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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/00 20060101AFI20241220BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
F25B43/00 G
F25B43/00 N
F25B1/00 396G
F25B1/00 396J
F25B1/00 396Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020069448
(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公開番号】P2021165614
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】川邉 義和
(72)【発明者】
【氏名】飯高 誠之
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/140887(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/140870(WO,A1)
【文献】特開平10-300284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動冷媒を圧縮して送り出す圧縮機と、室外送風機によって送られた室外空気と前記作動冷媒との間で熱交換する室外熱交換器とを有する室外機と、
前記作動冷媒と室内送風機によって送られた室内空気との間で熱交換する室内熱交換器を有する室内機とで、
冷凍あるいはヒートポンプサイクルを構成する空気調和機であって、
前記作動冷媒に、少なくとも2 種類以上の沸点の異なる冷媒の混合体を用い、前記作動冷媒の高沸点冷媒として強燃性あるいは可燃性を有する冷媒を使用するとともに、前記室外機に前記作動冷媒の液を貯留する冷媒貯留手段を備え、
前記冷媒貯留手段は、前記室外熱交換器の途中に、前記作動冷媒を貯留する第1の冷媒貯留手段であって、前記第1の冷媒貯留手段に貯留された液冷媒を導出し、凝縮液側の循環冷媒を冷却する第1の冷媒間熱交換手段を経由して前記圧縮機の吸入口へ導き、
前記室外熱交換器における前記室内熱交換器側と前記第1の冷媒間熱交換手段の間に、冷媒を減圧膨張させる膨張弁を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
作動冷媒を圧縮して送り出す圧縮機と、室外送風機によって送られた室外空気と前記作動冷媒との間で熱交換する室外熱交換器とを有する室外機と、
前記作動冷媒と室内送風機によって送られた室内空気との間で熱交換する室内熱交換器を有する室内機とで、
冷凍あるいはヒートポンプサイクルを構成する空気調和機であって、
前記作動冷媒に、少なくとも2 種類以上の沸点の異なる冷媒の混合体を用い、前記作動冷媒の高沸点冷媒として強燃性あるいは可燃性を有する冷媒を使用するとともに、前記室外機に前記作動冷媒の液を貯留する冷媒貯留手段を備え、
前記冷媒貯留手段は、前記圧縮機の吸入口の前に、前記作動冷媒を貯留する第2の冷媒貯留手段であって、前記第2の冷媒貯留手段の内部に貯留された冷媒と、凝縮液側の循環冷媒との間で熱交換する第2の冷媒間熱交換手段を備え
前記室外熱交換器における前記室内熱交換器側と前記第2の冷媒間熱交換手段の間に、冷媒を減圧膨張させる膨張弁を備えることを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
前記作動冷媒の高沸点冷媒として炭化水素を使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記炭化水素としてプロパンあるいはイソブタンを使用することを特徴とする請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記作動冷媒の低沸点冷媒として、1,1,2-トリフルオロエチレン(HFO1123)、1,1-ジフルオロエチレン(HFO1132a)、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO1132e)のうち少なくとも1つを使用することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記第1の冷媒貯留手段が気液分離器であって、上部に前記第1の室外熱交換器に接続する第1の接続口を、下部に前記第1の冷媒間熱交換手段と接続する液冷媒排出口を、前記第1の接続口と前記液冷媒排出口の間の位置に、第2の室外熱交換器に接続する第2の接続口を備えることを特徴とした請求項1に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記第2の冷媒貯留手段がアキュームレータであって、前記第2の冷媒貯留手段内の所定の高さに前記第2の冷媒間熱交換手段を配置することを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍およびヒートポンプサイクルを用いて空気調和を行なう空気調和機において、非共沸混合冷媒を使用する装置の安全性と運転効率の向上を図る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年は、地球温暖化防止の観点から空気調和機の運転効率を重要視する動きに加え、温暖化係数の大きい冷媒の使用を規制する動きが加速されている。
【0003】
温暖化係数の小さな冷媒としては、もともと自然界に存在する二酸化炭素、プロパンやブタンのような炭化水素などが、人工的に合成されるフロンとしては、分子構造に二重結合を有し、大気中では短時間で分解してしまうハイドロフルオロオレフィン(HFO)などが注目されている。
【0004】
しかしながら、二酸化炭素は動作圧力が高く空気調和機として使用するには運転効率の点で難があり、炭化水素は強燃性のため安全性について課題があり、HFOである2,3,3,3-テトラフルオロー1-プロペン(R1234yf)、1,3,3,3-テトラフルオロー1-プロペン(R1234ze)などは微燃性を有し、沸点が高く圧力損失も大きいため運転効率の点に難がある場合がある。
【0005】
他にも、1,1,2-トリフルオロエチレン(HFO1123)も提案があり、この冷媒はR1234yfなどに比べ沸点が好ましい特性を示すが、微燃性を有し自己分解反応を起こしやすいので、単体で使用した場合、所定の高温高圧下においては圧縮機のモータ部などでの放電を引き金に自己分解反応を起こし爆発する危険性がある。
【0006】
また、1,1-ジフルオロエチレン(HFO1132a)、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO1132e)についても、地球温暖化防止に効果的な冷媒となる可能性が指摘されているが、HFO1123と同様の課題が存在すると考えられる。
【0007】
こうした課題のため、単体で総合的に優れた特性を示す冷媒を選択することは難しく、いくつかの冷媒を選別し混合して用いることに可能性が見出されている。
【0008】
ここで、種類の異なる冷媒を混合すると、多くの場合それぞれの冷媒の沸点は同じではなく、その混合冷媒は一定の圧力下における飽和温度は一定にはならず、液相側の飽和温度が気相側の飽和温度よりも低くなる、温度滑りと呼ばれる特性を示す。
【0009】
さらに、気液二相状態の冷媒の成分は気相と液相で異なり、気相のほうが低沸点成分を多く含んでいる。
【0010】
一般に、温度滑りによる飽和温度の差や、気相液相の組成変化は混合する冷媒の種類や混合比率によって異なり、温度滑りは空気調和機の性能を低下させる一因となる。
【0011】
また、温暖化係数の小さな冷媒は、可燃性を示すとか、構造が不安定であるなどの特徴を有することが多く、安全性や信頼性を向上させるための技術開発が必要である。
【0012】
その技術の一つに、蒸発器から圧縮機に送られる冷媒を加熱する加熱機構を備え、信頼性の向上と性能の向上を図る技術がある。
【0013】
加熱機構により、蒸発器から圧縮機に送られる冷媒を加熱する技術の一例として、特許文献1の冷凍装置がある。
【0014】
図4に示すように、特許文献1の冷凍装置の一例である空気調和機1は、その冷媒回路210を、駆動モータ2aによって駆動される密閉式の圧縮機2、熱源側熱交換器4、膨張機構5、利用側熱交換器6、加熱機構8である内部熱交換器11、入り口逆止弁16a、16bと出口逆止弁16c、16dからなるブリッジ回路16、レシーバ18、アキュームレータ17で構成されている。
【0015】
ブリッジ回路16によって、冷房運転、暖房運転どちらにおいても、内部熱交換器11を流れる冷媒は入口管19aから流入し、出口管19bへ流出する。
【0016】
使用する冷媒の例としては、炭素数3のHFO冷媒あるいは、その混合冷媒を挙げており、具体的な例としてHFOではR1234yfあるいは、R1234ze、混合する冷媒としてジフルオロメタン(R32)、ペンタフルオロエタン(R125)が挙げられている。
【0017】
上記の冷媒の温暖化係数(100年間)は、R32が675、R1234yfとR1234zeはともに4であり温暖化防止においては重要な冷媒である。ここで、R125は温暖化係数が3500と大きく、温暖化係数低減にはつながらず、不燃化が目的である。
【0018】
そして、冷房運転時に、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒は、熱源側熱交換器4で凝縮放熱した後、内部熱交換器11を経て膨張機構5において減圧され、利用側熱交換器6において蒸発吸熱して冷房を行った後、内部熱交換器11を経て圧縮機2へと戻る。
【0019】
この時、内部熱交換器11では、熱源側熱交換器4で放熱を行った後のまだ比較的温度の高い冷媒で、利用側熱交換器6で吸熱した後の冷媒を加熱し、液冷媒が圧縮機2に吸入されるのを防ぐ。
【0020】
さらに、空気調和機1では、アキュームレータ17には液冷媒が貯まらず、レシーバ18は凝縮後の冷媒を受けるため、混合冷媒の組成変化は最低限に抑えられ、所望の能力を得られるとしている。
【0021】
内部熱交換器は、一般的には液ガス熱交換器とも呼ばれ、膨張機構前の過冷却や圧縮機吸入前の過熱度を適切に保ち、膨張前のフラッシュガス生成や、圧縮機吸入の液戻りを防いだりすることを目的として設置され、信頼性や性能の向上などの効果をもたらすことで従来から知られている。
【0022】
また、別の技術の例として、特許文献2に示すように、液冷媒を貯留し、冷媒回路を循環する非共沸混合冷媒のうち低沸点成分組成を増加させる組成調整手段を備えるという技術がある。
【0023】
特許文献2では、組成調整手段としてアキュームレータを用いた例や、低沸点成分を多く蒸発させて高沸点成分の多い液冷媒と分離する充填塔や、高沸点成分の多い液冷媒を溜める液溜め容器などを備え、主冷媒回路と、接続・切り離しが可能な組成調整ユニットを用いた例が示され、低沸点成分の主冷媒回路への封入量を調整する方法が示されている。
【0024】
特許文献1や特許文献2で扱う冷媒は、不燃性あるいは微燃性に区分されるもので、装置の信頼性や性能の向上を目的としていた。しかし、炭化水素のような強燃性を有する冷媒を使用する場合、不燃性あるいは微燃性の冷媒と混合することにより、燃焼性を抑えることは可能であるが、環境側面を重視すると完全に不燃化することは困難である。
【0025】
そこで、安全性を高めるため、冷媒の漏洩を検知して送風手段を制御して冷媒の拡散を促進し、可燃域が生じるのを防ぐ技術や、特許文献3のように冷媒回路を室外機と室内機の間で遮断する技術がある。
【0026】
特許文献3においては、遮断弁を複数使用するのではなく、冷媒回路を膨張弁と遮断弁とで冷媒回路を遮断する安価な装置が開示されている。そして、制御装置によって冷媒の漏洩を検知すると膨張弁と遮断弁とで冷媒回路を遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【文献】特開2009-222348号公報
【文献】特許第3749092号公報
【文献】特開2000-97527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
上記従来の特許文献1の技術を用いた空気調和装置においては、前記内部熱交換器により、信頼性の向上を図っており、温度滑りや冷房運転時における接続配管の圧損などによる性能低下を防ぐ効果も得られるが、それだけでは十分な性能向上を得ることは困難である。
【0029】
特許文献2の技術においては、一定容量の液溜め容器を用いて循環組成を変えることにより性能の向上を図っているが、液溜め容器のために装置の大型化が避けられず、封入冷媒の一部は循環せずに滞留しているため冷媒封入量が増加するという課題がある。
【0030】
特許文献3の技術においては、室内機において冷媒が漏洩した場合に、循環する冷媒の組成で漏洩するため、漏洩冷媒の可燃性を低下させることはできないという課題がある。
【0031】
従って本発明は、こうした課題を解決し、温度滑りや圧損などによる性能低下を抑え、少ない冷媒封入量であっても、利用側熱交換器を流れる冷媒の組成を調整して室内機を流れる冷媒の性能自体を向上させるとともに、室内機に流れる冷媒の可燃性冷媒の割合を減じることで漏洩冷媒の可燃性を低下させることで、引火の危険性を抑制するものである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記従来の課題を解決するために、本発明の第1の空気調和機は、作動冷媒を圧縮して送り出す圧縮機と、室外送風機によって送られた室外空気と前記作動冷媒との間で熱交換する室外熱交換器とを有する室外機と、前記作動冷媒と室内送風機によって送られた室内空気との間で熱交換する室内熱交換器を有する室内機とで、冷凍あるいはヒートポンプサイクルを構成する空気調和機であって、前記作動冷媒に、少なくとも2種類以上の沸点の異なる冷媒の混合体を用い、前記作動冷媒の高沸点冷媒として強燃性あるいは可燃性を有する冷媒を使用するとともに、前記室外機に、前記作動冷媒の液を貯留する冷媒貯留手段を備えるものである。
【0033】
これにより、冷媒貯留手段に強燃性あるいは可燃性を有する高沸点冷媒を貯留し、室内機には高沸点成分の冷媒比率を低くして循環させることができる。
【0034】
また、上記従来の課題を解決するために、本発明の第2の空気調和機は、作動冷媒を圧縮して送り出す圧縮機と、室外送風機によって送られた室外空気と前記作動冷媒との間で熱交換する室外熱交換器とを有する室外機と、前記作動冷媒と室内送風機によって送られた室内空気との間で熱交換する室内熱交換器を有する室内機とで、冷凍あるいはヒートポンプサイクルを構成する空気調和機であって、少なくとも2種類以上の沸点の異なる冷媒の混合体を作動冷媒とし、前記室外熱交換器の途中に、前記作動冷媒の液を貯留する第1の冷媒貯留手段を設け、前記第1の冷媒貯留手段に貯留された液冷媒を導出し、凝縮液側の循環冷媒と熱交換する第1の冷媒間熱交換手段を経由して蒸発させ前記圧縮機の吸入口へ導くものである。
【0035】
これにより、第1の冷媒貯留手段には性能低下を招く沸点の高い冷媒を貯留することで、冷房運転時、室外熱交換器後半から室内熱交換器を経て圧縮機吸入口に至る冷媒回路には、性能に優れる低沸点成分の冷媒比率を高くして循環させることができ、さらに、流れる作動冷媒の量についても、これを減じて室内熱交換器から圧縮機吸入口までの圧損を低減することができる。
【0036】
また、上記従来の課題を解決するために、本発明の第3の空気調和機は、作動冷媒を圧縮して送り出す圧縮機と、室外送風機によって送られた室外空気と前記作動冷媒との間で熱交換する室外熱交換器とを有する室外機と、前記作動冷媒と室内送風機によって送られた室内空気との間で熱交換する室内熱交換器を有する室内機とで、冷凍あるいはヒートポンプサイクルを構成する空気調和機であって、少なくとも2種類以上の沸点の異なる冷媒の混合体を作動冷媒とし、前記圧縮機の吸入口の前に、前記作動冷媒の液を貯留する第2の冷媒貯留手段と、前記第2の冷媒貯留手段の内部に貯留された液冷媒と凝縮液側の循環冷媒との間で熱交換する第2の冷媒間熱交換手段を備えるものである。
【0037】
これにより、第2の冷媒貯留手段には性能低下を招く沸点の高い冷媒を貯留することで、前記第2の冷媒貯留手段から前記圧縮機を経て、前記室外熱交換と前記室内熱交換を経て、前記第2の冷媒貯留手段に戻る冷媒回路には性能に優れる低沸点成分の冷媒比率を高くして循環させることができ、冷房運転時であれば室外熱交換器を出た冷媒、暖房運転時であれば室内熱交換器を出た冷媒と、圧縮機の吸入口手前の冷媒で熱交換することで、温度滑りや圧損などによる性能低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の第1の空気調和機は、少なくとも2種類以上の沸点の異なる冷媒の混合体を用い、作動冷媒の高沸点冷媒として強燃性あるいは可燃性を有する冷媒を使用する場合において、冷媒貯留手段に強燃性あるいは可燃性を有する高沸点冷媒を貯留し、室内機を流れる冷媒中に含まれる高沸点成分の比率を低くすることができるので、室内機において冷媒漏洩が生じても、引火の危険性を低下させ、安全性に優れた空気調和機を提供することができる。
【0039】
また、本発明の第2の空気調和機は、少なくとも2種類以上の沸点の異なる冷媒の混合体を用い、第1の冷媒貯留手段と第1の冷媒間熱交換手段を用いて高沸点成分を貯留して、主たる冷媒循環回路を流れる低沸点成分の比率を増加させて作動流体の性能を高め、圧損を低減することができるので、運転効率に優れた空気調和機を提供することができる。
【0040】
また、本発明の第3の空気調和機は、少なくとも2種類以上の沸点の異なる冷媒の混合体を用い、第2の冷媒貯留手段と第2の冷媒間熱交換手段を用いて高沸点成分を貯留し、冷媒循環回路を流れる低沸点成分の比率を増加させて作動流体の性能を高め、温度滑りや圧損による性能低下を抑制することができるので、運転効率に優れた空気調和機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の実施の形態1の空調調和機の構成図
図2】本発明の実施の形態1の気液分離器の概略図
図3】本発明の実施の形態1のアキュームレータおよび液ガス熱交換器の概略図
図4】従来の液ガス熱交換器(内部熱交換器)を備えた空気調和機の構成図
【発明を実施するための形態】
【0042】
第1の発明は、作動冷媒を圧縮して送り出す圧縮機と、室外送風機によって送られた室外空気と前記作動冷媒との間で熱交換する室外熱交換器とを有する室外機と、前記作動冷媒と室内送風機によって送られた室内空気との間で熱交換する室内熱交換器を有する室内機とで、冷凍あるいはヒートポンプサイクルを構成する空気調和機であって、前記作動冷媒に、少なくとも2種類以上の沸点の異なる冷媒の混合体を用い、前記作動冷媒の高沸点冷媒として強燃性あるいは可燃性を有する冷媒を使用するとともに、前記室外機に前記作動冷媒の液を貯留する冷媒貯留手段を備えるものである。
【0043】
これにより、冷媒貯留手段に強燃性あるいは可燃性を有する高沸点冷媒を貯留し、室内機には高沸点成分の冷媒比率を低くして循環させることができる。
【0044】
従って、室内機において冷媒漏洩が生じても、引火の危険性を低下させ、安全性に優れた空気調和機を提供することができる。
【0045】
第2の発明は、作動冷媒を圧縮して送り出す圧縮機と、室外送風機によって送られた室外空気と前記作動冷媒との間で熱交換する室外熱交換器とを有する室外機と、前記作動冷媒と室内送風機によって送られた室内空気との間で熱交換する室内熱交換器を有する室内機とで、冷凍あるいはヒートポンプサイクルを構成する空気調和機であって、少なくとも2種類以上の沸点の異なる冷媒の混合体を作動冷媒とし、前記室外熱交換器の途中に、前記作動冷媒の液を貯留する第1の冷媒貯留手段を設け、前記第1の冷媒貯留手段に貯留された液冷媒を導出し、凝縮液側の循環冷媒を冷却する第1の冷媒間熱交換手段を経由して前記圧縮機の吸入口へ導くものである。
【0046】
これにより、第1の冷媒貯留手段には性能低下を招く沸点の高い冷媒を貯留することで、冷房運転時、室外熱交換器後半から室内熱交換器を経て圧縮機吸入口に至る冷媒回路には性能に優れる低沸点成分の冷媒比率を高くして循環させることができ、流れる作動冷媒の量についても、これを減じて室内熱交換器から圧縮機吸入口までの圧損を低減することができる。
【0047】
従って、運転効率に優れた空気調和機を提供することができる。
【0048】
第3の発明は、作動冷媒を圧縮して送り出す圧縮機と、室外送風機によって送られた室外空気と前記作動冷媒との間で熱交換する室外熱交換器とを有する室外機と、前記作動冷媒と室内送風機によって送られた室内空気との間で熱交換する室内熱交換器を有する室内機とで、冷凍あるいはヒートポンプサイクルを構成する空気調和機であって、少なくとも2種類以上の沸点の異なる冷媒の混合体を作動冷媒とし、前記圧縮機の吸入口の前に、前記作動冷媒の液を貯留する第2の冷媒貯留手段と、前記第2の冷媒貯留手段の内部に貯留された冷媒と、凝縮液側の循環冷媒との間で熱交換する第2の冷媒間熱交換手段を備えるものである。
【0049】
これにより、第2の冷媒貯留手段には性能低下を招く沸点の高い冷媒を貯留することで、第2の冷媒貯留手段から圧縮機を経て、室外熱交換と室内熱交換を経て、第2の冷媒貯留手段に戻る冷媒回路には性能に優れる低沸点成分の冷媒比率を高くして循環させることができ、冷房運転時であれば室外熱交換器を出た冷媒、暖房運転時であれば室内熱交換器を出た冷媒と、圧縮機の吸入口手前の冷媒で熱交換することで、温度滑りや圧損などによる性能低下を抑制することができる。
【0050】
従って、運転効率に優れた空気調和機を提供することができる。
【0051】
第4の発明は、第1から3の発明において、前記作動冷媒の高沸点冷媒として炭化水素を使用するものである。
【0052】
炭化水素は、自然界に存在し温暖化係数の小さな冷媒である。
【0053】
従って、地球温暖化抑制に優れた空気調和機を提供することができる。
【0054】
第5の発明は、第4の発明において前記炭化水素としてプロパンあるいはイソブタンを使用するものである。
【0055】
プロパンあるいはイソブタンは、蒸発温度や熱物性において空気調和に適しており、冷媒以外の用途でも様々な分野で使用されていて生産量も多いため、容易に調達することができる。
【0056】
従って、安価で運転効率に優れた空気調和機を提供することができる。
【0057】
第6の発明は、第1から5の発明において、前記作動冷媒の低沸点冷媒として、1,1,2-トリフルオロエチレン(HFO1123)、1,1-ジフルオロエチレン(HFO1132a)、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO1132e)のうち少なくとも1つを使用するものである。
【0058】
HFO1123、HFO1132a、HFO1132eは、温暖化係数が小さく蒸発温度や熱物性において空気調和に適している。
【0059】
従って、地球温暖化抑制にすぐれた空気調和機を提供することができる。
【0060】
第7の発明は、第2の発明において、前記第1の冷媒貯留手段が気液分離器であって、上部に第1の室外熱交換器に接続する第1の接続口を、下部に前記第1の冷媒間熱交換手段と接続する液冷媒排出口を、前記第1の接続口と前記液冷媒排出口の間の位置に、第2の室外熱交換器に接続する第2の接続口を備えるものである。
【0061】
これにより、効率良く液冷媒排出口と第2の接続口の間に液冷媒を貯留し、冷房運転時、室外熱交換器後半から室内熱交換器を流れる高沸点冷媒の比率を低減させ、室内機出口を流れる作動冷媒の量を減じて圧損を低減することができる。
【0062】
従って、運転効率に優れた空気調和機を提供することができる。
【0063】
第8の発明は、第3の発明において、前記第2の冷媒貯留手段がアキュームレータであって、前記第2の冷媒貯留手段内の所定の高さに前記第2の冷媒間熱交換手段を配置するものである。
【0064】
これにより、第2の冷媒貯留手段の第2の冷媒間熱交換手段以下の空間に確実に液冷媒を貯留し、路前記第2の冷媒貯留手段から圧縮機を経て、室外熱交換と室内熱交換を経て、第2の冷媒貯留手段に戻る冷媒回路には性能に優れる低沸点成分の冷媒比率を高くして循環させることができ、冷房運転時であれば室外熱交換器を出た冷媒、暖房運転時であれば室内熱交換器を出た冷媒と、圧縮機の吸入口手前の冷媒で熱交換することで、温度滑りや圧損などによる性能低下を抑制することができる。
【0065】
従って、運転効率に優れた空気調和機を提供することができる。
【0066】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における空気調和機の構成図を示すものである。
【0067】
図1に示すように、第1の実施の形態における空気調和機は、室外機101と、室内機107を配管で環状に接続して冷媒を循環させ、冷房あるいは暖房を行なう装置である。
【0068】
室外機101は、冷媒を圧縮する圧縮機102と、圧縮機102から吐出された冷媒の流れを切換える四方弁103と、室外ファン105によって送られてきた外気と冷媒との間で熱交換する室外熱交換器104と、高圧の冷媒を減圧膨張させる膨張弁106C(冷房用)、膨張弁106H(暖房用)と、圧縮機102の吸入口に液冷媒が吸い込まれるのを防ぐため、アキュームレータ113を備えている。また、室外機101には液側接続弁115とガス側接続弁116が備えられ、この二つの弁を介して室内機107と接続される。液側接続弁115とガス側接続弁116は開閉可能で、室外機101内に冷媒を封止するとともに、冷媒の漏洩が発生した場合などに冷媒回路を遮断し、室内機107側に冷媒が漏れる量を最小限に抑制することが可能である。
【0069】
図1では膨張手段は、膨張弁106Hと膨張弁106Cの2つの膨張弁を使用しているが、逆止弁を用いてブリッジ回路を構成すれば、膨張弁を1つ使用するだけの構成も可能である。
【0070】
室内機107には、室内ファン109によって送られてきた室内空気と冷媒の間で熱交換を行う室内熱交換器108を備えていて、室内を快適な状態にするため冷房や暖房が行われる。
【0071】
図1は、冷房運転時を示しており、圧縮機102から吐出された冷媒は四方弁103を経て第2の室外熱交換器104Gへ流入するが、暖房運転時には四方弁103が切換り、圧縮機102から吐出された冷媒は四方弁103を経て室内熱交換器108へ流入する。
【0072】
さらに、室外機101には、室外熱交換器104の途中に、気液分離器110が設けられており、気液分離器110と四方弁103の間に第2の室外熱交換器104G、気液分離器110と膨張弁106Hの間に第1の室外熱交換器104Lがある。
【0073】
そして、気液分離器110で分離された液冷媒は、サブ膨張弁111で減圧膨張され、冷媒間熱交換器112において、膨張弁106Hと膨張弁106Cとの間を流れる冷媒と熱交換して蒸発し、アキュームレータ113を経て、圧縮機102の吸入口へ導かれる。
【0074】
この時、冷房運転であれば膨張弁106Hを全開、膨張弁106Cを制御し、暖房であれば膨張弁106Cを全開、膨張弁106Hを制御するとより効果的で制御も容易にすることができる。
【0075】
さらに、アキュームレータ113内には、液ガス熱交換器114が設けられていて、膨張弁106Hと膨張弁106Cとの間を流れる冷媒と熱交換するように構成されている。
【0076】
オゾン層保護や地球温暖化防止の観点から規制が厳しくなってきているなかで、空気調和に使用する作動冷媒としては、まず一般的に、ハイドロフルオロカーボン(HFC)では温暖化係数の比較的小さいR32や、大気中で分解しやすく温暖化係数の小さなハイドロフルオロオレフィン(HFO)が候補に挙げられる。
【0077】
HFOの具体的な例としては、R1234yf、R1234ze、HFO1123、HFO1132a、HFO1132eなどが有望である。
【0078】
しかし、いずれも化学的な人工生成物であり、フッ素を含んでいるため熱分解すると腐食性の強いフッ化水素やハロカルボニル等の毒性ガスを生じる恐れがあるため、塩素やフッ素などハロゲン元素を含まない冷媒を望む声も強い。
【0079】
ハロゲン元素を含まない冷媒としては、自然冷媒である二酸化炭素、炭化水素、アンモニアなどが考えられる。しかし、アンモニアは毒性があるため一般に使用するのは困難であり、二酸化炭素は冷媒としての物性は空気調和には適しておらず、性能が良くない上に動作圧力が非常に高く、耐圧を確保するために材料投入やコストが増大する。
【0080】
炭化水素では、プロパンやイソブタンなどが熱物性的には空気調和用の冷媒として優れているが、可燃性のため安全対策が必須である。
【0081】
また、HFO1123などについては、自己分解反応を起こす可能性があり、高温高圧など所定の条件になると爆発するなどの危険性がある。
【0082】
炭化水素における可燃性対策や、一部のHFOにおける自己分解反応対策の一つとして、不燃性あるいは微燃性などの冷媒と混合することで、使用冷媒の可燃性を低減する方法や、自己分解反応を起こさない他の冷媒と混合することで自己分解反応を抑制する方法など冷媒を混合することにより課題解決が模索されている。
【0083】
また、漏洩防止のための構造対策や、漏洩検知、漏洩検知時の危険回避動作など機器側の対策も数多く提案されている。
【0084】
こうした、冷媒選択の要件を考慮し、図1に示す空気調和機の作動冷媒では、2種類以上の沸点の異なる冷媒の混合体を用いており、例えばHFO1123とプロパンを含む冷媒を使用する。
【0085】
混合する冷媒は、2種類に限定されるものではなく、3種類、4種類の冷媒混合でもよい。
【0086】
HFO1123とプロパンの混合体の場合はプロパンが高沸点冷媒、HFO1123が低沸点冷媒となる。
【0087】
HFO1123は温暖化係数1、プロパンは温暖化係数3と、オゾン層保護や地球温暖化防止の点で優れている。
【0088】
空気調和に使用する冷媒の沸点は、-60℃~-30℃程度が好ましく、HFO1123の沸点は-59℃、プロパンの沸点は-42℃とどちらも空気調和に適した沸点を示している。
【0089】
しかし、HFO1123はフッ素を含むフロンであり、自己分解反応を示すという欠点を有している。プロパンは強燃性であり、漏洩時の安全性確保が課題となっている。
【0090】
一方で、プロパンは、HFO1123の自己分解反応を抑制する作用に優れており、少量混合するだけで安全に使用できる。
【0091】
そして、HFO1123は微燃性であり、混合することによりプロパンの可燃性を低減することができる。
【0092】
HFO1123とプロパンの混合冷媒を作動冷媒として使用した場合、気液二相状態においてはHFO1123がプロパンよりも気体化しやすいため、装置内に封入した冷媒のそれぞれの成分比と比較して、気相部はHFO1123の比率が高くなり、液相部はプロパンの比率が高くなる。
【0093】
図1に示す空気調和機においては、冷媒貯留手段が備えられており、第1の冷媒貯留手段と第2の冷媒貯留手段がある。
【0094】
第1の冷媒貯留手段は、室外熱交換器の途中に備えられており、冷房運転時に室外熱交換器で凝縮した液冷媒を貯留するものである。ここで、室外熱交換器の途中とは、冷房運転時に圧縮機によって圧縮されたガス冷媒が凝縮を開始し完全に液となるまでの二相状態にある部分のことである。
【0095】
第2の冷媒貯留手段は、圧縮機の吸入口の前に備えられており、冷房運転時であれば室内機で、暖房運転時であれば室外熱交換器で蒸発しきれずに、液の状態のまま流れてきた冷媒を貯留するものである。
【0096】
図1に示す空気調和機においては、第1の冷媒貯留手段として気液分離器110と第2の冷媒貯留手段としてアキュームレータ113が備えられており、液冷媒を貯留する構造となっている。気液分離器110とアキュームレータ113の液溜まりにプロパンが溜まり込む。その結果、室内機107内を流れる冷媒の組成は、封入組成に比べてプロパンの比率が低下することになる。したがって、室内機107内において漏洩が発生した場合に、引火する危険性を下げることができる。
【0097】
冷媒間熱交換手段とは、冷凍あるいはヒートポンプサイクル中を流れる冷媒同士で熱交換する熱交換手段のことで、第1の冷媒間熱交換手段は、冷房運転時に前記第1の冷媒貯留手段である気液分離器110に貯留された液冷媒を蒸発させ、第1の室外熱交換器104Lを出た冷媒を冷却するもので、図1における冷媒間熱交換器112である。 そして、第2の冷媒間熱交換手段は、アキュームレータ113内の冷媒を、冷房運転時であれば、第1の室外熱交換器104Lから冷媒間熱交換器112を経て流れてきた冷媒で加熱し、暖房運転時であれば室内熱交換器108から流れてきた冷媒で加熱するもので、図1における液ガス熱交換器114である。
【0098】
図2は気液分離器110の概略図で、気液分離器110の上部に第1の室外熱交換器104Lに接続する第1の接続口110Lが、下部にサブ膨張弁111、冷媒間熱交換器112へつながる液冷媒排出口110Hが、そしてその間の所定の位置に第2の室外熱交換器104Gに接続する第2の接続口110Gが設けられている。
【0099】
冷房運転時には、第2の接続口110Gから、第2の室外熱交換器104Gで一部凝縮した高圧で気液二相状態の冷媒が流入し、第2の接続口110Gよりも下部に液冷媒117が貯留され、液冷媒排出口110Hから液冷媒がサブ膨張弁111へ流出し、未だ凝縮していない高圧のガス冷媒118が第1の接続口110Lから第1の室外熱交換器104Lへ流出する。
【0100】
非共沸混合冷媒が凝縮する際、液冷媒に高沸点成分が多く含まれるが、高沸点冷媒は一定の圧力下においては低沸点成分よりも高い温度でも凝縮するため、凝縮開始直後の液冷媒には高沸点成分が特に多く含まれる。したがって、凝縮後の冷媒から液を分離するよりも凝縮過程の途中で液冷媒を分離するほうが高沸点成分を多く貯留することができる。
【0101】
そして、貯留した液冷媒をサブ膨張弁111で減圧膨張し冷媒間熱交換器112で蒸発させ、アキュームレータ113を経由して圧縮機102の吸入口へ戻る。
【0102】
高沸点成分の多く含まれる液冷媒が、冷媒間熱交換器112で室内機107へ向かう冷媒を冷却し、かつ、室内機107をバイパスするので、気液分離器110に貯留する液冷媒が少なくても室内機107を流れる高沸点成分の量を減らすことができる。
【0103】
そして、圧損の原因となる高沸点冷媒の循環量が減った結果、運転効率を向上させることができる。
【0104】
HFO1123とプロパンの混合冷媒を使用しているので、HFO1123の自己分解反応を抑制されるとともに、室内機107を流れる強燃性のプロパンの量を減らすことができるので、漏洩があった場合でも引火の危険性を下げることができ安全に空気調和を行うことができる。
【0105】
ここで、HFO1123の代わりに、HFO1132a、HFO1132eを使用しても同様の効果を得ることができる。
【0106】
使用冷媒が、HFO1123とプロパンの混合冷媒でなくても、例えばR32(沸点-52℃)とR1234yf(沸点-30℃)を用いた混合冷媒を用いた場合についても、室内機107を循環する冷媒の総量が減り、かつ圧損の大きなR1234yfの循環量が多く減ることで圧損を大きく改善することができる。さらに、熱伝達特性についても優れているR32が室内機107を多く循環することで、運転効率は大きく改善する。
【0107】
暖房運転時には、第1の接続口110Lから、第1の室外熱交換器104Lで一部蒸発した低圧で気液二相状態の冷媒が流入し、第2の接続口110Gよりも下部に液冷媒が貯留され、液冷媒排出口110Hから液冷媒が流出し、低圧の気液二相の冷媒が第2の接続口110Gから第2の室外熱交換器104Gへ流出する。
【0108】
暖房運転であっても、気液分離器110に液冷媒を貯留することができ、室内機107を流れる高沸点成分の量を減らすことができる。
【0109】
つまり、暖房においても冷房と同様に、室内機107を流れる強燃性のプロパンの量が減ることで、漏洩があった場合でも引火の危険性を下げることができ安全に空気調和を行うことができる。
【0110】
そして、蒸発した気相の冷媒が増加して圧損が生じやすい第2の室外熱交換器104Gを流れる冷媒の総量、特に圧損を生じやすいプロパンの流量が減ることで圧損が改善し運転効率が向上する。
【0111】
図3は本発明の実施の形態1における、アキュームレータ113および液ガス熱交換器114の概略図である。
【0112】
アキュームレータ113には、蒸発器(冷房時は室内熱交換器108、暖房時は第1の室外熱交換器104L、第2の室外熱交換器104G)を出た後の冷媒が、アキュームレータ入口管113Aから流入し、気相液相に分離され、気相の冷媒がアキュームレータ出口管113Bから圧縮機102の吸入口に向かって流出する。そして、圧縮機102のオイルがアキュームレータ113内部に滞留して不具合が起こらないように、アキュームレータ出口管113Bにはアキュームレータ113の底部付近にオイル戻し穴301が配備されている。
【0113】
蒸発器では冷媒の低沸点成分が蒸発し易いために、アキュームレータ113に貯留される液冷媒は高沸点成分の比率が上昇している。したがって、アキュームレータ113に液冷媒を貯留することは、効率よく高沸点成分を貯留することにつながり、気液分離器110の効果と同様に、運転効率の向上や安全性の向上を容易に実現できる。
【0114】
さらに、アキュームレータ113内部には、冷媒管をコイル状に加工した液ガス熱交換器114が配備されていて、冷媒間熱交換器側接続口114Hが冷媒間熱交換器112に、膨張弁106C側接続口114Eが膨張弁106Cに接続されている。
【0115】
液ガス熱交換器114が熱交換することにより、温度滑りや圧力損失による性能の低下を改善することができる。
【0116】
液ガス熱交換器114の表面は、アキュームレータ113内部の冷媒と接触するわけであるが、気体よりも液体の熱伝達率が大きいため、ガス冷媒と接触する場合は熱交換量が小さく、液冷媒と接触する場合は熱交換量が大きくなる。
【0117】
したがって、アキュームレータ113内に貯留されている液冷媒の量が少なく、液ガス熱交換器114に液冷媒が接触しない状態では、液ガス熱交換器114の熱交換量が少なく内部熱交換の効果は少ないが、液冷媒の貯留量を増やしやすい状態になる。
【0118】
液冷媒の貯留量が増え、液ガス熱交換器114に液冷媒が接触しだすと熱交換量が増加し内部熱交換の効果も増えてくる。そして、液冷媒の貯留量の増加が抑えられてくるので、液冷媒の貯留量を一定に保つことが容易となる。
【0119】
液ガス熱交換器114を配置する高さは、想定する液冷媒の貯留量に応じて設定し、所望の性能や冷媒封入量を実現することができる。
【0120】
また、図3において、液ガス熱交換器114を、冷媒管をコイル状に加工した形態としたが、この形態に限られるものではなく、冷媒が流れるチューブと放熱フィンからなる形態や、冷媒流路を持つジャケット状の形態であっても同様の機能を遂行できる。
【0121】
図1においては、冷媒間熱交換器112と液ガス熱交換器114の位置関係は、冷媒間熱交換器112が膨張弁106Hの側、液ガス熱交換器114が膨張弁106Cの側に配置されているが、この配置に限定されるものではない。
【0122】
実施の形態1における空気調和機は、先にも述べたように、強燃性あるいは可燃性を有する冷媒を高沸点冷媒として含む非共沸混合冷媒を使用し、室外機に作動冷媒を貯留する冷媒貯留手段を備えた装置である。そして、冷媒貯留手段に強燃性あるいは可燃性を有する高沸点冷媒を貯留し、主たる冷媒循環回路には低沸点成分の冷媒比率を高くして循環させることができ、前記室内機において冷媒漏洩が生じても、引火の危険性を低下させ、安全性に優れた空気調和機を提供するものである。
【0123】
さらに、強燃性あるいは可燃性冷媒に炭化水素を使用するもので、地球温暖化影響の小さな空気調和機を提供するものである。
【0124】
さらに、炭化水素冷媒として、蒸発温度や熱物性において空気調和に適し、調達も容易なプロパンあるいはイソブタンを使用するもので、安価で運転効率に優れた空気調和機を提供するものである。
【0125】
さらに、低沸点成分として温暖化係数が小さく蒸発温度や熱物性において空気調和に適した、HFO1123、HFO1132a、HFO1132eのうち少なくとも1つを使用するもので、地球温暖化抑制にすぐれた空気調和機を提供するものである。
【0126】
また、実施の形態1における空気調和機は、非共沸混合冷媒を使用し、室外熱交換器の途中に、第1の冷媒貯留手段を設け、前記第1の冷媒貯留手段に貯留された液冷媒を導出し、凝縮液側の循環冷媒を冷却する第1の冷媒間熱交換手段を経由して圧縮機の吸入口へ導くもので、液冷媒を貯留し、主たる冷媒回路中を流れる高沸点冷媒の比率を低減させ、蒸発器出口を流れる作動冷媒の量を減じて圧損を低減することで、運転効率に優れた空気調和機を提供するものである。
【0127】
さらに、第1の冷媒貯留手段に気液分離器を使用し、上部に第1の室外熱交換器に接続する第1の接続口を、下部に第1の冷媒間熱交換手段と接続する液冷媒排出口を、第1の接続口と液冷媒排出口の間の位置に、第2の室外熱交換器に接続する第2の接続口を備え、効率良く液冷媒とガス冷媒を分離し、液冷媒排出口とガス側接続口の間に液冷媒を貯留し運転効率に優れた空気調和機を提供するものである。
【0128】
また、実施の形態1における空気調和機は、非共沸混合冷媒を使用し、前記圧縮機の吸入口の前に、作動冷媒を貯留する第2の冷媒貯留手段と、第2の冷媒貯留手段の内部に貯留された冷媒と、凝縮液側の循環冷媒との間で熱交換する第2の冷媒間熱交換手段を備えるもので、前記第2の冷媒貯留手段には性能低下を招く沸点の高い冷媒を貯留し、主たる冷媒循環回路には性能に優れる低沸点成分の冷媒比率を高くし、冷房運転時であれば前記室外熱交換器を出た冷媒、暖房運転時であれば前記室内熱交換器を出た冷媒と、前記圧縮機の吸入口手前の冷媒熱交換することで、温度滑りや圧損などによる性能低下を抑制し、運転効率に優れた空気調和機を提供するものである。
【0129】
さらに、アキュームレータを第2の冷媒貯留手段、液ガス熱交換器を第2の冷媒間熱交換手段とし、アキュームレータ内の所定の高さに液ガス熱交換器を配置するもので、液ガス熱交換器以下の空間に確実に液冷媒を貯留し、容易に液冷媒の貯留レベルを保つことができるため安定して運転ができる空気調和機を提供するものである。
【産業上の利用可能性】
【0130】
以上のように、本発明にかかる空気調和機は、非共沸混合冷媒を使用する場合に、液冷媒を貯留することで安全で、効率のよい装置を提供するもので、その技術は空気調和機だけに止まらず、給湯機やショーケースや冷凍機などにも広く適用することができ、効果をもたらすものである。
【符号の説明】
【0131】
101 室外機
102 圧縮機
103 四方弁
104 室外熱交換器
104G 第2の室外熱交換器
104L 第1の室外熱交換器
105 室外ファン
106C 膨張弁(冷房用)
106H 膨張弁(暖房用)
107 室内機
108 室内熱交換器
109 室内ファン
110 気液分離器
111 サブ膨張弁
112 冷媒間熱交換器
113 アキュームレータ
114 液ガス熱交換器
115 液側接続弁
116 ガス側接続弁
図1
図2
図3
図4