(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241220BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 303
B41J2/165 301
B41J2/165 211
(21)【出願番号】P 2021004956
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】丹山 哲教
(72)【発明者】
【氏名】関 英泰
(72)【発明者】
【氏名】石原 正教
(72)【発明者】
【氏名】牧野瀬 孝
(72)【発明者】
【氏名】小野村 一輝
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-103919(JP,A)
【文献】特開2020-097130(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0025736(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の第1方向および前記第1方向に直交する第2方向に延び、記録媒体を支持する支持台と、
前記支持台と対向するように設けられたキャリッジと、
それぞれインクを吐出する複数のノズルが形成されたノズル面を有し、前記ノズル面が前記支持台に対向するように前記キャリッジに設けられたインクジェットヘッドと、
前記インクを硬化させる光を照射する光源を備え、前記支持台に対向するように設けられた光照射装置と、
前記支持台と対向するように前記キャリッジに設けられ、受けた光の強度を測定する光センサと、
前記支持台に支持された前記記録媒体を前記第1方向に搬送する搬送装置と、
前記キャリッジを前記第2方向に移動させるキャリッジ移動装置と、
前記キャリッジに設けられ、前記支持台に支持された前記記録媒体の端部の位置を検出可能な端部検出装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
印刷開始指令を受信する受信部と、
前記受信部が前記印刷開始指令を受信した後に、前記光照射装置を制御して光を照射させる照射指令部と、
前記照射指令部が前記光照射装置に光を照射させているときに前記光センサが測定した光の強度を取得する取得部と、
前記取得部が取得する光の強度に関する第1閾値が登録された第1閾値登録部と、
前記取得部が取得した光の強度と前記第1閾値とを比較する第1比較部と、
前記取得部が取得した光の強度が前記第1閾値を越える場合には、印刷中止指令を発する第1指令部と、
前記受信部が前記印刷開始指令を受信した後であって印刷が開始される前に所定のセットアップ動作を行うセットアップ制御部と、
を備え
、
前記セットアップ動作は、前記キャリッジ移動装置によって前記キャリッジを前記第2方向に移動させながら前記端部検出装置を動作させることにより前記記録媒体の前記第2方向の端部の位置を検出する動作を含み、
前記照射指令部は、前記セットアップ動作が実行されている時間内に前記光照射装置に光を照射させるように構成されており、前記端部検出装置が前記記録媒体の前記第2方向の端部の位置を検出する動作を行っているときに前記光照射装置に光を照射させ、
前記取得部は、前記端部検出装置が前記記録媒体の前記第2方向の端部の位置を検出している途中で前記光センサが測定した光の強度を取得するように構成されている、
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記取得部は、前記端部検出装置が前記記録媒体の前記第2方向の端部の位置を検出している途中であって前記キャリッジが前記第2方向の異なる複数の地点に位置しているときに前記光センサが測定した複数の光の強度を取得するように構成されている、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
記録媒体を支持する支持台と、
前記支持台と対向するように設けられたキャリッジと、
それぞれインクを吐出する複数のノズルが形成されたノズル面を有し、前記ノズル面が前記支持台に対向するように前記キャリッジに設けられたインクジェットヘッドと、
前記インクを硬化させる光を照射する光源を備え、前記支持台に対向するように設けられた光照射装置と、
前記支持台と対向するように前記キャリッジに設けられ、受けた光の強度を測定する光センサと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
印刷開始指令を受信する受信部と、
前記受信部が前記印刷開始指令を受信した後に、前記光照射装置を制御して光を照射させる照射指令部と、
前記照射指令部が前記光照射装置に光を照射させているときに前記光センサが測定した光の強度を取得する取得部と、
前記取得部が取得する光の強度に関する第1閾値が登録された第1閾値登録部と、
前記取得部が取得した光の強度と前記第1閾値とを比較する第1比較部と、
前記取得部が取得した光の強度が前記第1閾値を越える場合には、印刷中止指令を発する第1指令部と、
前記取得部が取得した光の強度と印刷データとに基づいて、印刷開始から印刷終了までに前記光センサが受ける光の積算量を推定する積算光量推定部と、
印刷開始から印刷終了までに前記光センサが受ける光の積算量に関する第2閾値が登録された第2閾値登録部と、
前記積算光量推定部によって推定された積算量と前記第2閾値とを比較する第2比較部と、
前記積算光量推定部によって推定された積算量が前記第2閾値を越える場合には、印刷中止指令を発する第2指令部と、
を備えている
、
インクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドのクリーニングを行うクリーニング機構を備え、
前記制御装置は、
印刷開始から印刷終了までに前記光センサが受ける光の積算量に関する閾値であって前記第2閾値よりも小さい第3閾値が登録された第3閾値登録部と、
前記積算光量推定部によって推定された積算量と前記第3閾値とを比較する第3比較部と、
前記積算光量推定部によって推定された積算量が前記第2閾値以下であって前記第3閾値を越える場合には、印刷開始前に前記クリーニング機構に前記インクジェットヘッドのクリーニングを行わせるクリーニング制御部と、
を備えている、
請求項
3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記制御装置は、
印刷データに基づき、前記インクジェットヘッドを制御して前記複数のノズルからインクを吐出させることによって前記支持台に支持された前記記録媒体にインクを着弾させ、前記光照射装置を制御して光を照射させることによって前記着弾したインクを硬化させる印刷制御部と、
前記印刷制御部が前記光照射装置に照射させる光の強度である第1強度が登録された第1強度登録部と、
前記照射指令部が前記光照射装置に照射させる光の強度である第2強度が登録された第2強度登録部と、
を備え、
前記第2強度は、前記第1強度よりも弱い、
請求項
1~4のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記支持台および前記キャリッジのうちの少なくとも一方を移動させることによって、前記支持台を前記キャリッジに対して移動させる移動装置をさらに備え、
前記照射指令部は、前記移動装置を制御して前記支持台を前記キャリッジに対して複数の地点に位置付けるとともに、少なくとも前記支持台が前記キャリッジに対して前記複数の地点に位置付けられたときには前記光照射装置に光を照射させ、
前記取得部は、前記支持台が前記キャリッジに対して前記複数の地点に位置付けられたときに前記光センサが測定した複数の光の強度を取得するように構成されている、
請求項
1~5のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の波長帯の光を受けると硬化する光硬化性インクを記録媒体に吐出するインクジェットヘッドと、光硬化性インクを硬化させる光を照射する光照射装置とを備えたインクジェットプリンタが従来から知られている。このようなインクジェットプリンタでは、光照射装置によって照射された光の記録媒体による反射光がインクジェットヘッドに照射され、インクジェットヘッドの表面に付着した光硬化性インクやノズル内の光硬化性インクが増粘または硬化するおそれが指摘されている。そのため、光硬化性インクを使用するインクジェットプリンタの多くには、反射光がインクジェットヘッドに照射されることを抑制する構成(例えば、遮光板など)が設けられている。
【0003】
しかしながら、インクジェットヘッドに照射される反射光を完全になくすことは困難であるため、このようなインクジェットプリンタの多くでは、定期的に、または適時にインクジェットヘッドのクリーニングが行われる。例えば特許文献1には、インクジェットヘッド(吐出ヘッド)の近くに設けられた光センサに照射される光の積算量を測定し、測定された積算光量が予め定められた閾値を上回ると警告を発するか、またはインクジェットヘッドのクリーニングを実行するインクジェットプリンタが開示されている。特許文献1によれば、光センサに照射された光の量とインクジェットヘッドに照射された光の量とはほぼ等しいため、光センサが測定する光量でインクジェットヘッドが受ける光量を代替することができる、とされる。反射光の光量は例えば記録媒体の種類などによって大きく変動するため、適切なクリーニングのタイミングを設定することは難しかったが、特許文献1に開示されたインクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドが受ける光量がほぼ正確に測定されているため、インクジェットヘッドのクリーニングの適切なタイミングを知ることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたインクジェットプリンタでは、光センサが受けた積算光量を測定することにより、インクが増粘または硬化する前にインクジェットヘッドをクリーニングすることが意図されている。それにより、インクの増粘または硬化によってインクジェットヘッドが破損する危険性を低減している。しかし、特許文献1に開示されたインクジェットプリンタでは、短時間でインクを硬化させるような強い反射光がインクジェットヘッドに照射されることは想定されていない。本願発明者は、インクジェットヘッドに照射される光の強度(瞬時光量)が過度に大きいと、短時間の照射でもインクが増粘または硬化してインクジェットヘッドを破損させるおそれがあることに思い至った。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光硬化性のインクを使用するインクジェットプリンタであって、受ける光によるインクジェットヘッドの破損のおそれをより低減できるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示するインクジェットプリンタは、記録媒体を支持する支持台と、前記支持台と対向するように設けられたキャリッジと、前記キャリッジに設けられたインクジェットヘッドと、光照射装置と、受けた光の強度を測定する光センサと、制御装置と、を備えている。前記インクジェットヘッドは、それぞれインクを吐出する複数のノズルが形成されたノズル面を有し、前記ノズル面が前記支持台に対向するように前記キャリッジに設けられている。前記光照射装置は、前記インクを硬化させる光を照射する光源を備え、前記支持台に対向するように設けられている。前記光センサは、前記支持台と対向するように前記キャリッジに設けられている。前記制御装置は、受信部と、照射指令部と、取得部と、第1閾値登録部と、第1比較部と、第1指令部と、を備えている。前記受信部は、印刷開始指令を受信する。前記照射指令部は、前記受信部が前記印刷開始指令を受信した後に、前記光照射装置を制御して光を照射させる。前記取得部は、前記照射指令部が前記光照射装置に光を照射させているときに前記光センサが測定した光の強度を取得する。前記第1閾値登録部には、前記取得部が取得する光の強度に関する第1閾値が登録されている。前記第1比較部は、前記取得部が取得した光の強度と前記第1閾値とを比較する。前記第1指令部は、前記取得部が取得した光の強度が前記第1閾値を越える場合には、印刷中止指令を発する。
【0008】
上記インクジェットプリンタは、印刷開始指令を受信すると、光照射装置から光を照射させ、キャリッジに設けられた光センサが受けた光の強度を測定する。光センサは、インクジェットヘッドが設けられたキャリッジに設けられているため、光センサが受ける光の強度は、インクジェットヘッドが受ける光の強度に近いと考えられる。上記インクジェットプリンタでは、光センサによって測定された光の強度が第1閾値を越えている場合には、印刷中止指令が発せられ、印刷が行われない。そのため、インクジェットヘッドが受ける光の強度が過大なためにインクジェットヘッドが破損するおそれを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るプリンタを示す正面図である。
【
図5】印刷の実行可否判定に係るフローチャートである。
【
図6】他の実施形態に係るプリンタを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
図1は、一実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタと呼ぶ)10を示す正面図である。
図2は、プリンタ10の要部の右側面図である。
図1は、フロントカバー12を開けた状態のプリンタ10を示している。以下の説明では、特に断らない限り、プリンタ10を正面から見たときに、プリンタ10から遠ざかる方を前方、プリンタ10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、プリンタ10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味している。図面中の符号Yは主走査方向を示している。主走査方向Yは、ここでは左右方向である。符号Xは、副走査方向を示している。副走査方向Xは、ここでは前後方向である。符号Zは、上下方向を示している。主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zは、互いに直交している。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではなく、本発明を何ら限定するものでもない。
【0012】
本実施形態では、プリンタ10は、インクジェット方式のプリンタである。本実施形態において、「インクジェット方式」とは、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式または圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む従来公知の各種の手法によるインクジェット式のことをいう。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ10は、箱状に形成されている。プリンタ10は、ここでは、ケース11と、フロントカバー12とを備えている。
図1に示すように、ケース11の前部には、開口が形成されている。フロントカバー12は、ケース11の開口を開閉自在に設けられている。ここでは、フロントカバー12は、後端を軸に回転可能なように、ケース11に支持されている。
【0014】
図1および
図2に示すように、プリンタ10の内部空間には、フラットベッド20と、キャリッジ30と、記録ヘッド40と、光照射装置50と、光センサ60と、移動装置70と、高さ検出装置80と、キャッピング装置90と、ワイピング装置95と、制御装置100(
図4参照)とが設けられている。キャッピング装置90およびワイピング装置95は、記録ヘッド40のノズル内のインクを除去して記録ヘッド40をクリーニングするクリーニング機構の一例である。
【0015】
フラットベッド20は、記録媒体5を支持する支持台である。本実施形態に係るプリンタ10は、いわゆる、フラットベッドタイプのプリンタである。フラットベッド20は、平板状の部材である。フラットベッド20の上面には、記録媒体5が載置される。フラットベッド20は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びている。フラットベッド20は、略水平に設けられている。記録媒体5の形状は特に限定されず、平板状の他、様々な立体形状を有していてもよい。記録媒体5の材質も特に限定されず、記録媒体5は、例えば、木、金属、ガラス、紙、布などであってもよい。
【0016】
キャリッジ30には、記録ヘッド40、光照射装置50、および光センサ60が搭載されている。キャリッジ30は、フラットベッド20と対向するように設けられている。キャリッジ30は、フラットベッド20の上方に配置されている。
【0017】
図3は、キャリッジ30の下面の構成を示す平面図である。
図3に示すように、記録ヘッド40は、キャリッジ30の下面に設けられている。記録ヘッド40は、フラットベッド20と対向している。記録ヘッド40は、第1インクジェットヘッド41と、第2インクジェットヘッド42と、第3インクジェットヘッド43とを備えている。
【0018】
図3に示すように、第1インクジェットヘッド41は、それぞれインクを吐出する複数のノズル41aが形成されたノズル面41bを有している。第1インクジェットヘッド41は、ノズル面41bがフラットベッド20に対向するようにキャリッジ30に設けられている。第2インクジェットヘッド42および第3インクジェットヘッド43も、第1インクジェットヘッド41と同様に構成されている。なお、
図3に図示された第1インクジェットヘッド41~第3インクジェットヘッド43のノズルの数はそれぞれ少数であるが、ノズルは実際にはもっと多数(例えば、300個)形成されている。第1インクジェットヘッド41~第3インクジェットヘッド43が備えるノズルの数は特に限定されない。
【0019】
図3に示すように、第1インクジェットヘッド41~第3インクジェットヘッド43は、いずれも副走査方向Xに延びている。第1インクジェットヘッド41~第3インクジェットヘッド43は、主走査方向Yに並んで配置されている。なお、記録ヘッド40が備えるインクジェットヘッドの数は、ここでは3個であるが、特に限定されない。また、複数のインクヘッドの配置も限定されず、例えば、複数のインクヘッドの一部または全部はスタガ配置されていてもよい。
【0020】
本実施形態では、第1インクジェットヘッド41~第3インクジェットヘッド43から吐出されるインクは、いずれも光硬化性インクである。光硬化性インクは、ここでは、紫外線を照射されると硬化する紫外線硬化型のインクである。光硬化性インクの成分、特性等は特に限定されない。
【0021】
光照射装置50は、キャリッジ30に設けられている。ここでは、光照射装置50は、記録ヘッド40の左方に設けられている。光照射装置50は、フラットベッド20に対向するように設けられている。
図3に示すように、光照射装置50は、光源51と照射口52とを備えている。光源51は、インクを硬化させる光を照射する。光源51は、例えば、複数の紫外線照射LEDから構成されている。照射口52は、フラットベッド20に対向するように設けられている。照射口52は、ここでは、光を通過させるカバーが設けられた開口部である。ただし、照射口52は、カバー等に覆われない単なる開口部でもよい。照射口52は、副走査方向Xに延びている。照射口52は、記録ヘッド40と主走査方向Yに並んでいる。光源51が生成する光は、照射口52を通過してフラットベッド20上の記録媒体5に照射される。
【0022】
光センサ60は、フラットベッド20と対向するようにキャリッジ30に設けられている。光センサ60は、キャリッジ30の下面に配置されている。光センサ60は、受けた光の強度を測定するセンサである。
図3に示すように、光センサ60は、ここでは、記録ヘッド40と光照射装置50との間に設けられている。光センサ60は、記録ヘッド40よりも左方かつ光照射装置50よりも右方に配置されている。光センサ60は主として、光照射装置50から照射され、フラットベッド20上の記録媒体5により反射され、光センサ60に到達した光の強度を測定する。光センサ60は、例えば、光照射装置50から照射され光センサ60に直接届く光などがある場合には、そのような光も含めた光の強度を測定する。
【0023】
光の強度は、ここでは、所定の時間当たりに照射される光量(瞬時光量)を意味する。光の強度は、例えば、光の放射照度(単位面積に単位時間当たりに照射される光のエネルギー)によって定義されてもよい。その他、光の強度は、光の放射輝度、放射強度などによって定義されてもよい。光の強度は、測定のたびに同じ測定方法が用いられていればよく、その定義は特に限定されない。なお、光の強度を時間軸に沿って積算すると積算光量が得られる。
【0024】
移動装置70は、フラットベッド20およびキャリッジ30を移動させることによって、フラットベッド20をキャリッジ30に対して移動させるように構成されている。移動装置70は、ここでは、キャリッジ30を主走査方向Yに移動させる主走査方向移動装置70Yと、フラットベッド20を副走査方向Xに移動させる副走査方向移動装置70Xと、フラットベッド20を上下方向Zに移動させる上下方向移動装置70Zと、を備えている。ただし、移動装置70は、フラットベッド20およびキャリッジ30のうちの少なくとも一方を移動させることによって、キャリッジ30に対してフラットベッド20を移動させるように構成されていればよく、フラットベッド20およびキャリッジ30がいずれの方向に移動するか、または移動しないかは限定されない。
【0025】
主走査方向移動装置70Yは、ガイドレール71と、ベルト72と、図示しない左右のプーリと、キャリッジモータ73(
図4参照)とを備えている。
図1に示すように、ガイドレール71は、主走査方向Yに延びている。キャリッジ30は、ガイドレール71に摺動自在に係合している。キャリッジ30には無端状のベルト72が固定されている。ベルト72は、ガイドレール71の右側および左側に設けられたプーリ(図示省略)に巻き掛けられている。一方のプーリにはキャリッジモータ73が取り付けられている。キャリッジモータ73が駆動するとプーリが回転し、ベルト72が走行する。それにより、キャリッジ30がガイドレール71に沿って主走査方向Yに移動する。
【0026】
副走査方向移動装置70Xおよび上下方向移動装置70Zは、フラットベッド20の下方に設けられている。上下方向移動装置70Zは、フラットベッド20を支持して上下方向Zに移動させる。上下方向移動装置70Zは、副走査方向移動装置70Xによって下方から支持されている。副走査方向移動装置70Xは、上下方向移動装置70Zを支持して副走査方向Xに移動させる。
【0027】
高さ検出装置80は、フラットベッド20に支持された記録媒体5のフラットベッド20からの高さを測定する。高さ検出装置80は、ここでは、高さ検出装置80に記録媒体5が接触する/接触しないの境界におけるフラットベッド20の上下方向Zの位置を測定することにより、記録媒体5のフラットベッド20からの高さを測定している。
図2に示すように、高さ検出装置80は、検出板81と、揺動軸82と、センサ83(
図4参照)とを備えている。
図1に示すように、検出板81は、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びる平板状に構成されている。揺動軸82は、検出板81の上方に配置され、主走査方向Yに延びている。揺動軸82は、検出板81を副走査方向Xに揺動可能に支持している。センサ83は、検出板81が鉛直から傾いたことを検出する。センサ83は、例えば、光学式のセンサである。
【0028】
記録媒体5が検出板81に接触し得る高さにフラットベッド20が位置している状態でフラットベッド20を副走査方向Xに移動させると、記録媒体5は検出板81に接触する。この接触により検出板81が鉛直から傾く。センサ83は、この検出板81の傾きを検出する。プリンタ10は、フラットベッド20の高さを段階的に上昇または下降させながら、上記の検出を行うことにより、記録媒体5のフラットベッド20からの高さを測定する。ただし、高さ検出装置80の構成は特に限定されない。高さ検出装置80は、例えば、超音波やレーザーを記録媒体5に照射することにより記録媒体5の高さを測定するものであってもよい。
【0029】
キャッピング装置90は、インクジェットヘッド41~43を保護するとともに、インクジェットヘッド41~43のノズルからインクを吸引する。かかるインクの吸引は、インクジェットヘッド41~43のクリーニングの1つである。インクジェットヘッド41~43のクリーニングとは、ここでは、ノズル内のインクの少なくとも一部を除去する作業を言う。
図1に示すように、キャッピング装置90は、複数のキャップ91と、キャップ移動部92と、吸引ポンプ93とを備えている。複数のキャップ91は、それぞれ、インクジェットヘッド41~43に装着可能に構成されている。キャップ移動部92は、複数のキャップ91を上下方向Zに移動させ、インクジェットヘッド41~43に装着または離反させる。吸引ポンプ93は、キャップ91がインクジェットヘッド41~43に装着された状態でキャップ91内を減圧することにより、ノズル内のインクを吸引する。
【0030】
図2に示すように、ワイピング装置95は、ワイパー96とワイパー移動部97とを備えている。ワイパー91は、非ワイピング時、キャリッジ30よりも後方に配置されている。ワイパー96は、主走査方向Yおよび上下方向Zに延びる平板状に構成されている。ワイパー96は、例えば、ゴムで形成されている。ワイパー移動部97は、ワイパー96を副走査方向Xに移動させ、インクジェットヘッド41~43のノズル面に接触させる。インクジェットヘッド41~43のノズル面は、副走査方向Xに移動するワイパー96により払拭(ワイピング)される。ワイピングは、インクジェットヘッド41~43のクリーニングの1つである。なお、ワイピング装置95の構成は上記に限定されない。ワイピングは、例えば、キャリッジ30が移動することにより行われてもよく、主走査方向Yに進行するように行われてもよい。
【0031】
図4は、プリンタ10のブロック図である。
図4に示すように、制御装置100は、第1インクジェットヘッド41~第3インクジェットヘッド43と、光照射装置50の光源51と、キャリッジモータ73と、副走査方向移動装置70Xと、上下方向移動装置70Zと、キャップ移動部92と、吸引ポンプ93と、ワイパー移動部97と、に接続され、それらの動作を制御している。また、制御装置100は、光センサ60と、高さ検出装置80のセンサ83とに接続され、それらからの信号を受信している。制御装置100は、例えばコンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置100の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。制御装置100の構成は特に限定されない。
【0032】
本実施形態に係るプリンタ10は、光照射装置50により照射され記録媒体5により反射される光によって印刷中にインクジェットヘッド41~43が破損するおそれがあるかどうかを印刷前に判定するように構成されている。プリンタ10は、印刷開始前に実際に記録媒体5に対して光を照射することにより、上記の危険性を判定する。プリンタ10は、印刷中にインクジェットヘッド41~43が破損するおそれがあると判定した場合には印刷を行わない。インクジェットヘッド41~43が受ける光の強度は、光センサ60によって測定される光の強度と概ね等しいと想定されている。
【0033】
図4に示すように、制御装置100は、データ受信部101と、セットアップ制御部102と、印刷制御部103と、照射指令部104と、第1強度登録部105と、第2強度登録部106と、光量取得部107と、第1閾値登録部108と、第1比較部109と、第1中止指令部110と、積算光量推定部111と、第2閾値登録部112と、第2比較部113と、第2中止指令部114と、第3閾値登録部115と、第3比較部116と、クリーニング制御部117と、を備えている。制御装置100は、他の制御部を備えていてもよいが、ここでは説明および図示を省略する。
【0034】
データ受信部101は、印刷データおよび印刷開始指令を受信するように構成されている。印刷データおよび印刷開始指令は、例えば、プリンタ10に接続された外部機器から送信される。ただし、印刷開始指令は、プリンタ10の操作パネル等を操作することにより発せられてもよい。印刷データは、プリンタ10に記憶されたものであってもよい。
【0035】
セットアップ制御部102は、データ受信部101が印刷開始指令を受信した後であって印刷が開始される前に所定のセットアップ動作を行う。セットアップ動作は、ここでは、フラットベッド20の高さ設定を含んでいる。
【0036】
印刷制御部103は、プリンタ10の印刷動作を制御する。印刷制御部103は、印刷データに基づき、インクジェットヘッド41~43を制御して複数のノズルからインクを吐出させることによって、フラットベッド20に支持された記録媒体5にインクを着弾させる。印刷制御部103は、さらに、光照射装置50を制御して光を照射させることによって、着弾したインクを硬化させる。第1強度登録部105には、印刷制御部103が光照射装置50に照射させる光の強度(以下、「印刷時強度」とも呼ぶ)が登録されている。
【0037】
照射指令部104は、データ受信部101が印刷開始指令を受信した後に、光照射装置50を制御して光を照射させる。照射指令部104による印刷前の光の照射は、記録ヘッド40に届く記録媒体5からの反射光の強度を確認するためのものである。以下、この照射指令部104による印刷前の光の照射を「テスト照射」とも呼ぶ。第2強度登録部106には、照射指令部104が光照射装置50に照射させる光の強度(以下、「テスト強度」とも呼ぶ)が登録されている。テスト強度は、印刷時強度よりも弱く設定されている。
【0038】
光量取得部107は、照射指令部104が光照射装置50に光を照射させているときに、光センサ60が測定した光の強度を取得する。第1閾値登録部108には、光量取得部107が取得する光の強度に関する第1閾値V1(
図5参照)が登録されている。第1比較部109は、光量取得部107が取得した光の強度と第1閾値V1とを比較する。第1中止指令部110は、光量取得部107が取得した光の強度が第1閾値V1を越える場合には、印刷中止指令を発する。
【0039】
積算光量推定部111は、光量取得部107が取得した光の強度と印刷データとに基づいて、印刷開始から印刷終了までに光センサ60が受ける光の積算量を推定する。以下、この推定された積算光量を推定積算光量とも呼ぶ。第2閾値登録部112には、推定積算光量に関する第2閾値V2(
図5参照)が登録されている。第2比較部113は、積算光量推定部111によって推定された推定積算光量と第2閾値V2とを比較する。第2中止指令部114は、積算光量推定部111によって推定された推定積算光量が第2閾値V2を越える場合には、印刷中止指令を発する。
【0040】
第3閾値登録部115には、推定積算光量に関する第3閾値V3(
図5参照)が登録されている。第3閾値V3は、第2閾値V2よりも小さく設定されている。第3比較部116は、積算光量推定部111によって推定された推定積算光量と第3閾値V3とを比較する。クリーニング制御部117は、積算光量推定部111によって推定された推定積算光量が第2閾値V2以下であって第3閾値V3を越える場合には、印刷開始前にクリーニング機構としてのキャッピング装置90およびワイピング装置95にインクジェットヘッド41~43のクリーニングを行わせる。
【0041】
以下では、プリンタ10が行う印刷の実行可否判定について説明する。
図5は、印刷の実行可否判定に係るフローチャートである。ただし、
図5に示すフローチャートは、印刷の実行可否判定の好適な一例を示すものに過ぎず、印刷の実行可否判定のプロセスを限定するものではない。
図5に示すように、印刷の実行可否判定のステップS01では、印刷データおよび印刷開始指令が受信される。ステップS02では、印刷前のセットアップ動作の1つとしてフラットベッド20の高さが設定される。フラットベッド20の高さ設定は、記録ヘッド40と記録媒体5との間のギャップを記録媒体5の厚さに合わせて適切な距離に設定するための作業である。なお、セットアップ動作では、フラットベッド20の高さ設定以外の動作が行われてもよいが、図示および説明は省略する。
【0042】
フラットベッド20の高さ設定では、記録媒体5の高さが測定される。記録媒体5の高さ測定では、フラットベッド20を段階的に上昇させ、上昇させるたびに副走査方向Xに移動させる。記録媒体5が検出板81に接触することによりセンサ83が反応すると、プリンタ10は、フラットベッド20を小刻みに、または低速で降下させながら副走査方向Xに移動させる。これにより、記録媒体5の高さが測定される。フラットベッド20の高さは、記録媒体5の高さの測定結果に基づいて設定される。印刷時には、ステップS02で設定されたフラットベッド20の高さが維持される。
【0043】
ステップS03では、テスト照射が行われる。テスト照射は、フラットベッド20をステップS02で設定された高さに位置付けた状態で行われる。フラットベッド20の高さによって記録媒体5による反射光の態様は変化すると考えられるため、これにより、印刷時に近い条件でテスト照射を行うことができる。ただし、テスト照射時に光照射装置50が照射する光の強度であるテスト強度は、印刷時強度よりも弱く設定されている。
【0044】
本実施形態に係るテスト照射では、プリンタ10は、まず、フラットベッド20を停止させた状態でキャリッジ30を主走査方向Yに移動させながら、光照射装置50に光を照射させる。次いで、フラットベッド20を副走査方向Xに移動させることにより、キャリッジ30に対するフラットベッド20の副走査方向Xの位置を変更する。さらに、変更後の副走査方向Xの位置でキャリッジ30を主走査方向Yに移動させながら、光照射装置50に光を照射させる。上記は、キャリッジ30がフラットベッド20上の印刷エリア全体の上方を通過するまで繰り返される。その間、光照射装置50からは連続的に光が照射されている。
【0045】
テスト照射では、光センサ60が受けた光の強度が随時測定されている。光センサ60が受ける光は、主として、光照射装置50によって照射された光の記録媒体5による反射光である。プリンタ10は、ここでは、光センサ60が測定した光の強度を予め定められた時間間隔で取得する。この間キャリッジ30が移動されているため、プリンタ10には、フラットベッド20上の測定地点が異なる複数のデータが取得される。本実施形態では、プリンタ10は、フラットベッド20上の印刷エリア全体にわたって反射光の強度を取得する。
【0046】
光照射装置50によって照射された光の記録媒体5による反射光の強度は、記録媒体5の種類によって異なり得る。また、記録媒体5が立体形状を有している場合などには、記録媒体5による反射光の強度は、記録媒体5のフラットベッド20上での姿勢によっても変わり得、測定地点によっても異なり得る。本実施形態では、記録媒体5による反射光の強度が測定地点によって異なり得ることから、光センサ60を搭載したキャリッジ30に対して記録媒体5を支持するフラットベッド20を移動させ、フラットベッド20上の印刷エリア全体にわたって反射光の強度を取得している。
【0047】
続くステップS04では、光センサ60がフラットベッド20上の複数の地点でそれぞれ測定した複数の光の強度のうち最も強度が大きいデータが選択される。以下、この最も大きい光の強度をピーク強度P1とも呼ぶ。本実施形態では、プリンタ10は、光センサ60が測定した複数の光の強度の代表値として、ピーク強度P1を選択する。この後のステップにおいて第1閾値V1、第2閾値V2、および第3閾値V3と比較される「光量取得部107が取得した光の強度」とは、上記のように、複数の強度の代表値であってもよい。本実施形態では、反射光によってインクが増粘または硬化することにより記録ヘッド40に発生し得る不具合をできるだけ確実に防止する観点から、複数の光の強度の代表値としてピーク強度P1を選択している。ただし、プリンタ10は、複数の光の強度の代表値として、平均値や中央値を使用するように構成されていてもよい。
【0048】
ステップS05では、ステップS04において得られたピーク強度P1が第1閾値V1を越えるかどうかが判定される。ピーク強度P1が第1閾値V1を越える場合(ステップS05の結果がYESの場合)、プリンタ10は印刷中止指令を発し、印刷は開始されない(ステップS11)。このような場合、例えば、記録媒体5の載置状態(例えば載置角度)を変えればピーク強度P1が第1閾値V1以下となる可能性があるため、ユーザーは、記録媒体5の載置状態を変更した後、再度印刷開始を指令してみてもよい。
【0049】
第1閾値V1は、印刷中に反射光によってインクジェットヘッド41~43が破損するおそれがあるかどうかに基づいて設定されている。ピーク強度P1が第1閾値V1を越えると、印刷中に反射光によってインクジェットヘッド41~43が破損するおそれがあるため、印刷が開始されない。テスト強度が印刷時強度のA%である場合、第1閾値V1は、印刷時にインクジェットヘッド41~43を破損させるおそれのある光の強度のA%、またはその近辺に設定されるとよい。反射光の強度は、光照射装置50が照射する光の強度に概ね比例する。そのため、上記のような換算が可能である。
【0050】
ピーク強度P1が第1閾値V1以下の場合(ステップS05の結果がNOの場合)、ステップS06において推定積算光量Q1が演算される。推定積算光量Q1は、例えば、印刷データの量から印刷に要する時間を推定し、それにピーク強度P1を積算することによって算出されてもよい。ただし、推定積算光量Q1は、例えば、推定の印刷時間に複数の光の強度のデータの平均値や中央値を積算することによって算出されてもよい。推定積算光量Q1の算出方法は特に限定されない。
【0051】
続くステップS07では、ステップS06において得られた推定積算光量Q1が第2閾値V2を越えるかどうかが判定される。推定積算光量Q1が第2閾値V2を越える場合(ステップS07の結果がYESの場合)、プリンタ10は印刷中止指令を発し、印刷は開始されない(ステップS11)。
【0052】
第2閾値V2は、印刷中に反射光によってインクジェットヘッド41~43が破損するおそれがあるかどうかに基づいて設定されている。推定積算光量Q1が第2閾値V2を越えると、印刷中に反射光によってインクジェットヘッド41~43が破損するおそれがあるため、印刷が開始されない。テスト強度が印刷時強度のA%である場合、第2閾値V2は、印刷時に記録ヘッド40を破損させるおそれのある積算光量のA%、またはその近辺に設定されるとよい。
【0053】
推定積算光量Q1が第2閾値V2以下の場合(ステップS07の結果がNOの場合)、ステップS08において、推定積算光量Q1が第3閾値V3を越えるかどうかが判定される。第3閾値V3は、印刷開始から完了までの積算光量についての閾値であって、印刷前に予めインクジェットヘッド41~43のクリーニングを行っておくべきか否かを判定する閾値である。推定積算光量Q1が第3閾値V3を越える場合(ステップS08の結果がYESの場合)、ステップS09でインクジェットヘッド41~43のクリーニングが行われる。クリーニングは、例えば、キャッピング装置90によるインクの吸引や、ワイピング装置95によるワイピングなどを含んでいる。ただし、ノズル内の少なくとも一部のインクを除去する限りにおいてクリーニングの内容は特に限定されない。その後、ステップS10において印刷が開始される。推定積算光量Q1が第3閾値V3以下の場合(ステップS08の結果がNOの場合)、ステップS10において印刷が開始される。
【0054】
図示は省略するが、本実施形態では、プリンタ10は、印刷が開始された後も、光センサ60が受けた光の強度を予め定められた時間間隔で取得する。プリンタ10は、印刷中に取得した光の強度が第4の閾値を越えた場合には、印刷を中止する。第4の閾値は、ここでは、印刷中強度とテスト強度との比に基づいて第1閾値V1が換算された強度である。取得された光の強度が第4の閾値を越えた場合には、インクジェットヘッド41~43が破損するおそれがあるため、印刷は中断され、クリーニング動作を実行後に再開される。ただし、取得された光の強度が第4の閾値を越えた場合には、印刷が中止されてもよい。取得された光の強度が第4の閾値を越えることは基本的にないが、プリンタ10は、不測の事態に備えて、このように構成されていてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、プリンタ10は、印刷が開始された後も、光センサ60が受けた光の積算光量を算出する。この積算光量は、前回のインクジェットヘッド41~43のクリーニング時を起点とする積算光量であるとよい。プリンタ10は、積算光量が第5の閾値を越えた場合には、印刷を中断し、クリーニング動作を実行した後に印刷を再開する。ただし、積算光量が第5の閾値を越えた場合には、印刷が中止されてもよい。第5の閾値は、ここでは、印刷中強度とテスト強度との比に基づいて第2閾値V2が換算された強度である。
【0056】
さらに、本実施形態では、プリンタ10は、印刷終了までに光センサ60が受けた光の強度のうちの最大値が第6の閾値を越えた場合には、印刷後にインクジェットヘッド41~43のクリーニングを実行する。第6の閾値は、第4の閾値よりも小さく設定されている。第6の閾値は、印刷を中止する必要はない場合に印刷後のクリーニングが必要かどうかを判定する閾値である。
【0057】
また、本実施形態では、プリンタ10は、印刷終了時点で光センサ60が受けた光の積算光量が第7の閾値を越えた場合には、印刷後にインクジェットヘッド41~43のクリーニングを実行する。第7の閾値は、第5の閾値よりも小さく設定されている。第7の閾値は、次回の印刷において積算光量が第5の閾値を越える可能性が高いかどうかを判定する閾値である。
【0058】
[実施形態の作用効果]
特許文献1に示されているように、従来の技術では、光センサにより測定された積算光量に基づいてインクジェットヘッドをクリーニングすることより、インクジェットヘッドが破損する危険性を低減している。しかし、特許文献1に開示されたインクジェットプリンタでは、短時間でインクを硬化させるような強い反射光がインクジェットヘッドに照射されることは想定されていない。インクジェットヘッドに照射される光の強度が過度に大きいと、短時間の照射でもインクが増粘または硬化してインクジェットヘッドを破損させるおそれがある。
【0059】
そこで、本実施形態に係るプリンタ10は、印刷開始指令の受信後に光照射装置50に光を照射させ、キャリッジ30に設けられた光センサ60が受けた光の強度を取得するように構成されている。プリンタ10は、さらに、取得された光の強度が第1閾値V1を越える場合には、印刷中止指令を発し、印刷を行わないように構成されている。そのため、インクジェットヘッド41~43が過度の強度の光を受けて破損するおそれを低減できる。
【0060】
また、特許文献1に示されている従来のインクジェットプリンタでは、光センサが受ける光の積算光量は、印刷中に取得される。そのため、印刷中に積算光量が閾値に達し、印刷を中止しなければならない場合が起こり得る。印刷を途中で中止すると、インクおよび記録媒体が浪費され、それまでの印刷時間も無駄になる。印刷中に積算光量が閾値に達しても印刷を継続することも可能であるが、その場合にはインクジェットヘッドが破損する危険性が高まる。それに対し、本実施形態に係るプリンタ10では、印刷開始前に印刷を開始するかどうかの判定が行われる。よって、印刷を途中で中止しなければならない場合を少なくすることができる。
【0061】
また、本実施形態では、テスト照射における光の強度であるテスト強度は、印刷における光の強度である印刷時強度よりも弱く設定されている。そのため、テスト照射時の反射光を受けることによってインクジェットヘッド41~43のインクが増粘または硬化する危険が低減される。
【0062】
本実施形態では、光の強度は複数の地点で取得されている。光照射装置50によって照射された光の反射光の強度は記録媒体5上の測定地点によって異なり得るが、かかる構成によれば、複数の地点で光の強度が取得されているため、測定地点による光の強度のばらつきによって印刷開始の可否の判定が適切に行われないおそれを低減できる。
【0063】
なお、照射指令部104は、移動装置70を制御してフラットベッド20をキャリッジ30に対して複数の地点に位置付ければよく、フラットベッド20とキャリッジ30との間の相対移動の手順は限定されない。照射指令部104は、少なくともフラットベッド20がキャリッジ30に対して上記した複数の地点に位置付けられたときに光照射装置50に光を照射させればよく、連続的に光を照射させなくてもよい。テスト照射における光の照射は連続的なものに限定されない。光量取得部107は、フラットベッド20がキャリッジ30に対して上記複数の地点に位置付けられたときに光センサ60が測定した複数の光の強度を取得すればよい。「複数の地点」は、主走査方向Yおよび副走査方向Xの座標が予め定められた地点であってもよく、本実施形態のように、フラットベッド20とキャリッジ30との間の相対移動、および、間欠的な光の強度の取得の結果として定まるものであってもよい。複数の地点の数および場所は特に限定されない。
【0064】
本実施形態に係るプリンタ10は、推定積算光量Q1が第2閾値V2を越える場合には印刷中止指令を発するように構成されている。かかる構成によれば、光の強度に基づく印刷開始の可否判定だけでなく、推定された積算光量に基づく印刷開始の可否判定も行われる。そのため、反射光を受けることによりインクジェットヘッド41~43が破損するおそれをさらに低減できる。
【0065】
本実施形態に係るプリンタ10は、推定積算光量Q1が第2閾値V2以下であって第3閾値V3を越える場合には、印刷前にクリーニング機構としてのキャッピング装置90およびワイピング装置95にインクジェットヘッド41~43のクリーニングを行わせるように構成されている。かかる構成によれば、推定積算光量Q1が第2閾値V2を越えず印刷を中止するほどではないが推定積算光量Q1が比較的大きい(第3閾値V3を超える)場合に、インクジェットヘッド41~43のクリーニングが印刷前に行われる。そのため、印刷中のインクジェットヘッド41~43の破損のおそれを低減することができる。
【0066】
さらに、本実施形態では、印刷中にも光センサ60が受ける光の強度の取得および積算光量の算出が行われ、それぞれ所定の閾値を越えた場合には印刷が中断または中止される。そのため、不測の事態で光の強度または積算光量が大きくなることにより、印刷中にインクジェットヘッド41~43が破損するおそれを低減することができる。また、本実施形態では、印刷中に光センサ60が受けた光の強度の最大値の算出および積算光量の算出が印刷終了後に行われ、それぞれ所定の閾値を越えた場合には、インクジェットヘッド41~43のクリーニングが行われる。そのため、次の印刷においてインクジェットヘッド41~43が破損するおそれを低減することができる。
【0067】
[他の実施形態]
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、本発明のインクジェットプリンタは、上記した実施形態に限定されない。例えば、上記した実施形態では、プリンタ10はフラットベッドタイプのプリンタであったが、それには限定されない。
図6は、他の実施形態に係るプリンタ15を示す斜視図である。
図6に示すように、プリンタ15は、副走査方向Xおよび主走査方向Yに延びるプラテン25と、プラテン25に支持された記録媒体5を副走査方向Xに搬送する搬送装置75Xと、キャリッジ35を主走査方向Yに移動させるキャリッジ移動装置75Yと、キャリッジ35に設けられたインクジェットヘッド45と、インクを硬化させる光を照射する光照射装置55と、プラテン25と対向するようにキャリッジ35に設けられ、受けた光の強度を測定する光センサ65と、を備えたプリンタであってもよい。プリンタ15は、シート状の記録媒体5に印刷を行う、いわゆるロール・トゥー・ロールタイプのプリンタである。プリンタ15は、さらに、プラテン25に支持された記録媒体5の端部の位置を検出可能な端部検出装置85を備えていてもよい。端部検出装置85は、キャリッジ35に設けられていてもよい。端部検出装置85は、例えば、記録媒体5とプラテン25との境界を撮影するカメラを含んでいる。ただし、端部検出装置85の構成は特に限定されない。
【0068】
かかるプリンタ15では、セットアップ動作は、キャリッジ移動装置75Yによってキャリッジ35を主走査方向Yに移動させながら端部検出装置85を動作させることにより記録媒体5の主走査方向Yの端部の位置を検出する動作を含んでいてもよい。かかるセットアップ動作によって記録媒体5の幅が認識される。
【0069】
本実施形態では、照射指令部104(
図4参照)は、セットアップ動作が実行されている時間内に光照射装置55に光を照射させ、テスト照射を行うように構成されている。詳しくは、照射指令部104は、端部検出装置85が記録媒体5の主走査方向Yの端部の位置を検出する動作を行っているときに光照射装置55に光を照射させる。光量取得部107(
図4参照)は、記録媒体5の主走査方向Yの端部の位置が検出されている途中であってキャリッジ35が主走査方向Yの異なる複数の地点に位置しているときに光センサ65が測定した複数の光の強度を取得する。
【0070】
かかるプリンタ15によれば、セットアップ動作中にテスト照射が行われるため、印刷開始までの時間を節減することができる。また、キャリッジ35を主走査方向Yに移動させながら記録媒体5の主走査方向Yの幅を検出しているときにテスト照射を行うことにより、キャリッジ35に特別な動きをさせることなく主走査方向Yの異なる複数の地点で反射光の強度を取得することができる。
【0071】
その他、特に言及がない限り、上記した実施形態は本発明を限定しない。例えば、上記した実施形態では、光センサ60または65の数量は1つであったが、複数でもよい。光センサの位置も、記録媒体の支持台に対向するようにキャリッジに設けられていることを除き限定されない。例えば、複数の光センサは、複数のインクジェットヘッドと主走査方向に交互に並ぶように配置されてもよい。
【0072】
インクジェットプリンタの構成は特に限定されない。例えば、インクジェットプリンタは、キャリッジが移動しないラインヘッド方式のプリンタであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
10 インクジェットプリンタ
20 フラットベッド(支持台)
30 キャリッジ
41~43 インクジェットヘッド
50 光照射装置
60 光センサ
100 制御装置