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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】耐圧型管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/08 20060101AFI20241220BHJP
   F16L 37/12 20060101ALI20241220BHJP
   F16L 21/04 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
F16L21/08 G
F16L37/12
F16L21/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023124384
(22)【出願日】2023-07-31
【審査請求日】2024-06-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311014705
【氏名又は名称】NJT銅管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】若林 広行
(72)【発明者】
【氏名】志賀 義則
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-029434(JP,A)
【文献】特開2003-307290(JP,A)
【文献】特開2012-077804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0200081(US,A1)
【文献】特開2011-012755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/08
F16L 37/12
F16L 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材質の被接続管体がその管端から挿入されて、固定せしめられる挿入孔を、少なくとも一方の端部側に有する筒状の継手本体と;前記挿入孔に挿入せしめられる前記金属材質の被接続管体の外表面に食い込んで、該被接続管体の引抜きを阻止する弾性変形可能な複数の係止爪を、該挿入孔の周方向に所定間隔を隔てて位置するように備えてなる、該挿入孔内に位置固定に配設される規制リングと;前記挿入孔の内面に設けられたネジ部に螺合されて、該規制リングを該挿入孔内に固定せしめる厚肉円筒状のネジカラー部材と;該ネジカラー部材よりも前記挿入孔の軸方向外側に位置して、該挿入孔内に露呈するように配設され、該挿入孔内に挿入される前記被接続管体の外面に接して、該被接続管体の外面と前記挿入孔の内面との間をシールするO-リングからなるシール手段と;前記継手本体の被接続管体挿入側の端部に螺合せしめられ、かかる螺合の進行によって、前記O-リングを前記挿入孔の軸方向に加圧・圧縮せしめることにより、該O-リングを径方向内方に膨出させて、前記被接続管体の外面に対する圧着性を高める、前記挿入孔に挿入される該被接続管体の挿通孔が軸方向に形成された筒体形状の加圧ブッシュとを有する耐圧型管継手にして、
前記規制リングが、前記継手本体の前記挿入孔内に位置固定に保持される所定幅の円環板形状のリング本体を有し、該リング本体の内周部から該リング本体の中心に向かって一体的に延びるように、そして相互に接触しない間隔において、前記複数の係止爪が周方向に配設されてなり、且つ該複数の係止爪が、その基部において屈曲せしめられて、前記継手本体の軸直角方向に対して30°~40°の傾斜角度(α 1 を為すように、前記被接続管体の挿入方向前方側に傾斜させられていると共に、前記ネジカラー部材が、該規制リング側の端部の内周縁部において、該規制リングの屈曲された係止爪の下側に入り込むように突出する環状突部を一体的に有し、且つ該環状突部が、該規制リングにおける屈曲された係止爪の傾斜角度(α 1 )より0°~10°小さな傾斜角度(α 2 で傾斜するテーパ面を有していることを特徴とする耐圧型管継手。
【請求項2】
前記挿入孔の内面に設けられたネジ部に螺合される前記ネジカラー部材にて、前記規制リングが、該挿入孔内面に形成された段付き部に当接せしめられて、挟持・固定されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の耐圧型管継手。
【請求項3】
前記規制リングにおける屈曲された係止爪が、その基部側より先端部に向かって所定幅で延びる舌片状形状において、設けられていることを特徴とする請求項1に記載の耐圧型管継手。
【請求項4】
前記ネジカラー部材の環状突部におけるテーパ面の傾斜角度が、20°以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐圧型管継手。
【請求項5】
前記規制リングにおける複数の係止爪が、隣接する係止爪の基部間に基部の幅以上の間隙が形成されるように相互に離隔されて、前記リング本体の内周部の周方向に配設されていることを特徴とする請求項に記載の耐圧型管継手。
【請求項6】
前記ネジカラー部材の環状突部が、該ネジカラー部材の内周面から直線的に外方に延びる円筒状内面と前記テーパ面とによって、三角形状の横断面形状を呈する形態において、設けられている請求項1に記載の耐圧型管継手。
【請求項7】
前記規制リングにおける屈曲された係止爪が、その先端が前記ネジカラー部材の内周面より径方向内側に位置するように、配設されていることを特徴とする請求項1に記載の耐圧型管継手。
【請求項8】
前記複数の係止爪の少なくとも一つが、その基部において、前記被接続管体の外表面に食い込む先端部の幅よりも挟幅となる細幅部を有していることを特徴とする請求項1に記載の耐圧型管継手。
【請求項9】
前記加圧ブッシュが、前記継手本体の被接続管体挿入側の端部内周部に設けたネジ部に螺合せしめられて、取り付けられるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の耐圧型管継手。
【請求項10】
前記加圧ブッシュが、その外周面においてローレット加工が施されており、そのローレット加工の部位を把持することにより、該加圧ブッシュの螺合操作が作業者の手によって行われ得るようになっていることを特徴とする請求項1に記載の耐圧型管継手。
【請求項11】
前記O-リングの複数が、隣接するO-リング間に環状のスペーサを介在せしめてなる形態において、前記挿入孔の軸方向に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の耐圧型管継手。
【請求項12】
前記規制リングの配設位置よりも奥部側の前記挿入孔の内面に設けられ、該挿入孔内に挿入される前記被接続管体が当接させられて、その移動が阻止せしめられるストッパ手段が、設けられていることを特徴とする請求項1に記載の耐圧型管継手。
【請求項13】
前記継手本体の両端部に、前記挿入孔がそれぞれ設けられており、それら挿入孔に対して、それぞれ、前記規制リングと前記ネジカラー部材と前記シール手段と前記加圧ブッシュとを用いて、前記被接続管体が挿入、固定せしめられることによって、2本の被接続管体が連結されるようになっていることを特徴とする請求項1乃至請求項12の何れか1項に記載の耐圧型管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧型管継手に係り、特に、空調機器における冷媒配管の如き、流体が高い圧力下で流通せしめられる配管の接続に好適に用いられ得る耐圧型の管継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体や気体等の流体を輸送する配管を、別の配管に接続したり、また目的とする機器に接続したりするために、ソケット、アダプタ、チーズ、T字型、Y字型、クロス型、90°エルボ等と称される各種の管継手が、広く用いられてきており、例えば水道配管や温水機器接続用配管、空調機器における冷媒用配管等の接続工事が、そのような管継手を用いて行なわれてきている。
【0003】
ところで、この種の管継手においては、接続されるべき配管(被接続管)と継手との接続に際して、それらをろう付けにより固着せしめるろう付け手法を採用することが、一般的であったのであるが、その作業時に火気を使用する必要があるために、天井裏の如き配管現場での管接続作業には、採用し難いものであるところから、それら被接続管と継手との接続に際して、従来のろう付けの如き火気を使用することなく、それら両者を機械的(メカニカル)に接続する管継手構造が、種々提案されている。
【0004】
例えば、単に被接続管を差し込むだけで連結が可能な継手構造として、特開2000-249268号公報においては、パイプと継手本体とを接続する際に、継手本体に形成した雄ネジに、押圧体に形成した雌ネジを螺合させて、それら継手本体と押圧体との間に、ロックリング等を挟持、固定せしめ、そして、接続されるべきパイプを、かかる押圧体内を通じて継手本体内に挿入すると共に、パイプの外周面にロックリングの規制片を係合させて、かかるパイプの抜止めを図るようにした継手が、提案されている。また、特開2019-90503号公報においても、継手本体の開口部にキャップ部材を螺合せしめると共に、それら継手本体とキャップ部材との間にロックリングを挟持、固定した状態において、連結されるべき管体を、キャップ部材を通じて継手本体内に差し込み、その外周面にロックリングの爪を食い込ませるようにすることによって、かかる差し込まれた管体の引抜きを規制するようにした管継手構造が、明らかにされている。
【0005】
しかしながら、それら従来の、被接続管を差し込む方式の管継手構造にあっては、かかる被接続管内を流通せしめられる流体の漏洩を阻止すべく、継手本体と、押圧体又はキャップ部材との間におけるシールと共に、被接続管と、押圧体又はキャップ部材との間におけるシールを含む、少なくとも2ヶ所にシール手段を設ける必要があり、そのために、管継手構造におけるシール構造が複雑となることに加えて、継手本体に対する押圧体やキャップ部材の螺合が緩んで、漏れが発生したり、被接続管が脱落したりする恐れも、内在するものであった。
【0006】
また、特開2003-42369号公報においては、ワンタッチ継手として、筒状の継手本体の一方の開口部内に、O-リング及び規制リングを順次挿入して配置せしめ、更にリング状の保持部材を挿入してなる状態において、継手本体の開口部の端部を内側にかしめることによって、保持部材をかしめ固定してなる形態の継手構造が明らかにされ、かかる継手本体の開口部内に、接続されるべきパイプを差し込むことにより、このパイプの外周面に、規制リングの規制舌の先端が食い込むようにして、かかるパイプの抜止めが阻止されるようになっている。しかしながら、そこでは、パイプの差込み方向における下流側に、O-リングによるシール機構が配設されることとなるところから、パイプの差込みによって規制リングを通過したパイプの外表面に擦傷が発生し、その傷が発生した表面において、O-リングによるシールが行なわれることとなるところから、シール特性が充分に発揮出来ないという問題を内在するものであった。
【0007】
しかも、上述の如き従来の挿入式の継手構造にあっては、継手本体の挿入孔に対して、被接続管を差し込むだけで、取り付けられ、この被接続管の引抜きに対する抵抗は、かかる被接続管の外周面に、ロックリングや規制リングの規制片乃至規制舌が食い込むことによって、実現されるものであるところから、空調機器における冷媒配管の如き、流体が高い圧力下で流通せしめられる配管において、その接続に必要とされる耐圧性や引抜き阻止力を、充分に発揮し難いという問題が、内在している。そして、そのような被接続管の引抜き阻止力を高めるべく、ロックリングや規制リングを複数段に設置したり、或いはそれらロックリングや規制リングにおける規制片乃至規制舌を高硬質化したり、高強度化したりすると、被接続管の挿入抵抗が過大となり、作業者の手作業によって挿入することが困難となる問題が生ずる。
【0008】
さらに、特開2022-29434号公報においては、管外径が大径となる被接続管体であっても、作業者の通常の力を用いて接続作業が可能な耐圧型管継手として、被接続管体が挿入される継手本体の挿入孔の内面に設けられたネジ部に螺合せしめられるネジカラー部材にて、規制リングを、かかる挿入孔内に位置固定に配設する一方、かかる規制リングの複数の係止爪を径方向外方に押し広げるようにして、該規制リング内に、所定の誘導筒体を配置せしめて、目的とする被接続管体が挿入せしめられたときに、かかる被接続管体の端部にて、誘導筒体を押圧して、挿入孔の奥部に押し込むようにすることにより、そのような誘導筒体に代わって、被接続管体を、規制リング内に嵌入、位置せしめることによって、被接続管体の外表面に複数の係止爪を食い込ませて、被接続管体の固定、保持を行うようにした構造が明らかにされている。
【0009】
しかしながら、それら従来の継手構造にあっては、被接続管体の引抜きを阻止するロックリングや規制リングは、継手本体の挿入孔内に、ネジカラー部材等の適当な固定部材にて固定、保持されるようになっていると共に、それらロックリングや規制リングにおける規制片乃至規制舌、又は係止爪が屈曲せしめられて、被接続管体の挿入方向前方側に傾斜させられて、かかる被接続管体の外表面に食い込むように、構成されているところから、被接続管体に大きな引抜き力が作用した場合において、その引抜き力に負けて、規制片乃至規制舌又は係止爪が引抜き方向に折れ曲がり、被接続管体が脱管してしまう恐れがあった。特に、被接続管の外径が大きくなる程、その抜け阻止力を大きくする必要があるのであるが、従来のロックリングや規制リングの配設構造では、それに充分に対応し得るものではなかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2000-249268号公報
【文献】特開2019-90503号公報
【文献】特開2003-42369号公報
【文献】特開2022-29434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、被接続管体の接続に際して、火気を使用することなく、また専用工具を用いる必要のない、優れた耐圧性を確保しつつ、被接続管体の引抜き阻止力をより一層有利に高めることの出来る耐圧型管継手を提供することにあり、また他の課題とするところは、小径の被接続管体から、大径の被接続管体まで、その接続を効果的に行い得るようにした耐圧型管継手を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、本発明は、上記した課題又は明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書の記載全体並びに図面に開示の技術内容に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0013】
そこで、本発明は、先ず、前記した課題を解決すべく、被接続管体がその管端から挿入されて、固定せしめられる挿入孔を、少なくとも一方の端部側に有する筒状の継手本体と;前記挿入孔に挿入せしめられる前記被接続管体の外表面に食い込んで、該被接続管体の引抜きを阻止する弾性変形可能な複数の係止爪を、該挿入孔の周方向に所定間隔を隔てて位置するように備えてなる、該挿入孔内に位置固定に配設される規制リングと;前記挿入孔の内面に設けられたネジ部に螺合されて、該規制リングを該挿入孔内に固定せしめる厚肉円筒状のネジカラー部材と;該ネジカラー部材よりも前記挿入孔の軸方向外側に位置して、該挿入孔内に露呈するように配設され、該挿入孔内に挿入される前記被接続管体の外面に接して、該被接続管体の外面と前記挿入孔の内面との間をシールするO-リングからなるシール手段と;前記継手本体の被接続管体挿入側の端部に螺合せしめられ、かかる螺合の進行によって、前記O-リングを前記挿入孔の軸方向に加圧・圧縮せしめることにより、該O-リングを径方向内方に膨出させて、前記被接続管体の外面に対する圧着性を高める、前記挿入孔に挿入される該被接続管体の挿通孔が軸方向に形成された筒体形状の加圧ブッシュとを有する耐圧型管継手にして、前記規制リングが、前記継手本体の前記挿入孔内に位置固定に保持される所定幅の円環板形状のリング本体を有し、該リング本体の内周部から該リング本体の中心に向かって一体的に延びるように、前記複数の係止爪が配設されてなり、且つ該複数の係止爪が、その基部において屈曲せしめられて、前記継手本体の軸直角方向に対して所定の傾斜角度を為すように、前記被接続管体の挿入方向前方側に傾斜させられていると共に、前記ネジカラー部材が、該規制リング側の端部の内周縁部において、該規制リングの屈曲された係止爪の下側に入り込むように突出する環状突部を一体的に有し、且つ該環状突部が、該規制リングにおける屈曲された係止爪の傾斜角度以下の傾斜角度で傾斜するテーパ面を有していることを特徴とする耐圧型管継手を、その要旨とするものである。
【0014】
なお、このような本発明に従う耐圧型管継手の望ましい態様の一つによれば、前記挿入孔の内面に設けられたネジ部に螺合される前記ネジカラー部材にて、前記規制リングが、該挿入孔内面に形成された段付き部に当接せしめられて、挟持・固定されるようになっていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に従う耐圧型管継手の望ましい態様の他の一つによれば、前記規制リングにおける屈曲された係止爪の傾斜角度と前記ネジカラー部材の環状突部における前記テーパ面の傾斜角度との差が、0°~10°であることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明に従う耐圧型管継手の他の望ましい態様によれば、前記ネジカラー部材の環状突部におけるテーパ面の傾斜角度が、20°以上であることを特徴とするものである。
【0017】
加えて、本発明にあっては、有利には、前記規制リングにおける屈曲された係止爪の傾斜角度が、30°~40°であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に従う耐圧型管継手の別の望ましい態様によれば、前記ネジカラー部材の環状突部が、該ネジカラー部材の内周面から直線的に外方に延びる円筒状内面と前記テーパ面とによって、三角形状の横断面形状を呈する形態において、設けられていることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明に従う耐圧型管継手の更に別の望ましい態様によれば、前記規制リングにおける屈曲された係止爪が、その先端が前記ネジカラー部材の内周面より径方向内側に位置するように、配設されていることを特徴としている。
【0020】
更にまた、本発明に従う耐圧型管継手の好ましい態様によれば、前記複数の係止爪の少なくとも一つが、その基部において、前記被接続管体の外表面に食い込む先端部の幅よりも挟幅となる細幅部を有していることを特徴とするものである。
【0021】
そして、本発明にあっては、有利には、前記加圧ブッシュが、前記継手本体の被接続管体挿入側の端部内周部に設けたネジ部に螺合せしめられて、取り付けられるようになっていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明にあっては、有利には、前記加圧ブッシュが、その外周面においてローレット加工が施されており、そのローレット加工の部位を把持することにより、該加圧ブッシュの螺合操作が作業者の手によって行われ得るようになっていることを特徴とする。
【0023】
さらに、本発明にあっては、有利には、前記O-リングの複数が、隣接するO-リング間に環状のスペーサを介在せしめてなる形態において、前記挿入孔の軸方向に配列されていることを特徴とする。
【0024】
更にまた、本発明にあっては、有利には、前記規制リングの配設位置よりも奥部側の前記挿入孔の内面に設けられ、該挿入孔内に挿入される前記被接続管体が当接させられて、その移動が阻止せしめられるストッパ手段が、設けられていることを特徴とする。
【0025】
加えて、本発明にあっては、有利には、前記継手本体の両端部に、前記挿入孔がそれぞれ設けられており、それら挿入孔に対して、それぞれ、前記規制リングと前記ネジカラー部材と前記シール手段と前記加圧ブッシュとを用いて、前記被接続管体が挿入、固定せしめられることによって、2本の被接続管体が連結されるようになっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
このような本発明に従う耐圧型管継手にあっては、継手本体の挿入孔内に位置固定に配設された規制リングの、屈曲せしめられて、被接続管体の挿入方向前方側に傾斜させられてなる係止爪の下側に入り込むように、かかる規制リングを固定せしめるネジカラー部材が、規制リング側の端部の内周縁部において突出せしめられると共に、規制リングにおける屈曲された係止爪の傾斜角度以下の傾斜角度で傾斜するテーパ面を有する環状突部を、一体的に有していることにより、被接続管体に大きな引抜き力が作用して、係止爪に対して、被接続管体の挿入方法とは反対方向の力が加わっても、かかる係止爪は、ネジカラー部材に設けられた環状突部のテーパ面にて受け止められて、その折れ曲がりが効果的に阻止され得ることとなるのであり、以て、被接続管の固定状態が有利に維持され得て、規制リングによる引抜き阻止作用が、有効に働くこととなるのである。
【0027】
しかも、規制リングにおける係止爪に基づくところの、被接続管体の引抜き阻止力の発揮は、かかる係止爪の先端部が被接続管体の外表面に食い込むことによって、実現されるものであるところ、大きな引抜き力が作用しても、そのような係止爪の折れ曲がりが、ネジカラー部材に設けた環状突部のテーパ面にて、効果的に阻止され得て、従って、係止爪の先端部が被接続管体の外表面に食い込むことによって発現される引抜き抵抗力は、充分に確保され得ることとなるのである。そして、それによって、充分な引抜き抵抗力を発揮させ得ることとなることに加えて、継手本体の端部に螺合される加圧ブッシュの更なる螺入によって、継手本体の挿入孔の内面と、差し込まれる被接続管体の外面との間をシールするO-リングが加圧・圧縮されて、挿入孔の径方向内方に膨出せしめられ得るようになっているところから、挿入された被接続管体の外周面に対する密着性乃至は圧着性が、効果的に高められ得ることとなるのであり、これによって、耐圧性に優れた継手構造が実現され得ることとなるのである。
【0028】
このように、本発明に従う耐圧型管継手によれば、火気を使用することなく、また特別な専用工具を用いることもなく、目的とする被接続管体を管継手の加圧ブッシュに設けた挿通孔を通じて差し込み、そして継手本体の挿入孔内に挿入する操作を実施するだけで、それら被接続管体と管継手との接続が完了することとなるのであり、より一層優れた引抜き阻止力の発揮を図りつつ、しかも優れた耐圧性を発揮し得るものであるところから、高い圧力の冷媒等の流体が管内に流通せしめられる被接続管体の接続に有利に採用され得る他、管外径が小さな管体のみならず、大径の管外径を有する、冷媒圧力によって大きな引抜き力が作用する冷媒用管体であっても、その接続を有利に行い得るという特徴が発揮され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に従う耐圧型管継手の一例を示す縦断面部分説明図である。
図2図1に示される耐圧型管継手に用いられている継手本体の全体を示す縦断面説明図である。
図3図1に示される耐圧型管継手に用いられている規制リングにおいて、その係止爪の基部を屈曲させる前の形態を示す説明図であって、(a)は、その平面説明図であり、(b)は、その右側面説明図であり、(c)は、(a)におけるA部分の拡大説明図である。
図4図1に示される耐圧型管継手に用いられている規制リングであって、図3において係止爪が屈曲せしめられてなる形態を示す説明図であり、(a)は、その平面説明図であり、(b)は、(a)におけるB-B断面説明図であり、(c)は、(b)のC部分における係止爪断面の拡大説明図である。
図5図1に示される耐圧型管継手に用いられているネジカラーを示す説明図であって、(a)は、その正面説明図であり、(b)は、(a)におけるD-D断面説明図であり、(c)は、(b)におけるE部分の拡大説明図である。
図6図1に示される耐圧型管継手に用いられている加圧ブッシュを示す説明図であって、(a)は、その正面説明図であり、(b)は、(a)におけるF-F断面説明図である。
図7図1に示される耐圧型管継手に対して被接続管体を差し込んで接続する工程を示す縦断面説明図であって、(a)は、被接続管体を差し込む途中の形態を示すものであり、(b)は、被接続管体を差し込んだ後の形態を示すものである。
図8図1に示される耐圧型管継手において、差し込まれる被接続管体と規制リングの係止爪の形態を示す説明図であって、(a)は、被接続管体が差し込まれる前の形態を示す断面説明図であり、(b)は、被接続管体が差し込まれた後の形態を示す断面説明図である。
図9図1に示される耐圧型管継手に用いられる規制リングの他の形態を示す概略説明図であって、(a)は、その平面説明図であり、(b)は、(a)におけるG-G断面説明図であり、(c)は、係止爪の屈曲前の形態を示す、図3(c)に相当する部分拡大説明図である。
図10】加圧ブッシュの異なる構造のものが用いられてなる耐圧型管継手の図1に対応する縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の構成を更に具体的に明らかにするために、本発明の代表的な実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0031】
先ず、図1には、本発明に従う耐圧型の管継手の代表的な一例が、ここでは、その左半分について、縦断面形態において示されている。そこにおいて、管継手10は、全体として筒体形状を呈する継手本体12と、そのような継手本体12内にそれぞれ配置された、規制リング14、ネジカラー16、及び二つのO-リング18,18と、継手本体12の端部開口部に螺合された加圧ブッシュ20とを含んで、構成されている。なお、継手本体12の他方の半分(図1において、右側の図示されていない部分)においても、図示されている左側部分と同様な構造とされている。そして、このような管継手10に対して、被接続管体として、例えば、銅又は銅合金の如き材質からなる銅管22が差し込まれて、接続せしめられるようになっているのである。
【0032】
具体的には、かかる管継手10を構成する一つの部材である継手本体12は、図2に示される如く、軸方向の中央部位が小径部とされた所定長さの金属製の管体からなるものであって、その両側の端部から、それぞれ、接続されるべき管体(ここでは、銅管22)が挿入されて、接続されるようになっており、そのために、両側の端部にそれぞれ開口する、管体(銅管22)の挿入孔24,24が設けられている。そして、それら挿入孔24,24の間において、継手本体12の軸方向の中央部位に位置するように、内周面から所定高さで突出する、ストッパ手段としてのリング状の突条26が、継手本体12の内周面に一体的に形成されている。なお、この突条26は、後述するように、挿入せしめられる銅管22の先端部が当接せしめられることよって、かかる銅管22の移動が阻止され得るようにするためのものである。
【0033】
また、かかる継手本体12の挿入孔24は、継手本体12の端部に向かって、直径が段階的に拡大する段付き形態において、開口せしめられている。そして、挿通孔24の内径が最も大きくなる端部開口部の内周面に、加圧ブッシュ20が螺入せしめられる入口側雌ネジ部28が設けられており、更に、開口部から突条26に至る間の中間位置に、ネジカラー16が螺合せしめられる内側雌ネジ部30が設けられている。なお、軸方向における最も中央部側に位置する挿入孔24部位と、最も小径となる内径を与える最奥部の段付き部との間には、継手本体12の端部開口部に向かって傾斜して、拡径する傾斜面からなるテーパ部24aが設けられており、これによって、規制リング14の径方向外方への自由な弾性的変形が阻害されないようになっている。
【0034】
さらに、規制リング14は、ここでは、図3(a)~(c)に示される規制リング前駆体14’を用い、その舌片状の係止爪14bを、その基部において屈曲せしめることによって、図4(a)~(c)に示される如き形態において形成されてなるものである。そこにおいて、規制リング前駆体14’は、具体的には、所定幅の円環板形状のリング本体14aと共に、かかるリング本体14aの内周部からリング本体の中心に向かって一体的に延びるように、且つ周方向に所定間隔を隔てて放射状に配設されてなる、所定幅の複数(ここでは、16個)の板状の係止爪14bを有するように、構成されている。なお、このような形態の規制リング前駆体14’は、例えば、弾性を有する所定厚さの金属板をプレスにて打抜き加工することによって、容易に作製され得るものである。また、規制リング14における係止爪14bの幅としては、一般に、1.6~3.0mm程度が採用され、更に係止爪14bの厚さとしては、一般に、0.5~1.0mm程度が採用されることとなる。
【0035】
そして、かかる規制リング前駆体14’は、その複数の係止爪14bが、その基部において、それぞれ、被接続管体である銅管22の挿入方向前方側に屈曲せしめられて、継手本体12の軸直角方向の面に対して、換言すればリング本体14aの板面に対して、所定角度:α1 、例えば30°~40°程度の角度を為すように、傾斜させられることにより、図4に示される規制リング14が、形成されることとなる。なお、規制リング14における屈曲された複数の係止爪14bの先端にて形成される規制リング14の内径は、銅管22の外径よりも小さくなるように、1~2mm程度小径となるように設計されている。これにより、管継手10にて連結される銅管22の引抜き挙動に対して、その係止爪14bが銅管22の外表面に食い込み得るように、換言すれば引っ掛かり得るように、規制リングは、弾性を有する硬質の金属材料、例えば、SUS301等の、弾性特性を発揮し得る金属材料にて構成されており、これによって、係止爪14bは弾性変形可能とされているのである。また、規制リング14をSUS301の如き金属材質にて構成することにより、長期間に亘って必要な引抜き阻止力を有利に保持することが可能ともなっている。
【0036】
そして、かかる規制リング14は、図1に示されているように、継手本体12における挿入孔24の最奥部の段付き部に当接せしめられてなる形態において、位置固定に配設されることとなる。これによって、被接続管体である銅管22が、継手本体12の挿入孔24内に挿入されると、かかる銅管22の挿入力によって、規制リング14の係止爪14bは、弾性的に径方向外方に押し拡げられることとなるのであるが、その際、係止爪14bの基部が、銅管22の挿入方向前方側に向かって屈曲させられて、当該部位の屈曲変形抵抗が効果的に低減せしめられているところから、銅管22に大きな押込み力を作用させる必要なく、銅管22を規制リング14内に挿通せしめることが可能となる一方、かかる銅管22の挿通後においては、係止爪14bの先端部が、銅管22に接する側の角部においてピン角とされていることにより、銅管22の外表面に食い込むように乃至は引っ掛かるようになるところから、銅管22に引抜き力が作用しても、そのすっぽ抜けが、効果的に阻止され得ることとなるのである。
【0037】
また、ネジカラー16は、図5(a)~(c)から明らかなように、厚肉の円筒形状を呈する金属筒体からなるものであって、その外周面には、雄ネジ部16aと段付き部とが軸方向に並列した形態において形成されている。そして、かかる雄ネジ部16aが設けられた側の端面に開口するように、90°の位相差をもって、4個の工具穴16bが形成されている。更に、かかる工具孔16bが設けられた側とは反対側の端部の内側部位が、軸方向外方に突出した環状の突出部34として構成されており、この突出部34の外周部が、中心に向かって傾斜して延びるテーパ形状部(34a)とされているのである。
【0038】
そして、かかるネジカラー16は、その工具穴16bを利用した工具による回動操作にて、その外周面に設けた雄ネジ部16aが、継手本体12の挿入孔24の内面に設けた内側雌ネジ部30に螺合せしめられることによって、図1に示される如く、継手本体12の挿入孔24の最奥部に設けられた段付き部との間において、規制リング14のリング本体14a部位を挟持・固定せしめ得るようになっている。なお、このネジカラー16は、その外周部に設けた段付き部が、継手本体12の挿入孔24の内周面に設けた段付き部に当接することにより、規制リング14を所定の締付力にて固定・保持した状態において、その更なる螺入が阻止され得るようになっていると共に、その内孔16cは、銅管22が挿通され得る大きさの内径とされている。
【0039】
ところで、上記したネジカラー16の、規制リング14配置側の端面内周部に設けられた軸方向外方に突出する環状突部としての突出部34は、そのテーパ形状の傾斜面、換言すればテーパ面34aにて、銅管22に引抜き力が作用した際における係止爪14bの大きな変形を抑制乃至は阻止して、銅管22の引抜き阻止力を有利に高め得るようにしたものである。具体的には、突出部34は、ここでは、ネジカラー16の内周面から直線的に軸方向外方に延びる円筒状内面34bと、軸心に向かって所定の角度:α2 にて傾斜するテーパ面34aとによって、直角三角形状の横断面形状を呈する形態において設けられているのである。
【0040】
そして、そのようなネジカラー16における突出部34のテーパ面34aの傾斜角度:α2 は、規制リング14における屈曲された係止爪14bの傾斜角度:α1 以下とされており、これによって、銅管22に引抜き力が作用した際における係止爪14bの変形挙動が、かかる突出部34におけるテーパ面34aにて、効果的に受け止められ得ることとなり、以て、係止爪14bの折れ曲がりを効果的に阻止して、銅管22に対する係止爪14bの固定状態を有利に維持して、引抜き阻止力が有効に働き得るようになっているのである。これに対して、テーパ面34aの傾斜角度:α2 が係止爪14bの傾斜角度:α1 よりも大きくなると、規制リング14を継手本体12の挿入孔24内に配置固定する際に、ネジカラー16が規制リング14のリング本体14aを押さえる前に、係止爪14bを押さえ込むようになって、ネジカラー16が浮いた形態となって、ネジが緩んだ状態で組付け完了となる懸念があり、後々、ネジカラー16が振動で緩んで、規制リング14ごと、銅管22がすっぽ抜ける等の問題を惹起する恐れがある。
【0041】
なお、ネジカラー16における、テーパ面34aを有する突出部34の存在に基づくところの引抜き阻止力を有効に働かせるべく、テーパ面34aの傾斜角度:α2 は、適宜に選定されることとなるが、一般に、20°以上となる角度が、有利に選定されることとなる。また、規制リング14の係止爪14bによる銅管22の引抜き阻止力を有効に発揮させると共に、ネジカラー16による規制リング14の固定状体の有効な維持を図るべく、規制リング14における屈曲された係止爪14bの傾斜角度:α1 とネジカラー16の環状の突出部34におけるテーパ面34aの傾斜角度:α2 との差(α1 -α2 )が、0°~10°の範囲内となるように設定されることが望ましい。それら傾斜角度の差(α1 -α2 )が10°を越えるようになると、ネジカラー16の突出部34(テーパ面34a)と規制リング14の屈曲された係止爪14bとの間の隙間が大きくなって、引抜き力が作用した際に、ネジカラー16に設けた突出部34による係止爪14bの変形阻止作用が充分に発揮され得ず、その為に、係止爪14bの変形が大きくなって、折れ曲がり易くなる等の問題が惹起される恐れがある。
【0042】
このように、ネジカラー16は、規制リング14を固定し、且つ銅管22の引抜き力によって係止爪14bが大きく変形し、更には折れ曲がる等の問題の発生を有利に抑制乃至は阻止し得るものであり、また、後述するO-リング18の固定に寄与するものであると共に、接続される銅管22のガイドとしても機能し、更に銅管22が振動したときに、その振動が、そのまま、規制リング14やO-リング18に伝わるのを緩和する制振作用も奏するものである。
【0043】
そして、O-リング18は、IIRやH-NBRの如きゴム材料からなる、円形の横断面形状を呈する環状体であって、図1に示されるように、線径及び内径が何れも同一の、2つのO-リング18,18が、円環板形状のスペーサ36を挟んでなる形態において、継手本体12の端部内周部に螺合せしめられる加圧ブッシュ20にて、押圧せしめられることにより、規制リング14やネジカラー16よりも挿入孔24の軸方向外側に位置して、かかる挿入孔24の内面に露呈するように、配設されている。なお、2つのO-リング18,18の内径は、銅管22の外径よりも小さくなるようにして、差し込まれる銅管22の外周面との間におけるシールが、有効に実現され得るようになっている。
【0044】
さらに、加圧ブッシュ20は、図6(a)及び(b)に示されるように、継手本体12と同様な金属材質からなるものであって、厚肉の円筒体形状を呈し、その内孔として、銅管22を挿入し得る大きさの挿通孔20aを有している。また、この加圧ブッシュ20の筒壁部の外周面には、所定深さの周溝を間にして、作業者の手にて把持されるローレット加工が施されてなるローレット加工部20bと、継手本体12の入口側雌ネジ部28に螺合されて、螺入せしめられる雄ネジ部20cとが、設けられている。更に、ローレット加工部20bが設けられてなる側の加圧ブッシュ20の端面に開口するように、円環形状の肉抜き部20dが、所定深さで形成されており、これによって、加圧ブッシュ20の軽量化が図られている。そして、この加圧ブッシュ20が、その雄ネジ部20cにおいて、継手本体12の入口側雌ネジ部28に螺合・螺入せしめられることにより、図1に示される如く、継手本体12の外形形状以下の小さな外形形状を呈する形態において、加圧ブッシュ20の取付けを行い得るようになっており、これによって、管継手10全体のコンパクト化が実現され得るようになっている。
【0045】
そして、かかる加圧ブッシュ20が、その雄ネジ部20cを継手本体12の入口側雌ネジ部28に螺合せしめて、図1に示されるように、継手本体12の端部に取り付けられることにより、加圧ブッシュ20の螺入側端面にて、スペーサ36を介して配置された2つのO-リング18,18が押圧されることとなるのであり、以て、O-リング18,18は、スペーサ36を介して、ネジカラー16との間で挟持されてなる形態において、継手本体12の端部に収容保持されることとなる。なお、そのような状態においては、2つのO-リング18,18は、圧縮変形されておらず、そのために、銅管22の挿入に際して大きな挿入抵抗が生じないようになっている。
【0046】
ところで、図1に示される形態に組み付けられてなる管継手10に対して、被接続管体である銅管22を、作業者が素手にて把持して、挿入、接続するに際しては、かかる銅管22を、図1、更には図7(a)に示される位置から更に前進させて、管継手10内に挿入せしめ、加圧ブッシュ20の挿通孔20aから、O-リング18,18及びネジカラー16を通過させた後、銅管22を更に深く挿入せしめるようにする。これによって、銅管22は、規制リング14内に押し込まれることとなるが、規制リング14の係止爪14bは、その基部において屈曲させられて、挿入方向前方側に傾斜せしめられることにより、径方向外方に容易に押し拡げられ得るようになっているところから、かかる銅管22の規制リング14に対する押込みは、容易に行われ得ることとなるのである。
【0047】
そして、更なる銅管22の前進によって、継手本体12の内周面に設けた突条26に、銅管22の先端部が当接することにより、かかる銅管22の挿入長さが規制されることとなる一方、銅管22の外表面に対して、規制リング14の係止爪14bが弾性的に当接して、かかる係止爪14bが、その先端部のピン角とされた角部において、銅管22の外表面に食い込むようになるのであって、これにより、銅管22に対して引抜き力が作用しても、大きな引抜き抵抗力が発揮され得ることとなり、以て、銅管22に対する優れた引抜き阻止力が実現されることとなるのである。具体的には、図8の(a)に示される状態から、銅管22が深く差し込まれることによって、図8の(b)に示される如く、規制リング14の複数の係止爪14bが拡開されるように、換言すれば、銅管22の挿入方向前方側に弾性的に湾曲変形せしめられて、押し広げられてなる形態において、銅管22が挿通されることとなるのであり、そしてそれによって、係止爪14bの銅管22側の角部が、銅管22の外表面に食い込むこととなるのである。なお、そのような銅管22が挿通されてなる状態において、湾曲変形せしめられた係止爪14bの傾斜角度(α1 ’)は、一般に、約45°(±3°)程度となるように設計され、それによって有効な引抜き抵抗力が発揮され得るようになっていると共に、係止爪14bの下側には、ネジカラー16の規制リング14側の端部から突出する突出部34が入り込み、銅管22に大きな引抜き力が作用した際における係止爪14bの大きな変形を阻止して、その折れ曲がりが生じないようになっているところから、引抜き抵抗力の更なる向上が、有利に発揮され得るようになっているのである。
【0048】
その後、上述の如く、銅管22が継手本体12の内面のリング状の突条26に当接することによって、その更なる移動が阻止されてなる状態下において、加圧ブッシュ20が、その外周部に設けられた回動操作用のローレット加工部20bを利用して、作業者の手によって回動せしめられて、その螺合が更に進行させられることにより、加圧ブッシュ20の端面の当接にて発揮せしめられる押圧力によって、2つのO-リング18,18が、挿入孔24の軸方向に加圧・圧縮されることとなる。そして、これにより、かかるO-リング18,18を径方向内方に膨出させて、銅管22の外周面に対する押圧力が増大せしめられるようになる。O-リング18,18は、かかる加圧ブッシュ20の更なる螺入による加圧・圧縮作用によって、図7(b)に示される如く、略矩形断面形状を呈する形態となり、そしてこれによって、銅管22の外周面に対して圧接面積を拡大しつつ、強く圧接され、以て、銅管22の外周面と挿入孔24内面との間のシールが、より一層高められ得ることとなるのである。
【0049】
なお、O-リング18の圧縮割合としては、一般に、最も有効な耐圧性能や耐久寿命が発揮され得ることが認められている、25%±5%程度が採用され、そのような圧縮割合となるように、換言すれば最終圧縮率(%)が実現されるように、加圧ブッシュ20の端面にて、O-リング18,18が押圧せしめられるようになっている。
【0050】
従って、かくの如き構成の管継手10にあっては、被接続管体である銅管22の接続に際して、かかる銅管22を作業者が素手で把持して、その管端部を、加圧ブッシュ20の挿通孔20aを通じて、継手本体12の挿入孔24内に、単に差し込むだけの作業にて、容易に且つ簡単に、その接続を完了させることが可能となるのであり、またそのような管継手10によって接続された銅管22に対して引抜き力が作用しても、それに基づくところの規制リング14の係止爪14bの変形が、ネジカラー16に設けた突出部34(テーパ面34a)にて、効果的に阻止されることによって、規制リング14にて実現される引抜き阻止力を、より一層高めることが可能となるのであり、これによって、従来のろう付け手法における場合の如く、火気を使用する必要がないことは勿論、従来のかしめ工法の如く、かしめ作業のための専用工具を用いる必要も全くなくなったのであり、それ故に、火気や専用工具の使用によって惹起される各種の問題も、悉く解消され得ることとなるのである。
【0051】
また、挿入される銅管22の外径を大きくしたりすると、その抜け阻止力を大きくする必要があるのであるが、そのような場合にあっても、例示の如き管継手10の構造は、有利に対応することが可能となっているのである。要するに、接続する銅管22の管径が大きくなる程、かかる銅管22の引抜き力が大きくなるのであるが、そのような銅管22の引抜き抵抗を高くするために、ネジカラー16には、その規制リング14側の端部において、テーパ面34aを有する環状の突出部34が設けられて、かかる突出部34が係止爪14bの下側に入り込むようになっているところから、その突出部34の存在によって、規制リング14の複数の係止爪14bの銅管22の挿入方向とは反対方向の変形が、有利に抑制乃至は阻止され得ることとなるのであって、これにより、挿入銅管22の外径が大きくなるものであっても、その引抜き阻止力が効果的に向上せしめられ得ることとなるのである。
【0052】
なお、上述の如き構成の管継手にあっては、また、図9(a)~(c)に示される如き形態の係止爪を有する規制リング14が、有利に用いられることとなる。即ち、そこにおいて、各係止爪14b(ここでは、12個)は、その基部が、それぞれ、その先端側の幅:yよりも細い幅:xを有する狭幅となる細幅部38として、構成されている。
【0053】
このように、規制リング14における係止爪14bを、その基部において、細幅部38とすることにより、かかる係止爪14bの弾性変形に基づく反力を、有利に低減せしめることが可能となるのであって、その細幅部38の幅:xとしては、係止爪14bの変形抵抗に応じて、適宜に選定されることとなるが、余りにも細幅となると、座屈等の問題を生じるようになるところから、一般に、係止爪14bの基部の細幅部38の幅:xと係止爪14bの先端部の幅:yとの比率(x/y)は、0.2~0.9程度、好ましくは0.3~0.8程度の値が採用されることとなる。そして、そのような比率を満足するように、一般に、係止爪14bの細幅部38の幅:xとしては、0.6~1.6mm、係止爪14bの先端部の幅:yとしては、1.6~3.0mmが採用されるところであり、更に係止爪14bの厚さとしては、0.5~1.0mmの範囲内において、細幅部38の幅:xよりも小さな数値が採用されることとなる。
【0054】
しかも、銅管22の挿入操作は、規制リング14の複数の係止爪14bを径方向外方に押し拡げるようにして、行われることとなるのであるが、かかる係止爪14bは、その基部に細幅部38を設けて、径方向外方への押し拡げが容易に実現され得るようになっているところから、規制リング14内への銅管22の挿入に際して、大きな挿入力が必要とされることがなく、従って、銅管22の挿入作業を、作業者の手によって、容易に行ない得ることとなることに加えて、誘導筒体の如き部材も用いる必要がないところから、部品点数の低減にも寄与し得ることとなったのである。
【0055】
以上、本発明の代表的な実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも、例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0056】
例えば、上述の実施形態においては、被接続管体である銅管22の2本が直線的に接続せしめられる管継手を例として説明されているのであるが、本発明は、それに限られるものでは決してなく、液体や気体等の流体を輸送する配管を、径の異なる別の配管に接続したり、また、目的とする機器に接続したりするために用いられる、従来から公知の各種の名称が付された管継手、例えば、ソケット、アダプタ、チーズ、T字型、Y字型、クロス型、90°エルボ等の何れにも、有利に適用され得るものである。
【0057】
また、本発明にあっては、例示の如き構造の加圧ブッシュ20に代えて、図10に示される如き薄肉化された形態の加圧ブッシュ40も、有利に用いられることとなる。この加圧ブッシュ40は、更なる軽量化とブッシュ外形形状の小径化を図るべく、先の加圧ブッシュ20において、肉抜き部20dの径方向外側に位置する筒壁部が切除されてなる形態を呈するものであり、肉抜き部20dの径方向内側に位置する筒壁部の外表面がローレット加工されて、ローレット加工部40bが形成されているのであり、このローレット加工部40bを作業者が把持して、素手により、加圧ブッシュ20が回動せしめられ得るようになっている。なお、かかる加圧ブッシュ40には、先の加圧ブッシュ20と同様に、挿通孔40aが設けられている一方、継手本体12の端部内周部に設けた入口側雌ネジ部28に螺合せしめられる雄ネジ部40cが、外周面に設けられている。
【0058】
さらに、例示の実施形態においては、規制リング14に一体的に設けられる係止爪14bが、周方向に所定の間隔を隔てて、16個又は12個配設されているが、その個数としては、銅管22の挿入抵抗や引抜き阻止力等を考慮して、適宜に選定されるところであって、一般に、6~18個の割合において、等間隔において設けられることとなる。勿論、係止爪14bは、等間隔において設けられる他、任意の間隔において設けることも可能である。
【0059】
なお、図9に示される規制リング14の実施形態では、その係止爪14bの全てが、その基部を細幅部38としてなる形態とされているが、そのような細幅部38の設けられる係止爪14bの個数としては、目的とする挿入抵抗に応じて、適宜に選定されるところであり、そして、そのような細幅部38が設けられてなる係止爪14bの個数が増えるに従って、銅管22の挿入抵抗を小さくすることが可能である。また、係止爪14bの基部に設けられる細幅部38の幅にあっても、全ての細幅部38が、同一幅において設けられている例示の場合の他、係止爪14b毎に細幅部38の幅を異ならしめるようにすることも、可能である。
【0060】
更にまた、規制リング14の配設個数にあっても、接続されるべき銅管22の管径や、そこを流通せしめられる流体の圧力等に応じて、有効な耐圧性及び引抜き阻止力が発揮され得るように、適宜に選定されるところであって、例示の実施形態の如き1段での使用の他、複数段での使用であっても、何等差し支えない。なお、複数の規制リング14を用いて、複数段に配設する場合にあっては、係止爪14bの相互干渉を避けるべく、それぞれのリング本体14aの間に、所定厚さのスペーサを介在せしめてなる形態において、継手本体12の挿入孔24内に配設されることとなるが、そのようなスペーサは、隣接する規制リング14,14間に適当な間隔が確保され得ることとなるならば、必ずしも必要とされるものではなく、例えば、リング本体14aの厚さを厚くすることによって、相互に所定の間隙を形成するようにすることも可能である。
【0061】
そして、例示の実施形態では、O-リング18として、線径及び内径が同一のO-リング18の2つが用いられているが、内径は同一であるが、線径(太さ)の異なるO-リング(18)の2つを用いることも可能である。なお、その場合において、線径の小さな方のO-リングが、挿入孔24の奥側に位置する様に配置されると共に、継手本体12の内面に内径の異なる段付き部を設けて、それら線径の異なる2つのO-リング(18)が配置されることとなる。
【0062】
また、規制リング14の製作方法にあっても、例示の如く、図3に示される規制リング前駆体14’を形成した後、その係止爪14bを基部において屈曲せしめることにより、図4に示される形態の規制リング14を完成する方法の他、公知の各種の手法を採用することが可能であり、例えばプレスにて、金属板材から、リング本体14aの内径形状と係止爪14bとを打ち抜き、次いで係止爪14bをその基部において屈曲せしめた後、金属板材に対して、リング本体14aの外径形状を打ち抜くプレス加工を実施することにより、目的とする規制リング14を得る方法等が、適宜に採用されるところである。
【0063】
さらに、ネジカラー16の規制リング14側の端部から突出する環状の突出部34にあっても、本発明に従うテーパ面34aを有しているものであれば、適宜の断面形状を有する突出形態において設けられ得るものであって、例示の実施形態の如き直角三角断面形状において設けられる他、二等辺三角形状、不等辺三角形状、台形形状等の各種の断面形状を有する環状の突出部として、設けることも可能である。
【0064】
加えて、被接続管体にあっても、例示の銅管22の他、アルミニウム又はその合金からなるアルミニウム材質等の金属材質の管体であっても、何等差し支えなく、一般に、軟質の金属材質からなる管体が有利に用いられることとなる。更に、規制リング14の材質にあっても、SUS材質に限定されるものではなく、被接続管体よりも硬質の金属材質が有利に採用されることとなる。
【0065】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そして、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0066】
10 管継手 12 継手本体
14 規制リング 14a リング本体
14b 係止爪 14’ 規制リング前駆体
16 ネジカラー 16a 雄ネジ部
16b 工具穴 16c 内孔
18 O-リング 20 加圧ブッシュ
20a 挿通孔 20b ローレット加工部
20c 雄ネジ部 20d 肉抜き部
22 銅管 24 挿入孔
24a テーパ部 26 突条
28 入口側雌ネジ部 30 内側雌ネジ部
34 突出部 38 細幅部
40 加圧ブッシュ 40a 挿通孔
40b ローレット加工部 40c 雄ネジ部
【要約】
【課題】被接続管体を接続する際に、火気や専用工具を用いる必要のない、優れた耐圧性を確保しつつ、被接続管体の引抜き阻止力をより一層有利に高めることの出来る耐圧型管継手を提供する。
【解決手段】銅管22が挿入、固定される挿入孔24を有する継手本体12と、銅管22の引き抜きを阻止する係止爪14bを備えた規制リング14と、規制リング14を挿入孔24内に固定せしめるネジカラー部材16と、銅管22と挿入孔24との間をシールするO-リング18と、O-リング18を加圧・圧縮せしめる加圧ブッシュ20とを有する管継手10において、ネジカラー部材16が、規制リング14側の端部の内周縁部において規制リング14の屈曲された係止爪14bの下側に入り込むように突出する環状の突出部34を有し、且つそのような突出部34が、係止爪14bの傾斜角度以下のテーパ面となるようにした。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10