(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】堆肥化可能な木材複合材料
(51)【国際特許分類】
B32B 27/08 20060101AFI20241220BHJP
B27N 3/02 20060101ALI20241220BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241220BHJP
B65D 1/00 20060101ALN20241220BHJP
【FI】
B32B27/08
B27N3/02 B
B32B27/00 H
B65D1/00 111
(21)【出願番号】P 2021510716
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(86)【国際出願番号】 FI2019050621
(87)【国際公開番号】W WO2020043957
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-08
(32)【優先日】2018-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519318096
【氏名又は名称】スラパック オイ
【氏名又は名称原語表記】SULAPAC OY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】アンティ パルシネン
(72)【発明者】
【氏名】ローラ ティルッコネン ラジャサロ
(72)【発明者】
【氏名】タネリ ヴァイサネン
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-119098(JP,A)
【文献】特表2009-524553(JP,A)
【文献】特開2013-067681(JP,A)
【文献】特表2004-503415(JP,A)
【文献】特開2017-082234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/08
B27N 3/02
B32B 27/00
B65D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続マトリックスを形成する生分解性ポリマーと、その中に混合した吸水時に前記マトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子と、を組み合わせて備える堆肥化可能材料の第1の層であって、堆肥化可能材料の前記第1の層は、堆肥化可能材料の前記第1の層の総重量に基づいて計算して5~50重量%の前記親水性材料の粒子を備える、第1の層、および
連続マトリックスを形成する生分解性ポリマーを備える堆肥化可能材料の第2の層であって、前記第2の層は、前記第2の層の総重量に基づいて計算して50重量%未満の、吸水時に前記マトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子を含有する、第2の層
によって、形成される壁を有する容器であって、
堆肥化可能材料の前記第1の層および堆肥化可能材料の前記第2の層を重なり合う様式で含む前記壁が、多成分射出成形によって得られた、
容器。
【請求項2】
吸水時に前記マトリックス内で膨潤可能な親水性材料の前記粒子は、木材の粒子または、一年生もしくは多年生植物および植物残留物から選択される他のリグノセルロース材料の粒子から選択される、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
親水性材料の前記粒子は、木材または一年生もしくは多年生植物および植物残留物から選択される他のリグノセルロース材料から選択される天然材料に由来する、請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
親水性材料の前記粒子は、少なくとも0.5mmおよび25mm以下のスクリーンサイズを有する粗い木材粒子を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の容器。
【請求項5】
前記壁は、1mm~25mmの全厚を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の容器。
【請求項6】
前記第1の層の厚さは、前記第2の層の厚さよりも大きい、請求項1から5のいずれか一項に記載の容器。
【請求項7】
吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子を実質的に含まない、堆肥化可能な材料の少なくとも1つの第3の層を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の容器。
【請求項8】
前記堆肥化可能な材料は、生分解性ポリマーである、請求項7に記載の容器。
【請求項9】
前記第1の層は、前記第1の層の総重量に基づいて計算して15~40重量%の親水性材料の粒子を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の容器。
【請求項10】
前記第2の層は、前記第2の層の総重量に基づいて計算して少なくとも90重量%のニート生分解性ポリマーを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の容器。
【請求項11】
前記第2の層は、前記第2の層の総重量に基づいて計算して少なくとも90重量%のニート生分解性ポリマーを備え、かつ
前記第3の層は、前記第3の層の総重量に基づいて計算して少なくとも90重量%のニート生分解性ポリマーを備える、
請求項7または8に記載の容器。
【請求項12】
前記第2の層は、前記第2の層の総重量から計算して最大5重量%の1つ以上の添加剤を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の容器。
【請求項13】
前記第2の層は、前記第2の層の総重量から計算して最大5重量%の1つ以上の添加剤を備え、かつ
前記第3の層は、前記第3の層の総重量から計算して最大5重量%の1つ以上の添加剤を備える、
請求項7、8および11のいずれか一項に記載の容器。
【請求項14】
前記第1の層および前記第2の層のうちの少なくとも1つの前記生分解性ポリマーは、ポリラクチド
、ポリ(乳酸)、ポリグリコリド
、ポリ(グリコール酸)、酢酸プロピオン酸セルロース、または
ポリヒドロキシアルカノエートを含むポリエステル
である生分解性ポリエステルの群から選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の容器。
【請求項15】
前記第1の層、前記第2の層および前記第3の層のうちの少なくとも1つの前記生分解性ポリマーは、ポリラクチド
、ポリ(乳酸)、ポリグリコリド
、ポリ(グリコール酸)、酢酸プロピオン酸セルロース、または
ポリヒドロキシアルカノエートを含むポリエステル
である生分解性ポリエステルの群から選択される、請求項7、8、11および13のいずれか一項に記載の容器。
【請求項16】
前記容器壁は、次の仕様、すなわち、堆肥において、58°Cでの材料の生分解が最大6ヶ月の期間内に起こり、生分解のレベルは、壁の総重量の90%レベルに達し、および58°Cでの壁の崩壊は12週間以内に発生する、という仕様を満たす、請求項1から15のいずれか一項に記載の容器。
【請求項17】
前記壁は、10~40重量%の木材を含有する、請求項1から
16のいずれか一項に記載の容器。
【請求項18】
前記壁は、10~30重量%の木材を含有する、請求項1から17のいずれか一項に記載の容器。
【請求項19】
容器に保管される内容物を受け入れるための中央空洞を画定する2層壁を備え、前記空洞は、第2の層によって形成される内面と第1の層によって形成される反対の層とを有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の容器。
【請求項20】
容器に保管される内容物を受け入れるための中央空洞を画定する3層の壁を備え、前記空洞は、第2の層によって形成された内面と第1の層によって形成された反対側の層と第3の層によって形成された前記空洞に対して第1の層の反対側にある外層とを有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の容器。
【請求項21】
前記第1の層は、生分解性ポリマーと混合された粗い木材粒子を備え、前記粗い木材粒子の含水量は、前記生分解性ポリマーと混合する前に、250ppm未満まで低減されている、請求項1から20のいずれか一項に記載の容器。
【請求項22】
前記生分解性ポリマーの含水量は、前記生分解性ポリマーと混合する前に、500ppm未満である、請求項1から21のいずれか一項に記載の容器。
【請求項23】
前記壁の材料は、
ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カルシウムから選択される金属ステアリン酸塩;
無水マレイン酸グラフト化熱可塑性プラスチック;
オレアミド;
エルカ酸アミド;
脂肪酸;
ワックス;
リグニン;
200°Cまで安定な色を有する天然材料から選択される染色材料;および
それらの混合物、
の群から選択される1つ以上の添加剤を含有し、前記1つ以上の添加剤は、前記壁の総重量に基づいて計算して最大10重量%の量で組み込まれる、請求項22に記載の容器。
【請求項24】
前記1つ以上の添加剤は、生分解性ポリマーと木材粒子との混合物に、生分解性ポリマーと木材粒子との前記混合物の総重量に基づいて計算して最大10重量%の量で組み込まれる、請求項23に記載の容器。
【請求項25】
前記第2の層は、前記第2の層の総重量に基づいて計算して25重量%未満の、吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子を含有する、請求項1から24のいずれか一項に記載の容器。
【請求項26】
前記第1の層に対して反対側の前記第2の層の表面は、ISO4287によって規定される通り1μm未満の表面粗さ(Ra)を有する、請求項1から25のいずれか一項に記載の容器。
【請求項27】
連続マトリックスを形成する生分解性ポリマーと、その中に混合した吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子と、を組み合わせて備える、堆肥化可能材料の第1の層を備え、射出成形を使用して内面および外面を有する容器に形成され、ISO4287に従って決定されるように前記内面は0.4μm以上の表面粗さ(Ra)を有し前記外面は2.0μm以上の表面粗さ(Ra)を有する、請求項1から26のいずれか一項に記載の容器。
【請求項28】
連続マトリックスを形成する生分解性ポリマーとその中に混合して吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子とを組み合わせて備える、堆肥化可能材料の第1の層であって、堆肥化可能材料の前記第1の層は、堆肥化可能材料の前記第1の層の総重量に基づいて計算して5~50重量%の前記親水性材料の粒子を備える、第1の層および
連続マトリックスを形成する生分解性ポリマーを備える、堆肥化可能材料の第2の層であって、前記第2の層は、前記第2の層の総重量に基づいて計算して50重量%未満の、吸水時に前記マトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子を含有する、第2の層
によって、形成される壁を有する、容器から選択される成形品を製造する方法であって、
連続マトリックスを形成し、吸水時に前記マトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子をその中に混合する、生分解性ポリマーを備える第1の混合物を形成するステップと、
連続マトリックスを形成し、吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子の含有が少ない、生分解性ポリマーを備える、第2の混合物を形成するステップと、
前記第1および前記第2の混合物を射出成形によって処理して、前記第1および前記第2の混合物の層を重なり合う配置で備えかつ前記第1の層および前記第2の層によって形成される容器壁を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項29】
前記第1および前記第2の混合物を処理して、多層の「サンドイッチ」タイプの壁構造を形成するステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記射出成形は、多成分射出成形またはオーバーモールドによって行われる、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の混合物は、前記第2の混合物の総重量に基づいて計算して25重量%未満の、吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子を含有する、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
水性および油性製品を含む様々な材料のための、密閉用蓋を有する瓶から選択される包装および容器として使用される、請求項1から27のいずれかに記載の容器。
【請求項33】
前記容器は、食品、化粧品および医薬品を貯蔵するために使用される、請求項32に記載の容器。
【請求項34】
前記容器は、ハチミツおよびジャム
から選択される糖含有天然製品または調理済み製品、乾燥物質、またはミルク粉末、ドライフルーツ、スープ、肉および魚、ならびにスパイスおよびお茶、ココアおよびコーヒーから選択される乾燥した天然のまたは調理済みまたはその他の方法で調製された材料を貯蔵または提供するために使用される、請求項32または33に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(技術分野)
本発明は、溶融加工による三次元的に形成された堆肥化可能な複合物品の製造に関する。特に、本発明は、そのような方法において、特に射出成形処理によって、熱可塑性生分解性ポリマーの連続マトリックスとマトリックス内に分布木材した粒子とを備える組成物の使用に関する。本発明はまた、容器および他の包装用物品などの堆肥化可能な物品に関する。
【背景技術】
【0002】
(先行技術の記載)
現在、プラスチックの年間生産量は約3億2000万トンで、生産されたプラスチックの約40%が包装部門で使用されている。包装用プラスチックの製造は、2050年までに年間12億トンに達すると予想されている。プラスチックは、低コスト、軽量、衛生的な製造のため、食品の貯蔵に一般的に使用されている。近年の調査によると、プラスチック廃棄物の50%以上が埋め立て地に送られ、これは年間約6000万~1億トンに相当する。EU加盟国は、2014年に約2500万トンの使用済みプラスチックを生成したが、そのうちリサイクルされたのはわずか30%であった。さらに、2010年には、500万~1300万トンのプラスチック廃棄物が環境、特に海洋に排出されたと推定されている(欧州委員会:Strategy on plastics in a Circular Economy,2016)。
【0003】
食品包装部門などのさまざまな大量生産産業は、再生不可能な鉱油の不足のため、鉱油ベースの原材料への依存を減らそうと試みている。主な焦点は生体ポリマーに移った。これらが化石資源に基づく従来の材料の生態学的な代替物であると見なされているためである。産業界はまた、非分解性材料に関する矛盾のために、生分解性材料により焦点を合わせている。油性で非生分解性の使い捨てプラスチック製品が環境に廃棄されると、それらはマイクロプラスチックへのゆっくりとした分解にさらされる。このプロセスは何年も、何十年も続く。結果として、大量の廃棄されたパッケージはリサイクルから除外される。プラスチックに関連する環境問題を考えると、プラスチック廃棄物の管理は真剣に検討する必要のある重要な問題である。したがって、比較的短期間のうちに、環境にやさしい方法で堆肥化および生分解され得る生分解性材料を開発する必要がある。このフレームワークでは、生体ベースのポリマーは、二酸化炭素(CO2)などの有毒な温室効果ガス(GHG)の排出を削減するのに役立つため、重要な役割を果たす。
【0004】
包装に使用される生分解性ポリマーの例には、デンプン、セルロース、キトサン、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)およびそれらのブレンドが含まれる。一部の材料は、最終製品の機能特性を改善し、それらの用途の範囲を拡大するために、他のポリマーや添加剤などの合成成分を含む混合物またはブレンドになり得る。バイオプラスチックに関する近年の市場データレポートによると、PLAの生産は市場シェア約40%を有するタイプ別で最大の部門である。
【0005】
PLAは、サトウキビやトウモロコシおよび他の植物からの砂糖などの再生可能資源に由来する生分解性の合成熱可塑性ポリエステルの例であり、現在最も一般的に使用されているバイオプラスチックの1つである。PLAはまた、非常に耐久性があり剛性が高く、ほとんどの用途で優れた処理特性を備えている。PLAは低温多湿では急速に分解しないが、高湿度および高温(60°C以上)にさらされると急速に分解する。PLAの生分解は、低分子量オリゴマーへの加水分解とそれに続く微生物による完全な消化とからなる2段階のプロセスである。PLAの用途は食品分野から生物医学まで多岐にわたるが、ポリマーの価格が高く、自然界での分解速度が遅いため、限定されている。
【0006】
EN13432に準拠した欧州の堆肥化基準の要件を満たすために、生分解性ポリマーと天然充填材とから作られた市販の製品は、フィルムや食品用器具や容器などの薄壁用途に限定されることがしばしばある。それらのほとんどは、次のタイプの材料から製造されており、堆肥化に適した壁の厚さは次のとおりである。PLAベースのBio-Flex(R)は最大140μm、Ecovio(R)は最大1.1mm、CorbionPLAは最大1.0mm、PHAベースのMirel(R)は最大0.7mm、デンプンおよびビニルアルコールコポリマーベースのMater-bi(R)は最大1.0mm、デンプンおよびPLAベースのInzea(R)は最大1.5mm、ポリカプロラクトンCAPA(R)シリーズ1.0mm(Tu:v Austria,OK compost certified Products;2016,以下“OKコンポスト”と呼ぶ)。PLAブレンドEcovioT(R)(BASF)で作られた硬質パッケージは、最大厚さ1.2mmを有する。
【0007】
以前の研究では、PLAデリ容器は30日で完全に分解された。しかし、PLAボトルの場合、30日間の堆肥化後でも、最高温度が60°Cを超えて上昇するまでにPLAの残留物がいくつか見つかった(Kaleら、2007)。PLA製品の生分解時間は、物品の壁の厚さに大きく依存することが示されている。
【0008】
上記の厚さの制限により、上記の種類のOKコンポスト承認材料は、例えば、90日の貯蔵寿命を必要とする液体食品または少なくとも12か月の貯蔵寿命を必要とする化粧品の保管用には使用できない。これらの材料は、使用前に比較的長期間乾燥状態でその特性をうまく維持することができるが、液体と直接接触するように配置されると、漏出して1か月以内に劣化し始める。
【0009】
近年、生分解可能および堆肥化可能である材料の開発は、生体ベースおよび生分解性ポリマー、森林産業の残留物由来の天然繊維、および例えばコーヒー、化粧品、穀物ベースのエタノール産業由来の副産物などの、再生可能資源に焦点を合わせている。加えて、農業由来の繊維(麦わらなど)や麻の茎などのリグニン含有材料を充填材として利用し得る。
【0010】
米国特許第8,722,773号(US8,722,773)は、熱可塑性ポリマーマトリックス内に均一に分散された化学木材パルプシートからの65~90重量%の化学木材パルプ繊維を含むポリマー複合材料に関する。ポリマーと化学木材パルプとが混合され、溶融加工で加工された。米国特許第8,722,773号は、クラフト漂白化学木材パルプを使用して、そのような材料に存在するリグニンおよび他の化合物に起因する、ケナフおよび木材繊維などの天然繊維に関連する変色および臭気の問題を回避する材料を開示している。しかしながら、複合材料の製造については、天然繊維は、例えば米国特許第8,722,773号に記載されている高度に精製および漂白された繊維よりも安価であり、したがってより魅力的な材料である。
【0011】
木材粒子を含有する複合材料は、特開2002-113822号公報に開示されている。この刊行物は、厚さが1~30mmであり、直径が1~30mmである50重量%未満の木材粒子を含有するベース層と、ベース層を覆い、50~300μmまでの直径を有する木材粒子を含有する表面層と、を有する層構造を示唆している。表面層の厚さは、ベース層を覆い隠すのに十分であるように選択される。その材料の具体的な用途は、文献中で示唆されていない。加えて、特開2002-113822号公報に記載の2層構造は、少なくとも2つの異なる粒子源由来の木材粒子、2つの異なるポリマーブレンドおよび共押出に基づく製造プロセスの使用を必要とする。
【0012】
上記の文献は、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(エーテルイミド)およびアクリロニトリルブタジエンスチレンタイプのコポリマーなどの化石ベースの原材料の処理に基づくポリマー材料を開示している。
【0013】
堆肥化可能なポリマー、PLAおよび微粉砕セルロース材料の組成物は、国際公開第2015/048589号(WO2015/048589)に開示されている。この文献は、PLAと最大30%の微粉砕セルロース材料(紙パルプの微粉砕紙など)を含有する焼きなましPLA複合材料について説明している。微粉砕粒子のサイズは10~250μm、特に20~50μmであり、狭い粒度分布を有する。出版物によると、この材料は堆肥化可能であり、高い荷重たわみ温度(HDT)を示す。しかしながら、微粉砕された材料を追加しても機械的な利点は得られないようであり、加工および射出成形中の問題を回避するために、材料の最大負荷は30%に制限されていた。
【0014】
さらなる複合材料は、中国特許出願公開第101712804号明細書(CN101712804A)、米国特許出願公開第2013253112号明細書(US2013253112)、米国特許出願公開第2016076014号明細書(US 2016076014)、米国特許出願公開第2002130439号明細書(US 2002130439)および欧州特許出願公開第0319589号明細書(EP0319589)に記載されている。
【0015】
木材ベースの複合材料は、環境に優しく、軽量で比較的低コストの材料であるため、さまざまな用途で広く使用されている。木材複合材の例は数多くあり、それらは通常、ある種の結合剤を使用して、ストランド、繊維、または木材板を結合することによって作成される。このようなタイプの製品は、人工木材、製造板、または集成材としても知られている。木材プラスチック複合材(WPC)という用語は、木材繊維およびポリエチレン(PE)などの熱可塑性プラスチックを含有する材料に使用される。同様のタイプの複合材料は、植物繊維からも製造され得る。これらの材料に添加剤を使用することも一般的である。これは、生体ポリマーと天然繊維との結合を可能にし、加工にメリットをもたらすからである。WPCの最も有利な特徴の1つは、木材廃棄物を配合に使用できることであり、これにより、原生林を破壊する必要性が減少する。
【0016】
合板は、第1の木材複合製品と見なされている。合板は、クロスラミネートされたベニヤプライのシートから製造され、最終的には熱の下で耐湿性接着剤で接着される。木材複合材の別の例は、高温高圧下で木材繊維をワックスおよび樹脂結合剤と組み合わせることによって製造されるファイバーボードである。パーティクルボードは、合成樹脂でプレスされた木材チップまたは製材のこぎりの削りくずから製造される(米国特許出願公開第2018215972号明細書)。
【0017】
WPCで使用される木材は、押出前に粉砕、選別、乾燥される。デッキおよびフェンスの輪郭については、粗い表面テクスチャが許容できるまたは望ましいとき、木材繊維を40~60メッシュにスクリーニングすると、良好な流動特性が得られ、ポリマーマトリックスへの混合が容易になる。滑らかな仕上げが必要な輪郭の場合、木材は80~100メッシュのスクリーンでふるいにかけられる。120メッシュのスクリーンを通過する微粉は、流動性が低く、押出中のポリマーマトリックスに不均一に分布しているため、望ましくない。不均一に分布した木材繊維、いわゆる「ウッドスポット」は、特に木材に過剰な微粉が含まれている場合、または押出機が摩耗しすぎて均一な混合物が得られない場合によく見られる品質の問題である(中国特許出願公開第107932874号明細書)。
【0018】
WPCは、デッキボードやフェンスボードなどの押出ですでに確固たる評判を得ている。現在、開発は射出成形(IM)に向かって進行しており、これは、押出成形よりも要求の厳しい製造技術である。
【0019】
WPCのIM中には、信頼性の低い品質や供給など、多くの課題に直面し、一般に、PEなどのより使い慣れたIM材料と比較すると、WPCの処理が非常に困難である。IMに最も一般的に使用される原材料の種類は、木材とポリマーとの混合物を含有するペレットまたは顆粒である。ペレットまたは顆粒は、IMデバイスのホッパーに供給される。ペレットの供給に関連する問題は、ペレットのサイズおよび材料の含水量である。ペレットが物理的に大きすぎると、不均一に溶融して追加の摩擦が発生する傾向があり、構造的に劣った最終製品となる(特開2010-280152号公報、米国特許出願公開第2006/0267238号明細書、米国特許第6210792号明細書、米国特許第6632863号明細書)。材料の乾燥も重要な品質パラメータである。WPCの水分レベルは、複合材料中の木材充填材の量とともに増加する。押出とIMとの両方で最良の結果を得るには低含水量が必要であるが、IMの推奨水分レベルはわずかに低くなる(カナダ国特許出願公開第1171656号明細書)。
【0020】
WPCのIMは、多くの化学的課題にも直面している。WPCに関連する最初の問題は、親水性の木材繊維と疎水性ポリマーマトリックスとの間に強力な化学結合を作成する必要があることである。木材充填材の体積は水分に依存するが、一方でプラスチックマトリックスの体積は温度に依存する。これにより、内部せん断応力が発生し、最終製品に亀裂が生じ得る。亀裂は、材料の機械的特性を悪化させるだけでなく、木材繊維の湿気にさらされる表面積を増加させ、腐敗や腐朽の加速のリスクを高める。これらの問題を克服するために、カップリング剤が使用される。カップリング剤の目的は、木材充填材とマトリックスとの間の接着性を向上させることである。カップリング剤はまた、木材充填材の親水性を低下させる。木材充填材の親水性は、配合前の木材充填材のさまざまな処理によっても影響を受け得る。未加工の木材を使用して作られたWPCは長期耐久性に欠けるため、これは非常に重要である。
【0021】
射出成形製品を製造するときには、適切な種類の木材充填材を使用することが非常に重要である。再生木材またはおがくずに由来する木材を利用することが好ましい。森林産業からの他の残留物も利用され得る。これはLCA値の減少とコストの低下が理由である。このタイプの木材は、機械的および化学的に処理する必要がある(国際公開第2015/049589号)。機械的処理の間に、木材繊維は望ましいサイズと形にカットされる。化学的に処理されると、木材は化学的に修飾され、吸湿が減少し、木材繊維とポリマーマトリックス間の結合が強化される。つまり、WPCの最適なパフォーマンスを確保するには、木材を処理する必要がある。木材に施される処理に関わらず、湿気は木材繊維とポリマーの間の結合を弱め、真菌の攻撃のリスクを高め、材料を腐敗させるため、乾燥の必要がある。
【0022】
上記の事実に基づいて、選択された化学物質に対する安定性を長期間維持しながら、容器に成形され得る生分解性材料が依然として必要とされている。同時に、EN13432(または統一化されたEN13432:2000)堆肥規格に準拠した堆肥化試験に合格可能であるべきである。このような製品はまた、EU包装指令(94/62/EEC)の要件にも準拠すべきである。
【発明の概要】
【0023】
本発明の目的は、従来技術の不利な点の少なくとも一部を排除すること、および射出成形を使用して費用効率よく製造でき、1mm超、特に1.2mm超、最大25mmまたはそれを超える厚さの壁を有する製品であっても工業用堆肥化条件で分解可能な新規材料を提供することである。
【0024】
堆肥化環境で分解可能な厚い材料の開発において、水が構造に浸透してポリマー鎖を分解し始め、最終的にCO2、水、無機化合物およびバイオマスに生分解する小さなポリマー画分を形成し、マイクロプラスチック、目に見える汚染物質、または有毒な残留物を残さないことが重要である。従来、これは厚さが1mm未満の薄いシートタイプの材料でのみ可能である。
【0025】
本発明は、粗い木材粒子などの親水性材料の粒子を生分解性ポリエステルマトリックスと組み合わせて第1の組成物を形成するという考えに基づいている。約0.5mmより大きい、例えば約1mmより大きい、および約25mmより小さい、例えば10mm以下、例えば最大で2.5mmまたは2mmのスクリーンサイズを有する親水性粒子、例えばチップなどの木材粒子の膨潤は、ポリマーマトリックスの亀裂および断片化を加速することが示されている。
【0026】
第1の組成物に加えて、少なくとも1つの第2の組成物も使用される。その組成物は、親水性粒子をかなり少なく含有するか、またはそれらを含有しない。
【0027】
こうして、本発明は、連続マトリックスを形成する生分解性ポリマーとその中で混合された吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子とを組み合わせて備える堆肥化可能材料の第1の層によって、および連続マトリックスを形成し吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の当該粒子をより少なく含有するかまたは実質的にそれらを含まない生分解性ポリマーを備える堆肥化可能材料の少なくとも1つの第2の層によって、形成される壁を有する容器を提供する。
【0028】
連続マトリックスを形成し吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子をその中に混合する生分解性ポリマーを備える、第1の混合物を形成するステップと、
連続マトリックスを形成し吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子をより少なく含有する、生分解性ポリマーを備える、第2の混合物を形成するステップと、
当該第1および当該第2の混合物を射出成形によって処理して、当該第1および当該第2の混合物の層を重なり合う配置で備える容器壁を形成するステップと、
を含む、そのような容器を製造する方法。
【0029】
本材料は、特に多層壁の形態で使用される場合、良好な機械的特性と組み合わせて、優れた堆肥化性の特性を達成するであろう。上記の熱可塑性生分解性材料を含有するまたは備える壁構造を有する45ml瓶の吸水率は、NTPで33日以内に0.061mg/(day・cm2)超2.0mg/(day・cm2)未満である。
【0030】
より具体的には、本発明は、主に、独立請求項の特徴的な部分に記載されていることによって特徴づけられる。
【0031】
本発明はかなりの利点を提供する。本材料の実施形態は、OKコンポストの承認を満たしている。したがって、材料のOKコンポスト承認の達成に即して、材料は以下の仕様(要件)を満たす。すなわち、堆肥において、58°Cでの材料の完全な生分解が最大6か月以内に行われる。生分解は製品質量の90%のレベルに達する。58°Cでの製品の崩壊は12週間以内に起こる。崩壊のレベルが90%を超えているため、残留物の最大でも10%のみが2mmのふるいを通過しない。
【0032】
同時に、本天然繊維粒子、特に木材チップなどの粗い木材粒子を使用すると、化粧品包装用の瓶などの厚壁パッケージの製造に使用される材料にとって十分に良好な機械的、物理的および化学的特性を生成することが可能である。おがくずやその他の粉末やフィブリルなどの小さな粒子は、吸水や膨潤による堆肥化性を効果的に高めることはできない。さらに、大きな粒子は製造プロセスに支障をきたし、分解速度が上がりすぎて、厚壁パッケージの材料を適切に使用できなくなる。
【0033】
湿った状態では、木材成分の吸湿がポリマーマトリックスの温度による動きと組み合わされ、WPCに変形を引き起こす。水分に関連する体積の変化は、木材粒子などの親水性粒子のサイズとともに増加する。これにより、通常0.5mmを超え、特に1mm以上であるスクリーンサイズを有する、木材材料のフレークまたは繊維を有するWPCの変形が増加し、内部張力が増加する。WPCに生じた張力により、微小な亀裂が発生し、木材充填材が酸素と湿気にさらされ、全体の表面積が増加する。これにより、真菌の攻撃と引張強度の低下が発生する。
【0034】
長期間水にさらされる木材充填材は、引張強度が低下する。したがって、引張強度の低下は、亀裂の結果であるだけでなく、露出した充填材の増加および露出した充填材の引張強度の低下の結果でもある。チップまたは繊維は、配合中に分解してより小さな画分になりやすく、したがってそのサイズおよび形状が変化する。
【0035】
好ましくは親水性粒子を含まないことが第2の組成物は、第1の組成物から形成された層の片側または両側に表面層を形成し得る。このような表面層は、通常は薄く(厚さは最大1mmに達する)、第1の組成物から形成された層の水による分解の開始を遅らせる。水性材料が容器に含有される場合、親水性粒子を含まない、または実質的に含まない生分解性ポリマーによって形成される内面は、例えば、最大6ヶ月または12ヶ月で容器壁の耐水性を改善する。水が内面または外面コーティングを通って第1の組成物から形成された層に浸透し始めると、上記および以下の例が示すように、分解が急速に始まる。
【0036】
次に、本発明は、詳細な説明および添付の図面を参照して、より詳細に検討される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】さまざまな添加剤を含有する木材/PLA複合材料の50°Cでの吸水率を表したグラフである。
【
図2】
図2a~
図2cは、工業用堆肥化試験前の3つのサンプル瓶の写真である。
【
図3】
図3a~
図3cは、工業用堆肥中のサンプルCom-2の分解を描いた写真である。
【
図5】試験を実施した22°Cでの重量パーセントにおける試験瓶の吸水率を示す棒グラフである。
【
図6】1週間における瓶の重量パーセントでの取水量を示す棒グラフである。
【
図7】Sula40木材複合サンプルの顕微鏡画像である。
図7aは23°Cで94日間オイルレッドO染色水と接触した後の表面を示す。
図7bは23°Cで94日間オイルレッドO染色水と接触した後の断面図を示す。
【
図8】さまざまな木材粒子含有量の複合材料を使用した射出成形によって製造された容器の内壁および外壁の粗さを示す棒グラフである。
【
図9A】純粋なPLA表面を示すSEM顕微鏡写真である。
【
図9B】10重量%の木材を含有するPLA-木材複合材料を示すSEM顕微鏡写真である。
【
図9C】30重量%の木材を含有するPLA-木材複合材料を示すSEM顕微鏡写真である。
【
図9D】40重量%の木材を含有するPLA-木材複合材料のSEM顕微鏡写真であるSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本文脈において、「厚壁」容器という用語は、平均厚さが約1mmを超える壁を有する容器を表し、特に、壁は、通常1mm~25mmである。
【0039】
「WPC」は、木材ポリマー複合材(wood-polymer-composites)の略である。
【0040】
本文脈において、水接触時に膨潤可能な親水性粒子の異なる含有量を有する、提供される組成物および対応する層は、それぞれ単数形で「第1の」組成物および「第1の」層、ならびに「第2の」組成物および「第2の」層と呼ばれる。しかしながら、本技術は、同じ製品において、いくつかの第1の組成物およびいくつかの第2の組成物ならびに対応する層をも提供することを理解されたい。通常、1~3個の第1の層と1~5個の第2の層が存在する。
【0041】
一実施形態では、1つの第1の層および1つの第2の層が存在する。別の実施形態では、1つの第1の層および2つの第2の層が存在する。
【0042】
本文脈において、吸水時にマトリックス内で膨潤可能な「親水性材料」は、通常吸水時に膨潤する非フィブリル化(すなわち、機械的に崩壊した)天然材料を表す。膨潤は、通常非常に激しいため、ポリマーマトリックス中に水、特に少なくとも部分的に液体の水の浸透を可能にする経路が形成される。この機能については、すでに上記で説明済みであった。天然素材は、通常、木、植物、その他の植物素材、および穀物とそれらの一部で表される。
【0043】
一実施形態では、親水性材料は、木材またはリグノセルロース材料またはセルロースまたはヘミセルロースまたはそれらの組み合わせの粒子を備えるか、それからなるか、または実質的にそれからなる。一実施形態では、本技術は、材料、特に堆肥化可能な木材複合材料を提供する。そのような材料は、連続マトリックスを形成し、水吸収時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子をその中に混合する生分解性ポリマーを備える、堆肥化可能な材料の第1の層、および連続マトリックスを形成し、マトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子を含まないまたは実質的に含まない生分解性ポリマーを備える、堆肥化可能な材料の第2の層、を備える層状材料の形態で提供することができる。一実施形態では、第2の層は、マトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子が第1の層よりも実質的に少ない生分解性ポリマーを備える。
【0044】
本材料は、例えば、容器に使用され得る。
【0045】
一実施形態では、化粧品および同様の水性または油性製品用の容器は、少なくとも1つの第1の層および少なくとも1つの第2の層によって形成された壁を有する。第1の層は、通常、連続マトリックスを形成する生分解性ポリマーと、その中に混合した吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子と、を組み合わせて備える。第2の層は、連続マトリックスを形成し、マトリックス内で膨潤することができる親水性材料の粒子を実質的に含まないか、または第1の層よりも実質的に少ない粒子を含有する生分解性ポリマーを備える堆肥化可能な材料を備える。第2の層は、瓶に貯蔵された水性または油性の生成物が所定の期間、通常少なくとも3ヶ月、特に6~12ヶ月、周囲温度、例えば約15~25°Cで第1の層に移行することに対するバリアを提供する。
【0046】
吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子は、木材または他のリグノセルロース材料、例えば一年生または多年生植物および植物残留物の機械的処理によって得られる粒子から選択されることが好ましい。
【0047】
一実施形態では、親水性材料の粒子は、木材粒子、特に「粗い」木材粒子を備える。そのような粒子は、通常、0.5mm超、特に1mm以上、および25mm以下、特に10mm以下、2.5mm以下、または2mm以下のスクリーンサイズを有する。
【0048】
「スクリーン(screened)」サイズという用語は、粒子の選別サイズに対応するメッシュサイズを有するスクリーンを使用してサイズ調整または分離された粒子、または特定のサイズにサイジングまたは分離され得る粒子を指定するために使用される。
【0049】
容器は厚壁である。すなわち、それは1mm~25mm、通常約1.2~10mmの総壁厚を有する。
【0050】
通常、第1の層の厚さ(または第1の層の合計の厚さ)は、第2の層の厚さまたはいくつかの第2の層の合計の厚さよりも大きい。特に、第1の層の厚さと第2の層の厚さ(または第2の層の組み合わせ)との間の比率は、約1.1:1~100:1、例えば、1.2:1~10:1である。
【0051】
一実施形態では、第2の層は最大1mmの厚さを有し、一方、第1の層は最大20mm、通常最大10mmの厚さを有する。
【0052】
本技術の一実施形態では、第1の組成物は、110°Cを超える融点を有し、熱可塑性ポリマーマトリックス中に分布して、吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の親水性粒子を有する、熱可塑性ポリマーのマトリックスを備える。
【0053】
親水性材料の粒子は、好ましくは、少なくとも0.5mm、または少なくとも1mm、好ましくは最大25mm、好ましくは最大10mm、例えば最大でも2.5mmまたは2mmのふるい分けサイズを有する非フィブリル化木材粒子によって形成される。木材粒子の少なくとも一部は、木材チップの形で存在する。特に、木材粒子の少なくとも20体積%、例えば30~90体積%が木材チップの形態で存在し、そのようなチップは、以下で議論されるように、通常「平らな形状」である。
【0054】
熱可塑性ポリマー対木材粒子の重量比は、通常、35:65~90:10の範囲、例えば50:50~85:15、55:45~80:20、または60:50~80:20である。
【0055】
好ましい実施形態では、複合材料は、熱可塑性ポリマーと木材粒子およびその他の固体成分の総重量から計算された5~60重量%、特に10~55重量%、例えば20~50重量%、または15~45重量%、または15~40重量%の木材粒子、を備える。
【0056】
一実施形態では、木材粒子は、20mm未満のふるい分けサイズを有する粒子を備える。したがって、一実施形態では、木材粒子の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、通常80~95重量%が、0.5~10mm、特に1~2.5mm、または1~2mmの範囲のふるい分けサイズを有する。
【0057】
組成物の木材粒子は、非立方体形状を有する粒子によって少なくとも部分的に形成される。そのような粒子は、チップであると特徴付けることができ、そのような粒子は、通常、「プレート状」または「平らな」「スレート様」または「平らな形状」である。本発明の一実施形態では、組成物の木材粒子は、木材原料のチッピングによって得られる粒子である。本文脈において、木材粒子は、それらが通常粒子の平面の最大寸法の40%未満、特に25%未満、例えば10%未満である平面の断面厚さである一般的平面構造を有する場合、木材チップであると見なされる。木材を削ることにより、必然的に、木片や木の削りくずをさまざまな他の形を有する粒子とともに含有する、細かく分割された粒子状物質が得られる。したがって、本組成物は、おがくずおよび木粉(サイズが1mm未満)も含み得る。しかしながら、通常、木材粒子の体積の大部分は一般にチップである(すなわち、それらは「平らな」または「平らな形の」粒子の「プレート状」または「スレート様」の一般的な形状を有する)。
【0058】
上で論じたように、そのような粒子、例えば、本技術の実施形態に含まれる木材チップは、ポリマー内の木材材料の良好な分散、およびポリマー処理装置における材料の良好な加工性に寄与するであろう。したがって、結果として、例えば、1.0~2.5mmの一般的な(80%)粒子サイズを有する比較的大きな木材粒子を使用することができる。さらに、木材チップは、射出成形装置などの溶融加工装置のノズル部分をスムーズに通過し、複合材料のメルトフロー量を妨げないことがわかった。
【0059】
現在の木材粒子は、通常、「非フィブリル化」されており、これは、それらが機械的処理によって得られることを意味する。したがって、一実施形態では、親水性材料の粒子は、木材などの天然材料もしくは一年生または多年生植物および植物残留物などの他のリグノセルロース材料の破砕、チッピング、シェービング、粉砕または精製によって得られる。
【0060】
一実施形態では、この機械的処理は、フィブリル化、特にチップまたは丸太の精製または粉砕によって、または化学パルプ化液でのパルプ化などの化学的手段による木材原料のパルプ化によって行われるフィブリル化によって、繊維が木材から遊離される処理とは異なる。このような処理により、「繊維」または「フィブリル」が生成される。それにもかかわらず、繊維またはフィブリルの一部、特にリグノセルロース材料に由来する繊維またはフィブリル、例えば、木材材料を、非フィブリル化木材粒子に加えて、本組成物に組み込むことが可能である。通常、そのようなフィブリル化された成分は、組成物の非ポリマー部分の総重量の50%未満を形成する。特に、フィブリル化された成分は、組成物の非ポリマー部分の総重量の、40重量%未満、例えば30重量%未満、適切には20重量%未満、例えば10重量%未満またはさらに5重量%未満を形成する。
【0061】
適切な繊維は、一年生植物や多年生植物などのリグノセルロース材料、または草、干し草、わら、竹、ケナフ、麻、ジュート、米、大豆、草の種子などの作物の収穫後に残っている植物の残留物を含む木材材料から得られ得る。
【0062】
また、穀物、特にオーツ麦、小麦、ライ麦、大麦およびココナッツの殻の破砕された種子の殻を用い得る。
【0063】
木材粒子は、マツ、トウヒ、カラマツ、セイヨウネズ、カバノキ、ハンノキ、アスペン、ポプラ、オーク、カエデ、ユーカリ、および混合熱帯広葉樹を含む針葉樹または広葉樹から誘導され得る。好ましい実施形態では、木材材料は、広葉樹、特にポプラまたはアスペンなどのポプラ種の広葉樹から、またはカバノキから選択される。非針葉樹材を使用することにより、針葉樹種に典型的な溶融処理中のテルペンおよびその他の揮発性成分のガス放出を回避し得る。また、木本植物の茎と根との最外層を形成する樹皮は、適切な有機充填材材料である。樹皮のある植物には、木、木本つる植物、低木などがある。スベリンが豊富なコルクも利用され得る。
【0064】
第2の組成物は、110°Cを超える融点を有し、連続マトリックスを形成し、マトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子を実質的に含まない、または第1の層よりも実質的に少ない量を含有する、熱可塑性ポリマーのマトリックスを備える。一実施形態では、第2の混合物は、50重量%未満、特に25重量%未満、例えば10重量%未満、好ましくは5重量%未満の、吸水時にマトリックス内部で膨潤可能な親水性材料の粒子を含有する。第2の層の任意の親水性材料およびその粒子は、第1の層に関連して上記に記載の親水性材料および粒子から選択し得る。
【0065】
一実施形態では、同じ親水性材料および粒子が第1の層および第2の層で使用され、第1の層および第2の層の違いは、第2の層がより少ない親水性材料を含有することである。一実施形態では、第2の層中の親水性材料の含有量は、第1の層の含有量の50重量%未満、特に40重量%未満、例えば30重量%未満、通常20重量%未満、例えば10重量%未満である。一実施形態では、第2の層は、粒子形態の親水性天然材料を含まない、すなわち、ニートポリマーを備えるか、実質的にニートポリマーからなるか、またはニートポリマーからなる。
【0066】
第1および第2の組成物の両方は、好ましくは、生分解性熱可塑性ポリマーのマトリックスを備える。特に、熱可塑性ポリマーは、約150°Cを超える、特に約155°Cを超える融点を有する。
【0067】
成形品の表面、例えば、その滑らかさと外観は、射出成形に使用される材料に含まれる水の量に依存する。したがって、ポリマーの処理温度が200°Cに近づくと、水がポリマーから沸騰するため、ポリマーに含まれる水分が問題になり得る。
【0068】
これに基づいて、一実施形態では、木材粒子、例えば木材チップ中の水分量(「含水量」)を処理する前に、250ppm未満、例えば50ppm未満に調整する。
【0069】
一実施形態では、使用される生分解性ポリマーは、乾燥しているか、または処理前に、例えば射出成形前に乾燥されている。例えばポリ(ヒドロキシ酸)種のポリエステルなどの生分解性ポリマーに加えて、いくつかの他のポリマーもまた、使用前に乾燥されることが好ましい。例としては、ポリアミドやポリカーボネートが含まれる。したがって、熱可塑性ポリマー、特に生分解性ポリマーまたは生体ポリマー、例えばPLAまたはヒドロキシ酸に基づく他のポリエステルの含水量は、好ましくは、それぞれ500ppm未満、特に250ppm未満である。この実施形態は、以下でより詳細に検討される。
【0070】
一実施形態では、第1の組成物および必要に応じて第2の組成物もまた、鉱物充填材を含有する。好ましい実施形態では、鉱物充填材は、タルクまたはカオリンなどのスレート様粒子によって形成される。他の充填材はシリカによって形成される。通常、鉱物充填材の含有量は、有する場合、熱可塑性ポリマーおよび木材粒子の総重量から計算して、約0.1~40%、特に約0.5~30%に達する。
【0071】
スレート様鉱物顔料は、組成物に改善されたバリア特性を与え得る。スレート様鉱物顔料はまた、組成物の溶融加工中の加工助剤として機能し得る。シリカ、つまり細かく分割された二酸化ケイ素材料は、メルトフロー特性を改善する。
【0072】
他の鉱物充填材および顔料もまた、第1および第2の組成物中に存在し得る。
【0073】
通常、スレート様鉱物顔料を含む鉱物充填材の総含有量は、組成物の非ポリマー部分の50%未満である。鉱物充填材および顔料の例には、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、二酸化チタン、酸化アルミニウム、およびアルミノケイ酸塩が含まれる。一実施形態では、複合材料は、複合材料に色の特性を与えることができる細かく分割された材料の粒子をさらに含有する。染色材料は、例えば、溶融加工中に使用される加工温度で安定な色を有する天然材料から選択し得る。一実施形態では、染色材料は、200°Cまでの温度で安定している。
【0074】
脂肪酸金属塩は、加工助剤および脱酸剤として使用され得る。金属ステアリン酸塩の主な機能は、複合材料が金型やそれ自体に付着するのを防ぐ能力である。ただし、実用的な目的では、市販の金属塩は、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、およびトール油酸に由来するものに限定されている。ステアリン酸は、植物性脂肪または動物性脂肪に含まれる直鎖飽和-塩基酸である。射出成形に適用できる2つの金属ステアリン酸塩はカルシウムおよび亜鉛である。使用されるステアリン酸塩の量は0.5~5重量%である。
【0075】
一実施形態では、木材成分(木材顆粒)は化学的に修飾されている。化学修飾は、化学試薬、通常はモノマー試薬を使用して実行され得る。そのような試薬の中で、酸無水物、無機酸エステル、酸塩化物、クロロエーテル、アルデヒド、ラクトン、反応性ビニル化合物、エポキシド、イソシアナート、およびカルボン酸の金属塩などの有機酸の金属塩が特に有用な化合物である。
【0076】
一実施形態は、環境に逆の影響を与えることなく木材マトリックス上のヒドロキシル基と容易に反応し、結果としてヒドロキシル基の量を減少させることができる環無水物基を有する無水マレイン酸を使用することを含む。使用される無水物の量は1~5重量%である。
【0077】
オレイン酸アミドおよびワックスは、射出成形で平滑剤として、また内部摩擦を減らすために使用される。それらはまた吸水から木材繊維をも保護し得る。使用されるアミドおよびワックスの量は0.1~5重量%になる。
【0078】
エルカ酸アミドはスリップ剤として使用され得る。使用されるステアリン酸塩の量は0.1~5重量%である。
【0079】
リグニン自体は、複合材料の撥水性を高めるだけでなく、複合材料の機械的耐久性を高めることができる。リグニンの量は0.1~2重量%である。
【0080】
上記に基づいて、一実施形態では、容器の壁の材料は、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸金属の群、無水マレイン酸グラフト化熱可塑性プラスチック、オレアミド、エルカ酸アミド、脂肪酸、ワックスリグニンおよびそれらの混合物から選択される1つ以上の添加剤であり、1つ以上の添加剤が最大10重量%、特に約5重量%の量で組み込まれている。
【0081】
通常、添加剤は、混合物を処理して容器を形成する前に、生分解性ポリマーと木材チップとの混合物に最大10重量%、特に約5重量%の量で組み込まれる。
【0082】
木材粒子が熱可塑性ポリマーマトリックス全体に分布していることが好ましく、特に、木材粒子が熱可塑性ポリマーマトリックス全体に均一に分布していることが好ましい。堆肥においては、膨潤した木材チップの存在下で、通常は完全に材料が劣化する。一実施形態では、均一な分布とは、材料の任意の1cm3の体積における木材粒子の含有量が、同じ1cm3の体積の50%未満を有する他の10体積の材料の平均含有量と異なることを意味する。好ましい実施形態では、半透明のポリマーから形成され2.5mmの厚さを有するプレートに成形された複合材料は、特に木材粒子の含有量が木材粒子と熱可塑性ポリマーとの総重量の30%を超える場合、特に40%以上の場合、その中に木材粒子が存在するため、非半透明である。
【0083】
複合材料のマトリックスは、通常、生分解性の熱可塑性ポリマーによって形成される。一実施形態では、熱可塑性ポリマーは、約150°Cを超える、特に約155°Cを超える融点を有する。熱可塑性ポリマーは、特に、ポリ(ヒドロキシ酸)を含むポリエステルなどの生分解性ポリマーであり得る。したがって、ポリマーは、ポリラクチドおよびポリ(乳酸)、ポリグリコリドおよびポリ(グリコール酸)、酢酸プロピオン酸セルロース、および例えばポリヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシアルカノエート、およびそれらの混合物を備える生分解性ポリマーの群から選択され得る。ポリオレフィン、ポリエステル、特に生分解性ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドなどの非生分解性ポリマーも、本明細書に記載のように、木材粒子で満たされた複合材料を達成するために使用することができる。生分解性ポリマーの分子量は、ポリマー分子間の絡み合いを可能にするのに十分高い量であるべきであり、また溶融加工されるのに十分低い量であるべきである。
【0084】
一実施形態では、ポリ乳酸またはポリラクチド(両方とも略語「PLA」と呼ばれる)が使用される。1つの特に好ましい実施形態は、約10,000g/mol~約600,000g/mol、好ましくは約500,000g/mol未満または約400,000g/mol、より好ましくは約50,000g/mol~約300,000g/molまたは約30,000g/mol~約400,000g/mol、最も好ましくは約100,000g/mol~約250,000g/mol、または約50,000g/mol~約200,000g/mol、の重量平均分子量を有するPLAポリマーまたはコポリマーを使用することを含む。
【0085】
PLAを使用する場合、PLAは半結晶性または部分的に結晶性の形態であることが好ましい。半結晶性PLAを形成するために、ポリラクチド中の繰り返し単位の少なくとも約90モルパーセントがL-またはD-ラクチドのいずれかであることが好ましく、さらにより好ましくは少なくとも約95モルパーセントである。別の実施形態では、熱可塑性ポリマーは、約110から120°Cの範囲の融点を有する。このような熱可塑性プラスチックは、ポリブチレンアジペートテレフタレート(略称PBAT)から選択することができる。
【0086】
熱可塑性ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマー、例えば、アジピン酸、1,4-ブタンジオールおよびジメチルテレフタレートのコポリエステルなどのランダムコポリマーのいずれかの形態のニートポリマーを備え得る。PBATポリマーは通常、生分解性、統計的、脂肪族-芳香族コポリエステルである。適切な材料は、BASFからEcoflex(R)の商品名で供給されている。PBATのポリマー特性は、分子量が大きく長鎖分岐分子構造であるため、PE-LDと同様である。
【0087】
PBATは、そのランダムな構造により、ランダムコポリマーとして分類される。これはまた、いかなる種類の構造的秩序も広く存在しないため、それが有意な程度に結晶化できないことを意味する。これは、いくつかの物理的特性、すなわち広い融点、低い弾性率と剛性、しかし高い柔軟性と靭性につながる。バージンポリマーに加えて、組成物はまた、リサイクルされたポリマー材料、特にリサイクルされた生分解性ポリマーを含有し得る。さらに、組成物はまた、繊維強化PLA、セラミック材料およびガラス材料(例えば、バイオガラス、リン酸塩ガラス)などのポリエステルの複合材料を含有し得る。
【0088】
上記に基づいて、一実施形態は、連続マトリックスを形成し、吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子をその中に混合する生分解性ポリマー備える堆肥化可能材料の第1の層と、連続マトリックスを形成し、マトリックス内で膨潤することができる親水性材料の粒子を含まない生分解性ポリマーを備える堆肥化可能な材料の少なくとも1つの第2の層と、を有する材料を提供する。第1の層および第2の層およびさらなる層の少なくとも1つの生分解性ポリマーは、好ましくは、ポリラクチドおよびポリ(乳酸)、ポリグリコリドおよびポリ(グリコール酸)、酢酸プロピオン酸セルロース、およびポリヒドロキシアルカノエートから選択される。材料は、物品またはその一部(容器の壁など)を形成可能である層状製品などの製品に成形することができ、当該製品は、1mm超、特に1.2mm超、最大25mmまたはそれ以上、通常は50mm以下の、厚さを有する。層状製品は、工業用堆肥化条件で分解可能である。
【0089】
一実施形態では、材料は、水性および油性製品を含む様々な材料のための、包装用の物品、特に閉蓋付瓶などの容器中で使用される。
【0090】
一実施形態では、複合材料を製造する方法は、110°C超、特に120°C超、例えば、130°C超、特に150°C超または155°C超の融点を有する熱可塑性ポリマーを提供するステップを含む。一実施形態では、融点は、320°C以下、例えば、250°C以下、特に230°C以下である。好ましくは、熱可塑性ポリマーは生分解性ポリマーであり、0.5mmを超えるふるい分けサイズを有する非フィブリル化木材粒子、少なくとも木材粒子の一部を提供し、複合材料溶融物を形成するために、熱可塑性ポリマーを木材粒子と重量で35:65~80:20の混合比で溶融混合し、溶融物を冷却する。一実施形態では、そのような熱可塑性ポリマーは、110°Cを超える、特に150°Cまたは155°Cを超える融点を有する生分解性ポリマーである。
【0091】
溶融物が所定の形状を有する物品に成形される金型で冷却工程を実施することが好ましい。通常、熱可塑性ポリマーは、細かく分割された粒子またはペレットの形で、乾燥混合物の形の非フィブリル化木材粒子と一緒に、溶融加工ポリマー処理装置の供給ゾーンに供給される。熱可塑性ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーとして、ニートポリマーの形で供給される。さらなる実施形態は、(スレート様鉱物顔料を提供する、および)鉱物顔料を木材粒子および熱可塑性ポリマーと溶融混合するステップを含み、鉱物顔料の量は、熱可塑性ポリマーおよび木材粒子の総重量から計算して、0.1~40重量%である。
【0092】
熱可塑性ポリマー、木材粒子、および鉱物顔料様スレート、を含むブレンドまたは混合物は、所定の物品に射出成形することによって処理される。一実施形態では、構成成分は物理的に混合され、スクリュー混合ゾーンを有する射出成形機のホッパーに供給される。ポリマーの分解を低減または防止するために、成分は、通常約10分未満に相当する限られた時間の間、スクリュー内で溶融混合にさらされる。処理温度は、ポリマーの分解温度より低く保たれる。PLAの場合、最高温度230°Cが好ましい。処理中のポリマーの分解を低減または防止するために、好ましい実施形態では、少なくとも20:1のL/D比を有するスクリューが使用される。溶融物を所定の形態の物品に成形するために、金型が使用される。金型温度は一般に、ポリマーのガラス転移温度よりも低い。PLAの場合、約25~60°Cの温度が好ましく、アモルファスPLAの場合、好ましい範囲は約35~55°Cである。射出成形中に使用される圧力は、通常、50から150バールの範囲、例えば、約80から120バールであり、背圧は、50から100バールの範囲である。
【0093】
溶融加工中、一般に、ポリマー材料および木材成分の分解温度よりも低い温度を維持することが好ましい。こうして、好ましい実施形態では、材料は、230°C未満、特に220°C未満の温度で処理される。
【0094】
組成物の熱特性は、鉱物成分の添加によって変更および改善することができる。こうして、タルクや粘土などのスレート様の鉱物顔料を使用すると、バリア特性が向上するだけでなく、耐熱性も向上する。これにより、200oCを超える温度でも木材粒子を熱分解することなく、木材粒子とポリマーの混合と処理が可能になる。
【0095】
本複合材料は、ガス、液体、およびオイルバリアの組み合わせ特性を示す。材料自体の特性は良好であるが、溶融物の表面にバリアコーティングを施すことにより、成形品のバリア特性をさらに向上させることができる。特に、コーティングは、冷却された溶融物の表面、または複合材料から成形された物品の表面に適用される。
【0096】
コーティングは、多成分射出成形によって製造され得る。そのような方法の一般的な例は、2成分(以下では「2K」とも略される)処理方法、好ましくは容器の製造に使用されるのと全く同じ材料からの2K射出成形による処理方法である。同じ材料で製造された2つの層の間の接着は理想的なものであり、継ぎ目は見られない。ポリマーコーティング層の厚さが0.8mmの場合、コーティングされた容器は100重量%ポリマーと同等の撥水性を示す。
【0097】
多成分射出成形は、3、4、またはそれ以上の成分の成形(3K、4Kなどの成形)をも備え得る。
【0098】
上記に基づき、一実施形態では、連続マトリックスを形成する生分解性ポリマーとその中に混合して吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子とを組み合わせて備える堆肥化可能材料の第1の層によって、および連続マトリックスを形成し吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子をより少なく含有しまたは実質的にそれらを含まない生分解性ポリマーを備える堆肥化可能材料の第2の層によって、形成される壁を有する、化粧品用の容器を製造する方法は、
連続マトリックスを形成し、吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子をその中に混合する、生分解性ポリマーを含む第1の混合物を形成するステップと、
連続マトリックスを形成し、吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子の含有が少ない、生分解性ポリマーを備える、第2の混合物を形成するステップと、
当該第1および当該第2の混合物を射出成形によって処理して、例えば、第1と第2の混合物は、多層の「サンドイッチ」タイプの壁構造を形成するように処理される、当該第1および当該第2の混合物の層を重なり合う配置で備える容器壁を形成するステップと、を含む。
【0099】
第2の実施形態では、連続マトリックスを形成する生分解性ポリマーとその中に混合して吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子とを組み合わせて備える堆肥化可能材料の第1の層によって、および連続マトリックスを形成し、吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子を含まない生分解性ポリマーを備える堆肥化可能材料の第2の層によって、形成される壁を有する、容器などの成形物品を製造する方法は、
連続マトリックスを形成し、吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子をその中に混合する、生分解性ポリマーを含む第1の混合物を形成するステップと、
連続マトリックスを形成し、吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子の含有が少ない、生分解性ポリマーを備える、第2の混合物を形成するステップと、
当該第1および当該第2の混合物を射出成形によって処理して、例えば、第1と第2の混合物は、多層の「サンドイッチ」タイプの壁構造を形成するように処理される、当該第1および当該第2の混合物の層を重なり合う配置で備える容器壁を形成するステップと、を含み、
ここで、第1の層および第2の層のうちの少なくとも1つおよび任意のさらなる層の生分解性ポリマーは、ポリラクチドおよびポリ(乳酸)、ポリグリコリドおよびポリ(グリコール酸)、酢酸プロピオン酸セルロース、およびポリヒドロキシアルカノエートから選択される。
【0100】
第2の層は、水との接触から第1の層を一時的に保護し、壁の分解の開始を遅らせる。例えば、第2の層が純粋なPLAなどの膨潤性木材粒子を含まない熱可塑性生体ポリマーで構成されている場合、複合第1の層はPLA層を浸透するまで水と接触しない。水の浸透に必要な時間の長さは、第2の層の厚さと温度によって異なるが、通常、最大12か月の時間が可能である。
【0101】
本製品の特性は、製品に使用されている複合材料のトポグラフィーによって影響を受けることがわかっている。さらに、表面粗さが大きいほど、本WPCの吸水値が高くなることが見出された。これにより、材料の生分解が促進され、生分解速度が向上する。木材含有量が高いほど、WPCの表面粗さが高くなることも観察されている。これは、射出成形品の表面にある木材の量が多いためである。
【0102】
したがって、一実施形態では、上記で言及された第2の層は、ポリマー中の木材または他の天然材料を含まないように提供される。そのような実施形態によって、PLAまたは別の生分解性ポリマーなどのポリマー成分の生分解速度は、純粋なポリマーから作られたピースがより滑らかな表面であるため、低下する。
【0103】
一実施形態では、第1の層の反対側の第2の層の表面は滑らかである。本文脈では、「滑らかな」とは、ISO4287に従って決定された、表面粗さ(Ra)が1μm未満の表面を意味する。このような容器の表面は、通常、30重量%未満の木材を含む木材-PLA複合材料で形成されており、水とエタノールの吸収に対して最大6か月間安定している。
【0104】
対照的に、テストでは、30重量%を超える木材粒子を含む木材-PLAの複合材料で形成され、ISO4287で決定されたRa値が1.1μmを超える容器は、急速に水を吸収し、それらが瓶の内面を形成するとき、水とエタノールの吸収に対して6ヶ月間安定しないことが示されている。
【0105】
以下の例が示すように、木材-PLA複合材料で形成され、射出成形された容器壁を備えた容器は、ISO4287に準拠して、内面の粗さが0.4μm以上、外面の粗さが2.0μm以上の時、堆肥化の要件を満たす(ISO13432で指定されたフレームワークに従って好気性工業用堆肥中で12週間試験を行った)。
【0106】
上記に基づいて、一実施形態では、容器の内部または容器の外側のいずれかに面する第2の層の表面は、目に見える木材粒子を含まないか、または実質的に含まない。そのような層は
【0107】
さらに、一実施形態では、容器の内部に面する層の表面は、10重量%以下の木材粒子を含有する。
【0108】
高温では、第1の層を構成する本明細書で研究された組成物の吸水レベルは、第1週で3~4重量%であった。吸水率の差は、1か月のテスト期間中に劇的に増加した。堆肥化の観点からの最良の結果は、成形瓶の表面品質を改善するステアリン酸亜鉛および無水マレイン酸で修飾されたPLAを含有する化合物で達成された。
【0109】
表面品質は、射出成形前の原材料の水分量に大きく依存する。ポリマーの処理温度が200°Cに近い場合、この温度(100°C)では水がポリマーから沸騰するため、ポリマーに含まれる水分レベルが問題を引き起こし得る。水が沸騰すると、気泡の形の蒸気が成形品の内部に閉じ込められる。成形品が冷えて金型内で固化すると、完成品にスプレイマークが作成される。また、木材は成形プロセスで問題となる材料である。180°C~220°Cの射出成形温度では、テルペンとその誘導体、α-ピネンおよびβ-ピネン、低分子量アルデヒドなどの木材の揮発性有機成分(VOC)が、生成された製品にマイクロバブルを引き起こし、使用中の高い吸水率になり得る。さらに、木材の熱分解反応は酢酸のような脂肪酸の形成を引き起こし、金型の部分の腐食を引き起こし、表面の滑らかさの質を低下させる。
【0110】
一実施形態では、木材粒子、例えば、木材チップ中の水分量(「含水量」)を、250ppm未満、例えば、50ppm未満、特に30ppm未満に低減する必要があり、射出成形前のPLA中の水分含有量は、それぞれ500ppm未満、特に250ppm未満に低減する必要がある。
【0111】
一実施形態では、木材の低水分レベルは、木材チップなどの木材材料を真空中、105°Cで4時間乾燥させることによって達成される。前の実施形態と組み合わせることができる一実施形態では、ポリマー顆粒は、ガラス転移点に近いが好ましくはガラス転移点より低い温度で、1~12時間、例えば、デシカント式空気乾燥機内で乾燥される。したがって、PLAの場合、粒状形態のポリマーは、例えば、デシカント式空気乾燥機内で60°Cで4時間乾燥される。
【0112】
射出成形は、プラスチック業界で最も一般的な加工技術の1つである。これは高速プロセスであり、多数の同一の3次元製品を製造するために使用される。成形品は、溶融プラスチックを金型に射出して冷却することで製造される。
【0113】
一般に、木材粒子のさまざまな含有量を有する木材-PLA-複合材料の射出成形は、以下のように実施することができる。
【0114】
材料はホッパーから加熱バレルに供給され、加熱バレルの温度はプラスチックの仕様に従って制御され、材料が溶融する。バレル部にあるスクリューの回転運動により、溶融物は機械内を移動する。さらに、射出成形機のスクリューは熱を供給し、材料を混合し、射出圧力を維持する。溶融材料はバレル部からランナーシステムに輸送され、そこから溶融プラスチックは冷却された金型に注入されて最終製品が形成され、材料が冷却される。
【0115】
一実施形態では、原材料成分は、乾燥後、例えば、上で説明したように実施され、射出成形ラインホッパーに別々に供給される。
【0116】
一成分射出成形では、1種類の材料のみを使用して製品を製造する。ただし、複数の材料を含む部品を作成するためのいくつかの手法がある。多成分射出成形はその一例である。多成分成形では、2つ以上の材料を同じ部品に使用できる。材料は、2つ(またはそれ以上)のバレルから同じ金型に射出される。
【0117】
木材は、特に融点が180°Cに近いPLAなどのポリマーと組み合わせると、高温で燃焼する傾向がある。木材原料が1mmを超えるサイズのふるい分け木材チップと通常100マイクロメートル以下のふるい分けサイズを有する木粉との両方を備える、木材およびポリマー混合物を処理するときにも、燃焼が起こり得ることが見出された。このような混合物のせん断速度は高く、不均一になり、射出成形によって形成された製品の構造特性を損なう。ゲート領域では、高温領域が材料に形成される可能性があり、摩擦の増加により木材が燃焼し、ポリマー成分(熱可塑性材料)の変色と分解が発生する。
【0118】
したがって、一実施形態では、本木材-プラスチック複合材料を形成するための木材-ポリマー混合物の射出成形は、材料内の高温領域の形成を回避することによって実施される。
【0119】
一実施形態では、射出成形は、射出された材料内で均一なせん断速度を維持することによって実行される。
【0120】
一実施形態では、射出成形は、ニードルゲートシステムを使用して実行される。
【0121】
一実施形態では、射出成形金型およびホットランナーシステムは、原材料に寸法的に特別に適合されている。例えば、1~2mmの範囲のふるい分けサイズを持ち、一般に12.25cm3などの、5~25cm3の体積を有する瓶のキャップなどの厚壁の物体を製造することを目的としたPLAペレットおよび木材粒子の場合、ノズルゲート直径の好ましい最小サイズは2.5mmであり、対応するホットランナーシステムの最小直径は9mmである。そのような寸法は、ホットランナーシステムを通る材料を含有する木材粒子の流を改善するであろう。
【0122】
一実施形態では、PLAなどの生分解性ポリマーは、最終製品中にアモルファス状態で存在する。PLAなどの生分解性ポリマーをアモルファス状態で提供することは、材料の迅速な分解を達成するために有益である。また、美的理由からも有益である。
【0123】
一実施形態では、材料の成形中の金型温度は、生分解性ポリマーのガラス転移点よりも低い温度に保たれる。したがって、Tgが60°CのPLAの場合、温度は通常、その温度より低く保たれる。一実施形態では、PLAの場合、金型温度は25~40°Cの間に保たれる。材料の温度をガラス転移点より低く維持することにより、生分解性材料をアモルファス状態に維持することができる。
【0124】
一実施形態では、射出成形に使用される金型の空洞は、射出段階中に完全に満たされる。好ましくは、金型は、層流、特に広いフローフロントを有する層流で射出成形することにより、溶融ポリマーを金型に供給することによって充填される。
【0125】
一実施形態では、射出成形は、ストリームのフローイング(噴射)を回避することによって実行される。
【0126】
金型の充填は、ファウンテンフローとソリッドフローに分けることができる。ファウンテンフローは熱可塑性ポリマーに典型的である。これは溶融物が金型の壁に接触した結果であり、放物線状のフローフロントが原因で発生する。
【0127】
冷えた金型と接触しているプラスチックの外皮は急速に凍結するが、中央のコアは溶融したままである。追加の材料が注入されると、それはこの中央コアに流れ込み、すでにそこにある材料を置き換え、新しいフローフロントを形成する。この変位した材料の流は、順方向の流と外向きの流の組み合わせである。外向きの流は壁に接触して凍結し、外皮の次のセクションを形成し、順方向の流れは新しい溶融コアを形成する。
【0128】
凍結層はフローフロントの膨張によって形成されるため、せん断応力が低く、分子配向のレベルが非常に低くなる。初めに、凍結層は非常に薄いので、熱は非常に急速に失われる。
【0129】
ソリッドフローは、高度に充填されたポリマー化合物および熱硬化性樹脂に典型的である。この流によって、溶融物は低粘度の樹脂の層上を滑る。フローフロントは、より圧縮されていない溶融物とそれに続くコンパクトな溶融ゾーンからなる。強化粒子の配向は不可能である。
【0130】
木材複合材料上の追加のポリマー層は、2K射出成形技術を使用して製造できる。オーバーモールディングと比較した2K射出成形の主な利点の1つは、射出されるポリマーがまだ高温であり、まだ収縮していないことである。これにより、第2の成分に焼損が形成されるリスクが実質的に排除される。さらに、表面は「最初のまま(virginally)」清浄なままであり、良好な分子接着を可能にする。別の重要な利点は、得られるサイクルタイム、一定のプロセス、および手動挿入が不要であるという事実であり、こうして、第1の成分を損傷するリスクを回避する。2K技術を使用すると、多層の「サンドイッチ」タイプの構造を作成可能である。
【0131】
オーバーモールディングは、複数の材料を1つの部品または製品にシームレスに組み合わせる独自の射出成形プロセスである。複合瓶は、シングルショット(インサート成形)およびツーショット(マルチショット成形)技術のいずれかを使用して、薄い外層で覆われている。
【0132】
一実施形態によれば、本木材生分解性ポリマー複合材料の射出成形は、以下の主要な処理パラメータを使用して実行される。
【0133】
射出成形の加工条件 スロート 40-60°C
供給ゾーン 150-160°C
圧縮ゾーン 160-170°C
均質化ゾーン 175-190°C
マシンノズル 175-190°C
背圧 50-100bar
ホットランナーノズル 200-220°C
および押し出し 20-25°C
Tmold,前面 40-45°C
Tmold,背面 一般的な設定では最適化が必要になり得る。
一般的なアドバイス コールドランナーおよびホットランナーの両方
【0134】
本材料は、化粧品または食品用の硬質壁または半硬質壁の容器などの容器を製造するのに適しており、内容物は冷たくても暖かくてもよく、通常、内容物は0~100°Cの温度、例えば、1~80°Cを有し得るが、本容器は氷点下の条件でも使用できる。一実施形態では、容器は、-45°C…-0°C、特に-25°C…-0°Cで使用することができる。
【0135】
本明細書に記載の実験結果によれば、堆肥化性の改善された特性は、PLAによって例示される生分解性ポリマーを天然材料とブレンドすることによって達成される。
【0136】
次に、本発明の特定の実施形態を、例を参照して説明する。以下の非限定的な例は、本技術の実施形態を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0137】
射出成形機のホッパーへの供給前に、ポリマーおよび木材チップをデシカント式乾燥機で100~105°Cで4時間乾燥した。
【0138】
ポリマーは、99%を超えるPLLA異性体と1%未満のPDLA異性体とを含有するPLAを備えていた。木材チップを、物理的寸法が約2mm×1mm×1mmになるように選択した。
【0139】
製品の品質が要件を確実に満たすように、原材料の含水量を250ppm未満に減らした。
【0140】
ホッパー内では、乾燥した材料が射出成形機のバレル部に供給され、ここで温度を155~185°Cに設定した。次に、木材チップおよびポリマーの溶融混合物をホットランナーシステムに供給し、温度を195~210°Cに設定した。次に、効率的な冷却を確保するために温度を25~40°Cに設定した金型に材料を射出した。機械の背圧を50~100barに設定した。
【0141】
以下からわかるように、容器の形で製造した部品を、堆肥化可能性およびその他の特性について試験した。
【0142】
本製品の堆肥化可能性は、ISO13432規格で与えられた枠組みに従って、好気性工業用堆肥中で12週間の実践関連条件下(崩壊)で測定した。製品の劣化は、崩壊法を使用して評価した。本木材複合材料の堆肥化可能性を調査するために、直径7cm、高さ3cm、最大壁厚8mmの化粧品瓶を、次の複合材料レシピを使用して射出成形した。
【0143】
【0144】
図2aから2cは、堆肥化試験前の3つのサンプル瓶の写真を示している。
【0145】
簡潔に言うと、瓶を堆肥材料が入ったステンレス鋼のカプセルの内部に挿入し、12週間工業用堆肥に埋めた。サンプルの変化を、開始時、堆肥化期間中に2回および堆肥化期間後に1回調べた。サンプルの乾燥質量を測定し、ISO16929に準拠したサンプルの崩壊をその時点で定義した。崩壊したサンプルを含むカプセルの内容物は、試験後にふるいにかけられた。
【0146】
結果によると、サンプルは工業用堆肥化設備で採用された条件で崩壊した。17日間の堆肥化の後、9つのサンプルすべてが断片へと崩壊し、乾燥質量を測定できなかった。12週間のテスト期間中に、すべてのサンプルが1~2mmのサイズの断片に崩壊し、6つの対照プラスチックサンプルに変わりはなかった。ふるい分け試験の結果は、サンプルの90%が2mm未満の粒子サイズに崩壊し12週間で工業用堆肥化環境に十分に到達可能である、という仮定を裏付けている。
【0147】
図3は、工業用堆肥中のサンプルCom-2の分解を示す写真を示している。
【0148】
結果は、本材料から作られた厚い壁(最大8mm)を備えた木製の複合瓶が、崩壊および揮発性固形分に関するEN13432標準要件を満たしていることを示している。これは、標準要件を超える最大肉厚1.2mmの既存のPLAベースのブレンドの以前の堆肥化可能性の結果と比較すると、大幅な改善と見なされ得る。
【0149】
PLA/木材ブレンド(以下、略称「Sula」と呼称する)から作られた本瓶の特性は、化粧品包装の品質要件を満たし、既存のPLAベースのブレンドよりも大幅に改善された堆肥化性を提供する。これは、特別なサイズの木材チップと生分解性ポリエステルマトリックスの組み合わせによって実現される。吸水中の木材粒子の膨潤は、ポリマーマトリックスの亀裂および断片化を加速する。今のところ、木材の粒子は、化粧品の包装としての使用をサポートする瓶に十分な機械的、物理的、化学的特性を生み出すのに十分小さい。より小さな粒子、すなわちおがくずは、吸水および膨潤による堆肥化性を効率的に高めることはないが、より大きな粒子は、製造プロセスに障害を引き起こし、分解を過度に固定するであろう。
【0150】
通常の室温および圧力条件での社内試験では、瓶に水を充填し、瓶の崩壊、膨潤、および美観に対する重量増加の影響を追跡した(表2)。各サンプルセットは3つの瓶で構成されている。
【0151】
取水試験で使用した瓶の概略図を、取水試験で使用した瓶の断面を示した
図4に示す。
【0152】
示されるように、瓶は底とキャップ部分で構成されている。底の厚さは3.5mm、ねじ部の壁の厚さは4.1mm、2.3mmである。上記で調査した瓶の内部表面積は約40cm2である。
【0153】
【0154】
純粋なPLA瓶(サンプル1)の1か月間の取水量はわずか0.4重量%であった。瓶の物理的変化も美的変化も検出されなかった。瓶に10重量%の木材チップが入っていると、取水量はゆっくりと1重量%のレベルまで増加し、1か月の間にそこで完了した。40重量%の木材チップを有する瓶の取水量は5重量%のレベルまで増加し、強い寸法変化を引き起こし、瓶は底部から漏れていた。瓶はひびに満ちていたが、一体のままであった。驚くべきことに、0~1mmのふるい分けサイズを有する40重量%の木材チップを含有するサンプルは、外観に変化がなく、わずか3重量%の水のみを吸収した。
【0155】
テストは、純粋なPLA瓶が室温で数ヶ月以内に生分解も崩壊もしないことを明確に示している。木材チップの量とチップサイズは、ここで調査した瓶製品の劣化特性に決定的な影響を及ぼす。
【0156】
瓶材料の木材重量パーセントが30重量%未満の場合、取水は非常に遅く、30日以内で3重量%未満のままである。おがくずを充填材として使用した場合にも同様の現象が検出された(サンプル6)。瓶に40重量%の木材が入っていても、崩壊は検出されなかった。おがくずは、木材チップの周りのPLAマトリックスを破壊し得る十分な膨潤が不可能である。また、40重量%の木材を含有する配合ペレットで製造された瓶は、非配合木材で製造されたサンプル5と比較して、1パーセントポイント低い取水量を示した。配合瓶の吸水率が低いことは、押出成形ベースの配合プロセス中の木材チップのサイズの縮小に関連している。配合は、PLAの特性(モル質量値など)に影響を与えないことに注意されたい。
【0157】
【0158】
サンプルセット5(木材40重量%)の吸水率は1.5g/33日/40cm2→1.13mg/(day・cm2)であり、サンプルセット3(木材20重量%)の吸水率は1.09g/33日/40cm2→0.82mg/(day・cm2)であった。純粋なPLAの場合、吸収値はわずか0.08g/33日/40cm2→0.061mg/(day・cm2)であった。
【0159】
上記の室温での試験も、工業用堆肥化条件を模倣した50°Cで実施された。温度が22から50°Cに上昇すると、純粋なPLA瓶の取水は0.11から0.5に増加した。取水は、高温で4倍速かった。瓶を含む木材の吸水率の増加はわずかに低く、初期から約3.5倍の速さであった。
【0160】
図6は、1週間の調査期間中の瓶の重量パーセントでの取水量を示す棒グラフである。
【0161】
上記の結果に基づく12週間の取水量の大まかな外挿は、50°Cで純粋なPLAからなる瓶の取水量が約6重量%であり、10重量%の木材を含有する場合、取水量は約11重量%であることを示している。30重量%の木材を含有する瓶の推定取水量はすでに43%にもなる。我々の社内テストでは、15重量%の水を吸収した瓶は、一体のままであった。
【0162】
総移行テストを使用して、EN1186-9およびEN1186-14に準拠した充填方法により、さまざまな模擬物質と接触した材料がどの程度不活性であるかを調査した。10%エタノール、3%酢酸、50%エタノールなどの水性模擬物質を使用した。そのうち、酢酸はpH 4.5未満の条件をシミュレートし、50%エタノールは水-油エマルジョンなどの部分的に親油性の条件をシミュレートする。植物油の代わりに、非極性溶媒を使用して脂肪性食品をシミュレートした。すなわち、95%エタノールおよびイソオクタンを使用した。選択した試験条件は、40°Cで10日間(20°Cで2日間のイソオクタンを除く)であり、これは、最大70°Cの最大2時間の加熱または最大100°Cの最大15分間の加熱を含む、室温以下での長期保管に対応する。食品の接触を目的としたプラスチック材料に関する規制(EC)10/2011によると、総移行量は10mg/dm2を超えるべきではない。
【0163】
図6の結果は、プレーンPLAで作られた瓶が、すべての模擬物質と接触するテスト条件下で不活性であることを示している。10~20重量%の木材を有する木材複合材料(Sula10およびSula20)は、すべての模擬物質と接触しているPLAとほぼ同じくらい不活性であった。30重量%の木材を有する複合材料(Sula30)は、エマルジョン模擬物質の50%エタノールとわずかな反応しか示さなかったが、40重量%の木材を有する複合材料(Sula40)は、すべての水性模擬物質、特に50%エタノールと3%酢酸との反応性の増加を示した。
【0164】
層状壁構造のサンプルカップは、2成分(2K)射出成形を使用して製造した。サンドイッチ法と2壁法の両方を使用した。
【0165】
一実施形態では、サンドイッチ法を使用して、3つの層を有する壁を製造し、最も外側の層と最も内側の層とは同じ材料であり、それらの間に第2の材料の層を密封した。この場合、最外層と最内層はPLAであり、それらの間の中間層は木材複合材料(特定の例では、それぞれ「Sula20」と「Sula30」)であった。したがって、木材複合層はすべての側面からPLAの層によって完全に囲まれていた。サンドイッチ法の一実施形態では、PLA層は、0.5~1mm、特に約0.8mmの厚さを有していた。
【0166】
2壁法では、カップの内側にPLA層、外側に木材複合層の2つの層のみが生成された。この方法では、より厚い層が得られ、この特定の場合、PLA層の厚さは約1mmであった。
【0167】
表3からわかるように、両方の方法を使用して、すべての模擬物質を使用したプレーンPLAに匹敵する不活性を回復することに成功した。この場合、両方の層の厚さが同じくらい効果的であった。
【0168】
【0169】
Sula40材料表面の移行結果と顕微鏡画像(
図7)に基づいて、材料の不活性は表面上の木材粒子の露出によって大きく影響されると結論付けられた。木材粒子の上にポリマーの保護層がない場合、粒子は直接模擬物質にさらされ、湿気の侵入を受けやすくなる。移行データに示されているように、表面に露出した木材粒子の割合は、材料の吸収挙動に直接影響する。木材の含有量が多いほど、吸収が高くなる。しかし、木材複合層の上に0.8mmのPLAの保護層があると、吸収が減少することが示された。
【0170】
本発明において、生分解および不活性のバランスは、表面上の保護PLA層に対する木材粒子の表面露出によって調節される。
【0171】
図7aおよび7bは、Sula40木材複合サンプルの顕微鏡画像である。
図7aは、23°Cで94日間オイルレッドO染色水と接触した後の表面を示し、
図7bはその断面を示す。
【0172】
画像は、木材粒子が表面に露出していることを示す(赤く染まっている)。断面画像は、表面の木材粒子だけが染色水と接触して赤く染まったのに対し、壁の内側の木材粒子は染色水を吸収していないことを示している。
【0173】
瓶製品の表面の滑らかさは、複合材料の吸水率と分解速度とに大きく影響する。コーティングおよびコア材料の間の接着を改善するために伝統的に使用されているプラズマなどの複合表面への処理は、吸水レベルを1.66mg mg/(day・cm2)に増加させ、2週間以内に瓶に水が浸透した。
【0174】
上で説明したように製造されたが、木材含有量が0~40重量%であり、ある場合にはさらに白色顔料(PCC)を含有する5つの瓶を、表面の滑らかさについて分析した。
【0175】
表面の滑らかさは、WykoNT9100光学プロファイリングシステムを使用してISO4287に従って決定された。
【0176】
試験材料の表面粗さの値は、金型温度が50°C未満のときに得られた。
【0177】
金型自体のVDI粗さ値は20~30であり、これは1~3マイクロメートル(Ra)に相当する。
【0178】
結果を
図8に示し、さまざまなサンプルの表面をSEM顕微鏡写真として
図9Aから9Dに示す。
【0179】
図8の棒グラフからわかるように、ニートPLAポリマーの場合、容器の内面(「内側」)の粗さは約0.35μm、外面(「外側」)は約2.05μmであった。これらの値は、金型の対応する粗さの値を反映している。瓶の外面と一致する型の表面は
【0180】
木材-PLA複合材料の場合、粗さは木材の含有量に応じて増加する。これは、最初の3つのバーの組から表される。木材-PLA複合材料の総重量から計算して、木材粒子の10%については、内側が0.4μmを超え、外側が2.1μmを超えるようにわずかに増加している。30%の木材の場合、粗さはすでに内側で1μmを超え、外側で2.3μmを超える。40%の木材の場合、内側の粗さは約1.2μm、外側の粗さは約3.15μmである。PCCを約5%追加することで、4番目の組のバーからわかるように、外側の粗さをいくらか減らすことができる。こうして、内側の粗さは約1.25μmだが、外側の粗さは約2.3μmである。
【0181】
図9A~9Dの顕微鏡写真は、木材含有量(木材粒子の含有量)に応じて、内面の表面のテクスチャがどのように変化するかを示している。
【0182】
堆肥化中、速い吸水速度は有益な機能だが、例えば化粧品を使用する前に12か月間瓶に保管する必要がある場合はそうではない。50重量%エタノールの移行結果は、興味深いことに、瓶の表面のポリマーの薄層が移行を承認可能なレベルまで減少させたことを明らかにした(表3)。複合材料の木材含有量を30重量%に減らした場合にも、同じ結果が得られた。40重量%の木材を含有する瓶内の木材チップは表面の近くにあり、液体と直接接触すると、チップは数週間以内に膨潤し始め、マイクロクラックが形成され、最終的には瓶が急速に分解する。さらに、木材含有量が減少した場合、または木材チップのサイズが小さすぎる場合、膨潤はポリマーマトリックスにわずかな亀裂を引き起こすだけであり、構造的崩壊は起こり得ない。
【0183】
粗さ試験の結果に基づいて、そして実施された分解試験を考慮して、試験の実施形態によれば、表面粗さの値が容器の内面について0.4を超え容器の外面について2.0μmを超えるとき、本木材-PLA複合材料で構成された瓶は堆肥化の要件を満たすと結論付けることができる。
【0184】
以下に、本技術のいくつかの実施形態を開示する。
【0185】
1.連続マトリックスを形成する生分解性ポリマーとその中に混合する吸水時にマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子とを組み合わせて備える堆肥化可能材料の第1の層によって、および連続マトリックスを形成しマトリックス内で膨潤可能な親水性材料の粒子を含まないまたは実質的に含まないまたは第1の層よりも実質的にそれらの含有量が少ない生分解性ポリマーを備える堆肥化可能材料の第2の層によって、形成される堆肥化可能な木材複合材料。
【0186】
2.吸水時に当該マトリックス内で膨潤可能な親水性材料の当該粒子は、木材または一年生植物または多年生植物および植物残留物など他のリグノセルロース材料の機械的処理によって得られる粒子から選択される、実施形態1に記載の材料。
【0187】
3.第1の層の厚さは、第2の層の厚さよりも大きく、特に第1の層の厚さ対第2の層の厚さの比は、約1.1:1~100:1、例えば1.2:1~10:1である、実施形態1または2に記載の材料。
【0188】
4.第1の層は、第1の層の総重量に基づいて計算された、5~50重量%、特に15~40重量%の親水性材料の粒子を備える、実施形態1から3のいずれかに記載の材料。
【0189】
5.第1の層、第2の層および第3の層のうちの少なくとも1つの生分解性ポリマーは、ポリラクチドおよびポリ(乳酸)、ポリグリコリドおよびポリ(グリコール酸)、酢酸プロピオン酸セルロース、またはポリヒドロキシアルカノエート、例えば、ポリヒドロキシブチレート、を含むポリエステルなどの生分解性ポリエステルの群から選択される、実施形態1から4のいずれかに記載の材料。
【0190】
6.次の仕様、すなわち、堆肥において、58°Cでの材料の生分解が最大6ヶ月の期間内に起こり、生分解のレベルは、層の総重量の90%レベルに達し、および58°Cでの層の崩壊は12週間以内に発生する、仕様を満たす、実施形態1から5のいずれかに記載の材料。
【0191】
7.第1の層は、生分解性熱可塑性プラスチックと混合された粗い木材粒子を備え、木材粒子、例えば木材チップの含水量は、生分解性熱可塑性プラスチックと混合する前に、250ppm未満、例えば50ppm未満、特に30ppm未満まで低減された、実施形態1から6のいずれかに記載の材料。
【0192】
8.厚さが1mmを超え、特に1.2mmを超え、最大25mm以上の層状製品を有する層状製品、好ましくは、工業用堆肥化条件で分解可能である層状製品などの製品に成形され、実施形態1から7のいずれかに記載の材料。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本製品は、水性および油性製品を含む様々な材料のための、閉蓋付瓶などの包装および容器として使用され得る。そのような製品は、食品、化粧品および医薬品によって、特に油、エマルジョン、クリームおよびゲルを含有するかまたはそれらからなる食品、化粧品および医薬品によって、例示される。
【0194】
本製品は、蜂蜜やジャムなどの砂糖を含む天然または調理済み製品の保管または提供にも適している。それらはさらに乾燥物質、例えばいくつかの例を挙げると、粉乳または粉乳(練乳、粉乳)、ドライフルーツ、スープ、肉、魚、スパイス、お茶、ココア、コーヒーなど、粉末または乾燥した天然のまたは調理済みまたはその他の方法で調製された材料の形で提供されるものに使用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0195】
【文献】米国特許第8722773号明細書(US8,722,773B1)
【文献】特開2002-113822号公報(JP2002113822)
【文献】国際公開第2015/049589号(WO2015/048589A1)
【文献】中国特許出願公開第101712804号明細書(CN101712804A)
【文献】米国特許出願公開第2013/253112号明細書(US2013/253112A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/076014号明細書(US2016/076014A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/130439号明細書(US2002/130439A1)
【文献】欧州特許出願公開第0319589号明細書(EP0319589A)
【文献】米国特許出願公開第2018/215972号明細書(US2018/215972A1)
【文献】中国特許出願公開第107932874号明細書(CN107932874A)
【文献】特開2010-280152号公報(JP2010280152)
【文献】米国特許出願公開第2006/0267238号明細書(US20060267238A1)
【文献】米国特許第6,210,792号明細書(US6,210,792B1)
【文献】米国特許第6,632,863号明細書(US6,632,863B2)
【文献】カナダ国特許出願公開第1171656号明細書(CA1171656A)
【文献】国際公開第2015/049589号(WO2015/048589A1)
【非特許文献】
【0196】
【文献】Kale,G.,Kijchavengkul,T.,Auras,R.,Rubino,M.,Selke,S.E.,Singh S.P.”Compostability of Bioplastic Packaging Materials:An Overview.”Macromolecular Bioscience 7(2007),255-277.