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特許7607172中継装置のハンドオーバ処理を実行するための、中継装置、通信装置、制御方法、および、プログラム
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  • 特許-中継装置のハンドオーバ処理を実行するための、中継装置、通信装置、制御方法、および、プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-18
(45)【発行日】2024-12-26
(54)【発明の名称】中継装置のハンドオーバ処理を実行するための、中継装置、通信装置、制御方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/08 20090101AFI20241219BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20241219BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20241219BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20241219BHJP
【FI】
H04W36/08
H04W16/26
H04W88/08
H04W92/20 110
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024105444
(22)【出願日】2024-06-28
(62)【分割の表示】P 2020110808の分割
【原出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2024123263
(43)【公開日】2024-09-10
【審査請求日】2024-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】李 ヤンウェイ
【審査官】永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/246446(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/130495(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/033546(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/201487(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置と当該基地局装置に接続する通信装置との通信を中継する中継装置であって、
前記中継装置が他の基地局装置にハンドオーバする場合に、前記基地局装置から受信した前記通信装置のハンドオーバのためのRRCReconfigurationメッセージであって、前記通信装置のハンドオーバにおいて前記通信装置がランダムアクセス手順を実行する必要がないことを示す情報を含む前記RRCReconfigurationメッセージを前記基地局装置から受信する受信手段と、
前記受信手段により受信した前記RRCReconfigurationメッセージを前記通信装置に送信する送信手段と、を有することを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記受信手段は、前記RRCReconfigurationメッセージを受信した前記通信装置から、ランダムアクセス手順を実行することなく送信された、前記通信装置のハンドオーバのためのRRCReconfigurationCompleteメッセージを受信し、
前記送信手段は、受信した前記RRCReconfigurationCompleteメッセージを前記他の基地局装置に送信する、ことを特徴とする請求項1記載の中継装置。
【請求項3】
前記送信手段は、前記RRCReconfigurationCompleteメッセージに対する応答信号を前記通信装置に送信する、ことを特徴とする請求項2記載の中継装置。
【請求項4】
前記RRCReconfigurationメッセージには、前記通信装置の識別情報として、C-RNTI(Cell Radio Network Temporary Identifier)又はReestabUE-Id entityが含まれる、ことを特徴とする請求項2に記載の中継装置。
【請求項5】
前記受信手段は、前記基地局装置から前記中継装置のハンドオーバのための他のRRCReconfigurationメッセージであって、前記中継装置がランダムアクセス手順を実行する必要があることを示す情報を含む前記他のRRCReconfigurationメッセージを受信し、
前記送信手段は、前記他のRRCReconfigurationメッセージの受信に基づいて、前記他の基地局装置との間でランダムアクセス手順を実行した後に、前記中継装置のハンドオーバのための他のRRCReconfigurationCompleteメッセージを前記他の基地局装置に送信する、
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項6】
前記他のRRCReconfigurationメッセージには、IPアドレスに関連付けられた前記中継装置の識別情報が含まれる、ことを特徴とする請求項5記載の中継装置。
【請求項7】
基地局装置と中継装置を介して接続する通信装置であって、
前記中継装置が他の基地局装置にハンドオーバする場合に、前記通信装置のハンドオーバのためのRRCReconfigurationメッセージであって、前記通信装置のハンドオーバにおいて前記通信装置がランダムアクセス手順を実行する必要がないことを示す情報を含む前記RRCReconfigurationメッセージを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信した前記RRCReconfigurationメッセージに基づいて、前記ランダムアクセス手順を実行することなく、前記通信装置のハンドオーバのためのRRCReconfigurationCompleteメッセージを前記中継装置へ送信する送信手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項8】
前記受信手段は、前記RRCReconfigurationCompleteメッセージに対する応答信号を前記中継装置から受信する、ことを特徴とする請求項7記載の通信装置。
【請求項9】
前記RRCReconfigurationメッセージには、前記通信装置の識別情報として、C-RNTI(Cell Radio Network Temporary Identifier)又はReestabUE-Id entityが含まれる、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の通信装置。
【請求項10】
基地局装置と当該基地局装置に接続する通信装置との通信を中継する中継装置によって実行される制御方法であって、
前記中継装置が他の基地局装置にハンドオーバする場合に、前記基地局装置から受信した前記通信装置のハンドオーバのためのRRCReconfigurationメッセージであって、前記通信装置のハンドオーバにおいて前記通信装置がランダムアクセス手順を実行する必要がないことを示す情報を含む前記RRCReconfigurationメッセージを前記基地局装置から受信する受信工程と、
前記受信工程において受信した前記RRCReconfigurationメッセージを前記通信装置に送信する送信工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
基地局装置と中継装置を介して接続する通信装置によって実行される制御方法であって、
前記中継装置が他の基地局装置にハンドオーバする場合に、前記通信装置のハンドオーバのためのRRCReconfigurationメッセージであって、前記通信装置のハンドオーバにおいて前記通信装置がランダムアクセス手順を実行する必要がないことを示す情報を含む前記RRCReconfigurationメッセージを受信する受信工程と、
前記受信工程において受信した前記RRCReconfigurationメッセージに基づいて、前記ランダムアクセス手順を実行することなく、前記通信装置のハンドオーバのためのRRCReconfigurationCompleteメッセージを前記中継装置へ送信することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
コンピュータに、請求項10に記載の制御方法を実行させるためのプログラム。
【請求項13】
コンピュータに、請求項11に記載の制御方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局装置と端末装置との間の通信を中継する中継装置のハンドオーバ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)では、端末装置がネットワークへアクセスする手法をバックホールリンクに応用して使用可能とする技術が検討されている(非特許文献1参照)。この技術は、Integrated Access and Backhaul(IAB)と呼ばれる。IABノードと呼ばれる中継装置が、例えば5Gの基地局装置(IABドナー)との間で無線リンクを用いて接続を確立する。このとき、IABノードは、IABドナーと無線リンクを確立して直接接続してもよいし、IABドナーと直接又は間接的に接続が確立されている他のIABノードと無線リンクを確立して、間接的にIABドナーと接続を確立してもよい。このとき、IABノードは、基地局装置に接続する端末装置として機能することにより、このようなIABドナー側の他装置(上流装置)との間の無線接続を確立する。また、IABノードは、IABドナーとの接続が確立された後に、そのIABドナーと接続しようとする他のIABノードや端末装置との接続を確立することができる。この場合、IABノードは、基地局装置と同様に動作して、端末装置や、端末装置として動作する他のIABノード(下流装置)との無線接続を確立する。このように、IABノードは、端末機能(MT、Mobile Termination)と、基地局装置と同様の動作を行う機能(DU、Distributed Unit)とを有し、これらを用いて、上流装置と下流装置との間の通信を中継することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】3GPP、TR38.874、V16.0.0、2018年12月
【文献】3GPP、RP-193251、2019年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
3GPP リリース17では、IABノードの接続先のIABドナーの切り替えを伴うトポロジの変更技術の検討開始が提案されている(非特許文献2)。この技術によれば、例えば電車やバスなどの移動体に設置されたIABノードが移動する場合に、IABドナー自身の通信とIABドナーに接続されている他装置の通信を維持することが可能となる。
【0005】
本発明は、IABノードが接続先のIABドナーを切り替える際の処理の効率化技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による中継装置は、基地局装置と当該基地局装置に接続する通信装置との通信を中継する中継装置であって、前記中継装置が他の基地局装置にハンドオーバする場合に、前記基地局装置から受信した前記通信装置のハンドオーバのためのRRCReconfigurationメッセージであって、前記通信装置のハンドオーバにおいて前記通信装置がランダムアクセス手順を実行する必要がないことを示す情報を含む前記RRCReconfigurationメッセージを前記基地局装置から受信する受信手段と、前記受信手段により受信した前記RRCReconfigurationメッセージを前記通信装置に送信する送信手段と、を有する。
【0007】
本発明の別の一態様による通信装置は、基地局装置と中継装置を介して接続する通信装置であって、前記中継装置が他の基地局装置にハンドオーバする場合に、前記通信装置のハンドオーバのためのRRCReconfigurationメッセージであって、前記通信装置のハンドオーバにおいて前記通信装置がランダムアクセス手順を実行する必要がないことを示す情報を含む前記RRCReconfigurationメッセージを受信する受信手段と、前記受信手段により受信した前記RRCReconfigurationメッセージに基づいて、前記ランダムアクセス手順を実行することなく、前記通信装置のハンドオーバのためのRRCReconfigurationCompleteメッセージを前記中継装置へ送信する送信手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、IABノードが接続先のIABドナーを切り替える際の処理を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】IABノードおよびIABノードより下流に接続される通信装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】IABノードの機能構成例を示す図である。
図4】IABノードより下流に接続される通信装置の機能構成例を示す図である。
図5】無線通信システムで実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。本実施形態に係る無線通信システムは、3GPPで規定されたIntegrated Access and Backhaul(IAB)による中継伝送システムであり、IABドナー101およびIABノード111を含んで構成される。IABノード111は、IABドナー101と端末装置121又は端末装置122との間の通信を中継する中継装置である。すなわち、端末装置121又は端末装置122は、IABノード111を介して、IABドナー101に接続されている。なお、IABドナーが基地局装置として機能し、IABノードが中継装置として機能していると解されてもよい。本実施形態では、例えばIABノード111が移動することや接続中のIABドナー101との間の通信品質の劣化などによって、IABドナー101との間の接続を、他のIABドナー102との間の接続に切り替える(ハンドオーバする)ものとする。
【0012】
端末装置121および端末装置122は、IABノード111を介してIABドナー101と接続を確立している。このため、IABノード111がIABドナー102へハンドオーバしたことに伴って、端末装置121および端末装置122も、接続先の変更処理が必要となる。このため、IABドナー101は、IABノード111のハンドオーバのための制御信号と、そのIABノード111より下流側に接続されている通信装置(端末装置又は他のIABノード)のハンドオーバの制御信号とを別個に生成して、ハンドオーバ先のIABドナー102へ送信する。なお、端末装置(IABノード111や端末装置121および端末装置122)のそれぞれについてのハンドオーバ用の制御信号は、例えば、その端末装置についての、識別情報(ID)、名前、使用していた接続パラメータの情報を含みうる。なお、この制御信号は、ハンドオーバ元の基地局装置からハンドオーバ先の基地局装置へ送信されるHANDOVER REQUESTメッセージに対応する。なお、IABドナー101は、この制御信号を送信した場合に、IABノード111と、IABノード111より下流に接続されている通信装置(端末装置や他のIABノード)に関する情報を削除しうる。
【0013】
なお、上述の識別情報(ID)は、基地局装置がそれぞれの端末装置、IABノードに割り当てる識別子である、C-RNTI(Cell Radio Network Temporary Identifier)、または、C-RNTIとphysCellId(物理セルID)とから導出(例えば算出)される、ReestabUE-Identityとすることができる。また、IABノード111より下流側に接続されている通信装置がIABノードである場合には、それぞれの(5Gの無線アクセスネットワークノードとしての)IABノードに割り当られているGlobal NG-RAN Node IDやIPアドレスが識別情報(ID)として用いられうる。
【0014】
そして、ハンドオーバ先のIABドナー102は、IABノード101と端末装置121および端末装置122のハンドオーバ用の制御信号を受信すると、その制御信号への応答信号をそれぞれIABドナー101へ送信する。ここでの応答信号は、例えば、IABノードや端末装置のそれぞれについて、使用していた接続パラメータに基づいて決定される、ハンドオーバ後に使用すべき接続パラメータの情報を含みうる。なお、この応答信号は、ハンドオーバ先の基地局装置からハンドオーバ元の基地局装置へ送信されるHANDOVER REQUEST ACKNOWLEDGEメッセージに対応する。
【0015】
IABドナー101は、応答信号を受信すると、IABノード111のためのハンドオーバのための制御信号と、IABノード111より下流側に接続されている通信装置のためのハンドオーバのための制御信号とをIABノード111へ送信する。なお、ここでのハンドオーバのための制御信号は、例えば、従来のRRCReconfigurationメッセージに対応する。ここで、IABノード111のための制御信号には、接続の切り替え先(IABドナーB)との間での同期確立処理(例えばランダムアクセス処理)が必要であることを示す情報が含まれうる。
【0016】
一方、IABノード111より下流側に接続されている通信装置は、直接接続している相手装置(例えば端末装置121および端末装置122にとってはIABノード111)に変化がないため、これらの装置のための制御信号には同期確立処理が不要であることを示す情報が含まれうる。このため、IABノード111より下流側に接続されている通信装置は、この制御信号を受信すると、ランダムアクセス処理などを実行することなく、応答メッセージ(RRCReconfigurationCompleteメッセージ)をIABノード111へ送信して、それに対する工程応答を受信したことに応じて、ハンドオーバに成功したと判定しうる。このとき、各装置は、IABノード111を経由して受信した制御信号に、IABドナー102との間の接続パラメータの情報が含まれているため、IABドナー102との接続が確立されたと判定されうる状態となる。
【0017】
しかしながら、IABノード111より下流に接続されている通信装置は、IABノード111との接続をそのまま維持することができるが、IABノード111は、IABドナー102との接続を確立できないことがありうる。すなわち、IABノード111は、ハンドオーバ(例えばランダムアクセス)に失敗することがありうる。このとき、IABノード111は、他のIABドナー(又はそのIABドナーとの通信を中継する他のIABノード)との間で再接続処理を実行して、接続を確立することができる。この場合、IABノード111の再接続先のIABドナーと、IABノード111より下流に接続されている通信装置が接続されているはずのIABドナーとが異なりうる。そして、この不整合により、接続パラメータの不整合が発生するなど、IABノード111が中継装置として適切に機能を維持することができなくなりうる。
【0018】
このような事情に鑑み、本実施形態に係るIABノード111は、IABノード111のためのハンドオーバのための第1の制御信号と、IABノード111より下流に接続されている通信装置のための第2の制御信号とをハンドオーバ元のIABドナー101から受信した場合に、その第2の制御信号の転送を保留する。そして、IABノード111は、第2の制御信号の転送を保留している間に、ハンドオーバ先のIABドナー102へのハンドオーバのための処理を実行する。ここで、IABノード111は、同期処理の確立が必要であるため、ランダムアクセス処理(ランダムアクセスプリアンブルの送信・ランダムアクセスレスポンスの受信)を実行する。なお、ここでのランダムアクセス処理は、4ステップのランダムアクセス処理であってもよいし、2ステップのランダムアクセス処理であってもよい。また、ここでのランダムアクセスは、競合ベースのcontention-based random access(CBRA)であってもよいし、非競合ベースのcontention-free random access(CFRA)であってもよい。そして、IABノード111は、ランダムアクセス処理を実行してハンドオーバ先のIABドナー102との接続を確立した後に、転送を保留していた第2の制御信号をIABノード111より下流に接続されている通信装置へ送信する。これにより、IABノード111がハンドオーバに成功してから、下流に接続されている通信装置のためのハンドオーバの制御信号が送信されるため、IABノード111の接続先のIABドナーと、下流に接続されている通信装置の接続先のドナーとが一致しなくなることを防ぐことができる。なお、IABノード111は、ハンドオーバに失敗した場合は、第2の制御信号を破棄しうる。この場合、IABノード111が接続の再確立をした後に、下流の通信装置のハンドオーバ処理を実行しうる。
【0019】
なお、IABノード111は、ハンドオーバ先の基地局装置からのRandom access Responseを受信することによってハンドオーバの成功を認識してもよいし、contention resolutionを受信することによってハンドオーバの成功を認識することもできる。また、IABノード111は、ハンドオーバ処理の開始時に起動するタイマが満了したことにより、ハンドオーバの失敗を認識してもよいし、Random access preambleの送信回数が規定値を超過したことに応じてハンドオーバの失敗を認識することもできる。
【0020】
なお、IABノード111は、ハンドオーバに成功した場合、そのハンドオーバ先のIABドナー102との間で、中継伝送のための経路設定等が完了した後に、保留していた第2の制御信号を転送してもよい。例えば、F1インタフェースの確立後に、保留されていた第2の制御信号が転送されるようにしうる。
【0021】
また、IABノード111は、例えば、第2の制御信号を保留せずに送信し、その第2の制御信号に応答して下流の通信装置から送信される第3の制御信号の受信と、その後の応答信号の送信との間にハンドオーバを試行しうる。そして、IABノード111は、第3の制御信号の受信の際に、ハンドオーバに成功していた場合は、応答信号をその第3の制御信号の送信元の装置へ送信するようにしてもよい。一方、IABノード111は、第3の制御信号の受信の際に、ハンドオーバに成功していない場合は、応答信号の送信を保留しうる。この場合、IABノード111は、ハンドオーバの成功後に、応答信号を送信しうる。なお、第3の制御信号はRRCReconfigurationCompleteメッセージであり、応答信号はRLC ACKでありうる。なお、RLCは、Radio Link Controlの頭字語であり、RLC ACKは、RLC層の肯定応答である。
【0022】
上述の処理では、IABノード111が、下流の通信装置のハンドオーバのための所定の制御信号(例えばRRCReconfigurationメッセージ)の送信を保留する場合について説明した。これに対して、IABノード111は、ハンドオーバが成功するまで、その下流の通信装置に対して所定の信号(例えばRRCReconfigurationCompleteメッセージ)の送信を保留させてもよい。この場合、IABノード111は、IABノード111より下流に接続されている通信装置に対して、ハンドオーバの完了時に、ハンドオーバに成功したことを示す情報を通知しうる。なお、IABノード111が中継経路に関する設定を完了した後に、この情報が通知されてもよい。すなわち、IABノード111は、自装置より下流に接続されている通信装置のハンドオーバのための信号の送受信の保留を解除すべき条件が満たされたことを示す情報を、その下流の通信装置に通知しうる。そして、IABノード111より下流に接続されている通信装置は、ハンドオーバに成功したことを示す情報の通知を受信したことに応じて、所定の信号をIABノード111へ送信する。一方、IABノード111は、IABノード111より下流に接続されている通信装置に対して、ハンドオーバに成功しなかった場合に、ハンドオーバに失敗したことを示す情報を通知しうる。そして、IABノード111より下流に接続されている通信装置は、ハンドオーバに失敗したことを示す情報の通知を受信したことに応じて、IABノード111から受信したハンドオーバのための所定の制御信号を破棄しうる。
【0023】
以上のようにして、IABノード111がハンドオーバに失敗した場合に、そのIABノード111より下流に接続されている通信装置がハンドオーバに成功したと判定してしまうことによる、接続先のIABドナーのミスマッチが発生することを防ぐことができる。
【0024】
なお、IABノード111は、自装置のハンドオーバの処理が完了するまで、新たな端末装置がIABノード111への接続処理を開始するのを防ぐように制御を行いうる。例えば、IABノード111は、例えばハンドオーバ元のIABドナー101からハンドオーバのための制御信号(例えばRRCReconfigurationメッセージ)を受信したことに応じて、自装置が送信する報知信号(例えばSystem Information Block Type 1など)にセルへの接続ができないことを示す情報(例えばcellBarred)を設定しうる。これによれば、ハンドオーバの失敗時に、端末装置を新規に接続させるために行われたシグナリングが無駄になることを防ぐことができる。
【0025】
なお、図1では、IABノード111が、IABドナー101又はIABドナー102に直接接続する場合について例示しているが、他のIABノードを介してIABドナーに接続されてもよい。また、端末装置121又は端末装置122は、他のIABノードであってもよい。また、図1では、少数のIABドナー、IABノード、および端末装置のみを示しているが、一般性を失うことなく、より多数のIABドナー、IABノード、および端末装置が存在しうる。
【0026】
(装置構成)
続いて、上述のような処理を実行するIABノードおよび端末装置の構成について説明する。図2に、IABノードおよび端末装置のハードウェア構成例を示す。IABノードおよび端末装置は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を有する。IABノードおよび端末装置では、例えばROM202、RAM203及び記憶装置204のいずれかに記録された、上述のようなIABノードおよび端末装置の各機能を実現するコンピュータが可読のプログラムがプロセッサ201により実行される。なお、プロセッサ201は、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の1つ以上のプロセッサによって置き換えられてもよい。
【0027】
IABノードおよび端末装置は、例えばプロセッサ201により通信回路205を制御して、相手装置(IABドナー、IABノード、端末装置など)との間の通信を行う。なお、図2では、IABノードおよび端末装置は、1つの通信回路205を有するような概略図を示しているが、これに限られない。例えば、IABノードは、例えば、IABドナーとの通信用の通信回路と、他のIABノードや端末装置との通信用の通信回路とを有してもよい。また、端末装置は、セルラ通信用の通信回路と、他の無線規格に準拠した通信のための通信回路とを有してもよい。
【0028】
図3に、IABノードの機能構成例を示す。IABノードは、例えば、ハンドオーバ処理部301、制御データ送信制御部302、および、制御データ保留制御部303を含んで構成される。なお、IABノードは、これら以外の通常のIABノードとしての機能(端末機能および基地局機能)を当然に果たすことができるように構成される。また、これらの機能構成の一部又は全部は、例えばプロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されたプログラムを実行することにより実現されうる。また、この機能構成を実現する専用のハードウェアが用意されてもよい。また、例えば、通信回路205内に含まれるプロセッサが専用のプログラムを実行することによって、図3の機能構成を実現してもよい。また、図3の機能の一部が省略され、又は、図3の機能が同様の能力を有する他の機能によって置き換えられてもよい。
【0029】
ハンドオーバ処理部301は、IABノード自身の移動等によって接続先のIABドナーの変更を伴うハンドオーバを実行する際の各種処理を実行する。例えば、ハンドオーバ処理部301は、ハンドオーバ元のIABドナーから、同期確立処理が必要であることを示すRRCReconfigurationメッセージを受信したことに応じて、指定されたハンドオーバ先のIABドナーに対してランダムアクセスプリアンブルを送信する。そして、ハンドオーバ処理部301は、ハンドオーバ先のIABドナーからランダムアクセスレスポンスを受信した場合に、RRCReconfigurationCompleteメッセージをそのハンドオーバ先のIABドナーへ送信して、ハンドオーバを完了する。なお、ハンドオーバ処理部301は、その後の中継経路の設定等の中継装置としての設定を併せて実行しうる。
【0030】
制御データ送信制御部302は、IABノードがハンドオーバ処理を実行する際に、IABノード自身より下流に接続されている通信装置のハンドオーバのための制御データを送信する。なお、制御データは、ハンドオーバ元のIABドナーから受信したRRCReconfigurationメッセージでありうる。また、制御データは、IABノードより下流に接続されている通信装置から受信するRRCReconfigurationCompleteメッセージへの応答信号(RLC ACK)でありうる。制御データ保留制御部303は、例えば、制御データ送信制御部302が制御データを送信するのを保留させる制御を実行しうる。例えば、制御データ保留制御部303は、IABノード自身のハンドオーバが成功するまで、IABノードより下流に接続されている通信装置へ、それらの装置のハンドオーバのためのRRCReconfigurationメッセージの送信を保留しうる。また、制御データ送信制御部302は、IABノード自身のハンドオーバが成功したか否かによらず、IABノードより下流に接続されている通信装置へ、それらの装置のハンドオーバのためのRRCReconfigurationメッセージを送信するように構成されうる。この場合、制御データ保留制御部303は、下流の通信装置からのRRCReconfigurationCompleteメッセージに対する応答信号(RLC ACK)の送信を保留しうる。
【0031】
また、制御データ保留制御部303は、下流の通信装置に対して、IABノードがハンドオーバに成功するまで、RRCReconfigurationCompleteメッセージを保留するように制御しうる。この場合、制御データ送信制御部302は、IABノード自身のハンドオーバが成功したか否かによらず、IABノードより下流に接続されている通信装置へ、それらの装置のハンドオーバのためのRRCReconfigurationメッセージを送信するように構成されうる。そして、制御データ保留制御部303は、ハンドオーバ処理部301がハンドオーバに成功したか失敗したかを制御データ送信制御部302に確認させ、そのハンドオーバの成功又は失敗を示す情報を下流の通信装置に送信するように制御データ送信制御部302を制御する。ハンドオーバの成功を示す情報が下流の通信装置に通知された場合、下流の通信装置からはRRCReconfigurationCompleteメッセージが送信されることとなる。この場合、制御データ送信制御部302は、RLC ACKをその下流の通信装置へ送信して、その下流の通信装置のハンドオーバ処理を終了する。一方、ハンドオーバの失敗を示す情報が下流の通信装置に通知された場合、下流の通信装置はRRCReconfigurationメッセージを破棄することとなる。この場合、IABノードは、別のIABドナーへの再接続を試行し、IABノードがその再接続に成功したことに応じて、下流の通信装置もその再接続先のIABドナーへの接続を試行する。なお、下流の通信装置は、IABノード以外の装置への再接続処理を実行してもよい。
【0032】
図4に、下流の通信装置がRRCReconfigurationCompleteメッセージの送信を保留する場合の、下流の通信装置(端末装置又は他のIABノード)の機能構成例を示す。この装置は、例えば、制御データ送受信部401および制御データ保留処理部402を含む。なお、この装置は、これら以外の通常の端末装置又はIABノードとしての機能を当然に果たすことができるように構成される。なお、この装置がIABノードである場合、図3の機能も当然似有しうる。また、これらの機能構成の一部又は全部は、例えばプロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されたプログラムを実行することにより実現されうる。また、この機能構成を実現する専用のハードウェアが用意されてもよい。また、例えば、通信回路205内に含まれるプロセッサが専用のプログラムを実行することによって、図4の機能構成を実現してもよい。また、図4の機能の一部が省略され、又は、図4の機能が同様の能力を有する他の機能によって置き換えられてもよい。
【0033】
制御データ送受信部401は、上流のIABノードから、自装置のハンドオーバのための制御データとして、RRCReconfigurationメッセージを受信する。制御データ保留処理部402は、RRCReconfigurationメッセージに続いて、ハンドオーバに成功したことを示す情報を受信するまで、そのRRCReconfigurationメッセージに対するRRCReconfigurationCompleteメッセージの送信を保留する。そして、制御データ保留処理部402は、制御データ送受信部401がハンドオーバに成功したことを示す情報を受信したことに応じて、保留を解除し、RRCReconfigurationCompleteメッセージを送信するように制御データ送受信部401へ指示を出力する。一方、制御データ保留処理部402は、制御データ送受信部401がハンドオーバに失敗したことを示す情報を受信した場合には、先に受信されたRRCReconfigurationメッセージを破棄する。
【0034】
(処理の流れ)
続いて、図5を用いて、無線通信システムで実行される処理の流れの例について説明する。なお、ここでは、IABノード111が、ハンドオーバの開始から中継経路に関する設定が完了するまで、RRCReconfigurationメッセージの送信を保留する場合の処理例を示す。しかしながら、これは一例に過ぎず、IABノード111は、例えばハンドオーバの成功後、中継経路に関する設定が完了する前まで、RRCReconfigurationメッセージの送信を保留してもよい。また、IABノード111は、RLC ACKの送信を保留してもよいし、下流の通信装置にRRCReconfigurationCompleteメッセージの送信を保留させてもよい。
【0035】
本処理では、まず、IABノード111が接続しているIABドナー101が、IABノード111における、IABドナー101からの信号の第1の無線品質の劣化や、IABドナー102からの信号の第2の無線品質が、所定レベルを超えて第1の無線品質を上回ったことなどに応じて、IABノード111をハンドオーバさせることを決定する。そして、IABドナー101は、IABノード111より下流に接続されている通信装置を特定し、それらの装置のためのHANDOVER REQUESTメッセージと、IABノード111のためのHANDOVER REQUESTメッセージとを生成して、ハンドオーバ先のIABドナー102へ送信する(S501)。IABドナー102は、各装置のためのHANDOVER REQUESTメッセージから、各装置が使用している接続パラメータ等の情報を取得する。そして、IABドナー102は、ハンドオーバ後に各装置が使用すべき接続パラメータなどを決定し、その情報をそれぞれが含む、各装置宛のHANDOVER REQUEST ACKNOWLEDGEメッセージを生成して、ハンドオーバ元のIABドナー101へ送信する(S502)。
【0036】
そして、IABドナー101は、HANDOVER REQUEST ACKNOWLEDGEメッセージを受信すると、そのメッセージに基づいて、IABノード111と、IABノード111より下流に接続されている通信装置のためのRRCReconfigurationメッセージを生成して、IABノード111へ送信する(S503、S504)。このとき、IABノード111へのRRCReconfigurationメッセージは、ランダムアクセス処理等の同期確立処理を実行すべきことを示しうる。一方、IABノード111より下流に接続されている通信装置へのRRCReconfigurationメッセージは、ランダムアクセス処理等の同期確立処理を実行しないことを示しうる。なお、図5では、同期確立処理が必要であることを「w sync」との表記により表し、同期確立処理が不要であることを「wo sync」との表記により表している。
【0037】
本例では、IABノード111は、下流の通信装置のためのRRCReconfigurationメッセージを受信しても、そのメッセージの下流の通信装置への転送を一時保留する。そして、IABノード111は、まず、ハンドオーバ先のIABドナー102への接続を試行する。すなわち、IABノード111は、自装置宛のRRCReconfigurationメッセージに基づいて、IABドナー102との間でランダムアクセス処理を実行して同期を確立する(S505、S506)。そして、IABノード111は、ハンドオーバ先のIABドナー102へ、自装置についてのRRCReconfigurationCompleteメッセージを送信して(S507)、ハンドオーバを完了する。その後、IABノード111は、中継経路に関する設定をIABドナー102との間で実行する(S508)。例えば、IABノード111は、F1インタフェースを確立するための要求(F1 SETUP REQUEST)メッセージをIABドナー102へ送信し、IABドナー102は、その要求メッセージに対する応答(F1 SETUP RESPONSE)メッセージをIABノード111へ送信する。その後、UE CONTEXT SETUP REQUESTおよびUE CONTEXT SETUP RESPONSEが送受信され、バックホール(BH)のルーティング設定が実行される。
【0038】
IABノード111は、中継経路に関する設定を完了すると、S504で受信し、転送を保留していた下流の通信装置のためのRRCReconfigurationメッセージを、それぞれの装置へ送信する(S509、S511)。そして、IABノード111は、各装置からRRCReconfigurationCompleteメッセージを受信すると、そのメッセージをIABドナー102へ転送する(S510、S512)。このRRCReconfigurationCompleteメッセージの送受信によって、下流の通信装置とIABドナー102との間のハンドオーバが完了する。なお、IABノード111は、これらの下流の通信装置に対して、RLC ACKを送信して(不図示)、ハンドオーバ処理を完了し、下流の通信装置は、RLC ACKを受信したことに応じてハンドオーバに成功したと判定しうる。
【0039】
このように、本実施形態では、IABノード111が、ハンドオーバを実行する際に、自装置より下流に接続されている通信装置へのメッセージの送信を保留し、またはそれらの装置にメッセージの送信を保留させることによって、下流の通信装置がハンドオーバ処理を先に完了することを防ぐ。これにより、上流側のIABノード111のハンドオーバが成功してから下流側のハンドオーバ処理が完了することにより、IABノード111と下流の通信装置との間で、接続先のIABドナー(換言すれば接続パラメータ)の齟齬が発生することを防ぐことができる。
【0040】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5