(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】表面処理装置
(51)【国際特許分類】
B26F 3/00 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
B26F3/00 S
B26F3/00 M
B26F3/00 R
(21)【出願番号】P 2023181948
(22)【出願日】2023-10-23
【審査請求日】2023-12-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)試験日 令和5年5月10日 試験場所NEXCO東日本 道央自動車道(北海道岩見沢市緑が丘) 試験を行った者 株式会社フタミ (2)試験日 令和5年6月14日 試験場所NEXCO西日本 松山自動車道(愛媛県西条市中野乙283-2) 試験を行った者 株式会社フタミ
(73)【特許権者】
【識別番号】593162291
【氏名又は名称】株式会社フタミ
(74)【代理人】
【識別番号】100136847
【氏名又は名称】▲高▼山 嘉成
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】中山 竜一
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113106905(CN,A)
【文献】特開2014-095204(JP,A)
【文献】特開2022-159834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 3/00
B28D 1/00
E04G 23/00-23/08
B08B 3/02-3/12
A47L 11/00-11/206
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面及び立ち上がり面の二面を有する構造物の表面を
斫るための表面処理装置であって、
前記水平面の表面を斫るための高圧水を噴射する複数の噴射ノズルを並べて配置している第1のウォータージェットノズルと、
前記立ち上がり面を斫るための前記高圧水を噴射する複数の噴射ノズルを並べて配置している第2のウォータージェットノズルと、
前記水平面に直交する第1の軸を中心に前記第1のウォータージェットノズルの全体を回転させるための第1の回転手段を取付けて、前記水平面に沿って設けられている第1のケーシング部と、
前記立ち上がり面に直交する第2の軸を中心に前記第2のウォータージェットノズルの全体を回転させるための第2の回転手段を取付けて、前記立ち上がり面に沿って設けられる第2のケーシング部と、
前記第1のケーシング部に設けられた第1の吸引口と、
前記第2のケーシング部に設けられた第2の吸引口と、
前記第1の回転手段に設けられた前記高圧水を供給するための第1の高圧水供給口と、
前記第2の回転手段に設けられた前記高圧水を供給するための第2の高圧水供給口と、
を備え、
前記高圧水は、前記構造物の表面を礫にできる圧力を有するものであり、
前記第1の高圧水供給口及び第2の高圧水供給口には、外部から前記高圧水が供給され、
前記第1の高圧水供給口から前記第1のウォータージェットノズルに前記高圧水が供給され、
前記第2の高圧水供給口から前記第2のウォータージェットノズルに前記高圧水が供給され、
前記第1の回転手段によって前記第1のウォータージェットノズルの全体が前記第1の軸を中心に回転させられ、かつ、前記第2の回転手段によって前記第2のウォータージェットノズルの全体が前記第2の軸を中心に回転させられて、各前記噴射ノズルから噴射される前記高圧水が円状の軌跡を描きながら、前記構造物の表面が斫られて、
前記第1の吸引口及び前記第2の吸引口から前記高圧水及び前記礫が吸引されることを特徴とする、表面処理装置。
【請求項2】
前記第2のケーシング部の上部に前記第1のケーシング部の一側面側が取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記第1のケーシング部は、
前記第2のケーシング部に対して、上下に高さ調整可能となっていることを特徴とする、請求項2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記第2のケーシング部は、上部にスライド部を有し、
前記スライド部は、高さ調整用の上下に設けられた溝を有しており、
前記第1のケーシング部は、前記スライド部の前記溝に取り付けられることで、高さ調整可能となっていることを特徴とする、請求項3に記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記第1のケーシング部
は、前記第1のウォータージェットノズルを囲う形状を有し、
前記第2のケーシング部は、前記第2のウォータージェットノズルを囲う形状を有していることを特徴とする、請求項2に記載の表面処理装置。
【請求項6】
前記第1のケーシング部及び前記第2のケーシング部を取り付けるための台車をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の表面処理装置。
【請求項7】
前記台車は、
前記第1のケーシング部を取り付けるための第
1の枠体と、
前記第2のケーシング部を取り付けるための第2の枠体とを備え、
前記第1の枠体は、前記第2の枠体に対して、上下に高さ調整可能となっていることを特徴とする、請求項6に記載の表面処理装置。
【請求項8】
前記第1のケーシング部及び/又は前記第2のケーシング部の周りの少なくとも一部を囲うよう設けられたブラシをさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の表面処理装置。
【請求項9】
水平面及び立ち上がり面の二面を有する構造物の表面を
斫るための表面処理方法であって、
請求項1に記載の表面処理装置の第1のウォータージェットノズルを用いて、前記水平面の表面を処理すると同時に、
請求項1に記載の表面処理装置の第2のウォータージェットノズルを用いて、前記立ち上がり面の表面を
斫ることを特徴とする、表面処理方法。
【請求項10】
請求項1に記載の表面処理装置の前記第1のケーシング部及び前記第2のケーシング部を
台車に取り付けておいて、
前記構造物上で、前記台車を移動させながら、前記水平面及び前記立ち上がり面の表面を同時に
斫ることを特徴とする、請求項9に記載の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の地覆などの表面を処理するための装置である。
【背景技術】
【0002】
地覆(じふく)とは、架橋の側端部で橋面より高くなった部分であり、高欄(欄干、防護柵などともいう)などの基礎となる部分であったり、雨水側溝の機能も持つ部分であったりする。架橋の構造における地覆の位置についての一例は、非特許文献1に記載されている。
【0003】
架橋の改修工事においては、地覆部分の防水性能を回復させる必要があるため、地覆部分の表面を処理した後、防水加工を施す必要がある。
【0004】
従来、地覆部分の表面を処理するために、非特許文献1や非特許文献2に記載の装置のように、手で持つタイプのウォータージェットによる表面処理装置が用いられていた。すなわち、このようなハンドタイプの表面処理装置を作業者が地覆部分に当てながら、地覆の表面を処理していた。
【0005】
地覆は、橋面より高くなっているので、橋面より立ち上がった垂直面と水平面との二面を有している。そのため、作業者は、垂直面及び水平面のそれぞれに、ハンドタイプの表面処理装置を当てて、表面の防水層などを除去する作業を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2022-62481号公報
【文献】実公平04-23936号公報
【文献】特公平05-10480号公報 第2図,第6欄14行~16行
【文献】特許2856473号公報 第1図,第12図,第13図,第14図,7頁左欄18行~46行
【文献】特許5892965号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】カミノブログ公務員×土木,“橋梁の各部位の名称について”,[online],令和5年9月19日検索,インターネット,<URL:https://kamino.blog/bridge3/>
【文献】株式会社スギノマシン,“壁面用ウォータージェット(WJ)洗浄・はくりユニット「アクア・セルロータ」”,[online],令和5年9月19日検索,インターネット,<URL:https://www.sugino.com/site/cleaning-peeling-blasting-cutting-equipment/wj-aj-nozzle-type-asr.html>
【文献】アマノ機工株式会社,“ハンドアクアブラスト”,[online],令和5年9月19日検索,インターネット,<URL:http://amanokiko.co.jp/system/config2.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、地覆には、二面があるが、従来のハンドタイプの表面処理装置を用いた作業では、一面ずつしか処理できず、また、手持ちでの作業であったため、超高圧水の圧力や流量を制限する必要があった。その結果、作業に時間がかかっていた。また、隅部を施工するときに、ハンドタイプの表面処理装置のカバーと地覆部との間に隙間が発生してしまい、飛散のための養生を行うのに、労力を要していた。
【0009】
同様の問題は、地覆に限らず、立ち上がり面と水平面との二面を有する構造物に対する表面処理の場合に、同様に発生する問題である。
【0010】
特許文献1には、ウォータージェットノズルを用いた表面処理装置が記載されている。特許文献1に記載の表面処理装置を用いれば、一面の表面処理を効率的に行うことができる。しかし、当該表面処理装置では、地覆のような二面を有する構造物の表面処理を効率的に行うことはできない。なお、特許文献1に記載のウォータージェットノズル及びその回転構造は、本発明に流用可能である。
【0011】
特許文献2には、下端を開口したボックスの内部に、噴射口を多数有する高圧水吐出管を設けた側溝清掃用機具が記載されている。特許文献2に記載の機具も、一面だけを清掃するものであり、地覆のような二面を有する構造物の表面処理を効率的に行うことはできない。
【0012】
特許文献3には、トンネル(13)の内壁面(13a)を清掃するために、スイングしながら高圧水を噴射して洗浄を行うガッター部洗浄ノズル(23)が記載されている。しかし、特許文献3に記載のガッター部洗浄ノズル(23)は、立ち上がり面と水平面とを有する地覆のような構造物の表面処理には使用できない。
【0013】
特許文献4の研掃ヘッド(5)は、第1図及び第12図~第14図に記載されているように、地覆(10)からの高欄(9)の立ち上がり部分を清掃する装置である。研掃ヘッド(5)内の複数の研掃ノズル(19)は、当該立ち上がり部分に向けて高圧水を噴射できるように配置されているのみであり、高欄の下部の立ち上がり部分の清掃に用いられるものに過ぎない。したがって、特許文献4に記載の研掃ヘッド(5)は、地覆のような二面を有する構造物の表面処理に用いることはできない。
【0014】
特許文献5に記載の表面処理装置は、特許文献1と同様に、一面の表面処理を行う装置であり、地覆のような二面を有する構造物の表面処理に用いることはできない。
【0015】
それゆえ、本発明は、立ち上がり面と水平面とを有する構造物(たとえば、地覆など)の二面の表面を同時に処理することが可能な表面処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
本発明は、水平面及び立ち上がり面の二面を有する構造物の表面を斫るための表面処理装置であって、
水平面の表面を斫るための高圧水を噴射する複数の噴射ノズルを並べて配置している第1のウォータージェットノズルと、
立ち上がり面を斫るための高圧水を噴射する複数の噴射ノズルを並べて配置している第2のウォータージェットノズルと、
水平面に直交する第1の軸を中心に第1のウォータージェットノズルの全体を回転させるための第1の回転手段を取付けて、水平面に沿って設けられている第1のケーシング部と、
立ち上がり面に直交する第2の軸を中心に第2のウォータージェットノズルの全体を回転させるための第2の回転手段を取付けて、立ち上がり面に沿って設けられる第2のケーシング部と、
第1のケーシング部に設けられた第1の吸引口と、
第2のケーシング部に設けられた第2の吸引口と、
第1の回転手段に設けられた高圧水を供給するための第1の高圧水供給口と、
第2の回転手段に設けられた高圧水を供給するための第2の高圧水供給口と、
を備える。
高圧水は、構造物の表面を礫にできる圧力を有するものである。
第1の高圧水供給口及び第2の高圧水供給口には、外部から高圧水が供給される。
第1の高圧水供給口から第1のウォータージェットノズルに高圧水が供給される。
第2の高圧水供給口から第2のウォータージェットノズルに高圧水が供給される。
第1の回転手段によって第1のウォータージェットノズルの全体が第1の軸を中心に回転させられ、かつ、第2の回転手段によって第2のウォータージェットノズルの全体が第2の軸を中心に回転させられて、各噴射ノズルから噴射される高圧水が円状の軌跡を描きながら、構造物の表面が斫られる。
第1の吸引口及び第2の吸引口から高圧水及び礫が吸引される。
【0017】
好ましくは、第2のケーシング部の上部に第1のケーシング部の一側面側が取り付けられているとよい。
【0018】
好ましくは、第1のケーシング部は、第2のケーシング部に対して、上下に高さ調整可能となっているとよい。
【0019】
好ましくは、第2のケーシング部は、上部にスライド部を有し、スライド部は、高さ調整用の上下に設けられた溝を有しており、第1のケーシング部は、スライド部の溝に取り付けられることで、高さ調整可能となっているとよい。
【0020】
好ましくは、第1のケーシング部は、第1のウォータージェットノズルを囲う形状を有し、第2のケーシング部は、第2のウォータージェットノズルを囲う形状を有しているとよい。
【0021】
好ましくは、表面処理装置は、第1のケーシング部及び第2のケーシング部を取り付けるための台車をさらに備えるとよい。
【0022】
好ましくは、台車は、第1のケーシング部を取り付けるための第1の枠体と、第2のケーシング部を取り付けるための第2の枠体とを備え、第1の枠体は、第2の枠体に対して、上下に高さ調整可能となっているとよい。
【0023】
表面処理装置は、第1のケーシング部及び/又は第2のケーシング部の周りの少なくとも一部を囲うよう設けられたブラシをさらに備えるとよい。
【0024】
また、本発明は、水平面及び立ち上がり面の二面を有する構造物の表面を斫るための表面処理方法であって、上記に記載の表面処理装置の第1のウォータージェットノズルを用いて、水平面の表面を処理すると同時に、同じく上記に記載の表面処理装置の第2のウォータージェットノズルを用いて、立ち上がり面の表面を斫ることを特徴とする。
【0025】
好ましくは、上記に記載の表面処理装置の第1のケーシング部及び第2のケーシング部を台車に取り付けておいて、構造物上で、台車を移動させながら、水平面及び立ち上がり面の表面を同時に斫るとよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、第1のウォータージェットによって構造物の水平面の表面が処理され、かつ、第2のウォータージェットによって構造物の立ち上がり面の表面が処理される。したがって、構造物の二面を同時に処理することが可能となり、構造物の表面処理の効率化が図られる。
【0027】
第1のケーシング部の一側面側を、第2のケーシング部の上部に取り付けることで、第1のウォータージェットノズルと第2のウォータージェットノズルとが逆L字状に配置されることとなるので、構造物の二面を同時に処理することができる。
【0028】
工事現場によって、構造物の立ち上がり部分の高さが区々であるが、第1のケーシング部が高さ調整可能とすることで、構造物の立ち上がり部分の高さが異なっていても、二面の同時処理が可能となる。
【0029】
溝を有するスライド部という簡易な構造で、第1のケーシング部の高さ調整を可能にできる。
【0030】
第1及び第2のケーシング部が、それぞれ、第1及び第2のウォータージェットノズルを囲う形状にしておいて、吸引口を設けることで、外部の吸引装置から、表面処理後の高圧水及び礫を吸引することができる。これにより、高圧水及び礫が現場の周辺に飛散するのを防止することができる。
【0031】
第1及び第2のケーシング部を台車に取り付けることで、台車を移動させながら、二面を同時に処理することが可能となる。
【0032】
台車を、第1の枠体及び第2の枠体で構成して、第1の枠体を第2の枠体に対して、高さ調整可能とすることで、構造物の立ち上がり面の高さが異なる場合でも、第1のウォータージェットノズルの高さを調整して、二面の同時処理が可能となる。
【0033】
ブラシを設けることで、高圧水や礫の周囲への飛散を防止できる。
【0034】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る表面処理装置1の構造を説明するための図である。
図1では、水平部分用の第1のウォータージェットノズル2aと、立ち上がり部分用の第2のウォータージェットノズル2bとが、地覆10の断面に対して、どのように配置されるかが示されている。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る表面処理装置1の構造を説明するための図である。
図2では、
図1の状態から、第1のウォータージェットノズル2aが、第2のウォータージェットノズル2bに対して、上側にスライドした状態が示されている。
【
図3】
図3は、本発明一実施形態に係る表面処理装置1について、第2のウォータージェットノズル2b側を正面としたときの正面図である。
【
図4】
図4は、本発明一実施形態に係る表面処理装置1について、第1のウォータージェットノズル2a側を上面としたときの平面図である。
【
図5】
図5は、本発明一実施形態に係る表面処理装置1の斜視図である。
【
図6】
図6は、第1のケーシング部3a及び第2のケーシング部3bの内部構造を説明するための図である。
【
図7】
図7は、表面処理装置1の実施例を用いて、地覆の表面を処理しているときの施工中の様子を示す図面代用写真である。
【
図8】
図8は、表面処理装置1の実施例を用いて、地覆の表面を処理した後の地覆の表面を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係る表面処理装置1の概略構造について説明する。
表面処理装置1は、地覆10の水平部分の表面を処理するための水平部分用の第1のウォータージェットノズル2aと、地覆部分10の立ち上がり部分の表面を処理するための立ち上がり部分用の第2のウォータージェットノズル2bとを備える。
【0037】
第1のウォータージェットノズル2aは、片側が開口した第1のケーシング部3aの内で、回転可能に収められている。
第2のウォータージェットノズル2bは、片側が開口した第2のケーシング部3bの中で、回転可能に収められている。
第1のケーシング部3aは、幅Dだけ上下可能となるように、スライド部4を介して、第2のケーシング部3bに対して取付けられている。
【0038】
第1のケーシング3aには、ロータリージョイント5aが取付けられている。ロータリージョイント5aは、高圧水用の配管(図示せず)と回転部分(ここでは、第1のウォータージェットノズル2a)とを繋ぐための器具である。ロータリージョイント5aは、回転継手やスイベルジョイントと呼ばれるような器具であってもよい。すなわち、ロータリージョイント5aは、第1のウォータージェットノズル2aに高圧水を通水させることができ、かつ、第1のウォータージェットノズル2aを回転させることができる継手である。ロータリージョイント5aは、第1のケーシング3aに取付けられている。
【0039】
ロータリージョイント5aに設けられた高圧水供給口6a(
図3及び
図4参照)から、高圧水が供給される。
ロータリージョイント5aに設けられた回転軸7aに、第1のウォータージェットノズル2aが取付けられる。
【0040】
第1のケーシング部3aには、エアモータ8aが取付けられている。エアモータ8aは、外部から供給されるエアによって、回転するモータである。なお、エアモータ8a以外に、電気式や油圧式など他の回転駆動装置が用いられてもよい。
【0041】
エアモータ8aの回転軸(図示せず)とロータリージョイント5aの回転軸7aとは、プーリーやベルト等の伝達手段によって繋がっている。エアモータ8aの回転軸(図示せず)が回転すると、回転軸7aが回転し、第1のウォータージェットノズル2aが回転する構造となっている。
【0042】
第1のウォータージェットノズル2aは、内部に通水路を有している。当該通水路には、複数の噴射ノズル9aが取付けられている。なお、噴射ノズル9aの数や取付角度は、本発明において限定されない。また、ここでは、第1のウォータージェットノズル2aは、一文字型であるとしているが、十字型や中心から三方向に伸びる三角型であってもよく、あらゆる型のウォータージェットノズルを用いることができる。また、噴射ノズル9aは、一列に並ぶ場合に限らず、ジグザグ状に並んでいるなどしてもよい。噴射ノズル9aの配列は、本発明において限定されない。
【0043】
高圧水供給口6aから高圧水が供給されることで、ロータリージョイント5aの内部の通水路及び第1のウォータージェットノズル2aの内部の通水路を通じて、各噴射ノズル9aから、高圧水が噴射される。
合せて、エアモータ8aを駆動させて、回転軸7aを回転させることで、第1のウォータージェットノズル2aが回転しながら、各噴射ノズル9aから高圧水が噴射されることとなる。これによって、地覆10の水平面の表面が処理される。なお、表面を処理することを「斫る(はつる)」ということもある。
【0044】
第2のウォータージェットノズル2b側についても、第1のウォータージェットノズル2a側と同じ構造を有している。すなわち、第2のケーシング部3bに、ロータリージョイント5bが取付けられている。ロータリージョイント5bは、高圧水供給口6b(
図3及び
図4参照)を有している。ロータリージョイント5bの回転軸7bに、第2のウォータージェットノズル2bが取付けられている。第2のケーシング部3bには、エアモータ8bが取付けられている。エアモータ8bの回転軸(図示せず)と、回転軸7bとが伝達手段によって繋がっている。エアモータ8bの駆動に合せて、第2のウォータージェットノズル2bが回転する機構となっており、高圧水供給口6bから供給される高圧水が、噴射ノズル9bから噴射されつつ、第2のウォータージェットノズル2bが回転することとなる。これによって、地覆10の立ち上がり部分の表面が処理される。
【0045】
後述するが、第1のケーシング部3a及び第2のケーシング部3bには、吸引口が設けられており、斫りに使用された高圧水及び斫りによって生じた礫が、吸引口から吸引される。
【0046】
さらに、第1のケーシング部3aの外周のうち、第2のケーシング部3bと連結されている一辺以外の残りの三辺には、ブラシ11aが取付けられている。ブラシ11aによって、第1のケーシング部3aから、高圧水及び/又は礫が飛散するのを防止する。
【0047】
同様に、第2のケーシング部3bの外周のうち、第1のケーシング部3aと連結されている一辺以外の残りの三辺には、ブラシ11bが取付けられている。ブラシ11bによって、第2のケーシング部3bから、高圧水及び/又は礫が飛散するのを防止する。
【0048】
図2及び
図3を参照しながら、第1のケーシング部3aが第2のケーシング部3bに対して、上下に高さ調整可能であることについて説明する。
図2に示すように、第1のケーシング部3aと第2のケーシング部3bとは、スライド部4を介して、連結されている。
【0049】
スライド部4は、第2のケーシング部3bに取付けられている。スライド部4は、
図3に示すように、複数の溝4aを有している。複数の締結手段4bによって、第1のケーシング部3aがスライド部4に取付けられている。締結手段4bを緩めて、締結手段4bの溝4aでの位置を調整することで、第2のケーシング部3bに対する第1のケーシング部3aの高さを、調整することができる。
【0050】
地覆10の立ち上がり部分の高さは区々である。そのため、水平部分の斫りに用いる第1のウォータージェットノズル2aのための第1のケーシング部3aを高さ調整可能とすることで、地覆10の立ち上がり部分の高さが違っても、水平部分と立ち上がり部分の両方を同時に斫ることが可能となる。
【0051】
なお、
図1と
図2とを比較すると分かるように、第1のケーシング部3aを下げている場合、第2のウォータージェットノズル2bの上部は、第1のケーシング部3aの一部に、高圧水を噴射することとなる(
図1において、“K”と囲った部分を参照)。第1のケーシング部3aは、典型的には、金属で形成されるので、当該高圧水が噴射されたとしても、第1のケーシング部3aが破損等することはない。また、このような構造によって、第2のウォータージェットノズル2bからの高圧水が第1のケーシング部3aに直接侵入するのが防止されるので、第1のウォータージェットノズル2aによる表面処理作業に悪影響を及ぼすことはない。
【0052】
第1のウォータージェットノズル2a及び第2のウォータージェットノズル2bから噴射される高圧水によって、地覆10を斫りながら、表面処理装置1を地覆の上で、移動させる必要がある。そのため、第1のケーシング部3a及び第2のケーシング部3bを、台車12に固定しておくとよい。
【0053】
図3~
図5を参照しながら、台車12の構造について説明する。なお、図示した台車12の具体的構造はあくまでも一例に過ぎない。第1のケーシング部3a及び第2のケーシング部3bが地覆の水平面と立ち上がり面に沿うように、第1のケーシング部3a及び第2のケーシング部3bを垂直に取付ける台車であれば、その具体的構造は、本発明を限定するものではない。
【0054】
台車12は、第1のケーシング部3aを取付けるための第1の枠体12aと、第2のケーシング部3b及びスライド部4を取付けるための第2の枠体12bと、枠体12bから上方向に伸びる枠体12cと、枠体12cの上部に設け垂れた取っ手12dと、枠体12aの下部の二つの角に設けられた2つの車輪12eと、枠対2bの下部の2つの角に設けられた2つの車輪12fとを備える。
【0055】
図5に示すように、第1の枠体12aは、スライド部4の左右の辺4cで、上下に位置調整可能に取付けられている。したがって、第1の枠体12aは、第2の枠体12bに対して、上下に位置調整可能となっている。
【0056】
図6を参照しながら、第1のケーシング部3a及び第2のケーシング部3bにおける高圧水及び礫の吸引構造について説明する。
【0057】
図6に示すように、第1のケーシング部3aの内部では、第1のウォータージェットノズル2aが回転する。その回転の外周に沿って、第1のケーシング部3aの内部では、略円形の枠14aが設けられている。そして、枠14aの一部が空いて、吸引口13a及び13bと繋がっている。なお、ここでは、どちらの吸引口からでも吸引できるように、二つの吸引口13a及び13bを用いることとしたが、使用時は、一方を閉じて、他方から高圧水及び礫を吸引する。
【0058】
同様に、第2のケーシング部3bの内部にも、略円形の枠14bが設けられていて、枠14bと繋がる吸引口13c及び13dが設けられている。同じく、吸引口13c及び13dのどちらか一方から高圧水及び礫が吸引される。
【0059】
なお、ケーシング部に設けられた吸引口は、少なくとも1つであればよいことは言うまでもない。
【0060】
また、略円形の枠がケーシング部の内部に設けられていなくても、ケーシング部の吸引口が設けられていれば、内部の高圧水及び礫の吸引が可能であるので、略円形の枠は必須ではない。
【0061】
以上のように、第2のケーシング部3bの上部に、第1のケーシング部3aの一側面側を取り付ける構成とすることで、第1のケーシング部3aと第2のケーシング部3bとが逆L字型、すなわち、直角に配置されることとなる。かかる構成によって、地覆10の水平部分については、第1のケーシング部3aに取付けられた第1のウォータージェットノズル2aによって、表面処理が行われ、立ち上がり部分については、第1のケーシング部3aに対して垂直に設けられた第2のケーシング部3bに取付けられた第2のウォータージェットノズル2bによって、表面処理が行われることとなる。
【0062】
そのため、立ち上がり面と水平面とを有する構造物(たとえば、地覆など)の二面の表面を同時に処理することが可能な表面処理装置1が提供されることとなる。
【0063】
図7及び
図8の図面代用写真に示すように、二面が綺麗に処理されていることが分かる。
【0064】
さらに、第2のケーシング部3bに取付けられたスライド部4に対して、第1のケーシング部3aを、高さ調整可能とすることで、立ち上がり面の高さが異なる現場でも、立ち上がり面と水平面とを有する構造物の二面の表面を同時に処理することが可能となる。
【0065】
第1のケーシング部3a及び第2のケーシング部3bを台車12に取付け、台車12の下部に車輪12e及び12fを設けることで、表面処理装置1を移動させながら、構造部の二面の表面を同時に処理することが可能となる。
【0066】
台車12において、第1のケーシング部3aを取付けるための第1の枠体12aを、第2のケーシング部3b及びスライド部4を取付けるための第2の枠体12bに対して、上下に高さ調整可能とすることで、立ち上がり面の高さが異なる現場でも、立ち上がり面と水平面とを有する構造物の二面の表面を同時に処理することが可能となる。
【0067】
第1のケーシング部3a及び第2のケーシング部3bに、吸引口を設けることで、表面処理時の高圧水及び礫を吸引しながらの作業が可能となる。
【0068】
第1のケーシング部3a及び/又は第2のケーシング部3bの回りの少なくとも一部に、ブラシ11a及び/又は11bを取付けることで、ケーシング部の外部に高圧水及び礫が飛散するのを出来る限り防止することが可能となる。
【0069】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。本明細書に開示されている発明の構成要件は、それぞれ独立に単独した発明として成立するものとする。各構成要件をあらゆる組み合わせ方法で組み合わせた発明も、本発明に含まれることとする。本明細書上の具体的な表現については、あくまでも、例示であり、本発明には、当該例示的表現を概念化したものも含まれることとする。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、表面処理装置であり、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 表面処理装置
2a 第1のウォータージェットノズル
2b 第2のウォータージェットノズル
3a 第1のケーシング部
3b 第2のケーシング部
4 スライド部
4a 溝
4b 締結手段
5a,5b ロータリージョイント
6a,6b 高圧水供給口
7a,7b 回転軸
8a,8b エアモータ
9a,9b 噴射ノズル
10 地覆
11a,11b ブラシ
12a 第1の枠体
12b 第2の枠体
12c 枠体
12d 取っ手
12e,12f 車輪
13a,13b,13c,13d 吸引口
14a,14b 枠
【要約】
【課題】立ち上がり面と水平面とを有する地覆などの構造物の二面の表面を同時に処理することが可能な表面処理装置を提供する。
【解決手段】表面処理装置1は、構造物の水平面の表面を処理するための第1のウォータージェットノズル2aと、構造物の立ち上がり面を処理するための第2のウォータージェットノズル2bとを備える。第1のケーシング部3aは、第1のウォータージェットノズル2aを回転可能に取り付けて、水平面に沿って設けられる。第2のケーシング部3bは、第2のウォータージェットノズル2bを回転可能に取り付けて、立ち上がり面に沿って設けられる。第2のケーシング部3bの上部に第1のケーシング部3aの一側面側が取り付けられている。
【選択図】
図1