましい。第1及び第2カムシャフト部材81,82は、締結部材83を締結状態にすることによって相対回転不能としてもよく、別途設けた治具を用いて相対回転不能としてもよい。
【0043】
次に、テーパリブ形成工程では、図6B図6Cに示すように、第1及び第2テーパリブ形成部81b,82dが互いに接触した状態で第1及び第2テーパリブ形成部81b,82dに第1及び第2テーパリブ8a1,8a2を連続的に形成する。このように、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2を別々に形成するのではなく、連続的に形成することによって、テーパリブ8aを精度良く形成することができる。
【0044】
第1及び第2テーパリブ8a1,8a2は、切削などの方法によって形成することができる。第1及び第2カムシャフト部材81,82の間には切り屑が侵入している虞があるので、第1及び第2カムシャフト部材81,82を分離して洗浄することが好ましい。
【0045】
一方、第1及び第2カムシャフト部材81,82を分離すると、再度、組み立てたときに、第1及び第2カムシャフト部材81,82を周方向に位置合わせすることが容易ではない場合がある。そこで、本方法の分離工程では、図6C図6Dに示すように、第1及び第2カムシャフト部材81,82を周方向に互いに位置合わせ可能にする目印18をつけた状態で、第1及び第2カムシャフト部材81,82を互いに分離することが好ましい。目印18は、第1及び第2カムシャフト部材81,82にまたがって形成される合いマーク18aであることが好ましい。
【0046】
3.カム機構3の製造方法
次に、カム機構3の製造方法について説明する。本発明の一実施形態のカム機構3の製造方法は、係合工程と、予圧調整工程を備える。
【0047】
係合工程では、図3図4に示すように、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2とカムフォロア7bを係合させた係合状態とする。次に、予圧調整工程では、上記係合状態で第1及び第2テーパリブ8a1,8a2を相対回転させる際のトルクに基づいて、予圧を調整する。このような方法によれば、トルクレンチのようなトルク管理可能な工具を用いて、予圧を調整することができるので、調整作業の手間を低減することができる。
【0048】
4.NC円テーブル1及びカム機構3の詳細な製造方法
NC円テーブル1及びカム機構3は、より詳しくは、以下の手順で製造することができる。
【0049】
(1)ユニット組み立て工程
ユニット組み立て工程では、ベース6外において、カムシャフト8とホルダ17が連結されたカムシャフトユニット22の組み立てを行う。この工程は、好ましくは、以下の手順で行うことができる。
【0050】
まず、図7Aに示すように、第1カムシャフト部材81のシャフト部8bの他端8c2側に、第2カムシャフト部材82、締結部材83、スペーサ85、軸移動阻止部材84をこの順で取り付ける。スペーサ85は不要な場合は省略可能である。
【0051】
次に、軸移動阻止部材84で第2カムシャフト部材82を押して、第1及び第2カムシャフト部材81,82の端面を密着させ、その状態で、軸移動阻止部材84をシャフト部8bに固定する。
【0052】
次に、締結部材83を締結解除状態とした上で第1及び第2テーパリブ8a1,8a2の位相が一致するように第1及び第2カムシャフト部材81,82を位置合わせし、その状態で締結部材83を締結状態とする。
【0053】
次に、ホルダ17をシャフト部8bの一端8c1側に取り付け、固定ナット20を雄ねじ部8b1に螺合させた後、ネジ穴20aに挿入したボルトを締め付けて固定ナット20を固定する。ホルダ17には、潤滑油漏れ対策のシールキャップ23を装着してもよい。
【0054】
以上の工程でカムシャフト8とホルダ17が連結されたカムシャフトユニット22が組み立てられる。
【0055】
(2)係合工程
係合工程では、カムシャフトユニット22及びローラギヤ7をベース6に装着して、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2とカムフォロア7bを係合させた係合状態とする。この工程は、好ましくは、以下の手順で行うことができる。
【0056】
まず、図3及び図5に示すように、ベース6にベアリング14を装着する。次に、開口部6cを通じてカムシャフトユニット22をベース6内に挿入し、他端8c2側をベアリング14で支持すると共に、ホルダ17をベース6に固定する。ホルダ17には固定用ボルト17aと調整用ストッパボルト17bが設けて有り、ストッパボルト17bの突出し量を調整することで、ホルダ17の位置を調整する。ホルダ17は、カムシャフト8の軸方向の位置のみが調整可能であるので、カムシャフト8を理論位置に簡易に調整することができる。
【0057】
第1カムシャフト部材81を理論位置で固定し、締結部材83を解除することで、第1及び第2カムシャフト部材81,82を回転可能にすることができる。締結部材83の解除は、図2Aに示すように、ベース6に設けた調整用穴6dから六角棒スパナなどの工具をベース6内に挿入して操作部83cを操作することによって行うことができる。
【0058】
次に、ベース6の前面側に設けた開口部6f(図5に図示)を通じて、ベアリング11を予め装着したローラギヤ7をベース6内に挿入し、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2とカムフォロア7bを係合させた係合状態とする。次に、固定外輪部12をベース6に固定することによって、ベアリング11をベース6に固定する。
【0059】
(3)予圧調整工程
次に、図3に図示する開口部6aを通じて、第2カムシャフト部材82のキリ穴82cにピンを差し込み、第2カムシャフト部材82が回転しないようにした状態で、第1カムシャフト部材81端面の六角穴81aを利用し、第1カムシャフト部材81をトルクレンチにて回転させる。その際、第1及び第2テーパリブ8a1,8a2の山が離れる方向に回転させる。これにより、テーパリブ8aは、タレット7aの周方向へ均一で一定の変位を設けることができ、カムフォロア7bには一定の予圧がかかることとなる。また、トルクレンチを使用することで予圧の管理が可能となる。一定の予圧をかけた状態で締結部材83を締結状態にして、第1及び第2カムシャフト部材81,82を固定する。
【0060】
以上の工程によって、予圧が適正に設定されたカム機構3を製造することができる。この後、タレット7aに回転テーブル4を装着したり、シャフト部8bとモータ軸2aを連結させたりすることによって、NC円テーブル1を製造することができる。
【0061】
5.その他の実施形態
・上記実施形態では、第1カムシャフト部材81は、シャフト部8bと第1テーパリブ8a1が一体に形成された部材であったが、シャフト部8bを備える部材と、第1テーパリブ8a1を備える部材を別々に準備し、これらを組み合わせることで、第1カムシャフト部材81を構成してもよい。
・上記実施形態中のカム機構3の適用例は、NC円テーブル1に限定されず、カムシャフト8とローラギヤ7の間の回転の伝達が必要な任意の装置に適用可能である。また、カム機構3は、ローラギヤ7からカムシャフト8に回転が伝達される装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1:NC円テーブル、2:モータ、3:カム機構、4:回転テーブル、6:ベース、7:ローラギヤ、7a:タレット、7b:カムフォロア、8:カムシャフト、8a:テーパリブ、8a1:第1テーパリブ、8a2:第2テーパリブ、8b:シャフト部、81:第1カムシャフト部材、81b:第1テーパリブ形成部、82:第2カムシャフト部材、82d:第2テーパリブ形成部、83:締結部材、84:軸移動阻止部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7