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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】火災感知器点検装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20241220BHJP
   G08B 17/06 20060101ALI20241220BHJP
   G08B 17/10 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
G08B17/00 K
G08B17/06 K
G08B17/10 L
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023195346
(22)【出願日】2023-11-16
【審査請求日】2024-10-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521071219
【氏名又は名称】株式会社RoboSapiens
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(72)【発明者】
【氏名】長尾 俊
(72)【発明者】
【氏名】菅原 雄介
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-120692(JP,A)
【文献】特開2022-151202(JP,A)
【文献】特開2019-215934(JP,A)
【文献】特開2023-002886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
G08B 17/02 - 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面に設置された火災感知器を点検するための火災感知器点検装置であって、
長尺プレートを巻尺状に巻き取って装置内に格納する複数の格納部と、
各格納部から上方向に繰り出された複数の長尺プレートから成るテープ体と、
前記テープ体の上端部に固定され、前記火災感知器の点検に用いる試験器が脱着可能に装着される台部と、
前記テープ体を装置外へ繰り出して前記台部を上方向に移動させると共に、前記テープ体を装置内に巻き戻して前記台部を下方向に移動させる駆動部と
を備えることを特徴とする火災感知器点検装置。
【請求項2】
前記火災感知器が設けられた天井面に、前記試験器に対応する位置を示すマークを投影する照準装置
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の火災感知器点検装置。
【請求項3】
前記照準装置は、天井面に光を照射して得られる直線状のマークが前記試験器に対応する位置を通るように設けられた複数の照射装置を含むことを特徴とする請求項2に記載の火災感知器点検装置。
【請求項4】
前記マークが投影された天井面を撮像するカメラと、
前記カメラによる撮像画像を表示する表示部と
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の火災感知器点検装置。
【請求項5】
前記マークが投影された天井面を撮像するカメラと、
外部装置と通信する通信部と
をさらに備え、
前記カメラによる撮像画像が、前記通信部を介して前記外部装置の表示部に表示される
ことを特徴とする請求項2に記載の火災感知器点検装置。
【請求項6】
前記テープ体の繰出方向の鉛直方向からのずれを検知するセンサと、
前記センサの検知結果と所定の閾値との比較結果を報知する報知部と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の火災感知器点検装置。
【請求項7】
前記複数の格納部の水平面に対する傾きを変更する水平機構
をさらに備え、
前記水平機構によって前記テープ体の繰出方向が鉛直方向に調整される
ことを特徴とする請求項1に記載の火災感知器点検装置。
【請求項8】
前記水平機構は、
前記複数の格納部が固定されたテーブルと、
前記テーブルの複数箇所に離間して設けられ、各箇所における前記テーブルの高さを変更する複数の高さ調整部材と
を含むことを特徴とする請求項7に記載の火災感知器点検装置。
【請求項9】
前記複数の格納部の水平面に対する傾きを検知するセンサと、
前記水平機構を駆動する水平機構駆動部と
をさらに備え、
前記センサの検知結果に基づいて前記水平機構駆動部を制御して、前記テープ体の繰出方向が鉛直方向に調整される
ことを特徴とする請求項7に記載の火災感知器点検装置。
【請求項10】
前記複数の格納部を第1方向に移動させる第1移動機構と、
前記複数の格納部を前記第1方向と直交する第2方向に移動させる第2移動機構と
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の火災感知器点検装置。
【請求項11】
前記第1移動機構は、前記第1方向を軸方向とする第1ネジ軸と、前記第1ネジ軸の回転に伴って前記第1方向へ移動する第1移動テーブルとを含み、
前記第2移動機構は、前記第2方向を軸方向とする第2ネジ軸と、前記第2ネジ軸の回転に伴って前記第2方向へ移動する第2移動テーブルとを含み、
前記第1移動テーブルに前記第2移動機構が固定され、前記第2移動テーブルに前記複数の格納部が固定されている
ことを特徴とする請求項10に記載の火災感知器点検装置。
【請求項12】
前記火災感知器が設けられた天井面に、前記試験器に対応する位置を示すマークを投影する照準装置と、
前記マーク及び前記火災感知器を撮像するカメラと、
前記第1移動機構及び前記第2移動機構を駆動する移動機構駆動部と
をさらに備え、
前記カメラによる撮像画像に基づいて前記移動機構駆動部を制御して、前記マークが示す前記試験器に対応する位置が前記火災感知器の位置と重なるように、前記複数の格納部の位置が調整される
ことを特徴とする請求項10に記載の火災感知器点検装置。
【請求項13】
前記複数の格納部が内部に収められた本体部と、
前記本体部から前記テープ体を繰り出して上方へ移動した前記台部の下方で、前記テープ体を間に挟んで前記本体部に脱着可能に装着される補助具と
をさらに含み、
前記本体部に装着された前記補助具は、前記本体部の上面から上方に離間した位置で前記テープ体を支持する支持面を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の火災感知器点検装置。
【請求項14】
前記補助具は、前記テープ体を間に挟んだまま上下方向に移動可能、かつ、複数の前記補助具を上下方向に連結可能な形状を有することを特徴とする請求項13に記載の火災感知器点検装置。
【請求項15】
車輪による走行移動及び移動方向の変更を可能とする走行機構と、
前記走行機構を駆動する走行機構駆動部と
をさらに備え、
前記走行機構駆動部を制御して自走移動しながら前記火災感知器の点検を実行するロボット装置である
ことを特徴とする請求項1に記載の火災感知器点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、火災感知器の点検に利用する火災感知器点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災感知器によって火災の発生を感知して警報を発する自動火災報知設備が利用されている。火災感知器は熱や煙によって火災の発生を感知する。マンション、公共施設等の建物では、火災感知器による感知結果を受信機に受信して警報器から警報を発する自動火災報知設備を設置し、各機器を定期的に点検することが義務付けられている。火災感知器の点検は、火災感知器に近づけた試験器で実際に熱や煙を発生させることによって行われる。例えば特許文献1には、支持棒の先端に加煙型の試験器を取り付けて、天井に設置された火災感知器を点検する点検装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-250858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、火災感知器の正常動作が確認できるまで、支持棒を持ち上げて試験器を天井の火災感知器に押し当て続ける必要があり、点検担当者の負担となっていた。床から天井までの高さが高い建物では、支持棒だけでは火災感知器に届かず、脚立、ローリングタワー、高所作業車等、高所作業用の機器を準備して点検を行う必要があり、高所作業の危険性や、機器を準備するための手間やコストが問題となっていた。
【0005】
本開示は、上記課題を含む従来技術を鑑みてなされたもので、その目的の1つは、火災感知器の点検を容易に行うことができる火災感知器点検装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る火災感知器点検装置は、天井面に設置された火災感知器を点検するための火災感知器点検装置であって、長尺プレートを巻尺状に巻き取って装置内に格納する複数の格納部と、各格納部から上方向に繰り出された複数の長尺プレートから成るテープ体と、前記テープ体の上端部に固定され、前記火災感知器の点検に用いる試験器が脱着可能に装着される台部と、前記テープ体を装置外へ繰り出して前記台部を上方向に移動させると共に、前記テープ体を装置内に巻き戻して前記台部を下方向に移動させる駆動部とを備える。
【0007】
上記構成において、前記火災感知器が設けられた天井面に、前記試験器に対応する位置を示すマークを投影する照準装置をさらに備えていてもよい。
【0008】
上記構成において、前記照準装置は、天井面に光を照射して得られる直線状のマークが前記試験器に対応する位置を通るように設けられた複数の照射装置を含んでいてもよい。
【0009】
上記構成において、前記マークが投影された天井面を撮像するカメラと、前記カメラによる撮像画像を表示する表示部とをさらに備えていてもよい。
【0010】
上記構成において、前記マークが投影された天井面を撮像するカメラと、外部装置と通信する通信部とをさらに備え、前記カメラによる撮像画像が、前記通信部を介して前記外部装置の表示部に表示されてもよい。
【0011】
上記構成において、前記テープ体の繰出方向の鉛直方向からのずれを検知するセンサと、前記センサの検知結果と所定の閾値との比較結果を報知する報知部とをさらに備えていてもよい。
【0012】
上記構成において、前記複数の格納部の水平面に対する傾きを変更する水平機構をさらに備え、前記水平機構によって前記テープ体の繰出方向が鉛直方向に調整されてもよい。
【0013】
上記構成において、前記水平機構は、前記複数の格納部が固定されたテーブルと、前記テーブルの複数箇所に離間して設けられ、各箇所における前記テーブルの高さを変更する複数の高さ調整部材とを含んでいてもよい。
【0014】
上記構成において、前記複数の格納部の水平面に対する傾きを検知するセンサと、前記水平機構を駆動する水平機構駆動部とをさらに備え、前記センサの検知結果に基づいて前記水平機構駆動部を制御して、前記テープ体の繰出方向が鉛直方向に調整されてもよい。
【0015】
上記構成において、前記複数の格納部を第1方向に移動させる第1移動機構と、前記複数の格納部を前記第1方向と直交する第2方向に移動させる第2移動機構とをさらに備えていてもよい。
【0016】
上記構成において、前記第1移動機構は、前記第1方向を軸方向とする第1ネジ軸と、前記第1ネジ軸の回転に伴って前記第1方向へ移動する第1移動テーブルとを含み、前記第2移動機構は、前記第2方向を軸方向とする第2ネジ軸と、前記第2ネジ軸の回転に伴って前記第2方向へ移動する第2移動テーブルとを含み、前記第1移動テーブルに前記第2移動機構が固定され、前記第2移動テーブルに前記複数の格納部が固定されていてもよい。
【0017】
上記構成において、前記火災感知器が設けられた天井面に、前記試験器に対応する位置を示すマークを投影する照準装置と、前記マーク及び前記火災感知器を撮像するカメラと、前記第1移動機構及び前記第2移動機構を駆動する移動機構駆動部とをさらに備え、前記カメラによる撮像画像に基づいて前記移動機構駆動部を制御して、前記マークが示す前記試験器に対応する位置が前記火災感知器の位置と重なるように、前記複数の格納部の位置が調整されてもよい。
【0018】
上記構成において、前記複数の格納部が内部に収められた本体部と、前記本体部から前記テープ体を繰り出して上方へ移動した前記台部の下方で、前記テープ体を間に挟んで前記本体部に脱着可能に装着される補助具とをさらに含み、前記本体部に装着された前記補助具は、前記本体部の上面から上方に離間した位置で前記テープ体を支持する支持面を含んでいてもよい。
【0019】
上記構成において、前記補助具は、前記テープ体を間に挟んだまま上下方向に移動可能、かつ、複数の前記補助具を上下方向に連結可能な形状を有していてもよい。
【0020】
上記構成において、車輪による走行移動及び移動方向の変更を可能とする走行機構と、前記走行機構を駆動する走行機構駆動部とをさらに備え、前記走行機構駆動部を制御して自走移動しながら前記火災感知器の点検を実行するロボット装置であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本開示に係る火災感知器点検装置によれば、点検担当者は、試験器を取り付けた支持棒を持ち続ける必要がない。火災感知器の点検を容易に行うことが可能となり担当者の作業負担が軽減する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態1に係る火災感知器点検装置の概要を説明するための図である。
図2図2は、試験器の利用方法を説明するための図である。
図3図3は、照準装置の例を説明するための図である。
図4図4は、火災感知器点検装置の機能構成例を示すブロック図である。
図5図5は、火災感知器点検装置の内部構成例を説明するための図である。
図6図6は、巻尺部の構成例を示す図である。
図7図7は、テープ体の繰出及び格納に利用するローラの例を示す図である。
図8図8は、補助具の使用方法を説明するための図である。
図9図9は、補助具の構成例を示す図である。
図10図10は、補助具の連結方法を説明する図である。
図11図11は、補助具の連結方法を説明するための断面模式図である。
図12図12は、実施形態2に係る火災感知器点検装置の機能構成例を示すブロック図である。
図13図13は、実施形態2に係る火災感知器点検装置の内部構成例を示す図である。
図14図14は、実施形態2に係る火災感知器点検装置が実行する自動処理の流れの例を示すフローチャートである。
図15図15は、実施形態2に係る火災感知器点検装置の使用例を説明するための図である。
図16図16は、実施形態3に係る火災感知器点検装置の構成例を示すブロック図である。
図17図17は、実施形態3に係る火災感知器点検装置が実行する自動処理の流れの例を示すフローチャートである。
図18図18は、試験器の別の脱着例を示す図である。
図19図19は、巻尺部の別の構成例を示す図である。
図20図20は、補助具の別の構成例を示す図である。
図21図21は、図20に示す補助具の使用方法を説明するための図である。
図22図22は、補助具のさらに別の構成例を示す図である。
図23図23は、テープ体の別の例を示す図である。
図24図24は、図24に示すテープ体に対応する補助具の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る火災感知器点検装置の実施の形態について説明する。火災感知器点検装置が点検対象とする火災感知器の種類は特に限定されないが、点検対象には、煙を感知する火災感知器と、熱を感知する火災感知器とが含まれる。火災感知器の点検方法は従来知られているため詳細な説明は省略するが、煙感知型の火災感知器の点検は、加煙試験器で火災感知器を覆うようにして内部に煙を発生させて行われる。熱感知型の火災感知器の点検は、加熱試験器で火災感知器を覆うようにして内部を加熱することによって行われる。以下、煙、熱等を発生させる点検用の機器を「試験器」と記載して、火災感知器点検装置と区別する。
【0024】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る火災感知器点検装置1の概要を説明するための図である。火災感知器点検装置1は、本体部10と、本体部10から繰出格納されるテープ体100と、テープ体100先端の台部110に脱着可能に固定された試験器200とを含む。
【0025】
図1には、直交する3次元座標軸を示している。他の一部の図にも、各図に示した構成部の関係を示すための座標軸を示している。XY平面が水平面を示し、Z軸が上下方向を示している。Y軸は、テープ体100の幅方向を示している。
【0026】
火災感知器点検装置1は、テープ体100を巻尺機構によって繰り出したり巻き戻したりすることによって、試験器200を上下方向に移動させることができる。テープ体100の装置外への繰り出しと、装置内へのテープ体100の格納とによって、試験器200は上下方向に往復直線移動する。火災感知器点検装置1の本体部10からテープ体100を上方へ繰り出して、火災感知器2の設置位置まで試験器200を上昇移動させて火災感知器2の点検が行われる。以下、火災感知器点検装置を「点検装置」と記載し、火災感知器を「感知器」と記載して説明を続ける。
【0027】
図1に示すように、点検装置1の本体部10底面に複数の車輪20が取り付けられ、床面に沿って点検装置1を移動できるようになっている。車輪20には、図示しないロック機構が設けられ、ロック機構によって車輪20をロックすると、床面上における本体部10の位置が固定される。ただし、本体部10が車輪20を有する態様に限定されず、車輪20を有さない本体部10を、持ち上げて運搬移動する態様であってもよいし、台車等に載せて移動させる態様であってもよい。
【0028】
本体部10には、操作部31が設けられている。点検装置1の利用者は、操作部31を操作して、本体部10から上方へテープ体100を繰り出すことにより試験器200を上昇させることができる。利用者は、操作部31を操作して、テープ体100を本体部10の内部へ巻き取って格納することにより試験器200を降下させることができる。操作部31は、押しボタン等の機械式の操作子であってもよいし、タッチパネル式の液晶型の操作子であってもよい。
【0029】
本体部10に、点検装置1の利用に関する情報を表示する表示部32が設けられていてもよい。例えば、点検作業を開始する前に、テープ体100の繰出方向及び格納方向を鉛直方向とするよう指示する情報が表示部32に表示される。本体部10の上面に液晶表示装置を設けて表示部32として利用する態様であってもよいし、タッチパネル式の液晶表示装置を操作部31及び表示部32として利用する態様であってもよい。
【0030】
本体部10に、点検装置1の利用に関する情報を報知する報知部33が設けられていてもよい。例えば、利用者が操作部31を操作して試験器200を上昇させる際、テープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向からずれている場合に、報知部33が利用者にこれを報知する。報知は、音を発することによって行われてもよいし、発光状態を変更することによって行われてもよい。テープ体100の繰出方向及び格納方向と鉛直方向との間の角度は従来知られているセンサを利用して検知すればよい。報知部33による報知に代えて又は加えて、表示部32に所定情報を表示することによって報知が行われる態様であってもよい。
【0031】
テープ体100は、複数の長尺プレート100a、100bによって構成されている(図6(a)参照)。各長尺プレート100a、100bは、薄板帯形状の金属プレートが幅方向(Y軸方向)に円弧状に湾曲した断面湾曲形状を有する。例えば、厚み0.3mm、幅50mm程度のSUS304等のステンレス鋼を、幅が30~35mm程度となるまで湾曲させた形状の長尺プレート100a、100bが、テープ体100に利用される。2つの長尺プレート100a、100bは、湾曲形状の幅方向略中央部で凸側の面が対向する位置関係で配置されて、テープ体100として利用される。ただし、本実施形態に記載するようにテープ体100の繰出及び格納を行うことができれば、テープ体100の材質、寸法及び形状は特に限定されない。
【0032】
テープ体100の先端に、試験器200を装着する台部110が固定されている。台部110に脱着可能に固定した試験器200によって、感知器2の点検が行われる。
【0033】
図2は、試験器200の利用方法を説明するための図である。図2(a)に示すように、加煙式の試験器200や、加熱式の試験器200等、複数種類の試験器200を、台部110に装着することができる。感知器2の種類や点検目的に応じて、台部110の試験器200を付け替えて感知器2の点検が行われる。図1に示すように台部110に試験器200を固定した後も、試験器200の本体部220は、軸201周りに回動できるようになっている。
【0034】
図2(a)に示すように、本体部220を回動可能に支持する支持部230の底面に脱着部240が設けられ、脱着部240が、台部110に対して脱着可能に固定される。支持部230を台部110に固定することができれば脱着方法は特に限定されない。ネジ止め式、スナップフィット式、マグネット式、ラチェット式、嵌合式等の従来知られている方法で脱着すればよい。
【0035】
試験器200は、上面が水平となる状態で支持部230に支持される。図2(b)に示すように、感知器2が斜めに取り付けられている場合、点検装置1の本体部10からテープ体100を繰り出して試験器200を上昇させると、本体部220の上面一部のみが先に天井面に接触する。さらに試験器200を上昇させると、本体部220が軸201周りに回動して傾き始める。これにより、図2(c)に示すように、試験器200の本体部220上面略全体を、傾斜した天井面に接触させて、感知器2を本体部220内部に収める形で感知器2を点検できるようになっている。
【0036】
試験器200の本体部220上部に、照準装置210(210a、210b)が設けられている。図1に破線で示すように、例えば円筒形状を有する本体部220の中心軸に対応する位置が分かるように、照準装置210が天井面にマーク250(250a、250b)を投影する。
【0037】
図3は、照準装置210の例を説明するための図である。照準装置210は複数のレーザ装置210a、210bを含む。レーザ装置210a、210bは、直線状のレーザ光を照射するラインマーカ型の照射装置である。各レーザ装置210a、210bは、天井面に投影される直線状のラインマーク250a、250bが、試験器200の本体部220の中心軸上を通るように、位置を調整して本体部220に固定されている。各レーザ装置210a、210bから天井面に投影される複数のラインマーク250a、250bの交点によって、試験器200に対応する位置、すなわち試験器200の本体部220の中心軸に対応する位置が特定される。
【0038】
図3に示す例では、2つのレーザ装置210a、210bが、一方からY軸方向にラインマーク250aを投影し、他方からX軸方向にラインマーク250bを投影し、2つのラインマーク250a、250bが直交するように、本体部220に固定されている。図1に示すように、試験器200が天井面から下方に遠く離れている場合でも、照準装置210によって、試験器200に対応する位置を特定可能なマーク250が天井面に投影される。利用者は、天井面のマーク250を確認しながら点検装置1を移動させることができる。利用者は、図3に示すように、複数のラインマーク250a、250bが天井面に示す試験器200の本体部220の中心軸に対応する位置が感知器2の中心位置と重なるように点検装置1を移動させて試験器200の位置を調整した後、操作部31を操作して試験器200を上昇させて感知器2を点検する。
【0039】
図4は、点検装置1の機能構成例を示すブロック図である。点検装置1は、図1図3に示した構成部の他に、記憶部40、制御部50、駆動部60及び傾斜センサ70を含む。
【0040】
記憶部40は、点検装置1の動作に必要なプログラムやデータを保存する不揮発性の記憶装置である。駆動部60は、巻尺機構を駆動してテープ体100の繰出及び格納を行うモータ等のアクチュエータである。傾斜センサ70は、傾斜方向及び傾斜角度を検知可能なセンサで、テープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向と一致するか否かを検知するために、点検装置1に固定して利用される。
【0041】
制御部50は、点検装置1を構成する各部を制御する。制御部50は、鉛直検知部50a、報知制御部50b及び繰出格納制御部50cを含む。例えば、これらに対応するプログラムが記憶部40に予め記憶されており、CPU等のハードウェアがプログラムを実行することによって制御部50の機能及び動作が実現される。
【0042】
鉛直検知部50aは、傾斜センサ70による検知結果に基づいて、テープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向であるか否かを判定する。報知制御部50bは、鉛直検知部50aの判定結果に基づいて報知処理を実行する。例えば、テープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向から所定の誤差範囲を超えてずれている場合に、これを利用者に報知する報知処理が、表示部32及び/又は報知部33を利用して実行される。テープ体100の繰出方向及び格納方向が、鉛直方向から所定の閾値を超えてずれている場合に音、光、情報表示等による利用者への報知が行われる。
【0043】
繰出格納制御部50cは、操作部31で行われる操作に基づいて駆動部60を制御して、本体部10からのテープ体100の繰出と本体部10へのテープ体100の格納とを行う。
【0044】
図5は、点検装置1の内部構成例を説明するための図である。図5(a)は、点検装置1の構成例を示す模式図である。図5(b)は、点検装置1の外観例を示す図である。図5(a)に示す構成部が、図5(b)に示すように本体部10の内部に収められている。図5(b)には、図5(a)に示す一部の構成部300、301を破線で示している。
【0045】
図5(a)に示すように、テープ体100の繰出及び格納を行う巻尺機構を含む巻尺部300に、傾斜センサ70と、テープ体100の繰出及び格納を行うための駆動部60(60a、60b)とが設けられている。巻尺部300は、巻尺部300の位置を移動するための移動機構81、82を介して、テーブル90に固定されている。巻尺部300は、テーブル90が水平状態となったときに、テープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向となるように固定されている。傾斜センサ70は、テープ体100の繰出方向及び格納方向の鉛直方向からのずれ、すなわちテーブル90の水平状態からのずれを検知する。傾斜センサ70を設ける場所は特に限定されず、テーブル90に設けられる態様であってもよい。
【0046】
テーブル90の複数箇所に、各箇所における高さ方向のテーブル90の位置を変更する高さ調整ネジ91~93が、離間配置されている。調整ネジの数は特に限定されないが、図5(a)に示す例では、略三角形の平板形状を有するテーブル90の各頂点に対応する3カ所の端部それぞれに高さ調整ネジ91~93が設けられている。テーブル90及び高さ調整ネジ91~93を含む水平機構によって、テーブル90の水平状態、すなわちテーブル90に固定された巻尺部300の水平面に対する傾きを、変更することができる。
【0047】
高さ調整ネジ91~93を締め込んだ位置ではテーブル90が上昇し、高さ調整ネジ91~93を緩めた位置ではテーブル90が下降する。各高さ調整ネジ91~93にはダイヤル191~193が固定されている。図5(b)に示すように、ダイヤル191~193は、少なくとも一部が、本体部10の外側に露出するように配置されている。利用者は、ダイヤル191~193を正逆回転させることによって、テーブル90の傾きを変更して水平にする水平出しの作業を行うことができる。水平出しを行ってテーブル90が水平状態になると、テープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向となる。
【0048】
テーブル90には、水平出しを行ったテーブル90上で巻尺部300を第1の水平軸方向に移動させる移動機構81と、第1の水平軸と直交する第2の水平軸方向へ巻尺部300を移動させる移動機構82とが設けられている。移動機構81、82は、ネジ軸と、ネジ軸の回転に伴ってネジ軸の軸方向に移動する移動テーブル281、282とを含むボールネジ型の移動機構である。移動機構81の移動テーブル281に移動機構82が固定され、移動機構82の移動テーブル282に巻尺部300が固定されている。移動機構81のネジ軸を正回転させると、移動テーブル281及び移動テーブル281に固定された移動機構82がネジ軸に沿って正方向へ移動し、ネジ軸を逆回転させると移動テーブル281はネジ軸に沿って逆方向へ移動する。移動機構82のネジ軸を正回転させると、移動テーブル282及び移動テーブル282に固定された巻尺部300がネジ軸に沿って正方向へ移動し、ネジ軸を逆回転させると巻尺部300はネジ軸に沿って逆方向へ移動する。
【0049】
図5(a)に示す例では、テーブル90を水平にした後、移動機構81のネジ軸を回転させると移動機構82及び巻尺部300がY軸方向へ移動して、移動機構82のネジ軸を回転させると巻尺部300がX軸方向へ移動する。
【0050】
各移動機構81、82のネジ軸一端側に、ネジ軸を回転させるためのハンドル181、182が設けられている。図5(b)に示すように、ハンドル181、182は点検装置1の本体部10外側に露出している。利用者は、ハンドル181、182を正逆回転させることによって、巻尺部300の位置を変更することができる。
【0051】
図5(b)に破線で示すように、図5(a)に示す巻尺部300から下の構成部が、箱形状を有する本体部10の内部に、ダイヤル191~193の少なくとも一部とハンドル181、182とを本体部10から露出する形で収められている。各高さ調整ネジ91~93の下端部を、箱形状を有する本体部10の底面内側に回転可能に固定して、テーブル90の水平方向の移動を規制する一方で、ダイヤル191~193を回転してテーブル90の傾きを変更して水平出しを行えるようになっている。なお、図1等、他の図では、ダイヤル191~193及びハンドル181、182の図示は省略している。
【0052】
図5(b)に示すように、本体部10は、上面に形成された円筒形状の首部10aを有する。図5(a)に示す構成部は、首部10aの内部で、繰出口301をX軸方向及びY軸方向に移動可能に、本体部10内部に固定されている。例えば、繰出口301は、首部10a内部で、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ20~30mm程度移動することができる。これにより、床面上で本体部10の位置を固定した状態で、繰出口301を含む巻尺部300、すなわち上方へ繰り出されるテープ体100の位置を変更できるようになっている。
【0053】
図6は、巻尺部300の構成例を示す図である。図6(a)は、巻尺部300の内部構成例を示す図である。図6(b)は、巻尺機構を実現する巻尺部300の駆動方法を説明するための図である。
【0054】
巻尺部300は、テープ体100の繰出口301を含む。図6(a)に断面図を示したように、繰出口301は、湾曲形状の凸側の面を合わせるように対向配置した長尺プレート100a、100bの断面形状に合わせて、円柱をくり抜いた形状を有する。例えば、繰出口301は、円柱形状を有する硬質樹脂の円柱軸方向に、テープ体100の断面形状に合わせた上面略X型の貫通孔を形成した形状を有する。繰出口301は、貫通孔を形成する、上下方向(Z軸方向)に延在する内側面301aによって、湾曲した長尺プレート100a、100bをその形状に沿って支持することができる。繰出口301は、内側面301aによって、水平面内における長尺プレート100a、100bの繰出位置を規制することができる。繰出口301は、水平状態になったテーブル90上で、内側面301aによって、長尺プレート100a、100bの繰出方向及び格納方向を鉛直方向に規制することができる。
【0055】
図6(a)に示すように、巻尺部300の内部に、テープ体100を構成する各長尺プレート100a、100bを格納する一対の格納部320(320a、320b)と、テープ体100の繰出及び格納を行う一対のローラ310(310a、310b)とが収められている。ローラ310aとローラ310bは同一構造を有する。格納部320aと格納部320bは同一構造を有する。
【0056】
格納部320a、320bは、長尺プレート100a、100bを巻尺状に巻き取って格納する。各格納部320a、320bは、一端が台部110に固定された長尺プレート100a、100bの他端が外周面に固定されたドラムを含む。格納部320a、320bは、ドラムを回転することによって長尺プレート100a、100bをドラムの外周に渦巻き状に巻き取って格納する。繰出口301から繰り出される際、長尺プレート100a、100bは、幅方向に湾曲した形状に戻り、ドラムに巻き取られる際には略平坦形状になって巻き取られる。
【0057】
図6(a)に示すように、ローラ310a、310bは、長尺プレート100a、100bを間に挟んで対向配置されている。ローラ310a、310bの回転軸311a、311bは、図6(b)に示すように、軸方向をY軸と平行にしてX軸方向に離間配置されている。回転軸311a、311bは、両外側からローラ310a、310bの外周面を長尺プレート100a、100bに押し付けた状態で回転可能に巻尺部300に支持されている。2つのローラ310a、310bのうちいずれか一方のローラを回転させると、摩擦力によって、長尺プレート100b、100aが移動すると共に他方のローラが従動回転する。
【0058】
ローラ310aの回転軸311aは、ロータリーエンコーダ等の回転センサと接続されている。繰出格納制御部50cは、回転センサによって検知したローラ310aの回転量とローラ310aの外径とに基づいて、テープ体100の繰出量を特定することができる。繰出格納制御部50cは、テープ体100の繰出量が予め設定された所定値に達すると、テープ体100の繰出を停止することができる。例えば、繰出格納制御部50cは、補助具の装着が必要となる繰出量でテープ体100の繰出を自動停止可能であるが、これについては後述する。
【0059】
回転センサは、テープ体100を格納する制御にも利用される。格納部320から繰り出したテープ体100を格納する際、テープ体100を格納部320のドラムに巻き取って、テープ体100の上端に固定された台部110の底面が繰出口301の上面に接触すると、テープ体100が移動できなくなってローラ310の回転が停止する。繰出格納制御部50cは、これを回転センサで検知することによって、テープ体100の格納が完了したと判定し、テープ体100の格納を停止することができる。繰出格納制御部50cが、回転センサを利用してテープ体100の繰出量及び巻取量を検知して、テープ体100の巻取量が繰出量と一致したことに基づいて、駆動部60a、60bによるテープ体100の格納を停止するようにしてもよい。
【0060】
図6(a)に示すように、ローラ310b近傍に設けられた駆動部60aが、回転軸311bを回転させることによってローラ310bを回転駆動する。駆動部60aがローラ310bを回転駆動すると、ローラ310bとローラ310aの間で、ローラ外周面を押し付けられた長尺プレート100a、100bが移動する。長尺プレート100aの移動に伴って、ローラ310aは、ローラ310bと逆方向に回転する。すなわち、駆動部60aによる駆動力を受けて、ローラ310aとローラ310bとが逆方向に同じ回転速度で回転する。
【0061】
図6(b)に矢印で示すように、駆動部60aがローラ310bを時計回りに回転させると、ローラ310aが同じ回転速度で反時計回りに回転して、2つの長尺プレート100a、100bで構成されるテープ体100が繰出口301から上方へ繰り出される。駆動部60aがローラ310bを反時計回りに回転させると、ローラ310aが同じ回転速度で時計回りに回転して、テープ体100が繰出口301から巻き戻されて格納部320に格納される。
【0062】
図6(b)に示すように、各格納部320a、320bで長尺プレート100a、100bを巻回するドラムの回転軸321a、321bに、一対の歯車330(330a、330b)が固定されている。歯車330aと歯車330bは同一構造を有する。回転軸321a、321bは、軸方向をY軸と平行にしてX軸方向に離間配置されている。歯車330a、330bが回転することにより、各格納部320a、320bのドラムが回転する。なお、ドラムと歯車330とが別構成である態様に限定されず、歯車330がドラムを構成する態様であってもよい。例えば、Y軸方向に離間配置した2つの歯車330aの間に胴部を有するボビン形状のドラムと、同様に2つの歯車330bの間に胴部を有するボビン形状のドラムとを利用して、各ドラムの胴部に長尺プレート100a、100bを巻き取る態様であってもよい。
【0063】
図6(a)に示すように、格納部320b近傍に設けられた駆動部60bが、回転軸321bを回転駆動すると、該軸上に固定された格納部320bのドラムが回転する。回転軸321bに固定された歯車330bが回転すると、歯車330aは、歯車330bと同じ回転速度で逆方向に回転する。歯車330aの回転に伴って、同じ回転軸321aに固定された格納部320aのドラムも回転する。すなわち、駆動部60bによる駆動力を受けて、格納部320aで長尺プレート100aの繰出及び巻取を行うドラムと、格納部320bで長尺プレート100bの繰出及び巻取を行うドラムとが、逆方向に同じ回転速度で回転する。
【0064】
図6(b)に矢印で示すように、駆動部60bが格納部320bのドラムを時計回りに回転させると、格納部320aのドラムが同じ回転速度で反時計回りに回転して、各長尺プレート100a、100bが格納部320a、320bから繰り出される。駆動部60bが格納部320bのドラムを反時計回りに回転させると、格納部320aのドラムが同じ回転速度で時計回りに回転して、各長尺プレート100a、100bが格納部320a、320bに格納される。
【0065】
巻尺部300からテープ体100を繰り出す際には、繰出格納制御部50cが、ローラ310によるテープ体100の繰出速度と、格納部320による長尺プレート100a、100bの繰出速度とが同じになるように、2つの駆動部60a、60bを制御する。巻尺部300にテープ体100を格納する際には、繰出格納制御部50cが、ローラ310によるテープ体100の格納速度と、格納部320による長尺プレート100a、100bの格納速度とが同じになるように2つの駆動部60a、60bを制御する。
【0066】
巻尺部300で、ローラ310a、310bと、格納部320a、320bのドラムとを強制的に同期回転させることで、テープ体100の繰出及び格納を確実に行うことができる。厚みのある金属製の長尺プレート100a、100bを利用する場合、従来の巻尺機構のようにゼンマイバネを利用した復元力だけでは、長尺プレート100a、100bを上手くドラムに巻き取れない可能性がある。巻尺部300は、ドラムを強制回転することで、長尺プレート100a、100bを確実にドラムに巻き取って格納部320a、320bに格納することができる。なお、ローラ310用の駆動部60aと、格納部320のドラム用の駆動部60bとが別々に設けられる態様に限定されず、1つの駆動部60が、ローラ310及び歯車330に駆動力を伝達する歯車機構を利用して、ローラ310と歯車330の両方を回転駆動する態様であってもよい。
【0067】
図7は、テープ体100の繰出及び格納に利用するローラ310a、310bの例を示す図である。ローラ310a、310bは、回転軸311a、311bを含む金属製の内周部313a、313bと、内周部313a、313bの外周面に固定された非金属製の外周部314a、314bとを含む。強度及び耐久性の高い金属製の内周部313a、313bに、樹脂製やゴム製の高摩擦材料から成る外周部314a、314bを固定して利用する。例えば外周部314a、314bがウレタン製のローラ310a、310bを利用することで、長尺プレート100a、100bとローラ310a、310bとの間で滑りを生じないようになっている。弾性材料から成る外周部314a、314bを利用することで、外周面を長尺プレート100a、100bに押し付けて対向配置されたローラ310は、図7上側の図に示すように、外周面を長尺プレート100a、100bに沿う形に変形させながら回転することができる。
【0068】
ここで、利用者による点検装置1の利用方法の一例を説明すると、まず利用者は、図2で説明したように、テープ体100の先端、すなわち複数の長尺プレート100a、100bの先端に固定された台部110に、試験器200を装着する。利用者は、照準装置210の電源をオンにして、図3で説明したように、感知器2が設置された天井面に照準用のマーク250を投影する。利用者は、図1に示すように天井面に投影されたマーク250が示す試験器200の中心軸の位置が、感知器2の中心位置と合うように、床面上で点検装置1を移動させた後、車輪20をロックして点検装置1の位置を固定する。
【0069】
利用者は、図5で説明したように、ダイヤル191~193を操作して、テーブル90の水平出しを行う。例えば、テーブル90が水平でない場合、すなわちテープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向からずれている場合、これが傾斜センサ70によって検知されて、表示部32及び/又は報知部33による音、光、情報表示等によって利用者へ報知される。利用者は、この報知に基づいて、ダイヤル191~193を回して水平出しを行えばよい。点検装置1の本体部10上面に水準器を設けて、利用者が水準器を確認しながらダイヤル191~193を回して水平出しを行ってもよい。鉛直検知部50aが、傾斜センサ70による出力値に基づいて、テーブル90の傾斜状態を示す情報を表示部32に表示して、利用者が表示部32の表示を参考に水平出しを行ってもよい。
【0070】
水平出しを終えた利用者は、再度、天井面に投影したマーク250と感知器2との位置関係を確認し、必要に応じて試験器200の位置を微調整する。利用者は、図5で説明したように、ハンドル181、182を回して試験器200の位置を調整することができる。車輪20はロック済みで本体部10の位置は固定されているが、ハンドル181、182を回して、本体部10内で巻尺部300の位置を移動することにより、試験器200の位置、すなわちテープ体100の繰出位置を微調整することができる。
【0071】
位置調整を終えた利用者は、操作部31を操作して試験器200を上昇させる。図6で説明したように、繰出格納制御部50cが、操作部31で行われた操作に応じて駆動部60を制御することによって、巻尺部300からテープ体100が繰り出されて試験器200が上昇する。
【0072】
利用者が試験器200を上昇させる操作を行うと、鉛直検知部50aが、傾斜センサ70によってテープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向であるか否かを判定する。テープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向からずれている場合、鉛直検知部50aは、報知部33によってこれを報知する。利用者が水平出しの作業を忘れて、テープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向からずれている場合でも、利用者は、報知部33による報知を受けてこれに気付き、水平出しの作業を行うことができる。試験器200を高い位置まで上昇させる前に、テープ体100の繰出方向及び格納方向を鉛直方向にすることで、試験器200が斜め上方に上昇してテープ体100が座屈することを防止することができる。
【0073】
利用者の操作を受けて繰出格納制御部50cが駆動部60を動作させる前に、鉛直検知部50aが判定処理を実行し、テープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向からずれていると判定した場合は、繰出格納制御部50cが駆動部60を動作させない態様であってもよい。鉛直検知部50aがテープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向であると判定するまでは、操作部31を操作しても駆動部60が駆動せず試験器200が上昇しないようにすることで、テープ体100の座屈を確実に防止することができる。
【0074】
利用者は、試験器200を上昇させて感知器2の点検を行う。点検を終えた利用者は、再び操作部31を操作して、試験器200を降下させて点検作業を終了する。
【0075】
点検装置1では、テープ体100の座屈を防止するための補助具を利用できるようになっている。図8は、補助具401の使用方法を説明するための図である。図8(a)は、点検装置1への補助具401の装着方法を示し、図8(b)は装着後の補助具401を示している。
【0076】
図8(a)に示すように、補助具401は、2つの部材401a、401bで構成されている。一方の部材401aに複数の凸部404aが形成され、他方の部材401bには、各凸部404aに対応する位置に各凸部404aに対応する形状の凹部404bが形成されている。凸部404aと凹部404bは、2つの部材401a、401bを組み立てる際の合わせ面に形成されている。2つの部材401a、401bを位置決めして脱着可能に組み立てることができれば、凸部404a及び凹部404bの形状、材質、寸法及び数は特に限定されない。例えば、円柱形状のピンを凸部404a、ピンと嵌合する孔を凹部404bとすればよい。凸部404aと凹部404bが上下方向のスライドによって蟻溝型の嵌合態様を実現する態様であってもよい。凸部404aと凹部404bが、ネジ止め式、スナップフィット式、マグネット式、ラチェット式等の嵌合態様を実現するものであってもよい。
【0077】
図8(a)に矢印で示すように、テープ体100を挟むようにして、各凸部404aを、対応する凹部404bに挿入し、2つの部材401a、401bを位置決め固定して一体化する。略円筒形状に一体化した補助具401の下端部403(403a、403b)に、本体部10の首部10aを挿入する。これにより、図8(b)に示すように、本体部10に対して、補助具401が位置決め固定される。
【0078】
図9は、補助具401の構成例を示す図である。図9(a)に示すように、2つの部材401a、401bそれぞれの上端部402(402a、402b)に、テープ体100の形状に合わせた支持面412(412a、412b)、413(413a、413b)が形成されている。部材401aの凸部404aを、部材401bの凹部404bに挿入して、図9(b)に示すように一体化すると、支持面412a、412bが、長尺プレート100a、100bの断面湾曲形状に合わせて上下方向(Z軸方向)に延設された内側面を形成する。上下方向に延在する支持面412a、412bによって、長尺プレート100a、100bが両外側から断面湾曲形状に沿って支持される。上下方向に延在する支持面413(413a、413b)は、長尺プレート100a、100bの幅方向(Y軸方向)の移動を両外側から規制する内側面を形成する。
【0079】
上端部402は、支持面412、413として機能する内側面が形成された軸方向の貫通孔内部で、幅方向(Y軸方向)に湾曲した長尺プレート100a、100bを支持することができる。上端部402は、内側面によって、水平面内における長尺プレート100a、100bの繰出位置を規制することができる。上端部402は、内側面によって、長尺プレート100a、100bの繰出方向及び格納方向を鉛直方向に規制することができる。
【0080】
なお、上端部402のみでテープ体100を支持する態様に限定されず、補助具401の軸方向、首部10aが挿入される下端部403を除く略全域で、補助具401が図9(b)に示す断面図のようにテープ体100を支持する態様であってもよい。
【0081】
図9(b)に示すように、2つの部材401a、401bを組み立てて一体化した補助具401の上端部402は段付き円筒形状となる。具体的には、上端部402は、軸方向(Z軸方向)上端から一部領域では、外径が本体部10の首部10aの外径と同一に形成され、該領域より下方の少なくとも一部の領域で外径が拡大した段形状を有する。言い換えれば、上端部402の上側部分は、本体部10の上面から首部10aに至る形状を再現した段形状を有している。これにより、首部10aを再現した上端部402を、別の補助具401の下端部403に挿入して連結することができる。上方から連結される別の補助具401は、下方の補助具401の上端部402に形成された段部で停止して固定される。
【0082】
図10は、補助具401、411の連結方法を説明するための図である。説明を簡単にするため異なる符号を付しているが、補助具401と補助具411とは同一品である。以下、これらの区別の必要がない場合は補助具401と記載する。
【0083】
図8(b)に示すように本体部10の首部10aに取り付けた補助具401を、図10(a)に示すように、上方にスライド移動させる。補助具401は、テープ体100が挿通する筒形状を有するため、補助具401を2つの部材401a、401bに分割することなく、一体化した状態のまま上方へスライド移動させることができる。
【0084】
補助具401を上方へ待避移動した状態で、図10(a)に示すように、別の補助具411を装着する。補助具411は、補助具401の組立時と同様に、テープ体100を挟んで2つの部材411a、411bを組み立てて、下端部403に首部10aを挿入することによって本体部10に固定される。
【0085】
補助具411を本体部10に固定した後、図10(b)に示すように、上方へ待避移動していた補助具401を下方にスライド移動させる。下側にある補助具411の上端部402を、上側にある補助具401の下端部403に挿入することで、補助具401と補助具411とが連結固定される。
【0086】
図11は、補助具401、411の連結方法を説明するための断面模式図である。図11(a)は図8に対応し、図11(b)は図10に対応している。なお、図11では、凸部404等の図示は省略し、連結方法の説明に必要な構成を示している。
【0087】
図11(a)左側の図に示すように、一体化した補助具401の下端部403に本体部10の首部10aを挿入すると、図11(a)右側の図に示すように、補助具401が本体部10の上面に固定される。
【0088】
図11(b)の左側の図に示すように、本体部10に固定した補助具401を一旦上方へスライドした後、別の補助具411を、補助具401と同様に本体部10の上面に固定する。図11(b)右側の図に示すように、上方へ待避移動していた補助具401を下方へスライドして、首部10aと同一形状を有する補助具411の上端部402を、補助具401の下端部403に挿入することで、補助具401と補助具411とが連結固定される。
【0089】
図11は、X軸方向から見た図であるためテープ体100の幅方向全体が見える図となっているが、図9で説明したように、テープ体100は、少なくとも各補助具401、411の上端部402に形成された内側面によってX軸方向両外側から支持される。例えば、各補助具401、411の上端から、段付形状を形成する外径拡大領域の下端に至る領域に形成された内側面によって、テープ体100が支持される。補助具401、411の内側面によって、テープ体100のY軸方向への移動も規制されて、テープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向になる。
【0090】
各補助具401、411の上端部402は、図6で説明した巻尺部300の繰出口301と同様に、テープ体100を支持する。補助具401、411の装着によって、繰出口301を上方へ移動したのと同様の効果を得ることができる。例えば、軸方向の長さが1mの補助具401を装着すれば、本体部10を床から1mの高さに移動して、この位置でテープ体100を繰り出すのと同じ状況となる。
【0091】
例えば、テープ体100を座屈させることなく5mの高さまで繰出可能である場合、1mの補助具401の装着によって、テープ体100を6mの高さまで繰り出せるようになる。複数の補助具401を連結することで、さらに高い位置までテープ体100を繰り出せるようになる。
【0092】
[実施形態2]
実施形態1の図4及び図5では、テーブル90の水平出し及び巻尺部300の移動を手動で行う例を説明したが、これらが自動的に実行される態様であってもよい。実施形態1では、照準装置210によって天井面に投影したマーク250を目視確認する例を説明したが、点検装置1が、マーク250を撮像するカメラを備え、マーク250の確認が、カメラの撮像画像を利用して行われる態様であってもよい。
【0093】
実施形態2では、カメラを備え、テーブル90の水平出し及び巻尺部300の位置調整を自動実行する点検装置1の例を説明する。以下、実施形態1の点検装置1と同じ構成には同じ符号を付して、実施形態1の点検装置1と異なる点を中心に説明する。
【0094】
図12は、実施形態2に係る点検装置1の機能構成例を示すブロック図である。図12に示す点検装置1は、図4に示した構成に加えて、カメラ75、通信部80、水平機構駆動部83及び移動機構駆動部85を備えている。図12に示す制御部50は、図4に示した構成に加えて、カメラ制御部50d、水平制御部50e及び位置制御部50fを含む。
【0095】
カメラ75は、照準装置210が天井面に投影したマーク250とその周辺領域を撮像する。通信部80は、カメラ75及び外部装置と無線又は有線で通信を行うために利用される。外部装置には、タッチパネル式の液晶表示装置を備えるスマートフォン、タブレット等の通信端末が含まれる。
【0096】
図13は、実施形態2に係る点検装置1の内部構成例を示す図である。図13に示す点検装置1は、カメラ75を備える点と、ダイヤル191~193に代えて水平機構駆動部83(83a~83c)を備える点と、ハンドル181、182に代えて移動機構駆動部85(85a、85b)を備える点とが、図5に示した構成と異なっている。
【0097】
図13に示すように、カメラ75は、照準装置210を構成するレーザ装置210a、210bと同様に、試験器200の本体部220に設けられている。水平機構駆動部83a~83cは、高さ調整ネジ91~93に対応して設けられ、各高さ調整ネジ91~93を正逆回転させるモータ等のアクチュエータである。移動機構駆動部85a、85bは、移動機構81、82に対応して設けられ、各移動機構のネジ軸を回転させるモータ等のアクチュエータである。
【0098】
カメラ制御部50dは、通信部80を介して、無線通信機能を有するカメラ75と無線通信を行って、カメラ75が撮像した画像を取得する。カメラ制御部50dは、カメラ75による撮像画像を表示部32に表示することができる。
【0099】
カメラ制御部50dは、通信部80を介して外部装置と無線通信を行って、カメラ75による撮像画像を外部装置の表示部に表示させることができる。例えば、スマートフォンやタブレット等の通信端末と無線通信を行って、通信端末の画面上に、カメラ75による撮像画像を表示する。
【0100】
利用者は、表示部32や外部装置の表示部画面上で、カメラ75が撮像したマーク250と感知器2との位置関係を確認しながら、本体部10の位置や繰出口301の位置、すなわちテープ体100の繰出位置を調整することができる。
【0101】
水平制御部50eは、傾斜センサ70による検知結果に基づいて、水平機構駆動部83を制御してテーブル90の水平出しを行う。鉛直検知部50aが、傾斜センサ70による検知結果に基づいて、テープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向からずれていると判定した場合に、水平制御部50eが水平出しを実行する。水平出しは、水平制御部50eが、水平機構駆動部83a~83cを制御して、各高さ調整ネジ91~93を回転することによって行われる。水平制御部50eが、傾斜センサ70の出力値に基づいて、各高さ調整ネジ91~93の回転方向及び回転量を算出し、算出結果に基づいて水平機構駆動部83a~83cを制御することによって、テーブル90の水平出しが自動的に行われ、これによってテープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向に調整される。
【0102】
位置制御部50fは、カメラ75による撮像画像を解析して、マーク250と感知器2との位置関係を特定し、特定結果に基づいて、移動機構駆動部85を制御する。位置制御部50fは、マーク250が示す試験器200の中心位置、すなわちテープ体100の繰出位置が、感知器2の中心位置と一致するように移動機構駆動部85を制御する。
【0103】
具体的には、まず位置制御部50fは、移動機構駆動部85a、85bによって各移動機構81、82のネジ軸を所定方向に所定量回転して、カメラ75の撮像画像上におけるマーク250の移動方向及び移動量を特定する。位置制御部50fは、特定したマーク250の移動方向及び移動量と、撮像画像上におけるマーク250の中心位置から感知器2の中心位置までの方向及び距離とに基づいて、マーク250の中心位置を感知器2の中心位置へ移動させるための各ネジ軸の回転方向及び回転量を算出する。位置制御部50fが、算出結果に基づいて移動機構駆動部85a、85bを制御して、巻尺部300を移動させることにより、マーク250の中心位置を感知器2の中心位置に一致させる位置調整が自動的に行われる。位置制御部50fが、カメラ75による撮像画像を確認しながら移動機構駆動部85a、85bを制御するフィードバック制御によって位置調整を自動実行してもよい。
【0104】
例えば、利用者が、点検装置1のおおよその位置を感知器2に合わせて車輪20をロックし、操作部31で所定操作を行うと、水平制御部50eが上述したようにテーブル90の水平出しを自動的に実行する。テーブル90が水平状態になった後、すなわちテープ体100の繰出方向及び格納方向が鉛直方向になった後、続いて位置制御部50fが上述したように巻尺部300の位置調整を自動的に実行する。
【0105】
報知制御部50bは、テーブル90が水平状態に自動調整された後、報知部33によって水平出しの完了を報知する。報知制御部50bは、位置制御部50fによって、巻尺部300の位置が自動調整された後、報知部33によって、位置調整の完了を報知する。報知は、報知部33によって音を発したり、光を発したり発光状態を変更することによって行われる。水平出しの完了後と位置調整の完了後とで異なる音を発したり、異なる色の光を発したりすることで、各処理の完了が利用者に報知される。
【0106】
例えば、報知部33に含まれるLED等の発光体が、最初は赤色で点灯し、水平出しの完了後には黄色に変化して、位置調整の完了後に青色に変化する。報知部33の色が青色になると、利用者は、点検装置1の調整が終了したことを認識して点検作業を開始することができる。なお、報知部33による報知に代えて又は加えて、表示部32や、通信部80を介して通信接続された通信端末の表示部に所定情報を表示することによって報知が行われる態様であってもよい。
【0107】
図14は、実施形態2に係る点検装置1が実行する自動処理の流れの例を示すフローチャートである。点検装置1は、テーブル90の水平状態を判定する(ステップS1)。テーブル90が水平状態にない場合(ステップS1;No)、点検装置1は水平状態の調整を自動実行する(ステップS2)。テーブル90が水平状態になると(ステップS1;Yes)、続いて点検装置1は、試験器200の位置、すなわちテープ体100の繰出位置の調整が必要であるか否かを判定する(ステップS3)。判定は、カメラ75によってマーク250及び感知器2を撮像した撮像画像を解析することによって行われる。試験器200の位置を調整する必要がある場合(ステップS3;No)、点検装置1は位置調整を自動実行する(ステップS4)。試験器200の位置に問題がなければ(ステップS3;Yes)、点検装置1は自動処理を終了する。
【0108】
図15は、実施形態2に係る点検装置1の使用例を説明するための図である。図15に示す例では、点検装置1の本体部10が、スーツケースのように車輪20及び把手11を備えるケース形状を有し、ケース内部に、タブレット型の通信端末である操作端末600や、複数の補助具401を収納できるようになっている。
【0109】
利用者は、図15(a)に示すように、把手11を持ち、本体部10を引いて感知器2の点検場所へ移動する。点検場所に到着した利用者は、図15(b)に示すように、本体部10から操作端末600及び補助具401を取り出す。操作端末600の画面610には、カメラ75による撮像画像620が表示される。利用者は、操作端末600の画面を確認しながら、本体部10のおおよその位置を感知器2に合わせた後、車輪20をロックして、床面における本体部10の位置を固定する。
【0110】
利用者が操作端末600で所定操作を行うと、上述したように、本体部10の内部でテーブル90の水平出しが自動的に実行されて、水平出しの完了を示す情報630が画面610上に表示される。その後、本体部10の内部で巻尺部300の位置調整が自動的に実行されて、位置調整完了を示す情報630が画面610上に表示される。
【0111】
水平出し及び位置調整を終えると、操作端末600の画面610上で、試験器200の上昇と下降を行うためのボタン640を操作できるようになる。利用者は、上昇用のボタン640を操作して試験器200を上昇させて感知器2の点検を行う。点検を終えた利用者は、下降用のボタン640を操作して試験器200を降下させて点検作業を終了する。
【0112】
点検中、利用者は、必要に応じてテープ体100に補助具401を装着する。図6で説明したように、繰出格納制御部50cは、駆動部60によってテープ体100を繰り出す際にテープ体100の繰出量を算出することができる。テープ体100の繰出量が所定の閾値に達した場合に、報知制御部50bが、これを示す情報を操作端末600の画面に表示して利用者に報知する。報知を受けた利用者は、試験器200の上昇を中断して、補助具401を取り付けた後、試験器200の上昇を再開して点検を行うことができる。例えば、テープ体100の繰出量が5mに達すると座屈する可能性がある場合、閾値を4mに設定して利用者に補助具401の装着を促すようにすればよい。
【0113】
テープ体100の繰出量が所定の閾値に達した際、報知制御部50bが、安全確保のために補助具401の装着を指示する警告を行う態様であってもよい。警告時には、利用者が上昇用のボタン640を操作中であっても、繰出格納制御部50cが駆動部60によるテープ体100の繰出を停止して、利用者が警告解除の所定操作を行うまではテープ体100の繰出を行わない態様であってもよい。警告を受けた利用者は、補助具401を装着した後、警告解除の操作を行って点検を再開すればよい。
【0114】
補助具401を装着して点検を再開した後も、テープ体100の繰出量に基づいて、補助具401の追加装着が必要であることを知らせる報知又は警告が実行される。例えば、テープ体100の繰出量が5mに達すると座屈する可能性がある場合、繰出量が4mに達した所で報知又は警告が実行され、利用者が1mの補助具401を装着した後、繰出量が5mに達した所で再び報知又は警告が実行される。利用者は、報知又は警告を受ける度に、補助具401を追加して、装着済の補助具401と連結して点検を再開すればよい。
【0115】
[実施形態3]
点検装置1が、自走可能な自律型のロボット装置で、感知器2の設置場所まで自走移動して、点検を自動実行する態様であってもよい。点検を自動実行可能とすれば、建物内に複数の感知器2が設置されている場合でも、各感知器2の点検を容易に行うことができる。
【0116】
実施形態3では、自走移動しながら点検を自動実行する点検装置1の例を説明する。以下、実施形態1及び2の点検装置1と同じ構成には同じ符号を付して、実施形態2の点検装置1と異なる点を中心に説明する。
【0117】
図16は、実施形態3に係る点検装置1の構成例を示すブロック図である。図16に示す点検装置1は、図12に示した構成に加えて、走行機構駆動部87を備える。図16に示す制御部50は、図12に示した構成に加えて、走行機構制御部50gを含む。
【0118】
走行機構駆動部87は、本体部10の底面に設けられた複数の車輪20を含む走行機構を駆動して、少なくとも1つの車輪20を回転駆動して点検装置1を自走移動させる。走行機構には点検装置1の移動方向を変更する機構も含まれ、走行機構駆動部87は、点検装置1の移動方向を変更することもできる。走行機構制御部50gは、走行機構駆動部87を制御して、点検装置1の自走移動の方向及び移動量を制御する。
【0119】
図17は、実施形態3に係る点検装置1が実行する自動処理の流れの例を示すフローチャートである。例えば、記憶部40に、複数の感知器2それぞれの設置位置を示す座標情報を登録すると、点検装置1は、座標情報に基づいて感知器2の設置場所へ自走移動する(ステップS11)。走行機構制御部50gが、座標情報に基づいて走行機構駆動部87を制御することによって点検装置1が自走移動する。
【0120】
感知器2の設置場所へ到着した点検装置1は、ステップS12~S15で、テーブル90の水平出しと巻尺部300の位置調整とを自動実行する。これらの処理は、図14で説明したステップS1~S4と同様に行われる。
【0121】
テーブル90の水平出し及び巻尺部300の位置調整を終えた点検装置1は、試験器200を上昇させて感知器2の点検を実行する(ステップS16)。繰出格納制御部50cが、駆動部60を制御して、試験器200を上昇させることによって点検が行われる。
【0122】
例えば、照準装置210に、マーク250用のレーザ装置に加えて、天井面までの距離を計測するレーザ装置を設けて、試験器200上面から天井面までの距離を計測し、繰出格納制御部50cが計測結果に基づいてテープ体100を繰り出し、試験器200を上昇させて点検を実行すればよい。試験器200の上面に、通信部80を介して無線通信可能な感圧センサを設けて、繰出格納制御部50cが、感圧センサの出力値に基づいて試験器200が天井面に接したことを検知して試験器200の上昇を停止して点検を実行すればよい。記憶部40に各感知器2の設置高さに関する情報を登録しておいて、繰出格納制御部50cが、登録された設置高さに基づいてテープ体100を繰り出すようにしてもよい。
【0123】
試験器200の点検を終えると、繰出格納制御部50cは、駆動部60を制御して試験器200を降下させる。点検対象の感知器2が残っている場合(ステップS17;No)、走行機構制御部50gが、記憶部40に登録されている次の感知器2の座標情報に基づいて走行機構駆動部87を制御して、点検装置1が次の感知器2の設置場所へ自走移動する(ステップS18)。こうして、ステップS12~S18の処理を繰り返すことにより、点検装置1が自走移動しながら複数の感知器2の点検を順に実行する。
【0124】
記憶部40に設置場所が登録されている全ての感知器2の点検を終えると(ステップS17;Yes)、点検装置1は処理を終了する。例えば、点検装置1は、点検開始前の待機場所へ戻って次の点検まで待機する。
【0125】
[変形例]
図2では、支持部230に回動可能に支持された試験器200の本体部220に照準装置210を設け、支持部230底面の脱着部240を利用して試験器200を台部110に脱着することによって、試験器200の種類を変更する例を説明した。試験器200の変更方法は、これに限定されない。例えば、図18に示すように、照準装置210を設けた枠体260を回動可能に支持する支持部230を台部110に固定して、枠体260に対して試験器200(200a、200b)を脱着することによって、試験器200の種類を変更する態様であってもよい。
【0126】
図6では、2つの格納部320a、320bの両方でドラムを回転駆動する一方、ローラ310a、310bについては一方のローラ310bのみを回転駆動する例を説明したが、ローラ310a、310bについても両方を回転駆動する態様であってもよい。
【0127】
例えば、図19に示すように、ローラ310a、310bの回転軸311a、311bに、一対の歯車315(315a、315b)を設けて、駆動部60aによって両方のローラ310a、310bを回転駆動する態様であってもよい。駆動部60aによって歯車315bの回転軸311bを回転駆動すると、該軸上に固定されたローラ310b及び歯車315bが回転する。歯車315bの回転に伴って、歯車315aが、歯車315bと同じ回転速度で逆方向に回転し、歯車315aの回転軸311aに固定されたローラ310aが回転する。すなわち、駆動部60aによる駆動力を受けて、ローラ310aとローラ310bとが同じ回転速度で逆方向に回転する。
【0128】
繰出格納制御部50cが、ローラ310による長尺プレート100a、100bの送り速度と、格納部320のドラムによる長尺プレート100a、100bの送り速度とが同じになるように駆動部60a、60bを制御して、ローラ310及び格納部320のドラムを回転駆動すれば、より確実にテープ体100の繰出及び格納を行うことができる。
【0129】
なお、両方のローラ310a、310bが回転駆動されるため、テープ体100の格納時に台部110が繰出口301に接触した後もローラ310aが回転し続けて、台部110の繰出口301への接触を、ローラ310aの回転停止によって検知できない可能性がある。この場合、例えば、ローラ310a、310bの回転駆動時に駆動部60a、60bにかかる負荷を検知する図示しないセンサを設けて、該センサによって、駆動部60a、60bの負荷が増大して過負荷状態になったことに基づいて台部110が繰出口301に接触したことを検知して、駆動部60a、60bによるテープ体100の格納を停止すればよい。例えば、回転軸311aに設けた回転センサを利用してテープ体100の繰出量及び巻取量を検知して、テープ体100の巻取量が繰出量と一致したことに基づいて、駆動部60a、60bによるテープ体100の格納を停止するようにしてもよい。
【0130】
なお、格納部320のドラムを回転駆動して長尺プレート100a、100bを格納する例を説明したが、従来のようにゼンマイバネ等の弾性部材を利用して長尺プレート100a、100bを格納する巻尺機構の利用を排除するものではない。従来同様に、弾性部材がドラムに作用させる長尺プレート100a、100bの巻取方向への復元力によって、テープ体100を格納可能である場合は、駆動部60bによるドラムの駆動は行わず、従来型のドラムを利用する態様であってもよい。ゼンマイバネ等の弾性部材を利用するドラムを、弾性部材による復元力を利用しながら、さらに、上述したように駆動部60bによって回転駆動する態様であってもよい。
【0131】
図8図11では、略半円筒形状を有する2つの部材401a、401bを組み立て、一体化して補助具401とする例を説明したが、補助具401の構成はこれに限定されない。例えば、図20に示すように、パイプ510と、接続具501(501a、501b)とを利用して補助具を実現する態様であってもよい。
【0132】
接続具501を構成する2つの部材501a、501bは、図20(a)に示すように、上下方向の両端側でパイプ510内に挿入可能な軸部502a、502bを含む。補助具401と同様、図20(b)に示すように、部材501a、501bには位置決め及び固定に利用する凸部504aと凹部504bとが形成されている。
【0133】
図20(b)に示すように、2つの部材501a、501bの軸部502a、502b上下をそれぞれパイプ510に挿入し、凸部504aを凹部504bに挿入して一体化することで、テープ体100を支持する補助具を実現することができる。円筒形状のパイプ510を利用すれば、図20(c)に示すように、パイプ510の外周面が、幅方向(Y軸方向)に湾曲した長尺プレート100a、100bの幅方向略中心に接するようにして、長尺プレート100a、100bを支持することができる。
【0134】
例えば、長尺プレート100a、100bの湾曲形状に合わせて、樹脂製のパイプ510の外径を選定し、パイプ510の内径に合わせた軸部502を有する接続具501を準備すれば、安価かつ容易に補助具を実現することができる。複数本のパイプ510を、接続具501を介して上下方向に連結して利用することもできる。
【0135】
例えば、図21に示すように、本体部10の首部10aを、パイプ510の内径に合わせた円柱形状の軸部302(302a、302b)を含む形状にして、軸部302をパイプ510に挿入して補助具として利用すればよい。
【0136】
図21(a)に示すように、テープ体100を挟んで組み立てて一体化した接続具501の軸部502下側を、パイプ510の上端から挿入する。図21(b)に示すように、接続具501の軸部502上側を別のパイプ510に挿入して、複数のパイプ510を連結固定すれば、補助具を上方へ容易に延長することができる。
【0137】
図8図11では、2つの部材401a、401bを組み立てて一体化する補助具401の例を説明したが、2つの部材401a、401bが図22(a)に示すようにヒンジ型の接続部材450によって回動可能に接続される態様であってもよい。図20及び図21に示した、補助具を構成する接続具501についても同様に、図22(b)に示すようにヒンジ型の接続部材550によって回動可能に接続される態様であってもよい。接続部材450、550を利用すれば補助具の脱着作業を容易に行うことができる。
【0138】
図6等では、テープ体100が、2つの長尺プレート100a、100bによって構成される例を説明したが、テープ体100が3つ以上の長尺プレートによって構成される態様であってもよい。例えば、図23(a)に示すように、湾曲形状を有する3つの長尺プレート100a~100cそれぞれの幅方向両端部を、隣接する長尺プレートの幅方向端部と接触させて、テープ体100として利用する態様であってもよい。
【0139】
各長尺プレート100a~100cに対応して、繰出及び格納を行うためのローラ340を3つ配置する。3つのローラ350を、長尺プレート100a~100cを挟んで各ローラ350と対向配置する。一対のローラ340、350は、それぞれの回転軸341、351が同一水平面上で平行となる位置関係で対向配置する。各ローラ340を回転駆動することで、ローラ外周面を押し当てた長尺プレート100a~100cの繰出及び格納を行うことができる。ローラ340の外周面を長尺プレート100a~100cに押し当てて、対向配置したローラ350で受けることで、ローラ340の回転駆動時、ローラ350を従動回転させながら長尺プレート100a~100cの繰出及び格納を行うことができる。
【0140】
ローラ340、350は、図7で説明したローラ310と同様にゴム製又は樹脂製の外周部を含む構成として、長尺プレート100a~100cに押し当てた外周面を長尺プレート100a~100cに沿う形状に変形しながら回転する態様とすればよい。ただし、上下方向(Z軸方向)から見たローラ340、350外形が矩形である態様に限定されない。例えば、図23(b)に示すように、ローラ340の外形が、長尺プレート100a~100cの断面湾曲形状に合わせた樽型形状を有していてもよい。ローラ350の外形が、長尺プレート100a~100cの断面湾曲形状に合わせた鼓型形状を有していてもよい。
【0141】
図23に示すように3つの長尺プレート100a~100cから成るテープ体100を利用する場合は、図24に示す補助具を利用すればよい。テープ体100を支持する上端部402内側面の形状を、図24(a)に示すように、一方の上端部402aでは1つの長尺プレート100aに合わせた形状とし、他方の上端部402bでは2つの長尺プレート100b、100cに合わせた形状とする。これにより、図24(b)に示すように、凸部404aを凹部404bに挿入して一体化した際、長尺プレート100a~100cをそれぞれの湾曲形状に沿う形で外側から支持することができる。図6(a)で説明した繰出口301の貫通孔も、図24(b)に示す形状と同様、三角形状の各辺を内側に湾曲させた形状にして、繰出口301の内側面301aによって、3つの長尺プレート100a~100cそれぞれを湾曲形状に沿って外側から支持する態様とすればよい。
【0142】
本明細書では、点検装置1の複数の実施形態を説明したが、各実施形態で説明した内容が他の実施形態で実現されることを排除するものではない。例えば、各実施形態に記載した補助具401に関する報知、警報、脱着作業等が、他の実施形態の点検装置1で行われる態様であってもよい。実施形態2に記載したカメラ75の利用が、実施形態1の点検装置1で行われる態様であってもよい。実施形態1の点検装置1が、実施形態2に記載した水平機構駆動部83及び移動機構駆動部85を含み、利用者が操作部31のボタンを押す間、水平機構駆動部83及び移動機構駆動部85が動作して、水平出し及び位置調整が行われる態様であってもよい。実施形態1に記載した手動操作や、これに関する情報表示及び報知が、実施形態2及び実施形態3の点検装置1で行われる態様であってもよい。本発明に係る点検装置1は、各実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、当該分野の当業者が有する知識の範囲内で各種の改良、変更、修正を加えて実施される態様であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0143】
以上のように、本開示に係る火災感知器点検装置は火災感知器の点検を容易に行うために有用である。
【符号の説明】
【0144】
1 火災感知器点検装置
2 火災感知器
10 本体部
20 車輪
31 操作部
32 表示部
33 報知部
40 記憶部
50 制御部
60 駆動部
70 傾斜センサ
75 カメラ
80 通信部
81、82 移動機構
83 水平機構駆動部
85 移動機構駆動部
87 走行機構駆動部
90 テーブル
100 テープ体
100a~100c 長尺プレート
110 台部
181、182 ハンドル
191~193 ダイヤル
200 試験器
210 照準装置
300 巻尺部
301 繰出口
401、411 補助具
501 接続具
【要約】
【課題】火災感知器の点検を容易に行う。
【解決手段】天井面に設置された火災感知器を点検するための火災感知器点検装置を、長尺プレートを巻尺状に巻き取って装置内に格納する複数の格納部と、各格納部から上方向に繰り出された複数の長尺プレートから成るテープ体と、テープ体の上端部に固定され、火災感知器の点検に用いる試験器が脱着可能に装着される台部と、テープ体を装置外へ繰り出して台部を上方向に移動させると共に、テープ体を装置内に巻き戻して台部を下方向に移動させる駆動部とによって構成する。
【選択図】図1
図1
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