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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】自動車用網戸
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/20 20060101AFI20241220BHJP
   E06B 9/52 20060101ALN20241220BHJP
【FI】
B60J1/20 D
E06B9/52 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021156272
(22)【出願日】2021-09-27
(65)【公開番号】P2023047385
(43)【公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390022806
【氏名又は名称】日本ピストンリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306013979
【氏名又は名称】熊野 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】滝口 寛
(72)【発明者】
【氏名】河合 基史
(72)【発明者】
【氏名】佐川 真
(72)【発明者】
【氏名】熊野 義雄
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3122561(JP,U)
【文献】登録実用新案第3170981(JP,U)
【文献】中国実用新案第2635422(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/20
E06B 9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の窓枠外側に取付け可能な自動車用網戸であって、
前記窓枠に略適合する枠体を有し、
前記枠体は、直線部を構成する桟部材と、
前記桟部材と連結するコーナー部材と、
前記桟部材に取付部材によって取付けられると共に、前記窓枠と窓ガラスの間に挿入される固定ステーと、を備え、
前記桟部材は、厚さ寸法が10mm以上かつ20mm以下であって、幅寸法が20mm以上かつ50mm以下であって、外側角部には半径2.5mm以上かつ10mm以下の曲面が施され、内側角部には半径0.1mm以上かつ1.5mm以下の曲面が施され、
前記固定ステーを取付けるための前記取付部材は、1つの前記桟部材において、50mm以上かつ250mm以下の間隔をあけて複数取り付けられ、
前記枠体の内側に位置する前記桟部材の内側面には、網部を固定するための抑えゴムを保持するゴム抑え片が形成され、
前記ゴム抑え片は、前記窓枠に向かって開口する溝部を形成し、前記溝部の内面には、前記抑えゴムの脱落を防止する突起部と、前記突起部よりも前記窓枠側に位置すると共に前記溝部の開口方向と反対方向に向かって斜めに延出する返しと、を備え、
前記ゴム抑え片の前記窓枠側の端部には、前記返しと連続すると共に前記枠体の内側に向かって延出するサポート片を備え、
前記枠体のうち下部には排水用間隙が設けられ、
前記桟部材にはモヘアが設置され、
前記枠体のうち下部に設置される前記モヘアは2以上に分割して設置され、
前記排水用間隙は、隣り合う前記モヘア同士の間隙により形成されることを特徴とする自動車用網戸。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用網戸において、
前記コーナー部材にはシール緩衝材が設置されることを特徴とする自動車用網戸。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動車用網戸において、
前記固定ステーは複数に分離して配置されていることを特徴とする自動車用網戸。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の自動車用網戸において、
前記固定ステーには緩衝材が取り付けられることを特徴とする自動車用網戸。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の自動車用網戸において、
前記固定ステーには排水用貫通部が設けられることを特徴とする自動車用網戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の窓枠外側に取付けられる自動車用網戸に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ウイルス感染症の世界的な流行に見舞われ、社会活動の自粛はもとより、個々の行動にも制約を受けている。例えば、仕事においては、在宅で勤務するテレワークが導入され、移動時においては、公共手段を避けるために自動車の利用も増加している。このような状況の中、テレワークを行う場所として、場合によっては移動(走行)と停車を繰り返しながら、自動車の車内をプライベートな仕事部屋として活用する機会が増加している。また、休憩や仮眠、車中泊等を行う際にも、自動車を利用する機会が増えており、このような比較的長時間車内に滞在する際には、車内の空調管理や換気が必要となってくる。
【0003】
しかしながら、自動車のエアコンによる空調では電気を大量に消費し、特にアイドリングストップ状態でのエアコンの使用は電力消費が大きく、特に電気自動車の場合は、車両の持続走行距離にも影響が出てしまう。また、換気のために窓を開けたままの状態では、蚊などの小虫が車内に入り込こんでしまうという問題がある。
【0004】
このため、従来より車内に外気を取り入れることができ、かつ、蚊や蠅などの小虫の進入を防止する自動車用網戸が種々知られている。例えば、特許文献1には、自動車の道路運送車両の保安基準である外部突起規制に適合させた自動車用網戸であって、自動車の窓枠の外部に網戸を取付けた状態で走行可能な自動車用網戸についての発明が記載されている。なお、その他の構成としては、装着したまま窓を開けて走行できない、簡易的脱着式網戸も、市場で多く販売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3170981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される自動車用網戸は、自動車の走行時における振動によっても外れることのない構造を有する網戸であるが、自動車の速度が上がった際には、風圧によって網戸の浮き上がりやガタつきが生じる恐れがあった。また、自動車の側面に突出した状態で取り付けられているため、風圧による風切り音が発生する恐れがあった。
【0007】
そこで、本発明は上記の事項に鑑みてなされたものであり、自動車の窓枠外側に装着したまま走行することができ、走行時の風圧によっても浮き上がりや風切り音の発生を抑えることができる自動車用網戸を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0009】
本願発明に係る自動車用網戸は、自動車の窓枠外側に取付け可能な自動車用網戸であって、前記窓枠に略適合する枠体を有し、前記枠体は、直線部を構成する桟部材と、前記桟部材と連結するコーナー部材と、前記桟部材に取付部材によって取付けられると共に、前記窓枠と窓ガラスの間に挿入される固定ステーと、を備え、前記桟部材は、厚さ寸法が10mm以上かつ20mm以下であって、幅寸法が20mm以上かつ50mm以下であって、外側角部には半径2.5mm以上かつ10mm以下の曲面が施され、内側角部には半径0.1mm以上かつ1.5mm以下の曲面が施され、前記固定ステーを取付けるための前記取付部材は、1つの前記桟部材において、50mm以上かつ250mm以下の間隔をあけて複数取り付けられ、前記枠体の内側に位置する前記桟部材の内側面には、網部を固定するための抑えゴムを保持するゴム抑え片が形成され、前記ゴム抑え片は、前記窓枠に向かって開口する溝部を形成し、前記溝部の内面には、前記抑えゴムの脱落を防止する突起部と、前記突起部よりも前記窓枠側に位置すると共に前記溝部の開口方向と反対方向に向かって斜めに延出する返しと、を備え、前記ゴム抑え片の前記窓枠側の端部には、前記返しと連続すると共に前記枠体の内側に向かって延出するサポート片を備え、前記枠体のうち下部には排水用間隙が設けられ、前記桟部材にはモヘアが設置され、前記枠体のうち下部に設置される前記モヘアは2以上に分割して設置され、前記排水用間隙は、隣り合う前記モヘア同士の間隙により形成されることを特徴とする。
【0011】
本実施形態に係る自動車用網戸において、前記コーナー部材にはシール緩衝材が設置されると好適である。
【0013】
本実施形態に係る自動車用網戸において、前記固定ステーは複数に分離して配置されていると好適である。
【0014】
本実施形態に係る自動車用網戸において、前記固定ステーには緩衝材が取り付けられると好適である。
【0015】
本実施形態に係る自動車用網戸において、前記固定ステーには排水用貫通部が設けられると好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る自動車用網戸によれば、窓枠の外部に網戸を取付けた状態で自動車を走行させることが可能であって、走行時の風圧による網戸の浮き上がりや、風切り音の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る網戸を示す斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る桟部材を示す断面図。
図3】本発明の実施形態に係る枠体を示す断面図。
図4】本発明の実施形態に係る枠体であって、取付時において下部に位置する排水用間隙の一例を示す斜視図。
図5】本発明の実施形態に係る桟部材とコーナー部材の連結部であって、取付時において自動車の側面と対向する側を示す分解斜視図。
図6】本発明の実施形態に係る桟部材とコーナー部材の連結部であって、取付時において外側を示す分解斜視図。
図7】本発明の実施形態に係る固定ステーであって、二組以上の取付部材で固定される変形例を示す斜視図。
図8】本発明の実施形態に係る固定ステーであって、図7のA部拡大斜視図。
図9】本発明の実施形態に係る網戸を自動車の窓枠に取り付ける方法を示す参考図。
図10】本発明の実施形態に係る網戸を自動車に取り付けた状態を模擬した風圧試験の試験方法を示す参考図。
図11】風圧模擬試験の試験結果を示す一覧表。
図12】厚さBと外側Rの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る網戸を示す斜視図、図2は、本発明の実施形態に係る桟部材を示す断面図、図3は、本発明の実施形態に係る枠体を示す断面図、図4は、本発明の実施形態に係る枠体であって、取付時において下部に位置する排水用間隙の一例を示す斜視図、図5は、本発明の実施形態に係る桟部材とコーナー部材の連結部であって、取付時において自動車の側面と対向する側を示す分解斜視図、図6は、本発明の実施形態に係る桟部材とコーナー部材の連結部であって、取付時において外側を示す分解斜視図、図7は、本発明の実施形態に係る固定ステーであって、二組以上の取付部材で固定される変形例を示す斜視図、図8は、図7のA部拡大斜視図である。
【0020】
[自動車用網戸の部品構成]
本実施形態に係る網戸100は、図1に示すように、自動車の窓枠に略適合する形状をした枠体1と、枠体1に取付けられる網部2によって構成される。
【0021】
枠体1は、直線部を構成する複数の桟部材10と、枠体1の角部に位置し、桟部材10と連結する複数のコーナー部材30と、桟部材10に取付けられる複数の固定ステー40によって構成される。
【0022】
本実施形態に係る桟部材10は、図2に示すように、内部に中空部20を備える断面形状を有する。また、桟部材10の断面を構成する各面は、網戸100を自動車の窓枠に取り付けた状態(以下、取付状態という。)において、窓枠に対向する面である底面11と、底面11に対向し取付状態において外側に位置する面である表面12と、底面11と表面12とを接続し枠体1の外周に位置する面である外側面13と、底面11と表面12とを接続し枠体1の内側に位置する面である内側面14と、によって構成される。また、表面12と外側面13及び内側面14が接続される角部である外側角部18と、底面11と外側面13及び内側面14が接続される角部である内側角部19には、それぞれ曲面が形成される。
【0023】
内側面14には、ゴム抑え片15aが形成され、底面11側に開口するように第1溝部15が形成される。第1溝部15は、図3に示すように、網部2及び網部2を固定するための抑えゴム3が挿入される溝であって、抑えゴム3の外径よりも小さな幅に形成されている。そのため、網部2と抑えゴム3を第1溝部15に圧入することで、圧縮された抑えゴム3の反発力によって、網部2を第1溝部15の内面に押付けて固定することができる。なお、図2に示すように、第1溝部15の内面に突起部15bを設け、抑えゴム3の反発力による面圧を高めて、網部2を外れにくくしても構わない。また、ゴム抑え片15aの端部に返し15cを設け、抑えゴム3の脱落を防止するような形状にしても構わない。
【0024】
また、網部2は、図3に示すように、ゴム抑え片15aの端部と自動車の窓枠との間を通過するように取り付けられる。このため、網戸100の取付状態において、ゴム抑え片15aの端部は、その端部と自動車の窓枠との間に、網部2が通過するのに十分な大きさの隙間ができるように形成されている。また、網部2はゴム抑え片15aの端部と接触するように取り付けられるため、ゴム抑え片15aの端部は、網部2に局所的な荷重がかからないような形状に形成されていると好適である。例えば、図3に示すように、角部に曲面が形成され、当該接触面積を大きくとることができるサポート片15dがゴム抑え片15aの端部に設けられていると好適である。
【0025】
なお、本実施形態において、ゴム抑え片15aは、図2に示すように、表面12と間に段差が生じるように形成されているが、ゴム抑え片15aの形状はこれに限らず、表面12との間に段差がなく、外側角部18と一体となった形状であっても構わない。
【0026】
底面11には、図2及び図3に示すように、幅方向の略中央部に、固定ステー40を取り付けるための第2溝部16が形成され、網戸100の取付状態において、枠体1の外周側に位置する箇所には、後述するモヘア60を取り付けるための第3溝部17が形成される。
【0027】
また、桟部材10の中空部20は、後述するコーナー部材30の差し込み部32が挿入可能な大きさに形成されている。
【0028】
本実施形態に係る桟部材10の断面形状は、図2に示す幅A及び厚さBが、後述する風圧模擬試験により決定される。具体的には、幅Aが20mm以上かつ50mm以下であって、厚さBが10mm以上かつ20mm以下に形成されている。
【0029】
また、外側角部18に形成される曲面の半径(以下、外側Rという。)は、厚さBの寸法によって制限され、図12に示すグラフ内の枠線内側の範囲内において決定される。具体的には、厚さBが10mmである場合には、外側Rは2.5mm以上かつ5mm以下の範囲であって、厚さBが20mmである場合には、外側Rは2.5mm以上かつ10mm以下の範囲で決定される。外側Rが2.5mm以下の場合は、自動車の道路運送車両の保安基準である外部突起規制を満足せず、図12に示す枠線の範囲よりも大きな半径である場合は、外側面13及び内側面14に、十分な長さの平滑面を確保することが困難となり、桟部材10の剛性が低下する恐れがある。
【0030】
内側角部19に形成される曲面の半径(以下、内側Rという。)は、網戸100を窓枠に取り付ける際に、車体側を傷つけてしまう恐れがないように、0.1mm以上に形成される。また、内側Rが大きい場合は、車体と桟部材10との隙間に雨水を呼び込んでしまう恐れがあるため、内側Rは、1.5mm以下であると好適である。なお、内側角部19にこのような曲面を形成することで、内側角部19の欠けを防止することもできる。
【0031】
上記のような断面形状をもつ桟部材10の材質は、アルミニウム合金などの軽金属であって、例えば、A6063(T5)が好適に用いられる。なお、桟部材10の材質はこれに限らず、A6063(T5)相当の強度を有する樹脂材であっても構わない。
【0032】
また、桟部材10の長さは、取付対象となる自動車の窓枠の大きさに合わせて適宜設定される。
【0033】
モヘア60は、合成繊維からなる毛を束状にした部材であって、桟部材10の第3溝部17に取り付けられ、網戸100の取付状態において、桟部材10と車体との隙間を封鎖し、雨水や小虫等の枠体1の内側への侵入を防止する。網戸100の取付状態において、上部及び左右に位置する桟部材10には、桟部材10の全長に渡ってモヘア60が取り付けられる。また、網戸100の取付状態において、下部に位置する桟部材10には、図4に示すように、部分的に間隙(以下、排水用間隙Gという。)が形成されるように、モヘア60を取り付けない箇所を設けても構わない。このように、網戸100の下部に排水用間隙Gを設けることで、桟部材10と車体との間に隙間ができ、枠体1の内部に入り込んだ雨水を排出することが可能となる。なお、排水用間隙Gは、モヘア60を取り付けないことにより形成されるものであるとして説明を行ったが、これに限らず、毛足の短いモヘアに置き換えて排水用間隙Gを形成しても構わない。
【0034】
コーナー部材30は、図5に示すように、桟部材10と連結する、樹脂からなる部材であって、枠体1の角部の角度を決定するコーナー部31と、桟部材10の中空部20に挿入される差し込み部32により構成される。コーナー部材30は、図5に示すように、ビス51、スプリングワッシャー52及びナット53を一組とする取付部材50によって桟部材10と連結される。
【0035】
コーナー部31は、取付対象となる自動車の窓枠の形状に合わせて桟部材10の連結角度が適宜設定される。例えば、接続される桟部材10同士が鋭角となるような形状のコーナー部31を有するコーナー部材30と、鈍角となるような形状のコーナー部31を有するコーナー部材30を組み合わせ、枠体1の形状が略台形や略平行四辺形となるように設定される。
【0036】
このように、適宜長さを設定することのできる桟部材10と、連結角度を設定することのできるコーナー部材30と、によって枠体1が構成されているため、取付対象となる自動車の窓枠に合わせたバリエーションを容易に作ることができる。図1には、接続される桟部材10同士が直角となるようなコーナー部材30を用いた枠体1を、一例として示す。
【0037】
また、図5に示すように、コーナー部31には、網戸100の取付状態において窓枠と対向するコーナー部底面31aに、ゴム等の材料からなるシール緩衝材70が取り付けられており、コーナー部31が窓枠と接触する際にも、車体側への傷つきを防止する。
【0038】
シール緩衝材70は、コーナー部底面31aと相似形状であって、シール緩衝材70の設置面積が、コーナー部底面31aの面積に対して50%以上かつ95%以下となるように形成されると好適である。シール緩衝材70の設置面積が、コーナー部底面31aの面積に対して50%以下である場合には、車体の側面に施されている曲面等のデザインによっては、シール緩衝材70が車体側面に接触せずに、車体とコーナー部底面31aとの間に隙間が発生する恐れがある。また、シール緩衝材70の設置面積が、コーナー部底面31aの面積に対して95%以上である場合には、コーナー部底面31aの輪郭からはみ出し、外観上の問題が生ずる恐れがある。
【0039】
差し込み部32には、図6に示すように、桟部材10と連結するためのビス51と螺合するナット53と、固定ステー40を取り付けるためのビス51と螺合するナット53を埋め込むための窪みが形成されている。なお、この窪みはナット53の二面幅を支えることができる形状に形成されているため、ビス51を締め付ける際に、ナット53の共回りを防止することができる。また、差し込み部32の先端部には、スムーズに桟部材10の中空部20に挿入できるように、面取り又は曲面が施されていると好適である。
【0040】
固定ステー40は、図5に示すように、段差が形成される板状の部品であって、ビス51を貫通する貫通孔が施される固定端部41と、図9に示す網戸100の取付状態において、自動車の窓枠Fと窓ガラスWとの間に挿入可能な先端部42を有する。なお、先端部42には、窓枠Fや窓ガラスWを傷付けてしまうことのないように、緩衝材が取り付けられていても構わない。
【0041】
固定ステー40は、図1に示すように、枠体1の対辺に位置する桟部材10(本実施形態においては上部と下部に位置する桟部材10)に、1つの桟部材10について少なくとも2か所の位置に固定される。1つの桟部材10に取り付けられる複数の固定ステー40の取り付け部の間隔は、後述する風圧模擬試験により決定され、具体的には、取付部材50の間隔が50mm以上かつ250mm以下の範囲で取り付けられる。なお、桟部材10に取り付けられる固定ステー40は、図1に示すように、一組の取付部材50で固定される幅の狭い固定ステー40を、1つの桟部材10に分離して複数取り付けてもよく、図7に示すように、二組以上の取付部材50で固定される幅の広い固定ステー40を、1つの桟部材10に1つのみ取り付けても構わない。図7に示す二組以上の取付部材50で固定される幅の広い固定ステー40を使用する場合でも、取付部材50の間隔は、分離して複数取り付けられる幅の狭い固定ステー40を使用する場合と同様に、50mm以上かつ250mm以下の範囲で取り付けられる。
【0042】
また、固定ステー40には、図8に示すように、固定端部41と先端部42とを連絡する段差部であって、網戸100の自動車への取付状態において地面と平行となる面に、排水用貫通部Kを設けても構わない。このように、固定ステー40の段差部に排水用貫通部Kを設けることで、幅の広い固定ステー40であっても、地面と平行となる面に雨水が溜まるのを防ぐことが可能となる。排水用貫通部Kの形状は、固定ステー40の段差部の形状によって決定されるが、適切に雨水を排水するため、長手寸法が4mm以上8mm以下かつ短手寸法が2.5mm以上6.5mm以下の長孔であると好適である。また、本実施形態において、排水用貫通部Kは、取付部材50の下部となる位置に設置されると好適である。
【0043】
網部2は、網戸100を自動車に取り付けたままの状態で走行しても破損することがないように、一定の強度、耐久性及び耐熱性が求められる。そのため、網部2の材質は、グラスファイバーやステンレス、またはこれらと相当の強度を有する材質が用いられると好適である。
【0044】
[自動車窓枠への取り付け方法]
次に、網戸100の自動車の窓枠への取付方法について説明を行う。図9は、網戸100を自動車の窓枠に取り付ける方法を示した参考図である。
【0045】
網戸100の取付けは、まず、図9に示すように下部に位置する固定ステー40の先端部42を、窓枠Fの下部と窓ガラスWの隙間Sに挿入する。このとき上部の固定ステー40は取り外した状態にしておく。
【0046】
次に、枠体1を窓枠Fに重なり合うように押し付け、上部の固定ステー40を取付部材50によって、自動車の内側から取り付ける。このとき、上部の固定ステー40の先端部42は、窓枠Fの上部と窓ガラスWの隙間Sに位置するように取り付ける。このように、固定ステー40は、窓枠Fの内側から取付部材50によって固定するため、網戸100は、自動車の内側から取り付けることで、自動車の外側から取り外すことはできず、網戸100の盗難や悪戯による被害を防ぐことができる。
【0047】
なお、固定ステー40の段差部は、取付対象となる自動車の窓枠Fの厚さに応じて段数や段差高さ等の形状が適宜設定されており、網戸100を窓枠Fに固定した状態において、モヘア60が窓枠Fに密着し、枠体1の内部への雨水の侵入を防ぐことができる。
【0048】
また、本実施形態においては、上部の固定ステー40をあらかじめ取り外した状態で、網戸100の取り付けを行う場合について説明を行ったが、網戸100の取り付け方法はこれに限らず、固定ステー40の固定端部41に設けられているビス51を貫通する貫通孔を長孔として、固定ステー40を上下にスライドすることにより取り付けを行っても構わない。
【0049】
[風圧模擬試験]
次に、本実施形態に係る網戸100を、自動車に取り付けて走行させた状態を再現した風圧模擬試験の試験結果を参照して、本発明について詳しく説明を行う。
【0050】
図10は、網戸100を自動車に取り付けた状態を模擬した風圧試験の試験方法を示す参考図である。
【0051】
風圧模擬試験は、図10に示すように、桟部材10を模擬した長さLが300mmのテストピースを、固定ステー40によって定盤に取り付け、車速に相当する風速(風圧)をエアーガンを用いて当該テストピースに負荷することによって行う。エアーガンによる風速(風圧)の調整は、自動車が100km/hで走行している状態を模擬するように、エアー圧、及びエアーガンとテストピースとの距離を調整することによって行った。このような条件の下、テストピースの幅A、厚さB及び固定ステー40を固定する取付部材50の取付間隔Pを変化させ、テストピースを定盤に取り付けた後に、エアー圧を最大風速(風圧)まで徐々に変化させ、ガタツキ、浮き上がり及び風切り音の変化について検証を行った。
【0052】
上記条件にて行った風圧模擬試験の試験結果を、図11に一覧にして示す。
【0053】
これらの試験結果によれば、幅Aが20mm以下、または、厚さBが10mm以下の場合には、テストピースの剛性が低くなり、風圧を負荷した際に、ガタつきや浮き上がりが生じることが確認された。また、厚さBが20mm以上の場合には、風圧を受ける面積が大きくなることで、テストピースが浮き上がり、テストピースと定盤との間に隙間が発生することが確認された。なお、テストピースが浮き上がりと同時に、風切り音が大きくなることも確認された。また、取付間隔Pが250mm以上の場合には、固定ステー40から離れた位置において、テストピースの浮き上がり及びガタつきが生じることが確認された。
【0054】
その他の寸法上の制約として、幅Aが20mm以下の場合では、モヘア60の取付スペースが小さくなり、モヘア60の取付けが困難となることが確認された。また、幅Aが大きくなりすぎる場合には、網部2の面積が減少し、外観上にも影響する。そのため、幅Aは50mm以下であると好適である。また、取付間隔Pが50mm以下で、固定ステー40を複数個所で固定すると、外観上に影響するため好ましくない。
【0055】
以上の試験結果より、本実施形態に最適な桟部材10の断面寸法は、幅Aが20mm以上かつ50mmであって、厚さBが10mm以上かつ20mm以下であることが確認された。また、複数の固定ステー40の最適な取付間隔Pは、50mm以上かつ250mmであることが確認された。
【0056】
上述したように、本発明に係る自動車用網戸によれば、窓枠の外部に網戸を取付けた状態で自動車を走行させることが可能であって、走行時の風圧によっても網戸の浮き上がりや、風切り音の発生を抑えることができる。
【0057】
なお、本発明に係る自動車用網戸は、桟部材10の断面が、図2及び図3に示す、窓枠に対向する面である底面11と、底面11に対向し取付状態において外側に位置する面である表面12と、底面11と表面12とを接続し枠体1の外周に位置する面である外側面13と、底面11と表面12とを接続し枠体1の内側に位置する面である内側面14と、によって構成される場合を一例として説明したが、桟部材10の断面形状はこれに限定されるものではなく、表面12の形状が半径の大きな曲面である略D字形または略半月形であっても構わない。また、外側面13または内側面14を斜面とする略台形の断面形状であっても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0058】
1 枠体, 2 網部, 3 抑えゴム, 11 底面, 12 表面, 13 外側面, 14内側面, 15 第1溝部, 15a ゴム抑え片, 15b 突起部, 15c 返し, 15d サポート片, 16 第2溝部, 17 第3溝部, 18 外側角部, 19 内側角部, 20 中空部, 30 コーナー部材, 31 コーナー部, 31a コーナー部底面, 32 差し込み部, 40 固定ステー, 41 固定端部, 42 先端部, 50 取付部材, 51 ビス, 52 スプリングワッシャー, 53 ナット, 60 モヘア, 70 シール緩衝材, 100 網戸, F 窓枠, W 窓ガラス, S 隙間, G 排水用間隙, K 排水用貫通部
図1
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図12