(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】導電性ペースト組成物、その応用、結晶シリコン太陽電池電極及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20241220BHJP
H01L 31/068 20120101ALI20241220BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
H01L31/04 264
H01L31/06 300
H01B1/22 A
(21)【出願番号】P 2022552788
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 CN2022080059
(87)【国際公開番号】W WO2023115716
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】202111558682.4
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】524238442
【氏名又は名称】東莞索特電子材料有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】522348664
【氏名又は名称】浙江索特材料科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パウロ・ディー ウェヌイ
(72)【発明者】
【氏名】郭 起潔
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113409986(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110407467(CN,A)
【文献】特開2013-179038(JP,A)
【文献】特表2013-531863(JP,A)
【文献】特開2007-281023(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0346371(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0144920(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107746184(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107089798(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ペースト組成物であって、
前記導電性ペースト組成物の全固形物の0.5wt%~10wt%を占める鉛-ホウ素-セレンガラスフリットと、
銀単体、銀合金及び銀塩から選択される1種又は複数種の混合物であり、前記全固形物の87wt%~99wt%を占める導電性成分と、
前記全固形物の0.5wt%~3wt%を占めるアルミニウム単体成分と、
有機媒体と、を含み、
前記鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、前記鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、少なくとも、50wt%~85wt%のPbO、2wt%~34wt%のB
2O
3及び0.1wt%~16wt%のSeO
2を含有する、
導電性ペースト組成物。
【請求項2】
前記鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、前記鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、0.1wt%~25wt%の添加剤をさらに含有し、前記添加剤は、PbF
2、SiO
2、Bi
2O
3、BiF
3、AgO
2、Ag
2O、AgO、ZnO、MgO、CaO、Al
2O
3、Li
2O、Na
2O、K
2O、Rb
2O、Ce
2O及びFe
2O
3からなる群から選択されるいずれか1種又は複数種である、
請求項1に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項3】
前記鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、前記鉛-ホウ素-セレンガラスフリット中のSeO
2の含有量は、2wt%~10wt%である、
請求項1に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項4】
前記鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、前記鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、1.2wt%以下のTeO
2を含有するか、又は如何なる形態のテルル元素も含有しない、
請求項1に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項5】
前記鉛-ホウ素-セレンガラスフリットに含有される鉛-ホウ素-セレン酸化物は、完全非晶質状態であり、又は前記鉛-ホウ素-セレンガラスフリットに含有される鉛-ホウ素-セレン酸化物は、一部が非晶質状態であり、他の一部が結晶状態である、
請求項1に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の導電性ペースト組成物のn型結晶シリコン太陽電池における
使用であって、前記導電性ペースト組成物は、前記n型結晶シリコン太陽電池のパッシベーション膜をエッチングして貫通し、前記n型結晶シリコン太陽電池のp型ドープされたエミッタとで電気的接続をなす導電性構造を形成する、
導電性ペースト組成物のn型結晶シリコン太陽電池における
使用。
【請求項7】
n型結晶シリコン基板、前記n型結晶シリコン基板の表面に設けられたp型ドープされたエミッタ、及び前記p型ドープされたエミッタの表面に堆積されたパッシベーション膜を有する半導体基材を提供するステップと、
請求項1に記載の導電性ペースト組成物をパターンの形態で前記パッシベーション膜の少なくとも一部の表面に塗布するステップと、
前記半導体基材及び前記導電性ペースト組成物を焼結し、前記導電性ペースト組成物が焼結過程において前記パッシベーション膜をエッチングして貫通し、前記p型ドープされたエミッタとで電気的接続をなす導電性構造を形成することにより、n型結晶シリコン太陽電池電極を得るステップと、を含む、
n型結晶シリコン太陽電池電極の製造方法。
【請求項8】
n型結晶シリコン基板、前記n型結晶シリコン基板の表面に設けられたp型ドープされたエミッタ、及び前記p型ドープされたエミッタの表面に堆積された少なくとも1層のパッシベーション膜を有する半導体基材と、
前記パッシベーション膜の少なくとも一部を貫通し、かつ前記p型ドープされたエミッタとで電気的接続をなし、請求項1に記載の導電性ペースト組成物で形成される導電性構造と、を含む、
n型結晶シリコン太陽電池電極。
【請求項9】
n-PERT太陽電池電極又はn-TOPCon太陽電池電極である、
請求項8に記載のn型結晶シリコン太陽電池電極。
【請求項10】
導電性ペースト組成物であって、
前記導電性ペースト組成物の全固形物の0.5wt%~10wt%を占めるビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットと、
銀単体、銀合金及び銀塩から選択される1種又は複数種の混合物であり、前記全固形物の87wt%~99wt%を占める導電性成分と、
前記全固形物の0.5wt%~3wt%を占めるアルミニウム単体成分と、
有機媒体と、を含み、
前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、少なくとも、50wt%~90wt%のBi
2O
3、2wt%~35wt%のB
2O
3及び0.1wt%~15wt%的SeO
2を含有する、
導電性ペースト組成物。
【請求項11】
前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット的乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット中のSeO
2の含有量は、2wt%~12wt%である、
請求項10に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項12】
前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット的乾燥重量的総重量に基づいて計算すると、前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、0.1wt%~5wt%のLi
2Oをさらに含有し、及び/又は
前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、0.1wt%~5wt%のNa
2Oをさらに含有し、及び/又は前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、0.1wt%~20wt%のZnOをさらに含有する、
請求項10に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項13】
前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、0.1wt%~25wt%の添加剤をさらに含有し、前記添加剤は、SiO
2、BiF
3、AgO
2、Ag
2O、AgO、ZnO、MgO、CaO、Al
2O
3、Li
2O、Na
2O、K
2O、Rb
2O、Ce
2O及びFe
2O
3からなる群から選択されるいずれか1種又は複数種である、
請求項12に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項14】
前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、1.2wt%以下のTeO
2を含有するか、又は如何なる形態のテルル元素も含有しない、
請求項10に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項15】
前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットに含有されるビスマス-ホウ素-セレン酸化物は、完全非晶質状態であり、又は前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットに含有されるビスマス-ホウ素-セレン酸化物は、一部が非晶質状態であり、他の一部が結晶状態である、
請求項10に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項16】
請求項10に記載の導電性ペースト組成物のn型結晶シリコン太陽電池における
使用であって、前記導電性ペースト組成物は、前記n型結晶シリコン太陽電池のパッシベーション膜をエッチングして貫通し、前記n型結晶シリコン太陽電池のp型ドープされたエミッタとで電気的接続をなす導電性構造を形成する、
導電性ペースト組成物のn型結晶シリコン太陽電池における
使用。
【請求項17】
n型結晶シリコン基板、前記n型結晶シリコン基板の表面に設けられたp型ドープされたエミッタ、及び前記p型ドープされたエミッタの表面に堆積された少なくとも1層のパッシベーション膜を有する半導体基材を提供するステップと、
請求項10に記載の導電性ペースト組成物をパターンの形態で前記パッシベーション膜の少なくとも一部の表面に塗布するステップと、
前記半導体基材及び前記導電性ペースト組成物を焼結し、前記導電性ペースト組成物が焼結過程において前記パッシベーション膜をエッチングして貫通し、前記p型ドープされたエミッタとで電気的接続をなす導電性構造を形成することにより、n型結晶シリコン太陽電池電極を得るステップと、を含む、
n型結晶シリコン太陽電池電極の製造方法。
【請求項18】
n型結晶シリコン基板、前記n型結晶シリコン基板の表面に設けられたp型ドープされたエミッタ、及び前記p型ドープされたエミッタの表面に堆積された少なくとも1層のパッシベーション膜を有する半導体基材と、
前記パッシベーション膜の少なくとも一部を貫通し、かつ前記p型ドープされたエミッタとで電気的接続をなし、請求項10に記載の導電性ペースト組成物で形成される導電性構造と、を含む、
n型結晶シリコン太陽電池電極。
【請求項19】
n-PERT太陽電池電極又はn-TOPCon太陽電池電極である、
請求項18に記載のn型結晶シリコン太陽電池電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2021年12月20日に中国国家知識産権局に提出された、発明の名称を「導電性ペースト組成物、その製造方法、応用及び結晶シリコン太陽電池」とする中国特許出願第202111558682.4号の優先権を主張するものであり、その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本願は、光起電力デバイスの技術分野に関し、具体的には、導電性ペースト組成物、その製造方法、応用及び結晶シリコン太陽電池に関する。
【背景技術】
【0003】
太陽電池は、太陽エネルギーを直流エネルギーに変換するために用いられ、その基本構造は、p型半導体とn型半導体で形成されたpn接合を有するものである。より具体的には、太陽電池の一種類であるn型結晶シリコン太陽電池は、n型ドープされたシリコンウェハ(例えば、リンドープされたシリコンウェハ)を基板とし、ドープ法(例えば、ホウ素ドープを用いる)によってその表面にp型ドープされた半導体を形成することにより、pn接合を形成する。当該p型ドープされた半導体は、p型エミッタ(p-Type emitter)とも呼ばれる。当該p型エミッタの表面に少なくとも一層のパッシベーション膜(Passivation film)、例えば、Al2O3又はSiNxなどが堆積される。当該パッシベーション膜は、パッシベーション及び反射防止の効果を果たし、太陽電池の光電変換効率を最大化する。次に、金属化により、p型エミッタとで導電性金属接点の形態をなす電極になるように構成することにより、光電変換により生成された電流を外部回路負荷に導くことができる。
【0004】
結晶シリコン太陽電池セルを製造するときに、電池セルの表裏面を金属化(Metallization)する必要がある。電池セルの前面(受光面)の金属化において、一般的に、スクリーン印刷法を用いて導電性金属ペーストを所望のパターンでパッシベーション膜の表面に印刷し、次に高温焼結により、当該導電性金属ペーストがパッシベーション膜をエッチングして貫通し、さらにエミッタとで電気的接触をなすようにすることにより、導電性金属接点の形態で存在する導電性構造(又は電極と呼ばれる)を形成する。当該電極の電気的接触品質は、電気的接触抵抗及び金属化によるキャリア再結合を含み、これは太陽電池の光電変換効率に直接的に影響を及ぼす。一般的に電極を形成するための導電性金属ペーストは、導電性物質(例えば、銀粒子)と、ガラスフリットと、印刷用ビヒクルとして機能する有機媒体とを含む。低抵抗のオーミック接触を実現するために、p型半導体に接触するための導電性金属ペーストにアルミニウム粉末をさらに添加する場合がある。
【0005】
導電性金属ペースト及びp型半導体が良好な電気的接触をなし、キャリア再結合のバランスをとるために、当該導電性金属ペーストは、高温焼結時に、パッシベーション膜のエッチング程度を合理的なレベルに制御する必要がある。エッチング程度が不足すれば、パッシベーション膜を貫通することができず、それにより導電性金属ペーストがp型半導体とでオーミック接触をなすことができない。エッチング程度が大きすぎると、過剰なエッチングによりキャリア再結合が大幅に増加し、電池の開放電圧の損失をもたらし、さらに光電変換効率に影響を及ぼす。
【0006】
導電性金属ペーストの重要な構成成分の1つとして、ガラスフリットは、主にパッシベーション膜をエッチングするように機能するため、ガラスフリットの構成成分も、金属化された結晶シリコン太陽電池セルの変換効率に直接的に影響を及ぼす。
【0007】
現在、p型半導体に接触する導電性金属ペーストのガラスフリットは、一般的に、鉛酸化物、ホウ素酸化物及びシリコン酸化物を含有する鉛-ホウ素-シリコンガラスフリットである。当該鉛-ホウ素-シリコンガラスフリットは、高いガラス転移温度(Glass transition temperature、Tg点)を有するため、結晶シリコン太陽電池の高温急速焼成に対して不利である。鉛-ホウ素-シリコンガラスフリットのTg点を低下させるために、一般的な方法は、融点の高いホウ素元素の含有量の低減、溶融機能(Flux)を有する元素(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属)の含有量の増加、又はタリウム元素(Tl)の添加などを含む。しかしながら、ホウ素元素の含有量が低すぎると、ガラスフリットは、非晶質状態を維持しにくく、かつ晶析しやすい。そして、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属の含有量が高すぎると、Tg点を低下させることができるが、それらの高い腐食性能のため、光起電力デバイスの効率に影響を及ぼす。また、タリウム元素は、Tg点を効果的に低下させることができるが、毒性が高い元素であり、人体に有害であり、かつ環境を汚染する。したがって、p型半導体に接触するためのアルミニウム粉末を含有する導電性ペースト(又は導電剤と呼ばれる)に対し、Tgを効果的に低下させることができるガラス形成剤を見つける必要がある。例えば、p型結晶シリコン電池(p-Type solar cell)技術について、例えば、エミッタ及び裏面がパッシベーションされた太陽電池(Passivated emitter and rear cell、p-PERC)又はエミッタ及び裏面がパッシベーションされかつ選択拡散型の電池(Passivated emitter and rear cell-selective emitter、p-PERC-SE)に対して、テルル元素は、非常に効果的なガラス形成剤であると既に証明されているが、テルル酸化物は、p型半導体に接触するための導電性金属ペースト中のアルミニウム粉末を酸化することができるため、オーミック接触に影響を及ぼし、光起電力デバイスの効率を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記欠陥を克服するために、本願のいくつかの実施例は、焼結過程においてn型結晶シリコン太陽電池のp型ドープ半導体(以下、p型半導体と略称する)と電気的接触をなすことができる導電性ペースト組成物、その製造方法、応用及び結晶シリコン太陽電池電極、又はn型結晶シリコン太陽電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願のいくつかの実施例は、以下の技術的解決手段を用いる。
【0010】
[第1種の導電性ペースト、その製造方法及び応用]
本願のいくつかの実施例によれば、n型結晶シリコン太陽電池のp型半導体と電気的接続をなすための第1種の導電性ペースト組成物を提供する。
【0011】
当該第1種の導電性ペースト組成物は、
(1)上記導電性ペースト組成物の全固形物の0.5%~10%(重量百分率)を占める鉛-ホウ素-セレンガラスフリットと、
(2)導電性ペースト組成物の全固形物の87%~99%(重量百分率)を占める導電性成分と、
(3)導電性ペースト組成物の全固形物の0.5%~3%(重量百分率)を占めるアルミニウム単体成分と、
(4)有機媒体と、を含む。
【0012】
鉛-ホウ素-セレンガラスフリット、導電性成分、アルミニウム単体成分は、導電性ペースト組成物の全固形物とし、三者の重量百分率の和が100%であるが、有機媒体が後の処理過程において熱分解されるため、有機溶剤の含有量は単独で計算され、上記100%内に含まれない。鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、鉛-ホウ素-セレン-酸化物に基づく固体であり、n型結晶シリコン太陽電池におけるパッシベーション膜をエッチングすることにより、p型半導体と電気的接続をなすために少なくとも用いられる。導電性成分は、焼結後に、p型半導体と電気的接続のための銀アルミニウム電極を形成する。有機媒体は、上記固形物を分散させ、印刷性能を提供するために用いられる。
【0013】
いくつかの実施例において、本願の導電性ペースト組成物及び鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、如何なる形態のテルル元素(Te)、例えばTeO2なども含有しない。
【0014】
他のいくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、1.2wt%以下のTeO2を含有しない。
【0015】
いくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、少なくとも50%~85%のPbO、2%~34%のB2O3及び0.1%~16%のSeO2を含有する。当該百分率は、重量比(wt%)である。
【0016】
他のいくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、0.1%~25%の添加剤をさらに含有してもよい。添加剤は、PbF2、SiO2、Bi2O3、BiF3、AgO2、Ag2O、AgO、ZnO、MgO、CaO、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Ce2O及びFe2O3からなる群から選択されるいずれか1種又は複数種である。鉛-ホウ素-セレンガラスフリットが添加剤を含有しない場合、PbO、B2O3及びSeO2の3種類の成分が鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量を占める総含有量の和が100%であることを保証する必要がある。鉛-ホウ素-セレンガラスフリットが添加剤を含有する場合、PbO、B2O3、SeO2及び添加剤の総含有量の和が100%であることを保証する必要がある。鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの各成分の総含有量の和が100%である前提で、各成分の含有率は、上記範囲内に任意の数値に調整することができる。これは、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット中の各成分の含有量の調整においても同様である。
【0017】
いくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量(wt%)に基づいて計算すると、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットにおけるPbOの含有量は、51.0%~82.0%であってもよく、55%~75%であってもよく、65.9%~74.5%であってもよく、さらに68.8%~73.1%であってもよく、70%~71.7%であってもよい。含有量の調整は、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの各成分の重量含有率の和が100%であることを保証する必要がある。
【0018】
いくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットにおけるB2O3の含有量は、3%~32%であってもよく、4%~30%であってもよく、2%~20%であってもよく、6.8%~10%であってもよく、7.1%~7.6%であってもよく、7.4%~7.5%であってもよい。含有量の調整は、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの各成分の含有量の和が100%であることを保証する必要がある。
【0019】
いくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットにおけるSeO2の含有量は、0.2%~15%であってもよく、0.5%~13.1%であってもよく、1%~10%であってもよく、1.9%~9.4%であってもよく、2.1%~8.1%であってもよく、3.7%~5.6%であってもよい。含有量の調整は、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの各成分の含有量の和が100%であることを保証する必要がある。
【0020】
いくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットにおける添加剤の含有量は、0.5%~20%であってもよく、5%~19%であってもよく、8%~17%であってもよく、10%~16%であってもよく、14.2%~15.7%であってもよく、14.7%~15.3%であってもよい。
【0021】
いくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリット中の鉛-ホウ素-セレン酸化物は、焼結時の溶融状態にあるときに、完全非晶質状態である。
【0022】
他のいくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリット中の鉛-ホウ素-セレン酸化物は、溶融状態にあるときに、一部が非晶質状態であり、他の一部が結晶状態であり、鉛-ホウ素-セレンガラスフリット中の鉛-ホウ素-セレン酸化物の結晶状態部分の含有量は、当該鉛-ホウ素-セレン酸化物の総重量の1.5%以下を占める。
【0023】
いくつかの実施例において、導電性成分は、銀単体(例えば、銀粉末)、銀合金、銀塩又は銀の誘導体から選択される1種又は複数種の混合物であってもよい。もちろん、銅、パラジウムなどの他の金属又はこれらの金属の誘導体を含有してもよい。
【0024】
他のいくつかの実施例において、導電性成分が導電性ペースト組成物の全固形物に占める重量百分率は、87%~99%であってもよく、88%~98%であってもよく、90%~97%であってもよく、91%~96%であってもよく、92%~95%であってもよく、さらに93%~94%であってもよい。
【0025】
いくつかの実施例において、導電性ペースト組成物は、100ppm以下のCd元素及び/又はTl元素を含有する。Cd元素及び/又はTl元素が一定の毒性を有し、ペーストが過剰な毒性物質を含有すると、環境に有害であるため、好ましくは、Cd元素及び/又はTl元素を含有しない。
【0026】
本願のいくつかの実施例に係る第1種の導電性ペースト組成物は、n型結晶シリコン太陽電池などの光起電力デバイスを製造するために用いることができる。導電性ペースト組成物は、n型結晶シリコン太陽電池において、当該n型結晶シリコン太陽電池のパッシベーション膜を貫通しp型半導体とで電気的接触をなす導電性構造を形成する。
【0027】
本願のいくつかの実施例によれば、
n型結晶シリコン基板(n型低濃度ドープ基板とも呼ばれる)、n型結晶シリコン基板の表面に設けられたp型ドープされたエミッタ、及びp型ドープされたエミッタの表面に堆積されたパッシベーション膜を有する半導体基材を提供するステップ(1)と、
上記導電性ペースト組成物をp型ドープされたエミッタの表面のパッシベーション膜の少なくとも一部の表面に塗布するステップ(2)と、
半導体基材及び半導体基材に塗布された導電性ペースト組成物を焼結し、導電性ペースト組成物が焼結過程においてパッシベーション膜をエッチングして貫通し、p型ドープされたエミッタとで電気的接続をなす導電性構造(電極とも呼ばれる)を形成することにより、n型結晶シリコン太陽電池電極を得るステップ(3)と、を含むn型結晶シリコン太陽電池電極の製造方法をさらに提供する。n型結晶シリコン太陽電池電極は、n型結晶シリコン太陽電池の1つの構成部分である。
【0028】
上記各ステップの番号は、各ステップの前後順序を唯一に制限するものではない。
【0029】
ステップ(1)において、いくつかの実施例において、n型結晶シリコン基板は、リン源を用いてシリコンウェハの裏面にドープ拡散を行った後に高濃度のN+領域が形成されるため、n型裏面電界(Back surface field、BSF)と呼ばれ、リンは、拡散媒体として機能し、p型半導体は、前面p型ドープ(例えば、ホウ素)された結晶シリコンウェハ部分であるため、p型エミッタと呼ばれ、それはn型結晶シリコン基板とでpn接合を形成する。前面は、n型結晶シリコン太陽電池の太陽光の照射を受ける面(受光面とも呼ばれる)として定義され、裏面は、n型結晶シリコン太陽電池の太陽光の照射を受けない面(非受光面とも呼ばれる)として定義される。
【0030】
ステップ(2)において、いくつかの実施例において、導電性ペースト組成物は、パターンの形態でp型半導体の表面のパッシベーション膜の少なくとも一部の表面に塗布される。
【0031】
本願のいくつかの実施例によれば、
n型結晶シリコン基板、n型結晶シリコン基板の表面に設けられたp型ドープされたエミッタ、及びp型ドープされたエミッタの表面に堆積された少なくとも1層のパッシベーション膜を有する半導体基材と、
パッシベーション膜の少なくとも一部を貫通し、かつp型ドープされたエミッタと電気的接続をなし、上記導電性ペースト組成物で形成される導電性構造と、を含むn型結晶シリコン太陽電池電極をさらに提供する。
【0032】
本願のいくつかの実施例によれば、上記n型結晶シリコン太陽電池電極を含むn型結晶シリコン太陽電池をさらに提供する。いくつかの実施例において、上記n型結晶シリコン太陽電池は、n-PERT太陽電池又はn-TOPCon太陽電池などの光起電力デバイスであってもよい。
【0033】
[第2種の導電性ペースト、その製造方法及び応用]
本願のいくつかの実施例によれば、n型結晶シリコン太陽電池のp型半導体とで電気的接続をなすための第2種の導電性ペースト組成物をさらに提供する。上記第1種の導電性ペースト組成物中における本部分の第2種の導電性ペースト組成物と同様の内容は、参照により本部分に組み込まれるものとし、説明を省略する。上記第1種の導電性ペースト組成物に比べて、本部分の導電性ペースト組成物は、鉛元素、カドミウム元素及びタリウム元素などの毒性の高い元素を含まないため、人体や環境に深刻な危害を与えず、かつリサイクルしやすい。また、本部分の第2種の導電性ペースト組成物及びそのガラスフリットは、如何なる形態のテルル元素(Te)、例えばテルルの酸化物(TeO2)も含有しない。
【0034】
具体的には、本部分の第2種の導電性ペースト組成物は、
(1)上記導電性ペースト組成物の全固形物の0.5%~10%(重量百分率)を占めるビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットと、
(2)導電性ペースト組成物の全固形物の87%~99%(重量百分率)を占める導電性成分と、
(3)導電性ペースト組成物の全固形物の0.5%~3%(重量百分率)を占めるアルミニウム単体成分と、
(4)有機媒体と、を含む。
【0035】
ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット、導電性成分、アルミニウム単体成分は、導電性ペースト組成物の全固形物とし、三者が導電性ペースト組成物の全固形物に占める重量百分率の和は、100%である。
【0036】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、少なくとも50%~90%のBi2O3、2%~35%のB2O3及び0.1%~15%のSeO2を含有する。一方、他の実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、0.1%~25%の添加剤をさらに含有してもよく、添加剤は、SiO2、BiF3、AgO2、Ag2O、AgO、ZnO、MgO、CaO、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Ce2O及びFe2O3からなる群から選択されるいずれか1種又は複数種である。添加剤は、毒性の高い元素の酸化物又はハロゲン化物も含有しない。
【0037】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量(総重量)に基づいて計算すると、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットにおけるBi2O3の含有量は、52%~90%であってもよく、55%~88%であってもよく、58%~85%であってもよく、60%~80%であってもよく、66.6%~75%であってもよく、68.9%~71.3%であってもよく、さらに70%~71%であってもよい。
【0038】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量に基づいて計算すると、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットにおけるB2O3の含有量は、2%~20%であってもよく、3%~18%であってもよく、5%~16%であってもよく、7%~15%であってもよく、10.5%~12%であってもよく、10.9%~11.6%であってもよく、11.1%~11.3%であってもよい。
【0039】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量に基づいて計算すると、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットにおけるSeO2の含有量は、0.1%~15%であってもよく、0.2%~14%であってもよく、1%~13%であってもよく、2%~12.4%であってもよく、3.1%~9.3%であってもよく、さらに3.5%~6.2%であってもよい。上記各成分の含有量の調整は、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの各成分の含有量の和が100%であることを保証する必要がある。
【0040】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量(総重量)に基づいて計算すると、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、0.1%~5%のLi2Oをさらに含有する。
【0041】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量(総重量)に基づいて計算すると、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、0.1%~5%のNa2Oをさらに含有する。
【0042】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量(総重量)に基づいて計算すると、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、0.1%~20%のZnOをさらに含有する。
【0043】
いくつかの実施例において、導電性成分は、銀単体(例えば、銀粉末)、銀合金及び銀塩から選択される1種又は複数種の混合物である。
【0044】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット中のビスマス-ホウ素-セレン酸化物は、焼結時の溶融状態にあるときに、完全非晶質状態である。
【0045】
他のいくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット中のビスマス-ホウ素-セレン酸化物は、溶融状態にあるときに、一部が非晶質状態であり、他の一部が結晶状態であり、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット中のビスマス-ホウ素-セレン酸化物の結晶状態部分の含有量は、当該ビスマス-ホウ素-セレン酸化物の総重量の1.5%以下を占める。
【0046】
本願のいくつかの実施例によれば、導電性ペースト組成物のn型結晶シリコン太陽電池における応用であって、導電性ペースト組成物が、n型結晶シリコン太陽電池のパッシベーション膜をエッチングして貫通し、n型結晶シリコン太陽電池のp型ドープされたエミッタとで電気的接続をなす導電性構造を形成する応用をさらに提供する。
【0047】
本願のいくつかの実施例によれば、
n型結晶シリコン基板、n型結晶シリコン基板の表面に設けられたp型ドープされたエミッタ、及びp型ドープされたエミッタの表面に堆積された少なくとも1層のパッシベーション膜を有する半導体基材を提供するステップ(1)と、
上記導電性ペースト組成物をパッシベーション膜の少なくとも一部の表面に塗布するステップ(2)と、
半導体基材及び半導体基材に塗布された導電性ペースト組成物を焼結し、導電性ペースト組成物が焼結過程においてパッシベーション膜をエッチングして貫通し、p型ドープされたエミッタとで電気的接続をなす導電性構造(銀アルミニウム電極とも呼ばれる)を形成することにより、n型結晶シリコン太陽電池電極を得るステップ(3)と、を含むn型結晶シリコン太陽電池電極の製造方法をさらに提供する。
【0048】
ステップ(1)において、いくつかの実施例において、n型結晶シリコン基板は、リン源を用いてシリコンウェハの裏面にドープ拡散を行った後に高濃度のN+領域が形成されるため、n型裏面電界(Back surface field、BSF)と呼ばれ、リンは、ドープ拡散媒体として機能し、p型半導体は、前面p型ドープ(例えば、ホウ素)されたシリコンウェハ部分であるため、p型エミッタと呼ばれ、それはn型結晶シリコン基板とでpn接合を形成する。
【0049】
いくつかの実施例において、第2種の導電性ペースト組成物は、パターンの形態でパッシベーション膜の少なくとも一部の表面に塗布される。
【0050】
本願のいくつかの実施例によれば、
n型結晶シリコン基板、n型結晶シリコン基板の表面に設けられたp型ドープされたエミッタ、及びp型ドープされたエミッタの表面に堆積された少なくとも1層のパッシベーション膜を有する半導体基材と、
パッシベーション膜の少なくとも一部を貫通し、かつp型ドープされたエミッタとで電気的接続をなし、上記導電性ペースト組成物で形成される導電性構造と、を含むn型結晶シリコン太陽電池電極をさらに提供する。
【0051】
本願のいくつかの実施例によれば、上記n型結晶シリコン太陽電池電極を含むn型結晶シリコン太陽電池をさらに提供する。
【0052】
いくつかの実施例において、上記n型結晶シリコン太陽電池は、n-PERT太陽電池又はn-TOPCon太陽電池などの光起電力デバイスであってもよい。
【発明の効果】
【0053】
上記技術的手段を用いるため、本願のいくつかの実施例は、以下の技術的効果を達成する。
【0054】
まず、本願のいくつかの実施例における導電性ペースト組成物は、所望の低Tg点を有するガラスフリットを含有するが、銀アルミニウムペースト中のアルミニウム単体を過剰に酸化する酸化物成分を含有しないため、制御可能な速度で光起電力デバイスのパッシベーション膜をエッチングすることができ、かつエッチング後の焼結過程において、銀アルミニウムペーストが、光起電力デバイスのパッシベーション膜を貫通しp型半導体とで良好な電気的接触をなす銀アルミニウム電極を形成することができ、したがって、製造された光起電力デバイスは、良好な曲線因子(FF)及び光電変換効率(η)を有する。
【0055】
次に、本願のいくつかの実施例における導電性ペースト組成物は、カドミウム元素及びタリウム元素などの毒性の高い元素を含有しないため、製造された光起電力デバイスは、毒性が低く、人体や環境への危害を軽減することに役立ち、かつリサイクルしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
本願の実施例における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例における図面を簡単に説明する。以下の説明における図面は、本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を取得することもできることは明らかである。
【0057】
【
図1】本願のいくつかの実施例における導電性ペースト組成物を適用して製造されたn型太陽電池の断面図である。
図1は、第1種の導電性ペースト組成物を用いる場合のみを示す。実際には、導電性ペースト組成物は、上記第1種の導電性ペースト組成物(鉛-ホウ素-セレンガラスフリットを含有する)であってもよく、上記第2種の導電性ペースト組成物(ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットを含有する)であってもよい。
【
図2】本願のいくつかの実施例における導電性ペースト組成物を適用して製造されたn型トンネル酸化膜パッシベーションコンタクト(Tunnel oxide passivated contact、n-TOPConと略称する)太陽電池の断面図である。
図2は、第1種の導電性ペースト組成物を用いる場合のみを示す。実際には、当該導電性ペースト組成物は、上記第1種の導電性ペースト組成物(鉛-ホウ素-セレンガラスフリットを含有する)であってもよく、上記第2種の導電性ペースト組成物(ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットを含有する)であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本願の技術的手段を明確かつ完全に説明するが、ここで説明する実施例は、本願の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではないことは明らかである。本願における実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を要さずに得られる他の全ての実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0059】
本願は、導電性ペースト組成物、その製造方法及び応用を提供する。導電性ペースト組成物は、厚膜ペースト組成物(Thick film paste)又は厚膜ペースト組成物と呼ばれてもよく、第1種の導電性ペースト組成物(鉛-ホウ素-セレンガラスフリットを含有する)及び第2種の導電性ペースト組成物(ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットを含有する)を含む。以下、それぞれ詳細に説明する。なお、以下の実施例の説明順序は、実施例の好ましい順序を限定するものではない。
【0060】
[第1種の導電性ペースト組成物]
本願のいくつかの実施例は、光起電力デバイスのP型半導体と低抵抗の電気的接続をなすための第1種の導電性ペースト組成物を提供する。
【0061】
本願のいくつかの実施例に係る第1種の導電性ペースト組成物は、
(1)鉛-ホウ素-セレンガラスフリットと、
(2)導電性成分と、
(3)アルミニウム単体成分と、
(4)有機媒体と、を含む。
【0062】
鉛-ホウ素-セレンガラスフリット、導電性成分及びアルミニウム単体成分は、導電性ペースト組成物の固形物成分とし、導電性ペースト組成物の固形物を占める重量百分率の和は、100%である。有機媒体は、導電性ペースト組成物中の分散相とし、印刷性能を提供する。
【0063】
以下、各成分について個別に説明する。
【0064】
鉛-ホウ素-セレンガラスフリット
いくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、ガラス成分を有する組成物であり、導電性ペースト組成物の全固形物の0.5%~10%を占めてもよい。他のいくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットが導電性ペースト組成物の全固形物に占める割合は、0.8%~9.8%であってもよく、1%~9.5%であってもよく、1.5%~9%であってもよく、さらに2%~8%であってもよく、さらに3%~7%であってもよく、さらに4%~6%であってもよく、さらに5%~5.5%であってもよい。導電性ペースト組成物中の各成分の百分率は、いずれも重量百分率(wt%)で表され、以下同様である。鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの導電性ペースト組成物の全固形物における割合の調整は、導電性ペースト組成物中の各成分の重量百分率の和が100%であることを保証する必要がある。
【0065】
いくつかのの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、少なくとも50%~85%のPbO、2%~34%のB2O3及び0.1%~16%のSeO2を含有する。ガラスフリット中の各成分の百分率は、重量比(wt%)で表され、いずれも鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算される。鉛-ホウ素-セレンガラスフリット中の各成分の割合の調整は、各成分が鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの総乾燥重量を占める割合の和が100%であることを保証する必要がある。
【0066】
いくつかのの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットにおけるPbOの含有量(wt%)は、51.0%~82.0%であってもよく、55%~75%であってもよく、65.9%~74.5%であってもよく、さらに68.8%~73.1%であってもよく、70%~71.7%であってもよい。含有量の調整は、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの各成分の含有量の和が100wt%であることを保証する必要がある。
【0067】
いくつかのの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットにおけるB2O3の含有量は、3%~32%であってもよく、4%~30%であってもよく、2%~20%であってもよく、6.8%~10%であってもよく、7.1%~7.6%であってもよく、7.4%~7.5%であってもよい。含有量の調整は、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの各成分の含有量の和が100wt%であることを保証する必要がある。
【0068】
いくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量に基づいて計算すると、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットにおけるSeO2の含有量は、0.2%~15%であってもよく、0.5%~13.1%であってもよく、1%~10%であってもよく、1.9%~9.4%であってもよく、2.1%~8.1%であってもよく、3.7%~5.6%であってもよい。含有量の調整は、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの各成分の含有量の和が100wt%であることを保証する必要がある。
【0069】
いくつかの実施例において、上記3種類の基本成分に加えて、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、添加剤をさらに含有してもよい。本願の各実施例における鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの命名は、当該種類のガラスフリットが鉛、ホウ素、セレンの3種類の元素のみを含有することを意味するものではなく、それは、他の成分、例えば、他の元素又は添加剤などを含有してもよい。この3種類の元素が当該種類のガラスフリットの基本成分に属し、かつビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットと区別しやすいために、本明細書で上記とおり命名する。ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの命名は同様である。
【0070】
いくつかの実施例において、添加剤は、ガラス体系を改質するために用いられるため、ガラス修飾剤(Glass modifier)とも呼ばれる。ガラスフリットの製造過程において、ガラス形成剤(Glass former)は、ガラスの初期ネットワーク構造を形成するために用いられる。添加剤がガラスネットワーク構造に組み込まれると、ガラス形成剤により形成された初期ネットワーク構造が変更され、それによりガラスの元の熱性能などの性質が変更される。添加剤は、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素から選択されるいずれか1種の元素の酸化物又は複数種の元素の酸化物の混合であってもよい。例示的には、添加剤は、PbF2、BiF3、SiO2、Bi2O3、AgO2、Ag2O、AgO、ZnO、MgO、CaO、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Ce2O及びFe2O3からなる群から選択されるいずれか1種又は複数種である。いくつかの実施例において、添加剤は、SiO2、Bi2O3、Li2O、Na2O、Al2O3、ZnOなどの組み合わせであってもよい。添加剤中の各成分の含有量は、所望のガラス性能に応じて調整することができる。添加剤中のフッ素イオンと酸素イオンは、いずれも陰イオンに属し、上記金属カチオンと併用することができる。
【0071】
いくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量に基づいて計算すると、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットにおける添加剤の含有量は、0.5%~20%であってもよく、5%~19%であってもよく、8%~17%であってもよく、10%~16%であってもよく、14.2%~15.7%であってもよく、14.7%~15.3%であってもよい。当該百分率は、重量百分率である。含有量の調整は、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの各成分の含有量の和が100wt%であることを保証する必要がある。
【0072】
ガラスフリットの様々な成分(基本成分及び添加剤を含む)が導電性ペースト組成物中のアルミニウム粉末に対して不活性であることを保証すべきある。より具体的には、製造された光起電力デバイスの導電性能及び効率に影響を及ぼさないように、ガラスフリット中の各成分が導電性ペースト中のアルミニウム粉末と時期尚早に反応しないことを保証する。発明者らは、研究において、驚くべきことに、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットに添加されたSeO2がガラスフリットのTg点を低下させるとともに、銀アルミニウムペースト中のアルミニウム粉末を過剰に酸化せず、太陽電池などの光起電力デバイスに低抵抗の電気的接触を形成させることができることを見出した。したがって、本願の実施例は、従来の鉛-シリコン-ホウ素ガラスフリットの代わりに、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットを創造的に提供する。
【0073】
いくつかの実施例において、本願の導電性ペースト組成物及び鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、1.2wt%以下のTeO2を含有するか、又は1.0wt%以下のTeO2を含有するか、又は0.5wt%以下のTeO2を含有する。当該重量百分率は、TeO2のwt%が鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量の総重量を占める百分率である。含有量の調整は、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの各成分の含有量の和が100wt%であることを保証する必要がある。
【0074】
他のいくつかの実施例において、本願の導電性ペースト組成物及び鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、如何なる形態のテルル元素(Te)、例えばTeO2なども含有しない。
【0075】
いくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリット中の鉛-ホウ素-セレン酸化物は、焼結時に、完全非晶質状態であってもよく、一部が非晶質で他の一部が結晶状態であってもよく、鉛-ホウ素-セレンガラスフリット中の鉛-ホウ素-セレン酸化物の結晶状態部分の含有量は、当該鉛-ホウ素-セレン酸化物の総重量の1.5%以下を占め、1%以下を占めてもよく、このように後の電池セルの金属化過程に役立つ。
【0076】
他のいくつかの実施例において、本願の鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、Cd元素及び/又はTl元素をさらに含有してもよい。Cd元素及び/又はTl元素もガラスフリットのTg点を低下させることができるが、その毒性が大きいため、添加量を多くしすぎないことが好ましい。したがって、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、100ppmより少ないCdO又はTl2O3を含有してもよく、50ppmより少ないCdO又はTl2O3を含有してもよく、20ppmより少ないCdO又はTl2O3を含有してもよく、CdO又はTl2O3を含有しなくてもよい。
【0077】
いくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの製造方法は、上記酸化物を必要な重量比に応じて配合し、次に高温焼結してそれを溶融状態にし、溶融物を均一に混合した後に迅速にアニーリングし、粉砕して粉末形態の鉛-ホウ素-セレンガラスフリットを形成する。導電性ペーストを製造する過程において均一に混合しやすいように、鉛-ホウ素-セレンガラスフリット粉末の粒度は大きすぎないことが好ましく、鉛-ホウ素-セレンガラスフリット粉末のD50は0.5~3.0マイクロメートルであってもよい。
【0078】
導電性成分
いくつかの実施例において、導電性成分は、光起電力デバイスを形成した後に導電作用を果たすために用いられる。導電性成分は、銀単体、銅単体、銀合金、銅合金及び銀塩から選択される1種又は複数種の混合物であってもよい。導電性成分が銀塩であれば、銀塩は、AgCl、AgNO3、AgOOCH3(酢酸銀)、トリフルオロ酢酸銀又はオルトリン酸銀(Ag3PO4)から選択してもよい。
【0079】
いくつかの実施例において、導電性成分は、シート状、粒子状、コロイド状などの形態で存在してもよい。粒子状の形態で存在する場合、分散性に影響を及ぼさないように、導電性成分の粒度は、大きすぎないことが好ましい。いくつかの実施例において、導電性成分の平均粒度は、マイクロメートルスケールの範囲内であってもよく、例示的には、15マイクロメートル以下であってもよく、10マイクロメートル以下であってもよく、又は5マイクロメートル以下であってもよく、2マイクロメートル以下であってもよく、0.1マイクロメートル~1マイクロメートルの範囲内であってもよい。他のいくつかの実施例において、導電性成分の平均粒度は、ナノスケールの範囲内であってもよく、例示的には、800ナノメートル以下であってもよく、700ナノメートル以下であってもよく、500ナノメートル以下であってもよく、300ナノメートル以下であってもよく、200ナノメートル以下であってもよく、50ナノメートル以下であってもよく、又は10ナノメートル~20ナノメートルの範囲内であってもよい。
【0080】
他のいくつかの実施例において、導電性成分が導電性ペースト組成物の全固形物に占める重量百分率は、87%~99%であってもよく、88%~98%であってもよく、90%~97%であってもよく、91%~96%であってもよく、92%~95%であってもよく、さらに93%~94%であってもよい。導電性成分の導電性ペースト組成物の全固形物における割合の調整は、導電性ペースト組成物中の各成分の重量百分率の和が100%であることを保証する必要がある。
【0081】
アルミニウム単体成分
いくつかの実施例において、導電性ペースト組成物において、アルミニウム元素は、必要な成分である。アルミニウム単体成分は、アルミニウム粉末であってもよい。アルミニウム単体成分及び導電性成分は、有機媒体に分散され、高温焼結過程において、アルミニウム粉末は、低抵抗率のオーミック接触をなすことに役立つ。例示的には、導電性成分が銀単体であれば、当該n型導電性ペースト組成物は、銀アルミニウムペースト(Ag/Al paste)を含有し、p型導電性ペーストは、金属アルミニウム単体を含有しないため、銀ペースト(Ag paste)のみを含有する。
【0082】
n型光起電力デバイスの製造における焼結過程において、導電性ペースト組成物のアルミニウムの役割の1つは、光起電力デバイスのp型半導体(例えば、p型エミッタ)との電気的接触を促進することであるため、焼結過程において、金属アルミニウム元素を維持することは、非常に重要である。光起電力デバイスの効率を向上させるために、当該電気的接触は、低い抵抗率(例えば、0.5~5mohm/cm2)を有する必要がある。導電性ペースト組成物は、パッシベーション膜をエッチングするための酸化性成分(例えば、ガラスフリット)を含有する。焼結過程において酸化性成分がアルミニウム単体成分と過剰に反応すると、導電性ペースト組成物とP型エミッタの抵抗値が増加し、それにより光起電力デバイスの効率を低下させるため、導電性ペースト組成物中の酸化性成分が焼結過程においてアルミニウム単体を過剰に酸化してはいけない。本願の鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、セレン元素(Se)を含有し、その融点がそれと同族のテルル元素(Te)より低いため、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの融点を低下させ、流動性を向上させることに役立ち、それによりスクリーン印刷及びパッシベーション膜のエッチングなどを行いやすい。また、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットに含有されるSeO2がTeO2のようにアルミニウム単体を過剰に酸化することないため、アルミニウム単体とp型エミッタが低抵抗の電気的接触をなし、それにより光起電力デバイスの効率を向上させることに役立つ。
【0083】
いくつかの実施例において、第1種の導電性ペースト組成物において、アルミニウム単体成分は、当該第1種の導電性ペースト組成物の全固形物の0.5%~3%を占めてもよく、0.8%~2.9%を占めてもよく、0.9%~2.8%を占めてもよく、1.0%~2.5%を占めてもよく、さらに1.2%~2.4%を占めてもよく、さらに1.5%~2.1%を占めてもよく、さらに1.6%~2.0%を占めてもよい。アルミニウム単体成分の導電性ペースト組成物の全固形物における割合の調整は、導電性ペースト組成物中の各成分の重量百分率の和が100%であることを保証する必要がある。
【0084】
いくつかの実施例において、アルミニウム単体成分は、粉末状で導電性ペースト組成物の他の成分と混合することができる。アルミニウム単体成分の平均粒度は、マイクロメートルスケールであってもよい。マイクロメートルスケールのアルミニウム単体成分として、その粒度範囲は、5マイクロメートル以下であってもよく、4マイクロメートル以下であってもよく、又は3マイクロメートル以下であってもよく、2マイクロメートル以下であってもよく、1マイクロメートル~5マイクロメートルの範囲内であってもよい。
【0085】
有機媒体
いくつかの実施例において、導電性成分、鉛-ホウ素-セレンガラスフリット及びアルミニウム単体成分で構成された固形物に対して、有機媒体は、導電性ペースト組成物中の液相として、上記導電性成分、鉛-ホウ素-セレンガラスフリット及びアルミニウム単体成分を分散して一定の粘度を有するペースト(Paste)を形成するために用いられる。当該ペーストの粘度及びレオロジーにより、上記導電性成分、鉛-ホウ素-セレンガラスフリット及びアルミニウム単体成分を当該ペーストに長期的かつ安定的に分散するだけでなく、導電性ペースト組成物を印刷スクリーンに分散し、かつスクリーン印刷の方式で所望のパターンを光起電力デバイスのパッシベーション膜の表面に塗布することができる。
【0086】
いくつかの実施例において、スクリーン印刷後の高温焼結過程において、有機媒体は熱分解される。有機媒体は、ポリマー及び有機溶剤を含んでもよい。ポリマーは、セルロース、樹脂、エステル類などを含んでもよい。有機溶剤は、α-テルペン、β-テルペン、ジブチルフタレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ヘキシレングリコールなどを含んでもよい。セルロースは、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、又はそれらの混合物を含む。樹脂は、ウッドロジン又はフェノール樹脂、又はそれらの混合物を含む。エステル類は、低級アルコールのポリメタクリレートなどを含む。
【0087】
いくつかの実施例において、有機媒体の導電性ペースト組成物における含有量は、導電性ペースト組成物全体に必要な粘度、レオロジー及び自体の物理的特性に依存する。有機媒体の含有量は、導電性ペースト組成物の総重量の6%~12%を占めてもよく、7%~11%を占めてもよく、8%~10%を占めてもよい。当該百分率は、重量百分率である。
【0088】
いくつかの実施例において、本願の導電性ペースト組成物(n-Type conductive paste composition)は、鉛-ホウ素-セレンガラスフリット(Pb-B-Se酸化物とも呼ばれる)、銀粉末、アルミニウム粉末及び有機媒体を含む。鉛-ホウ素-セレンガラスフリットは、少なくとも鉛、ホウ素及びセレン元素などを含有し、高温焼結時にパッシベーション膜をエッチングするか又は腐食するために用いられる。有機媒体は、分散相に属し、上記鉛-ホウ素-セレンガラスフリット、銀粉末及びアルミニウム粉末を分散するために用いられる。本願の実施例における導電性ペースト組成物は、焼結後に、光起電力デバイスのパッシベーション膜をエッチングして貫通し、p型半導体とで低抵抗の接触をなすことができる。これは、アルミニウムを含有しない従来の導電性ペーストでは達成しにくい効果である。原因の1つは、アルミニウム粉末を含有しない導電性ペーストが光起電力デバイスのパッシベーション膜を貫通した後にp型半導体とで低抵抗の電気的接触をなしにくいことであり、これは、最終的に光起電力デバイスの効率に影響を及ぼす可能性がある。
【0089】
テルル酸化物は、鉛テルルガラスペーストにおいてガラス体系の軟化点を低下させ、当該ガラス体系の流動性を向上させることができるが、テルル酸化物が銀アルミニウムペースト中のアルミニウム単体を酸化アルミニウム(Al2O3)に酸化して、光起電力デバイス内において良好な電気的接触をなすことができないことがあり、これは光起電力デバイスの効率に影響を及ぼすため、テルル酸化物は、銀アルミニウムペーストを含有するn型導電性ペーストに用いることができない。セレン元素とテルル元素が同族元素であるが、発明者らは、研究において、驚くべきことに、セレン酸化物が、後の焼結過程において、テルル酸化物のように銀アルミニウムペースト中のアルミニウム金属単体を酸化することなく、これが、n型導電性ペースト組成物とp型半導体が低抵抗の接触をなすという要件を満たすことができることを見出した。
【0090】
発明者らは、さらに、セレン酸化物がガラス形成剤(Glass former)のうちの1種に属し、自体が低い溶融温度を有し、添加すると、導電性ペーストガラスフリットの熱性能を変更することができることを見出した。セレン酸化物を添加しないn型導電性ペースト組成物に比べて、セレン酸化物を添加すると、そのTg点及び溶融温度を低下させ、かつその流動性を向上させることができ、パッシベーション膜のエッチングに対する要件を満たすことができる。これは、焼結過程において、ガラスペーストが速い速度で軟化し流動する必要があるためであり、このようにパッシベーション膜に対する制御可能なエッチングを実現することに役立つ。鉛テルルガラス(Pb-Te)に添加されたテルル(Te)も流動性を向上させ、その軟化点を低下させることができるが、前記のように、テルル酸化物は、アルミニウム金属単体を酸化して、アルミニウムの導電接触性能を低下させるため、テルル酸化物は、本願の実施例における鉛-ホウ素-セレンガラスフリットに添加する添加剤として適切ではない。
【0091】
また、現在、タリウム元素(Tl)を用いて、導電性ペースト組成物の溶融温度を低下させ、その流動性を向上させることができるが、タリウム元素は、毒性が高く、人体や環境に有害であり、かつ回収コストが高いため、大量に添加することができない。本願のいくつかの実施例において用いられるセレン酸化物は、毒性が小さく、タリウム酸化物の代わりに溶融温度を低下させ流動性を向上させることができる。しかし、これは、Se元素がCd元素及び/又はTl元素と併用することができないことを意味するものではない。本願のいくつかの実施例において、鉛-ホウ素-セレンガラスフリット(Se元素を含有する)にCd元素及び/又はTl元素(例えば、CdO又はTl2O3)を添加することができるが、Cd元素及び/又はTl元素の含有量が100ppmより小さく、又はそれ以上に小さく、例えば10ppmより小さいように保証する必要がある。本願のいくつかの実施例において、導電性ペースト組成物(Se元素を含有する)に、CdO又はTl2O3を含むがこれらに限定されない任意の形態のCd元素及び/又はTl元素を直接添加してもよいが、毒性が大きすぎることを回避するために、導電性ペースト組成物が100ppm以下のCd元素及び/又はTl元素を含有することを保証する必要がある。上記方法により、導電性ペースト組成物を低い毒性の範囲内に制御することができる。
【0092】
したがって、本願の各実施例における鉛-ホウ素-セレンガラスフリット(Pb-B-Se酸化物を含有する)は、既知の鉛-ホウ素-セレンガラスフリット(Pb-Si-B酸化物を含有する)の代わりに、銀アルミニウムペーストと併用して、n型導電性ペースト組成物を製造することができ、光起電力デバイスを製造するときに、パッシベーション膜を貫通し、当該パッシベーション膜の下方のp型半導体とで良好な電気的接触をなすことができる。
【0093】
第1種の導電性ペースト組成物の製造方法
本願のいくつかの実施例は、上記配合比率に応じて導電性成分、鉛-ホウ素-セレンガラスフリット及びアルミニウム単体成分を混合し、かつ一定量の有機媒体に分散し、均一に分散した後に上記第1種の導電性ペースト組成物を形成するステップを含む、上記第1種の導電性ペースト組成物の製造方法をさらに提供する。鉛-ホウ素-セレンガラスフリット、導電性成分及びアルミニウム単体成分の配合比率の調整は、3種類の成分が導電性ペースト組成物の全固形物に占める重量百分率の和が100%であることを保証する必要がある。
【0094】
第1種の導電性ペースト組成物の応用
本願のいくつかの実施例における導電性ペースト組成物は、光起電力デバイス、例えば太陽電池の製造に用いることができる。例示的には、導電性ペースト組成物は、焼結過程において光起電力デバイスのパッシベーション膜を迅速にエッチングし、最終的に当該パッシベーション膜を貫通し、当該光起電力デバイスのp型半導体とで低い抵抗率を有する電気的接触をなす。p型半導体は、好ましくは、拡散法によりシリコン基板から製造されるp型エミッタであってもよい。
【0095】
第1種の光起電力デバイス
図1に示すように、本願のいくつかの実施例は、第1種の光起電力デバイスを提供し、当該光起電力デバイスは、n-PERT太陽電池(Passivated Emitter、Rear Totally Diffused)であり、製造時に上記実施例における第1種の導電性ペースト組成物を利用する。
【0096】
図1cに示すように、n-PERT太陽電池は、
(1)n-PERT太陽電池の中間に位置するn型結晶シリコン基板100と、
(2)n型結晶シリコン基板100の前面に位置する前面p型エミッタ101と、
(3)前面p型エミッタ101の表面に堆積される前面パッシベーション膜103と、
(4)n型結晶シリコン基板100の裏面に位置する裏面電界102と、
(5)裏面電界102の表面に堆積される裏面パッシベーション膜104と、
(6)前面p型エミッタ101の表面の前面パッシベーション膜103の少なくとも一部を貫通し、当該前面p型エミッタ101とで電気的接続をなす前面導電性構造107と、
(7)裏面電界102の表面の裏面パッシベーション膜104の少なくとも一部を貫通し、当該裏面電界102とで電気的接続をなす裏面導電性構造108と、を含む。
【0097】
上記番号は、各構造の間の相対的な位置関係を示すものではない。
【0098】
n型結晶シリコン基板100、前面p型エミッタ101、裏面電界102、前面パッシベーション膜103及び裏面パッシベーション膜104は、半導体基材110(n型半導体基板とも呼ばれる)と総称される。
【0099】
n型結晶シリコン基板100は、n型低濃度ドープ基板とも呼ばれ、リン源を利用して、シリコンウェハに低濃度ドープ拡散を行って形成されたn型太陽電池セル青色膜である。
【0100】
前面p型エミッタ101は、p型半導体とも呼ばれ、拡散法によりn型結晶シリコン基板100に三価元素をドープして形成されたものである。当該三価元素は、ホウ素又はガリウムであってもよい。ホウ素元素を提供するためのアクセプター不純物源は、三酸化二ホウ素、窒化ホウ素、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリプロピル、三臭化ホウ素又はジボランなどが挙げられる。ガリウム元素は同様である。
【0101】
裏面電界102は、拡散法によりn型結晶シリコン基板100に五価元素(例えば、リン)をドープして形成されたものである。リン元素を提供するためのドナー不純物源は、五酸化二リン、オキシ塩化リン、三塩化リン又はホスフィンなどが挙げられる。
【0102】
前面パッシベーション膜103及び裏面パッシベーション膜104は、絶縁層又は反射防止層とも呼ばれてもよく、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化ケイ素、又はそれらの任意の組み合わせで製造されてもよい。パッシベーション膜は、気相成長法、スパッタリング法又は他の方式により、n型結晶シリコン基板100の1つの表面又は2つの表面に堆積することができる。
【0103】
前面導電性構造107は、第1種の導電性ペースト組成物を用いて形成されたものである。第1種の導電性ペースト組成物(例えば、
図1に示す前面銀アルミニウムペースト105)を所望のパターンの形態で前面パッシベーション膜103の少なくとも一部の表面に塗布し、後の焼結時に、第1種の導電性ペースト組成物が前面パッシベーション膜103の当該第1種の導電性ペースト組成物に接触する表面をエッチングして貫通し、前面p型エミッタ101とで電気的接触をなすことにより、導電性金属接点の形態の前面導電性構造107(前面銀アルミニウム電極とも呼ばれる)を形成する。
【0104】
裏面導電性構造108として、市場でp-型結晶シリコン電池に適用される金属化銀ペースト、例えばPb-Te-Oガラス粉末を含有する銀ペーストを用いてもよい。導電性ペースト組成物(例えば、裏面導電性構造108)を所望のパターンの形態で裏面パッシベーション膜104の少なくとも一部の表面に塗布し、後の焼結過程において、導電性ペースト組成物が裏面パッシベーション膜104の当該第1種の導電性ペースト組成物に接触する表面をエッチングして貫通し、裏面電界102とで電気的接触をなすことにより、導電性金属接点の形態の裏面導電性構造108(裏面銀電極とも呼ばれる)を形成する。
【0105】
上記焼結の目的の1つは、第1種の導電性ペースト組成物中の有機媒体を熱分解し、かつ金属粉末を焼結することである。焼結は、空気中又は酸素含有雰囲気中で行うことができる。焼結時に、第1種の導電性ペースト組成物中の有機媒体が熱分解され、その中のガラスフリットがパッシベーション膜の当該第1種の導電性ペースト組成物に接触する部分を徐々にエッチングし、エッチング終了後に、第1種の導電性ペースト組成物がパッシベーション膜を貫通し、冷却した後に導電性構造を形成する。導電性ペースト組成物は、銀アルミニウムペーストを含有し、その中の銀成分は、高い導電性を有する。アルミニウム粉末の役割の1つは、前面p型エミッタ101と前面導電性構造107が低抵抗の電気的接続をなすことを促進することにより、光起電力デバイスに所望の効率を備えさせることである。
【0106】
図1a~
図1cに示すように、上記n-PERT太陽電池の製造方法は、
リン源を利用して結晶シリコンウェハ(例えば、多結晶シリコンウェハ又は単結晶シリコンウェハ)に低濃度ドープ拡散を行って形成されたn型結晶シリコン基板100を提供するステップ(1)と、
拡散法によりn型結晶シリコン基板100の前面に三価元素(例えば、ホウ素又はガリウム)をドープして、n型結晶シリコン基板100の前面に前面p型エミッタ101を形成し、拡散法によりn型結晶シリコン基板100の裏面に五価元素(例えば、リン)をドープして、裏面電界102を形成するステップ(2)と、
前面p型エミッタ101の表面に前面パッシベーション膜103を堆積し、裏面電界102の表面に裏面パッシベーション膜104を堆積するステップ(3)と、
第1種の導電性ペースト組成物を前面銀アルミニウムペースト105として、パターンの形態で前面パッシベーション膜103の少なくとも一部の表面に塗布し、市場でp-型結晶シリコン電池に適用される金属化銀ペースト、例えばPb-Te-Oガラス粉末を含有する銀ペーストを裏面金属化ペースト106として、パターンの形態で裏面パッシベーション膜104の少なくとも一部の表面に塗布するステップ(4)と、
焼結を行い、前面銀アルミニウムペースト105が前面パッシベーション膜103の当該前面銀アルミニウムペースト105に接触する表面をエッチングして貫通し、前面p型エミッタ101とで電気的接触をなし、かつ導電性金属接点の形態の前面導電性構造107(前面銀アルミニウム電極とも呼ばれる)を形成し、裏面金属化ペースト106が裏面パッシベーション膜104の当該裏面金属化ペースト106に接触する表面をエッチングして貫通し、裏面電界102とで電気的接触をなし、かつ導電性金属接点の形態の裏面導電性構造108(裏面銀電極とも呼ばれる)を形成するステップ(5)と、を含む。これにより、n-PERT太陽電池を得る。
【0107】
上記各ステップの番号は、各ステップの順序を限定するものではない。
【0108】
ステップ(5)の焼結過程において、銀アルミニウムペーストが溶融状態に変換されかつパッシベーション膜を貫通する程度は、パッシベーション膜の構成や厚さ、銀アルミニウムペースト自体の構成及び焼結条件に依存する。焼結の温度は、700~850℃の範囲内であってもよく、例えば、710℃、720℃、750℃、780℃、800℃、815℃、820℃、835℃などであってもよい。個々の焼結時間は、1秒~5分間の範囲内であってもよく、例えば、秒級で、例えば、1秒~5秒の範囲内であってもよく、又は分級で、例えば、1分間~2分間の範囲内であってもよい。焼結時間が短すぎると、銀アルミニウムペーストがパッシベーション膜を貫通しにくい。焼結時間が長すぎると、銀アルミニウムペーストがパッシベーション膜を貫通した後に他の構造を腐食し、それにより光起電力デバイスを損傷する。したがって、焼結時に、銀アルミニウムペーストは、制御可能な速度でパッシベーション膜を腐食又はエッチングする必要がある。焼結により、銀アルミニウムペーストの有機媒体が熱分解され、銀アルミニウムペースト内のアルミニウム粉末が溶融してp型半導体界面に流れ、p型半導体と反応し、低抵抗率の電気的接触の形成を促進する。p型半導体を腐食して光起電力デバイスの内部構造を損傷しないように、エッチング過程は、長時間持続することができない。焼結過程全体は、個々の焼結過程を含むが、低温から高温までの焼結及び冷却の過程をさらに含むため、10秒を超える。
【0109】
第2種の光起電力デバイス
図2に示すように、本願のいくつかの実施例は、第2種の光起電力デバイスを提供し、当該光起電力デバイスは、トンネル酸化膜パッシベーションコンタクト太陽電池(Tunnel Oxide Passivated Contact、n-TOPCon)であり、製造時に第1種の導電性ペースト組成物を利用する。
【0110】
図2cに示すように、n-TOPCon太陽電池は、
(1)n-TOPCon太陽電池の中間に位置するn型結晶シリコン基板200と、
(2)n型結晶シリコン基板200の前面に位置する前面p型エミッタ201と、
(3)前面p型エミッタ201の前面に堆積される前面パッシベーション膜203と、
(4)n型結晶シリコン基板200の裏面に位置するトンネルパッシベーション膜202aと、
(5)トンネルパッシベーション膜202a的表面に位置するn
+多結晶シリコン層202bと、
(6)n
+多結晶シリコン層202bの表面に堆積される裏面パッシベーション膜204と、
(7)前面p型エミッタ201の表面の前面パッシベーション膜203の少なくとも一部を貫通し、当該前面p型エミッタ201とで電気的接続をなす前面導電性構造207と、
(8)n
+多結晶シリコン層202bの表面の裏面パッシベーション膜204の少なくとも一部を貫通し、当該n
+多結晶シリコン層202bとで電気的接続をなす裏面導電性構造208と、を含む。
【0111】
上記番号は、各構造の間の相対的な位置関係を示すものではない。n-TOPCon太陽電池におけるn-PERT太陽電池と同様な部分については、n-TOPCon太陽電池に関する説明を参照するものとし、ここでは説明を省略する。
【0112】
n型結晶シリコン基板200(n型低濃度ドープ基板とも呼ばれる)、前面p型エミッタ201(p型半導体とも呼ばれる)、トンネルパッシベーション膜202a、n+多結晶シリコン層202b、前面パッシベーション膜203及び裏面パッシベーション膜204は、半導体基材210(n型半導体基板とも呼ばれる)と総称される。
【0113】
n-TOPCon太陽電池において、トンネルパッシベーションコンタクト法によりトンネルパッシベーション膜202a及びn+多結晶シリコン層202bを形成する。
【0114】
前面導電性構造207は、第1種の導電性ペースト組成物を用いて形成されたものである。第1種の導電性ペースト組成物(例えば、前面銀アルミニウムペースト205)を所望のパターンの形態で前面パッシベーション膜203の少なくとも一部の表面に塗布し、後の焼結過程において、第1種の導電性ペースト組成物が前面パッシベーション膜203の当該第1種の導電性ペースト組成物に接触する表面をエッチングして貫通し、前面p型エミッタ201とで電気的接触をなすことにより、導電性金属接点の形態の前面導電性構造207(前面銀アルミニウム電極とも呼ばれる)を形成する。
【0115】
裏面導電性構造208として、市場でp-型結晶シリコン電池に適用される金属化銀ペースト、例えばPb-Te-Oガラス粉末を含有する銀ペーストを用いてもよい。導電性ペースト組成物(例えば、裏面金属化ペースト206)を所望のパターンの形態で裏面パッシベーション膜204の少なくとも一部の表面に塗布し、後の焼結過程において、第1種の導電性ペースト組成物が裏面パッシベーション膜204の当該第1種の導電性ペースト組成物に接触する表面をエッチングして貫通し、n+多結晶シリコン層202bとで電気的接触をなすことにより、導電性金属接点の形態の裏面導電性構造208(裏面銀電極とも呼ばれる)を形成する。
【0116】
図2a~
図2cに示すように、上記n-TOPCon太陽電池の製造方法は、
リン源を利用して結晶シリコンウェハに低濃度ドープ拡散を行って形成されたn型結晶シリコン基板200を提供するステップ(1)と、
拡散法によりn型結晶シリコン基板200の前面に三価元素(例えば、ホウ素又はガリウム)をドープして、n型結晶シリコン基板200の前面に前面p型エミッタ201を形成し、トンネルパッシベーション接触法によりトンネル酸化物(例えば、SiO
2)を利用してn型結晶シリコン基板200にトンネルパッシベーション膜202a及びn
+多結晶シリコン層202b(n
+poly-Si)を形成するステップ(2)と、
前面p型エミッタ201の表面に前面パッシベーション膜203を堆積し、n
+多結晶シリコン層202bの表面に裏面パッシベーション膜204を堆積するステップ(3)と、
第1種の導電性ペースト組成物を前面銀アルミニウムペースト205として、パターンの形態で前面パッシベーション膜203の少なくとも一部の表面に塗布し、市場でp-型結晶シリコン電池に適用される金属化銀ペースト、例えばPb-Te-Oガラス粉末を含有する銀ペーストを裏面金属化ペースト206として、パターンの形態で裏面パッシベーション膜204の少なくとも一部の表面に塗布するステップ(4)と、
焼結を行い、前面銀アルミニウムペースト205が前面パッシベーション膜203の当該前面銀アルミニウムペースト205に接触する表面をエッチングして貫通し、前面p型エミッタ201とで電気的接触をなし、かつ導電性金属接点の形態の前面銀アルミニウム電極を形成し、裏面金属化ペースト206が裏面パッシベーション膜204の当該裏面金属化ペースト206に接触する表面をエッチングして貫通し、n
+多結晶シリコン層202bとで電気的接触をなし、かつ導電性金属接点の形態の裏面電極を形成するステップ(5)と、を含む。これにより、n-TOPCon太陽電池を得る。
【0117】
上記ステップの番号は、ステップの順序を限定するものではない。
【0118】
[第2種の導電性ペースト組成物]
本願は、光起電力デバイスのP型半導体とで低抵抗の電気的接続をなすことができる第2種の導電性ペースト組成物をさらに提供する。第2種の導電性ペースト組成物は、鉛の酸化物の代わりにビスマスの酸化物を用いるため、その毒性は、第1種の導電性ペースト組成物に比べてさらに低下する。以上の第2種の導電性ペースト組成物に対する説明において、第1種の導電性ペースト組成物と同じ部分は、参照により本部分に組み込まれる。好ましくは、本願の第2種の導電性ペースト組成物及びそれに含有されるビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、如何なる形態のテルル元素(Te)、例えばテルルの酸化物(TeO2)なども含有しない。以下、第2種の導電性ペースト組成物について具体的に説明する。
【0119】
本願のいくつかの実施例に係る第2種の導電性ペースト組成物は、
(1)ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットと、
(2)導電性成分と、
(3)アルミニウム単体成分と、
(4)有機媒体と、を含む。
【0120】
ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット、導電性成分及びアルミニウム単体成分は、導電性ペースト組成物の固形物成分とし、三者の重量百分率の和は、100%である。有機媒体は、導電性ペースト組成物中の分散相とし、印刷性能を提供する。
【0121】
ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、ガラス成分を有する組成物であり、導電性ペースト組成物の全固形物の0.5%~10%を占めてもよい。他のいくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの割合は、0.8%~9.8%であってもよく、1%~9.5%であってもよく、1.5%~9%であってもよく、さらに2%~8%であってもよく、さらに3%~7%であってもよく、さらに4%~6%であってもよく、さらに5%~5.5%であってもよい。導電性ペースト組成物中の各成分の百分率は、重量百分率(wt%)で表される。ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの導電性ペースト組成物の全固形物における割合の調整は、導電性ペースト組成物中の各成分の重量百分率の和が100%であることを保証する必要がある。
【0122】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、少なくとも50%~90%のBi2O3、2%~35%のB2O3及び0.1%~15%のSeO2を含有する。ガラスフリット中の各成分の百分率は、重量比(wt%)で表され、いずれもビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量に基づいて計算される。ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット中の各成分の割合の調整は、各成分の和が100%であることを保証する必要がある。
【0123】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量に基づいて計算すると、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットにおけるBi2O3の含有量(wt%)は、52%~90%であってもよく、55%~88%であってもよく、58%~85%であってもよく、60%~80%であってもよく、66.6%~75%であってもよく、68.9%~71.3%であってもよく、さらに70%~71%であってもよい。Bi2O3は、ガラスフリットにおいてPbOの役割を果たし、その熱性能を変更し、その溶融温度を低下させ、かつその流動性などを向上させることができ、毒性も低いため、PbOの代わりに用いて、さらにガラスフリットの毒性を低下させることができるが、Bi2O3は、1:1の比率でPbOを代えるものではなく、具体的な状況に応じて選択する必要がある。
【0124】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量に基づいて計算すると、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットにおけるB2O3の含有量(wt%)は、2%~20%であってもよく、3%~18%であってもよく、5%~16%であってもよく、7%~15%であってもよく、10.5%~12%であってもよく、10.9%~11.6%であってもよく、11.1%~11.3%であってもよい。含有量の調整は、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの各成分の含有量の和が100%であることを保証する必要がある。
【0125】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量に基づいて計算すると、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットにおけるSeO2の含有量(wt%)は、0.1%~15%であってもよく、0.2%~14%であってもよく、1%~13%であってもよく、2%~12.4%であってもよく、3.1%~9.3%であってもよく、さらに3.5%~6.2%であってもよい。
【0126】
いくつかの実施例において、上記3種類の基本成分に加えて、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、添加剤をさらに含有してもよい。添加剤は、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素から選択されるいずれか1種の元素の酸化物又は複数種の元素の酸化物の混合であってもよい。例示的には、添加剤は、SiO2、BiF3、AgO2、Ag2O、AgO、ZnO、MgO、CaO、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Ce2O及びFe2O3からなる群から選択されるいずれか1種又は複数種である。「複数種」は、任意の2種類の成分、任意の3種類の成分、任意の4種類の成分など、又は全ての成分を含む。添加剤中の各成分の含有量は、所望のガラス性能に応じて調整することができる。
【0127】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量に基づいて計算すると、添加剤の総含有量は、0.1%~25%であってもよく、2%~20%であってもよく、5%~15%であってもよく、8%~12%であってもよく、10.5%~11.7%であってもよく、さらに10.9%~11.2%であってもよい。
【0128】
いくつかの実施例において、添加剤がLi2Oを含有すれば、前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量に基づいて計算すると、Li2Oの含有量は、0.1%~5%であってもよく、0.2%~4.5%であってもよく、0.5%~4%であってもよく、又は0.7%~3.5%であってもよく、1%~3%であってもよく、1.5%~2.5%であってもよく、2%~2.2%であってもよい。ガラスフリット中の各成分の百分率は、重量百分率(wt%)である。
【0129】
他のいくつかの実施例において、添加剤がNa2Oを含有すれば、前記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量に基づいて計算すると、Na2Oの含有量は、0.1%~5%であってもよく、0.2%~4.7%であってもよく、0.3%~4.5%であってもよく、さらに0.5%~4%であってもよく、又は0.7%~3.5%であってもよく、1%~3%であってもよく、1.5%~2.5%であってもよく、2%~2.2%であってもよい。Li2O及びNa2Oは、アルカリ金属の酸化物であり、低融点を有し、ガラスフリットの溶融温度を低下させ、その流動性を向上させることができるため、添加剤の成分とすることができる。含有量の調整は、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの各成分の含有量の和が100wt%であることを保証する必要がある。
【0130】
他のいくつかの実施例において、添加剤がZnOを含有すれば、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの乾燥重量に基づいて計算すると、ZnOの含有量は、0.1%~20%であってもよく、0.5%~19%であってもよく、0.8%~15%であってもよく、さらに1%~12%であってもよく、又は2%~10%であってもよく、3%~8%であってもよく、5%~9%であってもよく、6%~8%であってもよい。ZnOは、遷移金属の酸化物に属し、ガラス修飾剤としてガラスの元の熱性能を変更することができるため、添加剤の成分とすることもできる。添加剤の残りの成分は同様である。
【0131】
ガラスフリットの様々な成分(基本成分及び添加剤などを含む)が導電性ペースト組成物中の銀アルミニウムペーストに対して不活性であることを保証すべきである。より具体的には、製造された光起電力デバイスの導電性能及び効率に影響を及ぼさないように、ガラスフリット中の各成分が銀アルミニウムペースト中のアルミニウム粉末と時期尚早に反応しないことを保証する。発明者らは、研究において、驚くべきことに、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットに添加されたSeO2がガラスフリットのTg点を低下させるとともに、銀アルミニウムペースト中のアルミニウム粉末を過剰に酸化せず、太陽電池などの光起電力デバイスに低抵抗の電気的接触を形成させることができることを見出した。したがって、本願のいくつかの実施例は、従来の鉛-シリコン-ホウ素ガラスフリットを代え、かつ前述した鉛-ホウ素-セレンガラスフリットに比べて毒性がより低く、毒性の低い光起電力デバイスの要件に適応することができるビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットを創造的に提供する。
【0132】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット中のビスマス-ホウ素-セレン酸化物は、焼結時に、完全非晶質状態であってもよく、一部が非晶質で他の一部が結晶状態であってもよい。ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット中のビスマス-ホウ素-セレン酸化物の結晶状態部分の含有量は、当該ビスマス-ホウ素-セレン酸化物の総重量の1.5%以下を占め、1%以下を占めてもよく、これにより後のスクリーン印刷過程及びエッチング過程に役立つ。
【0133】
いくつかの実施例において、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットの製造方法は、上記酸化物を必要な重量比に応じて配合し、次に高温焼結してそれを溶融状態にし、溶融物を均一に混合した後に迅速にアニーリングし、粉砕して粉末形態のビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットを形成する。導電性ペーストを製造する過程において均一に混合しやすいように、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット粉末の粒度は大きすぎないことが好ましく、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット粉末のD50は0.5~3.0マイクロメートルであってもよい。
【0134】
導電性成分
いくつかの実施例において、導電性成分は、光起電力デバイスを形成した後に導電の役割を果たすために用いられる。導電性成分は、銀単体、銀合金及び銀塩から選択される1種又は複数種の混合物であってもよい。銀塩は、AgCl、AgNO3、AgOOCH3(酢酸銀)、トリフルオロ酢酸銀又はオルトリン酸銀(Ag3PO4)から選択してもよい。
【0135】
いくつかの実施例において、導電性成分は、シート状、粒子状、コロイド状などの形態で存在してもよい。粒子状の形態で存在すれば、分散性に影響を及ぼさないように、導電性成分の粒度は、大きすぎないことが好ましい。いくつかの実施例において、導電性成分の平均粒度は、マイクロメートルスケールの範囲内であってもよく、例示的には、15マイクロメートル以下であってもよく、10マイクロメートル以下であってもよく、又は5マイクロメートル以下であってもよく、2マイクロメートル以下であってもよく、0.1マイクロメートル~1マイクロメートルの範囲内であってもよい。他のいくつかの実施例において、導電性成分の平均粒度は、ナノスケールの範囲内であってもよく、例示的には、800ナノメートル以下であってもよく、700ナノメートル以下であってもよく、500ナノメートル以下であってもよく、300ナノメートル以下であってもよく、200ナノメートル以下であってもよく、50ナノメートル以下であってもよく、又は10ナノメートル~20ナノメートルの範囲内であってもよい。
【0136】
他のいくつかの実施例において、導電性成分が導電性ペースト組成物の全固形物を占める重量百分率は、87%~99%であってもよく、88%~98%であってもよく、90%~97%であってもよく、91%~96%であってもよく、92%~95%であってもよく、さらに93%~94%であってもよい。導電性成分の導電性ペースト組成物の全固形物における割合の調整は、導電性ペースト組成物中の各成分の重量百分率の和が100%であることを保証する必要がある。
【0137】
アルミニウム単体成分
いくつかの実施例において、導電性ペースト組成物において、アルミニウム元素は、必要な成分である。アルミニウム単体成分は、アルミニウム粉末であってもよい。アルミニウム単体成分及び導電性成分は、有機媒体に分散され、高温焼結過程において、アルミニウム粉末は、低抵抗率のオーミック接触をなすことに役立つ。例示的には、導電性成分が銀単体であれば、当該導電性ペースト組成物は、銀アルミニウムペースト(Ag/Al paste)を含有する。
【0138】
発明者らは、研究において、本願の各実施例における第1種の導電性ペースト組成物及び第2種の導電性ペースト組成物中の酸化型成分が、いずれもアルミニウム粉末を過剰に酸化せず、また低い溶融温度及び高い流動性を有し、スクリーン印刷及びパッシベーション膜のエッチングなどの要件を満たすことができ、かつアルミニウム単体もp型エミッタとで低抵抗の電気的接触をなすことができ、それにより光起電力デバイスが優れた効率を有することを見出した。
【0139】
第2種の導電性ペースト組成物において、アルミニウム単体成分は、当該第2種の導電性ペースト組成物の全固形物の0.5%~3%を占めてもよく、0.8%~2.9%を占めてもよく、0.9%~2.8%を占めてもよく、1.0%~2.5%を占めてもよく、さらに1.2%~2.4%を占めてもよく、さらに1.5%~2.1%を占めてもよく、さらに1.6%~2.0%を占めてもよい。アルミニウム単体成分の導電性ペースト組成物の全固形物における割合の調整は、導電性ペースト組成物中の各成分の重量百分率の和が100%であることを保証する必要がある。
【0140】
いくつかの実施例において、アルミニウム単体成分は、粉末状で導電性ペースト組成物の他の成分と混合することができる。アルミニウム単体成分の平均粒度は、マイクロメートルスケールであってもよい。マイクロメートルスケールのアルミニウム単体成分として、その粒度範囲は、5マイクロメートル以下であってもよく、4マイクロメートル以下であってもよく、又は3マイクロメートル以下であってもよく、2マイクロメートル以下であってもよく、1マイクロメートル~5マイクロメートルの範囲内であってもよい。
【0141】
有機媒体
いくつかの実施例において、導電性成分、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット及びアルミニウム単体成分で構成された固形物に対して、有機媒体は、導電性ペースト組成物中の液相として、上記導電性成分、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット及びアルミニウム単体成分を分散して一定の粘度を有するペースト(Paste)を形成するために用いられる。スクリーン印刷後の高温焼結過程において、有機媒体は熱分解される。
【0142】
いくつかの実施例において、有機媒体は、ポリマー及び有機溶剤を含んでもよい。ポリマーは、セルロース、樹脂、エステル類などを含んでもよい。有機溶剤は、α-テルペン、β-テルペン、ジブチルフタレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ヘキシレングリコールなどを含んでもよい。セルロースは、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、又はそれらの混合物を含む。樹脂は、ウッドロジン又はフェノール樹脂、又はそれらの混合物を含む。エステル類は、低級アルコールのポリメタクリレートなどを含む。
【0143】
いくつかの実施例において、有機媒体のn型導電性ペースト組成物における含有量は、N型導電性ペースト組成物全体に必要な粘度、レオロジー及び自体の物理的特性に依存する。有機媒体の含有量は、導電性ペースト組成物の総重量の10%~40%を占めてもよく、12%~38%を占めてもよく、15%~35%を占めてもよく、さらに20%~30%を占めてもよい。当該百分率は、重量百分率である。
【0144】
本願のいくつかの実施例における導電性ペースト組成物(n-Type conductive paste composition)は、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット(Bi-B-Se酸化物)、銀粉末、アルミニウム粉末及び有機媒体を含む。ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、ビスマス、ホウ素及びセレン元素を含有し、高温焼結時にパッシベーション膜をエッチング又は腐食するために用いられる。有機媒体は、分散相に属し、上記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット、銀粉末及びアルミニウム粉末を分散するために用いられる。本願のいくつかの実施例における導電性ペースト組成物は、焼結後に、光起電力デバイスのパッシベーション膜をエッチングして貫通し、p型半導体とで低抵抗の接触をなすことができる。これは、従来のアルミニウムを含有しない導電性ペーストでは達成しにくい効果である。原因の1つは、アルミニウム粉末を含有しない導電性ペーストが、光起電力デバイスのパッシベーション膜を貫通した後にp型半導体とで低抵抗の電気的接触をなすことができないことであり、これは、最終的に光起電力デバイスの効率に影響を及ぼす。
【0145】
そして、発明者らは、セレン酸化物が、導電性ペーストの軟化点、溶融温度を低下させ、かつその流動性を向上させることに役立つことも見出した。
【0146】
また、本願のいくつかの実施例におけるn型導電性ペースト組成物は、毒性の強いタリウム元素、クロム元素及び鉛元素を含有せず、導電性ペースト全体を低い毒性の範囲内に制御することができる。
【0147】
したがって、本願のいくつかの実施例におけるビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット(Bi-B-Se酸化物を含有する)は、既知の鉛-ホウ素-セレンガラスフリット(Pb-Si-B酸化物を含有する)の代わりに、銀アルミニウムペーストと併用して、n型導電性ペースト組成物を製造することができ、光起電力デバイスを製造するときに、パッシベーション膜を貫通し、当該パッシベーション膜の下方のp型半導体とで良好な電気的接触をなすことができる。
【0148】
第2種の導電性ペースト組成物の製造方法
本願のいくつかの実施例は、上記配合比率に応じて導電性成分、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット及びアルミニウム単体成分を混合し、かつ一定量の有機媒体に分散し、均一に分散した後に第2種の導電性ペースト組成物を形成するステップを含む、第2種の導電性ペースト組成物の製造方法を提供する。ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット、導電性成分及びアルミニウム単体成分の配合比率の調整は、3種類の成分が導電性ペースト組成物の全固形物に占める重量百分率の和が100%であることを保証する必要がある。
【0149】
第2種の導電性ペースト組成物の応用
本願のいくつかの実施例における導電性ペースト組成物は、光起電力デバイス、例えば太陽電池の製造に用いることができる。例示的には、導電性ペースト組成物は、焼結過程において光起電力デバイスのパッシベーション膜を迅速にエッチングし、最終的に当該パッシベーション膜を貫通し、当該光起電力デバイスのp型半導体とで低い抵抗率を有する電気的接触をなす。p型半導体は、好ましくは、シリコン基板から製造されるp型エミッタであってもよい。
【0150】
本願のいくつかの実施例は、第3種の光起電力デバイスを提供し、それはn-PERT太陽電池(Passivated Emitter、Rear Totally Diffused)であり、製造時に第2種の導電性ペースト組成物を利用する。それ以外の、他の構造、材料及び製造方法などは、第1種の光起電力デバイスと同様である。本願における第1種の光起電力デバイスに対する説明は、参照により本部分に組み込むことができる。
【0151】
本願のいくつかの実施例は、第4種の光起電力デバイスを提供し、それは、トンネル酸化膜パッシベーションコンタクト太陽電池(Tunnel Oxide Passivated Contact、n-TOPCon)であり、製造時に第2種の導電性ペースト組成物を利用する。それ以外の、他の構造、材料及び製造方法などは、第1種の光起電力デバイスと同様である。本願における第2種の光起電力デバイスに対する説明は、参照により本部分に組み込むことができる。
【0152】
以下、具体的な実施例を参照して本願の技術的解決手段をさらに説明する。
【0153】
実施例1~5は、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットに関連する。
【0154】
実施例1~5の鉛-ホウ素-セレンガラスフリット及び比較例1~6の鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの各成分の含有量を表1及び表2に示す。表中の各数値は、重量百分率(wt%)である。例えば、実施例1おける74.5は、当該実施例におけるPbOが実施例1における鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの総重量の74.5wt%を占めることを指す。他の成分は同様である。実施例1~5の鉛-ホウ素-セレンガラスフリット及び比較例1~6の鉛-ホウ素-セレンガラスフリットから製造されたn-PERT太陽電池の品質検査データを表3に示す。
【0155】
【0156】
【0157】
各実施例の鉛-ホウ素-セレンガラスフリット及び比較例のガラスフリットを用いて導電性ペースト組成物を製造し、かつ当該導電性ペースト組成物を用いてn型太陽電池を製造する。上記実施例における2種類のn型太陽電池の前面に用いられるペーストは、同じであってもよい。導電性ペースト中の固形物の含有量の和を100wt%として計算すると、導電性ペースト組成物は、4.38%の鉛-ホウ素-セレンガラスフリット、94.52%の導電性成分(銀粉末)及び1.1%のアルミニウム単体成分(アルミニウム粉末)を含有する。いくつかの実施例において、3種類の成分の含有量は、上記数値に限定されなくてもよい。
【0158】
【0159】
上表において、直列抵抗Rsは、前面電極としての金属ゲート線の抵抗rmf、金属ゲート線と前表面との間の接触抵抗rcl、前表面拡散層の抵抗rt、ベース抵抗rb、下部電極と半導体シリコンとの接触抵抗rc2、上部電極金属ゲート線の抵抗rmbを含む。即ち、Rs=rmf+rcl+rt+rb+rc2+rmbである。
【0160】
変換効率ηは、照射されたときの太陽電池の最大電力と当該太陽電池に入射された全ての放射電力P総との百分率を指し、即ち、η=IscUocFF/P総=UmpImp/(AtPin)であり、Ump及びImpは、それぞれ最大出力電力点に対応する電圧及び電流であり、Atは、太陽電池の総面積であり、Pinは、単位面積当たりの入射光の電力である。実際に試験するときに、Berger IVという型番の効率試験機を用いて太陽電池の効率を試験する。試験方法は、当該効率試験機のキセノンアークランプを用いて強度AM1.5の太陽光をシミュレートし、かつ太陽電池の前面に照射し、多点接触法を用いて太陽電池の各点の電流値及び電圧値を測定し、当該太陽電池の電流電圧曲線を生成し、当該電流電圧曲線に基づいて太陽電池の効率を算出することを含む。
【0161】
曲線因子(FF)は、太陽電池の最大電力と「開放電圧と短絡電流との積」との比であり、即ち、FF=ImpUmp/(IscUoc)であり、式中、IscUocは、太陽電池の限界出力電力であり、ImpUmpは、太陽電池の最大出力電力である。
【0162】
上記実施例及び比較例の鉛-ホウ素-セレンガラスフリットの製造方法は、表1及び表2に示される配合比率に応じて各成分を混合し、次に坩堝又は溶融炉で、900℃~1200℃の熱処理温度で熱処理するステップと、各成分が完全溶融状態に達した後に、30分間熱処理し続け、次に焼入れ、粉砕し、篩にかけた後にD50が1.0~3.0マイクロメートルの粉末物、即ち鉛-ホウ素-セレンガラスフリットを得るステップと、を含む。
【0163】
実施例1~5の鉛-ホウ素-セレンガラスフリット及び比較例1~6の鉛-ホウ素-セレンガラスフリットにおいて、B2O3、SiO2、Al2O3などの成分は、ガラスネットワーク状体系を形成するために用いられ、SeO2、TeO2、Li2O、K2O、Na2Oなどの低融点を有する金属成分は、ガラス体系全体のTg点(ガラス転移温度)を低下させるために用いられ、PbO、Bi2O3、ZnOは、ガラス修飾剤として、ガラス体系を改質し、また一定の腐食性を有し、導電性ペースト及び光起電力デバイスを焼結するときに光起電力デバイスのパッシベーション膜をエッチングして貫通するために用いられ、それにより光起電力デバイスのP型半導体とで電気的接触をなす。
【0164】
比較例の鉛-ホウ素-セレンガラスフリットにTeO2が添加され、実施例の鉛-ホウ素-セレンガラスフリットにSeO2が添加された。上記比較例及び実施例を試験した後、発明者らは、驚くべきことに、比較例及び実施例における鉛-ホウ素-セレンガラスフリットを、銀アルミニウムペーストを含有するn型導電性ペースト組成物に調製して、光起電力デバイスのパッシベーション膜の表面に塗布した後、後の焼結過程において、比較例の導電性ペースト中のTeO2が導電性ペーストの銀アルミニウムペースト中のアルミニウム単体を酸化アルミニウムに酸化し、それにより光起電力デバイスのp型半導体とで低抵抗の電気的接触をなすことができず、これが光起電力デバイスの効率を低下させることを見出した。
【0165】
表3のTg点のデータに示すように、各実施例におけるTg点は、いずれも比較例より小さく、これは、TeO2の代わりにSeO2を用いると、Tg点を低下させることができることを示す。
【0166】
表3の直列抵抗のデータに示すように、TeO2の含有量が1.3wt%を超えると、接触抵抗が大幅に増加し、これは、TeO2の含有量が徐々に増加するにつれて、アルミニウム単体に対する酸化程度が徐々に増加するため、接触抵抗が徐々に増加することを示し、かつ接触抵抗の増加につれて、光起電力デバイスの曲線因子及び効率も低下する。
【0167】
表3は、TeO2の添加量の増加につれて、光起電力デバイスの効率が迅速に低下する現象を示す。比較例3のデータから分かるように、TeO2の含有量が1.3wt%であるとき、太陽電池の効率が8.83%に減衰し、これは、光起電力デバイスが正常に使用される場合の効率要件を満たすことができない。比較例4~6のデータから分かるように、TeO2の含有量のさらなる増加につれて、太陽電池の効率は減衰し、5%以下までさえ減衰する。これは、少量のTeO2でも銀アルミニウムペースト中のアルミニウム単体を酸化して、光起電力デバイスの効率に大きな影響を及ぼすことを示す。
【0168】
また、表3は、光起電力デバイスの効率がSeO2の添加量の増加につれて基本的に変化しない傾向も示す。表3の実施例1~実施例5のデータから分かるように、ガラスフリット中のSeO2の含有量が1.9%から13.1%まで増加しても、光起電力デバイスの効率が21%より低くなることはなく、商業的適用時の光起電力デバイスに対する効率要件を満たすことができる。これは、SeO2の添加量がTeO2よりはるかに高くても、銀アルミニウムペースト中のアルミニウム単体を基本的に酸化せず、それによりアルミニウム単体と光起電力デバイスのP型半導体との接触抵抗に影響を及ぼさず、さらに光起電力デバイスの効率に影響を及ぼさないことを示す。
【0169】
実施例6~9は、ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットに関連する。
【0170】
実施例1~5に比べて、本実施例に係るビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、鉛の酸化物の代わりにビスマスの酸化物を用いる。光起電力デバイスの効率を基本的に一定に維持するために、ビスマスの酸化物と鉛の酸化物は、1:1の等量置換ではなく、具体的な状況に応じて調整する必要がある。各組成物のカチオン含有量を表4に示す。
【0171】
【0172】
各実施例のビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット及び比較例のガラスフリットを用いて導電性ペースト組成物を製造し、かつ当該導電性ペースト組成物を用いてn-型太陽電池を製造する。上記実施例で言及した2種類のn-型太陽電池の前面ペーストは、同じであってもよい。導電性ペースト組成物中の固形物の含有量の和を100wt%として計算すると、導電性ペースト組成物は、4.38%のビスマス-ホウ素-セレンガラスフリット、94.52%の導電性成分(銀粉末)及び1.1%のアルミニウム単体成分(アルミニウム粉末)を含有する。
【0173】
【0174】
表4において、PbOの代わりにBi2O3を用いているが、B2O3の含有量及びLi2Oの含有量を増加させ、Al2O3及びZnOの含有量を低下させている。表3において、K2Oを添加していないが、K2Oをアルカリ金属酸化物として他の実施例に添加してもよい。比較例7は、SeO2を添加していないことを示し、実施例6~9は、含有量が徐々に増加する傾向でSeO2を添加することを示す。表5は、光起電力デバイスの効率がSeO2の添加につれて明らかな利点を有するようになることを示す。表5から分かるように、上記ビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットを用いて銀アルミニウムペーストを含有する導電性ペースト組成物に製造し、導電性ペースト組成物を光起電力デバイスのパッシベーション膜の表面に形成した後、焼結過程において、ガラスフリット中のSeO2の含有量が3.1wt%から12.4wt%まで増加しても、光起電力デバイスの効率が基本的に21%~22%の間に維持される。これは、無鉛体系において、SeO2の添加量が12wt%に達しても、銀アルミニウムペースト中のアルミニウム単体を酸化せず、それによりアルミニウム単体と光起電力デバイスのp型半導体の抵抗率に影響を及ぼさず、さらに光起電力デバイスの効率に影響を及ぼさないことを示す。本実施例の光起電力デバイスの効率試験方法は、実施例1と同じである。
【0175】
また、太陽電池自体の効率が制限されるため、太陽電池の分野において、効率の変動率が0.05%であれば、当該効率の変動が顕著である。表5から分かるように、陰性対照群は、SeO2を含有せず、製造された太陽電池の効率は、21.4%である。実施例6のガラスフリットは、3%のSeO2を含有し、製造された太陽電池の効率は、陰性対照群より0.3%向上する。実施例7のガラスフリットは、6%のSeO2を含有し、製造された太陽電池の効率は、陰性対照群より0.2%向上する。上記データは、少量のSeO2を添加して製造された太陽電池の効率がSeO2を添加しない対照例に比べて顕著であり、また、SeO2の添加量が高くても、太陽電池の効率を大幅に低下させず、依然として太陽電池の効率を基本的に21%~22%の間に維持することができることを示す。
【0176】
実施例1~9の実験データから分かるように、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットとビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットで製造された太陽電池の直列抵抗、効率、曲線因子などの性能には大きな差がなく、これは、この2種類のガラスフリットを、太陽電池を製造するときに互いに入れ替えてもよいことを示す。即ち、鉛-ホウ素-セレンガラスフリットとビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットは、n-PERT太陽電池の製造に用いられるだけでなく、n-TOPCon太陽電池の製造に用いることができる。
【0177】
上記各実施例は、本願の発明者らが鉛-ホウ素-セレンガラスフリット及びビスマス-ホウ素-セレンガラスフリットを創造的に発明し、この2種類のガラスフリットを具体的な状況に応じて互いに入れ替えてもよいことを示す。上記ガラスフリットは、銀アルミニウムペーストを含有するn型導電性ペースト組成物に製造した後、その中の各成分が焼結時に銀アルミニウムペースト中のアルミニウム単体を過剰に酸化しないため、低い抵抗率を有する光起電力デバイスの製造に用いることができる。
【0178】
以上、本願について詳細に説明した。本明細書において具体例を用いて本願の原理及び実施形態を解説したが、以上の実施例の説明は、本願の方法及びその主旨の理解を助けるためのものに過ぎず、また、当業者であれば、本願の思想に照らし、具体的な実施形態及び適用範囲を変更することが可能である。即ち、本明細書の内容は、本願を限定するものと理解すべきではない。
【符号の説明】
【0179】
110 半導体基材
100 n型結晶シリコン基板(n型低濃度ドープ基板とも呼ばれる)
101 前面p型エミッタ(p型半導体とも呼ばれる)
102 裏面電界(n+高濃度ドープ半導体とも呼ばれる)
103 前面パッシベーション膜
104 裏面パッシベーション膜
105 前面銀アルミニウムペースト
106 裏面金属化ペースト
107 前面導電性構造
108 裏面導電性構造
210 半導体基材
200 n型結晶シリコン基板
201 前面p型エミッタ
202a トンネルパッシベーション膜
202b n+ポリ結晶シリコン層
203 前面パッシベーション膜
204 裏面パッシベーション膜
205 前面銀アルミニウムペースト
206 裏面金属化ペースト
207 前面導電性構造
208 裏面導電性構造