(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】吊り治具及び吊り治具を使用した壁面部材の施工方法
(51)【国際特許分類】
E21D 5/06 20060101AFI20241219BHJP
E21D 7/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
E21D5/06
E21D7/00
(21)【出願番号】P 2024019474
(22)【出願日】2024-02-13
(62)【分割の表示】P 2019205386の分割
【原出願日】2019-11-13
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】和田 浩
(72)【発明者】
【氏名】鎌崎 祐治
(72)【発明者】
【氏名】久保田 悟史
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190201(JP,A)
【文献】実開平3-100278(JP,U)
【文献】実開昭63-71183(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-9/14
B66C 1/00-3/20
E04G 21/14-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の壁面部材と第2の壁面部材とを連結するために、前記第1の壁面部材を一定姿勢で支持するとともに、前記第1の壁面部材と前記第2の壁面部材とのそれぞれに設けられ各壁面部材を上下方向に貫通して形成された貫通孔に挿通されることにより前記第1の壁面部材と前記第2の壁面部材との連結位置を調整する吊り治具において、
治具本体と、
前記治具本体の一端側に設けられるフック部と を備え、
前記フック部は、
前記治具本体から延設され、前記第1の壁面部材が載置された状態で該第1の壁面部材を支持する支持部と、
前記支持部の先端側に設けられ、前記第1の壁面部材及び前記第2の壁面部材の貫通孔が互いに上下方向に連通した状態において、該第1の壁面部材及び前記第2の壁面部材の貫通孔に挿通される挿通部と
を有
し、
前記吊り治具は、前記治具本体から、前記支持部が延設される方向とは反対側に向けて延設される把持部をさらに備える
ことを特徴とする吊り治具。
【請求項2】
前記挿通部は、前記支持部の延設方向に対して略垂直の方向に設けられていることを特徴とする請求項1
に記載の吊り治具。
【請求項3】
前記第1の壁面部材と前記第2の壁面部材とは、前記貫通孔が形成されたフランジ部を有し、
前記支持部は、前記第1の壁面部材のフランジ部を支持し、
前記挿通部は、前記第1の壁面部材のフランジ部と前記第2の壁面部材のフランジ部とが重なった状態で、これらの部材の貫通孔に挿通される
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の吊り治具。
【請求項4】
前記第1の壁面部材及び前記第2の壁面部材は、波形鋼板であることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の吊り治具。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の吊り治具を用いた壁面部材の施工方法において、
前記第1の壁面部材の貫通孔に前記挿通部を挿通した状態で前記第1の壁面部材を前記支持部により支持する工程と、
前記第1の壁面部材を前記第2の壁面部材の下に配置する工程と、
前記第2の壁面部材の貫通孔に前記挿通部を挿通した状態で、前記第1の壁面部材と前記第2の壁面部材との連結位置を調整する工程と、
前記第1の壁面部材と前記第2の壁面部材を連結する工程と
を備えることを特徴とする壁面部材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工現場で用いる吊り治具及び吊り治具を使用した壁面部材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立坑の土留め壁に用いられるライナープレート等の壁面部材を施工する際には、床堀りと壁面部材の組立てを繰り返し行いながら立坑を掘り進めていく方法が一般的である。この場合、壁面部材の組立作業においては、人手によるボルト留め作業が一般的であり、人手で作業できる重量の壁面部材をチェーンブロック等によって立坑の内部に降ろしながら搬入が進められる。立坑内の現場では、ボルトによる仮固定のためボルト孔芯を合わせて、壁面部材に全て取り付けた後、ボルト締結の本締め作業が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のような場合において、立坑内に壁面部材を落とし込む作業は吊り治具を用いて行われる。具体的には、壁面部材に設けられるフランジ部等に吊り治具を引っ掛けることにより壁面部材を吊り上げた状態で、他の壁面部材との連結位置まで移動させ、壁面部材に設けられるボルト孔の位置を調整して、壁面部材同士を連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように吊り治具等を用いて壁面部材同士を連結する場合には、立坑内に壁面部材を落とし込む際の作業の確実性に課題があった。また、壁面部材同士を連結する作業において、壁面部材同士をボルトで仮固定する際に、ボルト孔の芯合わせに手間が掛かるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、波形鋼板等の壁面部材の施工において、壁面部材の落とし込み等の作業の確実性を向上させるとともに、壁面部材同士の連結時の作業性を向上させる吊り治具及び吊り治具を用いた施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る第1の態様は、第1の壁面部材と第2の壁面部材とを連結するために、前記第1の壁面部材を一定姿勢で支持するとともに、前記第1の壁面部材と前記第2の壁面部材とのそれぞれに設けられ各壁面部材を上下方向に貫通して形成された貫通孔に挿通されることにより前記第1の壁面部材と前記第2の壁面部材との連結位置を調整する吊り治具であって、治具本体と、前記治具本体の一端側に設けられるフック部とを備え、前記フック部は、前記治具本体から延設され、前記第1の壁面部材が載置された状態で該第1の壁面部材を支持する支持部と、前記支持部の先端側に設けられ、前記第1の壁面部材及び前記第2の壁面部材の貫通孔が互いに上下方向に連通した状態において、該第1の壁面部材及び前記第2の壁面部材の貫通孔に挿通される挿通部とを有する。
【0008】
また、前記治具本体から、前記支持部が延設される方向以外の方向に向けて延設される把持部を更に備えることが好ましい。
【0009】
また、前記挿通部は、前記支持部の延設方向に対して略垂直の方向に設けられていることが好ましい。
【0010】
また、前記第1の壁面部材と前記第2の壁面部材とは、前記貫通孔が形成されたフランジ部を有し、前記支持部は、前記第1の壁面部材のフランジ部を支持し、前記挿通部は、前記第1の壁面部材のフランジ部と前記第2の壁面部材のフランジ部とが重なった状態で、これらの部材の貫通孔に挿通されることが好ましい。
【0011】
前記第1の壁面部材及び前記第2の壁面部材は、波形鋼板であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る第2の態様は、上記いずれかに記載の吊り治具を用いた壁面部材の施工方法であって、前記第1の壁面部材の貫通孔に前記挿通部を挿通した状態で、前記第1の壁面部材を前記支持部により支持する工程と、前記第1の壁面部材を前記第2の壁面部材の下に配置する工程と、前記第2の壁面部材の貫通孔に前記挿通部を挿通した状態で前記第1の壁面部材と前記第2の壁面部材との連結位置を調整する工程と、前記第1の壁面部材と前記第2の壁面部材を連結する工程とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る態様によれば、波形鋼板等の壁面部材の施工において、吊り作業を安定且つ確実に行うことができ、壁面部材同士の連結作業において高い精度で連結位置(ボルト孔の位置)を合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る吊り治具の構成を表す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る吊り治具が適用される壁面部材の構成を表す図である。
【
図3】
図2に示す壁面部材の連結部分の構成を表す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る吊り治具が適用される他の壁面部材の構成を表す図である。
【
図5】本実施の形態に係る壁面部材の施工方法において、(a)第1の壁面部材に吊り治具を挿通させる前の状態を表す図であり、(b)第1の壁面部材に吊り治具を挿通させた状態を表す図であり、(c)第1の壁面部材を第2の壁面部材の下に配置した状態で第1の壁面部材と第2の壁面部材に吊り治具を挿通させた状態を表す図であり、(d)第1の壁面部材と第2の壁面部材とを連結具を用いて連結した状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとり得る。
【0016】
<吊り治具の構成>
図1を用いて、本実施の形態に係る吊り治具の構成について説明する。吊り治具1は、例えば断面円形状の鋼材により構成され、後述する壁面部材2に取り付けられ、壁面部材2を吊り上げた状態で支持する。吊り治具1は、治具本体11と、フック部12と、把持部13と、掛止部14とを有する。
【0017】
治具本体11は、例えば略直線状に延伸する円柱状の長尺体から構成されている。
フック部12は、治具本体11の一端側の端縁に形成されている。フック部12は、略L字状に形成され、支持部121と挿通部122とを有する。支持部121は、治具本体11の一端側の端縁から治具本体11の延伸方向に対して略垂直の方向に延設されている。支持部121は、吊り治具1が後述する壁面部材2を吊り上げる際に、壁面部材2のフランジ部212が載置された状態で壁面部材2を一定姿勢で支持する。挿通部122は、支持部121の先端側の端縁から支持部121の延設方向に対して略垂直の方向且つ治具本体11と略平行な方向に延設されている。挿通部122は、吊り治具1が壁面部材2を吊り上げる際に、壁面部材2のフランジ部212に形成される貫通孔213に挿通される。
【0018】
把持部13は、例えば治具本体11から支持部121が延設される方向とは反対側に向けて略直線状に延設されている。把持部13は、吊り治具1が取り付けられた壁面部材2を所望の位置に移動させたり或いは壁面部材2を一定の姿勢に変更したりする場合に、作業者が吊り治具を操作するために把持する部分である。なお、把持部13は、上記態様に限られず、治具本体11から支持部121が延設される方向以外の方向に延設されるものであればいかなる態様のものが適用されてもよい。
掛止部14は、治具本体11の他端側に設けられ、例えば環形状を有する。掛止部14は、ワイヤ等が掛け止めされるための孔141を有する。吊り治具1は、掛止部14に掛け止めされるワイヤ等を介して吊り状態で保持される。なお掛止部14は、ワイヤ等が掛け止めされる形状であればよく、環形状のものに限られず、矩形、曲形などあらゆる形状のものが適用されてもよい。
【0019】
<壁面部材の構成>
図2及び
図3を用いて本実施の形態に係る吊り治具が適用される壁面部材の構成について説明する。
図2に示すように、壁面部材2としては、例えば、L字状の波形鋼板21が適用される。この波形鋼板21は、壁面部211と、フランジ部212と、貫通孔213、214とを有する2つのプレートを互いの長手方向の端縁においてL字状に連結したものである。なお波形鋼板21は、L字状のほか、直形や円弧状等のものが適用されてもよい。
壁面部211は、波形鋼板21の上下方向において平坦状の山部と谷部とを交互に繰り返しており、波形鋼板21の長手方向に沿って延在している。
フランジ部212は、壁面部211の端縁を囲うように設けられており、各辺の端縁に沿って延伸された矩形状を有する。後述するように、フランジ部212は、吊り治具1を構成するフック部12の支持部121上に載置される(
図3参照)。
貫通孔213は、波形鋼板21の長手方向に沿ったフランジ部212において、フランジ部212を上下方向に貫通して形成された例えば円形状の孔であり、長手方向に沿って一定間隔をあけて複数形成されている。
図3に示すように、波形鋼板21と他の波形鋼板22とを上下に配置した状態で両部材を連結するための連結具3(例えば、ボルト31)が挿通される。また、貫通孔213には、後述するように、吊り治具1を構成するフック部12の挿通部122が挿通される(
図3参照)。一方、左右方向(長手方向)に貫通する貫通孔214は、波形鋼板21の上下方向に沿ったフランジ部212において、フランジ部212を左右方向に貫通して形成された円形状の孔であり、上下方向に沿って一定間隔をあけて複数形成されている。この貫通孔214には、波形鋼板21と他の波形鋼板(図示しない)とを左右方向に配置した状態で両部材を連結するための連結具(図示しない)が挿通される。なお、貫通孔213に挿通される連結具3はボルト31に限定されず種々の連結具が適用されてもよい。
【0020】
(壁面部材の連結構造)
上記波形鋼板21に吊り治具1を適用する場合には、波形鋼板21の上端側のフランジ部212に形成される貫通孔213に吊り治具1の挿通部122が挿通される。波形鋼板21を吊り治具1によって吊り上げる作業においては、
図2に示すように、2箇所の貫通孔213にそれぞれ挿通部122が挿通され、波形鋼板21が2点支持により吊り治具1に吊り上げられる。
【0021】
(壁面部材の他の態様)
なお、吊り治具1が適用される壁面部材2は上記のものに限られない。例えば、
図4に示すような波形鋼板21aが適用されてもよい。波形鋼板21aは、壁面部211aと、フランジ部212aと、貫通孔213a、214aとを有する。波形鋼板21aは、上下方向及び左右方向(長手方向)に複数連結されることによりリング体(図示しない)を構成する。
壁面部211aは、波形鋼板21aの上下方向において曲面状の山部と谷部とを交互に繰り返しており、長手方向に沿って円弧状に湾曲された形状を有する。
フランジ部212aは、壁面部211aの端縁を囲うように設けられている。フランジ部212aの上下方向における両端側は円弧状に湾曲されて形成されており、フランジ部212aの長手方向における両端側は矩形状に形成されている。
貫通孔213aは、波形鋼板21の長手方向に沿ったフランジ部212において、波形鋼板21aを上下方向に貫通して形成された円形状の孔であり、フランジ部212の長手方向に沿って一定間隔をあけて複数形成されている。貫通孔213aには、波形鋼板21aと他の波形鋼板(図示しない)とを上下に配置した状態で両部材を連結するための連結具3(図示しない)が挿通される。また、
図4に示すように、貫通孔213aには、吊り治具1の挿通部122が挿通される。
貫通孔214aは、波形鋼板21の上下方向に沿ったフランジ部212aにおいて、波形鋼板21aの左右方向(長手方向)に貫通して形成された円形状の孔であり、フランジ部213aの上下方向に沿って一点間隔をあけて複数形成されている。貫通孔214aには、波形鋼板21aと他の波形鋼板(図示しない)とを左右に配置した状態で両部材を連結するための連結具(図示しない)が挿通される。
この波形鋼板21aに吊り治具1を適用する場合には、波形鋼板21aの上端側のフランジ部212aに形成される貫通孔213aに吊り治具1の挿通部122が挿通される。本実施の形態においては、2箇所の貫通孔213aにそれぞれ吊り治具1の挿通部122が挿通され、波形鋼板21aは2点支持により吊り治具1に吊り上げられた状態となる。
【0022】
<吊り治具を用いた壁面部材の施工方法>
図5を用いて、本実施の形態に係る吊り治具1を用いた壁面部材の施工方法について説明する。以下では、壁面部材2である波形鋼板21(第1の壁面部材)を立坑内に設置されている他の波形鋼板22(第2の壁面部材)に連結する例について説明する。以下では、2つの波形鋼板を区別するために、他の波形鋼板22の構成を、壁面部221、フランジ部222及び貫通孔223と称する。
【0023】
図5(a)に示すように、まず、横向きの姿勢に置かれた波形鋼板21の長手方向に沿った上側のフランジ部212に形成される貫通孔213に対して吊り治具1の挿通部122が挿通される。
この状態において、掛止部14に取り付けられたワイヤ(図示しない)を介して吊り治具1を上方へと移動させることによって、波形鋼板21が吊り治具1によって縦向きの姿勢に吊り上げられる(
図5(b)参照)このとき、波形鋼板21のフランジ部212の先端側が吊り治具1の支持部121上に載置される。これにより、フランジ部121が安定した姿勢で支持部121によって支持される。
【0024】
次に、
図5(b)に示すように、吊り治具1によって吊り上げられた波形鋼板21が立坑内に設置されている他の波形鋼板22の下方へと移送される。波形鋼板21の移送に際して、作業者は、吊り治具1に設けられる把持部13を把持しながら波形鋼板21の吊り姿勢を調整する。波形鋼板21が他の波形鋼板22の下方に移送された状態において、波形鋼板21の貫通孔213と他の波形鋼板22の貫通孔223とが上下方向において連通した状態となるように、波形鋼板21の位置が調整される。
【0025】
次に、
図5(c)に示すように、吊り治具1を上方(波形鋼板21の上端縁が他の波形鋼板22の下端縁へ近づく方向)へ移動させることにより、吊り治具1の挿通部122が他の波形鋼板22の下側のフランジ部222に形成される貫通孔223に挿通される。この状態において、波形鋼板21の貫通孔213と他の波形鋼板22の貫通孔223とがすべて上下方向において連通している。
【0026】
次に、
図5(d)に示すように、互いに連通する波形鋼板21の貫通孔213と他の波形鋼板22の貫通孔223に対して例えば連結具3であるボルト31が挿通されるとともに、挿通されたボルト31の先端がナット32によって締結される。なお、この締結作業は、まず、吊り治具1の挿通部122が挿通されていない貫通孔213、223に対して行われる。これら貫通孔213、223に対する締結作業の後、貫通孔213、223に挿通された吊り治具1の挿通部122が抜き取られ、残りの貫通孔213、223に対して上記締結作業が行われる。これによって、上下方向に配置された2つの波形鋼板21、22が連結される。
【0027】
上記実施の形態に係る吊り治具1によれば、2つの波形鋼板21、22同士を上下方向において連結させる際に、吊り治具1の挿通部122を波形鋼板21のフランジ部212に形成される貫通孔213に挿通させ、フランジ部212を吊り治具1の支持部121によって支持した状態で波形鋼板21を吊り上げて移送させる。このような構成とすることにより、波形鋼板21が安定した姿勢で吊り治具1によって支持されるので、波形鋼板21の落とし込み作業やその他移送作業を確実に行うことができる。すなわち、従来は波形鋼板の落とし込み作業において、一旦部材を降ろした後に波形鋼板同士を仮固定する作業を行っており現場作業に手間がかかっていたのに対して、上記実施の形態に係る吊り治具1を用いることにより、立抗内の狭い作業空間での波形鋼板の搬入から仮固定までを一連の作業として行うことができる。
また、上記実施の形態に係る吊り治具1によれば、吊り治具1によって吊り上げられた波形鋼板21が他の波形鋼板22の下方に移送され、2つの波形鋼板21、22のフランジ部212、222に形成される貫通孔213、223が上下方向において互いに連通した状態で吊り治具1の挿通部122が貫通孔213、223に挿通される。このような構成とすることにより、上下方向に配置した波形鋼板21、22の貫通孔213、223同士の芯合わせ(位置合わせ)を容易に行えるので、波形鋼板21、22同士の連結作業を円滑且つ確実に行うことができる。
また、上記実施の形態に係る吊り治具1によれば、治具本体11から、支持部121が延設される方向とは反対側に向けて延設される把持部13が設けられている。このような構成を有することにより、吊り治具1によって吊り上げられた波形鋼板21を移送する際に、作業者は把持部13を把持しながら波形鋼板21を動かすことができるので、波形鋼板21に直接触れることなく各種作業を行うことができる。その結果、波形鋼板21、22の貫通孔213、223同士の位置合わせにおいて微調整が必要な場合であっても、作業者は把持部13を把持しながら作業が行えるので円滑且つ高い精度での位置合わせ作業を行うことができる。また、作業者が把持部13を介した作業を行うことにより、作業者が作業中に部材間に指を挟むなどの事故を防止することができ、作業の安全性を向上させることができる。
また、上記実施の形態に係る吊り治具1によれば、挿通部122が支持部121の延設方向に対して略垂直の方向に設けられているので、挿通部122が波形鋼板21の貫通孔213に挿通され且つ波形鋼板21のフランジ部212が支持部121に支持された状態において、挿通部122を他の波形鋼板22の貫通孔223に対して円滑に挿通させることができる。
また、上記実施の形態に係る吊り治具1によれば、第1の壁面部材21と第2の壁面部材22とが貫通孔213、223が形成されたフランジ部212、222を有し、支持部121は、第1の壁面部材21のフランジ部212を支持し、挿通部122は、第1の壁面部材21のフランジ部212と第2の壁面部材22のフランジ部222とが重なった状態で、これらの部材の貫通孔213、223に挿通される構成としているので、壁面部材21、22への吊り治具1の挿通を容易に行うことができ、施工作業を円滑に進めることができる。
また、上記実施の形態に係る吊り治具1は、壁面部材2が波形鋼板21である場合に好適に使用することができる。
【0028】
本発明は、上記実施の形態に係る構成に限定されるものではない。上記実施の形態においては、壁面部材として波形鋼板を例に挙げて説明したがこれに限られず、施工現場において使用される各種部材が適用されてもよい。
また、上記実施の形態において、フック部12として、支持部121と挿通部122が互いに略垂直に延設されてなる略L字状のものを例に挙げて説明したがこれに限られない。例えば、支持部121の延設方向の途中位置において、支持部121から略垂直に延設される略T字状の構成など、挿通部122が壁面部材2の貫通孔213に挿通された状態で壁面部材2を支持できる構成であればあらゆる形状のものが適用されてもよい。
また、上記実施の形態において、把持部13が治具本体11から略直線状に円背得延びる形態のものを例示したがこれに限られない。作業者が吊り治具1を把持しやすいように種々の形状のものが適用されてもよい。また、把持部13は治具本体11から延設されるものに限られず、フック部12から延設される構成が適用されてもよい。
また、上記実施の形態において、吊り治具1が断面円形状の鋼材(丸鋼)からなるものを例に挙げて説明したがこれに限られず、断面矩形状(角鋼)、断面平板状(平鋼)など各種形状のものが適用されてもよい。
また、上記実施の形態において、貫通孔213、223が円形状であるものを例に挙げて説明したがこれに限られず、楕円形状、長孔形状、矩形状な種々の形状をものが適用されてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 吊り治具
11 治具本体
12 フック部
121 支持部
122 挿通部
13 把持部
14 掛止部
2 壁面部材
21 波形鋼板(第1の壁面部材)
211 壁面部
212 フランジ部
213 貫通孔
214 貫通孔
22 他の波形鋼板(第2の壁面部材)
221 壁面部
222 フランジ部
223 貫通孔
3 連結具
31 ボルト
32 ナット