(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】加熱試験装置及び延伸試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/08 20060101AFI20241220BHJP
【FI】
G01N3/08
(21)【出願番号】P 2024040237
(22)【出願日】2024-03-14
【審査請求日】2024-07-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522052831
【氏名又は名称】エバー測機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100224007
【氏名又は名称】長谷 潮
(72)【発明者】
【氏名】江越 顕太郎
(72)【発明者】
【氏名】江越 隆浩
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-003980(JP,A)
【文献】特開2023-115866(JP,A)
【文献】特開2003-207430(JP,A)
【文献】特開平06-313751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
少なくとも前記本体部を収容する筐体と、
試料を保持する試料保持部と、
前記試料保持部が配置されて前記試料の試験が行われる前記本体部内の共通の試験空間と、
前記試験空間に共通して流体連通可能な複数の接続ポートであって、それぞれが別々の、温調気体を生成することができる恒温槽と接続可能な複数の接続ポートと、
前記接続ポートと前記試験空間を流体連通するために前記本体部に設けられた本体ダクト部と、
前記各恒温槽と前記試験空間の間の流体連通を制御するための1又は複数のシャッタ手段と、
を備え、
前記各恒温槽で生成された温調気体は、前記シャッタ手段が開状態において前記試験空間内への流入が許容され、前記シャッタ手段が閉鎖状態において前記試験空間内への流入が禁止される
ことを特徴とする加熱試験装置。
【請求項2】
前記筐体内の格納位置と前記筐体外の取出位置との間で出し入れが可能な引出ユニットをさらに備え、
前記試料保持部は、前記引出ユニットに設けられ、前記引出ユニットが前記格納位置にある状態で前記試験空間に配置され、
複数の前記接続ポートのそれぞれは、他の前記接続ポートに接続された前記恒温槽、及び前記取出位置にある状態の前記引出ユニットと干渉することなく、複数の前記恒温槽を互いに異なる方向から接続できるように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱試験装置。
【請求項3】
前記恒温槽のそれぞれは、複数の前記接続ポートのいずれかに接続可能な接続部を有し、
複数の前記接続ポートの少なくとも1つは、前記筐体に設けられ、
前記筐体に設けられた前記接続ポートは、前記恒温槽が有する前記接続部を着脱自在である
ことを特徴とする請求項2に記載の加熱試験装置。
【請求項4】
前記筐体に設けられた前記接続ポートは、封止手段によって封止可能である
ことを特徴とする請求項3に記載の加熱試験装置。
【請求項5】
前記恒温槽のそれぞれは、複数の前記接続ポートのいずれかに接続可能な接続部を有し、
前記1又は複数のシャッタ手段は、前記各恒温槽の接続部、当該接続部が接続される前記接続ポート、及び前記本体ダクト部の少なくともいずれか1つに設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の加熱試験装置。
【請求項6】
複数の前記シャッタ手段を備え、当該複数のシャッタ手段は、第1シャッタ手段と第2シャッタ手段とを含み、
前記第1シャッタ手段は、前記各恒温槽の接続部、又は当該接続部が接続される前記接続ポートに設けられ、
前記第2シャッタ手段は、前記本体ダクト部に設けられ、前記試験空間に向けて前記温調気体を吹き出す吹出部を少なくとも閉鎖でき、
前記恒温槽で生成された温調気体は、前記第1シャッタ手段が開状態で、かつ前記第2シャッタ手段が閉鎖状態において、前記本体ダクト部への流入が許容され、かつ前記試験空間内への流入が禁止される
ことを特徴とする請求項5に記載の加熱試験装置。
【請求項7】
前記本体ダクト部は、前記第2シャッタ手段の近傍にバイパス部を備え、
前記第1シャッタ手段が開状態で、かつ前記第2シャッタ手段が閉鎖状態において、前記本体ダクト部と前記恒温槽の間で前記温調気体を循環させることができる、前記バイパス部を含む循環流路が形成される
ことを特徴とする請求項6に記載の加熱試験装置。
【請求項8】
前記本体ダクト部は、前記試験空間側の端部にパンチング板を備え、
前記引出ユニットは、前記試験空間と前記パンチング板とを連結するための連結部材を備え、
前記連結部材は、前記引出ユニット側と前記パンチング板との間で進退移動が可能であり、
前記連結部材が前記パンチング板側の突出位置に突出した状態で、前記連結部材によって前記試験空間と前記パンチング板との隙間が塞がれた状態となり、
前記連結部材が前記引出ユニット側の退避位置に退避した状態で、前記試験空間と前記パンチング板との隙間が開かれた状態となる
ことを特徴とする請求項
2に記載の加熱試験装置。
【請求項9】
前記接続ポートは、入口と、出口とを備え、
前記本体ダクト部は、前記接続ポートの前記入口を介して前記恒温槽から供給される前記温調気体を前記試験空間に供給するための給気ダクトと、前記接続ポートの前記出口を介して前記試験空間の気体を前記恒温槽に戻すための還気ダクトと、を備え、
前記恒温槽は、前記本体ダクト部の前記入口に接続される給気ダクトと、前記接続ポートの前記出口に接続される還気ダクトと、恒温槽内の気体を加熱するための加熱手段と、を備え、
前記給気ダクトから前記試験空間に供給された前記温調気体は、前記試料保持部に保持された前記試料を温調した後、前記還気ダクトに流入する
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱試験装置。
【請求項10】
第1貫通孔及び第2貫通孔を有するパンチング板を備え、
前記パンチング板の前記第1貫通孔は、前記給気ダクトの前記試験空間側の端部に接続され、
前記パンチング板の前記第2貫通孔は、前記還気ダクトの前記試験空間側の端部に接続され、
前記給気ダクトから供給され、前記パンチング板の前記第1貫通孔から吹き出した温調気体が、前記試料保持部に保持された前記試料を温調した後、前記パンチング板の前記第2貫通孔を経て前記還気ダクトに流入する
ことを特徴とする請求項9に記載の加熱試験装置。
【請求項11】
前記本体ダクト部は、前記試験空間の上方に設けられた上部ダクトと、前記試験空間の下方に設けられた下部ダクトとを有し、
前記恒温槽は、前記上部ダクト及び下部ダクトに前記接続ポートを介して流体連通される
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱試験装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の加熱試験装置と、測定手段と、を備え、前記試料としての板状体またはフィルム状体の延伸試験を行うための延伸試験装置であって、
前記試料保持部は、
伸縮可能に構成され、それぞれが多角形の辺をなすように配置された複数のチャック部材と、前記多角形の隣接する辺をなす2つの前記チャック部材の両端を支持し、スライド移動可能な複数のスライダと、を備え、
前記複数のチャック部材に保持された板状又はフィルム状の前記試料は、前記複数のスライダの移動によって延伸させることができ、
前記測定手段は、前記試料保持部によって延伸されている前記試料の物理量を測定できる
ことを特徴とする延伸試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱試験装置及び延伸試験装置に関し、特に、複数の恒温槽を接続可能な加熱試験装置及び延伸試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムは、包装、雑貨、農業、工業、食品、医療、光学など広範囲の分野に亘って利用されている。樹脂フィルムは、例えば、弾性率向上、脆弱性改善、水蒸気透過率改善、光学的異方性付与など、機能性を持たせることを目的として、二軸延伸を行う場合がある。
【0003】
近年、二軸延伸フィルムは、用途の多様化、軽量化、高機能化に伴い成形性や品質の要求も厳しく、延伸中の破断、偏肉精度の低下、配向の不均一など様々な課題がある。樹脂フィルムの特性は延伸の程度によって変化するため、それらの課題を解決するためには樹脂フィルムの特性の変化と延伸の程度との関係を適切に把握する必要がある。
【0004】
樹脂フィルムの特性の変化と延伸の程度との関係を適切に把握するためには、延伸後の樹脂フィルムの特性のみではなく、延伸過程にある樹脂フィルムにおいてどのような特性の変化がおきているかを適切に把握する必要がある。すなわち、延伸中の樹脂フィルムの特性をその場(in-situ)で適切に評価することが必要である。
【0005】
延伸中の樹脂フィルムの特性をその場(in-situ)で評価できる延伸試験装置として、特許文献1に記載の樹脂フィルム特性評価装置がある。特許文献1に記載の装置は、温度制御可能な恒温槽と、恒温槽の内部に設けられ、試験片としての樹脂フィルムを2軸以上に同時延伸可能なフィルム延伸手段と、延伸中の樹脂フィルムに対して電磁波を照射する電磁波照射手段と、樹脂フィルムを透過した電磁波を検出する検出手段とを備えており、所定の試験温度に設定された恒温槽内で樹脂フィルムを延伸しつつ、検出手段の検出結果に基づいて樹脂フィルムの特性を評価するものである。そして、恒温槽内には、温風を噴出する吹出ノズルと、恒温槽内の空気を吸込む吸込ノズルとがフィルム延伸手段を挟んで対向して設けられている。
【0006】
特許文献1に記載の樹脂フィルム特性評価装置は、上面に設けられた蓋部を解放することにより、延伸手段への樹脂フィルムの着脱を行うものである。したがって、樹脂フィルムを交換するために蓋部を解放すると恒温槽内の空気が外気と入れ替わるので、恒温槽内が所定の試験温度に到達するために要する時間が長くなる。また、樹脂フィルムの交換直後に、恒温槽内の温度ムラが生ずる虞もある。また、段階的に温度を変えて複数の温度条件における樹脂フィルムの特性を評価しようとすると、樹脂フィルムは、恒温槽内の温度が遷移する過程を経ることになる。恒温槽内の温度が遷移する過程を経ることを避けるために、複数の温度毎に樹脂フィルムを延伸試験装置から出し入れすると、評価に要する時間が長くなる。
【0007】
本願の出願人は、引用文献1に記載の樹脂フィルム特性評価装置における問題点を解決するべく特許文献2に記載の延伸試験装置を提案した。
【0008】
特許文献2において提案した延伸試験装置は、筐体内に設けられた恒温槽と、筐体内の格納位置と筐体外の取出位置との間で出し入れが可能な引出ユニットと、引出ユニットに設けられて試験片を保持して延伸することが可能な試験片延伸部と、引出ユニットが格納位置にある状態で試験片の延伸が行われる試験空間と、を備え、引出ユニットが格納位置にある状態で恒温槽からの温調気体が試験空間に流入可能となり、引出ユニットが取出位置にある状態で恒温槽からの温調気体が試験空間に流入不可能となるように構成されている。このように構成されていることによって、この延伸試験装置は、試験片の交換の際、試験片の延伸が行われる試験空間を速やかに試験温度に到達させることができる。
【0009】
また、この延伸試験装置は、引出ユニットが進退移動可能な第1軸方向に直交する第2軸方向に移動可能で、独立して温度設定可能な複数の恒温槽を第2軸方向に並べて設け、所定位置に配置された1つの恒温槽が、引出ユニットが格納位置にある状態で試験空間と連通できるように構成されている。このように構成することによって、1つの試験片に対して2以上の温度で延伸試験を行う場合、試験片を筐体から出すことなく試験を行うことができるので、延伸試験に要する時間を短縮できる。
【0010】
しかしながら、特許文献2において提案した複数の恒温槽を設けた延伸試験装置は、それぞれが発熱部、送風機構、給気ダクト、及び還気ダクトを有する複数の恒温槽を第2軸方向に移動させることによって、複数の恒温槽のいずれかと試験空間とを連通させる。そのため、恒温槽を切り換えて試験温度を変更する際に恒温槽を移動させる時間が必要である。また、恒温槽数分の空間に退避空間を加えた空間が第2軸方向に必要である。つまり、この延伸試験装置は、試験温度の変更に要する時間と、延伸試験装置のフットプリントにおいて改善の余地があることがわかった。
【0011】
また、引用文献1に記載の樹脂フィルム特性評価装置における問題点を解決できる延伸試験装置は、特許文献3にも開示されている。特許文献3に開示された延伸試験装置は、装着された樹脂フィルム片を単軸又は二軸延伸する延伸架枠と、装填領域及び/又は取出領域と、延伸架枠の移動通路に相前後して設けられる少なくとも2つの加熱炉と、を備え、延伸架枠が装填領域から少なくとも2つの加熱炉を経て取出領域に移動する間に、樹脂フィルム片の延伸試験が行われる。
【0012】
そのため、特許文献3に開示された延伸試験装置は、試験温度を変更する際に別の恒温槽に延伸架枠を移動させる時間が必要である。また、加熱炉毎に延伸架枠を収容する試験空間を設けることになるので、少なくとも2つの加熱炉のそれぞれについて、延伸架枠よりも大きな設置面積が必要である。すなわち、加熱炉における加熱気体生成部を小型化しても、各加熱炉の設置面積は延伸架枠よりも小さくできず、延伸試験装置のフットプリントが加熱炉の数に応じて増大する。つまり、この延伸試験装置も、試験温度の変更に要する時間と、延伸試験装置のフットプリントにおいて改善の余地がある。
【0013】
また、特許文献3に開示された延伸試験装置は、少なくとも2つの加熱炉は、それぞれ、上加熱炉と下加熱炉を備え、上加熱炉と下加熱炉の間隙を延伸架枠が移動するように構成されている。したがって、延伸架枠が移動して来る前に加熱炉を予熱すると、加熱空気が上加熱炉と下加熱炉の間隙から漏洩する。つまり、予熱時に漏洩する加熱空気が測定系に悪影響を与える虞がある。特に、この延伸試験装置において、温度変動に敏感な光学素子を用いる測定系を採用する場合は、加熱空気の漏洩に対する対策が必要である。
【0014】
延伸試験装置の先行技術を例に、先行技術における課題を説明したが、試料保持部が試験片を延伸する機能を有しない加熱試験装置も同様の課題を抱えることは、自明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2011-095252号公報
【文献】特開2023-115866号公報
【文献】特開2019-147371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の恒温槽によって複数の温度での試験を迅速に行うことができ、また、フットプリントを抑えることができる加熱試験装置及び延伸試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明に係る加熱試験装置(10,10a~10e)は、本体部(1,1a)と、少なくとも前記本体部(1,1a)を収容する筐体(2,2a~2e)と、試料(T)を保持する試料保持部(4)と、前記試料保持部(4)が配置されて前記試料(T)の試験が行われる前記本体部(1,1a)内の共通の試験空間(TS)と、前記試験空間(TS)に共通して流体連通可能な複数の接続ポート(11)であって、それぞれが別々の、温調気体を生成することができる恒温槽(5)と接続可能な複数の接続ポート(11)と、前記接続ポート(11)と前記試験空間(TS)を流体連通するために前記本体部(1,1a)に設けられた本体ダクト部(12,12a)と、前記各恒温槽(5)と前記試験空間(TS)の間の流体連通を制御するための1又は複数のシャッタ手段(59,第2シャッタ手段)と、を備え、前記各恒温槽(5)で生成された温調気体は、前記シャッタ手段(59,第2シャッタ手段)が開状態において前記試験空間(TS)内への流入が許容され、前記シャッタ手段(59,第2シャッタ手段)が閉鎖状態において前記試験空間(TS)内への流入が禁止されることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る加熱試験装置によれば、複数の恒温槽によって複数の温度での試験を迅速に行うことができ、また、フットプリントを抑えることができる。また、複数の恒温槽を移動させたり、複数の恒温槽内で試料保持部を移動させたりすることを要しないので、恒温槽及び/又は試料保持部を移動させる機構などを省くことができる。また、第1温度の温調気体を生成する恒温槽を用いて試験を行っている間に、別の恒温槽において、第2温度の温調気体を当該別の恒温槽から漏洩させることなく、生成させるように使用することができる。
【0019】
また、本発明に係る加熱試験装置は、前記筐体(2)内の格納位置(P)と前記筐体外の取出位置(Q)との間で出し入れが可能な引出ユニット(3)をさらに備え、前記試料保持部(4)は、前記引出ユニット(3)に設けられ、前記引出ユニット(3)が前記格納位置(P)にある状態で前記試験空間(TS)に配置され、複数の前記接続ポート(11)のそれぞれは、他の前記接続ポート(11)に接続された前記恒温槽(5)、及び前記取出位置(Q)にある状態の前記引出ユニット(3)と干渉することなく、複数の前記恒温槽(5)を互いに異なる方向から接続できるように配置されているように構成することができる。このように構成することによって、質的(温度安定性等)及び量的に好適な温調気体を生成可能な寸法の恒温槽を複数配置することができる。
【0020】
また、本発明に係る加熱試験装置は、前記恒温槽(5)のそれぞれは、複数の前記接続ポート(11)のいずれかに接続可能な接続部を有し、複数の前記接続ポート(11)の少なくとも1つは、前記筐体(2e)に設けられ、前記筐体(2e)に設けられた前記接続ポート(11)は、前記恒温槽(5)が有する前記接続部を着脱自在であるように構成することができる。また、さらに、前記筐体(2e)に設けられた前記接続ポート(11)は、封止手段(15)によって封止可能であるように構成することができる。このように構成することによって、筐体(2e)を変更することなく、恒温槽(5)の数を変更することができる。
【0021】
また、本発明に係る加熱試験装置は、前記恒温槽(5)のそれぞれは、複数の前記接続ポート(11)のいずれかに接続可能な接続部を有し、前記1又は複数のシャッタ手段(59,第2シャッタ手段)は、前記各恒温槽(5)の接続部、当該接続部が接続される前記接続ポート(11)、及び前記本体ダクト部(12,12a)の少なくともいずれか1つに設けられているように構成することができる。そして、さらに、複数の前記シャッタ手段(59,第2シャッタ手段)を備え、当該複数のシャッタ手段(59,第2シャッタ手段)は、第1シャッタ手段(59)と第2シャッタ手段とを含み、前記第1シャッタ手段(59)は、前記各恒温槽(5)の接続部、又は当該接続部が接続される前記接続ポート(11)に設けられ、前記第2シャッタ手段は、前記本体ダクト部(12a)に設けられ、前記試験空間(TS)に向けて前記温調気体を吹き出す吹出部(58-1)を少なくとも閉鎖でき、前記恒温槽(5)で生成された温調気体は、前記第1シャッタ手段(59)が開状態でかつ前記第2シャッタ手段が閉鎖状態において、前記本体ダクト部(12a)への流入が許容され、かつ前記試験空間(TS)内への流入が禁止されるように構成することができる。また、さらに、前記本体ダクト部(12a)は、前記第2シャッタ手段の近傍にバイパス部(12aB)を備え、前記第1シャッタ手段(59)が開状態で、かつ前記第2シャッタ手段が閉鎖状態において、前記本体ダクト部(12a)と前記恒温槽(5)の間で前記温調気体を循環させることができる、前記バイパス部(12aB)を含む循環流路が形成されるように構成することができる。このように構成することによって、本体ダクト部(12)の吹出部(58-1)から前記試験空間(TS)に向けて前記温調気体を吹き出す前に、温調空気の流路の少なくとも一部を予熱できるので、試験空間(TS)は迅速に均一な試験温度に設定される。
【0022】
また、本発明に係る加熱試験装置は、さらに、前記本体ダクト部(12,12a)は、前記試験空間(TS)側の端部にパンチング板(58,58a)を備え、前記引出ユニット(3)は、前記試験空間(TS)と前記パンチング板(58,58a)とを連結するための連結部材(32)を備え、前記連結部材(32)は、前記引出ユニット(3)側と前記パンチング板(58,58a)との間で進退移動が可能であり、前記連結部材(32)が前記パンチング板(58,58a)側の突出位置に突出した状態で、前記連結部材(32)によって前記試験空間(TS)と前記パンチング板(58,58a)との隙間が塞がれた状態となり、前記連結部材(32)が前記引出ユニット(3)側の退避位置に退避した状態で、前記試験空間(TS)と前記パンチング板(58,58a)との隙間が開かれた状態となるように構成することができる。このように構成することによって、試験空間(TS)から温調気体が漏れて拡散することを防止できるので、試験空間(TS)は、迅速に均一な試験温度に設定できる。
【0023】
また、前記接続ポート(11)は、入口(11i)と、出口(11o)とを備え、前記本体ダクト部(12,12a)は、前記接続ポート(11)の前記入口(11i)を介して前記恒温槽(5)から供給される前記温調気体を前記試験空間(TS)に供給するための給気ダクト(12s,12as)と、前記接続ポート(11)の前記出口(11o)を介して前記試験空間(TS)の気体を前記恒温槽(5)に戻すための還気ダクト(12r,12ar)と、を備え、前記恒温槽(5)は、前記本体ダクト部(12,12a)の前記入口(11i)に接続される給気ダクト(53)と、前記接続ポート(11)の前記出口(11o)に接続される還気ダクト(54)と、送気手段と、恒温槽(5)内の気体を加熱するための加熱手段(57)と、を備え、前記給気ダクト(12s,12as)から前記試験空間(TS)に供給された前記温調気体は、前記試料保持部(4)に保持された前記試料(T)を温調した後、前記還気ダクト(12r,12ar)に流入するように構成することができる。また、第1貫通孔及び第2貫通孔を有するパンチング板(58,58a)をさらに備え、前記パンチング板(58,58a)の前記第1貫通孔は、前記給気ダクト(12s,12as)の前記試験空間(TS)側の端部に接続され、前記パンチング板(58,58a)の前記第2貫通孔は、前記還気ダクト(12r,12ar)の前記試験空間(TS)側の端部に接続され、前記給気ダクト(12s,12as)から供給され、前記パンチング板(58,58a)の前記第1貫通孔から吹き出した温調気体が、前記試料保持部(4)に保持された前記試料(T)を温調した後、前記パンチング板(58,58a)の前記第2貫通孔を経て前記還気ダクト(12r,12ar)に流入するように構成することもできる。このように構成することによって、恒温槽(5)で生成した温調気体は、給気ダクト(12s,12as)、試験空間(TS)、及び還気ダクト(12r,12ar)を経て、恒温槽(5)に戻るという、試験空間(TS)を温調するための循環流路が形成されるので、当該循環流路を温調気体がスムーズに流通し、試験空間(TS)は迅速に均一な試験温度に設定される。
【0024】
また、前記本体ダクト部(12,12a)は、前記試験空間(TS)の上方に設けられた上部ダクト(12U,12aU)と、前記試験空間(TS)の下方に設けられた下部ダクト(12L,12aL)とを有し、前記恒温槽(5)は、前記上部ダクト(12U,12aU)及び下部ダクト(12L,12aL)に前記接続ポート(11)を介して流体連通されるように構成することもできる。このように構成することによって、試料は、その上方及び下方から温調気体によって温調されるので、迅速に均一な試験温度に設定される。試料がフィルム状又は板状である場合に、この構成は特に有効である。
【0025】
本発明に係る延伸試験装置は、前記加熱試験装置(10,10a~10e)と、測定手段(7)と、を備え、前記試料(T)としての板状体またはフィルム状体の延伸試験を行うための延伸試験装置であって、前記試料保持部(4)は、伸縮可能に構成され、それぞれが多角形の辺をなすように配置された複数のチャック部材(44)と、前記多角形の隣接する辺をなす2つの前記チャック部材(44)の両端を支持し、スライド移動可能な複数のスライダ(45)と、を備え、前記複数のチャック部材(44)に保持された板状又はフィルム状の前記試料(T)は、前記複数のスライダ(45)の移動によって延伸させることができ、前記測定手段(7)は、前記試料保持部(4)によって延伸されている前記試料(T)の物理量を測定できることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る延伸試験装置によれば、本発明に係る加熱試験装置と同様、複数の恒温槽によって複数の温度での試験を迅速に行うことができ、また、フットプリントを抑えることができる。また、複数の恒温槽を移動させたり、複数の恒温槽内で試料保持部を移動させたりすることを要しないので、恒温槽及び/又は試料保持部を移動させるための機構などを省くことができる。また、第1温度の温調気体を生成する恒温槽を用いて試験を行っている間に、別の恒温槽において、第2温度の温調気体を当該別の恒温槽から漏洩させることなく、生成させるように使用することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る加熱試験装置及び延伸試験装置によれば、複数の恒温槽によって複数の温度での試験を迅速に行うことができ、また、フットプリントを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本願発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る延伸試験システムのブロック図である。
【
図2】本願発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る延伸試験装置の正面図である。
【
図3】本願発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る延伸試験装置の側面図であり、(a)は引出ユニットを取出位置に配置している状態を示す図で、(b)は引出ユニットを格納位置に配置し試験を行っている状態を示す図である。
【
図4】第1実施形態の正面図(
図2)におけるA-A断面図であり、(a)は引出ユニットを取出位置に配置している状態を示す図で、(b)は引出ユニットを格納位置に配置し試験を行っている状態を示す図である。
【
図5】第1実施形態の側面図(
図3)におけるB-B断面図であり、(a)は引出ユニットを取出位置に配置している状態を示す図で、(b)は引出ユニットを格納位置に配置し試験を行っている状態を示す図である。
【
図6】第1実施形態の側面図(
図3)におけるC-C断面図であり、(a)は引出ユニットを取出位置に配置している状態を示す図で、(b)は引出ユニットを格納位置に配置し試験を行っている状態を示す図である。
【
図7】延伸試験装置が備える引出ユニットの上面図であり、(a)は引出ユニット内のチャック部材の相互間距離が最小となっている状態を示す図で、(b)は引出ユニット内のチャック部材の相互間距離が最大となっている状態を示す図である。
【
図8】本願発明の第2実施形態に係る延伸試験装置の説明図であり、引出ユニット3を取出位置Qに配置している状態を示し、(a)は正面図(
図2)におけるA-A断面図であり、(b)は側面図(
図3)におけるB-B断面図である。
【
図9】本願発明の第1の変形例に係る延伸試験装置の説明図であり、(a)は引出ユニットを取出位置に配置している状態を示す図で、(b)は引出ユニットを格納位置に配置し試験を行っている状態を示す図である。
【
図10】本願発明の第2の変形例に係る延伸試験装置の説明図であり、(a)は引出ユニットを取出位置に配置している状態を示す図で、(b)は引出ユニットを格納位置に配置し試験を行っている状態を示す図である。
【
図11】本願発明の第3の変形例に係る延伸試験装置の説明図であり、(a)は引出ユニットを取出位置に配置している状態を示す図で、(b)は引出ユニットを格納位置に配置し試験を行っている状態を示す図である。
【
図12】本願発明の第4の変形例に係る延伸試験装置の説明図であり、(a)は引出ユニットを取出位置に配置している状態を示す図で、(b)は引出ユニットを格納位置に配置し試験を行っている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態である、延伸試験システムとして構成された加熱試験システムについて説明する。試験片(試料)を2軸方向に延伸しながら測定し、さらに測定結果の解析が可能な延伸試験システムについて具体的に説明する。しかしながら、本発明は、予め設定した温度環境に試料を曝露して試験を行う加熱試験システムに関するものであり、延伸試験システムに限るものではない。また、本発明は、測定手段7を有し、in-situで測定するものに限らず、温度環境に試料を曝露した後に、曝露前からの物理量の変化を別の装置で測定する加熱試験システムであってもよい。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0030】
<第1実施形態>
図1~
図7を参照して本発明の第1実施形態である延伸試験システムとして構成された加熱試験システムを説明する。
【0031】
図1は、第1実施形態に係る延伸試験システムのブロック図である。
図1に示すように、延伸試験システム(加熱試験システム)100は、延伸試験装置(加熱試験装置)10と、延伸試験装置10の動作を制御するとともに、測定結果の解析を行う制御装置90と、を備える。延伸試験システム100は、試験片延伸部(試料保持部)4に保持された試験片を加熱しながら延伸する延伸試験(加熱試験)に好適に使用できるように構成されている。延伸試験システム100は、外形が矩形の板状又はフィルム状の試験片を2軸方向に延伸しながら、その特性を測定手段7(張力測定手段47(
図7を参照)及び測光手段70(
図2を参照))により評価することができる。
【0032】
図1~
図6に示すように、延伸試験装置10は、本体部1と、筐体2と、引出しのように筐体2に対して出し入れが可能に構成された引出ユニット3と、引出ユニット3に設けられた試験片延伸部4と、筐体2内に設けられた試験片を加熱するための恒温槽5と、試験片Tの特性を測定する測定手段7と、を備える。
【0033】
図1に示す制御装置90は、主制御部91と、データ解析部92と、ディスプレイなどの表示装置を備えた表示部93と、不揮発性メモリなどからなる記憶装置94と、マウスやキーボードなどの入力デバイス95とから主として構成されている。制御装置90は、延伸試験装置10が含む被制御要素、具体的には、恒温槽5が備える加熱手段、換気機構、及び送気機構、試験片延伸部4等が備えるモータ等の駆動手段、ならびに測定手段7等の動作を制御する。データ解析部92は、測定手段7の出力を取得し、この取得した出力や、入力デバイス95から入力された解析パラメータを用いて、測定手段7の出力を解析し、解析結果を表示部に表示するとともに、記憶装置94に記憶する。
【0034】
制御装置90は、パーソナルコンピュータ(PC)などであってよい。制御装置90がPCの場合、当該PCを主制御部91として機能させるための制御用プログラムがインストールされている。制御用プログラムは、入力デバイス95から入力された延伸試験装置10の動作パラメータに基づいて被制御要素を動作させる。また、制御用プログラムは、延伸試験装置10の状態を監視するために設けられている各種センサ(不図示)からの出力を取得し、当該出力の表示部93への表示や、当該出力による被制御要素のフィードバック制御又はフィードフォワード制御を行うようにPCを動作させる。
【0035】
また、制御装置90がPCの場合、当該PCをデータ解析部92として機能させるための解析用プログラムがインストールされている。解析用プログラムは、測定手段7の出力を取得し、この取得した出力や、入力デバイス95から入力された解析パラメータを用いて、測定手段7の出力を解析し、解析結果を表示部に表示するとともに、記憶装置94に記憶するようにPCを動作させる。
【0036】
以下の説明では、各図に示すように、延伸試験装置10の正面(後述する筐体2の開口部21(
図3(a)を参照)が設けられた面)を手前側に向けて該延伸試験装置10を設置した状態での左右方向をX方向といい、その状態での前後方向(手前側及び奥側に向かう方向)をY方向といい、同じくその状態での上下方向をZ方向という。さらに、左右方向における向かって右向きを+X方向、向かって左向きを-X方向といい、前後方向における奥側の向きを+Y方向、手前側の向きを-Y方向といい、上下方向における上向きを+Z方向、下向きを-Z方向という。
【0037】
図2は、延伸試験装置10の正面図である。
図3は、延伸試験装置10の側面図であり、同図(a)は引出ユニット3を取出位置Qに配置している状態を示す図で、同図(b)は引出ユニット3を格納位置Pに配置し試験を行っている状態を示す図である。
【0038】
図2及び
図3において、破線は、筐体2内の本体部1、引出ユニット3、試験片延伸部4、恒温槽5(5a,5b)、及び測光手段70の光源部71及び受光部72の配置を示す。また、
図2及び
図3において、Z方向に伸びる軸線Iは、引出ユニット3を格納位置Pに配置したときの試験片延伸部4の中心TC(
図7(b)を参照)をZ方向に通る直線を示している。電磁波を用いた測定手段7である測光手段70は、軸線I又は試験片延伸部4の中心TCに基づいて配置されている。
【0039】
図4~
図7をさらに参照して、延伸試験装置10の構成要素毎に説明する。
図4は、
図2におけるA-A断面図であり、
図5は、
図3におけるB-B断面図であり、
図6は
図3におけるC-C断面図である。
図4~
図6において、(a)は引出ユニット3を取出位置Qに配置している状態を示す図で、(b)は引出ユニット3を格納位置Pに配置し、恒温槽5aを用いて試験を行っている状態を示す図である。
図7は、延伸試験装置10が備える引出ユニット3の上面図であり、同図(a)は引出ユニット3内のチャック部材44の相互間距離が最小となっている状態を示す図で、同図(b)は引出ユニット内のチャック部材44の相互間距離が最大となっている状態を示す図である。
【0040】
〔延伸試験装置の本体部〕
延伸試験装置10の本体部1は、恒温槽5を接続するための接続ポート11と、筐体2内に設けられ、延伸試験のために引出ユニット3が格納される格納部22と、格納部22と接続ポート11とを流体連通するための本体ダクト部12と、格納部22の上面及び下面の中央に設けられた整流のためのパンチング板58を備える。第1実施形態では、接続ポート11及び恒温槽5はともに筐体2内に設けられている。
【0041】
接続ポート11(11a,11b)は、延伸試験装置10の本体部1の左右両端にそれぞれ設けられており、それぞれに別々の恒温槽5(5a,5b)を接続することができる。各接続ポート11は、恒温槽5の給気ダクト53に接続される入口11iと、恒温槽5の還気ダクト54に接続される出口11oを備える(
図5及び
図6を参照)。
【0042】
本体ダクト部12について、
図4~
図6を用いて説明する。
図4及び
図5中の破線はパンチング板58を示す。
図6中の破線は、給気ダクト12s及び還気ダクト12rを画成する本体ダクト部12内の隔壁を示す。また、
図4~
図5中の実線矢印は、温調気体の流れを示す。
図6中の実線矢印は、恒温槽5内の温調気体の流れを示し、同破線矢印は、給気ダクト12s及び還気ダクト12r内の温調気体の流れを示す。
【0043】
図4~
図6に示すように、本体ダクト部12は、格納部22の+Z方向(上方)に設けられた上部ダクト12Uと、格納部22の-Z方向(上方)に設けられた下部ダクト12Lを備えている。上部ダクト12Uは、格納位置に配置された引出ユニット3の試験片延伸部4に保持された試験片の上面(おもて面)側に温調気体を供給するための給気ダクト12sと、同上面側から温調気体を回収するための還気ダクト12rを備える。下部ダクト12Lは、格納位置に配置された引出ユニット3の試験片延伸部4に保持された試験片の下面(うら面)側に温調気体を供給するための給気ダクト12sと、同下面側から温調気体を回収するための還気ダクト12rを備える。
【0044】
上部ダクト12U及び下部ダクト12Lの恒温槽5a,5b側の端部(
図1における+X方向及び-X方向の端部)には、それぞれ、接続ポート11a,11bが接続されている。上部ダクト12U及び下部ダクト12Lに接続された接続ポート11a,11bは、それぞれ、恒温槽5a,5bに接続される。すなわち、恒温槽5a,5bは、上部ダクト12Uに接続される接続部と、下部ダクト12Lに接続される接続部とを備える。
なお、上部ダクト12Uに接続されている接続ポート11と、下部ダクト12Lに接続されている接続ポート11を一体的な構成にすることもできる。また、恒温槽5において、上部ダクト12Uに接続される接続部と、下部ダクト12Lに接続される接続部とを一体的な構成にすることもできる。
【0045】
引出ユニット3が格納位置Pにある状態、すなわち、試験片の延伸が行われるときは、上部ダクト12U及び下部ダクト12Lから供給される温調気体によって試験片の上面及び下面が温調されるので、試験片がフィルム状よりも厚い板状の場合でも、試験片を所望の試験温度に迅速に加熱できる。
【0046】
図5及び
図6に示すように、本体ダクト部12の給気ダクト12sの恒温槽5a,5b側の端部は、接続ポート11の入口11iと流体連通可能に接続されている。また、給気ダクト12sの格納部22側の端部は、パンチング板58の中央の、貫通孔(第1貫通孔)が配列された第1領域58-1(
図6を参照)に接続されている。給気ダクト12sは、パンチング板58の第1領域58-1を介して、格納部22に流体連通可能となっている。パンチング板58の第1領域58-1は、温調気体を吹き出す吹出部として機能する。
【0047】
本体ダクト部12の還気ダクト12rの恒温槽5a,5b側の端部は、接続ポート11の出口11oと流体連通可能に接続されている。また、還気ダクト12rの格納部22側の端部は、パンチング板58の第1領域58-1の外側を囲み、貫通孔(第2貫通孔)が配列された第2領域58-2(
図6を参照)に接続されている。還気ダクト12rは、パンチング板58の第2領域58-2を介して、格納部22に流体連通可能となっている。
【0048】
格納部22には、延伸試験のために格納位置Pに配置された引出ユニット3が格納される。引出ユニット3が格納位置Pに配置されると、後述の連結蓋32(
図4、
図6、及び
図7を参照)がパンチング板58の第2領域58-2の外側を囲む、貫通孔を有しない第3領域58―3(
図7を参照)に近接又は当接するように配置される。これによって、格納部22内には、パンチング板58と連結蓋32によって囲まれた試験空間TSが形成される。
【0049】
本体ダクト部12の内、パンチング板58の第1領域58-1及び第2領域58-2に対応する部分は、実質的に、接続ポート11a及び接続ポート11bからの温調気体が流通する共用部分である。また、本体ダクト部12の内、共用部分よりも接続ポート11a側は、接続ポート11aからの温調気体が専ら流通する専用部分であり、共用部分よりも接続ポート11b側は、接続ポート11bからの温調気体が専ら流通する専用部分である。
【0050】
なお、本体ダクト部12は、パンチング板58の第1領域58-1及び第2領域58-2に対応する前記共用部分のみで構成し、接続ポート11a及び接続ポート11bが前記専用部分を有するように構成することもできる。
【0051】
〔引出ユニット〕
引出ユニット3は、
図7に示すように、略矩形の外形を有する平板状の引出本体31と、引出本体31に設けられた矩形状の貫通孔31cと、貫通孔31cの内部に設けられた試験片延伸部4とを備える。試験片延伸部4が配置された貫通孔31cは、
図4(a)に示すように、引出本体31の上面(第1面)31aから下面(第2面)31bに貫通する貫通領域である。すなわち、引出ユニット3は、Z方向に開口する貫通領域を有する部材であって、当該貫通領域内に試験片延伸部4が設けられている。一方、筐体2は、その正面に筐体2に対して引出ユニット3を出し入れするための開口部21が設けられ、その内部に開口部21からY軸方向に沿って延在する空間からなる格納部22が設けられている。
【0052】
引出ユニット3は、
図3(a)及び
図4(a)に示す筐体2外に取り出した取出位置Qと、
図3(b)及び
図4(b)に示す筐体2内の格納部22に格納した格納位置Pとの間で筐体2に対してY方向に進退移動させることができる。したがって、引出ユニット3は、+Y方向にスライドさせることによって筐体2内の格納位置Pに格納することができ、-Y方向にスライドさせることによって筐体2外の取出位置Qへ取り出すことができる。引出ユニット3が格納位置Pにある状態で、試験片延伸部4が試験のための位置に配置される。一方、引出ユニット3が取出位置Qにある状態で、試験片延伸部4が試験片の交換のための位置に配置される。
【0053】
〔試験片延伸部〕
試験片延伸部4は、
図7に示すように、引出ユニット3の貫通孔31c内で井桁状に配置された4本のレール41(41X,41X,41Y,41Y)と、これら4本のレールにより形成されている矩形の4つの角部にそれぞれ設けられたスライダ42とを備える。同図において4本のレールにより形成されている矩形の中心は、試験片延伸部4の中心TCと一致している(
図7(b)を参照。Ix及びIyは中心TCを通るX方向及びY方向の軸線を示す。)。
【0054】
2本のレール41Xは、X方向に延在し、互いに平行に配置されている。そして、2本のレール41Xは、Y方向の互いの間隔を拡大又は縮小するためのY方向間隔調整機構(不図示)によって両端が支持されている。Y方向間隔調整機構は、2本のレール41Xを、試験片延伸部4の中心TCから各レール41Xまでの距離が同一になるように移動させるように構成されることが望ましい。
【0055】
また、2本のレール41Yは、Y方向に延在し、互いに平行に配置されている。レール41Yは、レール41Xと立体交差している。そして、2本のレール41Yは、X方向の互いの間隔を拡大又は縮小するためのX方向間隔調整機構(不図示)によって両端が支持されている。X方向間隔調整機構は、2本のレール41Yを、試験片延伸部4の中心TCから各レール41Yまでの距離が同一になるように移動させるように構成されることが望ましい。X方向間隔調整機構及びY方向間隔調整機構によるレール41の移動速度及び移動範囲は、制御装置90の主制御部91によって制御される。
【0056】
4つのスライダ42は、2本のレール41Xと2本のレール41Yが立体交差している4箇所に設けられている。そして、各スライダ42は、これが設けられている位置で立体交差する2本のレール(一方がX方向に延在し、他方がY方向に延在する)が摺動できるように構成されている。具体的には、各スライダ42は、レール41Xが摺動できるX方向摺動部(例えば、レール41Xが貫通する貫通孔)と、レール41Yが摺動できるY方向摺動部(例えば、レール41Yが貫通する貫通孔)とを備える。したがって、4つのスライダ42の相互間距離は、X方向間隔調整機構及びY方向間隔調整機構により4本のレール41を所望の速度及び範囲で移動させることによって変更することができる。
【0057】
また、スライダ42は試験片Tの角部を保持するためのチャック部43を備える。チャック部43は、矩形の試験片Tの角部を保持する。そして、4つのスライダ42の相互間距離が拡大するように4本のレール41を移動させた場合、チャック部43に保持された矩形の試験片Tの角部は、
図7(a),(b)に示す4本のレール41により形成されている矩形の対角線に沿った方向に引っ張られる。
【0058】
チャック部43は、これが延在する方向の引っ張りに対して強固に保持できるように構成されている。例えば、チャック部43は、試験片Tを挟持する挟持面どうしが弾性部材又は空気圧によって強力に押圧されるように構成されている。そして、挟持面には、引っ張り方向に滑らないように凹凸等が設けられている。したがって、チャック部43は、4本のレール41により形成されている矩形の対角線に沿って延在するように配置されることが望ましい。
【0059】
また、隣接する2つのスライダ42の間には、矩形の試験片Tの各辺を保持するチャック部材44が設けられている。チャック部材44は、2軸方向に延伸できるように、矩形の試験片Tを囲む矩形の各辺に沿って複数(本実施形態では4つ)が設けられる。4つのチャック部材44(44F,44B,44L,44R)のそれぞれの把持部45は、矩形の試験片Tの各辺をできるだけ均等に引っ張ることができるように、X方向又はY方向に等間隔に複数配置される。
【0060】
各チャック部材44は、パンタグラフ又はマジックハンドのように伸縮動作可能な、複数のリンクを有するリンク部46を備えている。複数のリンクのそれぞれは、隣接する把持部45どうし、又は把持部45とこれに隣接するスライダ42とを接続している。
【0061】
2本のレール41Yの相互間隔が
図7中のX方向に拡大すると、チャック部材44Lとチャック部材44Rの間隔が拡大するとともに、チャック部材44F,44Bのリンク部46は、
図7中のX方向に伸長する。これによって、チャック部材44L,44R,44F,44Bに配列された把持部45に保持された矩形の試験片Tは、
図7中のX方向に引っ張られる。同様に、2本のレール41Xの相互間隔が
図7中のY方向に拡大することによって、チャック部材44L,44R,44F,44Bに配列された把持部45に保持された矩形の試験片Tは、
図7中のY方向に引っ張られる。
【0062】
把持部45は、これが延在する方向の引っ張りに対して試験片Tを強固に把持できるように構成されている。例えば、把持部45は、試験片Tを挟持する挟持面どうしが弾性部材又は空気圧によって強力に押圧されるように構成されている。そして、把持部45の挟持面には、引っ張り方向に滑らないように凹凸等が設けられている。したがって、チャック部材44F及びチャック部材44Bの複数の把持部45は、Y方向に延在するように配置されることが望ましく、また、チャック部材44L及びチャック部材44Rの複数の把持部45は、X方向に延在するように配置されることが望ましい。
【0063】
各チャック部材44における中央に位置する把持部45Cは、X方向又はY方向の位置が試験片延伸部4の中心TCと一致していることが望ましい。このように構成すると、チャック部材44F及びチャック部材44Bの把持部45Cは、Y方向には移動するもののX方向には移動しない。また、チャック部材44L及びチャック部材44Rの把持部45Cは、X方向には移動するもののY方向には移動しない。これにより、試験片延伸部4の中心TC領域に位置付けられる試験片Tの中心領域は、試験片Tの延伸過程で移動しない。したがって、試験片Tの中心領域における特性を評価することによって、試験片Tの共通の位置における延伸による特性の変化を評価することができる。
【0064】
また、ロードセル等の張力測定手段47が把持部45Cに接続されて設けられている。張力測定手段47によって、延伸中の試験片Tにかかる張力が測定可能となる。延伸中の試験片Tにかかる張力は、試験片Tを所定量延伸させるために必要な物理量であり、試験片Tの特性値である。ロードセル等の張力測定手段47は、延伸されている試験片Tの特性を測定する測定手段7である。
【0065】
〔恒温槽〕
延伸試験装置10は、
図2、
図5、及び
図6に示すように、恒温槽5aと恒温槽5bの2つの恒温槽5を備えている。恒温槽5a及び恒温槽5bは、それぞれ、接続ポート11a及び接続ポート11bに接続されている。
【0066】
恒温槽5(5a,5b)は、給気ダクト53と、還気ダクト54と、温調気体生成領域56と、接続部(不図示)と、送気機構(不図示)を備えている。温調気体生成領域56には、加熱手段として発熱部57と、恒温槽5内の少なくとも一部の気体を、延伸試験装置10の外部の空気と置換するための換気機構(不図示)を備える。温調気体生成領域56において、発熱部57及び換気機構によって温度調節された温調気体は、給気ダクト53に送られる。また、還気ダクト54を介して温調気体生成領域56に戻された気体は、温調気体生成領域56において温度が調節される。
【0067】
給気ダクト53の給気口53oは、接続ポート11の入口11iに連結手段(不図示)により連結されている。還気ダクト54の還気口54iは、接続ポート11の出口11oに連結手段(不図示)により連結されている。恒温槽が備える接続部は、給気口53o、還気口54i、及び連結手段を有している。
【0068】
給気ダクト53の給気口53oと、還気ダクト54の還気口54iには、これらを開閉するためのシャッタ手段59(第1シャッタ手段)が設けられている(
図5を参照)。シャッタ手段59が完全に閉じられている状態(閉鎖状態)では、温調気体生成領域56と給気ダクト53の間で気体が循環する。シャッタ手段59が開いた状態では、恒温槽5の温調気体生成領域56と、本体部1の格納部22の間で温調気体が循環流通する。すなわち、温調気体生成領域56から供給された温調気体は、給気ダクト53、接続ポート11の入口11i、本体ダクト部12の給気ダクト12s、及びパンチング板58の第1領域58-1を順次流通して、格納部22に供給される。一方、格納部22の気体は、パンチング板58の第2領域58-2、本体ダクト部12の還気ダクト12r、接続ポート11の出口11o、及び還気ダクト54を順次流通して、温調気体生成領域56に戻される。
【0069】
図5(b)に示すように、一方の恒温槽5aのシャッタ手段59が開いた状態のとき、他方の恒温槽5bのシャッタ手段59は閉鎖されている。したがって、他方の恒温槽5bでは、温調気体生成領域56と給気ダクト53の間で気体が循環する。この気体が循環している間に、次の試験条件の温度に温調された温調気体を他方の恒温槽5bにおいて生成することができる。
【0070】
したがって、1つの試験片Tに対して2種類以上の温度で延伸試験する場合、試験片Tを筐体2から出すことなく、第1温度で試験をしている間に、第2温度での試験の準備を行うことができる。第2温度での試験の準備に要する時間を短縮でき、延伸試験に要するトータルの時間を短縮できる。また、第1温度から第2温度に迅速に切り替えることができるので、温度が遷移している状態での試験を抑えることができる。
【0071】
〔連結蓋〕
図3(a)に示すように、筐体2の開口部21の高さ(Z方向の長さ)は、引出ユニット3の進退に必要十分なものとなっている。具体的には、開口部21の高さH1は、引出本体31の高さ(Z方向の長さ)H2よりも若干長くなっている(H1>H2)。
【0072】
開口部21から筐体2内に延在する、引出ユニット3の可動空間の一部は、引出ユニット3が格納位置Pに格納された状態において、試験片Tの試験が行われる試験空間TSとなる。試験空間TSが大きいと、当該試験空間TS内を均一な試験温度に設定するために要する時間が長くなる。そこで、上部ダクト12U側及び下部ダクト12L側のパンチング板58は、引出ユニット3が格納位置Pに配置された状態における引出本体31の表面(上面31a,下面31b)との隙間ができるだけ小さくなるように設けられている。
【0073】
しかしながら、この隙間は、試験空間TS以外の筐体2内の空間に温調気体が漏れる流路となり得る。この隙間から温調気体が漏れると、延伸試験装置1が含む制御又は測定のための構成要素に悪影響を及ぼす虞がある。このことに対処するための構成として、引出ユニット3は、
図4及び
図7に示すように、貫通孔31cの内部に設けられた連結蓋(連結部材)32を備える。
【0074】
連結蓋32は、貫通孔31cの内側壁に沿ってその内側に設けられた矩形の環状の部材であり、引出ユニット3が格納位置Pにある状態において、上記の隙間をできるだけ小さくするか、あるいは封鎖するために設けられている。すなわち、引出ユニット3は、引出ユニット3が格納位置Pにある状態において、引出本体31の上面31aから上部ダクト12U側のパンチング板58に向けて突出する上連結蓋32aと、引出本体31の下面31bから下部ダクト12L側のパンチング板58に向けて突出する下連結蓋32bとを備える。
【0075】
上連結蓋32a及び下連結蓋32bは、引出ユニット3が格納位置P以外の位置にある状態では、それぞれが退避して貫通孔31c内に没入することで、引出本体31の上面31a及び下面31bと面一になるように配置される。上連結蓋32a及び下連結蓋32bは、引出ユニット3が格納位置Pにある状態で、それぞれ上部ダクト12U側及び下部ダクト12L側のパンチング板58に近接又は当接するように配置される。その結果、連結蓋32がパンチング板58側の突出位置に突出した状態で、連結蓋32によってパンチング板58と試験空間TSの隙間が塞がれた状態となる。これにより、試験空間TSは、引出本体31の貫通孔31cの内壁と、上連結蓋32a及び下連結蓋32bと、上部ダクト12U側及び下部ダクト12L側のパンチング板58とによって囲まれた空間になる(
図5(b)を参照)。さらに、シャッタ手段59が開放されると、試験空間TSは、温調気体によって常時換気される空間になる(
図4(b)、
図5(b)、及び
図6(b)を参照)。
【0076】
試験空間TSから漏れる温調気体は、ほぼないか、僅かである。したがって、延伸試験装置1が含む制御又は測定のための構成要素に温調気体が至ることを防止できる。また、温調気体が漏れる隙間を有する場合に比べ、常時換気される試験空間TSは、均一な試験温度に保たれる。また、温調気体が隙間から漏れて拡散する試験空間TSに比べ、連結蓋32等によって囲まれた試験空間TSは、迅速に均一な試験温度に設定できる。
【0077】
〔測定手段7〕
延伸試験装置10は、測光手段7として、上述の張力測定手段47に加え、電磁波を用いる測光手段70を備える。
【0078】
測光手段70の具体例を説明する。測光手段70は、ダブル光弾性変調法の複屈折位相差測定及び光散乱観察の機能を有する。上記のとおり、延伸中の試験片Tは、中心領域の位置が不変である。したがって、様々な延伸設定条件における複屈折位相差(Retardation)-倍率(Strain)曲線を測定できる。そして、複屈折位相差分布の測定と、光散乱観察とにより延伸フィルム性能の評価可能である。
【0079】
測光手段70は、試験片Tを挟んで、
図2及び
図3中のZ軸方向の一方側に配置された光源部71と、他方側に配置された受光部72を備える。ダブル光弾性変調法の複屈折位相差測定のために、延伸中の試験片Tの中心領域に対する入射角が0°と30°の光学測定系を含む。複屈折位相差測定のための前記各光学測定系は、光源部71と受光部72に分散配置されている。
【0080】
光源部71が含む複屈折位相差測定のための光源部は、レーザー光源(例えば、波長が632.8nmのヘリウム・ネオンレーザ)、偏光子、及び光弾性変調素子がこの順で試験片Tの遠位側から配置されている。また、受光部72が含む複屈折位相差測定のための受光部は、検光子及び受光器がこの順で試験片Tの近位側から配置されている。
【0081】
入射角0°の複屈折位相差、及び入射角30°の複屈折位相差は、制御装置90のデータ解析部92に取り込まれる。データ解析部92は、入力された入射角0°の複屈折位相差、入射角30°の複屈折位相差、平均屈折率、及びフィルム厚みから、延伸中の3軸配向を算出する。
【0082】
また、測光手段70は、光散乱観察のために光散乱観察測定系を含む。光源部71及び受光部72は、それぞれ、光散乱観察測定系の光源部及び受光部を含む。
【0083】
光源部71が含む光散乱観察のため光源部には、レーザー光源(例えば、波長が632.8nmのヘリウム・ネオンレーザ)、1/2波長板、及び偏光子がこの順で試験片Tの遠位側から配置されている。また、受光部72が含む光散乱観察のための受光部は、検光子及び撮像素子がこの順で試験片Tの近位側から配置されている。前記偏光子と前記検光子とは、偏光方向が直交するように設置されている。
【0084】
延伸中の試験片Tの光学異方性によって、試験片Tに入射した光は散乱する。試験片T内の球晶は四葉のクローバー状の散乱像として前記撮像素子により撮像される。光散乱観察測定系によって、延伸中の試験片Tの球晶構造及び球晶径の変化の観察可能である。
【0085】
また、上述のとおり、延伸試験装置10には、測定手段7として、延伸中の試験片Tにかかる張力をためのロードセル等の張力測定手段47が試験片延伸部4の把持部45Cに接続されて設けられている。延伸中の試験片Tにかかる張力は、試験片Tを所定量延伸させるために必要な物理量であり、試験片Tの特性値である。張力測定手段47は、ロードセルを有することで延伸中の試験片Tにかかる張力の検出が可能である、即ち延伸応力(Stress)-倍率(Strain)曲線を測定できる。
【0086】
〔延伸試験方法の具体例〕
次に、上記のとおり構成された延伸試験装置1を用いた延伸試験方法について説明する。以下で説明する延伸試験方法の具体例は、2軸方向に試験片Tを延伸して試験片Tの特性を評価する試験方法であって、恒温槽5aを用いてT1℃で2軸方向に試験片Tを延伸して試験片Tの特性を評価し、次いで恒温槽5bを用いてT2℃で2軸方向に試験片Tを延伸して試験片Tの特性を評価するものである。しかしながら、延伸試験方法は、以下の具体例に限らず、恒温槽5aを用いてT1℃で1軸方向又は2軸方向に試験片Tを延伸して試験片の特性を評価し、次いで恒温槽5bを用いてT2℃で試験片Tを熱処理(アニール)して試験片Tの特性を評価するものとしてもよい。
【0087】
まず、オペレータは、試験片延伸部4、恒温槽5(恒温槽5a及び恒温槽5b)、及び測定手段7の動作パラメータを入力デバイス95により制御装置90に入力する。そして、入力デバイス95により制御装置90に試験準備指示を入力する。例えば、表示部93に表示されている「試験準備」ボタンをマウス等の入力デバイス95でクリックする。
【0088】
試験準備指示が入力されると、
図5(a)に示すように、恒温槽5a及び恒温槽5bのシャッタ手段59が閉鎖される。そして、恒温槽5a及び恒温槽5bでは、それぞれの内部において気体が循環されながら、T1℃及びT2℃に温調されるように発熱部57及び/又は換気機構(不図示)が作動する。この温調気体の循環により、恒温槽5a及び恒温槽5bの加熱空間(給気ダクト53)が予熱される。
【0089】
恒温槽5a及び恒温槽5bの加熱空間の予熱が完了すると、「予熱完了」が表示される。例えば、「予熱完了」は、筐体2の前面(オペレータと対峙する面)に設けた不図示のインジケータに表示されるか、又は制御装置90の表示部93に表示される。この点は、以下の他の表示についても同様である。
【0090】
次に、オペレータは、
図7(a)に図示したチャック部材44の相互間距離が最小状態に対応する寸法の、フィルム状又は板状の、矩形の試験片Tを準備する。そして、試験片延伸部4に試験片Tを固定できる状態まで引出ユニット3を筐体2から引き出す。引出した試験片延伸部4のチャック部43及び把持部45に準備した試験片Tを固定する。
【0091】
チャック部材の相互間距離が最小状態に対応する寸法よりも大きな試験片Tを試験する場合、あるいは、準備した試験片Tの寸法が前記最小状態に対応する寸法よりも大きい場合、オペレータは、まず引出ユニット3を筐体2から引き出す。そして、試験片Tの寸法を入力デバイス95により制御装置90に入力する。試験片Tの寸法が入力されると、試験片Tの寸法に応じた試験片セット状態に試験片延伸部4が設定される。試験片セット状態に設定された試験片延伸部4のチャック部43及び把持部45に準備した試験片Tを固定する。
【0092】
オペレータは、次に、恒温槽5aが「予熱完了」になっていることを表示により確認する。「予熱完了」の確認後、試験片Tがチャック部43及び把持部45に保持された引出ユニット3を筐体2内に格納する。
【0093】
オペレータは、引出ユニット3が格納された状態において入力デバイス95により制御装置90に試験開始指示を入力する。例えば、表示部93に表示されている「試験開始」ボタンをマウス等の入力デバイス95でクリックする。試験開始指示が入力されると、恒温槽5aのシャッタ手段59が開く。
【0094】
シャッタ手段59が開くと同時に、引出本体31の上連結蓋32aが上部ダクト12U側のパンチング板58に向けて突出する。また、同時に、引出本体31の下連結蓋32bが下部ダクト12L側のパンチング板58に向けて突出する。これによって、試験片延伸部4が配置されている試験空間TSは、
図5(b)に示すように、引出本体31の貫通領域を囲む内側壁と、上連結蓋32a及び下連結蓋32bと、上部ダクト12U側及び下部ダクト12L側のパンチング板58とによって囲まれた空間になる。そして、試験空間TSは、恒温槽5aによって温調された温調気体によって常時換気される空間になる。
【0095】
予め設定された時間経過した後、恒温槽5aを用いた試験片Tの実質的な延伸試験が開始される。試験片延伸部4内の、井桁状に配置された4本のレール41は、試験片延伸部4の4つのスライダ42の、X方向及びY方向の相互間距離が拡大するように移動する。その結果、
図7(b)に示すように、矩形の試験片Tは、その4辺の寸法が拡大するように、その4辺及び角部が外側に引っ張られ、延伸される。
【0096】
延伸中の試験片Tにかかる張力は、張力測定手段47によって測定される。張力測定手段47の出力は、制御装置90のデータ解析部92に取り込まれ、制御装置90の記憶装置94に記憶される。張力測定手段47の出力は、制御装置90の表示部93に表示することもできる。
【0097】
延伸中の試験片Tの中心領域は、ダブル光弾性変調法の複屈折位相差測定及び光散乱観察の機能を有する測光手段70によって測定される。測光手段70の出力は、制御装置90のデータ解析部92に取り込まれ、制御装置90の記憶装置94に記憶される。測定手段7の出力は、制御装置90の表示部93に表示することもできる。測光手段70の出力は、逐次に、又は適時に(延伸試験が完了した時点等に)データ解析部によって解析される。解析結果は、制御装置90の表示部93に表示されるとともに、記憶装置94に記憶される。
【0098】
恒温槽5aでの試験片Tの延伸が終了すると、「恒温槽試験完了」が表示される。同時に、恒温槽5aのシャッタ手段59が完全に閉じる。
【0099】
次に、恒温槽5bが「予熱完了」になっている場合、恒温槽5bのシャッタ手段59が開く。これによって、試験片延伸部4が配置されている試験空間TSは、恒温槽5bによって温調された温調気体によって常時換気される空間になる。
【0100】
予め設定された時間経過した後、恒温槽5bを用いた試験片Tの実質的な延伸試験が開始される。恒温槽5bを用いた試験片Tの実質的な延伸試験は、恒温槽5aを用いた試験片Tの実質的な延伸試験と同様に進むので、ここではその説明を割愛する。
【0101】
恒温槽5bでの試験片Tの延伸が終了すると、「恒温槽試験完了」が表示される。同時に、恒温槽5aのシャッタ手段59が完全に閉じられる。シャッタ手段59が完全に閉じられると、パンチング板58に当接していた両連結蓋32が貫通孔31c内に没入する。
【0102】
連結蓋32が貫通孔31c内に没入すると、「全試験完了」が表示される。「全試験完了」が表示されると、オペレータは、引出ユニット3を筐体2から取り出して、次の試験片の試験の準備を行うことができる。
【0103】
<第2実施形態>
図2、
図3、及び
図8を参照して、第2実施形態に係る延伸試験システム100aについて説明する。延伸試験システム100aは、延伸試験装置10aの本体部1aの構成と、延伸試験における動作フローにおいて、延伸試験システム100のものと相違する。延伸試験システム100と共通する点は、説明を割愛する。
【0104】
延伸試験システム100aにおける延伸試験装置10aの正面図及び側面図は、延伸試験システム100の正面図である
図2及び側面図である
図3と同一である。
図8は、引出ユニット3を取出位置Qに配置している状態を示し、同図(a)は
図2におけるA-A断面図であり、同図(b)は
図3におけるB-B断面図である。
【0105】
図8に示すように、本体ダクト部12aは、格納部22の+Z方向(上方)に設けられた上部ダクト12aUと、格納部22の-Z方向(上方)に設けられた下部ダクト12aLを備えている。上部ダクト12aUは、試験片Tの上面(表面)側に温調気体を供給するための給気ダクト12asと、同上面側から温調気体を回収するための還気ダクト12arを備える。下部ダクト12aLは、試験片Tの下面(裏面)側に温調気体を供給するための給気ダクト12asと、同下面側から温調気体を回収するための還気ダクト12arを備える。
【0106】
延伸試験装置10aの本体部1aは、給気ダクト12asと還気ダクト12arがパンチング板58aの近傍で流体連通するように、本体ダクト部12aにバイパス部12aBが設けられている。したがって、給気ダクト12asを流通する温調気体の少なくとも一部は、バイパス部12aBを介して還気ダクト12arに流入する。
【0107】
さらに、延伸試験装置10aの本体部1aは、格納部22の上面及び下面の中央に設けられたパンチング板58aがシャッタ機構(以下、「第2シャッタ手段」という。)を備える。パンチング板58aの本体は、第1領域58-1~第3領域58-3を有する、第1実施形態のパンチング板58(
図6を参照)と同様に構成されている。第2シャッタ手段は、第1領域58-1及び第2領域58-2を閉鎖する。したがって、格納部22への温調気体の供給を、第2シャッタ手段によるパンチング板58aの開閉又は開度によって制御できる。第1シャッタ手段としてのシャッタ手段59が開状態で、かつ第2シャッタ手段が閉鎖状態において、恒温槽5a,5bで生成された温調気体は、本体ダクト部12aへの流入が許容され、かつ前記試験空間TS内への流入が禁止される。なお、第2シャッタ手段は、少なくともパンチング板58aの中央の吹出口として機能する第1領域58-1を閉鎖できるものであればよい。
【0108】
そして、バイパス部12aBは、第2シャッタ手段の近傍に設けられている。これにより、シャッタ手段59が開状態で、かつ第2シャッタ手段が閉鎖状態において、給気ダクト12asを流通する温調気体のすべてを、バイパス部12aBを介して還気ダクト12arに流入させることができる。すなわち、シャッタ手段59を開状態にし、第2シャッタ手段を閉鎖状態にすることによって、本体ダクト部12aと恒温槽5の間にバイパス部12aBを含む循環流路が形成され、循環流路を循環する温調気体により本体ダクト部12aを予熱することができる。
【0109】
また、バイパス部12aBに追加のシャッタ手段(以下、「第3シャッタ手段」という。)を設けることもできる。この場合、例えば、本体ダクト部12aを予熱するときのみ、第3シャッタ手段を開くことによって、バイパス部12aBを含む循環流路を形成することができる。すなわち、試験空間(TS)に温調気体を供給して試験を行うときは、第3シャッタ手段を閉鎖することによって、バイパス部12aBに温調気体を流入させないようにすることができる。また、第3シャッタ手段を開度調整可能なものとすることによって、格納部22への温調気体の供給を、第3シャッタ手段の開度によって制御できる。
【0110】
また、本体ダクト部12aには、バイパス部12aBを設けることが望ましいが、バイパス部12aBを設けなくてもよい。この場合、シャッタ手段59が開状態で、かつ第2シャッタ手段が閉鎖状態において、温調気体は、給気ダクト12as内のみで循環し、給気ダクト12asのみが予熱されることになる。バイパス部12aBが設けられた場合に劣るものの、本体ダクト部12aの少なくとも一部を予熱するので、試験空間(TS)は迅速に均一な試験温度に設定される。
【0111】
延伸試験システム100aを用いた延伸試験における動作フローについて、延伸試験システム100を用いた上述の「延伸試験方法の具体例」と比較して説明する。
【0112】
延伸試験システム100では、試験準備指示が入力されると、
図5(a)に示すように、恒温槽5a及び恒温槽5bのシャッタ手段59が閉鎖され、恒温槽5a及び恒温槽5bの予熱が実行される。したがって、試験片Tがチャック部43及び把持部45に保持された引出ユニット3が筐体2内に格納され、次いで、恒温槽5aのシャッタ手段59が開いたときには、本体部1の給気ダクト12s及び還気ダクト12rが予熱されていない。そのため、温調気体の温度が安定するまでには、若干タイムラグが生じる。
【0113】
一方、延伸試験システム100aでは、恒温槽5aのシャッタ手段59を開けた状態で第2シャッタ手段によってパンチング板58aが閉鎖される。こうすることによって、恒温槽5aの予熱においては、恒温槽5aと本体ダクト部12aとの間で気体が循環されながら、発熱部57及び/又は換気機構(不図示)によってT1℃に温調される。
【0114】
すなわち、恒温槽5aの予熱において、恒温槽5a内の気体は、接続ポート11の入口11iから本体部1aの給気ダクト12asに流入し、次いで、バイパス部12aBを介して、還気ダクト12arに流入する。そして、還気ダクト12arに流通する気体は、還気ダクト54の還気口54iから恒温槽5aに戻る。したがって、恒温槽5aの給気ダクト53及び還気ダクト54だけでなく、本体部1aの給気ダクト12as及び還気ダクト12arも予熱される。
【0115】
「予熱完了」の確認後、試験片Tがチャック部43及び把持部45に保持された引出ユニット3をオペレータが筐体2内に格納したときには、本体部1aの給気ダクト12as及び還気ダクト12arも予熱されている。オペレータが試験開始指示を入力すると、第2シャッタ手段が作動し、パンチング板58aが開状態になる。このとき、本体部1aの給気ダクト12as及び還気ダクト12arはすでに予熱されているので、温調気体の温度が安定するまでの時間が短くなる。
【0116】
恒温槽5aでの試験片Tの延伸が終了すると、恒温槽5aのシャッタ手段59が完全に閉じられ、恒温槽5bのシャッタ手段59が開かれるが、同時に第2シャッタ手段によってパンチング板58aが閉鎖される。この状態で予め設定された時間経過させることによって、恒温槽5bでT2℃に温調された温調気体によって本体部1aの給気ダクト12as及び還気ダクト12arが予熱される。
【0117】
本体部1aの給気ダクト12as及び還気ダクト12arの予熱後、パンチング板58aの第2シャッタ手段が開くと、温度が安定した温調気体を、試験空間TSに供給することができる。
【0118】
バイパス部12aBは、常時開口しているものとして説明したが、開度を調整するようにしてもよい。具体的には、バイパス部12aBに第3シャッタ手段を設け、予熱のときは全開にして、それ以外のときは完全に又は一部閉じるようにこのシャッタ機構を制御することができる。
【0119】
<変形例>
まず、
図9~
図12を用いて、延伸試験装置の恒温槽及び接続ポートの配置、数に係る変形例を説明する。
【0120】
<<第1の変形例>>
延伸試験装置10,10aは、その上面視で略正方形の本体部1,1aの左右の辺に、接続ポート11a,11bがそれぞれ設けられている。すなわち、接続ポート11aは-X方向に開口し、接続ポート11bは+X方向に開口している。これによって、延伸試験装置10,10aの筐体2,2a内には、恒温槽5a、本体部1,1a、及び恒温槽5bがこの順番でX方向に配列される。したがって、延伸試験装置10,10aの設置のためには、X方向に長い筐体2を収容可能な空間が必要になる。一方、第1の変形例に係る延伸試験装置10bは、その上面視で略正方形の本体部1bの左右の辺の一方と、奥の辺とに接続ポート11a,11bがそれぞれ設けられる。
【0121】
例えば、
図9に示すように、接続ポート11aは+X方向に開口するように本体部1bの右の辺に設けられ、接続ポート11bは+Y方向に開口するように奥の辺に設けられる。これによって、延伸試験装置10bの筐体2b内には、恒温槽5aが本体部1bの右側に、恒温槽5bが本体部1bの後方にL字状に配列される。したがって、延伸試験装置10bの筐体2bは、X方向の長さを抑えることができる。
【0122】
<<第2の変形例>>
延伸試験装置10,10a,10bは、その上面視で略正方形の本体部1,1a,1bの異なる辺に、接続ポート11a,11bがそれぞれ設けられている。一方、第2の変形例に係る延伸試験装置10cは、接続ポート11a及び11bが本体部1bの左、右、及び奥のいずれか一つの辺に並べて設けられる。
【0123】
例えば、
図10に示すように、延伸試験装置10cは、接続ポート11a及び11bがともに本体部1cの+X方向に開口するように右の辺に並べて設けられる。恒温槽5a,5bは、接続ポート11a,11bの幅の減少に応じた小型のものにしている。したがって、延伸試験装置10cの筐体2cは、延伸試験装置10,10aの筐体2,2aよりもX方向の長さを抑え、かつ延伸試験装置10bの筐体2bよりもY方向の長さを抑えることができる。
【0124】
<<第3の変形例>>
延伸試験装置10,10a,10b,10cは、本体部1,1a,1b,1cに2つの接続ポートを設けたものである。したがって、1つの試験片Tについて3つの温度条件で試験する場合、1つ目の温度条件で用いる恒温槽5aは、恒温槽5bを用いて2つ目の温度条件で試験している間に、3つ目の温度条件になるように変更しなければならない。2つ目の温度条件での試験時間が短い場合、恒温槽5aにおける1つ目の温度条件から3つ目の温度条件への変更が問題となる。一方、第3の変形例に係る延伸試験装置10dは、本体部1dに3つ以上の接続ポートを設けたものである。また、本体部1dは、上面視で正方形に限らず、例えば、上面視で略五角形や略六角形に構成し、その3以上の各辺に接続ポート11を設けてもよい。
【0125】
例えば、
図11に示すように、延伸試験装置10dは、その上面視で略正方形の本体部1dの左、右、及び奥の辺に、接続ポート11a,11b,11cが、それぞれ+X方向、-X方向、及び+Y方向に開口するように設けられている。したがって、延伸試験装置10dは、3つの温度条件での試験を行うことができる。
【0126】
<<第4の変形例>>
延伸試験装置10,10a~10dは、筐体2,2a~2d内に収容される所定数の恒温槽5を接続できるように、恒温槽5の数に応じた接続ポート11を本体部1,1a~1dに設けたものである。したがって、恒温槽5を増設することができない。一方、第4の変形例に係る延伸試験装置10eは、筐体2eに所定数の接続ポート11を設け、接続ポート11の数まで筐体2eの外側から恒温槽5を接続できるようにしたものである。恒温槽5を接続しない接続ポート11には、封止手段15が恒温槽5の代わりに接続される。
【0127】
例えば、
図12に示すように、延伸試験装置10eは、筐体2e表面に開口する凹状の接続ポート11を有している。凹状の接続ポート11は、筐体2e表面の開口から恒温槽5又は封止手段の接続部を嵌入させることができる。恒温槽5の接続部が接続ポート11に嵌入されると、恒温槽5の接続部が有する給気口53o及び還気口54iは、それぞれ、接続ポート11が有する入口11i及び出口11oに連結される。また、封止手段15の接続部が接続ポート11に嵌入されると、筐体2e表面の開口が封止されるとともに、接続ポート11が有する入口11i及び出口11oが封止される。
【0128】
ポート11a,11b,11cが、それぞれ、上面視で略正方形の筐体2eの左、右、及び奥の辺に、+X方向、-X方向、及び+Y方向に開口するように設けられている。接続ポート11a,11bは恒温槽5a,5bが接続され、接続ポート11cは封止手段15が接続されている。恒温槽5を増設したい場合は、封止手段15に代えて恒温槽5を接続ポート11cに接続することができる。また、延伸試験装置10dをL字状にしたい場合は、接続ポート11aには恒温槽5aに代えて封止手段15を接続し、接続ポート11cには封止手段15に代えて恒温槽5aを接続することができる。
【0129】
延伸試験装置10eは、恒温槽の配置及び数を、ユーザの試験内容及び設置空間に応じて変更自在である。また、フットプリントの低減効果が最も大きい。さらに、恒温槽5a,5bは、本体部1eの筐体とは別体の筐体5ac,5bcを有するので、本体部1eに設ける測光手段70への熱の影響を低減できる。
【0130】
具体例では、筐体2e表面の開口から恒温槽5又は封止手段15の接続部を凹状の接続ポート11に嵌入させる連結構成を採用したが、連結構成はこれに限らない。例えば、筐体2eの表面に突設させた接続ポート11を、恒温槽5が有する凹状の接続部に嵌入させることによって連結するようにすることもできる。その他に、開口どうしを連結するための周知・慣用技術を適用することができる。
【0131】
<<その他の変形例>>
上記実施形態の延伸試験装置は、第1の変形例~第4の変形例の他に、簡素化又は高度化などの変形が可能である。
以下では、恒温槽及び接続ポートの配置、数に係る変形以外の変形例について説明する。以下の変形例の説明における括弧書きは、上記実施形態の延伸試験装置における構成要素を示す参考情報であって、これは単に変形例における構成要素が機能的に共通にすることを示すものであり、変形例における構成要素が上記実施形態の延伸試験装置における構成要素と配置的に又は構造的に同一であることを示すものではない。
【0132】
延伸試験装置(10,10a~10e)は、引出ユニット(3)が筐体(2)内の格納位置(P)に配置された状態において、本体ダクト部(12,12a)と、試験空間(TS)とを連結するために引出ユニット(3)が連結蓋(32)を備える。しかしながら、連結蓋(32)は、望ましい形態において備えるものであり、必須のものではない。パンチング板(58,58a)を介して本体ダクト部(12)に接続されている格納部(22)の寸法は、引出ユニット(3)の進退及び格納に必要十分なものとなっている。したがって、引出ユニット(3)が連結蓋(32)を備えない場合、試験空間(TS)となる格納部(22)内は、給気ダクト12sから供給される温調気体によって迅速に換気される。
【0133】
また、本体ダクト部(12,12a)は、試験片(T)の第1面(上面)側から試験片(T)を加熱するための上部ダクト(12U,12aU)と、試験片Tの第2面(下面)側から試験片(T)を加熱するための下部ダクト(12L,12aL)と、を有するものが特に望ましいが、これに限定されない。本体ダクト部(12,12a)は、上部ダクト(12U,12aU)及び下部ダクト(12,12aL)いずれか一方のみを備えるものでもよい。
【0134】
延伸試験装置(10,10a~10e)は、恒温槽(5)の給気口(53o)及び還気口(54i)にシャッタ手段(59)が設けられている。しかしながら、シャッタ手段(59)に代えて、又は追加で、接続ポート(11)にシャッタ手段を設けてもよい。
【0135】
本体ダクト部(12,12a)は、パンチング板(58,58a)の第1領域(58-1)及び第2領域(58-2)に対応するすべての接続ポート(11)の共用部分と、共用部分よりも外側の各接続ポート(11)の専用部分を実質的に含む。本体ダクト部(12,12a)における各接続ポート(11)の専用部分に、シャッタ手段(59)に代えて、又は追加でシャッタ手段を設けてもよい。
【0136】
また、本体ダクト部(12,12a)は、パンチング板(58,58a)の第1領域(58-1)及び第2領域(58-2)に対応する前記共用部分のみで構成し、各接続ポート(11)が前記専用部分を有するように構成することもできる。そして、この場合、シャッタ手段(59)に代えて、又は追加で設けるシャッタ手段は、各接続ポート(11)の任意の位置に設けることができる。
【0137】
また、温調気体生成領域(56)は、試験片(T)の特性の評価の妨げとならない限り、給気ダクト(53)の最上流領域に限らず、給気ダクト(53)又は還気ダクト(54)の任意の場所に設けることができる。また、温調気体生成領域(56)は、1つに限らず、複数設けてもよい。発熱部(57)は、温調気体生成領域(56)内に少なくとも1つ設ければよい。発熱部(57)は、抵抗加熱方式、及び赤外線加熱方式等の公知のものを採用することができる。また、温調気体生成領域(56)が備える換気機構は、外気を取り込んで恒温槽5内の気体を室温寄りに調整するためのものであるが、必須のものではなく、省いてもよい。
【0138】
発熱部(57)及び/又は換気機構に代えて、又は追加で周知の冷却手段を温調気体生成領域(56)に設けてもよい。また、恒温槽(56)は、冷却手段によって常温よりも低温の温調気体を生成するものとすることができる。常温よりも低温の温調気体を生成できる恒温槽(56)を本体部(1,1a)に接続することによって、延伸試験装置(10,10a~10e)は、冷却試験を行えるものに構成することができる。本願発明の加熱試験装置及び延伸試験装置は、試料を冷却して、つまり試料に負の熱を加えて試験する装置を包含する。
【0139】
また、恒温槽(5)が備える送気機構は、試験片(T)の特性の評価の妨げとならない限り、給気ダクト(53)又は還気ダクト(54)の任意の場所に設けることができる。また、送気機構は、1つに限らず、複数設けてもよい。また、送気機構は、本体ダクト部(12)内にも設けてもよい。送気機構は、プロペラファン、シロッコファン等の公知のものを採用することができる。また、給気ダクト(53)、還気ダクト(54)、及び/又は本体ダクト部(12)内に、整流板等の整流機構を設けることができる。
【0140】
パンチング板(58,58a)は、中央の貫通孔(第1貫通孔)が配列された第1領域(58-1)と、第1領域(58-1)の外側を囲み、貫通孔(第2貫通孔)が配列された第2領域(58-2)と、第2領域(58-2)の外側を囲み、貫通孔(62)を有しない第3領域(58-3)と、を備えるものである。しかしながら、パンチング板(58,58a)は、これに限定されない。第1領域(58-1)全体に均一なダウンフローが生ずるように、パンチング板(58,58a)に整流機構を設けてもよい。例えば、第1領域(58-1)及び/又は第2領域(58-2)の本体ダクト部(12,12a)側の表面に整流板等を突設させてもよい。第1領域(58-1)及び第2領域(58-2)は、貫通孔の径又は配置が一様に構成されても、異なるように構成されていてもよい。第2領域(58-2)は、第1領域(58-1)の外側に設けられていれば、第1領域(58-1)を囲んでいなくてもよい。
【0141】
また、引出ユニット(3)が有する枠状の引出本体(31)は、引出本体(31)を室温に冷却可能な冷却手段を備えてもよい。冷却手段は、引出ユニット(3)を筐体(2,2a~2e)から引出す直前、又は引出した直後に、引出本体(31)の外面を冷却するように配置することができる。このように構成することで、試験片(T)の交換を迅速かつ安全に行うことができる。
【0142】
また、試験片延伸部(4)を室温に冷却可能な冷却手段が、試験片延伸部(4)自体、引出本体(31)、その他の筐体(2,2a~2e)内に設けられてもよい。冷却手段により、引出ユニット(3)を筐体(2,2a~2e)から引出す直前、又は引出した直後に、試験片延伸部(4)を冷却することによって、試験片(T)の交換を迅速かつ安全に行うことができる。試験片延伸部(4)のチャック部材(44)は、上記実施形態のものが好適であるが、これに代えて、公知のものを用いることができる。
【0143】
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
【符号の説明】
【0144】
100,100a 延伸試験システム
10,10a,10b,10c,10d,10e 延伸試験装置
1,1a,1b,1c,1d,1e 本体部
2,2a,2b,2c,2d,2e 筐体
3 引出ユニット
4 試験片延伸部(試料保持部)
5,5a,5b,5c 恒温槽
7 測定手段
11,11a,11b,11c 接続ポート
12,12a 本体ダクト部
12s,12as 給気ダクト
12r,12ar 還気ダクト
12U,12aU 上部ダクト
12L,12aL 下部ダクト
21 開口
22 格納部
31 引出ユニット本体
32,32a,32b 連結蓋(連結部材)
41,41X,41Y レール
42 スライダ
43 チャック部
44,44F,44B,44L,44R チャック部材
45,45C 把持部
46 リンク部
47 張力測定手段
53 給気ダクト
54 還気ダクト
56 温調気体生成領域
57 発熱部
58,58a パンチング板
59 シャッタ手段
I,Ix,Iy 軸線
T 試験片
TC 試験片延伸部の中心
TS 試験空間
【要約】
【課題】複数の恒温槽によって複数の温度での試験を迅速に行うことができ、また、フットプリントを抑えることができる加熱試験装置及び延伸試験装置を提供する。
【解決手段】加熱試験装置(10)は、本体部(1)と、本体部(1)を収容する筐体(2)と、試料(T)を保持する試料保持部(4)と、試料保持部(4)が配置されて試料(T)の試験が行われる本体部(1)内の共通の試験空間(TS)と、温調気体を生成することができる恒温槽(5)と接続可能で、試験空間(TS)に流体連通可能な複数の接続ポート(11)と、を備え、恒温槽(5)で生成された温調気体は、シャッタ手段の開状態において試験空間(TS)内への流入が許容され、シャッタ手段の閉鎖状態において前記試験空間(TS)内への流入が禁止される。
【選択図】
図2