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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/535 20060101AFI20241220BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
A61F13/535 200
A61F13/537 220
A61F13/537 310
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018184954
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020054436
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-07-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】高橋 桂子
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】長清 吉範
【審判官】神山 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-511171(JP,A)
【文献】特開2002-238946(JP,A)
【文献】特開2016-19616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体とを有し、
前記トップシートと前記吸収体との間に、複数の漏斗状の開孔を有する開孔フィルムが配置された吸収性物品であって、
前記開孔フィルムは、厚み方向で一方の面の開孔径が小さく、他方の面の開孔径が大きい開孔が施され、開孔径の大きい側の開孔が吸収体側を向くように配置されており、
前記開孔フィルムの、前記開孔径が大きい一方の面の開孔径と、前記開孔径が小さい他方の面の開孔径が、いずれも0.50mm以上0.65mm以下であり、坪量が20g/m以上60g/m以下であり、
前記開孔径が大きい一方の面の開孔径と、前記開孔径が小さい他方の面の開孔径の差が、0.03mm以上0.15mm以下であり、
前記トップシートと前記開孔フィルムとの間に、液拡散性のセカンドシートが配置され、
前記セカンドシートの坪量が10g/m以上60g/m以下であり、前記セカンドシートの形状は、前記吸収体の表面を完全に覆うことができる形状であることを特徴とする、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開孔フィルムを具備した吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等の吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。これにより、尿等の体液は、トップシートを通って吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。このような吸収性物品には、体液の吸収性の向上、着用者の装着感の向上、漏れ防止等を図るために、様々な工夫がなされている。
【0003】
例えば、開孔フィルムを吸収性物品の所定の位置に設けることによって、ウェットバックや吸収速度などの吸収性能を向上させる技術がある。該開孔フィルムの開口面積は肌側面と非肌側面で、肌側>非肌側とすることで、ウェットバックや吸収速度を向上するというものである。
【0004】
開孔フィルムを用いた吸収性物品として、例えば、特許文献1は、液透過性の表面材、液体保持性の吸収材及び液不透過性の防漏材を有する吸収性物品において、表面材は、少なくとも、肌当接面層と非肌当接面層とを積層一体化してなる液透過性シートからなり、上記肌当接面層は、熱可塑性樹脂からなる開孔フィルム又は合成繊維からなる不織布により形成される技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2は、上から下へ順に設けられる表面層と、吸収層と、底層とを備え、吸収層は、上から下へ、穿孔フィルム層と、コア層と、下付着層とを有し、穿孔フィルム層は、表面層とコア層との間に位置し、下付着層は、コア層と底層との間に位置する尿とりパッドが開示されている。
【0006】
特許文献3は、SAP及びフラッフパルプのうち少なくとも一つを吸収体成分として含む吸収体層を有する吸収体において、吸収体は、吸収体層に接して配置され、かつ、耐水性、高通気性合成樹脂製開孔フィルムからなる吸収体被覆層を備え、吸収体被覆層は、吸収体成分の吸収体からの離脱を防止するとともに、形態安定性を保持するように構成されており、開孔フィルムは頭頂部の開孔が小さく、底部の開孔が大きい漏斗状構造の多数の突起部を有し、その突起部の頭頂部が吸収体層に接するように配置される吸収体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-66425号公報
【文献】実用新案登録第3215515号公報
【文献】特開2002-355271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記開孔フィルムを設けた特許文献1や特許文献2では、いずれもウェットバックなどの液戻り防止性や吸収速度に優れているものの、吸収性物品における液体の拡散性には効果があるものとはいえず、吸収体の吸収性能を十分に発揮できていない。
【0009】
また、特許文献3は、従来の非肌側面よりも肌側面の開口面積が小さい開孔フィルムを用い、開口面積の小さい面が吸収体に接するような構成となっている。しかし、この場合であっても上記液体の拡散性を良化させるという技術思想はない。
【0010】
上記の文献のように、生理用ナプキンや使い捨ておむつの受液側表面材として、開孔フィルムが用いられているものがあり、開孔フィルムを配置することで液透過性、液戻り防止性が改善される。しかし、開孔フィルムは通常の不織布よりも高価なものが多いにもかかわらず、より有益な液透過性、液戻り防止性を示すには不十分であり、樹脂フィルムであるが故、肌触り面で硬さを感じられた。
【0011】
したがって、本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、排尿などにより受液した際、素早く濡れ広がることで、拡散性や液透過性が改善され、液戻り防止性を向上させる特徴を有する吸収性物品を提供することを目的とする。
【0012】
詳しくは、トップシートと吸収体の間に開孔フィルムを配置することで、樹脂フィルムの硬さを抑制することができ、かつ、排出された尿を吸収性物品全体に拡散させることによって、吸収体全体に広く液体を吸収させ、結果的に液戻り防止性を向上させることができる、吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、特定の構成の開孔フィルムをトップシートと吸収体との間に設けることで上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0014】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に配置される吸収体とを有し、前記トップシートと前記吸収体との間に、複数の漏斗状の開孔を有する開孔フィルムが配置された吸収性物品であって、前記開孔フィルムは、厚み方向で一方の面の開孔径が小さく、他方の面の開孔径が大きい開孔が施され、開孔径の大きい側の開孔が吸収体側を向くように配置されていることを特徴とする、吸収性物品である。
【0015】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、前記開孔フィルムの開孔径が2mm以下であり、開孔の数が50個/cm以上であり、坪量が20g/m以上60g/m以下であることを特徴とするものである。
【0016】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、前記開孔径が大きい一方の面の開孔径と、前記開孔径が小さい他方の面の開孔径の差が、0.03mm以上0.15mm以下であることを特徴とするものである。
【0017】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記トップシートと前記開孔フィルムとの間に、液拡散性のセカンドシートが配置されることを特徴とするものである。
【0018】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記セカンドシートの坪量が10g/m以上60g/m以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
したがって、本発明によれば、開孔フィルムの開孔径の小さい方が肌側を向くことにより、吸収体(下方向)への浸透に加え、横方向(前後左右)への拡散にも優れ、結果として、排尿などにより受液した際、素早く濡れ広がることで、拡散性や液透過性が改善され、液戻り防止性を向上させることができる、吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の吸収性物品の平面図である。
図2図1のX-Xの断面図である。
図3】本発明の開孔フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付する。
【0022】
また、本明細書の説明において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の着用時及び着用後の少なくとも一方をいう。吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後にわたる方向であり、図中、符号Yで示す方向である。また、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、肌当接面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、非肌当接面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。さらに、吸収性物品1としては、ベビー用又は成人用を問わず、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつが例示されるが、これに限定されるものではなく、その他の吸収性物品であってもよい。
【0023】
<吸収性物品>
図1は、本発明の実施形態に係る吸収性物品1をトップシート10側から見た平面図である。図1に示すように、吸収性物品1は、肌当接面側に配された液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向して非肌当接面側に配置された液不透過性のバックシート20と、トップシート10とバックシート20との間に配置された吸収体30と、を備える。これにより、吸収体30は、トップシート10とバックシート20の間に挟まれた構造となっている。
【0024】
吸収性物品1の、長手方向の寸法は100mm以上800mm以下、幅方向の寸法は50mm以上500mm以下であることが好ましい。吸収性物品1の寸法を上記の範囲に調整することにより、軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等に適した吸収性物品1を得ることができる。
【0025】
また、吸収性物品1には、図2に示すように、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品1の長手方向に沿って、トップシート10上に、立体ギャザー用弾性部材を有する一対の立体ギャザー60を備えていてもよい。吸収性物品1の幅方向における立体ギャザー60の外端は、バックシートに固定され、その内端はトップシート10に固着され、その中央はトップシート10に固定されない自由端となるように、立体ギャザーシートが配される。立体ギャザー用弾性部材を長手方向に沿って設けることで、立体ギャザー60が起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとなる。立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状又は帯状の天然ゴム等が使用され、立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は液不透過性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布等が使用される。
【0026】
<トップシート>
トップシート10は、体液が吸収体30へと移動するような液透過性を備えた基材から形成されればよく、例えば、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。また、トップシート10には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート10には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。
強度、加工性及び液戻り量の点から、トップシート10の坪量は、18g/m以上40g/m以下であることが好ましい。トップシート10の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体30へと誘導するために必要とされる、吸収体30を覆う形状であればよい。
【0027】
<バックシート>
バックシート20は、吸収体30が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0028】
強度及び加工性の点から、バックシート20の坪量は、15g/m以上60g/m以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート20には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート20に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート20にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0029】
<開孔フィルム>
本発明においては、トップシート10と吸収体30との間に、複数の漏斗状の開孔を有する開孔フィルム70が配されている。
開孔フィルム70は、体液が吸収体30へと移動するような液透過性、液拡散性を備えていることが好ましく、開孔フィルム70の形状としては特に制限はないが、強度、加工性の点から、開孔フィルム70の坪量は、20g/m以上60g/m以下であることが好ましく、23g/m以上30g/m以下であることがより好ましい。また、液透過性の点から、開孔の数は50個/cm以上が好ましい。さらに、液拡散性の点で、開孔径は2mm以下であることが好ましく、0.50mm以上0.65mm以下がより好ましい。開孔フィルム70の開孔の数、開孔径及び坪量を上記の範囲とすることにより、強度及び加工性の点で優れ、液透過性や液拡散性に優れた開孔フィルム70が得られる。なお、開孔フィルム70の材質は、例えば、ポリエチレンといった材料から形成される。
【0030】
また、開孔フィルム70は、図3に示すように、厚み方向で一方の面の開孔径L1は小さく、他方の面の開孔径L2が大きいという開孔が施されている。従来の吸収性物品に用いられている開孔フィルムは、漏斗の開孔径の小さい方、すなわち開孔径L1の側の開孔が吸収体側を向くように配置されているが、本発明の開孔フィルム70は裏表が逆となり、開孔径L2の側の開孔が吸収体30側を向くように配置されている。これにより、下部の吸収体30への浸透に加え、横方向(前後左右)への拡散にも優れる吸収性物品1を得ることができる。また、液拡散性の点から、開孔径が大きい一方の面の開孔径L2と、開孔径が小さい他方の面の開孔径L1の差が、0.03mm以上0.15mm以下であることが好ましい。
【0031】
<吸収体>
本発明の吸収性物品1において、吸収体30の長手方向の最長幅の寸法LOは、100mm以上800mm以下であることが好ましく、150mm以上500mm以下であることがより好ましい。また、吸収体30の幅方向の最長幅の寸法WOは、50mm以上500mm以下であることが好ましく、70mm以上105mm以下であることがより好ましい。また、本発明の吸収体30は、図2に示すように、肌当接面側に位置する上層吸収体301と、非肌当接面側に位置する下層吸収体302からの二層となってもよく、上層吸収体301と下層吸収体302の間に、キャリアシート50を配置してもよい。
【0032】
(吸収性繊維)
吸収体30は、基材としての吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(SAP)とを含有する。
吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体30に、基材としての吸収性繊維にフラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、100g/m以上800g/m以下であることが好ましく、325g/m以上615g/m以下であることがより好ましい。これにより、肌触りを損なわずに、より多くの体液を吸収させることができる。
【0033】
(高吸収性ポリマー)
吸収体30の高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。
【0034】
吸収体30に含有されるSAPの坪量は、240g/m以上450g/m以下であることが好ましく、245g/m以上445g/m以下であることがより好ましい。上記の数値範囲内とすることで、吸収体30におけるゲルブロッキングを防止し、かつ、吸収体30において多量の体液を吸収させることができる。
また、吸収体30において、フラッフパルプの重量に対する、高吸収性ポリマーの重量の比率である、高吸収性ポリマーの重量/フラッフパルプの重量×100(%)が、40%以上120%以下であることが好ましく、50%以上100%以下であることがより好ましい。
【0035】
吸収体30において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものでもよく、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートでもよい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体30の形状の安定化の目的から、吸収体30をキャリアシート50に包んでもよい。キャリアシート50の基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシート50を複数備える場合は、複数のキャリアシート50の基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0036】
<セカンドシート>
また、図2に示すように、トップシート10と開孔フィルム70との間には、吸収性物品1の液拡散性を向上させ、かつ、開孔フィルム70の硬さを抑制し、肌触りを良くするために、液拡散性のセカンドシート40を配置することが好ましい。セカンドシート40の基材は、体液の透過速度がトップシート10より速く、体液を吸収体30へ素早く拡散するものであればよく、例えば、親水性不織布、特に、エアスルー不織布が好ましい。セカンドシート40の厚さは、0.1mm以上が好ましく、その坪量は、10g/m以上60g/m以下が好ましく、15g/m以上40g/m以下がより好ましい。厚さが0.1mm未満、又は、坪量が10g/m未満もしくは60g/mより大きいと、吸収体30の上面全体への液体の拡散が十分に行われない。また、セカンドシート40の形状は、特に制限はないが、体液が、くまなく吸収体30に拡散するように、吸収体30の表面を完全に覆うことができる形状であることが好ましい。
【0037】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例
【0038】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0039】
(吸収性物品の作成)
吸収体においては、基材であるフラッフパルプ7gの中に、SAP6gを混合して形成したものを使用し、トップシートとして、エアスルー不織布(坪量25g/m)を用い、液不透過性のバックシートとして、通気性ポリエチレンシート(坪量32g/m)を用い、セカンドシートとしてエアスルー不織布(坪量30g/m)、立体ギャザーとして、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンドを積層した複合不織布(坪量15g/m)、上下キャリアシートを用いた。また、セカンドシートの下に開孔フィルム(坪量26g/m)を、開孔径の小さい側をセカンドシート側として配置し、吸収性物品の寸法は、長手方向が273mm、幅105mmとし、吸収体の寸法は、長手方向が220mm、幅71mmとし、これを実施例のサンプルとした。
比較例1において、開孔フィルムを入れない以外は、実施例と同様にして吸収性物品を作成し、比較例1のサンプルとした。また、比較例2において、セカンドシートの下に開孔フィルム(坪量26g/m)を、開孔径の大きい側をセカンドシート側として配置した以外は、実施例と同様にして吸収性物品を作成し、比較例2のサンプルとした。
【0040】
(吸収性物品表面の肌触り)
8名のパネラーが、吸収性物品の表面の肌触り感を評価した。吸収性物品の表面を触り、「表面が柔らかく感じた」評価者が6人以上8人以下のときを「○」、「表面が柔らかく感じた」評価者が3人以上5人以下のときを「△」、「表面が柔らかく感じた」評価者が1人もしくは2人のとき、又は「表面が柔らかく感じた」評価者が1人もいないときを「×」とした。結果を表1に示した。
【0041】
(吸収速度3回法)
底面積16.8cmの円柱の中央に内径19mmの穴が開いており、重さを755.6gとした測定冶具を、吸収性物品の長手方向、かつ幅方向の中央部の上に置き、上部の穴から生理食塩水それぞれ20mlを投下し、生理食塩水が吸収性物品に接触した時点から治具中央円内の円周に液体が完全に吸い込まれるところを終点として時間を計測した(1回目)。そして3分経過後に同様の時間を計測し(2回目)、同様に3回目を計測した。1回測定時の結果、並びに3回測定時の各回の結果及び合計を表1に示した。
【0042】
(液戻り量)
トップシートを上に向けた状態で、生理食塩水120mlを吸収体の中心部に向かって注水し、10分間放置した後、生理食塩水の吸収部位に、あらかじめ重量を測定したろ紙(ADVANTEC社製 No.2 ろ紙、直径55mm)を置き、その上に35kgf/cmの錘を乗せ、30秒経過後、ろ紙の重量を測り、ろ紙の重量差を液戻り量とした。結果を表1に示した。
【0043】
(濡れ広がり性)
トップシートを上に向けた状態で、生理食塩水120mlを吸収体の中心部に向かって注水し、吸収部位から製品長手方向に生理食塩水が10cm広がるまでの時間を計測し、濡れ広がり性を評価した。結果を表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1の結果から、開孔フィルムを含まない比較例1は表面の肌触りが悪く、模擬尿(生理食塩水)の横方向への拡散、吸収速度に劣り、液戻り量も多かった。開孔フィルムを含むが、開孔フィルムの開孔径が大きい方が肌側を向く比較例2は、表面の肌触りが良く、液戻り量も比較例1よりは少ないものの、横方向への拡散及び吸収速度に劣り、特に吸収速度は比較例1よりも遅いという結果となった。
一方、開孔フィルムの開孔径が小さい方が肌側を向く実施例は、表面の肌触りが良く、横方向への拡散及び吸収速度に優れ、液戻りもしにくいということが分かった。
よって、本発明によれば、排尿などにより受液した際、素早く濡れ広がることで、拡散性や液透過性が改善され、液戻り防止性を向上させることができる、吸収性物品を提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 吸収性物品
10 トップシート
20 バックシート
30、301、302 吸収体
40 セカンドシート
50 キャリアシート
60 立体ギャザー
70 開孔フィルム
図1
図2
図3