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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】光断層画像撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20241220BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G01N21/17 630
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020206907
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2022094090
(43)【公開日】2022-06-24
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 皇太
(72)【発明者】
【氏名】杉山 聡
【審査官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0228521(US,A1)
【文献】特開2012-213602(JP,A)
【文献】特開2022-013342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の断層画像を撮影する撮影部と、
複数種類の検査レポートを生成可能な撮影を前記撮影部に実行させるための特定の制御プログラムを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記特定の制御プログラムに従って、前記撮影部に前記撮影を実行させる制御部と、
前記撮影部に前記撮影を指示する撮影指示手段と、
前記撮影によって生成可能な複数種類の前記検査レポートのうち、少なくとも1種類を指示するレポート指示手段と、
前記制御部が前記特定の制御プログラムに従って前記撮影部に撮影を実行させることで得られた撮影データ群に含まれる特定の撮影データに基づいて、前記レポート指示手段により指示された前記検査レポートを生成する生成部と、を備えており、
前記記憶手段に記憶される前記特定の制御プログラムは、前記複数種類の検査レポートを生成可能な複数の撮影ステップを含んでおり、
前記制御部は、前記撮影指示手段により前記撮影が指示されたときに、前記特定の制御プログラムに従って前記複数種類の検査レポートを生成可能な前記撮影を前記撮影部に実行させ、
前記複数種類の検査レポートは、第1の検査結果を示す第1検査レポートと、第2の検査結果を示す第2検査レポートを含み、
前記第1検査レポートに対応する第1撮影ステップは、特定の撮影ステップを含み、
前記第2検査レポートに対応する第2撮影ステップは、前記特定の撮影ステップを含み、
前記特定の制御プログラムは、前記第1撮影ステップ及び前記第2撮影ステップのうちの一方に含まれる撮影ステップと、前記第1撮影ステップ及び前記第2撮影ステップの両方に含まれる前記特定の撮影ステップと、を含んでおり、
前記特定の制御プログラムでは、前記第1撮影ステップと前記第2撮影ステップのうち一方に含まれる前記特定の撮影ステップが省略されており、
前記生成部は、前記制御部が前記特定の制御プログラムに従って前記撮影部に撮影を実行させることで得られた撮影データ群に含まれる撮影データに基づいて、前記レポート指示手段により指示された前記検査レポートを生成する、光断層画像撮影装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検査レポートの種類毎に、前記特定の制御プログラムを実行することで得られた撮影データ群のうち、当該種類の検査レポートに対応する撮影ステップを実行することで撮影された撮影データに基づいて、当該種類の検査レポートを生成する、請求項1に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項3】
前記特定の制御プログラムに従って撮影された撮影データから生成された複数種類の検査レポートを出力する出力部をさらに備えている、請求項1又は2に記載の光断層画像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、光断層画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の断層画像を取得する光断層画像撮影装置が開発されている。光断層画像撮影装置は、光源からの光を被検眼に照射すると共にその反射光を導く測定光学系と、光源からの光を参照面に照射すると共にその反射光を導く参照光学系を備えている。測定の際には、測定光学系により導かれた反射光(測定光)と参照光学系により導かれた反射光(参照光)とを合波した干渉光から、被検眼の断層画像を生成する。このような光断層画像撮影装置では、所望の検査結果を含む撮影画像を取得するために、撮影時のスキャンパターン等の撮影条件を必要に応じて設定する必要がある。例えば、特許文献1の光断層画像撮影装置では、検査の種類に対応する撮影条件(すなわち、動作モード)が予め設定されている。検査者は、所望の検査に適合した動作モードを選択する。すると、光断層画像撮影装置は、選択された動作モードに応じた撮影条件で被検眼を撮影し、その撮影結果を解析して選択された動作モードに応じた検査結果を出力する。したがって、検査者は、撮影条件を詳細に設定することなく、動作モードを選択すればその動作モードに応じた検査結果を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-24930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の光断層画像撮影装置では、検査者が動作モードを選択すれば、その動作モードに応じた撮影条件で撮影され、動作モードに応じた検査結果を示すレポートが生成される。すなわち、特許文献1の光断層画像撮影装置では、動作モードには、対応する撮影条件と対応する検査レポートが関連付けられている。このため、被検眼に対して複数の種類の検査を行う場合には、1つの動作モードに応じた撮影条件で撮影が実行され、その後、次の異なる動作モードに応じた撮影条件で撮影が実行される。このため、複数の種類の検査を行う場合には、検査の種類と同様の回数だけ撮影のための動作を繰り返す必要があり、何度も撮影を繰り返すことで被検者の負担も検査者の負担も増大していた。
【0005】
本明細書は、複数の種類の検査を実行する際に被検者及び検査者の負担を軽減する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する光断層画像撮影装置は、被検眼の断層画像を撮影する撮影部と、所望の検査結果を示す検査レポートの種類を指示する指示手段と、検査レポートの種類毎に、当該種類の検査レポートを生成するための撮影を撮影部に実行させるための制御プログラムを記憶する記憶手段と、指示手段によって指示された検査レポートの種類が複数であるときに、記憶手段に記憶された対応する複数の種類の前記制御プログラムに基づいて生成される一連の制御プログラムに従って、撮影部を制御する制御部と、を備えている。
【0007】
上記の光断層画像撮影装置では、複数の種類の検査レポートが指示されたときに、指示された複数の種類の検査レポートに対応する制御プログラムに基づいて、一連の制御プログラムが生成される。この一連の制御プログラムに従って撮影部が制御されるため、複数の種類の検査レポートを生成する場合であっても、一連の制御プログラムにより一度で撮影が実行される。このため、生成する検査レポートの種類と同様の回数だけ撮影のための動作を別個で行うことがなくなり、被検者の負担も検査者の負担も軽減することができる。
【0008】
本明細書に開示する光断層画像撮影装置は、被検眼の断層画像を撮影する撮影部と、複数種類の検査レポートを生成可能な撮影を撮影部に実行させるための制御プログラムを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された制御プログラムに従って、撮影部に撮影を実行させる制御部と、撮影によって生成可能な複数種類の検査レポートのうち、少なくとも1種類を指示する指示手段と、制御部が制御プログラムに従って撮影部に撮影を実行させることで得られた撮影データ群に含まれる特定の撮影データに基づいて、指示手段により指示された検査レポートを生成する生成部と、を備えている。
【0009】
上記の光断層画像撮影装置では、制御部は、複数種類の検査レポートを生成可能な1の撮影を撮影部に実行させるための制御プログラムに従って撮影部に撮影を実行させる。このため、一度の撮影により、複数種類の検査レポートを生成可能な撮影データを取得できる。これにより、複数種類の検査レポートのうちどの検査レポートが指示されても、生成部は、複数種類の検査レポートのいずれも生成することができる。例えば、ある特定の検査レポートを確認した後に他の検査レポートが必要であると判断された場合であっても、他の検査レポートを生成するための撮影を行う必要がなくなる。このため、何度も撮影動作を繰り返す必要がなくなり、被検者の負担も検査者の負担も軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1及び2に係る光断層画像撮影装置の光学系の概略構成を示す図。
図2】実施例1及び2に係る光断層画像撮影装置の制御系を示すブロック図。
図3】サンプリングトリガー/クロック発生器の構成を示すブロック図。
図4】実施例1において検査レポートを生成する処理の一例を示すフローチャート。
図5】検査レポートの選択画面の一例を示す画像。
図6】検査レポートの種類と、それに対応する撮影ステップ及び設定の詳細の一例を示す図。
図7】検査レポートの一例である偏光マップを示す画像。
図8】検査レポートの他の一例である黄斑マップを示す画像。
図9】検査レポートの他の一例である緑内障マップを示す画像。
図10】実施例2において検査レポートを生成する処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0012】
(特徴1)本明細書が開示する光断層画像撮影装置では、検査レポートは、第1の検査結果を示す第1検査レポートと、第2の検査結果を示す第2検査レポートを含んでいてもよい。第1検査レポートに対応する第1制御プログラムは、特定の撮影ステップを含んでいてもよい。第2検査レポートに対応する第2制御プログラムは、特定の撮影ステップを含んでいてもよい。制御部は、指示手段によって第1検査レポートと第2検査レポートが指示されたときは、第1制御プログラムと第2制御プログラムのうち一方に含まれる特定の撮影ステップを省略して、一連の制御プラグラムを生成してもよい。このような構成によると、第1検査レポートと第2検査レポートを生成する場合には、第1検査レポートと第2検査レポートとの間で重複する特定の撮影ステップを重複して実行することを省略することができる。このため、第1検査レポートと第2検査レポートを生成するための撮影にかかる時間を短縮することができ、被検者の負担を軽減することができる。
【0013】
(特徴2)本明細書が開示する光断層画像撮影装置では、制御部は、検査レポートの種類毎に、一連の制御プログラムを実行することで得られた撮影データ群のうち、当該種類の検査レポートに対応する撮影ステップを実行することで撮影された撮影データに基づいて、当該種類の検査レポートを生成してもよい。このような構成によると、一連の制御プログラムを実行することで得られた撮影データ群の中から、検査レポート毎に適切な撮影データを用いて検査レポートが生成される。例えば、一連の制御プログラムを実行することで得られる撮影データ群には、ある検査レポートを生成するために必要な撮影データと共に、その検査レポートを生成するためには不要な撮影データが含まれることがある。検査レポート毎に適切な撮影データを用いることによって、各検査レポートを適切に生成することができる。
【0014】
(特徴3)本明細書が開示する光断層画像撮影装置は、一連の制御プログラムに従って撮影された撮影データから生成された複数種類の検査レポートを出力する出力部をさらに備えていてもよい。このような構成によると、検査者は、複数種類の検査レポートを取得でき、検査結果を把握することができる。
【実施例
【0015】
(実施例1)
以下、本実施例に係る光断層画像撮影装置について説明する。本実施例の光断層画像撮影装置は、波長掃引型の光源を用いた波長掃引型のフーリエドメイン方式(swept-source optical coherence tomography:SS-OCT)で、被検物の偏光特性を捉えることが可能な偏光感受型OCT(polarization-sensitive OCT:PS-OCT)の装置である。
【0016】
図1に示すように、本実施例の光断層画像撮影装置は、光源11と、光源11の光から測定光を生成する測定光生成部(21~29、31、32)と、光源11の光から参照光を生成する参照光生成部(41~46、51)と、測定光生成部で生成される被検眼500からの反射光と参照光生成部で生成される参照光とを合波して干渉光を生成する干渉光生成部60、70と、干渉光生成部60、70で生成された干渉光を検出する干渉光検出部80、90を備えている。
【0017】
(光源)
光源11は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長(波数)が所定の周期で変化する。被検眼500に照射される光の波長が変化(掃引)するため、被検眼500からの反射光と参照光との干渉光から得られる信号をフーリエ解析することで、被検眼500の深さ方向の各部位から反射される光の強度分布を得ることができる。
【0018】
なお、光源11には、偏光制御装置12及びファイバカプラ13が接続され、ファイバカプラ13にはPMFC(偏波保持ファイバカプラ)14及びサンプリングトリガー/クロック発生器100が接続されている。したがって、光源11から出力される光は、偏光制御装置12及びファイバカプラ13を介して、PMFC14及びサンプルトリガー/クロック発生器100のそれぞれに入力される。サンプリングトリガー/クロック発生器100は、光源11の光を用いて、後述する信号処理器83、93それぞれのサンプリングトリガー及びサンプリングクロックを生成する。
【0019】
(測定光生成部)
測定光生成部(21~29、31、32)は、PMFC14に接続されたPMFC21と、PMFC21から分岐する2つの測定光路S1、S2と、2つの測定光路S1、S2を接続する偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25と、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に接続されるコリメータレンズ26、ガルバノミラー27、28及びレンズ29を備えている。測定光路S1には、光路長差生成部22とサーキュレータ23が配置されている。測定光路S2には、サーキュレータ24のみが配置されている。したがって、測定光路S1と測定光路S2との光路長差ΔLは、光路長差生成部22によって生成される。光路長差ΔLは、被検眼500の深さ方向の測定範囲よりも長く設定してもよい。これにより、光路長差の異なる干渉光が重なることを防止できる。光路長差生成部22には、例えば、光ファイバが用いられてもよいし、ミラーやプリズム等の光学系が用いられてもよい。本実施例では、光路長差生成部22に、1mのPMファイバを用いている。また、測定光生成部は、PMFC31、32をさらに備えている。PMFC31は、サーキュレータ23に接続されている。PMFC32は、サーキュレータ24に接続されている。
【0020】
上記の測定光生成部(21~29、31、32)には、PMFC14で分岐された一方の光(すなわち、測定光)が入力される。PMFC21は、PMFC14から入力する測定光を、第1測定光と第2測定光に分割する。PMFC21で分割された第1測定光は測定光路S1に導かれ、第2測定光は測定光路S2に導かれる。測定光路S1に導かれた第1測定光は、光路長差生成部22及びサーキュレータ23を通って偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。測定光路S2に導かれた第2測定光は、サーキュレータ24を通って偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。PMファイバ304は、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に、PMファイバ302に対して円周方向に90度回転した状態で接続される。これにより、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される第2測定光は、第1測定光に対して直交する偏光成分を持った光となる。測定光路S1に光路長差生成部22が設けられているため、第1測定光は第2測定光に対して光路長差生成部22の距離だけ遅延している(すなわち、光路長差ΔLが生じている)。偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25は、入力される第1測定光と第2測定光を重畳する。偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25から出力される光(第1測定光と第2測定光が重畳された光)は、コリメータレンズ26、ガルバノミラー27、28及びレンズ29を介して被検眼500に照射される。被検眼500に照射される光は、ガルバノミラー27、28によってx-y方向に走査される。
【0021】
被検眼500に照射された光は、被検眼500によって反射する。ここで、被検眼500で反射される光は、被検眼500の表面や内部で散乱する。被検眼500からの反射光は、入射経路とは逆に、レンズ29、ガルバノミラー28、27及びコリメータレンズ26を通って、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25は、入力される反射光を、互いに直交する2つの偏光成分に分割する。ここでは便宜上それらを水平偏光反射光(水平偏光成分)と垂直偏光反射光(垂直偏光成分)と呼ぶ。そして、水平偏光反射光は測定光路S1に導かれ、垂直偏光反射光は測定光路S2に導かれる。
【0022】
水平偏光反射光は、サーキュレータ23により光路が変更され、PMFC31に入力される。PMFC31は、入力される水平偏光反射光を分岐して、PMFC61、71のそれぞれに入力する。したがって、PMFC61、71に入力される水平偏光反射光には、第1測定光による反射光成分と、第2測定光による反射光成分が含まれている。垂直偏光反射光は、サーキュレータ24により光路が変更され、PMFC32に入力される。PMFC32は、入力される垂直偏光反射光を分岐して、PMFC62、72に入力する。したがって、PMFC62、72に入力される垂直偏光反射光には、第1測定光による反射光成分と、第2測定光による反射光成分が含まれている。
【0023】
(参照光生成部)
参照光生成部(41~46、51)は、PMFC14に接続されたサーキュレータ41と、サーキュレータ41に接続された参照遅延ライン(42、43)と、サーキュレータ41に接続されたPMFC44と、PMFC44から分岐する2つの参照光路R1、R2と、参照光路R1に接続されるPMFC46と、参照光路R2に接続されるPMFC51を備えている。参照光路R1には、光路長差生成部45が配置されている。参照光路R2には、光路長差生成部は設けられていない。したがって、参照光路R1と参照光路R2との光路長差ΔL’は、光路長差生成部45によって生成される。光路長差生成部45には、例えば、光ファイバが用いられる。光路長差生成部45の光路長ΔL’は、光路長差生成部22の光路長ΔLと同一としてもよい。光路長差ΔLとΔL’を同一にすることで、後述する複数の干渉光の被検眼500に対する深さ位置が同一となる。すなわち、取得される複数の断層像の位置合わせが不要となる。
【0024】
上記の参照光生成部(41~46、51)には、PMFC14で分岐された他方の光(すなわち、参照光)が入力される。PMFC14から入力される参照光は、サーキュレータ41を通って参照遅延ライン(42、43)に入力される。参照遅延ライン(42、43)は、コリメータレンズ42と参照ミラー43によって構成されている。参照遅延ライン(42、43)に入力された参照光は、コリメータレンズ42を介して参照ミラー43に照射される。参照ミラー43で反射された参照光は、コリメータレンズ42を介してサーキュレータ41に入力される。ここで、参照ミラー43は、コリメータレンズ42に対して近接又は離間する方向に移動可能となっている。本実施例では、測定を開始する前に、被検眼500からの信号がOCTの深さ方向の測定範囲内に収まるように、参照ミラー43の位置を調整している。
【0025】
参照ミラー43で反射された参照光は、サーキュレータ41により光路が変更され、PMFC44に入力される。PMFC44は、入力する参照光を、第1参照光と第2参照光に分岐する。第1参照光は参照光路R1に導かれ、第2参照光は参照光路R2に導かれる。第1参照光は、光路長差生成部45を通ってPMFC46に入力される。PMFC46に入力された参照光は、第1分岐参照光と第2分岐参照光に分岐される。第1分岐参照光は、コリメータレンズ47、レンズ48を通ってPMFC61に入力される。第2分岐参照光は、コリメータレンズ49、レンズ50を通って、PMFC62に入力される。第2参照光は、PMFC51に入力され、第3分岐参照光と第4分岐参照光に分割される。第3分岐参照光は、コリメータレンズ52、レンズ53を通って、PMFC71に入力される。第4分岐参照光は、コリメータレンズ54、レンズ55を通って、PMFC72に入力される。
【0026】
(干渉光生成部)
干渉光生成部60、70は、第1干渉光生成部60と、第2干渉光生成部70を備えている。第1干渉光生成部60は、PMFC61、62を有している。上述したように、PMFC61には、測定光生成部より水平偏光反射光が入力され、参照光生成部より第1分岐参照光(光路長差ΔL’を有する光)が入力される。ここで、水平偏光反射光には、第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)が含まれている。したがって、PMFC61では、水平偏光反射光のうち第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第1分岐参照光とが合波されて第1干渉光(水平偏光成分)が生成される。
【0027】
また、PMFC62には、測定光生成部より垂直偏光反射光が入力され、参照光生成部より第2分岐参照光(光路長差ΔL’を有する光)が入力される。ここで、垂直偏光反射光には、第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)が含まれている。したがって、PMFC62では、垂直偏光反射光のうち第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2分岐参照光とが合波されて第2干渉光(垂直偏光成分)が生成される。
【0028】
第2干渉光生成部70は、PMFC71、72を有している。上述したように、PMFC71には、測定光生成部より水平偏光反射光が入力され、参照光生成部より第3分岐参照光(光路長差ΔL’を有しない光)が入力される。したがって、PMFC71では、水平偏光反射光のうち第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)と、第3分岐参照光とが合波されて第3干渉光(水平偏光成分)が生成される。
【0029】
また、PMFC72には、測定光生成部より垂直偏光反射光が入力され、参照光生成部より第4分岐参照光(光路長差ΔL’を有しない光)が入力される。したがって、PMFC72では、垂直偏光反射光のうち第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)と、第4分岐参照光とが合波されて第4干渉光(垂直偏光成分)が生成される。第1干渉光と第2干渉光は測定光路S1を経由した測定光に対応しており、第3干渉光と第4干渉光は測定光路S2を経由した測定光に対応している。
【0030】
(干渉光検出部)
干渉光検出部80、90は、第1干渉光生成部60で生成された干渉光(第1干渉光及び第2干渉光)を検出する第1干渉光検出部80と、第2干渉光生成部70で生成された干渉光(第3干渉光及び第4干渉光)を検出する第2干渉光検出部90を備えている。
【0031】
第1干渉光検出部80は、バランス型光検出器81、82(以下、単に「検出器81,82」ともいう)と、検出器81、82に接続された信号処理器83を備えている。検出器81にはPMFC61が接続されており、検出器81の出力端子には信号処理器83が接続されている。PMFC61は、第1干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器81に入力する。検出器81は、PMFC61から入力する位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第1干渉信号)に変換し、第1干渉信号を信号処理器83に出力する。すなわち、第1干渉信号は、水平偏光測定光による被検眼500からの水平偏光反射光と参照光の干渉信号HHである。同様に、検出器82にはPMFC62が接続されており、検出器82の出力端子には信号処理器83が接続されている。PMFC62は、第2干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器82に入力する。検出器82は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第2干渉信号)に変換し、第2干渉信号を信号処理器83に出力する。すなわち、第2干渉信号は、水平偏光測定光による被検眼500からの垂直偏光反射光と参照光の干渉信号HVである。
【0032】
信号処理器83は、第1干渉信号が入力される第1信号処理部84と、第2干渉信号が入力される第2信号処理部85を備えている。第1信号処理部84は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器83に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第1干渉信号をサンプリングする。また、第2信号処理部85は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器83に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第2干渉信号をサンプリングする。第1信号処理部84及び第2信号処理部85でサンプリングされた第1干渉信号と第2干渉信号は、後述する演算部202に入力される。信号処理器83には、公知のデータ収集装置(いわゆる、DAQ)を用いることができる。
【0033】
第2干渉光検出部90は、第1干渉光検出部80と同様に、バランス型光検出器91、92(以下、単に「検出器91、92」ともいう)と、検出器91、92に接続された信号処理器93を備えている。検出器91にはPMFC71が接続されており、検出器91の出力端子には信号処理器93が接続されている。PMFC71は、第3干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器91に入力する。検出器91は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第3干渉信号)に変換し、第3干渉信号を信号処理器93に出力する。すなわち、第3干渉信号は、垂直偏光測定光による被検眼500からの水平偏光反射光と参照光の干渉信号VHである。同様に、検出器92にはPMFC72が接続されており、検出器92の出力端子には信号処理器93が接続されている。PMFC72は、第4干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器92に入力する。検出器92は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第4干渉信号)に変換し、第4干渉信号を信号処理器93に出力する。すなわち、第4干渉信号は、垂直偏光測定光からによる被検眼500の垂直偏光反射光と参照光の干渉信号VVである。
【0034】
信号処理器93は、第3干渉信号が入力される第3信号処理部94と、第4干渉信号が入力される第4信号処理部95を備えている。第3信号処理部94は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器93に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第3干渉信号をサンプリングする。また、第4信号処理部95は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器93に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第4干渉信号をサンプリングする。第3信号処理部94及び第4信号処理部95でサンプリングされた第3干渉信号と第4干渉信号とは、後述する演算部202に入力される。信号処理器93にも、公知のデータ収集装置(いわゆる、DAQ)を用いることができる。このような構成によると、被検眼500の4つの偏光特性を表す干渉信号を取得することができる。なお、本実施例では、2つの信号処理部を備える信号処理器83,93用いているが、このような構成に限定されない。例えば、4つの信号処理部を備える1つの信号処理器を用いてもよいし、1つの信号処理部を備える信号処理器を4つ用いてもよい。
【0035】
次に、本実施例に係る光断層画像撮影装置の制御系の構成を説明する。図2に示すように、光断層画像撮影装置は演算装置200によって制御される。演算装置200は、演算部202と、第1干渉光検出部80と、第2干渉光検出部90によって構成されている。第1干渉光検出部80と、第2干渉光検出部90と、演算部202は、測定部10に接続されている。演算部202は、測定部10に制御信号を出力し、ガルバノミラー27及び28を駆動することで測定光の被検眼500への入射位置を走査する。第1干渉光検出部80は、測定部10から入力される干渉信号(干渉信号HHと干渉信号HV)に対して、サンプリングトリガー1をトリガーにして、測定部10から入力されるサンプリングクロック1に基づいて、第1サンプリングデータを取得し、演算部202に第1サンプリングデータを出力する。演算部202は、第1サンプリングデータにフーリエ変換処理等の演算処理を行い、HH断層画像とHV断層画像を生成する。第2干渉光検出部90は、サンプリングトリガー2をトリガーにして、測定部10から入力される干渉信号(干渉信号VHと干渉信号VV)に対して、測定部10から入力されるサンプリングクロック2に基づいて、第2サンプリングデータを取得し、演算部202に第2サンプリングデータを出力する。演算部202は、第2サンプリングデータにフーリエ変換処理等の演算処理を行い、VH断層画像とVV断層画像を生成する。ここで、HH断層画像と、VH断層画像と、HV断層画像と、VV断層画像とは、同一位置の断層画像である。このため、演算部202は、被検眼500のジョーンズ行列を表す4つの偏光特性(HH、HV、VH、VV)の断層画像を生成することができる。
【0036】
また、演算部202は、メモリ204を備えている。メモリ204には、被検眼500の特定の検査の結果を示す検査レポートを生成するための制御プログラムと、検査レポートに対応した撮影を実行するための制御プログラムが記憶されている。検査レポート生成用の制御プログラムは、検査レポートの種類毎にメモリ204に記憶されている。撮影実行用の制御プログラムは、検査レポートの種類毎に、当該検査レポートの種類に関連付けられてメモリ204に記憶されている。撮影実行用の制御プログラムは、1つ以上の撮影ステップによって構成されており、その制御プログラムに対応する検査レポートを生成するために必要な撮影ステップが予め設定されている。具体的には、メモリ204には、検査レポート名とそれに対応する撮影実行用の制御プログラムが紐付けられて記憶されている。なお、これらの制御プログラムは、検査者によって設定されてもよい。すなわち、検査者は、制御プログラムを構成する各撮影ステップの具体的な撮影条件を設定し、それに対応する検査レポート名と紐付けて、制御プログラムとして設定してもよい。検査者が設定した制御プログラムも、メモリ204に記憶させることができる。検査レポート及びそれに関連付けられる撮影ステップを含む撮影実行用の制御プログラムの具体例については後述する。
【0037】
図3に示すように、サンプリングトリガー/クロック発生器100は、ファイバカプラ102と、サンプリングトリガー発生器(140~152)と、サンプリングクロック発生器(160~172)を備えている。光源11からの光は、ファイバカプラ13とファイバカプラ102を介して、サンプリングトリガー発生器140及びサンプリングクロック発生器160にそれぞれ入力される。
【0038】
(サンプリングトリガー発生器)
サンプリングトリガー発生器140は、例えば、FBG(Fiber Bragg Grating)144を用いて、サンプリングトリガーを生成してもよい。図3に示すように、FBG144は、光源11から入射される光の特定の波長のみを反射して、サンプリングトリガーを生成する。生成されたサンプリングトリガーは、分配器150に入力される。分配器150は、サンプリングトリガーを、サンプリングトリガー1とサンプリングトリガー2に分配する。サンプリングトリガー1は、信号遅延回路152を介して、演算部202に入力される。サンプリングトリガー2は、そのまま演算部202に入力される。サンプリングトリガー1は、第1干渉光検出部80から演算部202に入力される干渉信号(第1干渉信号と第2干渉信号)のトリガー信号となる。サンプリングトリガー2は、第2干渉光検出部90から演算部202に入力される干渉信号(第3干渉信号と第4干渉信号)のトリガー信号となる。信号遅延回路152は、サンプリングトリガー1がサンプリングトリガー2に対して、光路長差生成部22の光路長差ΔLの分だけ時間が遅延するように設計されている。これにより、第1干渉光検出部80から入力される干渉信号のサンプリングを開始する周波数と、第2干渉光検出部90から入力される干渉信号のサンプリングを開始する周波数を同じにすることができる。ここで、サンプリングトリガー1だけを生成してもよい。光路長差ΔLが既知であるので、第2干渉光検出部90から入力される干渉をサンプリングする際、サンプリングトリガー1から光路長差ΔLの分だけ時間を遅延するようにサンプリングを開始すればよい。
【0039】
(サンプリングクロック発生器)
サンプリングクロック発生器は、例えば、マッハツェンダー干渉計で構成されていてもよい。図3に示すように、サンプリングクロック発生器は、マッハツェンダー干渉計を用いて、等周波数のサンプリングクロックを生成する。マッハツェンダー干渉計で生成されたサンプリングクロックは、分配器172に入力される。分配器172は、サンプリングクロックを、サンプリングクロック1とサンプリングクロック2に分配する。サンプリングクロック1は、信号遅延回路174を通って、第1干渉光検出部80に入力される。サンプリングクロック2は、そのまま第2干渉光検出部90に入力される。信号遅延回路174は、光路長差生成部22の光路長差ΔLの分だけ時間が遅延するように設計されている。これにより、光路長差生成部22の分だけ遅延している干渉光に対しても、同じタイミングでサンプリングすることができる。これにより、取得する複数の断層画像の位置ずれが防止できる。本実施例では、サンプリングクロックを生成するのに、マッハツェンダー干渉計を用いている。しかしながら、サンプリングクロックを生成するのに、マイケルソン干渉計を用いてもよいし、電気回路を用いてもよい。また、光源に、サンプリングクロック発生器を備えた光源を用いて、サンプリングクロックを生成してもよい。
【0040】
次に、図4を参照して、被検眼500の検査レポートを生成する処理について説明する。図4に示すように、まず、演算部202は、本実施例の光断層画像撮影装置で生成可能な検査レポートの種類をモニタ120(図2参照)に表示させる(S12)。メモリ204には、本実施例の光断層画像撮影装置によって生成可能な検査レポートの種類が記憶されている。演算部202は、メモリ204に記憶されている生成可能な検査レポートの全ての種類をモニタ120に表示させる。
【0041】
例えば、本実施例では、「偏光マップ」、「黄斑マップ」、「緑内障マップ」及び「乳頭形状解析」の4種類の検査レポートが生成可能となっているとする。この場合、図5に示すように、演算部202は、「偏光マップ」、「黄斑マップ」、「緑内障マップ」及び「乳頭形状解析」の4種類の検査レポートを選択可能な態様でモニタ120に表示させる。
【0042】
次いで、演算部202は、検査レポートの種類が選択されたか否かを判断する(S14)。具体的には、検査者が、マウス等の入力手段(図示省略)を用いて、モニタ120に表示された複数の検査レポートから、所望の検査に対応する検査レポートを選択する。図5に示す例では、「偏光マップ」、「黄斑マップ」、「緑内障マップ」及び「乳頭形状解析」から、検査者は所望の検査レポートを選択することになる。ここで検査者が選択する検査レポートの数は、特に限定されない。したがって、検査者が所望の検査レポートを複数選択することができる。例えば、検査者は、「偏光マップ」、「黄斑マップ」及び「緑内障マップ」の3つの検査レポートを選択する。そして、検査者は、検査レポートの選択作業が終了すると、選択作業の完了を指示する。例えば、検査者は、入力手段を用いてモニタ120に表示される「OK」ボタンを押すことによって、選択作業の完了を指示する。演算部202は、選択作業の完了が指示されるまで待機する(ステップS14でNO)。
【0043】
選択作業の完了が指示されると(ステップS14でYES)、演算部202は、ステップS14で選択された検査レポートに関連付けられている撮影ステップを特定する(S16)。上述したように、メモリ204には、検査レポートの種類に紐付けられて、その検査レポートを生成するために必要な撮影ステップが記憶されている。演算部202は、ステップS14で選択された検査レポートに対応する撮影ステップを、メモリ204から読み出す。
【0044】
例えば、図6に示すように、メモリ204には、複数種類の検査レポートと、それに対応する撮影ステップ及び撮影ステップの詳細な撮影条件が記憶されている。図6に示す例では、「偏光マップ」の撮影ステップは、「Cube」である。したがって、演算部202は、選択された「偏光マップ」の撮影ステップが「Cube」であると特定する。同様に、演算部202は、選択された「黄斑マップ」の撮影ステップが「Cube」であると特定し、選択された「緑内障マップ」の撮影ステップが「Cube」及び「Cube Disk」であると特定する。
【0045】
次いで、演算部202は、ステップS16で特定された撮影ステップに重複するものがあるか否かを判断する(S18)。ステップS14で複数種類の検査レポートが選択された場合には、複数種類の検査レポート間で関連付けられる撮影ステップが重複することがある。例えば、図6に示すように、「偏光マップ」、「黄斑マップ」及び「緑内障マップ」が選択された場合、「Cube」という撮影ステップが3つの検査レポートの全てで重複している。したがって、ステップS14で「偏光マップ」、「黄斑マップ」及び「緑内障マップ」の3つの検査レポートが選択された場合、演算部202は、「Cube」という撮影ステップが重複すると判断する。
【0046】
重複する撮影ステップがある場合(ステップS18でYES)、演算部202は、重複する撮影ステップを削除する(S20)。例えば、ステップS14で「偏光マップ」、「黄斑マップ」及び「緑内障マップ」の3つの検査レポートが選択された場合、ステップS16で特定される撮影ステップは、「偏光マップ」に関連付けられる「Cube」と、「黄斑マップ」に関連付けられる「Cube」と、「緑内障マップ」に関連付けられる「Cube」及び「Cube Disk」となる。したがって、選択された3つの検査レポートに関連付けられる撮影ステップを全て列挙すると、「Cube」、「Cube」、「Cube」及び「Cube Disk」となり、「Cube」が3つとなる。この場合、演算部202は、列挙した4つの撮影ステップから、重複している「Cube」(すなわち、3つの「Cube」のうちの2つ)を削除する。すると、「Cube」と「Cube Disk」の2つの撮影ステップが残される。一方、重複する撮影ステップがない場合(ステップS18でNO)、演算部202は、ステップS20をスキップする。
【0047】
次いで、演算部202は、ステップS16~ステップS20で特定された撮影ステップに基づいて、一連の制御プログラム(以下、撮影プログラムともいう)を生成する(S22)。ステップS18で重複する撮影ステップがあると判断された場合には、ステップS20で重複する撮影ステップが削除されている。したがって、ステップS16で特定された全ての撮影ステップから重複する撮影ステップを削除し、残った撮影ステップについて撮影プログラムを生成する。例えば、ステップS14で「偏光マップ」、「黄斑マップ」及び「緑内障マップ」の3つの検査レポートが選択された場合、ステップS20により「Cube」及び「Cube Disk」の2つの撮影ステップが残される。したがって、演算部202は、「Cube」及び「Cube Disk」の2つの撮影ステップを実行するように撮影プログラムを生成する。一方、ステップS18で重複する撮影ステップがないと判断された場合には、ステップS16で特定された撮影ステップを全て実行するように撮影プログラムを生成する。
【0048】
次いで、演算部202は、ステップS22で生成された撮影プログラムに従って被検眼500の撮影を実行する(S24)。被検眼500を撮影する処理は、以下の手順で実行される。まず、検査者は図示しないジョイスティック等の操作部材を操作して、被検眼500に対して光断層画像撮影装置の位置合わせを行う。すなわち、演算部202は、検査者の操作部材の操作に応じて、図示しない位置調整機構を駆動する。これによって、被検眼500に対する光断層画像撮影装置のxy方向(縦横方向)の位置とz方向(進退動する方向)の位置が調整される。その後、演算部202は、撮影プログラムに従い、被検眼500の撮影を実行する。上述したように、撮影プログラムは、1つ以上の撮影ステップにより構成されており、メモリ204には、各撮影ステップについて詳細な設定条件(撮影条件)が記憶されている。演算部202は、メモリ204に記憶された詳細な設定条件に従い、撮影プログラムを実行する。例えば、ステップS14で「偏光マップ」、「黄斑マップ」及び「緑内障マップ」の3つの検査レポートが選択された場合、「Cube」及び「Cube Disk」の2つの撮影ステップで構成される撮影プログラムが生成される。このため、演算部202は、この撮影プログラムに従い、「Cube」及び「Cube Disk」の2つの撮影ステップを実行する。各撮影ステップで撮影された撮影データは、メモリ204に記憶される。以下では、各撮影ステップで撮影された複数の撮影データを合わせて「撮影データ群」と称することがある。
【0049】
被検眼500の撮影が終了すると、演算部202は、ステップS14で選択された検査レポートを生成する(S26)。ステップS24では、1つ以上の撮影ステップが実行され、各撮影ステップで撮影された撮影データはメモリ204に記憶されている。演算部202は、撮影データ群から、各検査レポートに対応する撮影ステップで撮影された撮影データを用いて、各検査レポートを生成する。
【0050】
例えば、ステップS14で「偏光マップ」、「黄斑マップ」及び「緑内障マップ」の3つの検査レポートが選択された場合、「Cube」及び「Cube Disk」の2つの撮影ステップが実行される。図6に示すように、「偏光マップ」に対応する撮影ステップは、「Cube」である。このため、演算部202は、「Cube」で撮影された撮影データを用いて、「偏光マップ」を生成する。また、「黄斑マップ」に対応する撮影ステップは、「Cube」であるため、演算部202は、「Cube」で撮影された撮影データを用いて、「黄斑マップ」も生成する。「偏光マップ」及び「黄斑マップ」はいずれも、「Cube」で撮影された撮影データを用いて生成可能であり、解析手順や被検眼500の解析対象部位等を変更することによって、「偏光マップ」と「黄斑マップ」をそれぞれ生成できる。また、「緑内障マップ」に対応する撮影データは、「Cube」及び「Cube Disk」であるため、「Cube」で撮影された撮影データは、「緑内障マップ」の生成にも用いられる。このように、同一の撮影ステップで生成可能な複数の検査レポートを選択した場合には、同一の撮影ステップ(本実施例では、「Cube」)を1回実行すれば、異なる検査レポートのいずれを生成する際にも用いることができる。本実施例では、撮影ステップが重複する場合には、重複する撮影ステップを削除して撮影プログラムを生成する。このため、撮影にかかる時間を短縮し、被検者の負担を軽減することができる。
【0051】
また、重複する撮影ステップがない場合であっても、先に検査レポートの種類を選択したうえで、選択した全ての検査レポートが生成できるように撮影ステップを組み合わせた撮影プログラムが生成される。例えば、図6に示す例では、「偏光マップ」と「乳頭形状解析」の2つの検査レポートを選択すると、撮影ステップとしては、「偏光マップ」に対応する「Cube」と、「乳頭形状解析」に対応する「Cube Disk」及び「Circle Disk」が特定される。このため、「Cube」、「Cube Disk」及び「Circle Disk」の3つで構成される撮影プログラムが生成され、この撮影プログラムを実行すると、「Cube」、「Cube Disk」及び「Circle Disk」の3つの撮影ステップが一連の動作で実行される。このように、複数の検査レポートを生成するための撮影が一度に実行されるため、各検査レポートを生成するための撮影をそれぞれ別個に指示・実行する必要がなくなり、全ての検査レポートを生成するための撮影にかかる時間を短縮することができる。
【0052】
最後に、演算部202は、ステップS26で生成された検査レポートをモニタ120に表示する(S28)。複数の検査レポートを選択した場合には、全ての検査レポートを一画面に表示してもよいし、1つの検査レポートのみを表示するように、各検査レポートを切り替え可能に表示してもよい。
【0053】
図7は、偏光マップの表示画像600の一例である。偏光マップは、「Cube」で設定される撮影ステップで撮影された撮影データを解析することにより生成される。図7に示すように、偏光マップは、被検眼500の眼底画像602と、断層画像604と、厚みを示すEn-face画像606と、エントロピーを示すEn-face画像608と、複屈折を示すEn-face画像610を含む。断層画像604は、眼底画像602の矢印で示す位置の断面を示している。En-face画像606、608、610は、眼底画像602の四角で囲まれた範囲を示している。また、偏光マップは、被検眼500とは異なる正常な状態の眼(以下、単に「正常眼」ともいう)の厚みを示すEn-face画像612と、エントロピーを示すEn-face画像614と、複屈折を示すEn-face画像616も含む。偏光マップが正常眼のEn-face画像612、614、616を含むことにより、被検眼500と正常眼を比較することで、被検眼500の状態が把握し易くなる。このように、偏光マップが、「Cube」で撮影した撮影データから生成可能な種々の偏光に関する画像を含むことにより、被検眼500の状態を把握し易くなる。
【0054】
図8は、黄斑マップの表示画像700の一例である。黄斑マップは、「Cube」で設定される撮影ステップで撮影された撮影データを解析することにより生成される。図8に示すように、黄斑マップは、被検眼500の眼底画像702と、断層画像704と、厚みを示すEn-face画像706と、エントロピーを示す断層画像708と、厚みの平均値及び体積の定量値評価を示すマップ710、712と、表面を示すマップ714、716を含む。断層画像704、708は、眼底画像702の矢印で示す位置の断面を示している。En-face画像706は、眼底画像702の四角で囲まれた範囲を示している。定量値評価を示すマップ710、712は、厚みを示すEn-face画像706に示される円及び線に対応している。また、黄斑マップは、正常眼の厚みを示すEn-face画像718も含む。このように、黄斑マップが、「Cube」で撮影した撮影データから生成可能な種々の黄斑に関する画像を含むことにより、被検眼500の黄斑の状態を把握し易くなる。
【0055】
図9は、緑内障マップの表示画像800の一例である。黄斑マップは、「Cube」及び「Cube Disk」で設定される撮影ステップでそれぞれ撮影された2つの撮影データを解析することにより生成される。図9に示すように、緑内障マップは、被検眼500の眼底画像802と、断層画像804と、厚みを示すEn-face画像806、808を含む。断層画像804は、眼底画像802の矢印で示す位置の断面を示している。En-face画像806は、眼底画像802の右側の四角で囲まれた範囲(黄斑を含む範囲)を示しており、En-face画像808は、眼底画像802の左側の四角で囲まれた範囲(視神経乳頭を含む範囲)を示している。断層画像804とEn-face画像806は、「Cube」で撮影された撮影データから生成され、En-face画像808は、「Cube Disk」で撮影された撮影データから生成されている。また、緑内障マップは、正常眼の厚みを示す複数のEn-face画像810も含む。複数のEn-face画像810は、正常眼の種々の深さ方向の範囲におけるEn-face画像であり、正常眼を「Cube」及び「Cube Disk」のそれぞれで撮影した撮影データから生成されたものである。このように、緑内障マップが、「Cube」及び「Cube Disk」で撮影した撮影データから生成可能な種々の緑内障に関する画像を含むことにより、被検眼500の緑内障に関する病態を把握し易くなる。
【0056】
(実施例2)
上記の実施例1では、複数種類の検査レポートから所望の検査レポートを選択し、選択された検査レポートを生成できるように被検眼500の撮影を実行したが、このような構成に限定されない。例えば、選択可能な複数種類の検査レポート全てを生成可能な撮影プログラムに従い被検眼500を撮影してもよい。本実施例では、メモリ204には、複数種類の検査レポートの全てを生成可能な撮影ステップを含む1つの撮影プログラムが記憶されている点が、実施例1と相違しており、その他の構成は実施例1と同一である。このため、実施例1と同様の構成については、その説明を省略する。
【0057】
図10は、本実施例において被検眼500の検査レポートを生成する処理の一例を示すフローチャートである。図10に示すように、まず、演算部202は、メモリ204に記憶される撮影プログラムに従って、被検眼500の撮影を実行する(S32)。上記の実施例1では、選択された検査レポートに応じて撮影プログラムを生成し、生成した撮影プログラムに従って被検眼500の撮影を実行したが、本実施例では、予め設定されている撮影プログラムに従って被検眼500の撮影を実行する。
【0058】
例えば、本実施例では、「偏光マップ」、「黄斑マップ」及び「緑内障マップ」の3つの検査レポートを生成可能であるとする。上述したように、「偏光マップ」を生成するための撮影ステップは、「Cube」であり、「黄斑マップ」を生成するための撮影ステップは、「Cube」であり、「緑内障マップ」を生成するための撮影ステップは、「Cube」及び「Cube Disk」である(図6参照)。したがって、「偏光マップ」、「黄斑マップ」及び「緑内障マップ」の3つの検査レポートを生成可能な撮影プログラムとしては、「Cube」及び「Cube Disk」を含むように設定されている。このため、演算部202は、撮影プログラムに従い、「Cube」及び「Cube Disk」の2つの撮影ステップを実行する。各撮影ステップで撮影された撮影データは、メモリ204に記憶される。
【0059】
次いで、図10に示すように、演算部202は、生成可能な検査レポートの種類をモニタ120に表示させる(S34)。例えば、上述した例では、生成可能な検査レポートは、「偏光マップ」、「黄斑マップ」及び「緑内障マップ」の3つである。この場合には、演算部202は、「偏光マップ」、「黄斑マップ」及び「緑内障マップ」の3つをモニタ120に表示させる。
【0060】
次いで、検査レポートの種類が選択されたか否かを判断する(S36)。なお、ステップS36の処理は、実施例1のステップS14の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0061】
検査レポートの種類が選択されると、演算部202は、ステップS36で選択された検査レポートを生成する(S38)。このとき、メモリ204に記憶された撮影データ群から、選択された検査レポートの種類に対応する撮影ステップで撮影された撮影データが用いられる。例えば、ステップS36で「偏光マップ」及び「黄斑マップ」が選択された場合には、演算部202は、「Cube」で撮影された撮影データを用いて、「偏光マップ」及び「黄斑マップ」をそれぞれ生成する。その後、演算部202は、ステップS38で生成された検査レポートをモニタ120に表示する(S40)。
【0062】
上述した例では、予め設定されている撮影プログラムに従い、「Cube」及び「Cube Disk」の2つの撮影ステップが実行されているにも関わらず、検査者が「偏光マップ」及び「黄斑マップ」を選択したため、「Cube」で撮影された撮影データのみが用いられ、「Cube Disk」で撮影された撮影データは用いられていない。しかしながら、撮影後に検査者が「緑内障マップ」を所望したときには、既に撮影したデータのうち「Cube Disk」で撮影された撮影データを用いて、「緑内障マップ」を生成することができる。このため、一回の撮影時間は長くなることがある一方で、再度撮影することなく、撮影時に所望した検査レポートとは異なる検査レポートを生成することができる。撮影時に所望した検査レポートを評価した結果、他の検査レポートが必要とされることもある。このような場合に再撮影することなく他の検査レポートを生成することができ、被検者及び検査者の負担を軽減することができる。
【0063】
なお、上記の実施例では、偏光感受型の光断層画像撮影装置が用いられていたが、このような構成に限定されない。光干渉断層法の種類は特に限定されるものではなく、例えば、偏光感受型でない光断層画像撮影装置であってもよい。また、上記の実施例2では、撮影後に出力する検査レポートの種類を選択したが、実施例1と同様に、検査レポートの種類が選択された後に撮影を開始してもよい。
【0064】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0065】
10:測定部
11:光源
43:参照ミラー
60、70:干渉光生成部
80、90:干渉光検出部
81、82、91、92:バランス型光検出器
83、93:信号処理器
84、85、94、95:信号処理部
100:サンプリングトリガー/クロック発生器
120:モニタ
140:サンプリングトリガー発生器
160:サンプリングクロック発生器
200:演算装置
202:演算部
204:メモリ
500:被検眼
S1、S2:測定光路
R1、R2:参照光路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10