(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20241220BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20241220BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
F25B1/00 385Z
F25B1/00 381D
F25B1/00 383
F25B49/02 510C
F25D11/00 101B
(21)【出願番号】P 2021023032
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】中村 智裕
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 好正
(72)【発明者】
【氏名】柿田 健一
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/111771(WO,A1)
【文献】特開2014-025608(JP,A)
【文献】特開平07-294042(JP,A)
【文献】特開2009-014313(JP,A)
【文献】特許第6540872(JP,B1)
【文献】特開平09-089434(JP,A)
【文献】米国特許第05904049(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 49/02
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、圧縮機と、凝縮器と、絞り手段と、蒸発器とを有する冷凍サイクル装置で、前記凝縮器と前記絞り手段との間の冷媒の温度を検知する複数の温度センサを備え、前記温度センサの検知温度差に応じて、冷媒循環量を制御する冷媒循環量制御手段を備え、前記冷媒循環量制御手段は前記蒸発器で生成された冷気を庫内に循環させる冷却ファンの回転数を制御することであり、前記温度センサの検知温度差が上限閾値を下回るように前記冷却ファンの回転数を増加させ、前記温度センサの検知温度差が下限閾値を下回った場合、前記冷却ファンの回転数を減少させることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
少なくとも、圧縮機と、凝縮器と、絞り手段と、蒸発器とを有する冷凍サイクル装置で、前記凝縮器と前記絞り手段との間の冷媒の温度を検知する複数の温度センサを備え、前記温度センサの検知温度差に応じて、冷媒循環量を制御する冷媒循環量制御手段を備え、前記冷媒循環量制御手段は、前記凝縮器の凝縮器用送風機の回転数を制御することであり、前記温度センサの検知温度差が上限閾値を下回るように前記凝縮器用送風機の回転数を増加させ、前記温度センサの検知温度差が下限閾値を下回った場合、前記凝縮器用送風機の回転数を減少させることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒配管の2点間の温度差を用いて冷凍サイクルを制御する、冷蔵庫等の冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクル装置の一つである冷蔵庫では、貯蔵室の庫内温度と設定温度の差に基づいて、圧縮機の回転数及び冷却ファンの回転数を制御している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、特許文献1に記載された従来の冷凍サイクルの圧縮機及び冷却ファンの制御方法を示した図である。
【0004】
図6に示すように、庫内温度検出回路151は、貯蔵室内に設置された庫内温度センサ150により、貯蔵室内の庫内温度を検出し、制御手段152にその温度データを出力するものである。制御手段152では、貯蔵室の温度データと設定温度の差に基づいて、圧縮機141の回転数及び冷却ファン142の回転数を決定し、これに対応した制御指令信号を圧縮機駆動回路153及び冷却ファン駆動回路154に出力して、圧縮機141の回転数及び冷却ファン142の回転数を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、庫内の空気温度と設定温度の差に基づいて圧縮機や冷却ファンの回転数を制御しているため、冷媒側の冷却効率などが考慮できておらず、冷蔵庫の周囲温度や庫内の収納量の変動、扉開閉に伴う庫外空気の侵入など、使用環境や使い方によっては、冷媒の冷却効率が低下してしまうという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、冷媒の冷却効率を向上させる冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の冷凍サイクル装置は、少なくとも、圧縮機と、凝縮器と、絞り手段と、蒸発器とを有する冷凍サイクル装置で、前記凝縮器と前記絞り手段との間の冷媒の温度を検知する複数の温度センサを備え、前記温度センサの検知温度差に応じて、冷媒循環量を制御する冷媒循環量制御手段を備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷凍サイクル装置は、冷媒の冷却効率を高め、省エネルギー性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1における冷凍サイクル装置としての冷蔵庫の正面図
【
図3】実施の形態1における冷蔵庫のサイクル構成図
【
図4】実施の形態1における冷凍サイクルの冷却ファンの制御方法を示した図
【
図5】実施の形態1における冷凍サイクルの冷媒制御センサの出力と冷媒循環量との相関を示した図
【
図6】従来の冷凍サイクルの冷却ファンの制御方法を示した図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、少なくとも、圧縮機と、凝縮器と、絞り手段と、蒸発器とを有する冷凍サイクル装置で、前記凝縮器と前記絞り手段との間の冷媒の温度を検知する複数の温度センサを備え、前記温度センサの検知温度差に応じて、冷媒循環量を制御する冷媒循環量制御手段を備えたことを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【0012】
これによって、凝縮器出口の冷媒配管の検知温度差から凝縮器出口の冷媒の乾き度を推定することができ、検知温度差を設定温度差に近づけるように冷媒循環量を制御して、凝縮器出口の冷媒の乾き度をゼロに近づけることができる。これにより、冷凍システムの冷却効率が増加するため、冷凍能力を最大化することができ、省エネルギー性を高めることができる。
【0013】
第2の発明は、前記冷媒循環量制御手段は、前記蒸発器で生成された冷気を庫内に循環させる冷却ファンの回転数を制御することであることを特徴とする第1の発明に記載の冷凍サイクル装置である。
【0014】
これによって、凝縮器出口の冷媒の乾き度をゼロに近づけるように前記冷却ファンの回転数を制御することができる。これにより、冷凍システムの冷却効率が増加するため、冷凍能力を最大化することができ、省エネルギー性を高めることができる。
【0015】
第3の発明は、前記冷媒循環量制御手段は、前記凝縮器にて冷媒の凝縮を促進させるために備えられる凝縮器ファンの回転数を制御することであることを特徴とする第1の発明に記載の冷凍サイクル装置である。
【0016】
これによって、凝縮器出口の冷媒の乾き度をゼロに近づけるように前記凝縮器ファンの回転数を制御することができる。これにより、冷凍システムの冷却効率が増加するため、冷凍能力を最大化することができ、省エネルギー性を高めることができる。
【0017】
第4の発明は、前記冷媒循環量制御手段は、前記圧縮機の回転数制御であることを特徴とする第1の発明に記載の冷凍サイクル装置である。
【0018】
これによって、凝縮器出口の冷媒の乾き度をゼロに近づけるように前記圧縮機の回転数を制御することができる。これにより、冷凍システムの冷却効率が増加するため、冷凍能力を最大化することができ、省エネルギー性を高めることができる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって、本発明が限定されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
以下、冷凍サイクル装置の実施の形態として冷蔵庫を例にして
図1~
図5を用いて説明する。
【0021】
図1は本発明の実施の形態による冷凍サイクル装置としての冷蔵庫の正面図、
図2は同実施の形態1による冷蔵庫の縦断面図、
図3は同実施の形態1による冷蔵庫のサイクル構成図である。
図4は冷凍サイクルの冷却ファンの制御方法を示した図、
図5は冷凍サイクルの冷媒制御センサの出力と冷媒循環量との相関を示した図である。
【0022】
図1から
図3に示すように、この冷蔵庫は、前方に開口する金属製(例えば鉄板)の外箱と、硬質樹脂製(例えばABS)の内箱と、前記外箱と内箱との間に発泡充填した硬質ウレタンフォーム等の断熱材とからなる断熱性の冷蔵庫本体30を備えている。冷蔵庫本体30内には、冷蔵室31、冷蔵室31の下に上段冷凍室32及びその横に並設した製氷室33と、並設した上段冷凍室32及び製氷室33の下方に下段冷凍室34、下段冷凍室34の下方に野菜室35が設けてある。そして、冷蔵室31の前面は、例えば観音開き式の扉により開閉自由に閉塞されるとともに、上段冷凍室32と製氷室33と下段冷凍室34と野菜室35の前面部は引き出し式の扉により開閉自由に閉塞される。
【0023】
冷蔵室31は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1~5℃で設定されている。野菜室35は冷蔵室31と同等もしくは若干高い温度設定の2℃~7℃に設定されており、低温にすれば葉野菜の鮮度を長期間維持することが可能である。上段冷凍室32と下段冷凍室35は冷凍保存のために通常-22から-18℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、例えば-30から-25℃の低温で設定されることもある。
【0024】
また、上段冷凍室32は切替室として、ダンパ機構等を用いることで、冷蔵温度帯から冷凍温度帯まで選択可能な部屋とすることもある。
【0025】
冷蔵庫本体30には、前記冷蔵室31、上段冷凍室32、製氷室33、下段冷凍室34
、野菜室35を冷却する冷凍システム10が設けてあり、その冷凍システム10の冷媒を圧縮する能力可変型の圧縮機11が天面後部の機械室47に設けられ、冷却器となる蒸発器16が背面部の冷却室48に設けてある。
【0026】
上記冷凍システム10の冷媒としては、地球環境保全の観点から地球温暖化係数が小さい可燃性冷媒であるイソブタンを使用している。この炭化水素であるイソブタンは空気と比較して常温、大気圧下で約2倍の比重である(2.04、300Kにおいて)。これにより従来に比して冷媒充填量を低減でき、低コストであると共に、可燃性冷媒が万が一に漏洩した場合の漏洩量が少なくなり安全性をより向上できる。
【0027】
次に、上記冷凍システム10の構成を、
図3を用いて説明する。
【0028】
冷凍システム10は、圧縮機11、凝縮器12、ドライヤ13、絞り手段となる、キャピラリーチューブ15、蒸発器16、アキュームレータ17、吸入管18、内部熱交換部19を接続して構成してある。また、この冷凍システム10には、微小抵抗20、上流温度センサ21及び下流温度センサ22からなる冷媒制御センサ23が設けてある。
【0029】
上記冷媒制御センサ23を構成する微小抵抗20は、長さ250mmの細径管からなり、直列配置された微小抵抗20とキャピラリーチューブ15の全抵抗の約5%に相当する抵抗を有する。全抵抗に対する微小抵抗20の比率は、1~20%が望ましい。1%未満では内部を流れる冷媒の状態変化を測定することが困難となる。20%超では内部熱交換部19の熱交換が不十分となり、冷凍システムの効率が低下する。なお、上記全抵抗に対する微小抵抗20の比率は、それぞれの抵抗を同じ内径のキャピラリーチューブ15で代替した時の長さの比率で示したものである。
【0030】
ここで、上記冷媒制御センサ23を構成する上流温度センサ21及び下流温度センサ22は、微小抵抗20の内部を流れる冷媒の状態変化に応じて変化する微小抵抗20の上流側と下流側の温度を測定し、その温度差が設定温度差に近づくように冷媒循環量を可変し、冷凍システム10を所定の状態に制御する構成となっている。
【0031】
なお、上記冷凍システム10において、ドライヤ13は、冷凍システム10内を循環する冷媒を乾燥するものであり、液冷媒と効率よく接触するために凝縮器12の下流に配置している。
【0032】
また、アキュームレータ17は、安定状態における余剰冷媒を貯留するものであり、蒸発器16と略同一の温度に保持するために蒸発器16の下流に配置してある。冷凍システム10を用いて冷却する対象物(図示せず)の温度が上昇すると、アキュームレータ17に貯留される余剰冷媒量が減少して冷凍システム10内の冷媒循環量が増大することで冷凍能力を増加させる。
【0033】
一般に、冷蔵庫本体30等の筐体の外郭から自然対流で放熱する家庭用冷蔵庫など環境条件によって放熱能力が大きく変化する冷凍システムでは、レシーバを用いて冷凍システムの高圧側に余剰冷媒を貯留することができないので、本実施の形態1のように、アキュームレータ17を用いて冷凍システムの低圧側に余剰冷媒を貯留する。また、アキュームレータ17に貯留する余剰冷媒量は冷凍システム内の全冷媒量の10~30%程度としてあり、比較的少量で冷凍能力を調整する機能が得られるので、全冷媒量を抑制するために有効である。
【0034】
また、キャピラリーチューブ15を用いて、冷凍システム10の絞りを構成することにより、キャピラリーチューブ15と吸入管18との間で熱交換する内部熱交換部19を実現することができ、吸入管18内を還流する低温冷媒のエンタルピーを回収して冷凍システム10の効率を向上することができる。
【0035】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その作用、動作について、
図3から
図5を用いて説明する。
【0036】
本冷蔵庫は、冷却運転を行う際には、圧縮機11で圧縮された冷媒は凝縮器12で放熱して凝縮した後、ドライヤ13で乾燥される。そして、冷媒制御センサ23を通過した後、キャピラリーチューブ15で減圧され、その後、蒸発器16に供給されて蒸発し、吸入管18を介して圧縮機11へ還流する。このとき、蒸発器16で発生する冷熱を利用して冷却が行われる。
【0037】
ここで、圧縮機11を運転した状態で、対象物(図示せず)の温度が低下して安定状態に近づくと、凝縮器12の出口冷媒は2相状態(望ましくは、乾き度3~10重量%)となる。これは、冷却する対象物(図示せず)の温度が上昇して、アキュームレータ17に貯留される余剰冷媒量が減少し冷凍システム10内の冷媒循環量が増大した場合でも、凝縮器12の出口冷媒が過冷却とならないように、直列配置された微小抵抗20とキャピラリーチューブ15の全抵抗と冷凍システム10内の全冷媒量を設計しているためである。
【0038】
一般に、筐体の外郭から自然対流で放熱する家庭用冷蔵庫など環境条件によって放熱能力が大きく変化する冷凍システムにおいて、凝縮器の出口冷媒が過冷却になるように設計すると、環境条件によって放熱能力が増大した際に冷凍システム内のほぼすべての冷媒が凝縮器に滞留して、冷媒循環量が異常に低下する懸念が生じる。
【0039】
また、環境条件によって放熱能力が減少した際に凝縮器で凝縮できなかった余剰冷媒がアキュームレータ17に貯留しきれなくなって吸入管18から圧縮機11へ還流することで、圧縮機11の耐久性が低下する懸念が生じる。
【0040】
そのため、本発明の冷凍システム10では前記したように、凝縮器12の出口冷媒が過冷却とならないよう、直列配置された微小抵抗20とキャピラリーチューブ15の全抵抗と冷凍システム10内の全冷媒量を設計しているのである。
【0041】
2相状態となった前記凝縮器12からの冷媒は、微小抵抗20を通過する際、上流温度センサ21と下流温度センサ22で微小抵抗20の上流側と下流側の温度が検出される。そして、検出された微小抵抗20前後の温度差が所定値になるように、冷媒循環量を制御する。その結果、凝縮器12の出口冷媒の乾き度が減少していき、冷凍効果が増大して冷凍システム10の効率を向上することができる。
【0042】
次に、
図4及び
図5に基づいて冷媒循環量の制御方法について説明する。
【0043】
図4の横軸は蒸発器16で生成された冷気を庫内に循環させる冷却ファン45の回転数であり、縦軸は冷媒制御センサ23が測定する微小抵抗20の前後の温度差Sである。
【0044】
前記したように、圧縮機11を運転した状態で、冷凍システム10を用いて冷却する対象物(図示せず)の温度が低下して安定状態に近づくと、凝縮器12の出口冷媒は2相状態となる。このとき、冷媒制御センサ23の出力はS0を示す。そして、冷媒制御センサ23の出力がS2を下回るように冷却ファン45の回転数を増加させる。この結果、凝縮器12の出口冷媒の乾き度が減少していき、冷凍効果が増大して冷凍システム10の効率が向上する。
【0045】
一方、凝縮器12の出口冷媒の乾き度が減少し続け、冷媒制御センサ23の出力がS1を下回った場合、冷却ファン45の回転数を減少させる。この結果、冷媒制御センサ23の出力がS1からS2を示す状態に安定させることができる。
【0046】
冷媒制御センサ23の出力に下限値S1を設けたのは、冷却ファン45の回転数を増大させ過ぎると凝縮器12の出口冷媒が過冷却状態となり、冷凍システム10内のほぼすべての冷媒が凝縮器12に滞留して、冷媒循環量が異常に低下する懸念が生じるためである。このような場合、冷却能力が不足し、冷蔵庫としては鈍冷となる恐れがあるため避ける必要があるのである。
【0047】
図5の横軸は、
図4の縦軸と同じ冷媒制御センサ23が測定する微小抵抗20の前後の温度差Sであり、
図5の縦軸は、微小抵抗20内を通過する冷媒循環量Qである。
【0048】
前記したように、冷媒制御センサ23の出力がS0を示した状態から冷却ファン45の回転数を増加させると、蒸発器16において、空気と冷媒の熱交換が促進され、冷媒の蒸発温度が上昇し、冷媒循環量が増加する。それに伴い、凝縮器12の出口冷媒の乾き度が減少して、冷媒制御センサ23の出力がS0からS2へ低下する。同様に、冷却ファン45の風量を調整して冷媒制御センサ23の出力がS1からS2を示す状態に安定させると、凝縮器12の出口冷媒の乾き度がゼロ近傍(望ましくは、乾き度0~1重量%)で安定する。
【0049】
前記したように、冷媒循環量が増大した場合でも凝縮器12の出口冷媒が過冷却とならないように、微小抵抗20とキャピラリーチューブ15の全抵抗を設計しているため、冷媒循環量が減少した場合は、微小抵抗20とキャピラリーチューブ15の全抵抗が不足する。不足分の抵抗を補うために、凝縮器12の出口冷媒の乾き度が増加し、それに従い冷媒の流速が増大する。
【0050】
それにより、微小抵抗20とキャピラリーチューブ15内を通過する冷媒の抵抗が増大するため、不足分の抵抗を補うことができる。冷媒循環量が大きい場合は凝縮器12の出口冷媒の乾き度はゼロ近傍であり、冷媒循環量の減少に従い、凝縮器12の出口冷媒の乾き度は増加するものである。
【0051】
このように冷媒制御センサ23の出力、つまり検知温度差に応じて、これが設定温度差に近づくように冷却ファン45の風量を制御することにより、凝縮器12の出口冷媒の乾き度をゼロ近傍(望ましくは、乾き度0~1重量%)で安定させ、冷凍効果を増大して冷凍システム10の効率を向上することができる。
【0052】
つまり、上述した冷蔵庫本体30は、微小抵抗20とその前後の温度差を測定する温度センサからなる冷媒制御センサ23を用いて凝縮器出口の乾き度をゼロに近づけるように冷却ファン45を制御することにより、凝縮器出口にレシーバを有しない冷凍システムにおいて冷却ファン45を用いて冷凍能力を最大化することができ、高効率な冷却運転を行うことができる。
【0053】
以上のように、本発明において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。
【0054】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0055】
実施の形態1では、冷媒制御センサ23の出力に応じて、冷却ファン45を制御することで、冷凍能力を最大化していたが、これは、凝縮器12にて冷媒の凝縮を促進させるために備えられる凝縮器ファン46の回転数を制御する方法でもよい。
【0056】
凝縮器ファン46の回転数を増加させると、凝縮器12において、空気と冷媒の熱交換が促進され、冷媒の凝縮温度が低下し、圧縮機の体積効率が向上することに伴い、冷媒循環量が増加する。よって、冷却ファン45の回転数を増大させた場合と同様の効果を得られる。
【0057】
また、冷媒制御センサ23の出力に応じて、圧縮機11の回転数を制御する方法でもよい。圧縮機11の回転数を増加させると、冷媒循環量が増加するため、冷却ファン45、凝縮器ファン46の風量を増大させた場合と同様の効果を得られる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明にかかる冷凍システム装置は、冷媒の冷却効率を高め、省エネルギー性を向上させることが可能となるので、例えば、家庭用又は業務用冷蔵庫等の冷凍冷蔵応用商品はもちろん、冷凍サイクルを搭載する空調機器や厨房機器等の冷凍サイクル装置として幅広く適用できる。
【符号の説明】
【0059】
11 圧縮機
12 凝縮器
15 キャピラリーチューブ(絞り手段)
16 蒸発器
20 微小抵抗
21 上流温度センサ
22 下流温度センサ
23 冷媒制御センサ
30 冷蔵庫本体
45 冷却ファン
46 凝縮器ファン