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▶ 藤谷 信也の特許一覧

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  • 特許-自走手摺 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】自走手摺
(51)【国際特許分類】
   B66B 9/08 20060101AFI20241220BHJP
   E04F 11/18 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
B66B9/08 B
B66B9/08 E
E04F11/18
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2024009066
(22)【出願日】2024-01-05
【審査請求日】2024-09-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302053515
【氏名又は名称】藤谷 信也
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 信也
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第217627030(CN,U)
【文献】中国実用新案第218292560(CN,U)
【文献】特開2000-351557(JP,A)
【文献】特開2016-163622(JP,A)
【文献】特開2005-192836(JP,A)
【文献】特開2008-127202(JP,A)
【文献】特開2024-100631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-31/02
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の移動方向に沿って延びるレールとモーターを備え、前記レールに取り付けられ前記モーターにより前記レール上を走行する、手摺本体を有し、
前記レールは、長手方向に延びる溝部を有するアルミフレームと、前記溝部に嵌め込まれたフレキシブルタイプのラックギアを備え、
前記ラックギアは、水平方向において前記レールの中心軸線に対して前記人の反対側に設けられ、
前記モーターの本体は、前記手摺本体と一体的に前記レールの上側に設けられ、
前記モーターの出力軸は、重力方向に延び、前記ラックギアと噛み合うギアが設けられている自走手摺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者が階段や通路を移動する際に、肉体的負担を軽減し安定した移動を補助する自走手摺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から自宅や施設に於いて、階段を昇降する際の肉体的負担を軽減する手段として、エレベーターや電動機付昇降台等が用いられてきた。しかしこれらの導入には数百万円以上の費用がかかり、多くの設置スペースを必要とするなど、気軽に導入できるものではなかった。
【0003】
足腰が不自由な人を対象に開発された、階段に設置する電動機付昇降台は、備え付けの座椅子に座ることにより、自動で階段の昇降が可能である。しかし足腰が健全な健常者にとって、肉体的負担を軽減し安定した移動を補助するのに、座椅子による補助は十分過ぎるばかりか、座椅子分の設置費用が高価で、且つ設置により階段のスペースを圧迫するという欠点が生じる。
【0004】
健常者が階段を昇降する際に肉体的な負担を軽減する手段として、例えば特許文献1に記載のレール式手摺昇降機があり、手摺を握って階段を昇降することで肉体的負担を軽減できる。これらは先述した電動機付昇降台より設置スペースもコンパクトとなっている。しかし電動機を高い位置に設置し、手摺にロープを固定して引っ張る仕組みのため、電動機を別途設置する手間や費用がかかり、且つ曲線階段で容易に使用することができないという欠点が生じる。
【0005】
特許文献2に記載の自動手摺移動機も、同様のレール式手摺昇降機であるが、手摺がベルト式となっているため、レール側にベルトを摺動させる構造が必要で、レール自体の構造が複雑となる。またこの機器についても曲線階段で容易に使用することができないという欠点が生じる。
【0006】
特許文献3に記載の人や重量物の昇降補助装置のようにスプリング力により階段を上る装置があるが、前述と同様に曲線階段で容易に使用ができないだけでなく、階段を下りる時に、手摺をスライドさせてスプリング力をかけなければならないという欠点が生じる。
【0007】
特許文献4に記載の階段昇降補助システムにおいては、ウォームモーター5が吊り輪固定部8を動かすためにワイヤーロープ7が必要となるため、吊り輪固定部8を曲線的に動かすことが困難となる。
【0008】
特許文献5に記載の階段昇降用アシスト装置においては、図3に示すような構成とした場合、左右方向の寸法が大きくなり、省スペースでの設置が困難となる。
【0009】
特許文献6に記載の階段昇降補助装置においては、電動モータ4が補助棒3と一体的に設けられておらず、補助棒3を動かすために送りねじ2bが必要となるため、補助棒3を曲線的に動かすことが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実用新案登録第3102530号公報
【文献】特開2010-95384号公報
【文献】特開2013-40543号公報
【文献】特開2000-351557号公報
【文献】特開2016-163622号公報
【文献】特開2005-192836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明の目的は、この様な問題を解決し、安価で省スペースに設置でき、曲線階段でも容易に使用できる自走手摺及び自走手摺の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
人の移動方向に沿って延びるレールとモーターを備え、前記レールに取り付けられ前記モーターにより前記レール上を走行する、手摺本体を有し、前記レールは、長手方向に延びる溝部を有するアルミフレームと、前記溝部に嵌め込まれたフレキシブルタイプのラックギアを備え、前記ラックギアは、水平方向において前記レールの中心軸線に対して前記人の反対側に設けられ、前記モーターの本体は、前記手摺本体と一体的に前記レールの上側に設けられ、前記モーターの出力軸は、重力方向に延び、前記ラックギアと噛み合うギアが設けられている自走手摺。また、前記レールは、長手方向に延びる溝部を有するアルミフレームと、前記溝部に嵌め込まれたフレキシブルタイプのラックギアとを備えることが好ましい。また、前記手摺本体から吊り下げられた持ち手を有することが好ましい。さらに、前記アルミフレームを曲げ加工することによって曲線状にする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、省スペースに設置でき、曲線階段でも容易に使用できる自走手摺を提供することができ、導入費用についても、エレベーターや電動機付昇降台より安く提供することができる。またモーターを上側に配置することで、水平方向の寸法を小さくしてより省スペースに設置でき、手摺本体が曲線的に動かしやすくなるだけでなく、レール支持具を下側から取り付けることができ、レール支持具をつなげる支柱を地面より設けることで、壁面への固定が困難な場合でも安価で安定したレールの支持方法が可能となる。さらにラックギアを人の反対側に設けることで、人側にラックギアが露出しないため、見た目が良くなるだけでなく、ギア内に不用意に指などを入れる事故対策に対しても有利に働く。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】 自走手摺の設置例の模式的説明図
図2】 自走手摺の正面図
図3】 自走手摺の上面図
図4】 自走手摺の側面図
図5】 曲線レールでの模式的説明図
図6】 自走手摺のシーケンス回路
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1~6を参照して説明する。自走手摺は、レールをガイドにレール上を走行する、モーターと一体化した手摺本体を備える。レールは、人の移動方向に沿って延び、レールを取り付けるためのレール支持具を支柱につないで床又は地面に設けるか、支柱を階段、スロープ、通路の横に配置された壁面等から出してレール支持具につないでも良い。図1は階段等の側に取り付けるレールと手摺本体で構成される。
【0016】
レールはアルミフレーム1とラックギア2とリミットスイッチ作動ボルト3とレール支持具14で構成される。また手摺本体は、電磁ブレーキ付ギヤードモーター4と、電磁ブレーキ付ギヤードモーター4に取り付けラックギア2と噛み合うギア7と、レールとして機能するアルミフレーム1の平坦な面をガイドして手摺本体の動作を補助するための合計16個のローラーフォロアー8と、レール側のリミットスイッチ作動ボルト3で作動して停止するリミットスイッチ6と、持ち手9と作動スイッチ11と停止スイッチ10と手摺本体の前進・後退を選択する選択スイッチ12と、荷物をかけるフック13とリレーなどの電気部品を収納する制御ボックス5で構成される。電気はコンセントなどから供給しても良いし、手摺本体に設けた電池から供給しても良い。本実施形態に係る自走手摺は、何れも安価で単純な構成となっている。図1に示すように、人は手摺本体から吊り下げられた持ち手9を握り、またフック13に荷物をかけて階段を上ることで、肉体的負担を軽減し安定した移動を補助する。ただし、これに限られず、例えば、人が手摺本体をつかんで使用するものとしても良い。この場合、停止スイッチ10、作動スイッチ11、選択スイッチ12、フック13は、手摺本体に設けても良い。
【0017】
人が階段を上る時、荷物をフック13に掛け、持ち手9を握り、選択スイッチ12で上り側を選択し、作動スイッチ11を押すと、手摺は電磁ブレーキ付ギヤードモーター4が作動し、ギア7が回転するとラックギア2と噛み合い、階段の上り方向に移動する。電磁ブレーキ付ギヤードモーター4は内蔵ギアヘッドにより減速し、移動速度0.5~1.0m/s程度にするのが好適である。
【0018】
電気回路はリレーとリミットスイッチ6を用い、図6に示すように階段の上りと下りの移動を自己保持回路で行う。
【0019】
手摺本体が人の手を引きながら移動するため、人は階段昇降時の肉体的負担を軽減でき、荷物を持つ必要もない。
【0020】
階段の途中で手摺本体を停止する時は、停止スイッチ10を押すことで非常停止が作動し停止する。停止中は電磁ブレーキ付ギヤードモーター4の電磁ブレーキにより停止位置は保持される。停止した手摺本体は作動スイッチ11により再開する。
【0021】
手摺本体が階段を上りきると、リミットスイッチ作動ボルト3が上り側のリミットスイッチ6を作動させ、自動で停止する。
【0022】
階段を下る場合は、上りと逆の作業となる。
【0023】
曲線階段のように、レールを曲げて設置する場合、アルミフレーム1は予め曲がったメーカー標準品を使用するのがコスト面で好適であるが、ベンダー等により曲線状に曲げ加工したものでも良い。ラックギア2は、フレキシブルタイプのものを使用し、アルミフレーム1の長手方向に延びる溝部に嵌め込むのが好適である。手摺本体が曲線を移動時、図5に示すように半径300mmの曲線を描いたレールの場合、直線移動時に比べ、本体側とレール側のギア同士の隙間に2.68ミリのギャップが生じる。そのためレールを曲げて設置する場合は、ギャップを見込んでアルミフレーム1の平坦部とラックギア2の取り付け位置を直線時より2.68ミリ離すことでギャップを回避する。
【0024】
近年都心では土地価格が上がり、狭い土地を活用するために3階建て住宅の需要が増えつつある。3階建て住宅を建築する時、階段昇降時の肉体的負担を軽減するため、エレベーターを設置したいと思うが、数百万円の設置費用と各階に2畳程度の設置スペースが必要となるため、設置のハードルが高く断念するケースが多々見られた。一方で自走手摺は、階段の側にレールを設置し、最低1台の手摺本体があれば、階段昇降時の肉体的負担が省スペース且つ格安に解決する。
【符号の説明】
【0025】
1 アルミフレーム
2 ラックギア
3 リミットスイッチ作動ボルト
4 電磁ブレーキ付ギヤードモーター
5 制御ボックス
6 リミットスイッチ
7 ギア
8 ローラーフォロアー
9 持ち手
10 停止スイッチ
11 作動スイッチ
12 選択スイッチ
13 フック
14 レール支持具
【要約】      (修正有)
【課題】階段昇降時の肉体的負担を軽減し安定した移動を補助する、省スペース且つ安価に設置でき、曲線階段でも使用できる自走手摺及び自走手摺の製造方法を提供する。
【解決手段】人の移動方向に沿って延びるレールとモーターを備え、前記レールに取り付けられ前記モーターにより前記レール上を走行する手摺本体を有し、前記レールは、長手方向に延びる溝部を有するアルミフレーム1と、前記溝部に嵌め込まれたフレキシブルタイプのラックギアを備え、前記ラックギアは、水平方向において前記レールの中心軸線に対して前記人の反対側に設けられ、前記モーターの本体は、前記手摺本体と一体的に前記レールの上側に設けられ、前記モーターの出力軸は、重力方向に延び、前記ラックギアと噛み合うギアが設けられている自走手摺。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6