(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】プリズム群及び投写型映像表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20241220BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20241220BHJP
G02B 27/10 20060101ALI20241220BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20241220BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20241220BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20241220BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/00 F
G02B27/10
G02B5/04 G
H04N5/74 A
H04N23/55
(21)【出願番号】P 2023578634
(86)(22)【出願日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2023003533
(87)【国際公開番号】W WO2023149536
(87)【国際公開日】2023-08-10
【審査請求日】2024-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2022017509
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】山本 紀和
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-006397(JP,A)
【文献】特開2009-205442(JP,A)
【文献】特開2010-243686(JP,A)
【文献】特開2020-064206(JP,A)
【文献】特開2020-098224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0122780(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0091253(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
G02B 27/10
G02B 5/04
H04N 5/74
H04N 23/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TIRプリズムと撮像光反射プリズムとを備え、
前記TIRプリズムは、
照明光学系により供給された照明光を反射させて光変調素子へ導くとともに、前記光変調素子で反射して生成された投写光を透過させて、投写光軸に沿って前記投写光軸の前方側の投写光学系へ出力し、更に、前記投写光学系から入射し、前記投写光軸の前方側に対向する方向に伝搬される外部光の少なくとも一部である撮像光を反射させて前記撮像光反射プリズムへ導き、
前記撮像光反射プリズムは、
前記TIRプリズムから入射した前記撮像光を内部反射させて、前記投写光軸に実質的に直交する面にある撮像光軸に沿って撮像素子へ導く、
プリズム群。
【請求項2】
前記TIRプリズムは、前記投写光軸の前方側から前記投写光軸に沿って順に配置された第1のプリズムと第2のプリズムとを含み、
前記第2のプリズムの前記照明光が反射する照明光反射面と、前記第1のプリズムの前記投写光が入射する投写光入射面とは、平行な間隙を隔てて対向して配置され、
前記撮像光反射プリズムは、前記TIRプリズムからの前記撮像光が透過する撮像光入射面を有し、前記撮像光入射面を介して前記第1のプリズムと隣接して配置され、
前記撮像光は、前記TIRプリズム及び前記撮像光反射プリズム内において複数回内部反射し、
前記撮像光軸は、前記撮像光が前記TIRプリズム及び前記撮像光反射プリズムを通過する長手方向軸に直交する方向又はその付近に位置する、
請求項1に記載のプリズム群。
【請求項3】
前記撮像光反射プリズムは、前記撮像光入射面において、前記第1のプリズムと一体的に構成されている、
請求項2に記載のプリズム群。
【請求項4】
前記撮像光反射プリズムと、前記第1のプリズムとは、前記撮像光入射面において、平行な間隙を隔てて分離して配置されている、
請求項2に記載のプリズム群。
【請求項5】
前記TIRプリズムは、前記第1のプリズムと前記第2のプリズムとの間に配置された第3のプリズムを更に含み、
前記第3のプリズムは、第1のプリズム面と、前記第1のプリズム面と角度を成す第2のプリズム面とを有し、前記第1のプリズム面と前記第1のプリズムの前記投写光入射面とが接合され、前記第2のプリズム面と前記第2のプリズムの前記照明光反射面とが、平行な間隙を隔てて対向して配置されている、
請求項2に記載のプリズム群。
【請求項6】
前記投写光入射面は、可視域部分反射コートが施され、
前記可視域部分反射コートは、可視域の光に対し、2%以上15%以下の反射率を有して前記撮像光を反射させる、
請求項2に記載のプリズム群。
【請求項7】
前記投写光入射面は、赤外域部分反射コートが施され、
前記赤外域部分反射コートは、赤外域の光に対し、50%以上の反射率を有して前記撮像光を反射させる、
請求項2に記載のプリズム群。
【請求項8】
前記撮像光反射プリズムは、内部反射面を有し、
前記撮像光の少なくとも一部は、前記内部反射面で内部反射し、
前記内部反射面は、前記撮像光が内部反射する方向に向けて凹面の形状を有する、
請求項1に記載のプリズム群。
【請求項9】
前記撮像光は、前記撮像光反射プリズム内にて中間像を形成し、前記中間像を前記撮像素子の位置に結像し、
前記中間像は、前記内部反射面から離間して位置している、
請求項8に記載のプリズム群。
【請求項10】
前記撮像光反射プリズムは、撮像光出射面を有し、
前記撮像光は、前記撮像光出射面で透過して前記撮像素子へ出射され、
前記撮像光出射面は、前記撮像光が前記撮像素子へ出射する方向に向けて凸面の形状を有する、
請求項1に記載のプリズム群。
【請求項11】
可視域の照明光を供給する照明光学系と、
請求項1から10のいずれか1つに記載の前記プリズム群を含むプリズム部材と、
前記照明光学系により供給され、前記プリズム部材により導かれて入射した光を空間的に変調し、映像情報に応じた前記投写光を生成する1つ又は複数の光変調素子と、
前記TIRプリズムを透過した前記投写光を拡大投写して映像を表示する投写光学系と、
前記撮像光反射プリズムにより出力された前記撮像光を受光して電気的な画像信号に変換する撮像素子と、
を備える、
投写型映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリズム群、及びそれを備える投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本体内部に撮像素子を有し、投影用光を投写対象物に投写する投写光学系と、投写対象物からの光などを外光として撮像素子に結像する撮像光学系と、を共に備える投写型映像表示装置が知られていた。このような投写型映像表示装置は、投写対象物に対して映像を投写するとともに、投写された映像を撮像する機能を有する。この種の投写型映像表示装置として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のプロジェクタ(投写型映像表示装置)は、光源からの照明光を光変調素子に導くと共に、光変調素子で反射された光を投写光学系へ出力するTIRプリズムが設けられている。発光素子から発された光は、投写レンズを介してTIRプリズムに入射し、TIRプリズムの反射面で反射して出射し、撮像素子上で結像する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
特許文献1に記載のプロジェクタでは、TIRプリズムが照明光と、投写光と、撮像光との光路分岐素子として用いられている。当該プロジェクタの構成において、撮像光学系を投写光軸に対して傾斜する方向に配置して、撮像光を取り出している。このような配置では、撮像光学系がプロジェクタ機器内部への組み込みが困難である場合があり、装置が大型化となる問題が生じている。また、特許文献1のプロジェクタの構成では、TIRプリズムの外側でミラー等の光学部品を設けて撮像光の光路を折り曲げようとすると、光束の広がりにより装置の小型化が困難である。したがって、従来よりも小型化が容易な投写型映像表示装置が求められていた。
【0006】
そこで、本開示の目的は、前記課題を解決することにあって、撮像光学系を投写型映像表示装置の機器内部に組み込むことを容易にし、投写型映像表示装置の小型化を容易にするプリズム群、及びそれを備える投写型映像表示装置を提供することにある。
【0007】
前記目的を達成するために、本開示に係るプリズム群は、TIRプリズムと撮像光反射プリズムとを備え、TIRプリズムは、照明光学系により供給された照明光を反射させて光変調素子へ導くとともに、光変調素子で反射して生成された投写光を透過させて、投写光軸に沿って投写光軸の前方側の投写光学系へ出力し、更に、投写光学系から入射し、投写光軸の前方側に対向する方向に伝搬される外部光の少なくとも一部である撮像光を反射させて撮像光反射プリズムへ導き、撮像光反射プリズムは、TIRプリズムから入射した撮像光を内部反射させて、投写光軸に実質的に直交する面にある撮像光軸に沿って撮像素子へ導くように構成されている。
【0008】
本開示の一態様に係るプリズム群によれば、撮像光学系が容易に投写型映像表示装置の機器内部に組み込むことができ、投写型映像表示装置の小型化を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係る実施例1の投写型映像表示装置の全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図1の投写型映像表示装置の投写光学系側から見た機器内部の配置図である。
【
図3】本開示の実施の形態に係るプリズム群の構成を示す斜視図である。
【
図4】本開示の実施の形態に係るプリズム群の断面図である。
【
図5A】本開示の実施の形態に係るプリズム群における可視域部分反射コートの反射特性の例を示す図である。
【
図5B】本開示の実施の形態に係るプリズム群における赤外域部分反射コートの反射特性の例を示す図である。
【
図6】
図1の投写光学系に入射する投写光のスペクトルの一例を示す図である。
【
図7】本開示の実施の形態の変形例1に係るプリズム群の断面図である。
【
図8】本開示の実施の形態の変形例2に係るプリズム群の断面図である。
【
図9】本開示の実施の形態の変形例1に係るプリズム群(
図9の(a))と、変形例2に係るプリズム群(
図9の(b))とにおけるDMD-OFF光の反射を示す断面図である。
【
図10】本開示の実施の形態に係るプリズム群による撮像光の伝搬の様子を示す図である。
【
図11】本開示の実施の形態に係るプリズム群による撮像光の伝搬の様子を示す図である。
【
図12】本開示の実施の形態に係る実施例2の投写型映像表示装置の投影撮像光学系の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の第1態様によれば、TIRプリズムと撮像光反射プリズムとを備え、TIRプリズムは、照明光学系により供給された照明光を反射させて光変調素子へ導くとともに、光変調素子で反射して生成された投写光を透過させて、投写光軸に沿って投写光軸の前方側の投写光学系へ出力し、更に、投写光学系から入射し、投写光軸の前方側に対向する方向に伝搬される外部光の少なくとも一部である撮像光を反射させて撮像光反射プリズムへ導き、撮像光反射プリズムは、TIRプリズムから入射した撮像光を内部反射させて、投写光軸に実質的に直交する面にある撮像光軸に沿って撮像素子へ導く、プリズム群を提供する。
【0011】
この態様によれば、撮像光学系が容易に投写型映像表示装置の機器内部に組み込むことができ、投写型映像表示装置の小型化を容易にすることができる。
【0012】
本開示の第2態様によれば、TIRプリズムは、投写光軸の前方側から投写光軸に沿って順に配置された第1のプリズムと第2のプリズムとを含み、第2のプリズムの照明光が反射する照明光反射面と、第1のプリズムの投写光が入射する投写光入射面とは、平行な間隙を隔てて対向して配置され、撮像光反射プリズムは、TIRプリズムからの撮像光が透過する撮像光入射面を有し、撮像光入射面を介して第1のプリズムと隣接して配置され、撮像光は、TIRプリズム及び撮像光反射プリズム内において複数回内部反射し、撮像光軸は、撮像光がTIRプリズム及び撮像光反射プリズムを通過する長手方向軸に直交する方向又はその付近に位置する、第1態様に記載のプリズム群を提供する。
【0013】
本開示の第3態様によれば、撮像光反射プリズムは、撮像光入射面において、第1のプリズムと一体的に構成されている、第2態様に記載のプリズム群を提供する。
【0014】
本開示の第4態様によれば、撮像光反射プリズムと、第1のプリズムとは、撮像光入射面において、平行な間隙を隔てて分離して配置されている、第2態様に記載のプリズム群を提供する。
【0015】
本開示の第5態様によれば、TIRプリズムは、第1のプリズムと第2のプリズムとの間に配置された第3のプリズムを更に含み、第3のプリズムは、第1のプリズム面と、第1のプリズム面と角度を成す第2のプリズム面とを有し、第1のプリズム面と第1のプリズムの投写光入射面とが接合され、第2のプリズム面と第2のプリズムの照明光反射面とが、平行な間隙を隔てて対向して配置されている、第2から第4態様のいずれか1つに記載のプリズム群を提供する。
【0016】
本開示の第6態様によれば、投写光入射面は、可視域部分反射コートが施され、可視域部分反射コートは、可視域の光に対し、2%以上15%以下の反射率を有して撮像光を反射させる、第2から第5態様のいずれか1つに記載のプリズム群を提供する。
【0017】
本開示の第7態様によれば、投写光入射面は、赤外域部分反射コートが施され、赤外域部分反射コートは、赤外域の光に対し、50%以上の反射率を有して撮像光を反射させる、第2から第5態様のいずれか1つに記載のプリズム群を提供する。
【0018】
本開示の第8態様によれば、撮像光反射プリズムは、内部反射面を有し、撮像光は、内部反射面で内部反射し、内部反射面は、撮像光が内部反射する方向に向けて凹面の形状を有する、第1から第7態様のいずれか1つに記載のプリズム群を提供する。
【0019】
本開示の第9態様によれば、撮像光は、撮像光反射プリズム内にて中間像を形成し、中間像を撮像素子の位置に結像し、中間像は、内部反射面から離間して位置している、第8態様に記載のプリズム群を提供する。
【0020】
本開示の第10態様によれば、撮像光反射プリズムは、撮像光出射面を有し、撮像光は、撮像光出射面で透過して撮像素子へ出射され、撮像光出射面は、撮像光が撮像素子へ出射する方向に向けて凸面の形状を有する、第1から第9態様のいずれか1つに記載のプリズム群を提供する。
【0021】
本開示の第11態様によれば、可視域の照明光を供給する照明光学系と、第1から第10態様のいずれか1つに記載のプリズム群を含むプリズム部材と、照明光学系により供給され、プリズム部材により導かれて入射した光を空間的に変調し、映像情報に応じた投写光を生成する1つ又は複数の光変調素子と、TIRプリズムを透過した投写光を拡大投写して映像を表示する投写光学系と、撮像光反射プリズムにより出力された撮像光を受光して電気的な画像信号に変換する撮像素子と、を備える、投写型映像表示装置を提供する。
【0022】
なお、上記様々な実施の形態のうちの任意の実施の形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0023】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0024】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供するものであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。また、各図においては、説明を容易なものとするため、各要素を誇張して示している。
【0025】
《実施の形態》
以下、本開示の実施の形態に係るプリズム群、及びそれを備える投写型映像表示装置について、
図1乃至
図12を参照しながら説明する。本開示に係るプリズム群を適用した投写型映像表示装置の具体的な実施例として、1つの光変調素子を備える単板式の投写型映像表示装置(実施例1)及び3つの光変調素子を備える3板式の投写型映像表示装置(実施例2)を説明する。
【0026】
(実施例1の投写型映像表示装置600の構成)
以下において、本開示の実施の形態に係る実施例1の投写型映像表示装置600の構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本開示の実施の形態に係る実施例1の投写型映像表示装置600の全体構成を示す概略図である。また、
図1の(a)及び(b)は、図示X-Z面において投写型映像表示装置600の全体構成を示す概略図である。
図1の(c)は、
図1の(a)の左側、すなわち、
図1の(a)の+Z側から-Z方向に向かって見たプリズム群300及び撮像光学系440等を示す概略図である。なお、本開示の実施の形態に係る投写型映像表示装置は、例えば、高輝度タイプのプロジェクタであって、プロジェクションマッピングなどに用いられてもよく、また、家庭用の低輝度タイプのプロジェクタであってもよい。
【0027】
図1の投写型映像表示装置600は、照明光を供給する照明光学系200と、投影撮像光学系500と、を備える。照明光学系200は、光源ユニット20と、アフォーカルレンズ31,32と、拡散板41と、λ/4板42と、コンデンサレンズ33,34,35と、ダイクロイックミラー45と、ロッドインテグレータ46と、蛍光体ホイール50と、カラーホイール60と、照明光リレー光学系を構成するレンズ73,74,75と、を含む。
【0028】
<照明光学系>
照明光学系200において、光源ユニット20は、例えば、複数の半導体レーザ(LD)又は発光ダイオード(LED)によって構成される。本実施の形態では、青色光を出射する半導体レーザ素子21を使用することができる。半導体レーザ素子21から出射される青色光は、波長が455nm付近であって、映像光として用いられるとともに、蛍光体ホイール50の蛍光体を励起するための励起光としても用いられる。半導体レーザ素子21から発された青色光は、図示-X方向に出射され、コリメートレンズ22によってコリメートされた後、アフォーカルレンズ31及び32によって集束され、拡散板41を透過してダイクロイックミラー45に入射する。
【0029】
本実施の形態において、光源ユニット20から出射される光は、例えば、S偏光の青色光であって、ダイクロイックミラー45は、S偏光の青色光を反射し、P偏光の青色光及びその他の色光は透過することができる。ダイクロイックミラー45で反射された青色光は、略-Z方向に進み、λ/4板42を通過して、コンデンサレンズ33、34で集光されて蛍光体ホイール50に入射し、蛍光体ホイール50の蛍光体を励起して発光させる。
【0030】
蛍光体ホイール50は、回転することにより、蛍光体層の異なるセグメントが入射した青色光によって励起され、例えば、黄色域の発光成分光、緑色域の発光成分光等を含む蛍光を発生することができる。また、λ/4板42を通過した青色光の一部が蛍光体ホイール50により反射されて、λ/4板42を再度通過することで、P偏光の青色成分光となり、ダイクロイックミラー45を透過する。ダイクロイックミラー45を透過した青色成分光及び各色域の発光成分光は、略Z方向に進み、コンデンサレンズ35を経てカラーホイール60に入射する。
【0031】
カラーホイール60は、蛍光体ホイール50と同期回転するよう制御され、異なるセグメントの透過特性によって入射した光を分光する。同期回転する蛍光体ホイール50とカラーホイール60とによって生成される光は、赤色、緑色、青色、黄色等を含む各色域の成分光が時分割で出射されるように、ロッドインテグレータ46に入射し、ここで均一化される。
【0032】
ロッドインテグレータ46から出射された光は、照明光リレー光学系を構成するレンズ73,74,75を透過したのち、照明光学系200から出射され、時間平均としては白色光の照明光Lsとなって投影撮像光学系500に入射する。
【0033】
<投影撮像光学系>
次に、投影撮像光学系500は、プリズム群300と、光変調素子400と、投写光学系420と、撮像光学系440と、撮像素子450と、を備える。また、本実施の形態において、撮像光学系440及び撮像素子450は、図示X方向の投写光軸Oa1に概ね直交するY-Z面に配置され、撮像光Liは、+Y方向の撮像光軸Ob1に沿って撮像素子450に入射する(
図1の(c)に示す)。
【0034】
投影撮像光学系500において、プリズム群300は、TIR(Total Internal Reflection)プリズム310(内部全反射プリズム)と、撮像光反射プリズム350とによって構成されている。TIRプリズム310は、本実施の形態において、略三角柱状の第1のプリズム320と第2のプリズム330とを、間に微小な間隙を設けて接合して構成されている。TIRプリズム310は、全反射を利用して、入射してきた照明光Lsを、進行方向を偏向させて光変調素子400に導く。撮像光反射プリズム350は、TIRプリズム310に隣接して配置されている。撮像光反射プリズム350とTIRプリズム310とは、分離して構成されてもよく(
図7)、一体に構成されてもよい(
図4、
図8)。
図1においては、撮像光反射プリズム350とTIRプリズム310とを分離した構成で示している。撮像光反射プリズム350は、TIRプリズム310で反射して入射した撮像光Liを更に反射して偏向させて撮像素子450に導く。プリズム群300の構成については、後段において詳述する。
【0035】
光変調素子400は、DMD(Digital Mirror Device)が用いられ、照明光Lsに含まれる各色域の成分光を、映像信号に基づいて変調し、画素毎に投写光LpとなるDMD-ON光(オン光)、又はDMD-OFF光Lf(オフ光)に振り分ける。投影用の投写光Lpは、投写光軸Oa1に沿って+X方向に出射され、DMD-OFF光Lfは投写光軸Oa1から偏向されて除去される。
【0036】
投写光Lpは、TIRプリズム310を透過し、投写光出射面321から出力されて、投写光軸Oa1に沿って投写光学系420へ伝搬される。投写光学系420が備えるレンズ群LGpは、投写光Lpをスクリーン430などの投写対象物に拡大投写して映像を表示する。
【0037】
一方、スクリーン430から図示-X方向に反射された外部光Leの少なくとも一部である撮像光Liを利用して、投写された映像を、投影撮像光学系500に内蔵された撮像素子450によって撮像することができる。
【0038】
図示のように、外部光Leは、投写光学系420から入射し、投写光軸Oa1に沿って-X方向に伝搬され、TIRプリズム310の第1のプリズム320の投写光学系側の投写光出射面321に入射する。TIRプリズム310内において、外部光Leの少なくとも一部である撮像光Liが内部反射し、偏向されて撮像光反射プリズム350に入射する。撮像光反射プリズム350に入射した撮像光Liが撮像光反射プリズム350内で更に内部反射して偏向され、撮像光反射プリズム350の撮像光出射面353から撮像光軸Ob1に沿って出射され、図示+Y方向に撮像光学系440に導入される。
【0039】
撮像光学系440は、複数の光学部品によって構成することができ、本実施の形態において、複数のレンズからなるリレー光学系で構成することができる。撮像光出射面353から出射され、+Y方向の撮像光軸Ob1に沿って伝搬される撮像光Liは、撮像光学系440により、撮像素子450に結像することができる。なお、本開示は、撮像光学系による結像の倍率を限定せず、撮像光学系440は、縮小結像光学系であってもよく、等倍、又は拡大結像光学系であってもよい。撮像素子450は、CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサー等の固体撮像素子から構成することができ、受光した撮像光Liを電気的な画像信号に変換する。
【0040】
<投写型映像表示装置の機器内部の配置>
次に、本開示の実施の形態に係る投写型映像表示装置600の機器内部の配置について、
図2を参照して説明する。
図2は、
図1の投写型映像表示装置600の投写光学系側から見た機器内部の配置図である。ただし、
図1は、撮像光学系440及び撮像素子450がプリズム群300の-Y側に配置される構成例であって、
図2は、撮像光学系440及び撮像素子450がプリズム群300の-Y側に配置される構成例を示している。
【0041】
図1の投写光学系420側、すなわち、
図1の上方から、-X方向に向かってみると、投写型映像表示装置600の筐体600Aの内部において、プリズム群300は、投写光学系420のレンズ群LGpの下方に位置し、光変調素子400が概ねレンズ群LGpの中央に位置している。照明光学系200から出射された照明光Lsは、折り返しミラー47によって偏向され、リレーレンズ群48を通して、TIRプリズム310及び撮像光反射プリズム350を通過するプリズム群300の長手方向軸Ob2に沿って、図示概ね+Z方向にプリズム群300に入射する。
【0042】
光変調素子400からのDMD-ON光(投写光Lp、
図2には示さず)は図示+X方向に出射され、DMD-OFF光Lfは、プリズム群300の長手方向軸Ob2付近の方向に偏向される。
【0043】
レンズ群LGpはバックフォーカスを短く設計した方が装置のより小型化、低コスト化が可能となるため、投写光学系420とプリズム群300の投写光学系側の投写光出射面321とは干渉しない範囲で極力近接して構成されている。そのため、投写光Lpの出射方向である図示X方向において、筐体600A内部の空間が少なく、設計上光学部品等の配置が制限される。
【0044】
本開示に係る投写型映像表示装置600において、前述したように、投写光学系から図示-X方向に入射した外部光Leの少なくとも一部である撮像光Liは、プリズム群300内で複数回内部反射して偏向させることによって、投写光軸Oa1に実質的に直交するY-Z面にある撮像光軸Ob1に沿って撮像素子450に導入することができる。これによって、撮像光学系440は、投写光学系420と干渉することなく容易に機器内部に組み込むことができ、従来の投写型映像表示装置に設けられた投写光学系が変更する必要なく投写型映像表示装置に利用することができる。これによって、低コストで装置の改良又は機能拡充が可能となる。
【0045】
また、プリズム群300の内部で撮像光Liを複数回内部反射して偏向させることにより、撮像光伝搬の空気換算長を短くすることができ、光束の広がりを抑制することによって、撮像光学系のレンズの口径及び厚さの低減が可能となる。これによって、投写型映像表示装置の小型化は、従来よりも容易にすることができる。
【0046】
また、実際の投写型映像表示装置は、
図2に示すように、投写光学系から見たときに、プリズム群300に入射する照明光Lsは、図示右下から、筐体600Aの長辺に対して斜め45度の方向から入射するように設計されている。これは、光変調素子400としてのDMDの微小ミラーの回転軸が45度傾いて設けられていることに起因している。そのため、照明光Lsを光変調素子400に導くプリズム群300も、長手方向軸Ob2が筐体600Aの長辺に対して約45度傾くように配置されている。このような配置では、図示のように、機器内部においてプリズム群300の長手方向軸Ob2側のスペースが少ない。更に、DMD-OFF光Lfが導かれる方向付近に撮像光学系を配置すると、DMD-OFF光Lfによる迷光の影響が大きくなる。
【0047】
本実施の形態において、
図2に示すように、撮像光Liを、プリズム群300内において複数回内部反射させることによって、プリズム群300の長手方向軸Ob2と直交する方向又はその付近に位置する撮像光軸Ob1に沿って導くことができる。これによって、DMD-OFF光Lfによる迷光の影響を抑制するとともに、機器内部のスペースを有効に利用することができ、更なる装置のコンパクト化に繋がる。
【0048】
図2において、撮像光軸Ob1がプリズム群300の長手方向軸Ob2と概ね直交するように示しているが、本開示はこれに限定されない。撮像光軸Ob1は、プリズム群300の長手方向軸Ob2と直交する方向の付近に配置されてもよい。また、
図1及び
図2に示すように、撮像光学系440及び撮像素子450は、撮像光軸Ob1に沿って、プリズム群300のいずれの側に配置されてもよい。
【0049】
<プリズム群300の構成>
図3,4を参照して実施の形態に係る投影撮像光学系500のプリズム群300の構成を説明する。明瞭化のために、各光ビームを主光線のみで示している。
【0050】
図3は、本開示の実施の形態に係るプリズム群300の構成を示す斜視図である。
図4は、本開示の実施の形態に係るプリズム群300の断面図である。また、
図3のプリズム群300は、撮像光反射プリズム350とTIRプリズム310とが一体的に形成された構成で示されている。
【0051】
TIRプリズム310は、略三角柱状の第1のプリズム320と第2のプリズム330とを含み、第1のプリズム320と第2のプリズム330とは、投写光軸Oa1の前方側(図示+X側)から投写光軸Oa1に沿って順に配置されている。第2のプリズム330は、照明光反射面331を有し、入射した照明光Lsが照明光反射面331で全反射して光変調素子400に導入される。第1のプリズム320は、光変調素子400で反射されて+X方向に進む投写光Lpの投写光入射面322と投写光出射面321とを有する。第1のプリズム320と第2のプリズム330とは、投写光入射面322と照明光反射面331との間に平行な間隙を設けて接合されている。これによって、光変調素子400からの投写光Lpは、第2のプリズム330を透過して第1のプリズム320に入り、更に第1のプリズム320を透過して、投写光出射面321から投写光軸Oa1に沿って投写光学系に出力されて結像される。DMD-OFF光Lfは、投写光軸Oa1から偏向された方向にTIRプリズム310を透過して除去される。
【0052】
第1のプリズム320と隣接して配置されている撮像光反射プリズム350は、撮像光入射面351と、内部反射面352と、撮像光出射面353とを有する。本実施の形態において、TIRプリズム310の第1のプリズム320と撮像光反射プリズム350とは、撮像光入射面351において一体的に形成されている。
【0053】
図示のように、投写光学系(
図3に図示せず)から-X方向に第1のプリズム320に入射した外部光Leは、投写光入射面322においてビームスポットS1を形成する。投写光入射面322は、部分反射コートが施され、入射した外部光Leの少なくとも一部が部分反射コートにより撮像光Liとして内部反射し、投写光出射面321に到達してビームスポットS2を形成する。続いて、撮像光Liが投写光出射面321で内部反射し、撮像光反射プリズム350の撮像光入射面351に到達し、撮像光入射面351を透過して撮像光反射プリズム350に入射する。
【0054】
撮像光反射プリズム350において、撮像光Liは、内部反射面352においてビームスポットS3を形成して内部反射したのち、撮像光出射面353から図示+Y方向の撮像光軸Ob1に沿って出射され、撮像光学系440によって撮像素子に結像することができる。
【0055】
このように、本実施の形態において、撮像光Liは、プリズム群300内で3回内部反射したのち、投写光軸Oa1に実質的に直交するY-Z面にあり、且つプリズム群300の長手方向軸Ob2に直交する方向又はその付近に位置する撮像光軸Ob1に沿って、撮像素子450に導入することができる。なお、本開示は、撮像光Liがプリズム群300内での内部反射回数を限定しない。また、これに限定されないが、好ましくは、撮像光Liが、投写光出射面321で全反射して撮像光反射プリズム350に入射してもよい。これによって、効率よく撮像光を利用することができる。
【0056】
図5Aおよび
図5Bは、本開示の実施の形態に係るプリズム群300における部分反射コートの反射特性の例を示す図である。投写光入射面322に施された部分反射コートは、可視域部分反射コート(
図5A)であってもよく、赤外域部分反射コート(
図5B)であってもよい。
【0057】
可視域部分反射コートが施された場合、光変調素子400から投写光入射面322に入射した可視域の投写光Lpも、可視域部分反射コートの反射特性により一部が反射されるため、投写光Lpにロスが生じる。本実施の形態の場合、
図5Aに示す可視域部分反射コートは、波長が400nm-700nmの可視域の光に対し、2%以上15%以下の反射率を有する。これによって、投写光Lpに大きなロスが生じることなく、可視域の外部光の一部を撮像光として取り入れて撮像することができる。なお、可視域部分反射コートの反射特性は、これに限定されない。
【0058】
一方、赤外域部分反射コートが施された場合、
図5Bに示すように、本実施の形態において、赤外域部分反射コートは、波長が750nm以上の赤外域の光に対し、50%以上の反射率を有して撮像光を反射させる。なお、赤外域部分反射コートの反射特性は、これに限定されない。
【0059】
図6は、
図1の投写光学系420に入射する投写光のスペクトルの一例を示す図である。
図6に示すように、投写光学系に入射する投写光は、概ね440nm-470nmの青域の光成分LBと、520nm-570nmの緑域の光成分LGと、590nm-650nmの赤域(黄色)の光成分LR(Y)とを有し、赤外域の光成分を含まない。そこで、赤外域の外部光を撮像光として取り入れるとともに、可視域の投写光Lpを大凡100%透過させることによって、投写光にロスが生じることなく撮像することができる。なお、赤外線を利用した撮像は、全く明かりのない場所で動作の検知又は追跡することに利用することができ、夜間撮影や暗視型監視カメラなどで活用されている。
【0060】
(変形例1に係るプリズム群300a)
次に、
図7-
図8を参照してプリズム群300の変形例を説明する。
図7は、本開示の実施の形態の変形例1に係るプリズム群300aの断面図であり、
図8は、本開示の実施の形態の変形例2に係るプリズム群300bの断面図である。
【0061】
図7に示すプリズム群300aは、
図3-4に示すプリズム群300と同様に、TIRプリズム310aと撮像光反射プリズム350aとによって構成されている。図示のように、プリズム群300aは、撮像光反射プリズム350aが撮像光入射面351aにおいてTIRプリズム310aと分離して形成されている点でプリズム群300と異なる。
【0062】
図7に示すように、プリズム群300aにおいて、第1のプリズム320aは、撮像光反射プリズム350aに隣接するプリズム面323aを有する。第1のプリズム320aと撮像光反射プリズム350aとは、プリズム面323aと撮像光入射面351aとの間に平行な間隙を隔てて分離して形成されている。
【0063】
プリズム群300aにおいて、-X方向に第1のプリズム320aに入射した外部光Leは、投写光入射面322aにおいてビームスポットS1aを形成する。投写光入射面322aの部分反射コートによって、入射した外部光Leの少なくとも一部が撮像光Liaとして内部反射して、投写光出射面321aに到達してビームスポットS2aを形成する。続いて、撮像光Liaが投写光出射面321aで内部反射して、プリズム面323aを透過して、撮像光反射プリズム350aの撮像光入射面351aに到達して透過し、撮像光反射プリズム350aに入射する。撮像光反射プリズム350aにおいて、撮像光Liaは、内部反射面352aにおいて、ビームスポットS3aを形成し、内部反射面352aで内部反射したのち、撮像光出射面353aから出射される。
【0064】
前述したように、投写光LpがTIRプリズムを透過して投写光学系に出射する。TIRプリズムを通過するとき、高エネルギーの投写光Lpにより発熱が生じるため、TIRプリズムは、耐熱性のガラス素材で作製する必要がある。プリズム群300において、撮像光反射プリズムがTIRプリズムと一体に形成された場合には、熱伝導の影響を受けるため、ガラス製撮像光反射プリズムが必要である。また、屈折率の変化による収差の発生を抑制するため、撮像光反射プリズム350は、TIRプリズム310と同様のガラス素材で作製することが望ましい。一方、
図7に示すプリズム群300aにおいて、撮像光反射プリズム350aは、TIRプリズム310aと分離して形成されることで、熱伝導が抑制されるため、TIRプリズム310aと異なるガラス素材、又は樹脂素材を採用して作製することができる。従って、撮像プリズムをTIRプリズムと分離して形成することによって、自由度の高い材料選択ができる。樹脂製の光学部品が優れた加工性を有するため、複雑な幾何形状の光学面を有するプリズム部材を低コストで作製できる利点もある。
【0065】
(変形例2に係るプリズム群300b)
図8に示すプリズム群300bは、TIRプリズム310bと、撮像光反射プリズム350bと、第3のプリズム340とによって構成され、第3のプリズム340を備えている点でプリズム群300と異なる。図示のように、本実施の形態において、TIRプリズム310bの第1のプリズム320bと撮像光反射プリズム350bとは、一体的に形成されている。しかし、本開示はこれに限定されない。プリズム群300bにおいて、TIRプリズム310bの第1のプリズム320bと撮像光反射プリズム350bとは、
図7に示すプリズム群300aと同様に、分離して形成されてもよい。
【0066】
図8に示すように、プリズム群300bの第3のプリズム340は、第1のプリズム面341と第2のプリズム面342を有する。第1のプリズム面341は、TIRプリズム310bの第1のプリズム320bの投写光入射面322bと接合されている。第2のプリズム面342は、第1のプリズム面341と角度を成して交差している。第2のプリズム面342と、TIRプリズム310bの第2のプリズム330bの照明光反射面331bとは、平行な間隙を隔てて対向して配置されている。なお、これに限定されないが、本実施の形態において、第3のプリズム340は、楔形状を有する。第1のプリズム面341と第2のプリズム面342とは、好ましくは、2度から10度の頂角Aを成し、本実施の形態において、約3度の頂角Aを成している。
【0067】
プリズム群300bにおいて、-X方向に第1のプリズム320bに入射した外部光Leは、投写光入射面322bにおいてビームスポットS1bを形成する。投写光入射面322bの部分反射コートによって、入射した外部光Leの少なくとも一部が撮像光Libとして内部反射して、投写光出射面321bに到達してビームスポットS2bを形成する。続いて、撮像光Libが投写光出射面321bで内部反射して、撮像光反射プリズム350bに入射する。撮像光反射プリズム350bにおいて、撮像光Libは、内部反射面352bにおいてビームスポットS3bを形成し、内部反射面352bで内部反射したのち、撮像光出射面353bから出射される。
【0068】
比較するために、
図8には、
図7に示すプリズム群300aにおいて、撮像光Liaが撮像光反射プリズム350aの内部反射面352a(図示せず)に形成したビームスポットS3aも示している。図示のように、プリズム群300bにおいて撮像光Libが形成したビームスポットS3bは、ビームスポットS3aよりも小さく、且つ、ビームスポットS3bの中心位置は、ビームスポットS3aの中心位置に比べ、投写光軸Oa1側に距離Dだけ近接している。撮像光Liaのプリズム群300a内での伝搬光路に比べ、撮像光Libのプリズム群300b内での伝搬光路は短縮されていることが分かる。
【0069】
プリズム群300bにおいて、撮像光Libにより撮像光反射プリズムの内部反射面に形成されるビームスポットS3bがこのように変化したのは、第3のプリズム340が設けられているためである。
図8に示すように、第2のプリズム330bは、照明光反射面331bと、投写光軸Oa1に垂直な底面332bとが角度α1を成して構成されている。当該角度α1は、光変調素子400としてのDMDの特性によって制限され、自由に設計することができない。そして、照明光反射面331bと投写光入射面322bとが、平行な間隙を隔てて対向して配置されているため、撮像光の投写光入射面での反射角度も制限されている。そこで、楔形状の第3のプリズム340を設けることによって、投写光入射面322bと投写光軸Oa1との成す角度βを、楔形状の第3のプリズム340の頂角Aの角度だけ増加させることにより、撮像光Libの投写光入射面322bでの反射角度を調整することができる。これによって、撮像光Libの伝搬光路が短縮でき、プリズム群300bをよりコンパクト化することができる。
【0070】
更に、楔形状の第3のプリズム340を設けることによって、プリズム群300b内の迷光の影響を抑制することができる。これについて、
図9を参照して説明する。
図9は、本開示の実施の形態の変形例1に係るプリズム群300a(
図9の(a))と、変形例2に係るプリズム群300b(
図9の(b))とにおけるDMD-OFF光の反射を示す断面図である。
【0071】
図9に示すように、DMD-OFF光Lfは、TIRプリズムを透過して除去される。そのとき、DMD-OFF光Lfは、投写光入射面において、可視域部分反射コートによって部分反射される。
図9の(a)に示すプリズム群300aにおいて、投写光入射面322aで反射されたDMD-OFF光Lfの一部(オフ光Lf1a)は、投写光入射面322aの傾斜角度α1によって、光変調素子400に入射し、光変調素子400で反射されたのち、プリズム群300aに入り、迷光となってしまう。一方、
図9の(b)に示すプリズム群300bにおいて、投写光入射面322bの傾斜角度α2は、投写光入射面322aの傾斜角度α1よりも、第3のプリズム340の頂角Aの角度だけ大きくなる。これによって、投写光入射面322bで反射されたDMD-OFF光Lfの一部(オフ光Lf1b)は、光変調素子400に入射せず除去される。このように、第3のプリズム340を設けることによって、投写光入射面322bの傾斜角度を適切に調整することができ、DMD-OFF光によるプリズム群300b内の迷光の影響を抑制することができる。
【0072】
(撮像光反射プリズムのプリズム面の曲率設計)
図10-11を参照して、本開示の実施の形態に係るプリズム群撮像光反射プリズムの内部反射面及び撮像光出射面に曲率を持たせた場合を説明する。
図10は、本開示の実施の形態に係るプリズム群300(
図10の(a))と、プリズム群300c(
図10の(b))とによる撮像光の伝搬の様子を示す図である。
図11は、本開示の実施の形態に係るプリズム群300(
図11の(a))と、プリズム群300d(
図11の(b))とによる撮像光の伝搬の様子を示す図である。
【0073】
前述したように、外部光Leは、投写光入射面322(
図3,4を参照)においてビームスポットS1を形成し、外部光Leの少なくとも一部が撮像光Liとして内部反射して、投写光出射面321(
図3,4を参照)に到達してビームスポットS2を形成し、内部反射して撮像光反射プリズム350に入射する。更に、撮像光反射プリズム350の内部反射面352においてビームスポットS3を形成して内部反射したのち、撮像光出射面353から出射される。
図10の(a)及び
図11の(a)に示すように、本開示の実施において、スクリーン430(
図1に示す)から反射され、-X方向に伝搬する外部光Leは、投写光学系420を通過してプリズム群300に入射する。このとき、投写光学系420により、外部光Leが集束され、ビームスポットS1を形成した後、外部光Leの少なくとも一部である撮像光Liが収束してビームスポットS2を形成する。撮像光反射プリズム350に入射した後、撮像光Liが更に収束し、投写光学系420のレンズ群LGpに対して、スクリーン430と共役な位置に中間像Msが形成される。本実施の形態において、当該中間像Msは、内部反射面352から離間した位置に形成されている。撮像光Liは、中間像Msを形成した後、内部反射面352に向かって進むにつれて、光束が徐々に広がり、内部反射面352にビームスポットS3を形成する。そして、内部反射面352で撮像光Liは撮像光出射面353に向かって反射し、撮像光出射面353を透過して出射され、撮像光学系440によって撮像素子450に結像する。
【0074】
図10の(b)に示すプリズム群300cは、
図10の(a)のプリズム群300と同様な要素について、同じ符号を付しており、説明を省略する。本実施の形態では、プリズム群300cにおいて、撮像光反射プリズム350cの内部反射面352cは、撮像光Licの当該内部反射面352cでの内部反射する方向に向けて凹面の形状C1を有するように構成することができる。当該凹面の形状C1は、正のパワーを有する凹面鏡として反射される撮像光を集束することができる。このように、撮像光反射プリズムの内部反射面352cに曲率を持たせることにより、撮像光Licのプリズム群300c内の広がりを抑制し、よって、出射する撮像光Licの光束の広がりを規定することができる。そのため、後段の撮像光学系440cは、
図10の(a)示す撮像光学系440よりも、光学部品の口径が小さく、薄型の光学部品を利用して構成することができる。これによって、図示のように、撮像素子450までの撮像光Licの伝搬光路長を、プリズム群300により出射された撮像光Liの伝搬光路長よりも、距離d1だけ短縮することができる。したがって、撮像光学系の更なるコンパクト化が可能となる。
【0075】
次に、
図11の(b)に示すプリズム群300dは、
図11の(a)のプリズム群300と同様な要素について、同じ符号を付しており、説明を省略する。本実施の形態では、プリズム群300dにおいて、撮像光反射プリズム350dの撮像光出射面353dは、撮像光Lidの撮像素子450へ出射する方向に向けて凸面の形状C2を有するように構成することができる。当該凸面の形状C2は、正のパワーを有する凸レンズとして出射される撮像光を集束することができる。このように、撮像光反射プリズムの撮像光出射面353dに曲率を持たせることにより、出射する撮像光Lidの光束の広がりを規定することができる。そのため、後段の撮像光学系440dは、
図10の(a)示す撮像光学系440よりも、光学系の部品点数が削減できる。これによって、図示のように、撮像素子450までの撮像光Lidの伝搬光路長を、プリズム群300により出射された撮像光Liの伝搬光路長よりも、距離d2だけ短縮することができる。したがって、撮像光学系の更なるコンパクト化が可能となる。
【0076】
なお、ここで図示していないが、撮像光反射プリズムの撮像光入射面351にも曲率を持たせることができる。撮像光反射プリズムの1つ又は複数のプリズム面に曲率を持たせることによって、撮像光学系をコンパクト化することができ、装置全体を更に小型化しやすくすることができる。
【0077】
(実施例2の投影撮像光学系500Aの構成)
図12は、本開示の実施の形態に係る実施例2の投写型映像表示装置の投影撮像光学系500Aの構成を示す概略図である。本実施例に係る投写型映像表示装置は、3板式の投写型映像表示装置であって、照明光学系と投影撮像光学系とを備える。照明光学系が既によく知られている構成であるため、
図12は、照明光学系を図示せず、投影撮像光学系500Aのみを示している。
図12の(b)は、図示X-Z面において投影撮像光学系500Aの構成を示す概略図であって、
図12の(a)は、
図1の(b)の左側、すなわち、
図12の(b)の+Z側から-Z方向に向かって見た投影撮像光学系500Aを示す概略図である。
【0078】
図12に示すように、投影撮像光学系500Aは、プリズム部材360を備えている。プリズム部材360は、本開示の実施の形態に係るプリズム群300Aと色分離合成プリズム380Aとによって構成されている。プリズム群300Aは、色分離合成プリズム380Aの前方側(投写光学系420A側)に位置している。照明光学系からの各色域の照明光LsAは、プリズム群300AのTIRプリズム310Aを透過して、色分離合成プリズム380Aに入射する。
【0079】
色分離合成プリズム380Aは、投写光学系420A側から投写光軸Oa1に沿って順に配置されたプリズム381A,382A,383Aを含む。色分離合成プリズム380Aによって、入射してきた照明光に含まれる各色域の光が色分離されて、3つの対応する光変調素子401,402,403に別々に導かれる。それぞれの光変調素子401,402,403は、入射される各色域の光を映像信号に基づいて変調し、変調した各色域の光成分を、再び色分離合成プリズム380Aの3つのプリズムのそれぞれに反射する。
【0080】
色分離合成プリズム380Aは、それぞれのプリズム内でDMDに反射された投影用の光(DMD-ON光)を投写光軸Oa1に導いて再度色合成し、合成した投写光LpAを投写光軸Oa1に沿って+X方向に出射する。投影しない光(DMD-OFF光、図示せず)は投写光軸Oa1から偏向されて除去される。投写光LpAは、色分離合成プリズム380Aから出力され、投写光軸Oa1の前方側のTIRプリズム310Aを透過して、投写光学系420Aへ伝搬される。投写光学系420Aは、投写光LpAをスクリーン430Aに拡大投写して映像を表示する。
【0081】
一方、スクリーンから図示-X方向に反射された外部光LeAは、投写光学系420Aから入射し、投写光軸Oa1に沿って-X方向に伝搬され、TIRプリズム310Aの第1のプリズム320Aに入射する。第1のプリズム320A内において、外部光LeAの少なくとも一部が撮像光LiAとして反射し、偏向されて撮像光反射プリズム350Aに入射する。続いて、撮像光反射プリズム350Aに入射した撮像光LiAが撮像光反射プリズム350A内で更に反射して偏向され、撮像光反射プリズム350Aの撮像光出射面353Aから撮像光軸Ob1に沿って出射される。出射された撮像光LiAは、図示+Y方向に進み、撮像光学系440Aに導入され、撮像光学系440Aにより、撮像素子450Aに結像する。
【0082】
このように、投写光学系から図示-X方向に入射した外部光LeAの少なくとも一部である撮像光LiAは、プリズム群300A内で複数回反射することによって、投写光軸Oa1に実質的に直交するY-Z面にある撮像光軸Ob1に沿って撮像素子450Aに導入することができる。これによって、前述したように、撮像光学系440Aは、投写光学系420Aと干渉することなく容易に機器内部への組み込むことができる。また、プリズム群300Aの内部で撮像光LiAを反射して偏向させることにより、撮像光伝搬の空気換算長を短くすることができ、投写型映像表示装置の小型化を容易にすることができる。
【0083】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、上記実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記各々の実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0084】
なお、本開示は各々のプリズムの形状を限定しない。例えば、プリズム群を構成する各々のプリズムは、略三角柱状又は略四角柱状であってもよく、他の形状を有してもよい。
【0085】
また、本開示は各々のプリズムに含まれるプリズム面を限定しない。例えば、TIRプリズムと撮像光反射プリズムとは、更に他のプリズム面を含んでもよく、撮像光は、他のプリズム面で反射してもよい。
【0086】
また、上記実施の形態において、撮像光反射プリズムのプリズム面に曲率を持たせる場合について、凹面又は凸面を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、撮像光反射プリズムの1つ又は複数のプリズム面は、自由曲面形状を有するように構成されてもよい。
【0087】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。したがって、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0088】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施の形態に関連して充分に記載されているが、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。そのような変更、及び異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示は、プリズムに適用可能であり、各種の投写型映像表示装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
200 照明光学系
20 光源ユニット
21 半導体レーザ素子
22 コリメートレンズ
31,32 アフォーカルレンズ
33,34,35 コンデンサレンズ
41 拡散板
42 λ/4板
45 ダイクロイックミラー
46 ロッドインテグレータ
50 蛍光体ホイール
60 カラーホイール
73,74,75 照明光リレー光学系を構成するレンズ
47 ミラー
48 リレーレンズ群
300,300a,300b,300c,300d,300A プリズム群
310,310a,310b,310A TIRプリズム
320,320a,320b,320A,330,330b,340,381A,382A,383A プリズム
350,350a,350b,350c,350d,350A 撮像光反射プリズム
321,321a,321b 投写光出射面
322,322a,322b 投写光入射面
323a,341,342 プリズム面
331,331b 照明光反射面
351,351a 撮像光入射面
352,352a,352b,352c 内部反射面
353,353a,353b,353d,353A 撮像光出射面
360 プリズム部材
380A 色分離合成プリズム
400,401,402,403 光変調素子(DMD)
420,420A 投写光学系
430,430A スクリーン
440,440c,440d,440A 撮像光学系
450,450A 撮像素子
500,500A 投影撮像光学系
C1 凹面の形状
C2 凸面の形状
Ls,LsA 照明光
Lp,LpA 投写光
Le,LeA 外部光
Li,Lia,Lib,Lic,Lid,LiA 撮像光
S1,S2,S3,S1a,S2a,S3a,S1b,S2b,S3b ビームスポット
Lf DMD-OFF光
Oa1 投写光軸
Ob1 撮像光軸
Ob2 プリズム群の長手方向軸
Ms 中間像
600 投写型映像表示装置
600A 投写型映像表示装置の筐体