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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】塗布装置および塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/40 20060101AFI20241220BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
B05D1/40 A
B05D3/10 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020155563
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049378
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐崎 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】置田 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】針貝 篤史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】高崎 俊行
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 英史
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-145561(JP,A)
【文献】特開2002-299204(JP,A)
【文献】特開平04-011721(JP,A)
【文献】特開平02-164021(JP,A)
【文献】特開平09-115808(JP,A)
【文献】特開2019-145581(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037691(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/044199(WO,A1)
【文献】特開2014-183121(JP,A)
【文献】特開2000-315671(JP,A)
【文献】特開2003-088796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B05C 7/00-21/00
H01L 21/027
21/30
21/304
21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を回転ステージの保持面に保持させる保持工程と、
前記回転ステージを囲むように設けられた容器の内壁に洗浄液を供給する洗浄液供給工程と、
前記洗浄液供給工程の後で、前記被処理体の前記保持面と対向しない第1主面の側から、前記回転ステージに保持された前記被処理体に塗布液を供給するとともに、前記回転ステージを回転させる塗布工程と、を有し、
前記洗浄液供給工程では、前記回転ステージを回転させながら、前記洗浄液を前記回転ステージに保持された前記被処理体の前記第1主面側に供給するとともに、前記被処理体から前記洗浄液を遠心力により前記内壁に飛散させ、
前記洗浄液供給工程における前記回転ステージの前記保持面の位置が、前記塗布工程における前記回転ステージの前記保持面の位置よりも高い、塗布方法。
【請求項2】
前記洗浄液供給工程において、前記洗浄液を前記被処理体の前記第1主面側の外縁部に供給するとともに、前記外縁部に供給した前記洗浄液を遠心力により前記内壁に飛散させる、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記被処理体は、基板と、前記基板を保持する保持シートと、前記保持シートの外縁を保持するフレームを有し、
前記洗浄液供給工程では、前記洗浄液を前記フレームに供給し、
前記塗布工程では、前記塗布液を前記基板に供給する、請求項2に記載の塗布方法。
【請求項4】
前記洗浄液供給工程において、前記回転ステージにおける複数の位置で前記洗浄液を前記被処理体に供給する、請求項1~のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項5】
前記塗布液は、樹脂成分を含み、
前記洗浄液は、前記樹脂成分を溶解させる溶媒を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項6】
前記塗布工程の前に、前記容器の少なくとも前記回転ステージより下方の空間に前記洗浄液を滞留させる工程をさらに有する、請求項1~のいずれか1項に記載の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハーなどの被処理体に塗布液を塗布する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上にレジストなどの樹脂膜を塗布形成する方法として、基板を回転させながら、回転する基板上に塗布液を滴下し、遠心力により均一な薄膜を形成するスピン塗布法が一般的に用いられている。スピン塗布法では、滴下した塗布液は、塗布装置の内壁にも飛散し、乾燥して樹脂成分が内壁に固着し得る。固着した樹脂成分は定期的に取り除く必要がある。
【0003】
塗布装置の洗浄の方法として、特許文献1には、ウエハーチャック上に載置されたウエハーにレジストを滴下し遠心力によりレジスト薄膜を形成する半導体製造装置において、回転するウエハーチャックを包囲するカップの側面に、処理廃液を洗浄するための薬液滴下ノズルを設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-73670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗布装置の洗浄を容易にし、メンテナンス性を高める。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面は、被処理体を回転ステージの保持面に保持させる保持工程と、前記回転ステージを囲むように設けられた容器の内壁に洗浄液を供給する洗浄液供給工程と、前記洗浄液供給工程の後で、前記被処理体の前記保持面と対向しない第1主面の側から、前記回転ステージに保持された前記被処理体に塗布液を供給するとともに、前記回転ステージを回転させる塗布工程と、を有し、前記洗浄液供給工程では、前記回転ステージを回転させながら、前記洗浄液を前記回転ステージに保持された前記被処理体の第1主面側に供給するとともに、前記被処理体から前記洗浄液を遠心力により前記内壁に飛散させる、塗布方法に関する。
【0007】
本発明の他の局面は、被処理体を保持面に保持する回転ステージと、底部と、前記底部から立設し、前記回転ステージを囲む側壁と、を有し、前記側壁の高さが前記回転ステージの高さよりも高い容器と、前記回転ステージを前記保持面に交差する方向を回転軸に回転させる回転部と、前記被処理体の前記保持面と対向しない第1主面の側から前記被処理体に塗布液を供給する塗布液供給部と、前記被処理体の前記第1主面側から前記被処理体に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、前記回転部、前記塗布液供給部、および、前記洗浄液供給部を制御する制御部と、を備え、前記塗布液供給部は、塗布ノズルを有し、前記洗浄液供給部は、洗浄ノズルを有し、前記塗布液供給部および前記洗浄液供給部は、前記塗布ノズルが所定の退避位置にあり、且つ前記洗浄ノズルが第1の位置にある状態で、前記洗浄ノズルが洗浄液を吐出した後、前記洗浄ノズルが所定の退避位置にあり、且つ前記塗布ノズルが前記第1の位置と異なる第2の位置にある状態で、前記塗布ノズルが塗布液を吐出するように、前記制御部により制御され、前記回転部は、前記洗浄ノズルが前記第1の位置で前記洗浄液を吐出する間は前記回転ステージを回転させて、前記被処理体に供給した前記洗浄液を遠心力により前記側壁に飛散させるように、前記制御部により制御される、塗布装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塗布装置の洗浄が容易になり、メンテナンス性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る塗布装置の要部を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る塗布装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る塗布方法を示すフローチャートである。
図4】洗浄液供給工程での塗布装置の内部の状態を模式的に示す断面図である。
図5】塗布液供給工程での塗布装置の内部の状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る塗布方法は、被処理体を回転ステージの保持面に保持させる保持工程と、回転ステージを囲むように設けられた容器の内壁に洗浄液を供給する洗浄液供給工程と、洗浄液供給工程の後で、被処理体の保持面と対向しない第1主面の側から、回転ステージに保持された被処理体に塗布液を供給するとともに、回転ステージを回転させる塗布工程と、を有する。塗布工程により、塗布液が付着した被処理体が回転する。塗布工程において、回転ステージの回転は、塗布液の供給より前から開始してもよく、塗布液の供給の後で実施してもよい。すなわち、回転する被処理体に塗布液を供給してもよいし、塗布液が供給された被処理体を回転させてもよい。
【0011】
洗浄液供給工程では、回転ステージを回転させながら、洗浄液を回転ステージに保持された被処理体の第1主面側に供給するとともに、被処理体から洗浄液を遠心力により内壁に飛散させる。これにより、先の工程で内壁に付着した樹脂成分を除去することができる。また、塗布液を被処理体に塗布するに先立って、容器の内壁を洗浄液で被覆または濡らしておくことができる。結果、塗布液が内壁に付着し、固着することも抑制される。
【0012】
洗浄液供給工程において、洗浄液は被処理体の第1主面側の外縁部に供給するとよい。回転ステージの回転で生じる遠心力により、洗浄液は容器内壁に向かって飛散する。容器内壁からの距離が近い外縁部に洗浄液を供給することで、効率的に洗浄液を容器内壁に飛散させることができる。また、被処理体の中央部に設けられる塗布対象物(例えば、基板)に洗浄液が付着することも抑制される。
【0013】
好ましくは、被処理体としては、基板と、基板を保持する保持シートと、保持シートの外縁を保持するフレームを有するものが用いられる。洗浄液供給工程において、洗浄液が被処理体のフレーム部分に供給されるように、洗浄液を例えばノズルから滴下すると、洗浄液は基板に供給され難い一方で、洗浄液は遠心力によりフレームの外方に向かって飛散し、容器の内壁に飛散する。一方、塗布工程では、塗布液は、例えば(洗浄液とは別の)ノズルから滴下することで被処理体の中央に設けられた基板に供給する。よって、塗布液の基板への塗布と、洗浄液の容器内壁への供給を、簡便な方法で両立させることができる。
【0014】
被処理体を回転ステージに保持する保持面の位置は、洗浄液供給工程において、塗布工程よりも高くしてもよい。保持面の高さとは、保持面の法線方向における位置を指す。保持面の位置が、容器の底面から遠ざかる側(底面から被処理体に向かう方向)にあるほど、保持面の高さが高いとする。保持面の高さを、洗浄液供給工程において高くすることで、飛散した洗浄液は容器内壁のより高い位置に付着する。付着した洗浄液は、重力により内壁に沿って垂れ下がり、内壁を覆うことができる。これにより、容器内壁の塗布液の付着が想定される領域に洗浄液を飛散させ、装置内壁を洗浄液で被覆または濡らしておくことができる。結果、付着した樹脂成分の除去効果および容器内壁を洗浄液で被覆する効果を高められる。
【0015】
洗浄液供給工程において、回転ステージにおける複数の位置で洗浄液を被処理体に供給してもよい。ここで、複数の位置とは、回転ステージの回転には依らない塗布装置内における相対位置を意味する。被処理体の外縁部に供給された洗浄液は、遠心力により、回転軸から遠ざかる方向に飛散し、容器の内壁に付着し得るが、回転軸を挟んで滴下位置と反対側に位置する内壁には飛散し難い。結果、容器の内壁の位置によって、洗浄液の飛散が少ない領域と多い領域が生じる場合がある。しかしながら、複数の位置で洗浄液を供給することによって、容器の内壁の位置に依らず、均一に洗浄液を飛散させることができ、容器内壁を洗浄液で被覆することができる。
塗布装置において、容器の内壁を回転させる機構を設けてもよい。容器内壁を回転させながら、回転する被処理体に洗浄液を供給することで、回転ステージにおける複数の位置で洗浄液を供給するのと同じ効果が得られる。
【0016】
塗布液は、例えば、樹脂成分を含む。その場合、洗浄液は、好ましくは、樹脂成分を溶解させる溶媒を含む。これにより、容器内壁に付着した樹脂成分は、溶媒に溶解して粘度が低下し、内壁を伝って容器の底部に落下する。よって、容器内壁に付着した樹脂成分は、底部から回収される。
【0017】
塗布工程に先立って、容器の回転ステージより下方の空間に、予め洗浄液(第2の洗浄液)を滞留させておいてもよい。塗布工程で供給された塗布液は、大半が基板上の膜形成に使用されるものの、一部は膜形成に使用されることなく外周方向に容器の内壁に向かって飛散し、容器内壁に付着し得る。しかしながら、飛散した塗布液は、洗浄液供給工程で供給した洗浄液で被覆されていることにより内壁への付着が抑制されているため、容器の底部へと移動し、底部において滞留する洗浄液と混ざり合う。よって、底部に滞留した洗浄液(第2の洗浄液)を排出することで、基板上の膜形成に使用されなかった余分な塗布液の除去を容易に行うことができる。
【0018】
底部に滞留させる第2の洗浄液は、塗布液(樹脂成分)を分散あるいは溶解させる性質を有するものが用いられる。第2の洗浄液は、洗浄液供給工程で用いる洗浄液(第1の洗浄液)と同じ成分を含むものであってもよい。第2の洗浄液は、洗浄液供給工程において供給された洗浄液が容器底部に移動し、滞留したものであってもよい。洗浄液の除去を容易とするために、例えば、容器の底部に液体を排出するための排出孔を設ければよい。
【0019】
以下に、本実施形態に係る塗布装置および塗布方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る塗布装置の構成を模式的に示す断面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る塗布装置のブロック図である。この塗布装置は、例えば、半導体材料などで形成された基板にマスクの元となる樹脂膜を形成するために利用される。
【0021】
塗布装置100は、被処理体10を保持面に保持する回転ステージ20と、回転ステージ20を囲む容器21と、回転ステージ20を回転させる回転部22と、被処理体10の保持面と対向しない第1主面S1の側から被処理体10に塗布液を供給する塗布液供給部23と、被処理体10の第1主面S1側から洗浄液を供給する洗浄液供給部24と、を備える。
【0022】
被処理体10は、図1の例では、基板11と、基板11を保持する保持シート12と、保持シート12の外縁を保持するフレーム13を備えている。被処理体10は、保持シート12において、回転ステージ20の保持面S0に保持されている。被処理体10は、保持面S0に対向しない主面S1(基板11および保持シート12の主面)と、保持面に対向する主面S2(保持シート12の保持面S0との接触面)を有する。保持シート12は、例えば、ダイシングテープである。
【0023】
保持シート12は、撥水処理がされていてもよい。撥水処理により、親水性の塗布液および洗浄液の保持シートへの付着が抑制され、塗布膜形成後に保持シートを洗浄する工程を省略できる。撥水処理の方法としては、公知の材料および加工方法を用いることができる。
【0024】
回転ステージ20には、被処理体10が保持される。回転ステージ20は、保持面S0に交差する方向(好ましくは、保持面S0の法線の方向)を回転軸にして回転可能である。回転ステージ20は、被処理体10のフレーム13を固定する固定部を有していてもよい。固定部は、例えばクランプである。
【0025】
回転ステージ20は、吸着機構によって被処理体10を保持していてもよい。吸着機構は、例えば、真空吸着であってよく、静電吸着であってよい。装置の構成がシンプルになる点で、真空吸着が望ましい。この場合、回転ステージには、吸引ポンプに連結された吸引孔が形成されていてよく、あるいは、回転ステージの表面が、吸引ポンプに連結された多孔質材料で形成されていてもよい。吸引孔の数および配置間隔は、回転ステージおよび被処理体の大きさ等に応じて適宜設定され得る。
【0026】
回転ステージ20は、また、保持面S0の法線の方向において移動可能であり、これにより保持面S0の法線方向における位置(高さ)が変更される。保持面S0の法線方向における位置(高さ)は、昇降部27により変更され得る。
【0027】
容器21は、底部21aと、底部21aから立設する側壁21bを有し、上部が開口している。側壁21bは、回転ステージ20を囲み、側壁21bの高さが回転ステージ20の高さ(昇降部27を設ける場合、底部21aまでの距離が最大となる最大高さ)よりも高い。容器21内に回転ステージ20および被処理体10が収納される。容器21の底部側は、洗浄液で満たすことができる。その場合、容器の底部21aまたは回転ステージより下方の側壁21bには、洗浄液を排出するための排出孔30が設けられている。
【0028】
回転部22は、回転ステージ20を保持面S0に交差する方向(好ましくは、保持面S0の法線の方向)を回転軸に回転させる。回転部22は、例えば、回転ステージに接続された回転体、および、回転体を回転駆動させるモータ等で構成され得る。
【0029】
塗布液供給部23は、第1主面S1の側から、被処理体10の基板11に向けて塗布液を供給する。塗布液供給部は、例えば、塗布ノズル23a、塗布液が貯留されるタンク、吐出される原料液の圧力を調整するポンプ等を備える。塗布ノズル23aの先端には開口が形成されており、塗布液は、タンクから塗布ノズル23aに供給された後、この開口から所定の量および圧力で滴下される。塗布ノズル23aの開口の形状は特に限定されず、例えば、円形であってもよいし、スリット形状であってもよい。塗布ノズル23aは複数あってもよい。
【0030】
塗布液は、例えば、樹脂成分としてレジスト材料を含む。レジスト材料としては、例えば、ポリイミド等を含む熱硬化性樹脂、フェノール樹脂等を含むフォトレジスト、あるいは、アクリル樹脂等を含む水溶性レジスト等が挙げられる。
【0031】
洗浄液供給部24は、第1主面S1の側から、被処理体10に洗浄液を供給する。好ましくは、洗浄液供給部24は、第1主面S1の側から、被処理体10の外縁に設けられたフレーム13に向けて洗浄液を供給する。洗浄液供給部は、例えば、洗浄ノズル24a、洗浄液が貯留されるタンク、吐出される洗浄液の圧力を調整するポンプ等を備える。洗浄ノズル24aの先端には開口が形成されている。洗浄液は、タンクから洗浄ノズル24aに供給された後、この開口から所定の量および圧力で滴下される。洗浄ノズル24aの開口の形状は特に限定されず、例えば、円形であってもよいし、スリット形状であってもよい。洗浄ノズル24aは複数あってもよい。
【0032】
洗浄液は、塗布液に含まれる樹脂成分の少なくとも一部を溶解させる溶媒を含む。溶媒は、樹脂成分に応じて適宜選択すればよい。上記のレジスト材料を溶解させる溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、メチルエチルケトン(MEK)イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール、アセトン、水等が挙げられる。洗浄液は、これら1種を単独で、あるいは2種以上を含む。
【0033】
塗布装置100は、また、塗布液供給部23における塗布ノズル23a、および、洗浄液供給部24における洗浄ノズル24aを移動させるノズル移動部25を備えてもよい。ノズル移動部25は、塗布ノズル23aを少なくとも保持面S0に平行な面内で移動させる。ノズル移動部25は、また、洗浄ノズル24aを少なくとも保持面S0に平行な面内で移動させる。加えて、ノズル移動部は、塗布ノズルおよび/または洗浄ノズルを、鉛直方向および基板の円周方向の少なくとも一方に移動させるものであってもよい。ノズル移動部が備える移動機構は特に限定されず、公知の機構を用いることができる。
【0034】
塗布装置100は、また、制御部26を備える。制御部26は、例えばコンピュータを備え、塗布液供給部23、洗浄液供給部24、回転部22、昇降部27およびノズル移動部25を制御する。制御部26により、塗布ノズルの位置、塗布液の供給量、洗浄ノズルの位置、洗浄液の供給量、回転ステージ20の回転速度、回転ステージ20の位置(高さ)などが、個別に制御される。
【0035】
より具体的に、制御部26は、塗布ノズル23aが所定の退避位置にあり、且つ洗浄ノズル24aが第1の位置にある状態で、洗浄ノズルが洗浄液を吐出した後、洗浄ノズル24aが所定の退避位置にあり、塗布ノズル23aが第2の位置にある状態で、塗布ノズル23aが塗布液を吐出するように、塗布液供給部23および洗浄液供給部24を制御する。第1の位置は、例えば、回転ステージ20の回転軸までの距離が、第2の位置よりも遠い位置(すなわち、外周側)にある。より具体的に、第1の位置は、被処理体10のフレーム13に対応する位置であり、第2の位置は、被処理体10の基板11に対応する位置であり得る。なお、退避位置は、被処理体10から十分離れた位置である。洗浄ノズル24aの退避位置から第1の位置への移動および第1の位置から退避位置への移動、および、塗布ノズル23aの退避位置から第2の位置への移動および第2の位置から退避位置への移動は、制御部26による制御の下、ノズル移動部25により行われ得る。
【0036】
また、制御部26は、洗浄ノズル24aが第1の位置で洗浄液を吐出する間は回転ステージ20を回転させるように回転部22を制御する。被処理体10に供給した洗浄液が遠心力により容器の側壁21bに飛散するように、回転部22の回転速度が制御される。
【0037】
また、制御部26は、洗浄ノズル24aが上記第1の位置で洗浄液を吐出する間は、保持面S0の底部21aまでの距離が第1の距離Xを維持し、塗布ノズル23aが上記第2の位置で塗布液を吐出する間は、保持面S0の底部21aまでの距離が第1の距離Xよりも近い第2の距離Xを維持する(X<X)ように、昇降部27を制御する。
【0038】
本発明の一実施形態に係る塗布方法は、上記の塗布装置100を用いて、例えば下記のようにして実施され得る。図3に、本発明の一実施形態に係る塗布方法を示すフローチャートを示す。
【0039】
塗布液の塗布に先立ち、容器21に設けられた排出弁29を閉じ、容器21の底部21aに洗浄液を滞留させてしておく(ST01)。洗浄液は、例えば水であり、塗布液を分散あるいは溶解させる性質を有する。これにより、容器21の少なくとも回転ステージ20より下方の空間が洗浄液で満たされる。
【0040】
次に、回転ステージ20に被処理体10を載置する(ST02)。
【0041】
次に、図4に示すように、回転ステージ20の高さを昇降部27により変更する(ST03)。ここでは、後述する工程ST05後の状態と比べて、回転ステージ20の高さが高くなるように(すなわち、容器の底部21aと回転ステージ20との間の距離が大きくなるように)、回転ステージ20を上昇させる。この工程は、工程ST01またはST02の前に行ってもよい。
【0042】
次に、塗布ノズル23aを退避位置に移動させた状態で、回転ステージ20を回転させるとともに、洗浄ノズル24aを第1の位置に移動させ、被処理体10のフレーム13に向けて洗浄液を供給する(ST04:洗浄液供給工程)この状態における塗布装置100内部の状態が図4に示されている。フレーム13に滴下された洗浄液は、遠心力により容器の側壁21bに向けて飛散する。これにより、容器の内側壁が洗浄液の成分で被覆され、容器の内側壁に保護層28(図5参照)が形成される。
【0043】
この工程では、洗浄ノズルの移動と洗浄液の塗布とを複数回にわたり繰り返して行い、回転ステージの複数の位置で洗浄液を供給してもよい。複数の位置で洗浄液を供給することによって、容器の内壁の位置によって、洗浄液の飛散量にムラが生じることが抑制され、容器内壁を均一に洗浄液で被覆することができる。
容器の側壁21bに向けて飛散した洗浄液は、側壁21bを伝って下方に移動する。排出弁29は閉じられた状態であるので、洗浄液は排出されることなく、容器底部の洗浄液と混ざり合い、滞留する。
【0044】
洗浄液供給工程における回転テーブルの回転速度は、特に限定されないが、300rpm以上であってよく、500rpm以上であってよい。また、回転テーブルの回転速度は、2000rpm以下であってよく、1500rpm以下であってよい。
【0045】
洗浄液の粘度は特に限定されない。生産性の観点から、洗浄液のJIS Z 8803に準拠して測定される20℃における粘度は、1mPa・s以上1000mPa・s以下であってよい。
【0046】
次に、図5に示すように、回転ステージ20の高さを昇降部27により調整する(ST05)。ここでは、前述の工程ST03後の状態と比べて、回転ステージ20の高さが低くなるように(すなわち、容器の底部21aと回転ステージ20との間の距離が小さくなるように)、回転ステージ20を下降させる。
【0047】
次に、洗浄ノズル24aを退避位置に移動させた状態で、塗布ノズル23aを第2の位置に移動させ、被処理体10の基板11に向けて塗布液を供給するとともに、回転ステージを回転させる(ST06:塗布液供給工程)。この状態における塗布装置100内部の状態が図5に示されている。基板11に滴下された塗布液は、遠心力により、基板の表面を均一に被覆する。一方で、塗布液の一部は、容器の側壁21bに向けて飛散し得る。しかしながら、容器の内側壁には保護層28が形成されているため、塗布液の容器内側壁への付着が抑制される。容器の内側壁に飛散により付着した塗布液は、内側壁を伝って下方に移動し、容器底部の洗浄液と混ざり合う。
【0048】
塗布液供給工程における回転ステージの回転速度は、特に限定されないが、300rpm以上であってよく、500rpm以上であってよい。また、テーブルの回転速度は、5000rpm以下であってよく、3000rpm以下であってよい。塗布液を供給する際、回転ステージは停止していてもよいし、より低速(例えば、10rpm以上50rpm以下)で回転していてもよい。
【0049】
塗布液の粘度は特に限定されない。生産性の観点から、原料液のJIS Z 8803に準拠して測定される20℃における粘度は、1mPa・s以上1000mPa・s以下であってよい。通常、塗布液の粘度は、洗浄液供給工程にて供給する洗浄液の粘度よりも高い。
【0050】
塗布液の供給量は、所望の樹脂成分の塗膜の厚みに応じて適宜設定すればよい。塗膜の厚みは特に限定されないが、例えば、プラズマダイシングに用いられる樹脂膜の場合、例えば、5μm以上60μm以下である。
【0051】
次に、回転ステージ20から被処理体10を取り外す(ST07)。取り外された被処理体10は、乾燥工程が施され、基板11上に樹脂膜が形成される。乾燥条件は特に限定されず、塗布液の成分および濃度、保持シート12の耐熱性等を考慮して適宜設定すればよい。乾燥機構としては、例えば、ヒーターを用いる加熱乾燥、排気装置を用いる減圧乾燥、または給気装置を用いる温風乾燥が挙げられる。
工程ST07の後、別の被処理体10を準備し、工程ST02~ST07を繰り返し行ってもよい。
【0052】
続いて、排出弁29を開放し、容器底部に設けられた排出孔30から洗浄液を排出する(ST08)。
【0053】
洗浄液供給工程(ST04)における回転ステージ20の回転速度と、塗布液供給工程(ST06)における回転ステージ20の回転速度は、異なっていてもよい。塗布液の容器内壁への飛散を抑制しつつ、洗浄液の容器内壁への飛散を促進させる観点から、洗浄液供給工程における回転ステージ20の回転速度は、塗布液供給工程における回転ステージ20の回転速度よりも速いことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の塗布装置および塗布方法は、基板に均一な樹脂膜を形成でき、特にプラズマ処理により基板をダイシングするためのマスクを形成する装置及び方法に好適である。
【符号の説明】
【0055】
100:塗布装置
10:被処理体
11:基板
12:保持シート
13:フレーム
20:回転ステージ
21:容器
21a:底部
21b:側壁
22:回転部
23:塗布液供給部
23a:塗布ノズル
24:洗浄液供給部
24a:洗浄ノズル
25:ノズル移動部
26:制御部
27:昇降部
28:保護層
29:排出弁
30:排出孔
図1
図2
図3
図4
図5