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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】ダクト式空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20241220BHJP
   F24F 11/77 20180101ALI20241220BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/007 101
F24F11/77
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021049340
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022147886
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】安福 雄真
(72)【発明者】
【氏名】中曽根 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】柴田 洋
(72)【発明者】
【氏名】重森 正宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭人
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-357356(JP,A)
【文献】特開2012-225559(JP,A)
【文献】特開平09-184645(JP,A)
【文献】特開平05-196280(JP,A)
【文献】特開平05-106905(JP,A)
【文献】特開2008-267615(JP,A)
【文献】特開2008-033796(JP,A)
【文献】特開2018-173206(JP,A)
【文献】特開2017-198395(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110185(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/175103(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2042771(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0026757(KR,A)
【文献】中国実用新案第202328615(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第113669876(CN,A)
【文献】国際公開第2021/117768(WO,A1)
【文献】特開2021-162230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 11/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐チャンバーへ空気を送風する搬送ファンと、
前記分岐チャンバーに流入した流入空気を複数の空調対象空間に搬出する複数の分岐ダクトと、
前記分岐ダクトを介して前記空調対象空間それぞれに搬送する風量を調整するための風量調整ダンパーと、
前記風量調整ダンパーの開度を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記空調対象空間それぞれの容積を記憶する容積記憶部と、
前記空調対象空間に要求される換気回数の指示を受け付ける換気回数受付部と、
前記換気回数と前記容積記憶部に記憶された前記空調対象空間の容積とに基づいて各空調対象空間への必要風量を算出する必要風量算出部と、
前記必要風量算出部が算出した前記各空調対象空間への必要風量と前記各空調対象空間に接続される分岐ダクトのダクト径に基づいて各分岐ダクトに送風すべき風速を算出する分岐ダクト風速算出部と、
前記分岐ダクトの風速とダクト長と曲げ回数と曲げ半径と材質とに基づいて決定される分岐ダクト圧力損失を算出するダクト圧力損失算出部と、
前記ダクト圧力損失算出部が算出した前記各分岐ダクトの圧力損失と前記分岐ダクトに接続される風量調整ダンパーの圧力損失との和が、前記分岐チャンバーから各空調対象空間までの各経路で同一となるよう各風量調整ダンパーの圧力損失を算出するダンパー圧力損失算出部と、
前記分岐ダクト風速算出部が算出した各分岐ダクトに送風すべき風速と、前記ダクト圧力損失算出部が算出した前記分岐ダクトの圧力損失と、前記ダンパー圧力損失算出部が算出した前記各風量調整ダンパーの圧力損失と、に基づいて、各風量調整ダンパーの圧力損失係数を算出するダンパー圧力損失係数算出部と、
前記ダンパー圧力損失係数算出部が算出した各風量調整ダンパーの圧力損失係数と、圧力損失係数とダンパー開度とを関連付けた圧力損失係数表と、に基づいてダンパー開度を取得するダンパー開度取得部と、
前記ダンパー開度取得部により取得したダンパーの開度となるよう、風量調整ダンパーへ出力を行うダンパー開度制御部と、
前記必要風量算出部にて算出された各空調対象空間への必要風量の総和に基づいて前記搬
送ファンの風量を決定して当該風量で駆動させる搬送ファン制御部と、
を備えたダクト式空調システム。
【請求項2】
前記換気回数受付部は、
前記空調対象空間毎に換気回数の指示を受付可能である請求項1記載のダクト式空調システム。
【請求項3】
前記換気回数受付部は、
空調対象空間に対して換気回数ゼロの設定を受付可能である請求項1記載のダクト式空調システム。
【請求項4】
前記容積記憶部は、
前記各空調対象空間が属する建物全体の容積を記憶し、
前記換気回数受付部は、
前記建物全体としての換気回数の指示を受付可能であり、
前記制御部は、
前記建物全体としての換気回数と、前記建物全体の容積から搬送ファンの出力を算出し、前記ダクト圧力損失算出部と、前記ダンパー圧力損失算出部により算出された圧力損失と、前記建物全体としての換気回数と、を用いて、各空調対象空間の容積割合と同様の風量割合となるように前記ダンパー開度取得部を制御する機能を有する請求項1記載のダクト式空調システム。
【請求項5】
前記搬送ファン制御部は、
前記建物全体として要求される換気回数と前記建物全体の容積から前記搬送ファンが搬送する風量Aを算出し、
前記空調対象空間それぞれに要求される換気回数と前記空調対象空間の容積の合計から前記搬送ファンが搬送する風量Bを算出し、
前記制御部は、
前記風量Aと前記風量Bとを比較して大きい風量の設定を優先して前記搬送ファンの出力及び前記風量調整ダンパーの開度を制御する請求項4記載のダクト式空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の複数の部屋に空気を送風するダクト式空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅の複数の部屋を空調するための空調装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
以下、その空調装置について、図7を参照しながら説明する。
【0004】
図7に示すように、空調対象空間である住宅120は居室108a、108b、108c、108dを備える。
【0005】
空調装置100は建物の床下空間107に配されたチャンバーボックス103と、空調された空気を生成する空気調和機102と、チャンバーボックス103内の空気を各居室108a、108b、108c、108dに供給する換気手段109を備える。
【0006】
換気手段109は、居室108a、108bに接続されるダクト104aと、居室108c、108dに接続されるダクト104bと、居室108a、108bにチャンバーボックス103の空気を送給するファン106aと、居室108c、108dにチャンバーボックス103の空気を送給するファン106bと、ダクト104a、104b内の空気から花粉、微粒子状物質、塵埃等を除去する空気浄化装置105を備える。
【0007】
ダクト104aの一端はチャンバーボックスに接続されており、他端は居室108a、108bの各天井部分にダンパー101a、101bを介して接続されている。また、ダクト104bの一端はチャンバーボックスに接続されており、他端は居室108c、108dの各天井部分にダンパー101c、101dを介して接続されている。
【0008】
各居室108a、108b、108c、108dは居室温度検知手段110a、110b、110c、110dを備え、ファン106a、106bは、各送風する居室の温度から目標温度を差し引いた値に基づいて風量を調節する。
【0009】
また、ファン106a、106bの最低風量は、例えば法令に定められた、単位時間あたりで住宅120に必要な換気回数に基づいて設定される。
【0010】
ダンパー101a、101b、101c、101dは、風量を調節するためのものであり、開度が大きいほど風量は増加する。ダンパー101a、101b、101c、101dの開度は、接続される各居室の温度から目標温度を差し引いた値に基づいて調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第6533459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような従来の空調装置においては、住宅全体としては必要な換気風量が維持・制御されているものの、ダンパーの開度が小さくなる居室に対しては、風量が少なくなる。このため、居室ごとに換気量の差が生まれてしまい、建物の換気に淀みを発生させていた。言い換えると、建物自体の換気量については基準を達成しているが、居室によっては換気量が不足する可能性が有った。
【0013】
そこで、本発明は、上記課題を解決するものであり、各居室単位で換気量の確保が可能なダクト式空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そして、この目的を達成するために、本発明に係るダクト式空調システムは、分岐チャンバーと、分岐チャンバーに空気を送風する搬送ファンと、分岐チャンバーに流入した空気を複数の居室に搬出する分岐ダクトと、分岐ダクトを介して複数の居室それぞれに搬出する風量を調整する風量調整ダンパーと、風量調整ダンパーの開度を調整する制御部とを備え、制御部は、各居室の容積を記憶する容積記憶部と、各居室の換気回数の指示を受け付ける換気回数受付部と、各居室への必要風量を算出する必要風量算出部と、各分岐ダクトに送風すべき風速を算出する分岐ダクト風速算出部と、各分岐ダクトの圧力損失を算出するダクト圧力損失算出部と、各風量調整ダンパーの圧力損失を算出するダンパー圧力損失算出部と、各風量調整ダンパーの圧力損失係数を算出する圧力損失係数算出部と、ダンパー開度を取得するダンパー開度取得部と、ダンパー開度取得部により取得したダンパーの開度となるよう、風量調整ダンパーへ出力を行うダンパー開度制御部と、搬送ファンの風量を決定して当該風量で駆動させる搬送ファン制御部とを備えたものであり、これにより、所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各居室単位で換気量の確保が可能なダクト式空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態1に係るダクト式空調システムの概略図。
図2】本発明の実施の形態1に係るダクト式空調システムの制御部の概略図。
図3】本発明の実施の形態1に係る風量調整ダンパーの開度を出力する処理手順を示すフローチャート。
図4】本発明の実施の形態1に係るダクトの曲げと局部損失係数を示す表。
図5】本発明の実施の形態1に係る風量調整ダンパーの圧力損失係数とダンパー開度の関係を示す表。
図6】本発明の実施の形態1に係る搬送ファンの駆動を出力する処理手順を示すフローチャート。
図7】従来の空調ユニットの建築物の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、全図面を通して、同一の部位については同一の符号を付して二度目以降の説明を省略または簡略化している。
【0018】
(実施の形態1)
まず、図1を用いて、本発明に係るダクト式空調システム30について説明する。図1は本発明の本実施の形態1に係るダクト式空調システムの構成を示す図である。
【0019】
ダクト式空調システム30は、建築物の一例である建物40内に設置される。
【0020】
建物40は、それぞれ広さ(容積)の異なる複数の居室3a、3b、3cと、屋根裏空間6と、を備える。
【0021】
また、ダクト式空調システム30は、搬送ファン2と、分岐チャンバー1と、分岐ダクト4a、4b、4cと、風量調整ダンパー5a、5b、5cと、制御部7と、を備える。
【0022】
搬送ファン2は、例えば廊下などに吸込口を備え、居室3a、3b、3cに設けられたガラリやドアの隙間より循環してきた空気を分岐チャンバー1へ搬送する。
【0023】
分岐チャンバー1は、例えば屋根裏や、小屋裏空間などの屋根裏空間6に設置され、搬送ファン2より搬送された空気を複数の分岐ダクト4a、4b、4cに分岐させる。
【0024】
分岐ダクト4a、4b、4cは、一端が複数の居室3a、3b、3cに接続され、分岐チャンバーを介して搬送された空気を居室3a、3b、3cへ導く。
【0025】
風量調整ダンパー5a、5b、5cは、分岐チャンバー1と、分岐ダクト4a、4b、4cの間に設置され、ダンパーの開度により風量調整ダンパー5a、5b、5cを通過する風量を独立して変更可能である。
【0026】
制御部7は、例えばリビングなどの居室3cに配置される制御装置に備えられる。制御装置は、表示・入力機能を備えたリモートコントローラである。制御部7は、風量調整ダンパー5a、5b、5cに通信可能に接続される。制御部7は、風量調整ダンパー5a、5b、5cの開度を制御することにより、風量調整ダンパー5a、5b、5cを通過する風量を調整する。また、制御部7は、搬送ファン2に通信可能に接続される。制御部7は、搬送ファン2の風量を決定し、当該風量で搬送ファン2を駆動させる。
【0027】
次に、図2、を用いて制御部7の構成を説明する。
【0028】
制御部7は、図2に示す通り、風量調整ダンパー5a、5b、5c、及び搬送ファン2に制御可能に接続されている。
【0029】
制御部7は、容積記憶部10と、分岐ダクト記憶部11と、換気回数受付部12と、必要風量算出部13と、分岐ダクト風速算出部14と、ダクト圧力損失算出部15と、ダンパー圧力損失算出部16と、経路圧力損失算出部21と、ダンパー圧力損失係数算出部17と、ダンパー開度取得部18と、搬送ファン制御部19と、ダンパー開度制御部20と、を備える。
【0030】
容積記憶部10は、例えば施工者がリモコンから入力した、各居室3a、3b、3cの容積を記憶する。
【0031】
分岐ダクト記憶部11は、例えば施工者がリモコンから入力した、各分岐ダクト4a、4b、4cの材質と長さと曲げ回数と曲げ半径とダクト径を記憶する。
【0032】
換気回数受付部12は、例えばユーザーがリモコンから入力した、各居室3a、3b、3cの換気回数を受け付ける。ここで換気回数とは、単位時間当たりで各居室の空気をどれだけ入れ替えるかを示す値であり、例えば0.5回/時間といった値である。
【0033】
必要風量算出部13は、容積記憶部10に記憶された居室3a、3b、3cの容積と、換気回数受付部12に受け付けられた換気回数とから、単位時間当たりで居室3a、3b、3cに必要な風量を算出する。
【0034】
分岐ダクト風速算出部14は、必要風量算出部13により算出された居室3a、3b、3cへの風量と、分岐ダクト記憶部11に記憶された分岐ダクト4a、4b、4cのダクト径とから、分岐ダクト4a、4b、4cを通過する空気の風速を算出する。
【0035】
ダクト圧力損失算出部15は、分岐ダクト記憶部11に記憶された分岐ダクト4a、4b、4cの材質と、長さと、曲げ回数と、曲げ半径と、分岐ダクト風速算出部14により算出された各分岐ダクト4a、4b、4cを通過する空気の風速とから、各分岐ダクトの圧力損失を算出する。
【0036】
ダンパー圧力損失算出部16は、風量調整ダンパー5a、5b、5cを通過する風速と、風量調整ダンパー5a、5b、5cの圧力損失係数より、風量調整ダンパー5a、5b、5cにかかる圧力損失の式を算出する。
【0037】
経路圧力損失算出部21は、分岐チャンバー1と各居室3a、3b、3cを連通させる経路の圧力損失、つまり分岐ダクト4a、4b、4cと風量調整ダンパー5a、5b、5cにかかる圧力損失の合計を算出する。
【0038】
ダンパー圧力損失係数算出部17は、経路圧力損失算出部21により算出された経路の圧力損失が各経路で同一の値となるように各風量調整ダンパー5a、5b、5cの圧力損失係数を算出する。
【0039】
ダンパー開度取得部18は、ダンパー圧力損失係数算出部17により算出された圧力損失係数と、後述する「風量調整ダンパーの圧力損失係数とダンパー開度の関係」からダンパー開度を取得する。
【0040】
ダンパー開度制御部20は、ダンパー開度取得部18により取得したダンパーの開度となるよう、風量調整ダンパー5a、5b、5cへ出力を行う。
【0041】
また、搬送ファン制御部19は、必要風量算出部13より算出された居室3a、3b、3cへの風量の総和の風量となるように搬送ファン2の出力を制御する。
【0042】
次に、図3、4、5を用いて、制御部7による風量調整ダンパー5a、5b、5cの開度の算出方法を説明する。
【0043】
例えば施工者が、あらかじめ容積記憶部10に居室3a、3b、3cの容積Ua、Ub、Ucを入力する。また、例えば施工者が、あらかじめ分岐ダクト記憶部11にダクト材質と、ダクト直管部分長さla、lb、lcと、ダクト曲げ回数Ta、Tb、Tcと、ダクト曲げ半径Ra、Rb、Rcと、ダクト径da、db、dcと、を入力する。
【0044】
上記のあらかじめ入力された値により、制御部7は、ダクト材質によってダクト摩擦抵抗係数λa、λb、λcを算出する。また、制御部7は、ダクト径da、db、dcと、曲げ半径Ra、Rb、Rcと、によって、分岐ダクト4a、4b、4cを通過する空気の流れに対し垂直な方向のダクト面積Aa、Ab、Acを算出する。また、制御部7は、分岐ダクト記憶部11に記憶された、図4に示す、「ダクトの曲げと局部損失係数を示す表」から、局部損失係数ζda、ζdb、ζdcを取得する。これらダクト摩擦抵抗係数λa、λb、λc、ダクト面積Aa、Ab、Ac、局部損失係数ζda、ζdb、ζdcは、以下に示すステップSで要求されるごとに算出してもよいし、あらかじめ算出したものを所定の記憶部に記憶しておいてもよい。
【0045】
換気処理が行われると、以下の手順で図3に示すダンパー開度の算出、及び、図6に示す搬送ファンが送風すべき風量の算出が行われる。なお、記号Sはステップを意味する。
【0046】
まず、図3に示すように、S201では、ユーザーは、換気回数受付部12に、居室3a、3b、3c毎の換気回数Na、Nb、Ncを入力する。この換気回数の入力は、ダクト式空調システム30の動作開始ごとに入力されてもよいし、一度設定すれば省略可能である。また、動作中の変更も可能である。なお、換気回数は、例えば法令に定められた、単位時間あたりで住宅120に必要な換気回数を満たす範囲で設定可能となっている。
【0047】
S202では、必要風量算出部13は、各居室3a、3b、3cへの必要風量Qa、Qb、Qcを、式(1)、(2)、(3)で算出する。
【0048】
Qa=Ua×Na 式(1)
Qb=Ub×Nb 式(2)
Qc=Uc×Nc 式(3)
これにより、各部屋へ送風される空気の風量を算出することができる。
【0049】
S203では、分岐ダクト風速算出部14は、各分岐ダクト4a、4b、4cを通過する空気の風速Va、Vb、Vcを、式(4)、(5)、(6)で算出する。
【0050】
Va=Qa/Aa 式(4)
Vb=Qb/Ab 式(5)
Vc=Qc/Ac 式(6)
S204では、ダクト圧力損失算出部15は、各分岐ダクト4a、4b、4cにかかる圧力損失Ra、Rb、Rcを、式(7)、(8)、(9)で算出する。なお、ρは、空気の密度を示す。
【0051】
Rda=λa×(la/da)×ρ×(Va^2)/2+Ta×ζda×ρ×(Va^2)/2 式(7)
Rdb=λb×(lb/db)×ρ×(Vb^2)/2+Tb×ζdb×ρ×(Vb^2)/2 式(8)
Rdc=λc×(lc/dc)×ρ×(Vc^2)/2+Tc×ζdc×ρ×(Vc^2)/2 式(9)
S205では、ダンパー圧力損失算出部16は、各風量調整ダンパーにかかる圧力損失ra、rb、rcを、式(10)、(11)、(12)で算出する。なお、ζa、ζb、ζcは、各風量調整ダンパー5a、5b、5cの圧力損失係数を示す。
【0052】
ra=(ζa―1)×ρ×(Va^2)/2 式(10)
rb=(ζb―1)×ρ×(Vb^2)/2 式(11)
rc=(ζc―1)×ρ×(Vc^2)/2 式(12)
S206では、経路圧力損失算出部21は、分岐チャンバー1と、居室3a、3b、3cとを連通させる各経路の圧力損失Ra、Rb、Rcを、式(13)、(14)、(15)で算出する。
【0053】
Ra=Rda+ra 式(13)
Rb=Rdb+rb 式(14)
Rc=Rdc+rc 式(15)
ここで、各経路の圧力損失Ra、Rb、Rcは、一端に接続される各居室3a、3b、3cの静圧が等しく、多端に接続される分岐チャンバー1は同一のものであることから、式(16)の関係となる。
【0054】
Ra=Rb=Rc 式(16)
S207では、ダンパー圧力損失係数算出部17は、式(13)、(14)、(15)、(16)の関係から、各風量調整ダンパー5a、5b、5cの圧力損失係数ζa、ζb、ζcを算出する。また、使用する風量調整ダンパーの種類によって、風量調整ダンパー5a、5b、5cの圧力損失ζa、ζb、ζcの値は上限と下限が定まる。この時、各風量調整ダンパー5a、5b、5cの圧力損失係数ζa、ζb、ζcの値は、複数の組み合わせが算出される。
【0055】
S208では、ダンパー圧力損失係数算出部17は、圧力損失係数ζa、ζb、ζcの各値が最も小さな組み合わせの値であった場合、次のステップへ進ませる。これにより、各風量調整ダンパーにかかる圧力損失が最も少ないダンパー開度の組み合わせを選ぶことができる。
【0056】
S209では、ダンパー開度取得部18は、選択された風量調整ダンパー5a、5b、5cの圧力損失係数ζa、ζb、ζcの値と、ダンパー開度の関係により、各風量調整ダンパー5a、5b、5cのダンパー開度θa、θb、θcを取得する。なお、風量調整ダンパーの種類によってダンパー圧力損失係数とダンパーの開度の関係は異なるが、本実施の形態1では、図5に示す「風量調整ダンパーの圧力損失係数とダンパー開度の関係を示す表」の関係とする。
【0057】
「風量調整ダンパーの圧力損失係数とダンパー開度の関係を示す表」は、ダンパー開度取得部18に記憶されている。「風量調整ダンパーの圧力損失係数とダンパー開度の関係を示す表」は、図5に示す通り、圧力損失係数の値が入力されると、圧力損失係数の値に対し水平な線分とグラフとが交差するポイントをダンパー開度として取得できる。
【0058】
S210では、ダンパー開度制御部20は、各風量調整ダンパーの開度が、ダンパー開度取得部により取得されたダンパー開度θa、θb、θcとなるように、風量調整ダンパー5a、5b、5cへ出力する。
【0059】
これにより、各居室に、設定した風量を放出するための風量調整ダンパー5a、5b、5cの準備が整う。
【0060】
次に、図6を用いて、制御部7による搬送ファン2の出力の算出方法を説明する。
【0061】
S221では、搬送ファン制御部19は、搬送ファン2が搬送する空気の風量Qを、式(17)で算出する。この際、S201で受け付けた換気回数Na、Nb、Ncに基づいてS202で算出された各居室3a、3b、3cの必要風量Qa、Qb、Qcが利用される。
【0062】
Q=Qa+Qb+Qc 式(17)
S222では、搬送ファン制御部19は、式(17)により算出された風量Qで駆動するよう、搬送ファン2へ命令を出力する。
【0063】
上記、制御部7による風量調整ダンパー5a、5b、5cと、搬送ファン2への出力により、居室3a、3b、3cへ入力した換気回数相当の風量を、各部屋ごとに送風することができる。つまり、建物自体の換気量のみではなく、居室ごとに設定した換気量の確保が可能となる。
【0064】
(実施の形態2)
実施の形態2について説明する。なお、実施の形態2では、実施の形態1と異なる点のみ説明する。
【0065】
容積記憶部10は、建物全体の容積を入力可能とする。
【0066】
また、換気回数受付部12は、建物全体の換気回数を受け付けることができる。
【0067】
本実施の形態では、必要風量算出部13は、建物全体の容積Uallと、建物全体の換気回数Nallから、建物全体の必要風量Qallの式(18)を算出する。
【0068】
Qall=Uall×Nall 式(18)
この場合、ダンパー開度制御部20は、各居室3a、3b、3cへ放出する風量を、居室3a、3b、3cの容積割合と同等の風量割合で送風するように、風量調整ダンパー5a、5b、5cへの出力を制御する。
【0069】
つまり、各居室3a、3b、3cへ放出する風量Qa’、Qb’、Qc’は式(19)、(20)、(21)となる。
【0070】
Qa’=Qall×(Ua×(Ua+Ub+Uc)) 式(19)
Qb’=Qall×(Ub×(Ua+Ub+Uc)) 式(20)
Qc’=Qall×(Uc×(Ua+Ub+Uc)) 式(21)
実施の形態1で示した内容と同様に、ダンパー開度取得部18は、各風量調整ダンパー5a、5b、5cのダンパー開度θa、θb、θcを取得する。
【0071】
ダンパー開度制御部20は、各風量調整ダンパーの開度が、ダンパー開度取得部により取得されたダンパー開度θa、θb、θcとなるように、風量調整ダンパー5a、5b、5cへ出力する。
【0072】
搬送ファン制御部は、式(18)により算出された風量Qallで駆動するよう、搬送ファン2への出力を制御する。
【0073】
これにより、建物全体に対して設定した換気回数により部屋ごとの換気が可能となる。
【0074】
(実施の形態3)
実施の形態3について説明する。なお、実施の形態3では、実施の形態1と異なる点のみ説明する。
【0075】
また、換気回数受付部12は、建物全体の換気回数と、居室3a、3b、3cの換気回数と、を同時に受け付けてもよい。
【0076】
必要風量算出部13は、建物全体への換気回数と、建物全体の容積から、建物全体への必要風量Aを算出する。(式(18))
この時搬送ファンが搬送する風量はAとなる。
【0077】
同様に、必要風量算出部13は、居室3a、3b、3cの換気回数と、居室3a、3b、3cの容積から、居室3a、3b、3cへの必要風量Qa、Qb、Qcを算出する。
【0078】
この時、搬送ファン2が搬送する空気の風量Bは、式(22)となる。
【0079】
B=Qa+Qb+Qc 式(22)
搬送ファン制御部19は、風量Aと、風量Bと、を比較し、大きい風量の設定を選択する。
【0080】
搬送ファン制御部19は、選択した風量で駆動するよう、搬送ファン2への出力を制御する。
【0081】
これにより、建物全体に対して、及び各居室に対して換気回数を同時に設定した場合、搬送ファン2が搬送する風量が多い方、つまり、より換気量が多い設定で建物全体を換気することができる。
【0082】
(実施の形態4)
実施の形態4について説明する。なお、実施の形態4では、実施の形態1と異なる点のみ説明する。
【0083】
実施の形態1では、風量調整ダンパー5a、5b、5cを通過する空気の流れに対し垂直な方向の風量調整ダンパーの断面積は、ダクト面積Aa、Ab、Acと同等として算出していたが、本実施の形態で示すように、異なってもよい。
【0084】
その場合、制御部は、不図示のダンパー記憶部及びダンパー風速算出部を備える。そして、ダンパー風速算出部は、風量調整ダンパー5a、5b、5cを通過する空気の風速を算出する。その手順を以下に示す。
【0085】
ユーザーは、ダンパー記憶部に、ダンパー径dda、ddb、ddcを入力する。制御部7は、ダンパー径dda、ddb、ddcより、ダンパーの断面積Ada、Adb、Adcを算出する。ダンパー風速算出部は、風量調整ダンパー5a、5b、5cを通過する空気の風速Vda、Vdb、Vdcを、式(23)、(24)、(25)で算出する。
【0086】
Vda=Qa/Ada 式(23)
Vdb=Qa/Adb 式(24)
Vdc=Qa/Adc 式(25)
以上が、ダンパー風速算出部による風量調整ダンパー5a、5b、5cを通過する空気の風速の算出手順である。
【0087】
この時、ダンパー圧力損失算出部16は、各風量調整ダンパーにかかる圧力損失rda、rdb、rdcを、式(26)、(27)、(28)で算出する
rda=(ζa―1)×ρ×(Vda^2)/2 式(26)
rdb=(ζb―1)×ρ×(Vdb^2)/2 式(27)
rdc=(ζc―1)×ρ×(Vdc^2)/2 式(28)
その後、各風量調整ダンパーにかかる圧力損失rda、rdb、rdcは、実施の形態1記載の、式(13)、(14)、(15)に示す各風量調整ダンパーにかかる圧力損失ra、rb、rcそれぞれに代入される。
【0088】
これにより、分岐ダクトの径と、ダンパーの径が異なった場合でも、居室3a、3b、3cへ入力した換気回数相当の風量を、各部屋ごとに送風することができる。
【0089】
(変形例1)
本実施の形態1、2、3では例として居室を3つとしているが、少なくとも一つ以上であればよい。
【0090】
また、各居室に対し1つの分岐ダクトを設けているが、各居室に少なくとも一つ以上の分岐ダクトが備わっていれば良い。
【0091】
また、換気回数受付部12は、換気回数0を受け付け可能としてもよい。換気回数を0とする場合、少なくとも1つ以上の居室で換気回数を0以上で設定する。これにより、換気の必要のない居室、例えば、人が入室しない部屋に対し換気回数を0と設定することで、不要な消費電力を削減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係るダクト式空調システムは、各居室に対して換気回数を設定可能であるため、建物内の空気に対し淀みのない換気を可能にする空調システムとして有効である。
【符号の説明】
【0093】
1 分岐チャンバー
2 搬送ファン
3a 居室
3b 居室
3c 居室
4a 分岐ダクト
4b 分岐ダクト
4c 分岐ダクト
5a 風量調整ダンパー
5b 風量調整ダンパー
5c 風量調整ダンパー
6 屋根裏空間
7 制御部
10 容積記憶部
11 分岐ダクト記憶部
12 換気回数受付部
13 必要風量算出部
14 分岐ダクト風速算出部
15 ダクト圧力損失算出部
16 ダンパー圧力損失算出部
17 ダンパー圧力損失係数算出部
18 ダンパー開度取得部
19 搬送ファン制御部
20 ダンパー開度制御部
21 経路圧力損失算出部
30 ダクト式空調システム
40 建物
100 空調装置
101a ダンパー
101b ダンパー
101c ダンパー
101d ダンパー
102 空気調和機
103 チャンバーボックス
104a ダクト
104b ダクト
105 空気浄化装置
106a ファン
106b ファン
107 床下空間
108a 居室
108b 居室
108c 居室
108d 居室
109 換気手段
110a 居室温度検知手段
110b 居室温度検知手段
110c 居室温度検知手段
110d 居室温度検知手段
120 住宅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7