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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】ロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
H02K1/28 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022512145
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021013031
(87)【国際公開番号】W WO2021200708
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-02-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2020062100
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠山 俊平
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋将
(72)【発明者】
【氏名】井上 亮平
【合議体】
【審判長】小宮 慎司
【審判官】中野 浩昌
【審判官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/169043(WO,A1)
【文献】特開2016-96635(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030370(WO,A1)
【文献】特開2003-42133(JP,A)
【文献】特開2018-157669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機用のロータであって、
軸方向の一端側に径方向外側に突出するフランジ部を有するシャフトと、
前記シャフトとの間で回転トルクが伝達可能な態様で前記シャフトと嵌合するロータコアと、
前記ロータコアの軸方向の一方側の端面を覆う第1エンドプレートと、
前記ロータコアの軸方向の他方側の端面を覆う第2エンドプレートと、
前記シャフトにネジ締めされ、軸方向で前記フランジ部との間に前記ロータコアを挟むナット部材と、
軸方向で前記フランジ部と前記第1エンドプレートとの間に設けられる第1ワッシャと、
軸方向で前記ナット部材と前記第2エンドプレートとの間に設けられる第2ワッシャとを含み、
前記フランジ部は、前記シャフトにおける前記ロータコアが嵌合する外周面から径方向外側に突出し、
前記第1ワッシャは、前記フランジ部の座面に軸方向に当接し、かつ、前記フランジ部の座面の外径よりも大きい外径を有し、
前記第2ワッシャは、前記ナット部材の座面の外径よりも大きい外径を有する、ロータ。
【請求項2】
前記第1エンドプレート及び前記第2エンドプレートは、アルミにより形成される、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記シャフトは、前記ロータコアが嵌合する外周面から前記フランジ部が径方向外側に突出する角部に、角Rが付与され、
前記第1ワッシャの厚みは、前記角Rの軸方向の厚み以上である、請求項1又は2に記載のロータ。
【請求項4】
前記シャフトは、外周面に軸方向に延在する凹状の溝部を有し、
前記第1ワッシャは、前記溝部に嵌合する凸部を、径方向内側に有する、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のロータ。
【請求項5】
前記第1ワッシャ及び前記第2ワッシャは、同一の形態である、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
シャフトの軸方向一方側のフランジ部(受止部)にロータコアを軸方向に当接させ、シャフトに軸方向他方側からナット部材を締め付けることで、ナット部材の締め付けによる軸力によりロータコアをフランジ部とナット部材の間に挟持する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-100227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、ロータコアにおけるフランジ部との接触部に当該軸力に起因した応力が発生しやすい。
【0005】
そこで、本開示は、ナット部材の締め付けによる軸力に起因してロータコアに生じうる応力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面によれば、回転電機用のロータであって、
軸方向の一端側に径方向外側に突出するフランジ部を有するシャフトと、
前記シャフトとの間で回転トルクが伝達可能な態様で前記シャフトと嵌合するロータコアと、
前記ロータコアの軸方向の一方側の端面を覆う第1エンドプレートと、
前記ロータコアの軸方向の他方側の端面を覆う第2エンドプレートと、
前記シャフトにネジ締めされ、軸方向で前記フランジ部との間に前記ロータコアを挟むナット部材と、
軸方向で前記フランジ部と前記第1エンドプレートとの間に設けられる第1ワッシャと、
軸方向で前記ナット部材と前記第2エンドプレートとの間に設けられる第2ワッシャとを含み、
前記フランジ部は、前記シャフトにおける前記ロータコアが嵌合する外周面から径方向外側に突出し、
前記第1ワッシャは、前記フランジ部の座面に軸方向に当接し、かつ、前記フランジ部の座面の外径よりも大きい外径を有する、ロータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ナット部材の締め付けによる軸力に起因してロータコアに生じうる応力を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施例によるモータの断面構造を概略的に示す断面図である。
図1A図1のQ0部の拡大図である。
図2図1のQ1部の拡大図である。
図3図1のQ2部の拡大図である。
図4】ロータシャフトと第1ワッシャを通る断面図であって、モータの回転軸に垂直な平面による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施例によるモータ1(回転電機の一例)の断面構造を概略的に示す断面図である。図1Aは、図1のQ0部の拡大図である。図2は、図1のQ1部の拡大図である。図3は、図1のQ2部の拡大図である。図4は、ロータシャフト34と第1ワッシャ71を通る断面図であって、モータ1の回転軸12に垂直な平面による断面図である。なお、図1は、モータ1の回転軸12を通る平面であって、図4のラインL1とL2に沿った2平面に沿った断面図である。
【0011】
図1には、モータ1の回転軸12が図示されている。以下の説明において、軸方向とは、モータ1の回転軸(回転中心)12が延在する方向を指し、径方向とは、回転軸12を中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、回転軸12から離れる側を指し、径方向内側とは、回転軸12に向かう側を指す。また、周方向とは、回転軸12まわりの回転方向に対応する。
【0012】
また、図1には、回転軸12の方向(すなわち軸方向)に沿ったX1側とX2側が定義されている。X方向は、軸方向に平行である。以下の説明において、X1側とX2側の各用語は、相対的な位置関係を表すために用いられる場合がある。
【0013】
モータ1は、例えばハイブリッド車両や電気自動車で使用される車両駆動用のモータであってよい。ただし、モータ1は、他の任意の用途に使用されるものであってもよい。
【0014】
モータ1は、インナロータタイプであり、ステータ21がロータ30の径方向外側を囲繞するように設けられる。ステータ21は、径方向外側がモータハウジング10に固定される。ステータ21は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなるステータコア211を備え、ステータコア211の径方向内側には、コイル22が巻回される複数のスロット(図示せず)が形成される。
【0015】
ロータ30は、ステータ21の径方向内側に配置される。ロータ30は、ロータコア32と、ロータシャフト34とを備える。ロータコア32は、回転トルクが伝達可能な態様でロータシャフト34の径方向外側の表面に固定され、ロータシャフト34と一体となって回転する。ロータコア32は、ロータシャフト34に焼き嵌めや圧入又はその類により固定(嵌合)されてよい。なお、図1では、ロータコア32は、ロータシャフト34の径方向外側の表面(外周面)のうちの、軸方向の範囲SC1(図1A参照)に係る表面に径方向で対向する。ロータシャフト34は、モータハウジング10にベアリング14a、14bを介して回転可能に支持される。なお、ロータシャフト34は、モータ1の回転軸12を画成する。
【0016】
ロータコア32は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなる。ロータコア32の磁石孔324には、永久磁石321が埋め込まれる。あるいは、永久磁石321のような永久磁石は、ロータコア32の外周面に埋め込まれてもよい。なお、永久磁石321の配列等は任意である。
【0017】
ロータコア32の軸方向の両側には、エンドプレート35A、35Bが取り付けられる。エンドプレート35A、35Bは、ロータコア32の軸方向の端面を覆う。エンドプレート35A、35Bは、ロータコア32からの永久磁石321の離脱を防止する離脱防止機能の他、ロータ30のアンバランスの調整機能(切削等されることでアンバランスをなくす機能)を有してよい。なお、図1では、エンドプレート35A、35Bは、ロータシャフト34の径方向外側の表面のうちの、軸方向の範囲SC2(図1A参照)に係る表面に径方向で対向する。範囲SC2は、上述した範囲SC1の両側(軸方向の両側)に設定される。
【0018】
エンドプレート35A、35Bは、非磁性材料により形成される。エンドプレート35A、35Bは、好ましくは、アルミにより形成される。この場合、切削が容易となり、エンドプレート35A、35Bによるロータ30のアンバランスの調整機能を効果的に実現できる。ただし、変形例では、エンドプレート35A、35Bは、ステンレス鋼等により形成されてもよい。
【0019】
ロータシャフト34は、図1に示すように、中空部34Aを有する。中空部34Aは、ロータシャフト34の軸方向の全長にわたり延在する。中空部34Aは、軸方向の両側で軸方向に開口してよい。中空部34Aは、ロータシャフト34の軸方向の全長にわたり延在する。中空部34Aは、冷却用の油が通る油路801として機能してもよい。
【0020】
ロータシャフト34には、図1に示すように、ナット部材60が設けられる。
【0021】
ナット部材60は、軸方向に視て例えば六角形の外形を有し、径方向内側に雌ネジ部が形成される。組み付け時、ロータシャフト34にロータコア32が組み付けられた後、ナット部材60は、ロータシャフト34の径方向外側の表面に形成される雄ネジ部に螺着し、軸方向に締め付けられる。これにより、ロータコア32は、軸方向でロータシャフト34のフランジ部346とナット部材60との間に挟持される。この場合、ロータコア32には、ナット部材60の締め付けにより軸方向の軸力が付与される。
【0022】
ナット部材60の座面61は、図2に示すように、後述する第2ワッシャ72に係る座面である。すなわち、ナット部材60の座面61には、後述の第2ワッシャ72が面接触する態様で当接される。ナット部材60の座面61は、軸方向に垂直な一定の平面内に延在する。ナット部材60の座面61は、軸方向に視て円環状の形態であり、外径r20である。
【0023】
このようにして、本実施例によれば、ロータシャフト34の軸方向X1側のフランジ部346(受止部)にロータコア32を軸方向に当接させ、ロータシャフト34に軸方向X2側からナット部材60を締め付けることで、ナット部材60の締め付けによる軸力によりロータコア32をフランジ部346とナット部材60の間に挟持できる。
【0024】
なお、本実施例において、ロータコア32の磁極構成は、任意である。例えば、磁極数が8極又は8極以外であってもよいし、永久磁石321に代えて又は加えて、各磁極を形成する対の永久磁石が、径方向外側に向かうほど周方向の距離が広がる態様で配置されてもよい。また、ロータコア32は、フラックスバリアや油路等が形成されてもよい。
【0025】
また、本実施例では、ロータシャフト34は、中空部34Aを有するが、中実であってよい。また、ロータシャフト34は、2パーツ以上が結合されることで形成されてもよい。また、モータ1は、油に代えて又は加えて、冷却水(例えばライフロングクーラント)により冷却されてもよい。
【0026】
次に、図1から図4を更に参照しつつ、本実施例によるロータ30を更に詳細に説明する。以下では、用語「軸方向内側」とは、回転軸12に沿った軸方向で、ロータコア32の中心に相対的に近い側を表し、用語「軸方向外側」とは、ロータコア32の中心に相対的に遠い側を表す。
【0027】
ロータシャフト34は、軸方向の一端側(軸方向X1側)に、径方向外側に突出するフランジ部346を有する。フランジ部346は、ロータシャフト34におけるロータコア32が嵌合する外周面から径方向外側に突出する。図1では、ロータシャフト34は、軸方向の範囲SC4(図1A参照)にわたってフランジ部346を有する。ロータシャフト34の径方向外側の表面のうちの、フランジ部346が形成される軸方向の範囲SC4は、後述する範囲SC3-1(図1A参照)に軸方向外側から隣接する。
【0028】
フランジ部346は、回転軸12まわりの鍔状の形態であり、軸方向内側に座面3461(図3参照)を有する。フランジ部346は、後述するナット部材60の締め付けによって生じる軸力を受ける機能を有する。座面3461は、後述する第1ワッシャ71に係る座面である。すなわち、フランジ部346の座面3461には、後述の第1ワッシャ71が面接触する態様で当接される。座面3461は、軸方向に垂直な一定の平面内に延在する。座面3461は、軸方向に視て円環状の形態であり、外径r10である。
【0029】
ロータシャフト34は、フランジ部346の座面3461に径方向内側から隣接する角部345に、角Rが付与される。すなわち、ロータシャフト34は、ロータコア32が嵌合する外周面からフランジ部346が径方向外側に突出する角部345に、角Rが付与される。なお、角Rの開始するロータシャフト34の外周面の外径は、ロータコア32が嵌合する外周面の外径(すなわち範囲SC1の外径)と同じであってよい。角Rは、回転軸12まわりの角部345の全周のうちの、後述する溝部349の形成範囲以外の周部分全体にわたり形成されてよい。角Rの大きさ(すなわち半径)は、フランジ部346に生じる応力を低減する観点からは、大きいほうが望ましい。他方、角Rの大きさが大きくなるにつれて、座面3461の径方向内側の境界位置が径方向外側へと移動し、かつ、範囲SC3-1の軸方向の長さが長くなる傾向となる。座面3461の径方向内側の境界位置が径方向外側に位置すると、ロータコア32に軸力を径方向内側で直接的に作用させることができなくなる。また、範囲SC3-1の軸方向の長さが長くなると、その分だけ、ロータ30の軸方向の長さが長くなる。従って、角Rの軸方向の厚み(すなわち半径)は、好ましくは、かかる不都合が生じないように、第1ワッシャ71の板厚程度であってよく、例えば、第1ワッシャ71の板厚とエンドプレート35Aの板厚の合計よりも有意に小さく、好ましくは、第1ワッシャ71の板厚以下である。これにより、フランジ部346に生じる応力の低減と範囲SC3-1の軸方向の長さの低減を図りつつ、第1ワッシャ71により軸方向のロータコア32の位置決めが可能となる。
【0030】
ロータシャフト34は、軸方向の他端側(軸方向X2側)に、ナット係合部347を有する。図1では、ロータシャフト34は、軸方向の範囲SC5にわたってナット係合部347を有する。ロータシャフト34の径方向外側の表面のうちの、ナット係合部347が形成される軸方向の範囲SC5は、後述する範囲SC3-2に軸方向外側から隣接する。なお、範囲SC3-2の一部(範囲SC5に隣接する一部)には、ナット係合部347の一部が形成されてもよい。
【0031】
ナット係合部347は、回転軸12まわりの雄ネジ部の形態である。ナット係合部347には、ナット部材60が螺着(ネジ締め)される。
【0032】
ロータシャフト34は、軸方向の他端側(軸方向X2側)からフランジ部346の軸方向の位置までの区間、外径が、範囲SC1における外径r1(図1参照)以下である。従って、ロータシャフト34には、ロータコア32(及び、エンドプレート35A、35B等も同様)を軸方向の他端側から組み付けることができる。
【0033】
ロータシャフト34は、径方向外側の表面に軸方向に延在する凹状の溝部349を有する。溝部349は、いわゆるキー結合用のキー溝の形態であり、周方向の異なる周位置に2箇所以上(図4では2箇所)設けられてもよい。なお、溝部349における外径r2(すなわち、図4に示すように、溝部349の底部表面の外径)は、その深さ分だけ、外径r1よりも小さい。溝部349には、後述する第1ワッシャ71及び第2ワッシャ72の凸部712、722が嵌合される(凸部712については図4参照)。なお、溝部349は、ロータシャフト34の径方向外側の表面のうちの、軸方向X2側の端部からフランジ部346に至る区間において、外径r2以上の外径を有する表面部分に対して形成されてよい。なお、溝部349は、転造や切削等により形成されてよいし、鋳造の際に金型形状によって形成されてもよい。
【0034】
本実施例では、ロータ30は、更に、第1ワッシャ71及び第2ワッシャ72を備える。第1ワッシャ71及び第2ワッシャ72は、ともに、軸方向に視て円環状の形態である。第1ワッシャ71及び第2ワッシャ72は、ともに、鉄又は非磁性材料等により形成されてよい。
【0035】
第1ワッシャ71は、軸方向でフランジ部346とロータコア32との間に設けられる。第1ワッシャ71は、ロータシャフト34の径方向外側の表面(外周面)のうちの、軸方向の範囲SC3-1に係る表面に径方向で対向する。第1ワッシャ71は、図4に示すように、ロータシャフト34の径方向外側の表面に係合する。具体的には、第1ワッシャ71は、径方向内側に突出する凸部712を径方向内側に有し、凸部712がロータシャフト34の溝部349に嵌る。第1ワッシャ71は、凸部712が溝部349に嵌ることで、ロータシャフト34に対して径方向に位置決めされる。以下、このような凸部712による機能を、「径方向の位置決め機能」とも称する。
【0036】
第1ワッシャ71は、フランジ部346からエンドプレート35A(及びエンドプレート35Aを介してロータコア32)に付与される軸力に起因してエンドプレート35A及びロータコア32に生じうる応力を低減する機能(以下、「応力低減機能」とも称する)を有する。
【0037】
具体的には、ロータコア32は、上述したように、フランジ部346とナット部材60との間に挟持され、ナット部材60の締め付けにより軸力が作用する。すなわち、ロータコア32には、フランジ部346とナット部材60との間で、軸力の大きさに応じた大きさの軸方向の圧縮力が作用する。このような軸力は、ロータコア32をフランジ部346とナット部材60との間に確実に保持するために有用となる反面、ロータコア32(及びエンドプレート35A、35B)に応力を発生させる要因となりうる。
【0038】
この点、本実施例によれば、第1ワッシャ71がフランジ部346とロータコア32との間に介在するので、このような第1ワッシャ71が介在しない場合に比べて、エンドプレート35A及びロータコア32に生じる応力を低減できる。
【0039】
第1ワッシャ71は、好ましくは、上述した応力低減機能が効果的に実現されるように、フランジ部346の座面3461の外径r10(図3参照)よりも有意に大きい外径r5を有する。この場合、ロータコア32に付与される軸力による面圧を、第1ワッシャ71が介在しない場合に比べて、低減できる。すなわち、ロータコア32における面圧を受ける範囲を、外径r5に係る径方向外側まで分散できる。この結果、軸力に起因してエンドプレート35A及びロータコア32に生じる応力を低減できる。
【0040】
また、第1ワッシャ71は、好ましくは、凸部712以外の部分で、ロータシャフト34の径方向外側の表面に径方向で当接しないような内径r6(図4参照)を有する。すなわち、第1ワッシャ71の内径r6は、好ましくは、上述した角部345の角Rに第1ワッシャ71が乗り上げないように、設定される。これにより、上述した第1ワッシャ71の凸部712による径方向の位置決め機能を効果的に実現できる。
【0041】
第2ワッシャ72は、好ましくは、第1ワッシャ71と同じ形態である。この場合、部品の共用化が可能となり、コスト低減を図ることができる。なお、本実施例では、一例として、第2ワッシャ72は、第1ワッシャ71と同じ形態であるとする。ただし、変形例では、第2ワッシャ72は、第1ワッシャ71とは異なる形態であってもよい。
【0042】
第2ワッシャ72は、軸方向でナット部材60とロータコア32との間に設けられる。第2ワッシャ72は、ロータシャフト34の径方向外側の表面(外周面)のうちの、軸方向の範囲SC3-2に係る表面に径方向で対向する。第2ワッシャ72は、ロータシャフト34の径方向外側の表面に係合する。具体的には、第2ワッシャ72は、第1ワッシャ71と同様、径方向内側に突出する凸部722を径方向内側に有し、凸部722がロータシャフト34の溝部349に嵌る。
【0043】
第2ワッシャ72は、ナット部材60からエンドプレート35B(及びエンドプレート35Bを介してロータコア32)に付与される軸力に起因してエンドプレート35B及びロータコア32に生じうる応力を低減する機能(以下、「応力低減機能」とも称する)を有する。すなわち、第2ワッシャ72は、上述した第1ワッシャ71と同様の応力低減機能を有する。
【0044】
このようにして、本実施例によれば、第2ワッシャ72がナット部材60とロータコア32との間に介在するので、このような第2ワッシャ72が介在しない場合に比べて、エンドプレート35B及びロータコア32に生じる応力を低減できる。
【0045】
第2ワッシャ72は、好ましくは、上述した応力低減機能が効果的に実現されるように、ナット部材60の座面61の外径r10(図3参照)よりも有意に大きい外径r5を有する。この場合、ロータコア32に付与される軸力による面圧を、第2ワッシャ72が介在しない場合に比べて、低減できる。すなわち、ロータコア32における面圧を受ける範囲を、外径r5に係る径方向外側まで分散できる。この結果、軸力に起因してエンドプレート35B及びロータコア32に生じる応力を低減できる。
【0046】
ところで、本実施例では、エンドプレート35A(第1エンドプレートの一例)が、ロータコア32と第1ワッシャ71との間に設けられるので、エンドプレート35Aによる機能(上述したロータコア32からの永久磁石321の離脱を防止する離脱防止機能等)が実現される反面、エンドプレート35Aにも軸力が作用することによる不都合が生じうる。これは、エンドプレート35B(第2エンドプレートの一例)についても同様である。
【0047】
特に、エンドプレート35A、35Bがアルミにより形成される場合、アルミにおいて比較的顕著なクリープが問題となりうる。すなわち、エンドプレート35A、35Bがアルミにより形成される場合、時間の経過とともに、軸力によりエンドプレート35A、35Bに歪が増大し、軸力の低下等が問題となりうる。
【0048】
この点、本実施例によれば、上述した第1ワッシャ71及び第2ワッシャ72の各応力低減機能は、上述したように、エンドプレート35A、35Bにも同様に機能する。すなわち、第1ワッシャ71及び第2ワッシャ72を設けることで、軸力に起因してエンドプレート35A、35Bに生じる応力を低減できる。この結果、エンドプレート35A、35Bがアルミにより形成される場合であっても、クリープに起因した不都合を低減できる。
【0049】
また、本実施例によれば、上述のように、ロータシャフト34は、フランジ部346の径方向内側(根本部分)に係る角部345に角Rが付与されるので、角部345に生じやすい応力集中を低減できる。
【0050】
ここで、角部345に角Rを付与すると、上述のように応力集中を低減できる反面として、ロータシャフト34に対する第1ワッシャ71の径方向の位置決めが困難となる。これは、第1ワッシャ71が角Rに乗り上げると、径方向の位置が定まらないためである。この点、本実施例によれば、第1ワッシャ71の凸部712とロータシャフト34の凹状の溝部349との関係で、ロータシャフト34に対する第1ワッシャ71の径方向の位置決めを容易に実現できる。このようにして、本実施例によれば、フランジ部346の径方向内側の角部345に生じうる応力を効果的に低減しつつ、ロータシャフト34に対する第1ワッシャ71の径方向の位置決めを容易に実現できる。
【0051】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0052】
例えば、上述した実施例では、エンドプレート35A、35Bが設けられるが、エンドプレート35A、35Bの一方又は双方が省略されてもよい。
【0053】
また、上述した実施例では、ロータシャフト34は、中空に形成されるが、中実の部材であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1・・・モータ(回転電機)、34・・・ロータシャフト(シャフト)、345・・・角部、346・・・フランジ部、3461・・・座面、349・・・溝部、32・・・ロータコア、60・・・ナット部材、71・・・第1ワッシャ、72・・・第2ワッシャ、35A、35B・・・エンドプレート(第1エンドプレート、第2エンドプレート)
図1
図1A
図2
図3
図4