(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】冷蔵庫、システム
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20241220BHJP
A23B 4/06 20060101ALI20241220BHJP
F25D 23/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
F25D11/00 101B
A23B4/06 501L
A23B4/06 501C
F25D23/00 301J
F25D23/00 302Z
(21)【出願番号】P 2022197692
(22)【出願日】2022-12-12
(62)【分割の表示】P 2018148047の分割
【原出願日】2018-08-07
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2018021679
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】安信 淑子
(72)【発明者】
【氏名】大久保 公美子
(72)【発明者】
【氏名】南部 桂
(72)【発明者】
【氏名】松村 康生
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-011573(JP,A)
【文献】特開2002-031455(JP,A)
【文献】特開2017-129283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
A23B 4/06
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を貯蔵する貯蔵室と、
前記貯蔵室を冷却する冷却手段と、
前記貯蔵室の温度を検知する温度検知手段と、
前記貯蔵室の温度を制御する制御手段と、
前記食材の情報を入力する食材情報入力手段とを備え、
前記制御手段は、前記温度検知手段によって前記貯蔵室の温度が第2温度帯であると検知されてから第2時間が経過した後に前記貯蔵室の温度が第1温度帯になるまで昇温させ、前記温度検知手段によって前記貯蔵室の温度が前記第1温度帯であると検知されてから第1時間が経過した後に前記貯蔵室の温度が前記第2温度帯になるまで冷却させ、
前記第1温度帯は、-3℃以下、かつ、前記第1温度帯における前記食材の細胞内の水分が凍結している割合である第1氷結率が46±20%となる温度帯であり、
前記第2温度帯は、-11±4℃以下、かつ、前記第2温度帯における前記食材の細胞内の水分が凍結している割合である第2氷結率が80±10%となる温度帯であり、
前記食材情報入力手段によって入力される前記食材の情報は、前記食材の種類と、前記食材の量とを含み、
前記食材情報入力手段によって入力された情報
、および、前記食材の種類と前記食材の量とによって選択可能とされ、選択されたコースに基づいて、前記第1温度帯および前記第2温度帯と、前記第1時間および前記第2時間と、前記第1氷結率および前記第2氷結率とを決定
し、
前記第1温度帯を変動させることで、前記第1氷結率を実現させ、前記第2温度帯を変動させることで、前記第2氷結率を実現させることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記制御手段は、前記温度検知手段によって前記貯蔵室の温度が第2温度帯であると検知されてから第2時間が経過した後に前記貯蔵室の温度が第1温度帯になるまで昇温させ、前記温度検知手段によって前記貯蔵室の温度が前記第1温度帯であると検知されるとすぐに前記貯蔵室の温度が前記第2温度帯になるまで冷却させることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記食材の取り出し予定日時を入力する予定日時入力手段を備え、
前記予定日時入力手段によって入力された予定日時に基づいて、
前記第2温度帯よりも低い温度帯である第3温度帯および前記第3温度帯を維持する第3時間を決定し、
前記制御手段は、前記温度検知手段によって前記貯蔵室の温度が前記第1温度帯であると検知されてから前記第1時間が経過した後に前記貯蔵室の温度が前記第3温度帯になるまで冷却させ、
前記温度検知手段によって前記貯蔵室の温度が前記第3温度帯であると検知されてから前記第3時間を経過するまで前記第3温度帯を維持することを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記予定日時入力手段によって入力された予定日時に基づいて、前記第1温度帯よりも高い温度帯である第4温度帯および前記第4温度帯を維持する第4時間を決定し、
前記制御手段は、前記温度検知手段によって前記貯蔵室の温度が前記第1温度帯であると検知されてから前記第1時間が経過した後に前記貯蔵室の温度が第3温度帯になるまで冷却させ、
前記温度検知手段によって前記貯蔵室の温度が第3温度帯であると検知されてから前記第3時間が経過した後に前記貯蔵室の温度が第4温度帯になるまで昇温させ、前記温度検知手段によって前記貯蔵室の温度が第4温度帯であると検知されてから前記第4時間を経過するまで前記第4温度帯を維持することを特徴とする請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記予定日時入力手段によって入力された予定日時に基づいて、前記制御手段は、前記予定日時の前に前記貯蔵室の温度を外気温度で一定時間維持することを特徴とする請求項
4に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記貯蔵室の扉の開閉状況を検知する扉開閉検知手段と、
前記貯蔵室の扉の開閉状況を報知する報知手段とを備え、
前記食材情報入力手段によって情報が入力されている場合において、前記扉開閉検知手段によって前記貯蔵室の扉の開状態が検知されたらすぐに前記報知手段は報知し、
前記食材情報入力手段によって情報が入力されていない場合において、前記扉開閉検知手段によって前記貯蔵室の扉の開状態が検知されても前記報知手段は報知しないことを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記貯蔵室の扉への接触を検知する扉接触検知手段と、
前記貯蔵室の扉の開閉状況を報知する報知手段とを備え、
前記食材情報入力手段によって情報が入力されている場合において、前記扉接触検知手段によって前記貯蔵室の扉への接触が検知され、かつ、接触時間が予め設定された閾値を超えた場合に、前記報知手段は報知することを特徴とする請求項1から
6のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
冷蔵庫と携帯端末を備えたシステムにおいて、
前記冷蔵庫は、
食材を貯蔵する貯蔵室と、
前記貯蔵室を冷却する冷却手段と、
前記貯蔵室の温度を検知する温度検知手段と、
前記貯蔵室の温度を制御する制御手段とを備え、
前記携帯端末は、
前記食材の情報を入力する食材情報入力手段を備え、
前記制御手段は、前記温度検知手段によって前記貯蔵室の温度が第2温度帯であると検知されてから第2時間が経過した後に前記貯蔵室の温度が第1温度帯になるまで昇温させ、前記温度検知手段によって前記貯蔵室の温度が前記第1温度帯であると検知されてから
第1時間が経過した後に前記貯蔵室の温度が前記第2温度帯になるまで冷却させ、
前記第1温度帯は、-3℃以下、かつ、前記第1温度帯における前記食材の細胞内の水分が凍結している割合である第1氷結率が46±20%となる温度帯であり、
前記第2温度帯は、-11±4℃以下、かつ、前記第2温度帯における前記食材の細胞内の水分が凍結している割合である第2氷結率が80±10%となる温度帯であり、
前記食材情報入力手段によって入力される前記食材の情報は、前記食材の種類と、前記食材の量とを含み、
前記食材情報入力手段によって入力された情報
、および、前記食材の種類と前記食材の量とによって選択可能とされ、選択されたコースに基づいて、前記第1温度帯および前記第2温度帯と、前記第1時間および前記第2時間と、前記第1氷結率および前記第2氷結率とを決定
し、
前記第1温度帯を変動させることで、前記第1氷結率を実現させ、前記第2温度帯を変動させることで、前記第2氷結率を実現させることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の貯蔵方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷蔵庫の冷凍室においては、通常-18℃以下に維持管理することが冷凍する食品の品質維持において最適とされている。
【0003】
この-18℃の冷凍温度は、食品の保存温度と品質(微生物及び味覚の観点から)を保持する時間が異なるとされるT-TT(Time-Temperature-Tolerance:許容時間温度関係)の考えに基づいており、JISC9607で定められたスリースター、フォースターの性能を満たすものである。
【0004】
アメリカで行われたT-TTの研究での大多数の冷凍した食品は-18℃で1年間以上保持されるという結果に基づき、野菜や果物類の収穫周期と一致することを考慮して冷凍する食品の貯蔵目標を最低1年間と設定し、大部分の食品に対して1年間の貯蔵期間を保証するための温度として-18℃以下を設定した。
【0005】
さらに、社団法人:日本冷凍食品協会による技術指導で、冷凍食品の定義は、「冷凍食品とは前処理を施し、急速凍結を行って、-18℃以下の凍結状態で保持した包装食品をいう。」と定められていることにもよる。但し、食品の種類や温度履歴、冷凍方法によって保存期間は異なるため、通常、-18℃の冷凍室での冷凍食品の保存期間は3ヶ月が目安とされている。
【0006】
一方、近年生鮮食品や加工食品などを対象に必ずしも冷凍で貯蔵しなければならない食品ではないが、冷蔵貯蔵では品質面、貯蔵期間に懸念があるものに対して、0℃~―7℃の温度帯で貯蔵する実用面での利便性に配慮した貯蔵方法や貯蔵室を備えた冷蔵庫が提案されている。
【0007】
さらに、近年市販の冷凍食品では、従来の「簡単」、「便利」に加え、「おいしさ」へのニーズが高まっている。
【0008】
このように冷凍室の利用頻度が高まっている中で、従来は、冷凍室で保存した肉や魚などの凍結食品の保存期間の目安を1ヶ月とする人が多かったが、最近では、その利用スタイルは、ストックだけでなく、短期保存のフロー型の比率も高まっている。
【0009】
この短期保存のフロー型食品の保存性と食味性の向上を狙い、室温を-10℃±2℃の範囲に設定して腐敗菌の増殖を抑制しながら酵素による蛋白質の分解を徐々に起こさせうま味の熟成を行う熟成室を設けた冷蔵庫が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
家庭でよく冷凍保存される食品に牛肉が挙げられる。たとえば、この牛肉を従来の熟成室である-10℃±2℃の温度帯で保存した場合、牛肉の保存時に生じる酵素によるうま味の熟成は、従来のストック型食品に対応した-18℃以下の保存より温度が高い分、酵素の活性は高まり、促進される。しかし、アミノ酸やペプチドといったうま味に関与する成分の増量については明確にされておらず、官能により実感できるうま味、やわらかさ、ジューシーさといった「おいしさ」が実現されていない。
【0012】
一般に市販されている熟成牛肉は、熟成により、うま味、やわらかさ、ジューシーさといった「おいしさ」が、食べたときに実感できることを謳っている。また熟成牛肉は、0℃以上の温度で熟成されていることから、酵素の作用だけでなく、特殊な菌を発生させることにより「おいしさ」を実現していると言われている。このことから、制菌の専門知識が必要であり、家庭で手軽に再現することは難しい。
【0013】
一般に市販されている熟成牛肉と比較すると、従来の冷凍庫における熟成室の室温は、-10℃±2℃であり、腐敗が抑制できる温度帯であることから、家庭でも手軽に熟成を行うことができる。しかし、-10℃±2℃の0℃以下の冷凍温度帯での保存であることから、酵素の活性は、一般の熟成牛肉の熟成温度である0℃以上の温度より、かなり低下することが予想され、さらに-10℃±2℃で保存した場合、牛肉に含まれる水分が凍り、細胞内部に氷結晶が生成されることから、生成された氷結晶は酵素の移動の妨げになり、反応性がさらに低くなることが推定される。
【0014】
また、使用者が食肉を取り出すタイミングにより、貯蔵期間が異なり、熟成に要する推奨期間以上に貯蔵されてしまうことがある。貯蔵される期間が長くなると、食品の熟成が進みすぎる場合もあり、実感できるおいしさを実現することが困難な場合も出てくる。
【0015】
さらに、貯蔵室から取り出した直後は、牛肉が凍結しているため、牛肉を解凍させるための時間や手間が必要であり、一般においしく調理する手法として、調理する前に、食肉の温度を室温まで戻しておくことが推奨されているが、取り出し直後に解凍されていても、調理前にさらに室温に戻す場合は、さらに時間がかかる等手間が必要になってくる。
【0016】
さらに、熟成中に使用者が熟成室の扉を開けてしまうと、熟成室内の温度が変動してしまい、一時的に貯蔵室内の温度が狙いの温度から外れてしまうことがある。それに伴い熟成室に設置した食肉も狙い温度で貯蔵することができなくなるため、実感できる「おいしさ」を実現することが困難になる場合も出てくる。
【0017】
よって、従来の冷凍庫における熟成では、酵素によるうま味の熟成は、保存中に徐々に進むものの、食べたときに実感できるうま味、やわらかさ、ジューシーさといった「おいしさ」を実現できるものではなかった。
【0018】
そこで本発明は、食肉のうま味、やわらかさ、ジューシーさを増大させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的を達成するために、本開示における冷蔵庫は、食材を貯蔵する貯蔵室と、貯蔵室を冷却する冷却手段と、貯蔵室の温度を検知する温度検知手段と、貯蔵室の温度を制御する制御手段と、食材の情報を入力する食材情報入力手段とを備え、制御手段は、温度検知手段によって貯蔵室の温度が第2温度帯であると検知されてから第2時間が経過した後に貯蔵室の温度が第1温度帯になるまで昇温させ、温度検知手段によって貯蔵室の温度が第1温度帯であると検知されてから第1時間が経過した後に貯蔵室の温度が第2温度帯になるまで冷却させ、第1温度帯は、-3℃以下、かつ、第1温度帯における食材の細胞内の水分が凍結している割合である第1氷結率が46±20%となる温度帯であり、第2温度帯は、-11±4℃以下、かつ、第2温度帯における食材の細胞内の水分が凍結している割合である第2氷結率が80±10%となる温度帯であり、食材情報入力手段によって入力される食材情報は、食材の種類と、食材の量とを含み、食材情報入力手段によって入力された情報、および、食材の種類と食材の量とによって選択可能とされ、選択されたコースに基づいて、第1温度帯および第2温度帯と、第1時間および第2時間と、第1氷結率および第2氷結率とを決定し、第1温度帯を変動させることで、第1氷結率を実現させ、第2温度帯を変動させることで、第2氷結率を実現させることを特徴とする。また、本開示におけるシステムは、冷蔵庫と携帯端末を備えたシステムにおいて、冷蔵庫は、食材を貯蔵する貯蔵室と、貯蔵室を冷却する冷却手段と、貯蔵室の温度を検知する温度検知手段と、貯蔵室の温度を制御する制御手段とを備え、携帯端末は、食材の情報を入力する食材情報入力手段を備え、制御手段は、温度検知手段によって貯蔵室の温度が第2温度帯であると検知されてから第2時間が経過した後に貯蔵室の温度が第1温度帯になるまで昇温させ、温度検知手段によって貯蔵室の温度が第1温度帯であると検知されてから第1時間が経過した後に貯蔵室の温度が第2温度帯になるまで冷却させ、第1温度帯は、-3℃以下、かつ、第1温度帯における食材の細胞内の水分が凍結している割合である第1氷結率が46±20%となる温度帯であり、第2温度帯は、-11±4℃以下、かつ、第2温度帯における食材の細胞内の水分が凍結している割合である第2氷結率が80±10%となる温度帯であり、食材情報入力手段によって入力される食材情報は、食材の種類と、食材の量とを含み、食材情報入力手段によって入力された情報、および、食材の種類と食材の量とによって選択可能とされ、選択されたコースに基づいて、第1温度帯および第2温度帯と、第1時間および第2時間と、第1氷結率および第2氷結率とを決定し、第1温度帯を変動させることで、第1氷結率を実現させ、第2温度帯を変動させることで、第2氷結
率を実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の貯蔵装置によって、貯蔵した食肉のうま味、やわらかさ、ジューシーさが増大し、食べたときに実感できる「おいしさ」を実現することができる貯蔵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態1・2における冷蔵庫の断面図
【
図2】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の貯蔵区画の温度パターンを示すチャート
【
図3】本発明の実施の形態1における冷蔵庫で貯蔵する牛肉の官能評価・アミノ酸総量の結果を示す表
【
図4】本発明の実施の形態1・2における冷蔵庫で貯蔵する牛肉のアミノ酸やペプチドが生成されるメカニズムを説明する図
【
図5】本発明の実施の形態1・2における冷蔵庫で貯蔵する牛肉のうま味が増大するメカニズムを説明する図
【
図6】本発明の実施の形態1における冷蔵庫で貯蔵する牛肉のうま味、やわらかさが増大するメカニズムを説明する図
【
図7】本発明の実施の形態1における冷蔵庫で貯蔵する牛肉の肉汁流出率の結果を示す表
【
図8】本発明の実施の形態1における冷蔵庫で貯蔵する牛肉のジューシーさが増大するメカニズムを説明する図
【
図9】本発明の実施の形態2における冷蔵庫の貯蔵区画の温度パターンを示すチャート
【
図10】本発明の実施の形態2における冷蔵庫で貯蔵する牛肉の官能評価・アミノ酸総量・ジペプチド量の結果を示す表
【
図11】本発明の実施の形態2における冷蔵庫で貯蔵した牛肉細胞のSEM写真
【
図12】本発明の実施の形態3・4における冷蔵庫の断面図
【
図13】本発明の実施の形態3における冷蔵庫の貯蔵区画の温度パターンを示すチャート
【
図14】本発明の実施の形態4における冷蔵庫の貯蔵区画の温度パターンを示すチャート
【
図15】本発明の実施の形態5における冷蔵庫の断面図
【
図16】本発明の実施の形態5における冷蔵庫の貯蔵区画の温度パターンを示すチャート
【
図17】本発明の実施の形態6における冷蔵庫の貯蔵区画の温度パターンを示すチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の断面図、
図2は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の貯蔵区画の温度パターンを示すチャート、
図3は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の官能評価・アミノ酸総量の結果を示す表、
図4は、本発明の実施の形態1での牛肉のペプチドやアミノ酸が生成されるメカニズムを説明する図、
図5は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫で貯蔵する牛肉のうま味が増大するメカニズムを説明する図、
図6は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫で貯蔵する牛肉のうま味・やわらかさが増大するメカニズムを説明する図、
図7は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫で貯蔵する牛肉の肉汁流出率の結果を示す表、
図8は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫で貯蔵する牛肉のジューシーさが増大するメカニズムを説明する図である。
【0023】
図1において、冷蔵庫本体1は断熱仕切壁2および断熱仕切壁3によって上下区画され、上部に形成した冷蔵区画室4、下部に形成した冷凍室5を備え、冷蔵区画室4と冷凍室5の間に形成した貯蔵室6を有している。冷蔵庫本体1内には、各部および各装置を駆動制御する制御手段(図示せず)が設置されている。冷蔵庫本体1に設けられた操作パネル(図示せず)を使用して行った使用者の指示に応じて、制御手段により、各部および各装置の駆動制御を行うことができる。
【0024】
そして、冷凍室5の後方に冷却器7、冷却器7で冷却した冷気を強制通風する送風機8を有している。また、貯蔵室6の後方に設けて室内への冷気流入量を調整するダンパー装置9を有している。冷却器7で冷却された冷気は送風機8によって冷凍室5内に強制通風され冷凍室5内は、-18℃以下の冷凍温度帯に維持されている。貯蔵室6内には、温度検知手段である温度センサ10が設置されている。
【0025】
貯蔵室6は、通常は-10℃±2℃の温度範囲に維持されているため、上限の-8℃であっても腐敗細菌の増殖が抑制でき、-12℃であればJISC9607で定められた冷凍性能の中で、ツースターの性能を満たすものである。
【0026】
貯蔵室6は、制御手段によって、温度センサ10の温度情報をもとにダンパー装置9に送られた冷気流入量を適宜調整され、所定の温度パターンで制御される。
【0027】
ここで、牛肉を貯蔵室6に収納した場合を例にとって、本実施の形態1における冷蔵庫の貯蔵工程を説明する。
【0028】
まずスライスした牛肉を貯蔵室6に設置し、操作パネルにあるスイッチを操作して、食材情報として「牛肉」、貯蔵する温度パターンとして「おいしさコース1」を選択し、作動させる。「牛肉」の「おいしさコース1」では、
図2に示すように、入力した食材「牛肉」の情報をもとに、予め設定した氷結率(図示せず)を実現できるような温度パターンで貯蔵するものである。
【0029】
第1温度帯の氷結率は46±20%であるが、56±10%がさらに望ましく、第2温度帯の氷結率は80±10%で設定する。各食肉の凍結点には幅があることから、それぞれの氷結率にも、10~20%の幅をもたせている。
【0030】
ここで、温度パターンは、設置する食材の種類、量などによっても、幾つかのコースの選択が可能である。
【0031】
図2で示したとおり、予め設定した設定温度(一例として-12℃)になるように、ダンパー装置9により、貯蔵室6室内への冷気流入量の調整を開始する。
【0032】
温度サイクルとして、温度センサ10の第2温度帯の設定温度を-11℃±4℃以下(一例として、-12℃)検知後、予め設定された時間(一例として6時間)その状態を保つように、冷気流入量を調整し、予め設定された時間(一例として6時間)経過後、第1温度帯の設定温度(-3℃以下かつ第2温度帯+12℃以下(0は含まず))まで昇温するため、予め設定された第1温度帯の設定温度(一例として、第2温度帯+7℃である-5℃)になるまで、再びダンパー装置9により、貯蔵室6室内への冷気流入量の調整を行い、温度センサ10が第1温度帯の設定温度(一例として、-5℃)を検知したら、次に第2温度帯への冷却を行うため、予め設定された設定温度(一例として-12℃)になるように、ダンパー装置9により、貯蔵室6室内への冷気流入量の調整を行う。前記の温度サイクルを予め設定された貯蔵期間(一例として7日間)繰り返し行い、貯蔵期間(一例として7日間)経過したら貯蔵工程が終了する。加温手段を有する場合は、設定温度に維持するときや昇温・冷却といった温度変動をさせるときに、この加温手段を用いることができるので、きめ細かな温度制御や変動温度への到達時間を最適化することができる。
【0033】
図3に、官能評価、アミノ酸総量の結果を示す。従来例として、本実施の形態1と同じロットの牛肉を冷凍室5にて、設定温度(一例として-18℃)で本実施の形態1の貯蔵期間と同等の時間保存したものを用いた。
図3に示すように、官能評価では、従来例と比較して、本実施の形態1の牛肉は、項目「うま味」、「やわらかさ」、「ジューシーさ」において1ポイント上昇した。官能評価は1ポイント違うとその差は明確に認識できることから、本実施の形態1の温度パターンで貯蔵した牛肉は、貯蔵後、従来例と比較して、「おいしさ」の差が実感できるレベルのものとなった。
【0034】
また、うま味を呈する成分であるアミノ酸総量では、従来例と比較して10%増量していた。
【0035】
以上のことからうま味の差を定量的に確認することができた。
【0036】
アミノ酸は、
図4に示すように、牛肉の細胞を構成する蛋白質が酵素により分解されることにより生成される。また、蛋白質が酵素により分解されることにより、やわらかさももたらされる。(図示せず)
ここで、本発明の実施の形態1で貯蔵する牛肉の、うま味、やわらかさが増大するメカニズムを示す。
【0037】
牛肉細胞を凍結すると細胞内に氷結晶が生成され、
図5の<B>に示すように、凍結濃縮が生じる。凍結濃縮効果で、凍結温度の低下とともに、凍結濃縮が進み、酵素反応速度は促進される。貯蔵開始直後の設定温度(一例として-12℃)では、氷結率約86%であり、従来例の冷凍室の設定温度(一例として-18℃)の氷結率約91%に接近し、それにともない凍結濃縮効果も同等レベル近くに達する。
【0038】
一方で、貯蔵開始直後の第2温度帯の設定温度(一例として-12℃)では、従来例の冷凍室の設定温度(一例として-18℃)より温度が高い分、
図5の<A>に示すように、化学反応である酵素反応は促進される。よって、凍結濃縮効果と温度効果の相乗作用で、
図5の<C>に示すように、貯蔵開始直後の第2温度帯の設定温度(一例として-12℃)では、酵素反応が最大となり、従来例(一例として-18℃)より非凍結部位での酵素反応が促進されることなる。これにともない、設定された時間(一例として6時間)維持することにより、従来例よりうま味成分が増量し、やわらかさも増す。
【0039】
ここで、凍結する過程での食肉の細胞状態からも説明すると、
図6に示すように、牛肉を第2温度帯の設定温度(一例として-12℃)で凍結させるとき、表面から温度は低下し、牛肉内に含まれる水溶液の溶媒部分の水分が凍り、氷結晶が生成される。一方、水溶液の溶媒部分の各種物質は、凍っていない、より中心部へ移行し、表面から内部への氷結晶の生成にともない、より中心部へ移行する。そして、最終食肉中心部には非凍結の高濃度溶液が存在することになる。これが、凍結濃縮効果である。この高濃度の基質により酵素反応が促進される。
【0040】
その後、第1温度帯である、「第2温度帯+7℃」(一例として-5℃)まで昇温させると、凍結した牛肉は、牛肉表面から温度が上昇することになり、より温度が上がったところでは氷結率が下がり、氷結晶が融解し、それにともない液相部分が広がる。一般に細胞内で濃度の勾配がある場合、高濃度溶液の溶質が低濃度溶液に移動する形で細胞全体として均質になろうとすることから、この原理に従えば、表面の低濃度液相部分に向かって、牛肉中心部の高濃度溶液の溶質が移動することになる。このような、溶質の移動は、酵素反応に関わる物質(基質、酵素)の移動もともなうことになり、この昇温により、第2温度帯で酵素と反応できなかった基質が細胞内に広がり、第1温度帯の設定温度(一例として-5℃)でも効率的に、酵素反応が進み、その結果、うま味、やわらかさがさらに増大することになる。
【0041】
ここで、第2の温度帯、および第1の温度帯の氷結率の望ましい範囲について説明する。
【0042】
食品中の水が凍り始める温度を氷結点といい、氷結食品において、食品中の全水分に対する凍っている水の割合を氷結率といい、(数1)で表される。
【0043】
【数1】
(数1)において、γは氷結率、θfは食品の氷結点温度(℃)、θは食品の温度(℃)を表している。
【0044】
第2温度帯の氷結率が70%未満の場合、凍結濃縮が不充分で酵素反応が促進されにくく、さらに、細胞内での溶質の濃度勾配がつきにくい状態になると考えられる。そのため、第1の温度帯に昇温させても溶質が細胞表面の低濃度液相部分に移動しにくくなると考えられる。溶質の移動と共に酵素反応に関わる物質(基質、酵素)が移動し、第2温度帯で酵素と反応できなかった基質が細胞内に広がり、第1温度帯での効率的な酵素反応が期待できるものであるが、細胞内での濃度勾配がつきにくい状態で第1の温度帯に昇温させても溶質が細胞表面の低濃度液相部分に移動しにくいため、第1温度帯での効率的な酵素反応が促進されにくくなる。また第2温度帯の氷結率の上限は、非凍結の高濃度溶液と酵素反応のバランスから90%であることが望ましい。したがって、第2温度帯の氷結率は、80±10%であることが望ましい。
【0045】
また、第1の温度帯の氷結率が26%未満の場合は、温度帯が凍結点(氷結点)付近に近づくため、細胞表面の氷結晶が融解しはじめ、それにともない細胞内の溶質が細胞表面部分から流出し、さらに、第2温度帯の高濃度の溶質部分で酵素反応により生成されたうま味成分も溶質とともに、細胞の表面部分から流出する可能性がある。また第1の温度帯の氷結率が66%を超える場合は、第2温度帯で生成された高濃度溶液と比較して勾配が充分でなく、溶質の移動が生じにくいため、細胞内全体で考えたとき、第1温度帯の氷結率は46±20%であることが望ましい。
【0046】
ここで、
図7に、貯蔵した牛肉を調理したときに流出した肉汁の流出肉汁率(%)の結果を示す。従来例として、本実施の形態1と同じロットの牛肉を冷凍室5にて設定温度(一例として-18℃)で本実施の形態1の貯蔵期間と同等の時間保存したものを用いた。
図8に示すように、従来例100%として比較すると、本実施の形態1の牛肉の肉汁流出率は80%となり、流出を20%抑制することができ、これが食べたときのジューシーさに繋がると考えられる。
【0047】
ジューシーさが増大するメカニズムを
図8に示す。
図8に示すように、第2温度帯から第1温度帯へ昇温し、第2温度帯に冷却することで、氷結晶の成長を抑制し、それにともない氷結晶の細胞膜への損傷を防ぎ、細胞外に流出する肉汁を細胞内にとどめることが可能になり、食べたときに実感できるジューシーさが実現できる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態1の温度パターンで保存すると、酵素作用や細胞へのダメージ抑制により、保存した食肉のうま味、やわらかさ、ジューシーさが増大し、食べたときに「おいしさ」が実感できるようになる。
【0049】
なお、冷蔵庫本体1に貯蔵室6内の二酸化炭素濃度を調整可能な二酸化炭素濃度調整手段を備えてもよい。
【0050】
この場合、貯蔵室6内の二酸化炭素濃度を大気中の二酸化炭素濃度より上げた状態で、制御手段で貯蔵室6の室温を上記温度パターンで制御することにより、腐敗細菌の増殖を抑制した環境で熟成を行うことができ、より安全性を高めることができる。
【0051】
以上述べたところから明らかなように、本実施の形態1の貯蔵方法は、食肉を貯蔵する貯蔵区画と、前記貯蔵区画を冷却する冷却手段と、前記貯蔵区画の内部の温度を検知する温度検知手段と、前記温度を前記冷却手段で制御する制御手段と、を備えた貯蔵装置において、前記貯蔵区画に貯蔵した前記食肉細胞の氷結率(食肉の水分が凍結している割合)を制御することにより、食肉の細胞の状態が変化し、うま味、やわらかさ増大させることを可能とし、さらに、氷結晶の成長を抑制し、細胞内に肉汁を留めることで、ジューシーさの増大も実現し、食べたときに実感できる「おいしさ」を実現することができる。
(実施の形態2)
実施の形態1にて説明した内容と重複する内容については説明を省略する。
図9は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の貯蔵区画の温度パターンを示すチャート、
図10は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の官能評価・アミノ酸総量・ジペプチド量の結果を示す表、
図11は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫で貯蔵した牛肉細胞のSEM写真である。
【0052】
ここで、牛肉を
図1の冷蔵庫の貯蔵室6に収納した場合を例にとって、本実施の形態2における冷蔵庫の貯蔵工程を説明する。
【0053】
まずスライスした牛肉を貯蔵室6に設置し、操作パネルにあるスイッチを操作して、食材情報として「牛肉」、貯蔵する温度パターンとして「おいしさコース2」を選択し、作動させる。「牛肉」の「おいしさコース2」では、
図9に示すように、入力した食材「牛肉」の情報をもとに、予め設定した氷結率(図示せず)を実現できるような温度パターンで貯蔵するものである。ここで、温度パターンは、設置する食材の種類や量などによっても、幾つかのコースの選択が可能である。
【0054】
図9で示したとおり、予め設定した第2温度帯の設定温度を-11℃±4℃以下(一例として-12℃)になるように、ダンパー装置9により、貯蔵室6室内への冷気流入量の調整を開始する。
【0055】
温度センサ10の設定温度検知後、予め設定された時間(一例として48時間)その状態を保つように、冷気流入量を調整し、予め設定された時間(一例として48時間)経過後、第1温度帯の設定温度を-3℃以下かつ第2温度帯+12℃以下(0は含まず)(一例として、第2温度帯+7℃である-5℃)となるように、再びダンパー装置9により、貯蔵室6室内への冷気流入量の調整を開始する。温度センサ10が設定温度検知後、予め設定された時間(一例として72時間)維持を行い、予め設定された時間(一例として72時間)経過後、第2温度帯の設定温度(一例として-12℃)まで冷却する。
【0056】
加温手段を有する場合は、設定温度に維持するときや第1温度帯に昇温するときにも、この加温手段を用いることができるので、安定した温度制御や第1温度帯-5℃への到達時間の短縮を実現することができる。
【0057】
その後、第2温度帯の設定温度(一例として-12℃)まで冷却し、設定された時間(一例として24時間)維持し、さらに第1温度帯(一例として-5℃)に昇温し、設定された時間(一例として24時間)維持し、貯蔵工程が終了する。
【0058】
図10に、官能評価、アミノ酸総量、ジペプチド量の結果を示す。従来例として、本実施の形態1と同じロットの牛肉を冷凍室5で設定温度(一例として-18℃)で本実施の形態2の貯蔵期間と同等の時間保存したものを用いた。
図10に示すように、官能評価では、従来例と比較して、本実施の形態2の牛肉は、項目「うま味」、「やわらかさ」、「ジューシーさ」において、1ポイント以上、上昇した。官能評価は1ポイント違うとその差は明確に認識できることから、本実施の形態2の温度パターンで貯蔵した牛肉は、貯蔵後、従来例と比較して、「おいしさ」の差が実感できるレベルのものとなった。
【0059】
また、うま味を呈する成分であるアミノ酸総量では、従来例と比較して約12%増量していた。
【0060】
また本発明の実施の形態2では、うま味を呈すると予想されるジペプチドの存在が確認でき、従来例と比較して約53%増量していたことからも、「おいしさ」の差を定量的に確認することができた。
【0061】
アミノ酸やペプチドは、実施の形態1同様、
図4に示すように、牛肉の細胞を構成する蛋白質が酵素により分解されることにより生成され、やわらかさも、蛋白質が酵素により分解されることでもたらされる。
【0062】
貯蔵開始直後、第2温度帯の設定温度(一例として-12℃)まで冷却し、設定時間(一例として48時間)維持することにより、実施の形態1と同様のメカニズムでうま味、やわからさが増大する。
【0063】
その後、第2温度帯の設定温度(一例として-5℃)まで、温度を上昇させ、設定温度(一例として-5℃)で維持すると、温度の上昇にともない、氷結率が下がり、半凍結状態となり、設定時間(一例として72時間)維持することにより、溶解した氷結晶の水分が細胞内に戻り、
図11に示すように、細胞内で微細な氷結晶が生成される。この細胞内の微細な氷結晶は、牛肉のやわらかさに関与する細胞内の筋原線維に、適度なストレスを与えことができ、さらに酵素による分解も促進する。このような物理化学的作用により、実施の形態1よりさらに、食べたときにやわらかさが実感できるようになる。また、細胞内に微細な氷結晶が生成されることにより、氷結晶の成長が抑制され、細胞膜の損傷が抑制されることにより、肉汁流出が抑えられ、食べたときにジューシーさが実感できるようになる。
【0064】
また、第2温度帯の設定温度(一例として-5℃)では、半凍結状態であることから、凍結濃縮の作用は低くなるが、温度の作用は高いことから、酵素の反応性は、第1の温度帯の設定温度(一例として-12℃)より低いものの、従来の冷凍室の設定温度(一例として-18℃)よりは高くなり、第2温度帯(一例として-5℃)においても、酵素作用によりうま味成分が生成される。
【0065】
なお、冷蔵庫本体1に貯蔵室6内の二酸化炭素濃度を調整可能な二酸化炭素濃度調整手段を備えてもよい。
【0066】
この場合、貯蔵室6内の二酸化炭素濃度を大気濃度より上げた状態で、制御手段で貯蔵室6の室温を上記温度パターンで制御することにより、腐敗細菌の増殖を抑制した環境で熟成を行うことができ、より安全性を高めることができる。
【0067】
以上述べたところから明らかなように、本発明は、食肉を貯蔵する貯蔵区画と、前記貯蔵区画を冷却する冷却手段と、前記貯蔵区画の内部の温度を検知する温度検知手段と、前記温度を前記冷却手段で制御する制御手段と、を備えた貯蔵装置において、前記制御手段により、前記温度を、前記食肉の細胞内の水分が凍結している割合である氷結率が46±20%となる第1温度帯と、前記氷結率が80±10%となる第2温度帯とを変動させて制御する貯蔵方法であって、前記温度を、前記第2温度帯に冷却し、前記第1温度帯に昇温し、前記第2温度帯に冷却することにより、貯蔵中に食肉の蛋白質の酵素による分解により生成されるうま味成分(アミノ酸やペプチド)を酵素の反応性を高めることで増量させることを可能とし、さらに温度変動をともなう氷結率の制御により、食肉の細胞の状態を変化させ、細胞内の筋肉線維に適度なストレスを与えることによりやわらかさも増大しつつ、氷結晶の成長を抑制することで細胞膜の損傷も抑え、細胞内に肉汁を保持するので、食肉のうま味、やわらかさ、ジューシーさが増大し、食肉の「おいしさ」が高まり、食べたときに実感できる「おいしさ」を実現することができる。
(実施の形3)
図12は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の断面図、
図13は、本発明の実施の形態3における貯蔵区画の温度パターンである。
図12において、冷蔵庫の扉の外郭もしくは冷蔵庫の貯蔵室内の内壁に設置されている操作パネル11は、冷蔵庫の各部屋(冷蔵室4、冷凍室5等)の温度(弱、中、強)を設定することができる。さらに、貯蔵室6のコース(熟成コース、保存コース)や、投入食品の取り出し予定日、食品の種類(牛肉、豚肉、鶏肉)などを選択することができる。
【0068】
なお、実施の形態1、2と同様の構成および同様の技術思想が適用できる部分については、説明を省略するが、実施の形態1から2の構成に本実施の形態3を組み合わせて実施することで不具合がない限り組み合わせて適用することが可能である。
【0069】
図13において、まずスライスした牛肉を貯蔵室6に設置し、操作パネル11にあるスイッチを操作して、「おいしさコース3」を選択し、取り出し予定日時、食材の種類(牛肉、豚肉、鶏肉)を入力し、動作させ、予め設定した温度パターンで貯蔵する。ここで、温度パターンは、設置する食品の種類や量によってコースを選択可能である。
【0070】
図13では、予め設定した第2の温度帯の設定温度(事例として-12℃)になるように、温度センサ10の検知温度により、ダンパー装置9の開閉動作を決定し、貯蔵室6室内への冷気流入量の調整をして庫内温度をある程度の幅を持ちながら制御する。
【0071】
そして、予め設定された時間(事例として48時間)経過後、第1の温度帯の設定温度(事例として-5℃)になるように、温度センサ10の検知温度を都度、監視しながら、ダンパー装置9の冷気流入量の調整始し、予め設定された時間(事例として72時間)経過後、第2温度帯の設定温度(事例として-12℃)まで貯蔵室の室温を下げ、予め設定された時間(事例として24時間)維持した後、さらに第1の温度帯(事例として-5℃)に上げ、設定された時間(事例として24時間)維持し、貯蔵工程が終了する。
【0072】
その後、解凍工程を行う。事前に操作パネル11を使用し、取り出し予定日時を操作パネルで入力した日時に応じて、使用者が食品を取り出す予定日時の数時間前(事例として12時間前)に前記貯蔵区画を第1の温度帯の温度以上(事例として4℃)で一定時間維持して、食品を解凍させる。これにより使用者が取り出す時に、凍結貯蔵した食品は解凍されているため、解凍動作をすることなく、すぐに加熱調理を行なうことができ、調理や準備の時短が可能となる。また、調理方法により、解凍温度を任意に変更できるので、たとえば、薄切りにしたいときは-3~-1℃の微凍結温度にすることにより、微小氷結により、切りやすくなり、また、時短にもなる。
【0073】
以上述べたところから明らかなように、本実施の形態3において、使用者が前記貯蔵区画に貯蔵してある食品を取り出す予定日時を入力する操作パネルを有し、取り出す予定日時の前に前記貯蔵区画を第2の温度帯以上で一定時間維持する解凍工程を有することで、使用者が取り出す時に、予め凍結貯蔵・熟成した食品が解凍されるため、すぐに加熱調理などを行なうことができ、効率よく調理を行なうことができる。
【0074】
なお、本実施の形態3では、解凍工程などの温度・時間制御情報を操作パネルで入力としたが、携帯端末で入力しWifi等の無線手段を使って、冷蔵庫に制御情報をインプットし、冷蔵庫の温度制御をしてもよい。これにより、外出先からでも取り出し日時を指定でき、家事の効率が向上する。
【0075】
(実施の形態4)
図14は、本発明の実施の形態4における貯蔵区画の温度パターンである。なお、実施の形態1から3と同様の構成および同様の技術思想が適用できる部分については、説明を省略するが、実施の形態1から3の構成に本実施の形態4を組み合わせて実施することで不具合がない限り組み合わせて適用することが可能である。
【0076】
図14において使用者が取り出し予定日を14日後と設定した場合の冷蔵庫の貯蔵区画の温度パターンを示すチャートの一例である。第2の温度帯(事例として-12℃)で一定時間(事例として48時間)温度維持した後、第1の温度帯(事例として-5℃)で一定時間温度維持(事例として72時間)し、さらに、第2の温度帯(事例として-12℃)で一定時間(事例として7日間)維持した後、第1の温度帯(-5℃)で一定時間(24.5時間)維持した後、解凍工程である第2の温度帯以上の温度(事例として4℃)で一定時間(12時間)保持する。使用者の使用予定日や食材の種類に合わせて、適切な貯蔵温度と時間で、貯蔵・解凍することができる。
【0077】
以上述べたところから明らかなように、本実施の形態4において、貯蔵開始から取り出し予定日時の期間に応じて、前記第1の温度帯を維持する時間と、前記第2の温度帯を維持する時間を、貯蔵する食品のうまみを増加させる温度と時間に自動制御することで、期間に合わせて、最も適した熟成温度パターンで貯蔵することができるため、腐敗することなく、おいしさを実感できる熟成を行なうことができる。
【0078】
(実施の形態5)
図15は、本発明の実施の形態5における冷蔵庫の断面図、
図16は、本発明の実施の形態5における貯蔵区画の温度パターンである。
図15において、扉開閉検知手段12は、圧力や磁力などを用いた扉SWであり、貯蔵室6の扉の開閉状況を検知することができる。
【0079】
報知手段13は、貯蔵室6の扉開閉状況を使用者に知らせるものであり聴覚に報知するブザーまたは視覚に報知するLED照明である。
【0080】
また、扉接触検知手段14は、光や圧力や静電容量などを利用した検知手段であり、貯蔵室6の扉に接触しているかの有無を検知することにより扉開閉動作の予測ができるものである。
【0081】
なお、実施の形態1から4と同様の構成および同様の技術思想が適用できる部分については、説明を省略するが、実施の形態1から4の構成に本実施の形態5を組み合わせて実施することで不具合がない限り組み合わせて適用することが可能である。
【0082】
ここで、
図15を用いて牛肉を貯蔵室6に収納した場合の本実施の形態5における冷蔵庫の貯蔵工程を説明する。
【0083】
まずスライスした牛肉を貯蔵室6に設置し、操作パネル11にあるスイッチを操作して、「おいしさコース4」を選択し、取り出し予定日時、食品の種類(牛肉、豚肉、鶏肉)を入力し、動作させ、予め設定温度パターンで貯蔵するものである。ここで、温度パターンは、設置する食品の種類や量によってコースを選択可能である。
【0084】
予め設定した第2の温度帯の設定温度(事例として-12℃)になるように、温度センサ10の検知温度により、ダンパー装置9の開閉動作を決定し、貯蔵室6室内への冷気流入量の調整をして庫内温度をある程度の幅を持ちながら制御する。
【0085】
そして、予め設定された時間(事例として48時間)経過後、第1の温度帯の設定温度(事例として-5℃)になるように、温度センサ10を用いて検知温度を監視しながら、ダンパー装置9の冷気流入量の調整し、予め設定された時間(事例として72時間)維持を行う。
【0086】
このとき、外気温等からの自然の吸熱による温度上昇でもよいが、よりきめ細かく、また、外気温度や周囲環境影響を受けず、昇温や温度維持のため、ヒータなどの加温手段(図示せず)を貯蔵室周辺に設置し、加温、温度維持に用いることができる。これにより温度変動の極めて少ないきめ細かな温度維持や第2の温度帯-5℃への到達時間の短縮などの温度制御性の向上を実現することができる。
【0087】
その後、第2の温度帯の設定温度(事例として-12℃)まで貯蔵室の室温を下げ、予め設定された時間(事例として24時間)維持した後、さらに第1の温度帯(事例として-5℃)に上げ、温度変動を繰り返し、設定された時間(事例として24時間)維持し、時間経過後、貯蔵工程が終了し、使用者にブザーやLED等の表示・報知手段により伝達する。もちろん、無線通信等を用い、携帯端末等に表示してもよい。
【0088】
使用者が、貯蔵室6に食品を入れてから取り出すまでの貯蔵期間中に、貯蔵室6の扉を開けた場合、貯蔵室6の扉開閉検知手段12により扉の開状態を検知し、報知手段13により、ただちに扉の開状態を使用者にお知らせするので、使用者は報知に気づき、ただちに扉を閉めようとする。そのため、扉を長期間開けたままの状況でいることで貯蔵室6内の温度が変動し、食品の温度にも影響を与え、おいしさを実現するねらいの温度で貯蔵できないことを防止することができる。報知手段13は、音による警告音や音楽などのメロディー、「ドアを閉めてください」などの使用者に扉を閉めることを促す内容の音声でもよく、LEDや液晶ディスプレイなどの表示などの視覚による報知手段でも構わない。
【0089】
報知手段13の方法は、操作パネル11により、報知の有無や、報知手段の方法(聴覚での報知、視覚での報知)を任意で選択することもできる。
【0090】
また、使用者が貯蔵コースを設定せず、通常の使用方法で使用している場合には、この報知手段は動作せず、通常にどおり扉開閉ができ、ブザー音やLEDでの報知などはない。
【0091】
さらに、貯蔵室6の扉外郭を設置している圧力センサを用いた感圧センサや人間が保持する静電容量など利用した静電センサを備えた扉接触検知手段14を利用することにより貯蔵室6の扉に使用者が触れた時点で前記扉接触手段により検知が行なわれ、それによりLEDやブザーなどの報知手段が動作することで使用者に報知し、貯蔵室6の扉開閉を未然に防ぐことができる。
【0092】
さらに、接触時間にある程度閾値を設けることにより、人が触れただけか扉を開ける意思があるかを判断することにより、扉の開閉動作の検知精度を高めることができ、その結果として、高品位な熟成が実現できる。
【0093】
以上述べたところから明らかなように、本発明は、食品を貯蔵する貯蔵区画と、貯蔵区画を冷却する冷却手段と、貯蔵区画の室温を検知する検知手段と、貯蔵区画の室温を制御する制御手段と、扉開閉検知手段と、報知手段を有し、制御手段は冷却手段で貯蔵区画の室温を変動制御することにより、食品の凍結率ならびに濃縮率を変化させて、より均一に酵素活性を促進させて食品のうまみを増加させることができ、貯蔵中に蛋白質の酵素による分解により生成されるうま味成分(アミノ酸やペプチド)を酵素の活性と反応性を高めることで増量させることを可能とし、さらに氷結晶の状態制御により、筋肉組織に物理的損傷を適正に与えることによりやわらかさも実現し、使用者に扉の開状態を知らせて長期間の扉の開状態を防ぎながら食品をねらいの温度で貯蔵することができるため、「おいしさ」を実感できる熟成を行うことができる。
【0094】
また、本実施の形態1では、冷蔵庫の一部に備わる貯蔵区画で説明したが、専用庫や業務用機器でもよく、この場合、冷蔵庫の他区画の操作影響を配慮しなくてもいいので、温度制御性や温度一定性、温度調整などが効率的になり、より品位がよいおいしい牛肉を提供できる。
【0095】
また、本実施の形態1では、牛肉のスライスで説明したが、塊肉や他の食肉でもよく、あらかじめデータベースで温度や時間を制御することにより、より美味しい食品を提供できる。
【0096】
(実施の形態6)
図16は、本発明の実施の形態6における貯蔵区画の温度パターンである。なお、実施の形態1から5と同様の構成および同様の技術思想が適用できる部分については、説明を省略するが、実施の形態1から5の構成に本実施の形態6を組み合わせて実施することで不具合がない限り組み合わせて適用することが可能である。
【0097】
図16において、まずスライスした牛肉を貯蔵室6に設置し、操作パネル11にあるスイッチを操作して、「おいしさコース5」を選択し、取り出し予定日時、食品の種類(牛肉、豚肉、鶏肉)を入力し、動作させ、予め設定温度パターンで貯蔵する。ここで、温度パターンは、設置する食品の種類や量によってコースを選択可能である。
【0098】
予め設定した第2の温度帯の設定温度(事例として-12℃)になるように、温度センサ10の検知温度により、ダンパー装置9の開閉動作を決定し、貯蔵室6室内への冷気流入量の調整をして庫内温度をある程度の幅を持ちながら制御する。
【0099】
そして、予め設定された時間(事例として48時間)経過後、第1の温度帯の設定温度(事例として-5℃)になるように、温度センサ10の検知温度を都度、監視しながら、ダンパー装置9の冷気流入量の調整始し、予め設定された時間(事例として72時間)維持を行う。
【0100】
その後、第2の温度帯の設定温度(事例として-12℃)まで貯蔵室の室温を下げ、予め設定された時間(事例として24時間)維持した後、さらに第1の温度帯(事例として-5℃)に上げ、設定された時間(事例として24時間)維持し、時間経過後、貯蔵工程が終了する。
【0101】
つぎに解凍工程を移行する。事前に操作パネル11を使用し、取り出し予定日時を操作パネルで入力した日時に応じて、使用者が食品を取り出す予定日時の数時間前(事例として12時間前)に前記貯蔵区画を第2の温度帯の温度以上(事例として4℃)で一定時間維持して、食品を解凍させる。これにより使用者が取り出す時に、凍結貯蔵した食品は解凍されているため、解凍動作をすることなく、すぐに加熱調理を行なうことができ、調理や準備の時短が可能となる。また、調理方法により、解凍温度を任意に変更できるので、たとえば、薄切りにしたいときは-3~-1℃の微凍結温度にすることにより、微小氷結により、切りやすくなり、また、時短にもなる。
【0102】
また、使用者が、貯蔵室6に食品を入れてから取り出すまでの熟成期間中に、貯蔵室6の扉を開けた場合、貯蔵室6の扉開閉検知手段12により扉の開状態を検知し、一定時間経過後に、報知手段13により扉の開状態を使用者に知らせる。使用者は報知により長時間扉を開けていたことに気づき、扉を閉めようとする。そのため、扉を長期間開けたままの状況でいることで貯蔵室6内の温度が変動し、食品の温度にも影響を与え、おいしさを実現するねらいの温度で貯蔵できないことを防止することができる。一定時間とは、扉を開放していても食品に影響を与えない時間である。
【0103】
また、扉開閉検知手段12により、一定時間連続で検知した時に報知手段13により報知する。扉の開放が1~2回の少ない回数で短時間であれば、貯蔵室6に入れている食品にほとんど影響を与えないが、一定時間連続で検知した場合に報知することもできる。
【0104】
以上述べたところから明らかなように、本実施の形態6において、使用者が前記貯蔵区画に貯蔵してある食品を取り出す予定日時を操作パネルにて入力して、取り出す予定日時の数時間前に前記貯蔵区画を第2の温度帯以上で一定時間維持する解凍工程を有することで、使用者が取り出す時に、予め凍結貯蔵・熟成した食品が解凍されるため、すぐに加熱調理などを行なうことができ、効率よく調理を行なうことができ、また、使用者に扉の開状態を知らせて長期間の扉の開状態を防ぎながら食品をねらいの温度で貯蔵することができるため、「おいしさ」を実感できる熟成を行うことができる。
【0105】
なお、本実施の形態6では、解凍工程などの温度・時間制御情報を操作パネルで入力としたが、携帯端末での入力しWifi等の無線手段を使って、冷蔵庫に制御情報をインプットし、冷蔵庫の温度制御をしてもよい。これにより、外出先からでも取り出し日時を指定でき、家事の効率が向上する。
【0106】
なお、本実施の形態6では、扉開閉に関する報知手段のみの記載であったが、操作パネルで熟成モードを設定すると、貯蔵室の開閉を防止するロック機構を冷蔵庫に備えてもよい。それにより、報知およびロック機構があるのでより高品位に熟成肉を生成することができる。
【0107】
(実施の形態7)
図17は、本発明の実施の形態7における貯蔵区画の温度パターンである。なお、実施の形態1から6と同様の構成および同様の技術思想が適用できる部分については、説明を省略するが、実施の形態1から6の構成に本実施の形態7を組み合わせて実施することで不具合がない限り組み合わせて適用することが可能である。
【0108】
まずスライスした牛肉を貯蔵室6に設置し、操作パネル11にあるスイッチを操作して、食材情報として「牛肉」、貯蔵する温度パターンとして「おいしさコース6」を選択し、作動させる。「牛肉」の「おいしさコース6」では、
図17に示すように、入力した食材「牛肉」の情報をもとに、予め設定した氷結率(図示せず)を実現できるような温度パターンで貯蔵するものである。ここで、温度パターンは、設置する食材の種類や量などによっても、幾つかのコースの選択が可能であり、取り出し予定日時も入力する。
【0109】
図17で示したとおり、予め設定した第2温度帯の設定温度(一例として-12℃)になるように、ダンパー装置9により、貯蔵室6室内への冷気流入量の調整を開始する。
【0110】
温度センサ10の設定温度検知後、予め設定された時間(一例として48時間)その状態を保つように、冷気流入量を調整し、予め設定された時間(一例として48時間)経過後、第1温度帯の設定温度(一例として-5℃)になるように、再びダンパー装置9により、貯蔵室6室内への冷気流入量の調整を開始する。温度センサ10が設定温度検知後、予め設定された時間(一例として72時間)維持を行い、予め設定された時間(一例として72時間)経過後、第2温度帯の設定温度(一例として-12℃)まで冷却する。
【0111】
加温手段を有する場合は、設定温度に維持するときや第1温度帯に昇温するときにも、この加温手段を用いることができるので、安定した温度制御や第1温度帯-5℃への到達時間の短縮を実現することができる。
【0112】
その後、第2温度帯の設定温度(一例として-12℃)まで冷却し、設定された時間(一例として24時間)維持し、さらに第1温度帯(一例として-5℃)に昇温し、設定された時間(一例として24時間)維持し、貯蔵工程が終了する。
【0113】
つぎに貯蔵維持工程に移行し、第3の温度帯の設定温度(事例として-18℃)になるように、温度センサ10を用いて検知温度を監視しながら、ダンパー装置9の冷気流入量の調整し、貯蔵維持工程として温度を維持する。
【0114】
さらに、解凍工程に移行し、事前に操作パネル11を使用し、取り出し予定日時を操作パネルで入力した日時に応じて、使用者が食品を取り出す予定日時の数時間前(事例として12時間前)に前記貯蔵区画を第4の温度帯(事例として4℃)で一定時間維持して、食品を解凍させる。
【0115】
これにより使用者が取り出す時に、凍結貯蔵した食品は解凍されているため、解凍動作をすることなく、すぐに加熱調理を行なうことができ、調理や準備の時短が可能となる。また、調理方法により、解凍温度を任意に変更できるので、たとえば、薄切りにしたいときは-3~-1℃の微凍結温度にすることにより、微小氷結により、切りやすくなり、また、時短にもなる。
【0116】
図17では、使用者がすぐに加熱調理を行いたい場合に、操作パネル11を使用し、調理準備工程を設定することができる。取り出し予定日時の数時間前に、第5の温度帯(事例として20℃)で一定時間維持する調理準備工程を設けて、取り出し時に、食品の温度が室温になるようにする。一般的に冷蔵室に保存された食品を加熱調理する場合、加熱時に食品内部と表面の温度差が生じすぎることを防ぐ目的で、食品を室温に30分間程度放置してから加熱調理を行うが、それと同様の効果を得ることができる。そのため室温で放置する作業が不要になり、すぐに加熱調理などを行なうことができるため、効率よく短時間で調理を行なうことができる。
【0117】
なお、冷蔵庫本体1に貯蔵室6内の二酸化炭素濃度を調整可能な二酸化炭素濃度調整手段を備えてもよい。
【0118】
この場合、貯蔵室6内の二酸化炭素濃度を大気濃度より上げた状態で、制御手段で貯蔵室6の室温を上記温度パターンで制御することにより、腐敗細菌の増殖を抑制した環境で熟成を行うことができ、より安全性を高めることができる。
【0119】
以上述べたところから明らかなように、本発明は、食肉を貯蔵する貯蔵区画と、前記貯蔵区画を冷却する冷却手段と、前記貯蔵区画の内部の温度を検知する温度検知手段と、前記温度を前記冷却手段で制御する制御手段と、を備えた貯蔵装置において、前記制御手段により、氷結率を変動させた後で、所定の氷結率で維持し、さらに、使用者が前記貯蔵区画に保存してある食品を取り出す予定日時を入力する操作パネルを有し、取り出す予定日時の数時間前に前記貯蔵区画を食品の氷結率が0%になる温度帯以上で一定時間維持する解凍工程を有することで、使用者が取り出す時に、予め凍結貯蔵・熟成した食品が解凍されるため、すぐに加熱調理などを行なうことができ、効率よく調理を行なうことができる。推奨時間以上貯蔵することになっても、熟成状態を維持しながら、解凍などの手間がかかることなく、おいしさを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
以上のように、本発明にかかる貯蔵方法およびこの貯蔵方法を用いた冷蔵庫は、家庭用だけでなく、業務用の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0121】
1 冷蔵庫本体
2 断熱仕切壁
3 断熱仕切壁
4 冷蔵区画室
5 冷凍室
6 貯蔵室
7 冷却器
8 送風機
9 ダンパー装置
10 温度センサ
11 操作パネル
12 扉開閉検知手段
13 報知手段
14 扉接触検知手段