(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】CO2脱離状態検出装置及びCO2脱離状態検出システム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20241219BHJP
E02D 17/18 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G01N27/416 353Z
E02D17/18 Z
(21)【出願番号】P 2024024037
(22)【出願日】2024-02-20
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】323007559
【氏名又は名称】株式会社ミダック
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 清彦
(72)【発明者】
【氏名】國弘 彩
(72)【発明者】
【氏名】蓼沼 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】大原 健
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-191111(JP,A)
【文献】特開2002-035549(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0132544(US,A1)
【文献】国際公開第2014/199825(WO,A1)
【文献】特開2010-243178(JP,A)
【文献】特開2010-197368(JP,A)
【文献】特開2013-027833(JP,A)
【文献】特開2020-099878(JP,A)
【文献】特開2017-029902(JP,A)
【文献】特開2023-048326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
E02D 1/00-3/115
E02D 17/18
B01D 53/62
B09B 1/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素(以下、CO
2)固定化素材に固定化されたCO
2の脱離状態を検出するCO
2脱離状態検出装置であって、
前記CO
2固定化素材を堆積する堆積場の基底部に配置される排水管と、
前記排水管に接続され、前記排水管から鉛直上向きに延出するガス抜き用管と、
前記ガス抜き用管を介して前記排水管に設けられ、前記排水管を流れる排水の水素イオン指数を測定するセンサと、
を含む、CO
2脱離状態検出装置。
【請求項2】
前記堆積場に前記ガス抜き用管が複数設けられ、複数の前記ガス抜き用管の各々を介して前記排水管に設けられた複数の前記センサの少なくとも一部によって検出されたセンサ水素イオン指数に基づいて、
当該センサ水素イオン指数を検出した前記センサの位置におけるセンサ水素イオン指数が酸性であるか否かを判定する判定手段、
をさらに含む、請求項1に記載のCO
2脱離状態検出装置。
【請求項3】
前記センサは、前記ガス抜き用管の内部で鉛直方向に吊り下げられて、少なくとも一部が前記排水管に配置される、請求項1に記載のCO
2脱離状態検出装置。
【請求項4】
前記判定手段が、センサ水素イオン指数が酸性であると判定したセンサの位置に基づいて、固定化されたCO
2が脱離した前記CO
2固定化素材の区画であるCO
2脱離区画を推定する推定手段、
をさらに含む、請求項2に記載のCO
2脱離状態検出装置。
【請求項5】
複数の前記センサの検出した水素イオン指数を示す情報を、ネットワーク回線を通じて前記
センサ水素イオン指数が酸性であるか否かを判定する判定手段に送信する送信部をさらに含む、請求項
2に
記載のCO
2脱離状態検出装置。
【請求項6】
CO
2固定化素材に固定化されたCO
2の脱離状態を検出するCO
2脱離状態検出システムであって、
前記CO
2固定化素材を堆積する堆積場の基底部に配置される排水管から鉛直上向きに延出するガス抜き用管に設けられたセンサから前記排水管を流れる排水の水素イオン指数を収集するサーバ装置を含み、
前記サーバ装置は、
複数の前記センサの少なくとも一部によって検出されたセンサ水素イオン指数と、当該センサ水素イオン指数を検出した前記センサの位置と、に基づいて、前記堆積場に堆積された前記CO
2固定化素材の少なくとも酸性である酸性範囲を判定する、CO
2脱離状態検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素(以下、「CO2」と記す)脱離状態検出装置及びCO2脱離状態検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大気中に放出されるCO2の量が増加することにより、気温上昇や、それに伴う異常気象の発生等が起こることが知られている。この点を抑止するため、セメント・コンクリート系の材料にCO2を固定化し、大気に放出されるCO2の量を低減するための基礎実験が行われている。このような技術は、例えば、非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】小峯秀雄 他, CO2固定化素材を活用したカーボンキャプチャー都市環境創生に関する基礎研究,土木学会論文集 2023年 79巻 第1号.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の非特許文献1のように廃棄物を埋め立てた場合、堆積場(埋立地)に埋められた廃棄物が廃棄物の特性、あるいは環境等により酸性に傾くことが考えられる。廃棄物が酸性に傾くことにより、廃棄物に固定化されたCO2は、廃棄物から脱離して大気中に再度放出される恐れがある。本願の発明者らは、この点に着目し、堆積場における廃棄物からCO2が脱離した区画を水素イオン指数によって判定することができるCO2脱離状態検出装置及びCO2脱離状態検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明の一形態のCO2脱離状態検出装置は、CO2固定化素材に固定化されたCO2の脱離状態を検出するCO2脱離状態検出装置であって、CO2固定化素材を堆積する堆積場の基底部に配置される排水管と、排水管に接続され、排水管から鉛直上向きに延出するガス抜き用管と、ガス抜き用管を介して排水管に設けられ、排水管を流れる排水の水素イオン指数を測定するセンサと、を含む。
【0006】
本発明の一形態のCO2脱離状態検出システムは、CO2固定化素材に固定化されたCO2の脱離状態を検出するCO2脱離状態検出システムであって、CO2固定素材を堆積する堆積場の基底部に配置される排水管から鉛直上向きに延出するガス抜き用管に設けられたセンサから排水管を流れる排水の水素イオン指数を収集するサーバ装置を含み、サーバ装置は、複数のセンサの少なくとも一部によって検出されたセンサ水素イオン指数と、このセンサ水素イオン指数を検出したセンサの位置と、に基づいて、堆積場に堆積されたCO2固定化素材の少なくとも酸性である酸性範囲を判定する。
【発明の効果】
【0007】
以上の形態によれば、堆積場におけるからCO2が脱離した区画を水素イオン指数によって判定することができるCO2脱離状態検出装置及びCO2脱離状態検出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態のCO
2脱離状態検出装置が適用される処理場を説明するための上面図である。
【
図2】(a)は
図1中に示した線分IIA-IIAに沿う断面図、(b)は線分IIB-IIBに沿う断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態のCO
2脱離区画判定部を説明するための機能ブロック図である。
【
図5】
図1に示した処理場において、CO
2脱離区画判定部が酸性であることが検出されたガス抜き用管を中心とした所定の領域を示した図である。
【
図6】本発明の一実施形態のCO
2脱離状態検出装置が適用される処理場の変形例を説明するための上面図である。
【
図7】(a)は
図6中に示した線分VIIA-VIIAに沿う断面図、(b)は線分VIIB-VIIBに沿う断面図である。
【
図9】
図6に示した処理場において、CO
2脱離区画判定部が酸性であることが検出されたガス抜き用管を中心とした所定の領域を示した図である。
【
図10】本発明の一実施形態のCO
2脱離状態検出装置が適用される処理場の他の変形例を説明するための上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態のCO2脱離状態検出装置及びCO2脱離状態検出システムを説明する。本実施形態に用いる図面は、本発明の構成、各部の配置、機能、作用及び効果を説明することを目的とし、本発明の具体的な形状や縦横比等を限定するものではない。
【0010】
[排水管及びセンサ]
図1は、本実施形態のCO
2脱離状態検出装置が適用される廃棄物堆積場(以下、「処理場」と記す)1を説明するための上面図である。処理場1は、廃棄物を堆積可能な複数の領域を含んでいる。本実施形態は、以下、処理場1において廃棄物を堆積可能な領域の各々を「区画」と記す。以下、本実施形態では、
図1中に記したx,y,z座標を基準にして説明を行うものとする。
【0011】
処理場1に堆積される廃棄物は、例えば、産業廃棄物を焼却した焼却灰にCO
2を吸着させた部材である。このとき、焼却灰は「燃焼系副産物」に相当し、CO
2が吸着された燃焼系副産物はCO
2の「固定化素材」として機能する。なお、本明細書では、産業廃棄物を、以下、単に「廃棄物」と記す。
図2(a)は、
図1中に示した線分IIA-IIAに沿う模式的な断面図、
図2(b)は、線分IIB-IIBに沿う模式的な断面図である。なお、
図2(b)においては、排水管21、23の周囲の土等の図示を略している。
図3は、
図1中に示す範囲IIIの斜視図である。
図1に示すように、処理場1は、処理場1を長手方向に横切る幹線21と、幹線21から幹線21と交差する方向に延びる複数の枝線23と、を備えている。幹線21と枝線23とを総称して排水管21、23とも記す。
図1中のx,y,z座標においては、x軸が幹線21に沿うように設定され、y軸が枝線23に沿うように設定されている。z軸は地面から重力方向と反対の向きに設定されている。
【0012】
排水管21、23のうちの幹線21には、排水管21、23内で発生する気体を外部に放出するためのガス抜き用管25が接続されている。本実施形態は、
図1に示すように、幹線21のx方向(長手方向)に沿ってガス抜き用管25aから25dが接続されている。ガス抜き用管25aからガス抜き用管25dを区別する必要がない場合、ガス抜き用管25とも記す。ガス抜き用管25は、幹線21から鉛直上向き(z方向)に延出する。
【0013】
処理場1の廃棄物が堆積される区画は平地に対して土が掘り下げられた凹領域になっている。区画の平地と同じ高さの縁部13と最も低い底部11との間に等高線を示す。縁部13の外部には取水塔50があって、幹線21を流れる排水は、取水塔50に向かう。
【0014】
図2(a)に示すように凹領域101は、土100を掘り下げて形成されている。凹領域101の基底部101aは
図2(a)中の-x方向に沿って低くなる斜面になっている。斜面の相対的に低い側に向かう幹線21の端部は、不図示の管によって取水塔50に接続される。また、
図1に示すように、凹領域100の基底部101aは、両側から幹線21に向かって低くなっている。そのため、
図2(b)及び
図3に示すように枝線23の幹線21と接続する側の端部231は、他方の端部よりも低くなっている。
【0015】
排水管21、23は、透水管である。基底部101aと排水管21、23との間には防水シート28が配置され、排水管21、23と防水シート28との間には不図示の土が堆積されていてもよい。また、排水管21、23の上部には透水性の透水部材29の層が形成されている。
【0016】
透水管は、ポリ塩化ビニルやポリプロピレン等のプラスチックで作られたパイプドレインであってもよい。透水管は、内部に水を流す機能と、外部からの水を内部に透過させる機能と、廃棄物の侵入を阻止する機能を併せ持つものであればよい。透水部材29は、廃棄物から浸出した水を排水管21、23内に透し、廃棄物を通さない部材であればよい。本実施形態の透水部材29は、例えば、砕石を金網等に収容して成形した部材であってもよい。本実施形態は、このような部材で排水管21、23を覆い、廃棄物から浸出した水だけを排水管21、23に通し、廃棄物が排水管21、21内に入り込むことを防ぐことができる。また、本実施形態のこのような構成は、堆積される廃棄物の重量により排水管21、23が損なわれることを防いでいる。
【0017】
ガス抜き用管25は、幹線21から鉛直上向き(z方向)に延出する。
図3に示すように、本実施形態は、ガス抜き用管25を介してセンサ3が幹線21内に設けられている。センサ3は、幹線21を流れる排水の水素イオン指数を測定するpHセンサである。センサ3は、例えば、ガラス電極を含むセンサヘッド31と、ガラス電極を流れる電流値に応じた電気信号を外部に送出するワイヤ32と、を含む。センサ3は、ガス抜き用管25の上端部251からワイヤ32により吊り下げられて、センサヘッド31の少なくとも一部が幹線21の内部に位置するように設置される。なお、ガス抜き用管25は幹線21における枝線23との交点を除く位置に設けられているが、このような位置に設けることに限定されない。ただし、幹線21の枝線23と交差する位置を除いてガス抜き用管25を設ければ、枝線23を流れる排水の影響を受け難く、幹線21を流れる排水Wの水素イオン指数を正確に検出することができる点で好ましい。
【0018】
本実施形態は、幹線21に複数のガス抜き用管25が接続され、その各々にセンサ3が設けられている。本実施形態のCO
2脱離状態検出装置は、センサヘッド31からワイヤ32を介して出力された電気信号を、例えばネットワーク回線等の無線でCO
2脱離区画判定部4(
図4)に送信する通信装置35を備えている。なお、CO
2脱離区画判定部4については、後に詳述する。
【0019】
このような凹領域101に廃棄物を堆積させると、廃棄物から浸みだした水分(排水)Wが透水部材29を通って排水管21、23へ到達する。センサヘッド31は、幹線21を流れる排水Wと接触し、排水Wの水素イオン指数を検出する。水素イオン指数の検出は、センサヘッド31の電極を流れる電流値に応じたpH信号を生成することによって行われる。pH信号は、ワイヤ32を介して通信装置35に送信される。このとき、本実施形態は、予めセンサ3に複数のセンサ3の各々を特定する符号を割り当てる。そして、この符号と共にpH信号を通信装置35に送信する。通信装置35は、pH信号と、このpH信号に対応する符号とをCO2脱離区画判定部4に送信する。なお、pH信号の送信は、ネットワーク回線を通じて行ってもよく、ネットワーク回線以外の無線通信、さらには有線による通信で行ってもよい。本実施形態において、通信装置35は、送信部に相当する。
【0020】
また、それぞれの枝線23を流れる排水Wは、相対的に高い側の端部から幹線21に接続する低い側の端部231に向かって流れ、幹線21に流れ込む。幹線21に流れ込んだ排水Wは、幹線21内で相対的に高い側から低い側へ流れ、幹線21に接続する他の排水管を介して取水塔50に集められる。
【0021】
[CO
2脱離区画判定部]
図4は、CO
2脱離区画判定部4を説明するための機能ブロック図である。
図4に示すように、通信装置35から送信された信号を受信する通信部41を備えている。通信部41が受信する信号は、前述のpH信号と、センサ3の各々を特定する符号とを含んでいる。なお、本実施形態は、複数のセンサ3の全てからpH信号を受信することに限定されるものでなく、少なくともその一部からpH信号を受信するようにしてもよい。例えば、CO
2の脱離が問題にならない区画に設置されたセンサ3、あるいは未だ廃棄物が堆積されていない区画に設置されたセンサ3を稼働させないようにすることが考えられる。また、経験的に水素イオン指数の検出の粒度が粗くてよい場合、一部のセンサ3の稼働を停止することが考えられる。このようにすれば、センサ3の稼働に係る電力を抑える、あるいは通信装置35やCO
2脱離区画判定部4における処理の負荷を低減しながら検出に必要な情報を取得することができる。
【0022】
CO2脱離区画判定部4において、先ず、脱離判定部43は、それぞれのセンサ3によって検出された水素イオン指数(以下、「センサpH」と記す)について、センサpHに基づき、センサ3の検出対象である排水Wが酸性であるか否かを判定する。ここで、「酸性」は、pH信号が示す水素イオン指数が7より小さいことを示す。
【0023】
ここで脱離推定部45は、pH信号と共に送信された符号と、この符号が特定するセンサ3の、処理場1における位置とを対応付けるデータを予め有している。そして、脱離推定部45は、脱離判定部43により検出すべき排水Wが酸性と判断されたセンサ3について、符号に対応するセンサ3の位置を特定し、このセンサ3の位置に基づき、
図5にて後述されるように、処理場1において、CO
2が脱離している脱離区画を判定する。なお、酸性と判断されたセンサ3をディスプレイ等に表示し、作業者が脱離推定部45のかわりに脱離区画を判断してもよい。
【0024】
また、本実施形態は、水素イオン指数が7である場合、このセンサ3が設置されている区画が酸性に向かう可能性があると判定してもよい。また、本実施形態は、水素イオン指数が7より小さい、すなわち酸性であると判定した後、pHの値によってはCO2の脱離に影響しないと判定するようにしてもよい。このような判定は、例えば、各処理場の特性や廃棄物の特性により任意に応用可能である。また、脱離判定部43は、CO2の脱離を検出するために少なくとも酸性である領域を検出し、これを脱離区画として判定する。しかし、本実施形態は、このような構成に限定されるものでなく、同時に酸性の程度の他、各区画の中性あるいはアルカリ性及びアルカリ性の程度を判定してもよい。
【0025】
以上説明したCO2脱離区画判定部4に含まれる通信部41、脱離判定部43、脱離区画推定部45は、いずれもCPU(Central Processor Unit)、CPUの処理に必要な情報を少なくとも一時的に保存するメモリ、CPUの処理に使用されるワークメモリ等の公知のハードウェアと、ハードウェア上で実行されるプログラム等のソフトウェアが共同することにより実現される。
【0026】
[CO2脱離状態検出システム]
本実施形態は、CO2脱離区画判定部4を処理場1毎に、または処理場1を管理する管理者毎に設け、排水管21、23及びセンサ3と合せてCO2脱離状態検出装置を構成するようにしてもよい。また、本実施形態は、CO2脱離区画判定部4をサーバ装置として構成し、クラウドシステムを構築するようにしてもよい。サーバ装置として構成されるCO2脱離区画判定部4は、異なる管理者によって管理される複数の処理場1からpH信号を収取し、CO2の脱離区画の判定、または推定の結果を各管理者に提供するようにしてもよい。
【0027】
[CO
2脱離区画の判定]
次に、以上説明した構成により、CO
2の脱離区画を判定する処理を具体的に説明する。
図5は、検出例として、ガス抜き用管25aから25dのうちの、ガス抜き用管25c、25dに設置されたセンサ3が測定した水素イオン指数が酸性を示した場合のCO
2脱離区画を説明するための図である。
【0028】
図5において、脱離判定部43は、ガス抜き用管25c、25dに配置されたそれぞれのセンサ3(以下、センサ3c、センサ3d)が検出したセンサpHが酸性であると判断する。そして、脱離推定部45は、領域R
Aが脱離区画であると判定する。すなわち、排水管21、23の傾斜とセンサ3c、3dの位置から定まる排水Wが流れる方向において、先ず、センサ3c、3dの上流となる領域が脱離区画とされる。一方、ガス抜き用管25a、25bに配置されたそれぞれのセンサ3が検出したセンサpHは酸性でないことから、それらの上流となる領域は脱離区画とされない。以上の結果から、脱離推定部45は、幹線21に沿った方向においてガス抜き用管25bより下流側でガス抜き用管25dより上流側の領域で、かつ幹線21に対して枝線23が上流側となる領域である、領域R
Aを脱離区画であると推定ないし判定する。
【0029】
本実施形態では、以上の判定を、脱離推定部45が、センサpHが酸性であると判断されたセンサ3の位置の組み合わせとそれに応じた脱離区画とを対応付けたテーブルを参照することによって行う。このテーブルでは、例えば、ガス抜き用管25cに配置されるセンサ3(センサ3c)のみがセンサpHが酸性であると判断された場合は、幹線21に沿った方向においてガス抜き用管25bより下流側でガス抜き用管25cより上流側の領域で、かつ幹線21に対して枝線23が上流側となる領域が脱離区画となる。なお、この検出例は、ガス抜き用管25bより下流側でガス抜き用管25cより上流側の領域で脱離が生じているが、ガス抜き用管25cより下流側でガス抜き用管25dより上流側の領域では、脱離が生じていないということが推定できることを意味している。この場合、ガス抜き用管25bより下流側でガス抜き用管25cより上流側の領域から流れ出た酸性の排水Wは、ガス抜き用管25cより下流側でガス抜き用管25dより上流側の領域を通ってその領域の排水管21、23に導入される間に酸性でなくなることも推定できる。
【0030】
以上説明した本実施形態によれば、幹線21に接続されたガス抜き用管25を介してセンサ3を幹線21に設けたため、処理場1の既存の構成を流用してセンサ3を設置することができる。このため、センサ3の設置部を新たに設ける負荷が軽減し、CO2の脱離状態検出装置の構成を簡易化し、コストを低減することができる。また、本実施形態は、幹線21に対して鉛直上方に向かうガス抜き用管25にセンサ3を吊り下げるので、堆積物の堆積量によらずセンサ3を排水管の幹線21内で排水Wに接触させることができる。すなわち、廃棄物の堆積量が増し、その高さが高くなった場合、ガス抜き用管25は継ぎ合わされて、そのガス開放口が常に地上に露出するためである。このような本実施形態によれば、廃棄物の水素イオン指数に基づいて、廃棄物に吸着されたCO2の脱離状態をモニタリングし、CO2が脱離した、あるいは脱離の虞がある区画を特定することができる。
【0031】
[埋め立て計画への応用]
次に、以上説明した本実施形態のCO2の脱離状態に基づく、新たな廃棄物の埋め立て計画について説明する。本実施形態は、前述したように、水素イオン指数のうちの酸性のみを検出することに限定されず、中性、アルカリ性をも検出することができる。このため、新たに廃棄物を処理場1に堆積する(埋め立てる)場合、既に堆積されている廃棄物が酸性に傾いている区画近くへの堆積を避けるようにしてもよい。なお、ここでいう「近く」は、例えば、二つの区画が隣接して直接接触する場合、二つの区画の互いの縁部分が予め定めた距離の閾値以下である場合、二つの区画の境界の長さが予め定めた距離の閾値以上である場合であってもよい。
【0032】
さらに、本実施形態は、廃棄物の種別や特性によって焼却直後の水素イオン指数が相違する点に着目し、焼却直後から酸性の強い廃棄物は、他の廃棄物を堆積した区画から離れた区画に埋め立てられることが考えられる。さらに、本実施形態は、焼却直後からアルカリ性の強い廃棄物を本実施形態のCO2脱離区画判定部4において酸性と判定された廃棄物が堆積された区画の近くに堆積し、酸性の廃棄物の中和を促進することが考えられる。
【0033】
[変形例1]
次に、以上説明した実施形態の変形例1を説明する。
図6は、変形例1を説明するための上面図である。
図6に示すように、変形例1は、幹線21に代えて枝線23にガス抜き用管25eから25tを接続した点で実施形態と相違する。
図7(a)は、
図6中に示した線分VIIA-VIIAに沿う断面図、
図2(b)は、線分VIIB-VIIBに沿う断面図である。
図8は、
図6中に示す範囲VIIIの斜視図である。なお、変形例1においては、実施形態に示した構成と同様の構成に同様の符号を付し、その説明の一部を略している。
【0034】
図6、
図7(a)、
図7(b)及び
図8に示すように、変形例1は、ガス抜き用管25eから25tが複数の枝線23の各々に設けられ、このガス抜き用管25にセンサ3が接続されている点で実施形態と相違する。枝線23の中央にガス抜き用管25を設ければ、幹線21を流れる排水の影響を受け難く、かつ各枝線23を流れる排水Wの平均的な水素イオン指数を検出することができる点で好ましい。ただし、本実施形態は、このよう枝線23の各々にガス抜き用管25を設ける例に限定されるものではない。例えば、ガス抜き用管25は全ての枝線23に接続されることに限定されず、枝線23の一部に接続されてもよい。また、ガス抜き用管25は、枝線23に1つずつ接続される構成に限定されず、1つの枝線23に複数接続されてもよく、その位置は任意である。
【0035】
次に、変形例1のCO
2の脱離区画を判定する処理を説明する。表1は、ガス抜き用管25eから25t(表1中ではeからtで示す)に設置されたセンサ3が測定した水素イオン指数を「酸(酸性)」、「中(中性)」、「アルカリ(アルカリ性)」で示している。
図9は、表1に示した水素イオン指数のうち、酸性であることが検出された、ガス抜き用管25におけるセンサ3の位置に基づく脱離区画を説明する図である。
【0036】
【0037】
図9に示すように、脱離判定部43は、ガス抜き用管25e、25fおよびガス抜き用管25l、25m、25nにおけるセンサ3が、排水Wが酸性であることを判定する。そして、脱離推定部45は、上述の実施形態と同様、排水Wが流れる方向においてセンサ3の上流となる領域を脱離区画とする。すなわち、脱離推定部45は、領域R
B、R
Cを脱離区画と推定ないし判断する。
【0038】
[変形例2]
図10は、変形例2を説明するための上面図である。変形例2は、幹線21にガス抜き用管25aから25dを接続すると共に、枝線23にガス抜き用管25eから25tを接続した点で実施形態及び変形例1と相違する。なお、変形例2においても、
図1に示した構成と同様の構成に同様の符号を付し、その説明の一部を略している。
【0039】
表2は、ガス抜き用管25aから25t(表1中ではaからtで示す)に設置されたセンサ3が測定した水素イオン指数を「酸(酸性)」、「中(中性)」、「アルカリ(アルカリ性)」で示している。
【0040】
【0041】
図10においても、脱離判定部43は、
図9に示した例と同様に、ガス抜き用管25a、25e、25fおよびガス抜き用管25d、25l、25m、25nにおけるセンサ3が、排水Wが酸性であることを判定する。そして、脱離推定部45は、上述の実施形態と同様、排水Wが流れる方向においてセンサ3の上流となる領域を脱離区画とする。すなわち、脱離推定部45は、領域R
P、R
Eを脱離区画と推定ないし判断する。
【符号の説明】
【0042】
1 処理場
3 センサ
4 CO2脱離区画判定部
11 区画
13 領域
21、23 排水管(幹線、枝線)
21 幹線
25 ガス抜き用管
28 防水シート
29 透水部材
31 センサヘッド
32 ワイヤ
35 通信装置
41 通信部
43 脱離判定部
45 脱離推定部
47 表示部
50 取水塔
100 土
101 凹領域
101a 基底部
231 端部
251 上端部
【要約】
【課題】堆積場における焼却灰からCO
2が脱離した区画を水素イオン指数によって判定することができるCO
2脱離状態検出装置を提供する。
【解決手段】廃棄物を堆積する廃棄物堆積場の基底部に配置される排水管21、23と、排水管21、23に接続され、排水管21、23から鉛直上向きに延出するガス抜き用管25と、ガス抜き用管25を介して排水管21、23に設けられ、排水管21、23を流れる排水Wの水素イオン指数を測定するセンサ3と、によって、廃棄物に固定化されたCO
2の脱離状態を検出するCO
2脱離状態検出装置を構成する。
【選択図】
図3