(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】情報処理方法及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20241220BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20241220BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241220BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20241220BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
H02J13/00 301J
H02J13/00 301A
H02J3/00 170
H02J7/00 Y
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J7/02 H
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2022535031
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2021024333
(87)【国際公開番号】W WO2022009718
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2020119212
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】西川 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】楊 長輝
(72)【発明者】
【氏名】飯田 崇
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-35635(JP,U)
【文献】特開平01-99441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 13/00
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置が、
電池によって駆動される電気機器が備える前記電池の単位期間あたりの充放電量に対応する情報を示す充放電情報を取得し、
前記電池は複数のセルを有し、
前記充放電量は前記電池の充電量及び放電量の少なくとも一方を含み、
前記単位期間あたりの前記充放電量に対応する情報と前記電池の劣化度との関係を示す第1関係情報を取得し、
経過時間又は前記充放電量と前記複数のセル間に生じる電圧差との関係を示す第2関係情報を取得し、
前記電池の劣化により発生する第1コストを示す第1コスト情報と、前記電圧差を低減させる作業に要する第2コストを示す第2コスト情報とを取得し、
前記充放電情報、前記第1関係情報、前記第2関係情報、前記第1コスト情報、及び前記第2コスト情報に基づいて、充放電計画における前記作業を行う時期であって、前記第1コスト及び前記第2コストの合計が所定の要件を満たす時期である作業時期を決定し、
前記作業時期を示す情報を提示装置に提示させる、
情報処理方法。
【請求項2】
前記充放電情報は、充放電に関する計画情報又は履歴情報である、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記電気機器は、移動体であり、
前記充放電量に対応する情報は、前記移動体の移動距離であり、
前記充放電情報は、前記移動体の前記単位期間あたりの移動距離を含む移動情報であり、
前記電池は、前記移動体に搭載される移動用の電池であり、
前記第1関係情報は、前記移動体の前記単位期間あたりの移動距離と前記電池の劣化度との関係を示し、
前記第2関係情報は、前記経過時間又は前記移動体の移動距離と前記複数のセル間に生じる電圧差との関係を示し、
前記充放電計画は、前記移動体の移動計画であり、
前記作業時期は、前記移動計画において使用する前記作業を行う時期であって、前記第1コスト及び前記第2コストの合計が所定の要件を満たす時期である、
請求項1又は2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記情報処理装置がさらに、
前記移動情報、前記第1関係情報、前記第2関係情報、前記第1コスト情報、及び前記第2コスト情報に基づいて、移動計画において使用する前記移動体又は前記移動体に搭載される前記電池の購入、売却、又は廃棄の時期であって、前記第1コスト及び前記第2コストの合計が前記所定の要件を満たす時期である計画時期を決定し、
前記計画時期を示す情報を前記提示装置に提示させる、
請求項3に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記第1コストは、前記劣化度が閾値以上になった前記電池又は当該電池を搭載する前記移動体の購入、売却、又は廃棄に要するコストを含む、
請求項3又は4に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記情報処理装置は、前記実施時期が到来する所定期間前に、前記実施時期を示す情報を前記提示装置に提示させる、
請求項1~5のいずれか一つに記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記電気機器は、蓄電装置であり、
前記充放電量に対応する情報は、前記蓄電装置の充放電量であり、
前記第1関係情報は、前記蓄電装置の前記単位期間あたりの充放電量と前記電池の劣化度との関係を示し、
前記第2関係情報は、前記経過時間又は前記蓄電装置の充放電量と前記複数のセル間に生じる電圧差との関係を示し、
前記充放電計画は、前記蓄電装置の充放電計画であり、
前記作業時期は、前記充放電計画において使用する前記作業を行う時期であって、前記第1コスト及び前記第2コストの合計が所定の要件を満たす時期である、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項8】
電池によって駆動される電気機器が備える前記電池の単位期間あたりの充放電量に対応する情報を示す充放電情報を取得する第1取得部と、
前記電池は複数のセルを有し、
前記充放電量は前記電池の充電量及び放電量の少なくとも一方を含み、
前記単位期間あたりの前記充放電量に対応する情報と前記電池の劣化度との関係を示す第1関係情報を取得する第2取得部と、
経過時間又は前記充放電量と前記複数のセル間に生じる電圧差との関係を示す第2関係情報を取得する第3取得部と、
前記電池の劣化により発生する第1コストを示す第1コスト情報と、前記電圧差を低減させる作業に要する第2コストを示す第2コスト情報とを取得する第4取得部と、
前記充放電情報、前記第1関係情報、前記第2関係情報、前記第1コスト情報、及び前記第2コスト情報に基づいて、充放電計画における前記作業を行う時期であって、前記第1コスト及び前記第2コストの合計が所定の要件を満たす時期である作業時期を決定する決定部と、
前記作業時期を示す情報を提示する提示部と、
を備える、情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、電池パックが有する複数のセルの再バランスを行うか否かを電池パックの充電回数に基づいて判定する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された技術では、所定の充電回数ごとに再バランスが行われるため、電池のコストの観点では再バランスの時期が適切でないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示は、電池の複数のセル間に生じている電圧差を低減させるための作業を行う時期を、電池のコストの観点から適切な時期に決定することが可能な技術を提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、情報処理装置が、電池によって駆動される電気機器が備える前記電池の単位期間あたりの充放電量に対応する情報を示す充放電情報を取得し、前記電池は複数のセルを有し、前記充放電量は前記電池の充電量及び放電量の少なくとも一方を含み、前記単位期間あたりの前記充放電量に対応する情報と前記電池の劣化度との関係を示す第1関係情報を取得し、経過時間又は前記充放電量と前記複数のセル間に生じる電圧差との関係を示す第2関係情報を取得し、前記電池の劣化により発生する第1コストを示す第1コスト情報と、前記電圧差を低減させる作業に要する第2コストを示す第2コスト情報とを取得し、前記充放電情報、前記第1関係情報、前記第2関係情報、前記第1コスト情報、及び前記第2コスト情報に基づいて、充放電計画における前記作業を行う時期であって、前記第1コスト及び前記第2コストの合計が所定の要件を満たす時期である作業時期を決定し、前記作業時期を示す情報を提示装置に提示させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】データ処理部が有する機能を示すブロック図である。
【
図4】ある事業所の長期事業計画の一例を示す図である。
【
図5】ある事業所における現在の事業状況の一例を示す図である。
【
図6】ある事業所における事業コストの一例を示す図である。
【
図7】車両の走行距離に対するバッテリの劣化度を示す劣化特性の一例を示す図である。
【
図8】車両の総走行距離に対するバッテリのセル間電圧差を示す電圧差特性の一例を示す図である。
【
図9】データ処理部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】車両の総走行距離に対するバッテリの劣化度の一例を示す図である。
【
図11】提示された計画台数の一例を簡略化して示す図である。
【
図12】提示された計画走行距離の一例を簡略化して示す図である。
【
図13】本開示の第2実施形態に係る情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図14】データ処理部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見)
インターネット等を利用した通信販売によって購入された商品は、宅配業者によって顧客の自宅等に配送される。宅配業者は、複数台のトラックを用いて、担当する配送エリア内で荷物の配送を行う。今後は、バッテリ駆動の走行モータが搭載された電気自動車(EV)の普及が進み、EVのトラックによって荷物の配送を行う宅配業者が増加すると考えられる。
【0009】
EVのバッテリは、直列に接続された複数のセル(バッテリセル)を備えたバッテリパックとして構成されることが多い。EVが長年使用されると、複数のセル間に残容量の差が生じ、セル電圧のバランスが崩れた状態(セルインバランス)となる。セルインバランスが生じているバッテリでは、充電完了時に、残容量が100%のセルと100%未満のセルとが混在する。EVの始動によりバッテリの放電が開始されると、後者のセルの残容量が許容下限値に達した時点で放電は停止される。その結果、全体としてのバッテリ容量が実質的に減少する。
【0010】
周知のセルバランシング回路をバッテリパックに実装することによって、セルインバランスを解消することは可能である。セルバランシング回路は、残容量の多いセルのみを選択して抵抗素子に回路接続することにより、当該セルを強制的に放電させる。全てのセルのセル電圧が揃った時点で強制放電を停止することにより、セルインバランスを解消することができる。しかし、バッテリパックにセルバランシング回路を実装したのでは、バッテリパックのコスト上昇を招き、ひいてはEVの製造コストが増大する。
【0011】
EVのコスト増大を回避するために、バッテリパックにセルバランシング回路を実装するのではなく、セルインバランスが生じたEVを修理工場等に搬入して、バッテリの電圧調整作業を実施する方法が考えられる。この電圧調整作業は、上記のセルバランシング回路と同様に、残容量の多いセルを強制放電させて全セルのセル電圧を揃えることにより、バッテリのセルインバランスを解消するものである。
【0012】
しかし、修理工場等における電圧調整作業は有償の作業である。従って、セルインバランスの程度が低い時点で電圧調整作業を実施したのでは、その作業によって回復するバッテリ容量はわずかであるため、費用対効果は低い。また、寿命近くにまで劣化が進行したバッテリに対して電圧調整作業を実施しても、その作業後しばらくしてEVの買い替えが必要になるため、やはり費用対効果は低い。一方、電圧調整作業を一度も実施せず、バッテリのパフォーマンスが低下する度にEVを買い替えたのでは、買い替えサイクルの短縮化によって車両購入費が増大する。従って、EVを買い替えるよりも電圧調整作業を実施した方が長期的なコスト面で有利な場合には、買い替え時期を先延ばしにして電圧調整作業を実施すべきである。このように、EVによる宅配業を運営する上では、バッテリが劣化した車両の買い替えに伴う車両購入費だけでなく、セルインバランスを解消するための電圧調整作業費も含めた、長期(例えば10年)のトータルコスト(TCO:Total Cost of Ownership)が最小となるように、事業計画を策定することが重要である。
【0013】
上記特許文献1に開示された電池パックの充放電システムは、複数のセルを有する電池パックの充放電を行うための充電ステーションを備える。当該充電ステーションは、プロセッサ回路を備える。当該プロセッサ回路は、所定の再バランス基準と、電池パックメモリに格納されている電池パックの充放電データとに基づいて、複数のセルの再バランスを実行すべき時期を判定する。
【0014】
しかし、上記特許文献1には、長期のトータルコストを最小化するという観点から電圧調整作業の実施時期を決定することは、何ら開示されていない。
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明者は、長期計画情報、コスト情報、走行距離とバッテリの劣化度との関係情報、及び、走行距離とセルインバランスとの関係情報を用いることにより、長期のトータルコストが最小となるように電圧調整作業の最適な実施時期を決定できるとの知見を得て、本開示を想到するに至った。
【0016】
次に、本開示の各態様について説明する。
【0017】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、情報処理装置が、電池によって駆動される電気機器が備える前記電池の単位期間あたりの充放電量に対応する情報を示す充放電情報を取得し、前記電池は複数のセルを有し、前記充放電量は前記電池の充電量及び放電量の少なくとも一方を含み、前記単位期間あたりの前記充放電量に対応する情報と前記電池の劣化度との関係を示す第1関係情報を取得し、経過時間又は前記充放電量と前記複数のセル間に生じる電圧差との関係を示す第2関係情報を取得し、前記電池の劣化により発生する第1コストを示す第1コスト情報と、前記電圧差を低減させる作業に要する第2コストを示す第2コスト情報とを取得し、前記充放電情報、前記第1関係情報、前記第2関係情報、前記第1コスト情報、及び前記第2コスト情報に基づいて、充放電計画における前記作業を行う時期であって、前記第1コスト及び前記第2コストの合計が所定の要件を満たす時期である作業時期を決定し、前記作業時期を示す情報を提示装置に提示させる。
【0018】
本構成によれば、情報処理装置は、充放電情報、第1関係情報、第2関係情報、第1コスト情報、及び第2コスト情報に基づいて、第1コスト及び第2コストの合計が所定の要件を満たすように、電池の複数のセル間に生じている電圧差を低減させるための作業を行う作業時期を決定する。このように、第1コスト及び第2コストのトータルコストに基づいて作業時期を決定することにより、作業時期を電池のコストの観点で適切な時期に決定することができる。例えば、長期のトータルコストが最小となる最適な作業時期を決定することが可能となる。
【0019】
上記態様において、前記充放電情報は、充放電に関する計画情報又は履歴情報である。
【0020】
本構成によれば、計画情報を用いることにより、電気機器の使用開始前に作業時期を決定することができる。また、過去の履歴情報を用いることにより、電気機器の使用中に使用状況を考慮して作業時期を決定することができる。
【0021】
上記態様において、前記電気機器は、移動体であり、前記充放電量に対応する情報は、前記移動体の移動距離であり、前記充放電情報は、前記移動体の前記単位期間あたりの移動距離を含む移動情報であり、前記電池は、前記移動体に搭載される移動用の電池であり、前記第1関係情報は、前記移動体の前記単位期間あたりの移動距離と前記電池の劣化度との関係を示し、前記第2関係情報は、前記経過時間又は前記移動体の移動距離と前記複数のセル間に生じる電圧差との関係を示し、前記充放電計画は、前記移動体の移動計画であり、前記作業時期は、前記移動計画において使用する前記作業を行う時期であって、前記第1コスト及び前記第2コストの合計が所定の要件を満たす時期である。
【0022】
本構成によれば、移動体に搭載される電池を対象として、電池の複数のセル間に生じている電圧差を低減させるための作業を行う最適な作業時期を決定することが可能となる。
【0023】
上記態様において、前記情報処理装置がさらに、前記走行計画情報、前記第1関係情報、前記第2関係情報、前記第1コスト情報、及び前記第2コスト情報に基づいて、走行計画において使用する前記移動体又は前記移動体に搭載される前記電池の購入、売却、又は廃棄の時期であって、前記第1コスト及び前記第2コストの合計が前記所定の要件を満たす時期である計画時期を決定し、前記計画時期を示す情報を前記提示装置に提示させる。
【0024】
本構成によれば、情報処理装置は、第1コスト及び第2コストの合計が所定の要件を満たすように、移動体又は電池の購入、売却、又は廃棄に関する計画時期を決定する。このように、第1コスト及び第2コストのトータルコストに基づいて計画時期を決定することにより、計画時期を電池のコストの観点で適切な時期に決定することができる。例えば、長期のトータルコストが最小となる移動体又は電池の最適な計画時期を決定することが可能となる。
【0025】
上記態様において、前記第1コストは、前記劣化度が閾値以上になった前記電池又は当該電池を搭載する前記移動体の購入、売却、又は廃棄に要するコストを含む。
【0026】
本構成によれば、劣化度が閾値以上になった電池又は当該電池を搭載する移動体の購入、売却、又は廃棄に要するコストを第1コストに含めることにより、電池又は移動体の寿命を、閾値を用いて制御することができる。そのため、劣化連動コストである第1コストの精度を高めることが可能となる。
【0027】
上記態様において、前記情報処理装置は、前記実施時期が到来する所定期間前に、前記実施時期を示す情報を前記提示装置に提示させる。
【0028】
本構成によれば、作業の実施時期が到来する所定期間前に情報を提示させることにより、作業予約等の手配を滞りなく行うことができる。
【0029】
上記態様において、前記電気機器は、蓄電装置であり、前記充放電量に対応する情報は、前記蓄電装置の充放電量であり、前記第1関係情報は、前記蓄電装置の前記単位期間あたりの充放電量と前記電池の劣化度との関係を示し、前記第2関係情報は、前記経過時間又は前記蓄電装置の充放電量と前記複数のセル間に生じる電圧差との関係を示し、前記充放電計画は、前記蓄電装置の充放電計画であり、前記作業時期は、前記充放電計画において使用する前記作業を行う時期であって、前記第1コスト及び前記第2コストの合計が所定の要件を満たす時期である。
【0030】
本構成によれば、蓄電装置に搭載される電池を対象として、電池の複数のセル間に生じている電圧差を低減させるための作業を行う最適な作業時期を決定することが可能となる。
【0031】
本開示一態様に係る情報処理システムは、電池によって駆動される電気機器が備える前記電池の単位期間あたりの充放電量に対応する情報を示す充放電情報を取得する第1取得部と、前記電池は複数のセルを有し、前記充放電量は前記電池の充電量及び放電量の少なくとも一方を含み、前記単位期間あたりの前記充放電量に対応する情報と前記電池の劣化度との関係を示す第1関係情報を取得する第2取得部と、経過時間又は前記充放電量と前記複数のセル間に生じる電圧差との関係を示す第2関係情報を取得する第3取得部と、前記電池の劣化により発生する第1コストを示す第1コスト情報と、前記電圧差を低減させる作業に要する第2コストを示す第2コスト情報とを取得する第4取得部と、前記充放電情報、前記第1関係情報、前記第2関係情報、前記第1コスト情報、及び前記第2コスト情報に基づいて、充放電計画における前記作業を行う時期であって、前記第1コスト及び前記第2コストの合計が所定の要件を満たす時期である作業時期を決定する決定部と、前記作業時期を示す情報を提示する提示部と、を備える。
【0032】
本構成によれば、決定部は、充放電情報、第1関係情報、第2関係情報、第1コスト情報、及び第2コスト情報に基づいて、第1コスト及び第2コストの合計が所定の要件を満たすように、電池の複数のセル間に生じている電圧差を低減させるための作業を行う作業時期を決定する。このように、第1コスト及び第2コストのトータルコストに基づいて作業時期を決定することにより、作業時期を電池のコストの観点で適切な時期に決定することができる。例えば、長期のトータルコストが最小となる最適な作業時期を決定することが可能となる。
【0033】
上述した本開示の包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、又はこれらの任意の組合せとして実現することができる。また、このようなコンピュータプログラムを、CD-ROM等のコンピュータ読取可能な不揮発性の記録媒体として流通させ、あるいは、インターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは言うまでもない。
【0034】
以下で説明する実施形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、構成要素、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、全ての実施形態において、各々の内容を組み合わせることもできる。
【0035】
以下、本開示の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0036】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係る情報処理システム1の構成を示すブロック図である。本実施形態の例において、情報処理システム1は、電気自動車(EV)によって荷物を顧客の自宅等に配送する宅配業者の管理システムとして構築されている。この宅配業者は、一例として、各々の配送エリアを担当する複数の事業所と、これら複数の事業所を統括する本社とを有している。本社及び各事業所にはローカルPC12が設置されており、クラウドサーバ11と接続されている。また、各事業所には荷物配送用の複数の車両13が配備されている。クラウドサーバ11、ローカルPC12、及び車両13は、IP網等の任意の通信ネットワーク14を介して相互に通信可能である。なお、本実施形態では、移動体は、車両であるとしたがこれに限定されない。例えば、移動体は、ドローン等の航空機、船舶、又は移動式ロボットであってもよい。
【0037】
クラウドサーバ11は、データ処理部22、記憶部23、及び通信部24を備えている。ローカルPC12は、表示部31、データ処理部32、記憶部33、通信部34、及び入力部35を備えている。表示部31は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等である。データ処理部22,32は、CPU等のプロセッサである。記憶部23,33は、HDD又はSSD等である。通信部24,34は、IP等の所定の通信規格によってデータ通信を行う通信モジュールである。入力部35は、マウス又はキーボード等である。
【0038】
車両13は、EVのトラック等であり、バッテリ41、制御部42、及び通信部43を備えている。バッテリ41は、車両13に搭載された走行モータを駆動するためのリチウムイオンバッテリ等の二次電池である。制御部42は、バッテリ41の動作制御及び状態管理を行うためのBMS(Battery Management System)である。通信部43は、IP等の所定の通信規格によってデータ通信を行う通信モジュールである。
【0039】
なお、本実施形態に係る情報処理システム1の適用対象は、宅配事業に限らず、複数台のEVを用いて事業を行う、タクシー事業、レンタカー事業、カーシェアリング事業、又は運転代行事業等の任意の事業である。
【0040】
図2は、バッテリ41の構成を簡略化して示す図である。バッテリ41は、直列に接続された複数のセル(バッテリセル)C1~C4を備えている。つまり、バッテリ41は、直列に接続された複数のセルC1~C4を備えたバッテリパックとして構成されている。なお、セルの個数は4個に限らず、任意の複数であれば良い。
【0041】
図3は、クラウドサーバ11のデータ処理部22が有する機能を示すブロック図である。
図3に示すようにデータ処理部22は、計画情報取得部51、現在情報取得部52、劣化特性取得部53、コスト情報取得部54、電圧差特性取得部55、及び最適値計算部56を有している。これらの機能は、ROM等から読み出したプログラムをCPUが実行することによってソフトウェア的に実現されてよい。
【0042】
図4は、ある事業所の長期事業計画の一例を示す図であり、
図5は、その事業所における現在の事業状況の一例を示す図であり、
図6は、その事業所における事業コストの一例を示す図である。
【0043】
この事業所は、現在(0年後)、4台のEV(車両A~D)を用いて所定の配送エリアを担当している。1日あたりの4台のEVの合計走行距離は、200kmである。この事業所では、荷物量の増加に伴って事業規模の拡大が計画されており、
図4に示すように、10年後には1日あたりの合計走行距離を500kmに増加させることが計画されている。この長期事業計画を示す計画情報は、その事業所に設置されているローカルPC12の入力部35から入力される。ローカルPC12への計画情報の入力は、新たな長期事業計画が策定された際、及び、災害等の特殊イベントの発生に起因して既存の長期事業計画が変更された際に実行される。入力された計画情報は、ローカルPC12から通信ネットワーク14を介してクラウドサーバ11に送信され、記憶部23に格納される。
図3を参照して、計画情報取得部51は、ローカルPC12から受信した計画情報を取得する。
【0044】
図5に示すように、現在の事業状況には、4台のEVの各々に関する、購入年月日、新車時から現在までの総走行距離、現在のSoH、1日あたりの走行距離の現在の設定値、最大セル電圧、及び最小セル電圧が含まれる。SoHは、バッテリ41の劣化度を示す指標である。最大セル電圧は、セルC1~C4のセル電圧の最大値である。最小セル電圧は、セルC1~C4のセル電圧の最小値である。この現在の事業状況を示す現在情報は、その事業所に設置されているローカルPC12の入力部35から入力される。ローカルPC12への現在情報の入力は、新たな長期事業計画が策定された際、既存の長期事業計画が変更された際、及び、定期的(例えば半年に1度)に実行される。入力された現在情報は、ローカルPC12から通信ネットワーク14を介してクラウドサーバ11に送信され、記憶部23に格納される。新車のEVのみを用いて新規の事業所を立ち上げる場合には、どの車両13もバッテリ41は劣化していないため、クラウドサーバ11への現在情報の送信は省略されても良い。
図3を参照して、現在情報取得部52は、ローカルPC12から受信した現在情報を取得する。なお、最大セル電圧及び最小セル電圧に関する情報は、ローカルPC12からではなく車両13から通信ネットワーク14を介してクラウドサーバ11に送信されても良い。
【0045】
図6に示すように、事業所における事業コストは、その事業所に配備されている車両13の台数に応じて変動するコスト(台数連動コスト)と、バッテリ41の劣化度に応じて変動するコスト(劣化連動コスト)と、車両台数及びバッテリ劣化度に応じて変動しないコスト(固定コスト)とに分類される。台数連動コストには、ドライバの人件費、並びに、メンテナンス費用及び保険料等の車両維持費が含まれる。また、
図6には示さないが、台数連動コストには、車両13の電気代、及び、車両13がリースである場合のリース費用等が含まれる。劣化連動コストには、車両13の車両購入費(第1コスト)、及び、電圧調整作業費(第2コスト)が含まれる。新車購入時に古い車両を売却する場合には、その売却益はマイナス値の車両購入費として計上される。
【0046】
EVが長年使用されると、複数のセルC1~C4間に残容量の差が生じ、セル電圧のバランスが崩れた状態(セルインバランス)となる。セルインバランスが生じているバッテリ41では、充電完了時に、残容量が100%のセルと100%未満のセルとが混在する。EVの始動によりバッテリ41の放電が開始されると、後者のセルの残容量が下限許容値に達した時点で放電は停止される。その結果、バッテリ41全体としてのバッテリ容量が実質的に減少する。本実施形態では、EVのコスト増大を回避するために、バッテリパックに上述のセルバランシング回路を実装するのではなく、セルインバランスが生じたEVを修理工場等に搬入して、バッテリ41の電圧調整作業を実施する方法を採用する。この電圧調整作業は、セルバランシング回路と同様に、残容量の多いセルを強制放電させて全セルのセル電圧を揃えることにより、バッテリ41のセルインバランスを解消するものである。
図6に示した電圧調整作業費は、この修理工場等での電圧調整作業に要する費用である。
【0047】
図6には示さないが、劣化連動コストには、寿命となった車両13を廃車する場合の廃車費用が含まれる。固定コストには、家賃、倉庫費、及びドライバ以外の人件費等の運営費が含まれる。事業所のコスト情報には、ドライバ人件費及び車両維持費等の各コスト項目に対応するコスト単価が示されている。
【0048】
事業所のコスト情報は、その事業所に設置されているローカルPC12の入力部35から入力される。ローカルPC12へのコスト情報の入力は、新たな長期事業計画が策定された際、既存の長期事業計画が変更された際、及び、定期的(例えば半年に1度)に実行される。入力されたコスト情報は、ローカルPC12から通信ネットワーク14を介してクラウドサーバ11に送信され、記憶部23に格納される。
図3を参照して、コスト情報取得部54は、ローカルPC12から受信したコスト情報を取得する。
【0049】
図7は、車両13の走行距離に対するバッテリ41の劣化度を示す劣化特性の一例を示す図である。グラフの横軸は、1日あたりの走行距離(km/日)を示している。グラフの縦軸は、横軸で示される走行距離が1年間継続された場合の、1年後のSoHの値(%)を示している。横軸が0のときの縦軸の値が、バッテリ41の現在のSoHとなる。例えば、現在のSoHが90%のバッテリ41を、1日あたり50kmの走行距離で使用し続けると、1年後にそのバッテリ41のSoHは80%まで低下するということである。バッテリ41のSoHが所定値(例えば80%)未満まで低下した場合(換言するとバッテリ41の劣化度が閾値以上になった場合)、そのバッテリ41又は当該バッテリ41を搭載する車両13は寿命に至った(つまり残寿命がゼロ)ということになる。
【0050】
なお、
図7には、現在のSoHが90,95,100%の3パターンのみの劣化特性を示したが、より細密な刻み幅(例えば1%刻み)で多数の劣化特性が作成されても良い。また、劣化特性は、
図7に示したようなグラフの形式ではなく、関数式又はルックアップテーブル等の形式で示されても良い。
図3を参照して、劣化特性取得部53は、バッテリの種別毎に予め作成された劣化特性を記憶部23から読み出すことにより、バッテリ41の劣化特性を取得する。なお、劣化特性取得部53は、バッテリ41の製造メーカ又は解析メーカ等から劣化特性の情報を入手することにより、バッテリ41の劣化特性を取得しても良い。バッテリ41の劣化特性が予め作成されておらず、かつ、製造メーカ等からも入手できない場合には、劣化特性取得部53は、多数の車両13から取得した車両情報(バッテリ41の充放電情報を含む)の解析により自ら劣化特性を作成することによって、バッテリ41の劣化特性を取得する。
【0051】
図8は、車両13の総走行距離に対するバッテリ41のセル間電圧差を示す電圧差特性の一例を示す図である。グラフの横軸は、新車時からの車両13の総走行距離(km)を示している。車両13の総走行距離はバッテリ41の総充放電量に相当する。充放電量には充電量及び放電量の少なくとも一方が含まれる。グラフの縦軸は、全セルC1~C4のうち最大セル電圧と最小セル電圧との差であるセル間電圧差を示している。総走行距離に略比例してセル間電圧差が増加していることが分かる。なお、セル間電圧差は、車両13の総走行距離だけでなく、バッテリ41の製造時からの経過時間にも略比例する。従って、グラフの横軸は、総走行距離に代えて経過時間としても良い。
【0052】
なお、電圧差特性は、
図8に示したようなグラフの形式ではなく、関数式又はルックアップテーブル等の形式で示されても良い。
図3を参照して、電圧差特性取得部55は、バッテリの種別毎に予め作成された電圧差特性を記憶部23から読み出すことにより、バッテリ41の電圧差特性を取得する。なお、電圧差特性取得部55は、バッテリ41の製造メーカ又は解析メーカ等から電圧差特性の情報を入手することにより、バッテリ41の電圧差特性を取得しても良い。バッテリ41の電圧差特性が予め作成されておらず、かつ、製造メーカ等からも入手できない場合には、電圧差特性取得部55は、多数の車両13から取得した車両情報(バッテリ41の充放電情報を含む)の解析により自ら電圧差特性を作成することによって、バッテリ41の電圧差特性を取得する。
【0053】
クラウドサーバ11は、
図4~8に示した情報に基づいて、各事業所における長期(例えば10年)のトータルコスト(TCO:Total Cost of Ownership)が最小となるように、各事業所に配備すべき車両13の最適な台数(計画台数)、各車両13の最適な走行距離(計画走行距離)、及び、各車両13の最適な電圧調整作業の実施時期(作業時期)を決定する。また、同時に、車両13又は車両13に搭載されているバッテリ41の購入、売却、又は廃棄の時期(計画時期)が決定されてもよい。
【0054】
図9は、対象事業所の計画台数、計画走行距離、及び作業時期を決定するためにクラウドサーバ11のデータ処理部22が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0055】
ある事業所を対象とする計画台数、計画走行距離、及び作業時期の決定要求がクラウドサーバ11に入力されると、まずステップS01において劣化特性取得部53及び電圧差特性取得部55は、
図7に示した劣化特性及び
図8に示した電圧差特性を取得可能であるか否かをそれぞれ判定する。予め作成された劣化特性及び電圧差特性が記憶部23に格納されている場合、又は、バッテリ41の製造メーカ等から劣化特性及び電圧差特性の情報を入手可能である場合は、劣化特性取得部53及び電圧差特性取得部55は劣化特性及び電圧差特性を取得可能であると判定する。
【0056】
劣化特性及び電圧差特性を取得可能である場合(ステップS01:YES)は、次にステップS02において劣化特性取得部53及び電圧差特性取得部55は、劣化特性及び電圧差特性を記憶部23から読み出すことにより、又は、バッテリ41の製造メーカ等のデータベースにアクセスして劣化特性及び電圧差特性の情報をダウンロードすることにより、バッテリ41の劣化特性及び電圧差特性を取得する。劣化特性取得部53及び電圧差特性取得部55は、取得した劣化特性及び電圧差特性を、データD3,D5として最適値計算部56に入力する。
【0057】
劣化特性又は電圧差特性を取得可能でない場合(ステップS01:NO)は、次にステップS03においてクラウドサーバ11は、通信ネットワーク14を介して多数の車両13から車両情報を取得する。車両情報には、各車両13のバッテリ41の充放電情報が含まれている。また、車両情報には、各車両13の走行距離情報も含まれている。取得された車両情報は記憶部23に蓄積される。
【0058】
次にステップS04において劣化特性取得部53又は電圧差特性取得部55は、劣化特性又は電圧差特性を作成するのに十分な量の車両情報が記憶部23に蓄積されたか否かを判定する。十分な量の車両情報が蓄積されていない場合(ステップS04:NO)は、十分な量の車両情報が蓄積されるまで、ステップS03,S04の処理が繰り返し実行される。
【0059】
十分な量の車両情報が蓄積された場合(ステップS04:YES)は、次にステップS05において劣化特性取得部53又は電圧差特性取得部55は、記憶部23に蓄積されている車両情報に基づいて、バッテリ41の劣化特性又は電圧差特性を作成する。車両情報には、各車両13に関する、バッテリ41の充放電情報(最大セル電圧及び最小セル電圧の情報を含む)と走行距離情報とが含まれている。従って、劣化特性取得部53は、これらの情報を解析することによって、車両13の走行距離とバッテリ41の劣化度(SoH)との関係を示す劣化特性を、バッテリ41の種別毎に作成することが可能である。また、電圧差特性取得部55は、これらの情報を解析することによって、車両13の走行距離とバッテリ41のセル間電圧差との関係を示す電圧差特性を、バッテリ41の種別毎に作成することが可能である。劣化特性取得部53又は電圧差特性取得部55は、作成した劣化特性又は電圧差特性を、データD3,D5として最適値計算部56に入力する。
【0060】
ステップS02又はステップS05に続いて、ステップS06において計画情報取得部51は、ローカルPC12から受信して記憶部23に格納されている計画情報を記憶部23から読み出すことによって、対象事業所の長期事業計画を示す計画情報を取得する。
図4に示したように、計画情報には、その事業所に配備されている複数の車両13による1日あたりの合計走行距離(km/日)が、1年単位で示されている。計画情報取得部51は、取得した計画情報を、データD1として最適値計算部56に入力する。
【0061】
次にステップS07において現在情報取得部52は、ローカルPC12から受信して記憶部23に格納されている現在情報を記憶部23から読み出すことによって、対象事業所の現在の事業状況を示す現在情報(
図5参照)を取得する。現在情報取得部52は、取得した現在情報を、データD2として最適値計算部56に入力する。
【0062】
次にステップS08においてコスト情報取得部54は、ローカルPC12から受信して記憶部23に格納されているコスト情報を記憶部23から読み出すことによって、対象事業所のコスト情報を取得する。
図6に示したように、コスト情報には、車両13の台数に応じて変動する台数連動コストの項目及びそれを算出するための単価と、バッテリ41の劣化度に応じて変動する劣化連動コストの項目及びそれを算出するための単価と、固定コストの項目及びそれを算出するための単価とが含まれる。コスト情報取得部54は、取得したコスト情報を、データD4として最適値計算部56に入力する。
【0063】
次にステップS09において最適値計算部56は、データD1で示される計画情報、データD2で示される現在情報、データD3で示される劣化特性、データD4で示されるコスト情報、及びデータD5で示される電圧差特性に基づいて、対象事業所に関する車両13の計画台数、各車両13の計画走行距離、及び各車両13の作業時期を決定する。
【0064】
説明変数(劣化特性、電圧差特性、計画情報、現在情報、コスト情報)から目的変数(計画台数、計画走行距離、作業時期)を予測するための予測モデルは、人工知能を用いた機械学習によって導出することができる。予測モデルのアルゴリズムとしては、線形計画法による経路最適化、ニューラルネットワーク、又は重回帰分析等を使用することができる。計画情報で規定されている各年の合計走行距離を実現するための車両の台数と各車両の走行距離との組合せ、及び、車両購入及び電圧調整作業の組合せを様々に変化させ、TCOが所定の要件を満たす組合せを探索する。所定の要件としては、例えば、TCOが最小となる一の組合せ、又は、TCOが目標値未満となる一以上の組合せを探索する。最適値計算部56は、決定した計画台数をデータD11として出力し、決定した計画走行距離をデータD12として出力し、決定した作業時期をデータD13として出力する。
【0065】
次にステップS10においてクラウドサーバ11は、データD11~D13を、通信ネットワーク14を介して本社又は対象事業所のローカルPC12に送信する。ローカルPC12の表示部31は、受信したデータD11~D13に基づいて、自身の事業所に関する計画台数、計画走行距離、及び作業時期を表示(提示)する。
【0066】
図10は、車両13の総走行距離に対するバッテリ41の劣化度の一例を示す図である。
図10において、バッテリ41の劣化は車両13の総走行距離が増加するにつれて進行している。しかし、上記のように算出された作業時期において電圧調整作業が行われると、バッテリ41の劣化度が回復する。このような電圧調整作業が第1コスト及び第2コストの合計に基づいて決定されることにより、コストを抑制しつつバッテリ41を利用し続けることができる。なお、
図10の横軸は、総走行距離に代えて経過時間又は日付であってもよい。
【0067】
図11は、提示された計画台数の一例を簡略化して示す図であり、
図12は、提示された計画走行距離及び計画時期の一例を簡略化して示す図である。
図11において、特性K1は、単純に合計走行距離の増加に対応させて車両13の台数を増加させた場合のグラフを示している。10年後における車両13の台数は10台となっている。特性K2は、最適値計算部56によって決定された計画台数の推移を示している。車両13の台数は、3年後、6年後、及び8年後に1台ずつ増加し、10年後における車両13の台数は7台となっている。
【0068】
図12を参照して、同一の車両13であっても、計画走行距離は1年ごとに大きく増減していることが分かる(例えば車両E)。また、例えば車両Aに関するグラフは6年後に消失している。これは、車両Aを売却(又は廃車)する最適時期が6年後であることを示している。また、車両Eに関するグラフが3年後に出現している。これは、車両Eを購入する最適時期が3年後であることを示している。また、車両Aに関して1年後にポイントP1が設定されており、車両Eに関して8年後にポイントP2が設定されている。ポイントP1,P2は、バッテリ41の電圧調整作業を実施する時期に対応する。つまり、車両Aに対して電圧調整作業を実施する最適時期が1年後であり、車両Eに対して電圧調整作業を実施する最適時期が8年後であることを示している。
【0069】
データ処理部22は、データD13に基づき、各車両A,Eの電圧調整作業の実施時期が到来する所定期間前(例えば1~数ヶ月前)に、対象車両及び電圧調整作業の実施時期を提示する情報を、表示部21,31に表示させても良い。
【0070】
なお、バッテリ41を交換可能な車両13である場合には、バッテリ41の交換時期を提示しても良い。例えば、6年後に車両Aのバッテリ41を交換することにより、車両Fのグラフがバッテリ交換後の車両Aによって引き継がれる。
【0071】
本実施形態によれば、クラウドサーバ11(情報処理装置)のデータ処理部22は、事業所の長期の計画情報(充放電情報又は移動情報)と、バッテリ41の劣化特性(第1関係情報)と、バッテリ41の電圧差特性(第2関係情報)と、車両購入費(第1コスト)の単価(第1コスト情報)及び電圧調整作業費(第2コスト)の単価(第2コスト情報)を含むコスト情報とを取得する。そして、取得したこれらの情報に基づいて、第1コスト及び第2コストの合計が所定の要件を満たすように、バッテリ41の複数のセルC1~C4間に生じている電圧差を低減させるための作業を行う作業時期を決定する。このように、車両購入費及び電圧調整作業費の合計に基づいて作業時期を決定することにより、作業時期をバッテリ41のコストの観点で適切な時期に決定することができる。例えば、長期のトータルコストTCOが最小となる最適な作業時期を決定することが可能となる。
【0072】
また、本実施形態によれば、クラウドサーバ11のデータ処理部22は、車両購入費及び電圧調整作業費の合計が所定の要件を満たすように、車両13又はバッテリ41の購入、売却、又は廃棄に関する計画時期を決定する。このように、車両購入費及び電圧調整作業費の合計に基づいて計画時期を決定することにより、長期のトータルコストTCOが最小となる車両13又はバッテリ41の最適な計画時期を決定することが可能となる。
【0073】
また、本実施形態によれば、劣化度が閾値以上になったバッテリ41又は当該バッテリ41を搭載する車両13の購入、売却、又は廃棄に要するコストを第1コストに含めることにより、バッテリ41又は車両13の寿命を、閾値を用いて制御することができる。そのため、劣化連動コストである第1コストの精度を高めることが可能となる。
【0074】
また、本実施形態によれば、バッテリ41の電圧調整作業の実施時期が到来する所定期間前に実施時期等の情報を表示部21,31等に提示させることにより、管理者等によって作業予約等の手配を滞りなく行うことができる。
【0075】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、クラウドサーバ11は、電気機器の一例としてのバッテリ駆動のEVを対象として、EVの走行計画情報に基づいてバッテリの電圧調整作業の実施時期を決定したが、この例には限られない。クラウドサーバ11は、複数のセルを有するバッテリによって駆動される任意の電気機器を対象として、当該電気機器の使用計画情報に基づいてバッテリの電圧調整作業の実施時期を決定しても良い。電気機器は、例えば、蓄電装置である。なお、蓄電装置は発電機能を有してもよい。電気機器の使用計画情報は、バッテリの充放電量(充電量及び放電量の少なくとも一方)を示す充放電情報として策定することができる。充放電の計画情報が不明である場合には、計画情報取得部51が、電気機器又はバッテリの過去の使用状況を示す履歴情報に基づいて、その傾向から計画情報を推定しても良い。
【0076】
図13は、本開示の第2実施形態に係る情報処理システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示した車両13が電気機器113に置き換わっている。電気機器113は、バッテリ141、制御部142、及び通信部143を有している。バッテリ141、制御部142、及び通信部143は、
図1に示したバッテリ41、制御部42、及び通信部43にそれぞれ相当する。
【0077】
本実施形態において、クラウドサーバ11は、長期(例えば10年)のトータルコストTCOが最小となるように、電気機器113の最適な台数(計画台数)、各電気機器113の最適な充放電量(計画充放電量)、及び、各電気機器113の最適な電圧調整作業の実施時期(作業時期)を決定する。
【0078】
図14は、計画台数、計画充放電量、及び作業時期を決定するためにクラウドサーバ11のデータ処理部22が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【0079】
計画台数、計画充放電量、及び作業時期の決定要求がクラウドサーバ11に入力されると、まずステップS01において劣化特性取得部53及び電圧差特性取得部55は、劣化特性及び電圧差特性を取得可能であるか否かをそれぞれ判定する。
【0080】
劣化特性及び電圧差特性を取得可能である場合(ステップS01:YES)は、次にステップS02において劣化特性取得部53及び電圧差特性取得部55は、バッテリ41の劣化特性及び電圧差特性を取得し、取得した劣化特性及び電圧差特性を、データD3,D5として最適値計算部56に入力する。
【0081】
劣化特性又は電圧差特性を取得可能でない場合(ステップS01:NO)は、次にステップS103においてクラウドサーバ11は、通信ネットワーク14を介して多数の電気機器113からログ情報を取得する。ログ情報には、各電気機器113のバッテリ41の充放電情報が含まれている。取得されたログ情報は記憶部23に蓄積される。
【0082】
次にステップS04において劣化特性取得部53又は電圧差特性取得部55は、劣化特性又は電圧差特性を作成するのに十分な量のログ情報が記憶部23に蓄積されたか否かを判定する。十分な量のログ情報が蓄積されていない場合(ステップS04:NO)は、十分な量のログ情報が蓄積されるまで、ステップS03,S04の処理が繰り返し実行される。
【0083】
十分な量のログ情報が蓄積された場合(ステップS04:YES)は、次にステップS05において劣化特性取得部53又は電圧差特性取得部55は、記憶部23に蓄積されているログ情報に基づいて、バッテリ41の劣化特性又は電圧差特性を作成する。ログ情報には、各電気機器113に関する、バッテリ41の充放電情報(最大セル電圧及び最小セル電圧の情報を含む)が含まれている。従って、劣化特性取得部53は、これらの情報を解析することによって、電気機器113の総使用時間(又はバッテリ41の総充放電量)とバッテリ41の劣化度(SoH)との関係を示す劣化特性を、バッテリ41の種別毎に作成することが可能である。また、電圧差特性取得部55は、これらの情報を解析することによって、電気機器113の総使用時間(又はバッテリ41の総充放電量)とバッテリ41のセル間電圧差との関係を示す電圧差特性を、バッテリ41の種別毎に作成することが可能である。劣化特性取得部53又は電圧差特性取得部55は、作成した劣化特性又は電圧差特性を、データD3,D5として最適値計算部56に入力する。
【0084】
以降は上記第1実施形態と同様に、データ処理部22は、ステップS06~S10の処理を順に実行することにより、トータルコストTCOが最小となるように電気機器113の最適な台数(計画台数)、各電気機器113の最適な充放電量(計画充放電量)、及び、各電気機器113の最適な電圧調整作業の実施時期(作業時期)を決定し、それらの情報を提示させる。
【0085】
本実施形態によれば、クラウドサーバ11(情報処理装置)のデータ処理部22は、電気機器113の使用計画情報(バッテリ41の充放電情報)と、バッテリ41の劣化特性(第1関係情報)と、バッテリ41の電圧差特性(第2関係情報)と、電気機器113の購入費(第1コスト)の単価(第1コスト情報)及び電圧調整作業費(第2コスト)の単価(第2コスト情報)を含むコスト情報とを取得する。そして、取得したこれらの情報に基づいて、第1コスト及び第2コストの合計が所定の要件を満たすように、バッテリ41の複数のセルC1~C4間に生じている電圧差を低減させるための作業を行う作業時期を決定する。このように、機器購入費及び電圧調整作業費の合計に基づいて作業時期を決定することにより、作業時期をバッテリ41のコストの観点で適切な時期に決定することができる。例えば、長期のトータルコストTCOが最小となる最適な作業時期を決定することが可能となる。
【0086】
また、本実施形態によれば、バッテリ41の充放電情報は、バッテリ41の充放電の計画情報又は履歴情報である。計画情報を用いることにより、電気機器の使用開始前に作業時期を決定することができる。また、過去の履歴情報を用いることにより、電気機器の使用中に使用状況を考慮して作業時期を決定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示に係る技術は、複数のEVを用いた宅配事業等における長期事業計画の策定に特に有用である。