(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-19
(45)【発行日】2024-12-27
(54)【発明の名称】荷締め用ロープ保持具
(51)【国際特許分類】
B60P 7/135 20060101AFI20241220BHJP
B25B 25/00 20060101ALI20241220BHJP
F16B 2/14 20060101ALI20241220BHJP
F16G 11/00 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
B60P7/135
B25B25/00 B
F16B2/14 Z
F16G11/00 C
(21)【出願番号】P 2024123382
(22)【出願日】2024-07-30
【審査請求日】2024-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2024033075
(32)【優先日】2024-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593232402
【氏名又は名称】親和パッケージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 紗奈子
【審査官】近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2630648(KR,B1)
【文献】特開2000-161445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 7/135
B25B 25/00
F16B 2/14
F16G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側ロープを係止可能な本体と、荷締め側ロープをロック可能なレバーとを有する荷締め用ロープ保持具であって、
前記本体は前記荷締め側ロープの入口部と出口部を有し、前記荷締め側ロープを前記入口部から入れて前記本体内で折返して前記出口部から引き出し可能に構成され、
前記レバーは操作レバーとロックレバーとを有し、前記操作レバーと前記ロックレバーは関節部で屈曲可能に相互連結され、
前記操作レバーと前記ロックレバーが第1の方向に屈曲したロック状態で前記出口部の内側位置で前記荷締め側ロープを前記本体にロックすると共に、前記操作レバーと前記ロックレバーが前記第1の方向と異なる第2の方向に屈曲したフリー状態で前記出口部の内側位置で前記荷締め側ロープを前記本体に対してフリーとするように構成されていることを特徴とする荷締め用ロープ保持具。
【請求項2】
前記関節部が、前記操作レバーと前記ロックレバーの一方に形成された凸円錐と、当該凸円錐が嵌合可能に他方に形成された凹円錐とを有し、前記ロック状態と前記フリー状態で前記凸円錐と前記凹円錐が嵌合すると共に、前記ロック状態と前記フリー状態の間の中間状態で前記凸円錐と前記凹円錐が軸線方向と直角方向に離間することを特徴とする請求項1のロープ保持具。
【請求項3】
前記本体が、互いに対向した左右一対の側板部と、前記側板部の下部を相互連結する底板部と、前記側板部の前部を相互連結する前板部と、前記底板部と平行に前記側板部の対向面を相互連結すると共に前端部が前記前板部に連続した仕切板部とを有し、
前記側板部の間に前記操作レバーと前記ロックレバーが保持され、
前記前板部に、前記仕切板部の上下に位置するように前記入口部と前記出口部が形成され、
前記入口部から入れた前記荷締め側ロープを前記仕切板部の後端部で折返して前記出口部から引き出し可能に構成され、
前記ロックレバーの先端部が前記出口部の内側位置で前記仕切板部と対向し、前記ロック状態で前記ロックレバーの先端部と前記仕切板部との間に前記荷締め側ロープを挟んでロック可能に構成されていることを特徴とする請求項2のロープ保持具。
【請求項4】
前記操作レバーと前記ロックレバーが前記中間状態で前記側板部の内面と弾性的に圧接することを特徴とする請求項3のロープ保持具。
【請求項5】
前記操作レバー又は前記ロックレバーの一方に前記関節部に対向したノッチ部が形成されると共に、前記操作レバー又は前記ロックレバーの他方に前記ノッチ部に嵌合可能な嵌合部が形成され、
前記ロック状態で前記嵌合部が前記ノッチ部に嵌合し、前記フリー状態で前記嵌合部が前記ノッチ部から離脱することを特徴とする請求項1のロープ保持具。
【請求項6】
前記操作レバーと前記ロックレバーが前記第1の方向に屈曲したロック状態で、前記関節部から前記ロックレバーの長手方向先端部
に延ばした延長線が
前記仕切板部に向かう方向に傾斜していることを特徴とする請求項
3又は4のロープ保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷締め用ロープ保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のロープ保持具として、特許文献1-5に開示されているものが知られている。しかしながら、これらのロープ保持具はロープの引き回しが面倒であったり(文献1)、装置が大掛かりであったり(文献2-5)、ロープが緩むおそれがあったりして使い勝手がよくなかった。また、特許文献3-5のロープ保持具は、荷締め側ロープのロック部分にロープ張力が直接負荷する構造のため、ロック部分の耐久性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3133768号公報
【文献】特許第4204629号公報
【文献】実用新案登録第3124462号公報
【文献】韓国登録特許第10-2630648号公報
【文献】韓国登録特許第10-1429435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の課題は、ロープの引き回しが容易であり、構造が簡単でロープが緩むおそれがなく、またロック部分の耐久性を向上可能な荷締め用ロープ保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明に係る荷締め用ロープ保持具は、固定側ロープを係止可能な本体と、荷締め側ロープをロック可能なレバーとを有する荷締め用ロープ保持具であって、前記本体は前記荷締め側ロープの入口部と出口部を有し、前記荷締め側ロープを前記入口部から入れて前記本体内で折返して前記出口部から引き出し可能に構成され、前記レバーは操作レバーとロックレバーとを有し、前記操作レバーと前記ロックレバーは関節部で屈曲可能に相互連結され、前記操作レバーと前記ロックレバーが第1の方向に屈曲したロック状態で前記出口部の内側位置で前記荷締め側ロープを前記本体にロックすると共に、前記操作レバーと前記ロックレバーが前記第1の方向と異なる第2の方向に屈曲したフリー状態で前記出口部の内側位置で前記荷締め側ロープを前記本体に対してフリーとするように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の荷締め用ロープ保持具は、ロープの引き回しが容易であり、構造が簡単でロープが緩むおそれがなく、荷締め側ロープのロック部分の耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るロープ保持具の(a)斜視図、(b)側面図、(c)(d)トグルレバー透視図、(e)操作レバー斜視図、(f)ロックレバー斜視図である。
【
図3】ロープ保持具のトグルレバーの(a)フリー状態、(b)中間状態、(c)ロック状態を示す図である。
【
図4】ロープ保持具の(a)フリー状態、(b)ロック状態、(c)増し締め状態、(d)セルフロック状態、(e)解除状態を示す図である。
【
図5A】本発明の第2実施形態に係るロープ保持具のロック状態の斜視図である。
【
図5B】本発明の第2実施形態に係るロープ保持具のフリー状態の斜視図である。
【
図6】ロープ保持具の本体の(a)側方斜視図、(b)上方斜視図、(c)下方斜視図、(d)平面図、(e)背面図、(f)断面図である。
【
図7】ロープ保持具のロックレバーの(a)ロック状態と(b)フリー状態の斜視図である。
【
図8A】ロープ保持具の(a)ロープ通し状態と(b)増し締め状態の側面図である。
【
図8B】ロープ保持具の(a)ロック状態と(b)フリー状態の側面図である。
【
図9】特許文献3の荷締め用ロープ保持具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るロープ保持具の第1実施形態と第2実施形態を図面を参照して説明する。なお、全図を通じて同一又は相当部分には同一符号を付することで、重複した説明を適宜省略することとする。
【0009】
●第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態に係るロープ保持具10を示すもので、
図1の(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)と(d)はトグルレバーの透視図、(e)は操作レバーの斜視図、(f)はロックレバーの斜視図である。ロープ保持具10は本体11とトグルレバー12を有する。本体11とトグルレバー12は、樹脂や金属等で構成することができる。
【0010】
トグルレバー12は、手動操作する操作レバー12aと、荷締め側ロープR2をロックするロックレバー12bで構成されている。
図1(c)に示すように、操作レバー12aは、本体11の外側から挿入される支軸13に支持される。ロックレバー12bも、本体11の外側から挿入される支軸14に支持される。
【0011】
支軸13は、操作レバー12aの長手方向中間部に形成された軸孔12a3に挿入される。支軸14も、ロックレバー12bの長手方向中間部に形成された軸孔12b4に挿入される。なお、操作レバー12aとロックレバー12bの両側面には、軽量化のための肉抜き凹部12a5、12b6が形成されている。
【0012】
本体11は、
図2に示すように、互いに対向した左右一対の側板部11aと、底板部11bと、前板部11cと、仕切板部11dを有する。側板部11aと底板部11bはコ字状に連結されている。また、前板部11cによって側板部11aの前部が相互連結されている。
【0013】
仕切板部11dは底板部11bと平行に配設されている。仕切板部11dの前端は前板部11cに連続し、また側板部11aの内面が仕切板部11dによって相互連結されている。左右一対の側板部11aは、
図2の矢印方向に弾性変位可能に構成されている。
【0014】
底板部11bの前後方向中央部に通し孔11b1が形成されている。この通し孔11b1に、荷台に固定された固定側ロープR1の端部(又は
図4のカラビナフックCHなど)を連結可能に構成されている。
【0015】
前板部11cの上下二箇所に、荷締め側ロープR2の入口部としての入口孔11fと、出口部としての出口孔11gが形成されている。これら入口孔11fと出口孔11gは、仕切板部11dの上下に位置している。
【0016】
そして、荷台に搭載された積荷に掛け回した荷締め側ロープR2を入口孔11fから入れ、底板部11bと仕切板部11dとの間を通し、仕切板部11dの後端部11d1まで引き込むことができるようになっている。その後、当該ロープR2を後端部11d1で上方に折返し、仕切板部11dの上面に沿わせつつ出口孔11gから引き出すことができるようになっている。
【0017】
側板部11aには、操作レバー12aとロックレバー12bを支持する支軸13、14の両端部を嵌合するための丸孔11a3、11a4が形成されている。また、丸孔11a3の近傍の側板部11aの内面に、操作レバー12a用のストッパ11a5が突設されている。
【0018】
操作レバー12aとロックレバー12bは、左右一対の側板部11a間に側板部11a内面と接するようにして配設される。操作レバー12aとロックレバー12bは、レバー12a、12bの軸孔12a3、12b4を側板部11aの丸孔11a3、11a4に位置合わせした状態で、側板部11aの外側から2本の支軸13、14を丸孔11a3、11a4と軸孔12a3、12b4に挿入するだけで簡単に組付け可能である。
【0019】
●操作レバーとロックレバーの詳細
操作レバー12aとロックレバー12bは、関節部としての凸円錐12b5と凹円錐12a4の相互嵌合によって屈曲可能に相互連結されている。すなわち、ロックレバー12bの一端に形成された凸円錐12b5が、操作レバー12aの一端に形成された凹円錐12a4に対して、回転可能に嵌合されている。
【0020】
そして、操作レバー12aとロックレバー12bが、
図3(c)のように第1の方向に屈曲したロック状態と、
図3(a)のように第1の方向と異なる第2の方向に屈曲したフリー状態に屈曲可能に相互連結されている。
図3(c)のロック状態で、
図4(b)のように荷締め側ロープR2を本体11にロックし、
図3(a)のフリー状態で、
図4(a)のように荷締め側ロープR2を本体11に対してフリーとする。
【0021】
図3(c)のロック状態と
図3(a)のフリー状態で、ロックレバー12bの凸円錐12b5が操作レバー12aの凹円錐12a4に嵌合する。また
図3(b)に示すように、ロック状態とフリー状態の中間状態で、凸円錐12b5と凹円錐12a4が軸線方向と直角方向に離間(位置ズレ)する。
【0022】
ロックレバー12bの先端部下面に、荷締め側ロープR2の上側表面に係合可能なロック部分としての段付き溝12b3が形成されている。一方、本体11の仕切板部11dの上面に、荷締め側ロープR2の下側表面に係合可能な段付き溝11d2が形成されている。
【0023】
仕切板部11dの段付き溝11d2の前端は、前板部11cの出口孔11gの内側で終わっている。ロックレバー12bの段付き溝12b3と、仕切板部11dの段付き溝11d2は、
図4B(a)のロック状態でロープR2を挟んで上下方向に対向している。
【0024】
●第1実施形態のロープ保持具の使用法
次に、
図3と
図4に基づいて、第1実施形態に係るロープ保持具10の使用法を説明する。まず、
図3のように本体11の底板部11bの通し孔11b1に、固定側ロープR1を通して固定する。固定側ロープR1を、カラビナフックCHなどを介して底板部11bに連結してもよい。
【0025】
次に、操作レバー12aを
図3(a)、
図4(a)のように上側に回動させてロープ通し状態にする。このロープ通し状態では、ロックレバー12bの先端が上方に移動して段付き溝12b3と段付き溝11d2との間が広く開いている。このロープ通し状態で、荷締め側ロープR2を本体11の入口孔11fに挿入し、当該ロープR2を本体11の底板部11bと仕切板部11dとの間を通して仕切板部11dの後端部11d1まで引き込む。
【0026】
このように引き込んだ荷締め側ロープR2を、今度は後端部11d1で反対側(前方)に折返し、仕切板部11dの上面に沿わせつつ本体11の出口孔11gから引き出す。次に、操作レバー12aを
図3(c)、
図4(b)(c)のように下側に回動させてロック状態ないし増し締め状態にする。
【0027】
図3(b)はフリー状態とロック状態の間の中間状態であり、この中間状態では操作レバー12aとロックレバー12bが一直線になっている。操作レバー12aの支軸13とロックレバー12bの支軸14は位置が固定されているので、中間状態で操作レバー12aの凹円錐12a4とロックレバー12bの凸円錐12b5とが軸線方向と直角方向に離間(位置ズレ)する。
【0028】
このため、
図3(b)の中間状態では、凹円錐12a4と凸円錐12b5との位置ズレに起因して操作レバー12aとロックレバー12bが本体11内で幅方向に離間する。本体11は、
図2の矢印で示す幅方向(左右方向)に弾性変位可能に構成されているので、操作レバー12aとロックレバー12bが凹円錐12a4と凸円錐12b5の位置ズレに起因して本体11の側板部11a内面に弾性的に圧接する。このように、操作レバー12aを操作するときに操作レバー12aとロックレバー12bが本体11の側板部11a内面に弾性的に圧接するので、トグルレバー12のガタつきのない円滑な操作感が得られる。
【0029】
図4(c)の増し締め状態では、
図3(c)のようにロックレバー12bの先端が下方に移動して段付き溝12b3と段付き溝11d2との間が狭くなる。この状態で、出口孔11gから引き出した荷締め側ロープR2を手で前方(
図4(c)の上方)に強く引っ張る(増し締め)。このとき、固定側ロープR1に対して「滑車の原理」により手で引く力の2倍の大きさの力を作用させることができる。
【0030】
増し締めの途中では、凹円錐12a4と凸円錐12b5の位置ズレによりロックレバー12bの先端が上方に移動可能なので、荷締め側ロープR2が段付き溝12b3、11d2にロックされることがない。また、増し締めの途中で荷締め側ロープR2から一時的に手を離しても、トグルレバー12が
図3(c)、
図4(b)のようにロック状態になるのでロープR2が緩むことがない。したがって、ロープR2を容易に増し締めすることができる。
【0031】
図3(c)、
図4(b)のロック状態では、操作レバー12aとロックレバー12bが上方(第1の方向)に屈曲し、操作レバー12aの凹円錐12a4にロックレバー12bの凸円錐12b5が嵌合する。このため、荷締め側ロープR2の張力でロックレバー12bの先端部(段付き溝12b3)を下方に付勢する力が作用する。したがって、
図4(d)のように荷締め側ロープR2から手を離しても
図3(c)、
図4(b)のロック状態が維持される(セルフロック)。
【0032】
ロック部分としての段付き溝12b3には、荷締め側ロープR2の張力よりも小さい力が作用する。これは、荷締め側ロープR2を仕切板部11dの後端部11d1で180°逆方向に折返し、この逆方向に折返した部分を出口孔11gの手前でロックレバー12bにより本体11にロックしているためである。
【0033】
すなわち、仕切板部11dの後端部11d1からロックレバー12bの段付き溝12b3までの間の表面摩擦によって荷締め側ロープR2の張力が大幅に低減される結果、ロックレバー12bに作用する負荷を大幅に低減することができる。このような負荷の大幅低減効果により、ロックレバー12bの耐久性を大幅に向上することができる。これに対して特許文献3-5のロープ保持具は、ロック部分にロープ張力が直接負荷するので、ロック部分の耐久性が劣るという問題がある。
【0034】
セルフロック状態では、荷締め側ロープR2の表面に、ロックレバー12bの段付き溝12b3と仕切板部11dの段付き溝11d2が食い込むことで、ロック状態でのロープR2の滑りが阻止される。このため、トラック等で積荷を搬送する際の振動等によって、荷締め側ロープR2が不測に緩んで荷崩れが発生するおそれがない。
【0035】
荷締め側ロープR2を緩めるときは、
図3(a)のように操作レバー12aを上方に回動させてフリー状態にする。このフリー状態では、操作レバー12aが支軸13を中心として反時計方向に回動し、ストッパ11a5に当接する。
【0036】
したがって、操作レバー12aが勢いよく回動して手指などを痛めるおそれがない。また、操作レバー12aが反時計方向に回動する際、側板部11a内面に弾性的に圧接した状態で回動するので、フリー状態にした途端に操作レバー12aが暴れるといったこともない。
【0037】
また、ロックレバー12bが支軸14を中心として時計方向に回動する。そして、操作レバー12aの凹円錐12a4にロックレバー12bの凸円錐12b5が嵌合することで
図3(a)のフリー状態が保持される。
【0038】
すなわち、ロックレバー12bが下側(第1の方向と異なる第2の方向)に屈曲する。この結果、ロックレバー12bの先端の段付き溝12b3が荷締め側ロープR2から離間し、荷締め側ロープR2が本体に対してフリーとなる。したがって、荷締め側ロープR2を本体11の入口孔11fから簡単に引き抜くことができる。
【0039】
●第2実施形態
図5Aと
図5Bは、本発明の一実施形態に係る荷締め用ロープ保持具10のロック状態(
図5A)とフリー状態(
図5B)を示す斜視図である。このロープ保持具10は、
図6(a)-(f)に示す本体11と、
図7に示すトグルレバー12を有する。本体11とトグルレバー12は、樹脂や金属等で構成することができる。
【0040】
本体11は、互いに対向した左右一対の側板部11aと、底板部11bと、前板部11cと、仕切板部11dを有する。側板部11aと底板部11bは、
図6(e)のようにコ字状に連結されている。また、前板部11cによって側板部11aの前部が相互連結されている。
【0041】
図6(f)は
図6(e)のF-F断面を示すものである。
図6(f)から分かるように、仕切板部11dは底板部11bと平行に配設されている。仕切板部11dの前端は前板部11cに連続し、また
図6(e)から分かるように側板部11aの内面が仕切板部11dによって相互連結されている。
【0042】
底板部11bの後端部に、固定側ロープR1の通し孔11eが形成されている。この通し孔11eに、荷台に固定された固定側ロープR1の端部を連結可能に構成されている。
【0043】
前板部11cの上下二箇所に、荷締め側ロープR2の入口孔11fと出口孔11gが形成されている。これら入口孔11fと出口孔11gは、仕切板部11dの上下に位置している。
【0044】
そして、荷台に搭載された積荷に掛け回した荷締め側ロープR2を入口孔11fから入れ、底板部11bと仕切板部11dとの間を通し、仕切板部11dの後端部11d1まで引き込むことができるようになっている。その後、当該ロープR2を後端部11d1で上方に折返し、仕切板部11dの上面に沿わせつつ出口孔11gから引き出すことができるようになっている。
【0045】
側板部11aには、トグルレバー12を支持するための丸孔11a1と長孔11a2が形成されている。トグルレバー12は、手動操作する操作レバー12aと、荷締め側ロープR2をロックするロックレバー12bで構成されている。
【0046】
●操作レバーとロックレバーの詳細
操作レバー12aとロックレバー12bは、関節部としての連結軸12cによって屈曲可能に相互連結されている。すなわち、操作レバー12aとロックレバー12bが
図7の実線で示すように第1の方向に屈曲したロック状態と、
図7の鎖線で示すように第1の方向と異なる第2の方向に屈曲したフリー状態に屈曲可能に相互連結されている。ロック状態で
図8B(a)のように荷締め側ロープR2を本体11にロックし、フリー状態で
図8B(b)のように荷締め側ロープR2を本体11に対してフリーとする。
【0047】
操作レバー12aの左右両側に支軸12a1が形成されている。この支軸12a1は、本体11の側板部11aの丸孔11a1に回動可能に支持されている。
【0048】
また、ロックレバー12bの左右両側に支軸12b1が形成されている。この支軸12b1が、本体11の側板部11aの長孔11a2に摺動可能に支持されている。そして、ロックレバー12bの長手方向先端部の延長線は、本体11の前板部11cの方向に傾斜している。
【0049】
長孔11a2の長さは、操作レバー12aとロックレバー12bが
図8B(a)のロック状態から
図8B(b)のフリー状態に反転屈曲したときに、ロックレバー12bのロック部分としての段付き溝12b3と仕切板部11dの段付き溝11d2との間に、十分な大きさのロープR2挿通用隙間が形成されるように連結軸12b1が移動可能な長さとされている。すなわち、
図7の実線で示すロック状態から一点鎖線で示すフリー状態に移行する際に、連結軸12b1の移動を許容するように長孔11a2の長さが設定されている。
【0050】
ロックレバー12bの連結軸の近傍に、左右一対で断面V字状のノッチ部12b2が形成されている。このノッチ部12b2に、操作レバー12aの嵌合部としての先端角部12a2が
図8B(a)のロック状態で嵌合可能に構成されている。
【0051】
ロックレバー12bの先端部下面に、荷締め側ロープR2の上側表面に係合可能な段付き溝12b3が形成されている。一方、本体11の仕切板部11dの上面に、荷締め側ロープR2の下側表面に係合可能な段付き溝11d2が形成されている。
【0052】
仕切板部11dの段付き溝11d2の前端は、前板部11cの出口孔11gの内側で終わっている。ロックレバー12bの段付き溝12b3と、仕切板部11dの段付き溝11d2は、
図8B(a)のロック状態でロープR2を挟んで上下方向に対向している。
【0053】
●第2実施形態のロープ保持具の使用法
次に、
図8A、
図8Bに基づいて第2実施形態に係るロープ保持具10の使用法を説明する。まず、
図8A(a)のように本体11の通し孔11eに固定側ロープR1を通して固定する。
【0054】
次に、操作レバー12aを
図8A(a)のように上側に回動させてロープ通し状態にする。このロープ通し状態では、ロックレバー12bの先端が上方に移動して段付き溝12b3と段付き溝11d2との間が広く開いている。このロープ通し状態で、荷締め側ロープR2を本体11の入口孔11fに挿入し、当該ロープR2を本体11の底板部11bと仕切板部11dとの間を通して仕切板部11dの後端部11d1まで引き込む(手順1)。
【0055】
このように引き込んだ荷締め側ロープR2を、今度は後端部11d1で反対側(前方)に折返し、仕切板部11dの上面に沿わせつつ本体11の出口孔11gから引き出す(手順2)。次に、操作レバー12aを
図8A(b)のように下側に回動させて増し締め状態にする(手順3)。
【0056】
この増し締め状態では、ロックレバー12bの先端が下方に移動して段付き溝12b3と段付き溝11d2との間が狭くなる。この状態で、出口孔11gから引き出した荷締め側ロープR2を手で前方に強く引っ張る(増し締め、手順4)。このとき、固定側ロープR1に対して「滑車の原理」により手で引く力の2倍の大きさの力を作用させることができる。
【0057】
増し締めの途中では、ロックレバー12bの支軸12b1が長孔11a2に沿って移動可能であり、かつ、ロックレバー12bの先端が上方に移動可能なので、荷締め側ロープR2が段付き溝12b3、11d2にロックされることがない。また、増し締めの途中で荷締め側ロープR2から一時的に手を離しても、トグルレバー12が
図8B(a)のようにロック状態になるのでロープR2が緩むことがない。したがって、ロープR2を容易に増し締めすることができる。
【0058】
図8B(a)のロック状態では、操作レバー12aとロックレバー12bが上方(第1の方向)に屈曲し、操作レバー12aの先端角部12a2がロックレバー12bのノッチ部12b2に嵌合する。またロックレバー12bの支軸12b1が長孔11a2の下端部に当接する。
【0059】
このため、荷締め側ロープR2の張力でロックレバー12bの先端部(段付き溝12b3)を下方に付勢する力が作用する。したがって、荷締め側ロープR2から手を離しても
図8B(a)のロック状態が維持される(セルフロック)。
【0060】
このセルフロック状態では、荷締め側ロープR2の表面に、ロックレバー12bの段付き溝12b3と仕切板部11dの段付き溝11d2が食い込むことで、ロック状態でのロープR2の滑りが阻止される。このため、トラック等で積荷を搬送する際の振動等によって、荷締め側ロープR2が不測に緩んで荷崩れが発生するおそれがない。
【0061】
荷締め側ロープR2を緩めるときは、
図8B(b)のように操作レバー12aを上方に回動させてフリー状態にする(手順5)。このフリー状態では、操作レバー12aが支軸12a1を中心として時計方向に回動し、ロックレバー12bが支軸12b1を中心として反時計方向に回動する。また、操作レバー12aの先端角部12a2がノッチ部12b2から離脱する。
【0062】
すなわち、ロックレバー12bが下側(第1の方向と異なる第2の方向)に屈曲する。この結果、ロックレバー12bの先端の段付き溝12b3が荷締め側ロープR2から離間し、荷締め側ロープR2が本体に対してフリーとなる。したがって、荷締め側ロープR2を本体11の入口孔11fから簡単に引き抜くことができる(手順6)。
【0063】
●従来技術との対比
これに対して特許文献3のロープ保持具は、
図9に示すように、ロープ14を爪2でロックし、ローラー8にラチェットホイルを設けてロープ14の緩みを防止するようにしている。特許文献3の[0019]段には、「そして、上記ローラー8をロープ14の引張り方向(矢印P)へは回転自在になるようにし、逆方向へはストップされるように構成されることにより、ロープ14を引張って荷締めを行なうに際し、引張った後に引き戻されることなくスムーズに行なうことができる。」と記載されている。
【0064】
しかしながら、特許文献3のロープ保持具ではトラック等で積荷を搬送する際の振動等によってロープ14がローラー8から不測に外れる可能性があり、そうすると爪2によるロープ14のロックが効かなくなって荷崩れが発生するおそれがある。本実施形態では、
図8B(a)のようにロック状態のトグルレバー12によってロープR2が確実にロックされるので、積荷の搬送中の振動等によってロープR2が緩んで荷崩れが発生するおそれはない。
【0065】
●まとめ
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、「入口部」としての入口孔11fと「出口部」としての出口孔11gは、必ずしも「孔」に限られない。荷締め側ロープR2を案内可能な「入口部」と「出口部」であればよいので、例えば断面コ字状の溝部によって「入口部」と「出口部」を構成することも可能である。また、ロックレバー12bの支軸12b1にトグルばねを付設し、トグルばねによってロックレバー12bをロック状態とフリー状態に付勢するようにしてもよい。これにより、トグルレバー12のロック状態とフリー状態を確実に保持することができる。
【符号の説明】
【0066】
10:荷締め用ロープ保持具 11:本体
11a:側板部 11a1:丸孔
11a2:長孔 11b:底板部
11b1:通し孔 11c:前板部
11d:仕切板部 11d1:後端部
11d2:段付き溝 11e:通し孔
11f:入口孔 11g:出口孔
12:トグルレバー 12a:操作レバー
12a1:支軸 12a2:先端角部(嵌合部)
12a3:軸孔 12a4:凹円錐(関節部)
12a5:肉抜き凹部 12b:ロックレバー
12b1:支軸 12b2:ノッチ部
12b3:段付き溝 12b4:軸孔
12b5:凸円錐(関節部) 12b6:肉抜き凹部
12c:連結軸(関節部) 13、14:支軸
R1:固定側ロープ R2:荷締め側ロープ
【要約】
【課題】荷締め用ロープ保持具の構造を簡単にし、ロープの緩みを防止し、ロック部分の負荷を軽減する。
【解決手段】ロープ保持具10は、固定側ロープR1を係止可能な本体11と、荷締め側ロープR2をロック可能なレバー12とを有し、本体は荷締め側ロープの入口部(入口孔11f)と出口部(出口孔11g)を有し、荷締め側ロープを入口部から入れて本体内で折返して出口部から引き出し可能に構成され、レバー12の操作レバー12aとロックレバー12bは関節部(凹円錐12a4と凸円錐12b5)で屈曲可能に相互連結され、レバー12a、12bが第1の方向に屈曲したロック状態で出口部の内側位置で荷締め側ロープR2を本体11にロックし、第1の方向と異なる第2の方向に屈曲したフリー状態で出口部の内側位置で荷締め側ロープR2を本体11に対してフリーとするように構成されたことを特徴とする。
【選択図】
図3