(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】複合シール構造体及びそれによるシール方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
F16J15/10 T
F16J15/10 Y
(21)【出願番号】P 2024004876
(22)【出願日】2024-01-16
【審査請求日】2024-01-25
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛矢地 鴻太
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 聡
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-201288(JP,A)
【文献】特開2003-343727(JP,A)
【文献】米国特許第05538262(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側又は内周側の全周に連続する凹溝が形成された環状の金属部材と、
前記金属部材の前記凹溝に嵌まり込む被収容部及び前記被収容部に連続して一対のフラ
ンジ部が当接する突条部を有するエラストマー部材とを備え、
前記金属部材の凹溝が前記エラストマー部材の被収容部を全周に亘って包み込み、前記
被収容部が前記凹溝内に非圧縮時及び圧縮時に外れにくいように収容され、
非圧縮時及び圧縮開始時に前記突条部のみが前記一対のフランジ部に当接し、
所定の圧縮率以上の圧縮状態で前記突条部及び変形した前記金属部材が接触して一対の
フランジ部の間がシールされるように構成されて
おり、
前記金属部材の凹溝は、両端部が互いに近付く方向に近付くことで、前記被収容部が前
記凹溝内に非圧縮時及び圧縮時に外れにくいように収容されている
ことを特徴とする複合シール構造体。
【請求項2】
非圧縮時の前記被収容部は、半円形若しくは半楕円形状断面であり、又は断面V字状の
溝を有する
ことを特徴とする請求項
1に記載の複合シール構造体。
【請求項3】
外周側又は内周側の全周に連続する凹溝が形成された環状の金属部材と、
前記金属部材の前記凹溝に嵌まり込む被収容部及び前記被収容部に連続して一対のフラ
ンジ部が当接する突条部を有するエラストマー部材とを備えた複合シール構造体を、前記
金属部材の凹溝が前記エラストマー部材の被収容部を全周に亘って包み込み、前記被収容
部が前記凹溝内に非圧縮時及び圧縮時に外れにくいように収容した状態で前記一対のフラ
ンジ部に挟持し、
非圧縮時及び圧縮開始時に前記突条部のみを前記一対のフランジ部に当接させ、
所定の圧縮率以上の圧縮状態で前記突条部及び変形した前記金属部材を一対のフランジ
部に接触させ、一対のフランジ部の間をシールし、前記金属部材によって腐食性ガス又は
ラジカルガスがエラストマー部材側に流れるのを抑制しながら前記エラストマー部材から
の気体の透過を低減する
構成であり、
前記金属部材の凹溝を、両端部が互いに近付く方向に近付けることで、前記被収容部が
前記凹溝内に非圧縮時及び圧縮時に外れにくいように収容されるように予め成形しておく
ことを特徴とする複合シール構造体によるシール方法。
【請求項4】
前記金属部材の側がラジカルガスの雰囲気にある
ことを特徴とする請求項
3に記載の複合シール構造体によるシール方法。
【請求項5】
圧縮時の最大締付力が3.9N/mm以上25N/mm以下である
ことを特徴とする請求項
3又は
4に記載の複合シール構造体によるシール方法。
【請求項6】
前記エラストマー部材の側が-80℃以上250℃以下の雰囲気内で使用される
ことを特徴とする請求項
3又は
4に記載の複合シール構造体によるシール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合シール構造体及びそれによるシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置又は液晶パネルの表面処理装置には、真空環境を作り出すために、ゴム製のOリングが用いられている。一方、ラジカルガス環境、腐食環境においては、ゴム製のOリングは耐腐食、耐ラジカル性に劣るため、弾性シール本体とフッ素樹脂製耐腐食用リングとを有するシール材が使われることも知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、ゴム材料を覆う樹脂材料も、ゴム材料と同様に高圧側(大気側)から低圧側(陰圧側)への大気などの気体の透過は避けられない。
【0004】
そこで、例えば、特許文献2のように、O-リングシール溝に挿入可能な形状のメタルシールの外周側にゴムO-リングシールを一体化した低締付力複合メタルシールが知られている。この複合メタルシールでは、内周側のメタルシールにより、高温腐食性ガスがゴムO-リングシール側にできるだけ流れ込まないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許4625746号公報
【文献】特開2023-156213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記複合メタルシールでは、複合メタルシールの弾性力をゴムO-リングシールの弾性力とほぼ同等に設定している。これは、従来のゴムO-リングシールと、この複合メタルシールとを置き換えできるようにするためと考えられる。
【0007】
このように低い締結力のままで、従来の複合シール構造体よりもさらにシール性能を向上させたいというニーズがある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、締付力を低く保ちながらも、エラストマー部材からの気体の透過を低減してシール性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、この発明では、適度な圧縮状態で、エラストマー部材によってシール性を保ちつつ、金属部材によって腐食性ガス又はラジカルガスがエラストマー部材側に流れるのを抑制するようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明では、
外周側又は内周側の全周に連続する凹溝が形成された環状の金属部材と、
前記金属部材の前記凹溝に嵌まり込む被収容部及び前記被収容部に連続して一対のフランジ部が当接する突条部を有するエラストマー部材とを備え、
非圧縮時及び圧縮開始時に前記突条部のみが前記一対のフランジ部に当接し、
所定の圧縮率以上の圧縮状態で前記突条部及び変形した前記金属部材が接触して一対のフランジ部の間がシールされるように構成されている。
【0011】
前記の構成によると、エラストマー部材でシール性を確保しながら、一対のフランジ部に圧縮状態で接触した金属部材によって腐食性ガス又はラジカルガスがエラストマー部材側に流れるのを抑制しながら、エラストマー部材からの気体(大気など)の透過を低減してシール性能を向上させることができると共に、エラストマー部材が圧縮開始時からシール性を担保するので、金属部材の締付力を低くすることができる。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、
非圧縮時の前記被収容部は、半円形若しくは半楕円形状断面であり、又は断面V字状の溝を有する。
【0013】
前記の構成によると、被収容部が金属部材の凹溝内に非圧縮時及び圧縮時に外れにくいように適切に収容される。
【0014】
第3のシール方法の発明では、
外周側又は内周側の全周に連続する凹溝が形成された環状の金属部材と、
前記金属部材の前記凹溝に嵌まり込む被収容部及び前記被収容部に連続して一対のフランジ部が当接する突条部を有するエラストマー部材とを備えた複合シール構造体を前記一対のフランジ部に挟持し、
非圧縮時及び圧縮開始時に前記突条部のみを前記一対のフランジ部に当接させ、
所定の圧縮率以上の圧縮状態で前記突条部及び変形した前記金属部材を一対のフランジ部に接触させ、一対のフランジ部の間をシールし、前記金属部材によって腐食性ガス又はラジカルガスがエラストマー部材側に流れるのを抑制しながら前記エラストマー部材からの気体の透過を低減する。
【0015】
前記の構成によると、エラストマー部材でシール性を確保しながら、一対のフランジ部に圧縮状態で接触した金属部材によって腐食性ガス又はラジカルガスがエラストマー部材側に流れるのを抑制しながらエラストマー部材からの気体の透過を低減することができると共に、エラストマー部材が圧縮開始時からシール性を担保するので、金属部材の締付力を低くすることができる。
【0016】
第4の発明では、第3の発明において、
前記金属部材の側がラジカルガスの雰囲気にある。
【0017】
前記の構成によると、圧縮状態では金属部材が一対のフランジ部に接触しており、ラジカルガスが金属部材からエラストマー部材側へ流れ込むのを抑制するので、エラストマー部材の耐久性が格段に向上する。
【0018】
第5の発明では、第3又は第4の発明において、
圧縮時の最大締付力が3.9N/mm以上25N/mm以下である。
【0019】
前記の構成によると、エラストマー部材によりシール性が担保されるので、金属部材の最大締付力を金属シールに比べて低い値に保つことができる。一方で、適切な締付力で一対のフランジ部に圧縮状態で接触した金属部材によって腐食性ガス又はラジカルガスがエラストマー部材側に流れるのを抑制しながらエラストマー部材からの気体の透過を低減することができる。
【0020】
第6の発明では、第3から第5のいずれか1つの発明において、
前記エラストマー部材の側が-80℃以上250℃以下の雰囲気内で使用される。
【0021】
前記の構成によると、低温から高温まで幅広いエラストマー部材の選択が可能になる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、エラストマー部材でシール性を保ち金属部材によって腐食性ガス又はラジカルガスがエラストマー部材側に流れるのを抑制しながらエラストマー部材からの気体の透過を低減するようにしたので、締付力を低く保ちながらも、シール性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態にかかる複合シール構造体を示す
図2(b)のI部拡大図である。
【
図2】(a)が複合シール構造体を示す平面図であり、(b)が(a)のIIb-IIb線断面図である。
【
図3】有限要素法解析における、エラストマー部材及び金属部材が一対のフランジ部に接触した状態を示す断面図である。
【
図4】圧縮率と締付力との関係を示すグラフである。
【
図5】(a)~(d)は、4種類の金属部材の形状例を示す断面図である。
【
図6】各金属部材における板厚及び高さと複合時の締付力との関係を示す表である。
【
図7】(a)~(d)は、4種類のエラストマー部材の形状例を示す断面図である。
【
図8】ヘリウムリーク試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1及び
図2は、本発明の実施形態の複合シール構造体1を示し、この複合シール構造体1は、外周側の全周に連続する凹溝2aが形成された環状の金属部材2を備えている。
【0026】
本実施形態では、金属部材2の断面は、外周側に開口する略半円形状であるが、
図5(a)~
図5(d)に示すように、凹溝2aを有する種々の形状であってもよい。金属部材2は、ステンレス鋼(SUS316L、SUS304等)、ニッケル合金(C22、C276、718等)、チタン、アルミ合金、銅合金などよりなる。肉厚が異なる成形品でもよいが、板厚tが一定のプレス成形品などでもよい。その板厚tは、0.15~0.60mm、望ましくは、0.20~0.30mmである。高さh2は、2~7mm、望ましくは、2.8~3.8mmである。
【0027】
複合シール構造体1は、さらに金属部材2の凹溝2aに嵌まり込む被収容部3a及び被収容部3aに連続して一対のフランジ部10が当接する突条部3bを有するエラストマー部材3とを備えている。エラストマー部材3の非圧縮時の被収容部3aは、本実施形態では、半円形状である。
【0028】
本実施形態では、被収容部3aは内周側に全周に亘って形成されているが、金属部材2が外周側に設けられる場合には、被収容部3aは外周側に設けるとよい。
【0029】
エラストマー部材3は、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン・プロピレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、SBR、クロロプレンゴム、TPE(熱可塑性エラストマー)等よりなる。
【0030】
エラストマー部材3の外径IDは、20~1270mm、望ましくは、300~700mmであり、高さh1は、2.2~7.5mm、望ましくは、3~4mmである。突条部3bの径方向の幅w0は、例えば1.1mmであるが、これに限定されない。複合シール構造体1の断面の径方向の幅Wは、2~12mm、望ましくは、2.5~4mmである。
【0031】
そして、詳しくは後述するが、複合シール構造体1の非圧縮時及び圧縮開始時に突条部3bのみが一対のフランジ部10に当接するように、非圧縮時の金属部材2の高さh2は、エラストマー部材3の高さh1よりも低くなるように設定されている(h2<h1)。
【0032】
そして、詳細は後述するが、所定の圧縮率以上の圧縮状態で、突条部3b及び変形した金属部材2が接触することにより、一対のフランジ部10の間がシールされるように構成されている。
【0033】
非圧縮時の被収容部3aは、本実施形態では、半円形であるが、
図7(b)~
図7(d)に示すように、半楕円形状断面であったり、断面V字状の溝を有する形状であったりしてもよい。
【0034】
-有限要素法解析-
有限要素法解析ソフトウエアを用いて複合シール構造体1の圧縮率と締付力との関係について解析を行った。
【0035】
単位は、長さがmm、ヤング率がMPa、力がNとした。静解析及び非線形構造解析(接触、大変形)を前提とし、複合シール構造体1の対称性を利用し、
図3のような1/2軸対称モデルとして解析を行った。
【0036】
複合シール構造体1に対して一対のフランジ部10の剛性が十分高いものとし、一対のフランジ部10は剛体として扱った。変形量、摩擦あり接触から解析実施には、大変形効果を考慮した。圧縮率は、複合シール構造体1の非圧縮時の高さ、すなわち非圧縮時のエラストマー部材の高さh1を基準に計算している。
【0037】
本解析では、エラストマー部材3は、硬さ70のシリコーンゴムの物性値を、金属部材2は、SUS316Lの物性値を用いた。
【0038】
上述したように、非圧縮時の金属部材2の高さh2がエラストマー部材3の高さh1よりも低く設定されている(h2<h1)ことから、
図4に、エラストマー部材3のみ、金属部材2のみ、複合シール構造体1のときの3つの線を示すように、圧縮率5%の辺りで金属部材2が一対のフランジ部10に接触し始める。そして、その辺りで複合シール構造体1の締付力が急に上昇していることがわかる。圧縮開始時からエラストマー部材3によってシール性は確保されている。
【0039】
すなわち、最初に上下のエラストマー部材3のみが一対のフランジ部10に接触していたものが、圧縮率5%の辺りで金属部材2も、その外周が一対のフランジ部10に接触したことを示している。
【0040】
そして圧縮率が7.5%の辺りで締付力が直線状に上昇している。7.5%以降は、金属部材2とエラストマー部材3との両方が一対のフランジ部10に安定して接触してシール性能を発揮していることがわかる。
【0041】
目標締結力に達したときは、圧縮率が約22%、最大締付力が7.1N/mmとなった。
【0042】
同様の解析を、金属部材2が
図5(a)~(d)に示す形状の場合について、エラストマー部材3は、
図7(a)の形状の場合について、行った。
【0043】
いずれの形状であっても、
図6に示すように、適切な締付力となった。
図3及び
図4で示した例は、
図6における(a)-4である。金属部材2の適切な形状かつ適度な板厚tと高さh2により、適切な締付力が得られることがわかった。
【0044】
-複合シール構造体によるシール方法-
上述した複合シール構造体1を一対のフランジ部10に挟持する。使用する機器は特に限定されないが、例えば、半導体製造装置又は液晶パネルの表面処理装置における、ガス又は液体の流通路を接続する、一対のフランジ部10における流通路内と流通路外とをシールする部分に用いられる。
【0045】
非圧縮時には、エラストマー部材3の上下の突条部3bのみを一対のフランジ部10にそれぞれ当接させる。本実施形態では、例えば、複合シール構造体1は、金属部材2の内周側(流通路内)がラジカルガスの雰囲気にあり、エラストマー部材3の外周側(流通路外)が-80℃以上250℃以下の雰囲気内で使用される。圧縮開始時からエラストマー部材3の突条部3bが一対のフランジ部10に接触しているので、確実にシール性が確保される。
【0046】
次いで、徐々に圧縮率を上げていくと、例えば上述したように、圧縮率5%の辺りで、金属部材2も一対のフランジ部10に当接し始め、その圧縮率以上の圧縮状態で突条部3b及び変形した金属部材2が一対のフランジ部10に接触する。
【0047】
これにより、適度な締付力で、複合シール構造体1が一対のフランジ部10の間をシールし、金属部材2によってラジカルガスがエラストマー部材3側に流れるのを抑制しながらエラストマー部材3からの気体の透過を低減する。
【0048】
そして、圧縮時の最大締付力が3.9N/mm以上25N/mm以下に保たれるのが望ましい。すなわち、柔軟なエラストマー部材3によりシール性が担保されるので、単体の金属シールに比べて最大締付力を低い値に保つことができる。
【0049】
このように、エラストマー部材3でシール性を確保しながら、一対のフランジ部10に圧縮状態で接触した金属部材2でラジカルガスがエラストマー部材3側に流れるのを抑制しながらエラストマー部材3からの気体の透過を低減することができると共に、エラストマー部材3がシール性を担保するので、金属部材2の締付力を低くすることができる。
【0050】
また、圧縮時には、金属部材2が一対のフランジ部10に適度な締付力によって接触しているので、ラジカルガスがエラストマー部材3の方へ流れ込むのが効果的に抑制され、エラストマー部材3の耐久性が格段に向上する。
【0051】
また、エラストマー部材3の外周側が-80℃以上250℃以下の雰囲気内であれば、用途に応じ、上述したような幅広いエラストマー部材3の選択が可能になる。
【0052】
さらに、金属部材2の凹溝2aがエラストマー部材3の被収容部3aを全周に亘って包み込むので、被収容部3aが金属部材2の凹溝2a内に非圧縮時及び圧縮時に外れにくいように適切に収容される。
【0053】
したがって、本実施形態にかかる複合シール構造体1によると、エラストマー部材3でシール性を保ち金属部材2によって、腐食性ガス又はラジカルガスがエラストマー部材3側に流れるのを抑制しながらエラストマー部材3からの気体の透過を低減するようにしたので、締付力を低く保ちながらも、シール性能を向上させることができる。
【0054】
-ヘリウムリーク試験による効果確認-
図8は、本発明の実施形態の複合シール構造体1を用いたヘリウムリーク試験の結果を示すグラフである。
【0055】
試験時温度は22℃であり、ヘリウムの流量は50mL/min(フード法)で、圧縮率はシールの初期高さh1=3.60mmを基準とした。
【0056】
詳細は図示しないが、プレス装置の一対のフランジ部10間に複合シール構造体1を配置して圧縮した。ヘリウムリークディテクタによりリーク量をモニタし、安定した状態をバックグラウンドとした。一対のフランジ部10の外周にテープを巻き、フードを形成した(ヘリウム注入口を残しておく)。ヘリウムを注入口に吹き始めてからのリーク量を10分間モニタした。リーク量が安定したときのリーク量を飽和リーク量として記録した。
【0057】
比較例として、金属部材2のないエラストマー部材3のみ相当のシールの場合についても同様に記録した。
【0058】
図8を見てわかるように、圧縮率が10%、20%及び22%のいずれにおいても、エラストマー部材3のみの場合に比べ、複合シール構造体1のリーク量が少ないことがわかった。
【0059】
-耐ラジカル試験による効果確認-
図示しないが、試験機は、ラジカル曝露試験機を用いた。ガス条件は、O2+CF4(2:1)で処理室内圧力を100Paとし、マイクロ波出力を2500Wとした。圧縮率は複合シール構造体1の初期高さであるh1=3.60mmを基準とした。
【0060】
複合シール構造体1と、比較例としてのエラストマー部材3のみについて、耐ラジカル性効果を確認した。
【0061】
図8に示す通り、複合シール構造体1では、重量減少(エラストマー部材3の消耗)が起きていないことから、金属部材2との複合により耐ラジカル性に効果があることを確認できた。一方で、エラストマー部材3のみの場合には、エラストマー材料の消耗が顕著に発生していることがわかった。
【0062】
(その他の実施形態)
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0063】
すなわち、前記実施形態では、金属部材2は、内周側に設けられているが、外周側がラジカルガスなどの環境下にある場合、外周側に設けられる。この場合は、内周側の凹溝2aにエラストマー部材3が内周側から嵌め込まれる。
【0064】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 複合シール構造体
2 金属部材
2a 凹溝
3 エラストマー部材
3a 被収容部
3b 突条部
10 フランジ部
【要約】
【課題】締付力を低く保ちながらも腐食性ガス又はラジカルガスがエラストマー部材側に流れるのを抑制し、かつエラストマー部材からの気体の透過を低減してシール性能を向上させる。
【解決手段】外周側又は内周側の全周に連続する凹溝2aが形成された環状の金属部材2と、金属部材2の凹溝2aに嵌まり込む被収容部3a及び被収容部3aに連続して一対のフランジ部10が当接する突条部3bを有するエラストマー部材3とを備えた複合シール構造体1を一対のフランジ部10に挟み、非圧縮時及び圧縮開始時に突条部3bのみを一対のフランジ部10に当接させ、所定の圧縮率以上の圧縮状態で突条部及び変形した金属部材2を一対のフランジ部10に接触させ、一対のフランジ部10の間をシールする。
【選択図】
図1